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モララーのビデオ棚in801板21

1 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 22:03:17 ID:gJq2jqmV0
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。


   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]__\______  ___________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |      |/
    |[][][][][][][]//||  |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ| |
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄
                    (__)_)


モララーのビデオ棚in801板21
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1158949957/
 ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-7のあたり

保管サイト(お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://moravideo.s57.xrea.com/

2 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 22:04:50 ID:gJq2jqmV0
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です
書き込むネタはノンジャンル。 801ネタであれば何でもあり。
たとえばこんなときにどうぞ。

  どこに投稿すればいいのかわからない‥‥
   ・ネタを作ってはみたが投稿すべき既存のスレが無い。
   ・投稿すべきスレがあるのかもしれないけど、よくわかんない。
   ・クロスオーバーのつもりなのだが各スレ住人にウザがられた。
   ・みんなの反応を見たうえでスレ立てるべきかどうか判断したい。

  投稿すべきスレはあるが‥‥
   ・キャラの設定を間違えて作ったので本スレに貼れない。
   ・種々の理由で、投稿すると本スレが荒れそう。
   ・本スレに貼る前にあらかじめ他人の反応を知って推敲したい。
   ・本スレは終了した。でも続編を自分で立てる気がない。

  ヘタレなので‥‥
   ・我ながらつまらないネタなので貼るのが躊躇われる。
   ・作り出してはみたものの途中で挫折した。誰か続きおながい!

迷ったときはこのスレに投稿してね。
ただ、本来投稿すべきと思うスレがある場合は
それがどのスレで(ヒントで充分)、しかしなぜこのスレに貼ったのか、
という簡単なコメントがあるとよい。無いとカオスすぎるからね。

ナマモノは伏せ字か当て字を推奨。
それ以外は該当スレのローカルルールに沿うか、自己判断で。

3 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 22:05:35 ID:gJq2jqmV0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

4 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 22:06:24 ID:gJq2jqmV0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
とりあえず用意したテンプレ。

3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
とりあえず用意したテンプレ。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

5 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 23:12:51 ID:Tu8+lmBd0
携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

6 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 23:13:53 ID:Tu8+lmBd0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________


7 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 23:14:55 ID:Tu8+lmBd0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)

8 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 23:16:20 ID:kYy6wJXo0
>>1乙です (  ゚Д゚)⊃旦

9 名前:1:2006/11/13(月) 23:26:15 ID:gJq2jqmV0
テンプレ補足dクスです!
お茶半分どぞー つ旦

10 名前:風と木の名無しさん:2006/11/13(月) 23:39:11 ID:po/yjaeQ0
>>1乙!

11 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 00:01:27 ID:5ZU54eawO
>>1乙!それでは早速

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
日央画「荒ネ申」より、荒ネ申×イ寺
…のつもりだったけどリバっぽくなった。

12 名前::2006/11/14(火) 00:02:07 ID:5ZU54eawO
指先で撫ぜた頬はひんやりとしていて、血の通っている感覚がない。
そのまま指を滑らせて髪を梳く。寝ている子供を慈しむように、侍は何度もそれを繰り返した。


荒神が眠るように事切れた後、侍は荒神を弔うべきか迷って、結局そのままの形で残すことにした。
死後どれだけ経っても腐らない身体。いつのまにか傷が塞がって滑らかな肌を取り戻した胸部を眺めていると、本当にこいつは死んだのだろうかと言う思いが湧いた。
が、すぐにかき消す。荒神は死んだ。確信に近いものを侍は感じていた。
息を吹き返すことを期待したわけではない、ならば何故荒神の遺体を傍に置くことを選んだのか。


「…どんな夢を見てるんだ?」
冷たい手を握りながら侍が尋ねる。答えは返ってこない。
幸せな夢だといい。その夢に自分は、お前を殺すことの出来た男は出てくるのだろうか?
荒神の顔は微かに笑っていた。頬に手を添えて、唇を重ねる。
夢か。そういえば最後に見た夢は何だったか。
幸せな夢だったろうか。悲しい夢だったろうか。

侍は考える。あの日。あの日こそが自分にとって幸せな、最後の夢だったのではないか。
「…俺は」
侍は考える。夢すら見られず、孤独に時を過ごす自分。荒神も、こんな気持ちだったのだろうか。
荒神が死んでからどれ程経ったのか、時間の感覚が麻痺した侍には分からなかった。
「…俺は…」
(もう少しお前とここで酒を呑むのも悪くないと思っていたんだ)
それはどちらがいつ言った言葉だったか。侍はそれすら思い出せずにいる。

唇を離して侍は呟く。
「      」



自分を殺してくれる誰かを、眠らせてくれる誰かを、荒神の見る夢へと誘ってくれる誰かを、侍は待ちわびている。


13 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 00:02:51 ID:5ZU54eawO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


14 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 01:47:05 ID:Z3q0zbcj0
>>13 GJ! 切ない気持が伝わったよ。

15 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 07:18:22 ID:y3ZD+h4x0
GJ!素敵だ。

16 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 11:45:14 ID:Ee5MdIj60
1乙!
一応これも貼っておく。

 ____________
 | __________  |   
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | | 
 | |                | |           ∧_∧
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


17 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 11:54:13 ID:Ee5MdIj60
何かかわいいのでこれも追加。
自分のネタはまだ完成しそうにない…どなたか使ってオクレ

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

 

18 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 11:54:52 ID:Ee5MdIj60

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
 

19 名前:Mの死:2006/11/14(火) 12:42:32 ID:2nnz2b8QO
同期のMがくも膜下出血で死んだ。まだ35歳だった。
某局のネタ番組で一緒になってからずっと、友達だった。実感はまだない。
Mはツッコミの上手い芸人だった。Mの相方がお笑いをやめてMがピンになったとき、
何人もの芸人がMにコンビ組まへん?と声をかけていた。
Mは、俺と組んだらお前が可哀相や。あの天才と比べられるで。なんて嘯いて
片っ端から誘いを断っていた。お前どんだけ相方好きやねん!と
どつきまわしたのを覚えている。Mの特技は相方の嘘を見破る事で、
本当に相方想いの男だった。相方が音楽をやりたいと、ギターを抱いて楽屋に行ったとき、
やつの気持ちを慮って解散を承諾したM。
Mたちは爆発的には、売れていなかった。
つくりこまれた良質のコントは◎。
けれど、キャラが弱く、フリートークがいまいちだと言われていた。
営業能力の無い弱小事務所に所属していたこともあり、
バラエティで躍進できなかったのは確かだ。
それに、業界再大手の某事務所が、自分のところのコント芸人を売り込むため、
潰しをかけたという黒い噂はよく知られている。
芸人受けする芸人なんて言われながら、Mたちは苦しんでいた。
苦しみながら、ふたり支え合っていた。
とにもかくにも、相方想いだったMが解散後、どんな流れで
いまの相方と新たなコンビを組むことを決めたのか、俺にはわからない。
俺の相方はMの訃報を聞き、Mの現・相方が一番可哀相だと泣き崩れた。
前の相方は性犯罪で逮捕。Mと新たなコンビを結成し、さあ、これから!という
矢先のMの死だった。反則のようなノリツッコミ、よく「無邪気な」と表されていた
Mの笑顔。今となっては洒落にもネタにもならない、代名詞だった幽霊ネタのコント。
脳裏をよぎるもの、胸にこみあげるものは、腐るほどあるのに、実感がわかない。
涙なんて出ない。ゴールデンタイム。テレビに映っているのは、
本人たちの底力×事務所の力で、
Mたちを寄り切った例のコンビ。
嗚咽している相方の背中を撫でながら、俺は生きた証を立てたいと思った。
相方の震える背中を撫でた。繰り返し撫でた。こいつと二人、
Mの分まで駆けてやる。

20 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 17:18:33 ID:nqyc2Xoc0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 自分の気持ちに整理つけるために書きました。
 | |                | |     ピッ   (・A・ ) フォークの二人の話です。
 | |                | |       ◇⊂    )  __ 今回のニュースの話なので、
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | ダメな人はスルーしてください
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


21 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 17:19:27 ID:nqyc2Xoc0
まさかこんな再会になるとは、誰が思っただろう。
俺はそんなん全然考えても無かった。
11月の寒さも手伝っているのか、必要以上に寒い霊安室には、すでに何人もの人が集まって
泣いていた。皆が振り返り、俺の顔を見るとベッドの周りを空けてくれた。
連絡をもらってから、地に足がついているように思えないぐらい、フワフワしていた。
ベッドに一歩一歩近づく時も、まるで高熱に浮かされて幻覚を見ているような感覚だった。

渚。
何でお前、こんなとこでグースカ寝てんねん。

「桶田…これ、線香…」
事務所の先輩だった人が、目を真っ赤にして、俺の手に線香を握らせた。
呆然と渡されたそれを見る。しばらく考えて、ろうそくの火で線香に火をつけた。
現実味のない世界で、俺は線香を渚の枕元に立てた。
「…早すぎますよ、渚さん…」
誰かが呟いた。顔見知りの後輩だった。お前もおったんか、と言いかけてやめた。
多分声にならないだろうから。

22 名前:2:2006/11/14(火) 17:20:02 ID:nqyc2Xoc0
もう一度渚の顔を見た。
目を閉じていた。安らかなのかどうかは分からなかった。
白装束が、昔やったコントを思い出す。
最後に会った時は、いつやったっけ。
そんなことを思い出しながら、俺は布団から出ていた村田の手を握った。
何度も握った、子供のように小さな手が、石のように硬く冷たくなっている。
何とか暖かくならないかと、長い時間握り締めていた。
誰も何も言わなかった。
俺は、いつのまにか祈るように渚の手を強く握り締めていた。
ドッキリやって言うてくれ。頼むから。
俺の心の声が、そう叫んだ。
「桶田さん…村田さん、クモ膜下出血やったそうです…」
背後から、聞きなれた後輩の声が聞こえた。
お前、この前一緒に呑んだ時は、そんな死にそうな声なんて出さんかったやん。
「多分寝てる間にそのまま逝かれたんじゃないかって…。
 あんまり苦しまずに逝けたんやないかって……」
そこまで言って、すすり泣きに声が変わった。
何で泣いてんねん。何が悲しいねん。ドッキリちゃうんか。

23 名前:3:2006/11/14(火) 17:20:47 ID:nqyc2Xoc0
必死で握っても、渚の手は、俺の体温以上に暖かくならない。
いつも俺より体温高くて、子供みたいだったくせに、何でこんなに冷たくなったんや。
「うつぶせで死んでたから、俺が来た時は、顔も真紫で見れたもんじゃなかった…。
 良かったな。お前に綺麗な顔で最後にお別れできて」
毒舌な先輩が、シラッとそう言った。
それが渚に向けられた言葉であることに気づき、俺は顔をあげる。
先輩は、いつもの冷めた目をしていた。しかし、その目は真っ赤になっていた。
「二人きりにしようか?」
俺はその言葉にうなづいた。
誰も何も言わなかった。
ただ皆、黙って部屋を出て行った。
先輩が一番最後まで残り、「仕事あるヤツも来るから、10分だけな」と言って出て行った。
俺は渚と二人きりになった。

24 名前:4:2006/11/14(火) 17:22:05 ID:nqyc2Xoc0
手をさすった。暖かくはならなかった。
顔にさわった。冷たく、まるで物のようになっていた。
中学生の時から毎日も見つめてきたのに。
数年間会わないだけで、かなり顔つきも変わっていた。
困ったような眉は、目を閉じていてもそのままハの字になっていた。
髪も薄くなったんちゃうんか。俺も人のことは言えへんけど。
握っている手を見つめた。苦労したのが分かる、マメだらけの手。
お前これ芸人ちゃうぞ、と思いながら、そっと布団の中に戻した。
布団の中は、悲しいほどに冷え冷えとしていた。
思わず抱きしめようと肩をつかむと、カクンと首が曲がった。
「渚」と声に出して呼んでみた。答えるヤツはいない。
あぁ、もう渚はいないんだと、ようやく実感できた。
目の前にある亡骸が、俺の中で現実味を帯びだした。
抱きしめたその体は、もう最後に抱きしめたあの日とは、全く違っていた。

25 名前:4:2006/11/14(火) 17:22:48 ID:nqyc2Xoc0
お前まだ30代やろ。俺と同級生やのに、どうしてや。
不健康な生活したらあかんって、前から言われてたやん。
酒呑みすぎたんやろ。酔っ払うほど呑むなってあれだけ言うたのに。
「渚…」名前を呼んだ。
「渚」もう一度。
「渚!」もちろん誰も答えない。
いつのまにか、渚の白装束にいくつもシミができていた。
それが自分の涙だと気づくのに時間がかかった。
抱きしめた体を離し、顔を手ではさんだ。髪の毛を透いた。いつも触っていた首の後ろを触った。
そこに、俺の記憶にある渚はいなくなっていた。

――― 何て言うか、死ぬって分かってたら、もっと一杯思い出作っとけばよかったかな、なんて…
――― 毎回ダラダラした思い出しかなくって…

二人でやったコントのセリフが、脳裏に蘇ってきた。
あの時、何で俺は無邪気にこんなこと言ってたんやろう。

26 名前:5:2006/11/14(火) 17:24:01 ID:nqyc2Xoc0


俺が何かで結果を出して。お前が今のコンビで何かの結果を出して。
二人が再結成しても、誰にも「解散してダメだったから」って言われないようなようになったら、
またやり直そうと思っていた。
俺の誘いを、渚が断るわけないと思っていたのに。
また二人で最高に面白いものを作り出せると思っていたのに。

――― あー、やり残したこといっぱいあるなあ!

自分のセリフが、渚の青い顔に重なった。
「お前…どこ行くんや…?」
コントで渚が言った時は、響きわたるような声だったのに。
俺の口から発せられたその言葉は、おかしなほどにかすれていた。
みっともないほど全身が震える。言い直した。
「お前、どこ行くんや? どこ行くんや!」
もちろん返事は無かった。
お前、三途の川、一人で渡る気か。俺に何も言わずに。



27 名前:6:2006/11/14(火) 17:24:45 ID:nqyc2Xoc0


「…10分経ったからな、桶田」

先輩が入ってきた時、俺は布団につっぷして、ただ泣いていた。
悔しかった。やるせなかった。誰か俺を殺してほしかった。
自分の残りの人生を全て渚にやってでもいいから、渚を返してほしかった。
肩に誰かが手をかけたが、俺は起き上がれなかった。
どうして俺は、あの時、せっかくつかんでいた手を離したのか。
何であんなことを言って、渚から離れたのか。
数年間、連絡をとりあわなかったのか。
どうして。どうして。
心のどこかで誰かがわめく言葉が、俺の心をえぐり続けた。
もう二度と立ち上がることができないような気がした。
嘆いても悔やんでもどうしようもない。
ただただ泣くことしかできない。
俺の肩に手を置いているヤツも。俺の傍らに立っているヤツも。誰も何も言わなかった。

『俺に何かあっても、お前のせいではないからな』

11月12日。俺に甘かった元・相方は、永遠にその言葉を言ってくれなくなった。

28 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 17:25:34 ID:nqyc2Xoc0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 不謹慎だと分かっていても、書かずには
 | |                | |     ピッ   (TAT ) いられませんでした。
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 嫌な気持ちになった方いらっしゃったら
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | すみません。
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | 心よりご冥福をお祈りしております。

29 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 18:05:11 ID:nJxHniL80
。・゚・(ノд`)・゚・。

30 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 18:16:48 ID:lR/ESOx2O
つ線香

31 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 18:45:54 ID:CHL1zjhh0
ほんとうに、惜しい人亡くした。

32 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 21:02:52 ID:Pj5gBmXcO
訃報を聞いた時は実感がわかなかったけど、これ読んで自覚した
>>29さん、GJですた

そして、心よりご冥福を…

33 名前:風と木の名無しさん:2006/11/14(火) 22:54:34 ID:uvblc1MSO
なんだ、流し読みして、性犯罪とかいうから
デブ山本か、加藤?だっけ?かの下品男かどっちかが
死んだのかと思って、wktkして芸+見に行ったのに違うのか、残念。
せっかく
死んでザマミロm9(^Д^)プギャー しようと思ったのに。

34 名前:風と木の名無しさん:2006/11/15(水) 02:55:09 ID:52w/dbYS0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < DVD記念!
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < リハビリします
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

せっかくだから使わせていただきますノシ

「こりゃ医者保安官医者ktkr」そう思っていた時期が確かにありました

再び簡単自設定↓
・保安官は通常は一人称「俺」。だけど医者の前じゃ一応「私」
・医者は普段は結構気を張ってるので一人称「私」。
・だけど内部テンション上がると「俺」。年の近いシェリフの前だったりして気が緩んでる時も「俺」。
・て言うか字幕吹き替え小説で一人称統一激しくキボンヌorz カッテニイロイロヤッチャウゾ

35 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官1:2006/11/15(水) 02:58:15 ID:52w/dbYS0
 観光客や、稲妻の名を冠するルーキーか伝説と讃えられたレーサーかで
お目当ては違えどもレースマニア、小さな凄腕ピット・クルーや塗装の魔術師目当ての客。
 ラジエーター・スプリングスは賑わっていた。それはかつて地図から消えた街とは
到底信じられないほどで、彼らを相手に商売をしている住人達は日々忙しく
立ち働いていた。それまでの退廃的な安らぎこそ失われたが、皆はその喪失を
たまに懐かしく思いこそすれ恋しがりはしなかった。今のこの状態こそ、
住人達が夢に見たラジエーター・スプリングスの本当の姿なのだから。

 しかしこの日のラジエーター・スプリングスは静かだった。今、イノリイ州で
開催されているレースはかつて八ドソン・ホーネットもライトニング・MACィーンも
参加して、それぞれが好成績を収めた新人レーサーの登竜門とも言える伝統ある
レースだ。参加資格はデビュー後2年までだったが、期待の若手レーサーと騒がれ
ピストン・カップではキングらと優勝まで争ったMACィーンは参加を控えていた。
 それでもMACィーンはいつか自分を追ってくるのだろうルーキー達を見物して
おくべく、レースを見たいとはしゃぐメーターを伴ってサーキットへと出掛けていた。

 ツェリフは久々に喧騒の収まったメインストリートを眺めながら、フ□ーの
カフェでのんびりとオイルを啜っていた。無論、本来は派出所なり標識裏なりに
詰めていなければいけないのだが、平和な田舎勤めで培われた長年の勘が
『今は休憩時だ』と告げている。
 ちびちびとオイルを楽しみながら、ツェリフはぼんやりと時を過ごしていた。
その内、標識裏に詰めている時によく襲ってくる良く知った感覚に捕われている事に気付く。

 すなわち、睡魔。昼下がりのぽかぽか陽気にフ□ーご自慢のオイル。
それに加えて呑気で穏やかで静かな通り。昼寝には、持ってこい。
「…………――」
ずるずると狭くなる視界を無理矢理押し上げる努力を、ツェリフがついに放棄
しかけた時だった。

36 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官2:2006/11/15(水) 03:00:04 ID:52w/dbYS0
「――ツェリフ」
「おおぅっ!?」
急に呼ばれた名前にばちっと視界が開け、強風に当てられた煙が晴れていく様に
眠気が掻き消える。
 慌てて巡らせた視線の先にいたのは、濃紺色の流れるような気品のある
ボディラインを持つ旧型フルサイズ・クーペだった。
「すまんな、驚かせたか」
程好い距離を保っているドック・八ドソンは、ツェリフの上げた声に面食らったようで、
少し怪訝な表情だ。
「いや……助かった。危うく寝てしまうところだったよ」
ツェリフは頭を振って答えた。
 町の保安官の居眠り癖はさりげなく住人達公認になっていたりする。
それでも医者であり判事、更に最近はレーサー達の間で伝説となっている事が
判明したこの良識溢れる二つ年下の紳士に見られてしまうのは気恥ずかしいものがある。
そんなツェリフの胸中を知ってか知らずか、八ドソンはツェリフの隣に滑り込んで止まった。
「ガスケットの調子はどうだ?」
「相変わらず。高速を突っ走ったのなんざ何十年振りだったんですよ?……
せっかく治りかけていたんですがねえ」
そう言ってツェリフが意地悪く睨んでやると、八ドソンは車体を僅かに揺らして笑った。


 MACィーンが唐突にいなくなり、町の誰もが多かれ少なかれ沈んでしまっていた
あの日、いきなりカリフォルニアへ行くと言い出したのは誰あろうドック・八ドソンだ。
『カリフォルニア!? 一体どうしたんだドック……あの真っ赤なレーサーじゃ
あるまいし』
『訳は追い追い話す。グイド、それにルイジ――悪いが付き合ってくれ』
『MACィーンに会いに行くんだな?じゃあオイラも行くよ。だってオイラ、
まださよなら言ってないんだ!』

37 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官3:2006/11/15(水) 03:03:17 ID:52w/dbYS0
ドックの頼みとあらばと快諾したタイヤ屋コンビとうきうきとはしゃぐメーター。
慢性的なホイールの軋みが治まらないリジーと引っ込み思案なレッド、
『出来る事は無いから』と遠征を辞退したサリーを尻目に、完全に小旅行
気分のフィノレモアとそれに引っ張られた形のサ一ジ。ドック・八ドソンの
いきなりの告白にいち早く順応したラモ一ンは手早く商売道具一式をまとめ出し、
フ□ーは旦那についていく格好になった。

 クーペからフォークリフトに至るまでの高速道路には余りにも不釣り合いかつ
バラエティに富んだ面々を先導し、パトランプをがんがん鳴らしながらひたすらに
爆走したのはツェリフだ。
 お陰でようやく治まり掛けていたバックファイアが再発し、ツェリフは
数メートルも静かに走れなかった。その銃声にも似た破裂音に驚いた他車が
道を空けたのはラッキーではあったが。


「あの時は迷惑を掛けた。何分急いでいたものでな」
「だったらあの若僧の事をわざわざタレ込まずに、最初から素直に一緒に行けば
良かったじゃないですか?そうしたらあそこまで急ぐ事もなかったし、私も
上からイヤミを言われる事も無かった」
警察当局にも存在すら忘れられていた町ではあったが、『ハイウェイを発砲
しながら走ってるマーキュリー・ポリス・クルーザーがいる』と通報されては
どうしようもない。
 この話はドック・八ドソンには初耳だったようで、驚きに見開かれた眼をツェリフへと向ける。
「上から?大丈夫なのか」
「いや、電話を寄越したのが昔の部下でしてね。適当に理由を聞かれて、
後は思い出話に終わりましたよ」
懐かしそうに眼を細めて笑うツェリフに八ドソンも安心したように笑んだ。

38 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官4:2006/11/15(水) 03:04:36 ID:52w/dbYS0
 それからふといつものきりっと引き締まった顔に戻り、ツェリフへと視線を投げ掛ける。
「なあ、ツェリフ」
「何です?」
ツェリフが訝し気に視線を返す。
 八ドソンは自分のオイルで喉を潤してワンクッション置き、やや躊躇い勝ちに切り出した。
「なあ、ツェリフ。今、眼の前に自分を好いてくれているだろう車が現れたとしたら
――どうする」
ツェリフにも、八ドソンにも妻や恋人と呼べる存在はいない。『いい男が揃って
もったいない』が町の最年長リジーの二人を見た時の口癖だった。が、あの
人見知りで引っ込み思案なレッドが、大柄で野生的な魅力を醸し出す可燃性
燃料用のトラックガールと電撃一目惚れに始まる遠距離恋愛をしていると発覚して
以降、彼女はそちらに掛かり切りになった。女が喜ぶ男のあれこれや、レッドが
町を出るのではなく彼女を町へと連れて来させる手練手管を伝授する一方で、
それに伴い変化した口癖が『あのやもめコンビみたいになっちゃダメよ』と
いう容赦もへったくれもないものになってしまったのだけが頂けないが。
「どうするか?それを私に聞く意義は何ですかな、ドック?」
「…………」
珍しい事に、歯切れ悪く黙ってしまった八ドソンにツェリフは軽く息を吐いた。
穏やかな笑みを向け、続ける。
「ドック、そりゃ無意味な仮定ってもんですよ」
「――無意味?」
「ああ、無意味ですとも。……その仮定された事態がこの身に振り掛かると
しましょうか。果たして私は、突如眼の前に現れた一途な彼女、もしくは『彼』に」
いきなり八ドソンがむせた。
「げほっ、ぇほっ……」
「どうしました?冷却液でも逆流したとか」
「いや……!何でもない、続けてくれ」
「ふむ――――どこまで話しましたっけ? ああ、彼だか彼女だかにあなたが
好きですとでも告白された時、俺はどうするかという話でしたね」
「そうだ。それで、どうするんだ?ツェリフ」
ようやくいつもの悠然とした己のスタイルを取り戻した八ドソンが先を促す。
 ツェリフはそんな八ドソンをちらりと見遣った。

39 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官5:2006/11/15(水) 03:05:47 ID:52w/dbYS0
「――――聞いてどうするつもりで?」
「……? 何だって?」
「聞いてどうするかと訊いたんですよ。今後の参考にとか?万一こいつが
心理テストの類なら謝りますが……どうも違うみたいですし」
「――…………」
ツェリフの思わぬ言葉に八ドソンは沈黙した。うつ向いて、次の言葉を模索
しているかのようだ。
「仮にですよ、私の答えが『受け入れる』だったらどうするつもりでした?
『断る』なら?『発砲する』だったら?」
「ツェリフ、俺は」
ツェリフは片眼をしかめた。
「こんな事、言っちゃあ何ですが……人にすがるなんぞ、らしくないですよ――ドック」
「…………」
黙したネイビーブルーのクーペを横目にツェリフは、ドック・八ドソンが町に
現れた日の事を思い返していた。


 珍しく雨の降った日だ。緩やかなスピードで走ってきた濃紺色のクーペは、
かつては手入れの行き届いていたであろうに泥まみれで、タイヤはパンク
寸前ガソリンは既に尽き掛けていた。何を聞いてもうんともすんとも言わない
見るからに訳ありな彼を手厚く介抱したのは、気のいいラジエーター・ス
プリングスの住人だった。それから回復した彼はドック・八ドソンとだけ名乗って、
町医者としていつしか居ついていた――ここはそういう町だった。

 しかし、今も昔も変わらないのは八ドソンの他人との距離だ。常に一歩引いて
町を、住人を見守っているこの冷静で落ち着き払った年下の町医者の存在を、
ツェリフは町の保安官としては頼もしく思っていた。反面、どこか危うげなものも感じていたのも確かだ。

 だが、それが、最近変わった。

40 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官6:2006/11/15(水) 03:07:36 ID:52w/dbYS0
 八ドソンが他車と距離を取るのは、その過去ゆえだった。詳しくは聞いていない。
ツェリフを始め誰も、聞こうとも思わない。ただ、『かつてはレース界の頂点に
いた伝説の男』という簡潔な一文だけあれば十分だ。それさえも多すぎるかもしれない。
 彼が『誰』であったとしても、ドック・八ドソンはドック・八ドソンであり、
それは揺るぎようのない真実だからだ。
 それをあの日ツェリフが代表して八ドソンに告げた時、何故か八ドソンは
ひどく意外そうな顔をした。戸惑いと言い換えてもいい。それからすぐに
ふと笑って、『すまない』と言ったのだった。

 八ドソンの変化の直接の原因は、最初は街に混乱と騒音を、次にひとときの繁栄を。
そしてかつての賑わいをもたらしてくれた稲妻の名を持つレーシングカーだった。
 彼のクルーチーフに落ち着いてからというもの、八ドソンは傍目にもますます
忙しくなっていた。本業の医者業に加え、引き受けてはいたもののほとんど
休業状態に近かったはずの判事業の仕事量が跳ね上がったからだ。繁栄は
いい事ばかりを呼ぶものでもない。この前紛れ込んできたド派手な暴走族どもがいい例だ。

 それでも、八ドソンは楽しそうだった。

 MACィーンとサーキット上でのパフォーマンスについて揉めに揉めていても、
食あたりを起こしたキャリーカーとその荷台に乗せられた車達が大挙して
診療所に駆け込んでも、丸一日交通裁判所に詰める羽目になっても、
ドック・八ドソンの顔には疲労の色が見られない。いや、見られるには見られるの
だが、決して深刻さを感じさせられるものではない。かつての彼なら、まるで
手負いの獣のような精神で鉄面皮を保つ事を選んだだろうに。

 ツェリフはその変化が嬉しかった。古傷など、いつまでも抱えているものではない。
それが心のものならば、余計に。

41 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官7:2006/11/15(水) 03:08:43 ID:52w/dbYS0
 だがいくら変わったと言っても、ドック・八ドソンが軟弱になったと言うわけでは
ない。あのレッドでさえきちんとあのトラック娘を捕まえているのだから
(実は案外とそちらの才能があったのか、それともよほど相手がレッドに首ったけ
なのかはいざ知らず)彼より遥かに知識も経験もあるはずの八ドソンがこんな
らしくない『例え話』をするなんて事はないはずなのだ。

「……ツェリフ」
八ドソンがぽつりと呼んだ。ツェリフは慌てて思考を引き戻しながら返事をし、
こっそり思った。やれやれ、年を食うと繰り事ばっかり出てきて困る。
「ツェリフ、分からないんだ……自分がどうすればいいか」
何に対して、などとは尋ねない。警官と言うのは聞くのも仕事だ。
 無言のまま先を促すツェリフに、八ドソンは短い、しかし重い溜め息をついた。
「昔の私は……あいつと同じものを持っていた。栄光、称賛、将来への展望。
――馬鹿だったよ。それらが永刧自分の物で在り続けるものだと信じて疑わなかった」
もはや先の例え話が吹っ飛んでいる。ツェリフは思い出したようにオイルをすすった。
 八ドソンはどこか遠い眼をして、ゆらゆらと前後へタイヤを回す。

 全てが180度変わってしまったあの日。変わったなんてものではない。全てが
消え失せた。ボディの傷は治っても、もう取り返しがつかなかった。八ドソンの
周囲が、取り返す事を許さなかった。
 それから彼は静かに生きて来た。優しくて暖かいRSの住民達と寄り添いすぎず
離れすぎず、程好い距離を保った生活。自分の正体を明かす事もない。
誰かが自分を覚えているかもしれないと言う可能性が捨て切れなかった。
その誰かからかけられるだろう、過去の遺物に対する空虚な労いの言葉が
とにかく恐ろしくて、切なくてならなかったのだ。

 誰からも忘れられたままゆっくりと『ドック・八ドソン』として朽ちる。
 それが一番良い余生の送り方だと自分に言い聞かせていたはずなのに。

42 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官8:2006/11/15(水) 03:10:50 ID:52w/dbYS0
 しかし、その不可侵領域にエンジン音を轟かせて乱入してきたのは、何を
隠そうライトニング・MACィーンだ。遠い昔に放り捨てたはずの希望が、自分から
舞い戻ってきたのである。とびきり傲慢だったけど、一皮剥ければ誰よりも
一途なレーサーと一緒に。

 ……つまるところ、ドック・八ドソンは恐れている。
 その一方的とも言える思いに応える事。応えて、またその距離を詰められてしまう事。
 しかも、八ドソン本人はMACィーンの一途な行為自体は憎からず思っているのだ。
時折やらかす過ぎたスキンシップは流石に怒っているが。

「――正直、自分でも整理がつかない。あいつを跳ね除けたいわけじゃあない。だが……」
「一気に距離を詰められるときついって事ですね」
「……そうだな」
ある意味で身も蓋も無い纏め方をしたツェリフは、するりと定位置から離れて
八ドソンの隣に並ぶ。そのゆるやかな前後運動に付き合うように、タイヤを
ぐりぐりと慣らした。

「ドック、誰だって好意を向けられて悪い気はしないでしょうよ。けれど、
好意に対してどう対応するかは人様々です――無条件でその好意に報いる者、
心地よい距離でそれを享受する者……その永遠性を過信して、おざなりにする者」
八ドソンは怪訝そうにツェリフの横顔を盗み見た。歳を重ね、とろりと眠たげな
目線はここではないどこかを見ている。
「『失って初めて気づく』って奴ですね。陳腐にも程がある。しかし……
それが陳腐なのは、本当に『よくあること』だからです。無難なエピソードは
どんな形態にも変わる。だから、我々の回りに溢れている。溢れすぎていて、
よもやそれが自分の身に降りかかるなんて、誰も予想していない」
ツェリフは、ゆっくりと視線を上げていく。気持ちよく晴れたキャブレーターの
青空を見上げた。

43 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官9:2006/11/15(水) 03:12:18 ID:52w/dbYS0
「馬鹿な事をしましたよ。仕事仕事でろくろく構ってやらず……今は忙しいから
そのうちに、と先延ばしにしていたら――――可哀想なメル。ダンプと正面
衝突して跡形も無し、だ」
ツェリフの、いつしか独白にも似てきた言葉を八ドソンは沈黙して受け取った。
 都会から赴任して来たというツェリフ。ガスケットの調子が良くないから、
と診察した内側は、並大抵ではつかないような傷にまみれていた。一連の事情を
今の今まで黙していたツェリフの心情を、八ドソンは理解出来たつもりだ。
皆、何かしらの不可侵領域というものを持ち合わせて生きているのだ。
 そして、互いのレッドラインを踏まないように、出来る限り身を寄せ合って生きている。
「年寄りの繰言になってしまいましたな。つまりドック、簡単に言えば
『貰えるものは貰っとけ、但し粗末にはするなよ』という事で――」

「あら〜、ツェリフにドック、来てたの? ごめんなさいね、つい盛り上がっちゃって」
ツェリフの言葉はフ□ーの声に遮られた。夫婦揃ってドライブに繰り出していた
カフェの女主人と本日全身をいぶし銀シルバーで決めた塗装屋は、なめらかな
アスファルトからカフェの敷地内へと乗り上げた。
「気にするなフ□ー、たまにはのんびりしたかったんだよ」
「ったく、何をそうしっぽり語り合うネタがあるんだか……このいい天気によ」
陽光に燦然と輝く自らのボディを満足げに点検し終えたラモ一ンはツェリフの
返事に大袈裟にフレームを沈めて溜息をついた。その後くるりと二台の先客の
周りを流した後でラジオのスイッチを入れる。
「せめてイカしたBGMでも聴こうとは思わねぇのかよ? やだねぇフ□ー、
俺ぁこんな歳の取り方しねぇから!」
「いやぁねラモ一ン、わざわざ宣言しなくてもあたしはあなた一筋よ!」
店の奥から届く愛妻の言葉にラモ一ンはにんまりと頬を緩めて、ラジオの
チューナーをいじる。いくつかのノイズが流れた後、チャンネルがかちりと
合ってスピーカーから小気味いいマシンガントークが溢れ出た。

44 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官10:2006/11/15(水) 03:14:26 ID:52w/dbYS0
『ここイノリイ州で開催されたルーキーズ・カップ!只今トップ三台のインタビューも
終わり後は静寂が帰ってくるのを待つばかりですが、観客の興奮は未だ冷めやらず
――うん? あれ、カメラさんちょっとそこの席に寄せて!』
『何とォ!?MACィーンです、みなさん、あの奇跡のルーキー、ライトニング・
MACィーンがこのレースを見に来ていたのです!今回のルーキーズカップには
出場辞退をした彼ですが、やがて己を追ってくるルーキーたちの視察でしょうか!?』
レースは既に終わったのに再びテンションが上がるダリルとボブの掛け合いの
背後で、確かに観客の新たな歓声が聞こえる。その歓声の只中にいるのは、
誰あろうMACィーンだ。眼には見えずとも、その赤いボディ、キザったらしい
笑顔を主に女性に向ける様子がありありと浮かんで、八ドソンは知らずひっそりと
微笑んだ。
 ざわつく音を断ち切るように、女子アナウンサーの凛とした声が割って入る。
『こちら観客席です!MACィーンさん、どうでした今回のレース?やっぱり
出場したかったでしょ?』
『うーん、やっぱり軽い気持ちで見に来るものじゃないね! ボクも走りたくて
走りたくてたまらなくなっちゃったよ!』
観客に負けず劣らず興奮の渦中にあるらしいMACィーンが、熱の篭った口調で
電波に乗った。その背後ではフラッシュの焚かれる音。めくらめっぽうに向けられる
カメラに何やら嬉しげにメーターが歓声を上げているのが聞こえた。
『貴方には次のレースが控えてるわ! その時は是非その稲妻の走り、見せて頂戴?
今回の出場者も何台か参戦予定なの。もちろん、今日のトップ3も。他に貴方の
注目している選手はいるかしら?』
『そうだなあ……全員かな! みんな順位が付けられないぐらいに輝いてる
ものを持ってる。彼らと戦うのが楽しみだよ――あ、ねえ、これってアメリカ中に
放送されてるの?』
『ええ、どこもかしこも余すところなく生放送よ!』
『そっか、じゃあちょっと貸して!』
それを最後にスピーカーの向こうでは一瞬ではあるが慌てた気配が走った。
 しかしそれもすぐに掻き消えて、次にスピーカーを振るわせたのはMACィーンの声だった。

45 名前:『車達』稲妻×医者前提の医者と保安官11:2006/11/15(水) 03:18:33 ID:52w/dbYS0
『ドック!今これ、聞いてくれてるかな!?ねぇ、聞いてた、見てた? 今年の
ルーキーは凄い連中が揃ってる! こっちもうかうかしてらんないよ、帰ったら
ミーティングとタイヤのチェックと……試走行ももちろんね! 今回もよろしくね、
ドック。もちろん次レース以降もずっとずっとずーっとだけど!あんたを
信じてるからさ! えもう時間?ちょっと待って、えーとえーと、愛してるよーーーー!!』

それを最後にMACィーンの声は途絶えた。『相変わらずの素敵なパフォーマンス
ですね!』とコメントするアナウンサーの声を聞きながら、ドックは俯いて
車体を震わせた。

「……っ、全く、あの坊やは!こっちが反論出来ないと思って調子に乗りおって」
その声音はどこか心地良さそうだ。そこに先程までの沈鬱な色は、無い。
 八ドソンはその場で綺麗なドーナツターンをしてツェリフに向き直った。
「……ツェリフ、俺は無駄な時間を過ごさせてしまったようだ」
「大したことではありませんよ、ドック。俺もどうも余計な忠告をしてしまった
らしい……あの若造があんたの前から消える日は、アメリカ大陸が沈む日だ!」
タイヤを振ってからから笑うツェリフに、八ドソンは眼を細めてゆるゆるとボンネットを振った。
「ありがとう、ツェリフ。じゃあ、ちょっと行って来る」
「お気をつけて、八ドソン」
ツェリフの言葉を背に、八ドソン・ホーネットはいきなりエンジンを吹かした。
そして現役時代をびりびり感じさせるスピードで走り向かうのは、あのダートコースだ。

 それを見送ったツェリフは再び日陰へとバックした。
「フ□ー、もう一杯貰えないか?」
そう主人に呼びかける。おかわりのオイルが来るのを待つ間、ツェリフは
ゆったりと眼を閉じ、のんびりとした時へと再び身をゆだねた。

 日が傾きかけた空の下、真っ赤な稲妻を待つフルサイズ・クーペの姿を思い描きながら。

46 名前:風と木の名無しさん:2006/11/15(水) 03:20:07 ID:52w/dbYS0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < テラナガス
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < カンがいまいち
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 戻ってこない!
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

要するにやもめ萌えです、と。
そろそろレッカー車呼ぶべきですか。

47 名前:風と木の名無しさん:2006/11/15(水) 11:29:36 ID:RcnMhyqJ0
GJ!!!
昨日やっとDVD見たばっかりでもう萌え萌え!
稲妻は医者が考え込むすきもないくらい押すといいよ!

48 名前:風と木の名無しさん:2006/11/15(水) 18:29:45 ID:3Yf/3qtk0
GJ!!
保安官一押しな自分にとって、>34は、ネ申 !!

49 名前:砂色さんと琥珀色さん(1/3):2006/11/15(水) 19:24:40 ID:bsolztqY0
前スレにコソ-リ投下しようとして容量オーバーで無理だった山田です。
すみませんが3レスほど使います。

前スレ>562->572金髪さんと赤毛さん後日談
某宇宙歌劇の金赤が登場しない金赤話。
砂色がミーハーでもおk、同期相手エセ口調おkな冗談のわかる人向け。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


いやあ、驚いたよ。
薄々そうではないかと思っていたがまさか現場に居合わせる事になるとは……。
ああ、事の発端のB提督は放心している。余程衝撃だったみたいだ。
軽率な行動をとればそれ相応の報いを受けるという事だな。
卿が必死で止めた理由がよーくわかった。
いやいや、私だって止めてただろう? 面白がってなどいないさ。本当に。
珍しいものが見られて興味深かったという程度だ。そう睨むなよ。
吊り目がますます吊り上がって怖い顔になっているぞ。まあ飲め、ほら。
現場はどうだったかって? ああ、卿は見ていないのか。
安心しろ、着衣は乱れていなかっ……すまん、不敬だった。認める。
閣下も意外と大胆だな、仮にも公務を行う場所で。らしくもない。
何!? それは本当か? メモメモ……ゴホン、これは何でもないよ。
……ほほう、そうか……逆なのか。うん、なるほど。
しかし陛下が背伸びをなさって、閣下の唇を吸っていらっしゃ――。
気持ちはわかる。泣くな、泣くなって。飲め飲め。奢るから。
 

50 名前:砂色さんと琥珀色さん(2/3):2006/11/15(水) 19:25:28 ID:bsolztqY0
どこまで話したっけ。そうそう。
余程夢中だったのだろうな、扉を開けるその時まで確り抱擁なさっていたし。
お二人とも息を弾ませて、吾々が来なければ帝国一、二の名将同士の一戦が――。

――あれ? お前おれに何かしたか? 記憶が飛んでいるんだが。
さっきまで飲んでたワインのボトルはどこに行ったんだ?
しかも自分がアルコール臭い……飲み過ぎたかな。主人、水を。こいつには酒。
いやはや眼福だったよ。しばらく退屈せずにすみそうだ。
あまりにも初々しいご様子で笑いそうになった。おれもあんなだったのかなあ。
あのカイザーが狐に抓まれた様なお顔で、K閣下は赤毛に負けず劣らずの顔色で。
一瞬で我を取り戻されたのは流石だね。閣下のあんな声は初めて聞いたよ。
『私の一方的な過ちです。提督方の識見に期待します』
って……わかってはいたが、あの人は嘘が下手だな。手を繋いだまま言われてもな。
その後? 知らん。茫然自失のB提督を一緒に引き摺って退出しただろう。
それにしても何かと気苦労が多そうだな、親衛隊長殿は。いつもああなのか?
あー、怒るな怒るな。同期の誼で少し教えて貰いたいだけさ。
それにこれは単なる好奇心ではなくて、臣下として陛下の風評を慮っての事だ。
軍務尚書ではないが、カイザーのご寵愛を賜る者と宰相が同一人物では好ましくない。
理屈はわかるだろう? だから協力しろ。悪いようにはしないから。
ほら、もう一杯。ここまで来たらもう一つ良いか?
陛下は週末毎に、閣下を伴って姉君の所に行かれるじゃないか。
あの噂の真偽をここではっきりさせておきたいんだ。
宰相閣下と公大妃殿下が、想いを寄せ合っていらっしゃるという噂だ。
それが真実だとすれば、つまり……姉弟d――。

 

51 名前:砂色さんと琥珀色さん(3/3):2006/11/15(水) 19:26:12 ID:bsolztqY0
 
待て! 待て待て待て待て! 悪かった、おれが悪かった!!
だからブラスターを下ろせ。な? 落ち着け。落ち着いて話し合おう。
私だって陛下と殿下を尊敬申し上げているし、閣下の事も敬愛している。
冗談にしても度が過ぎていた。どうも妙に浮かれているみたいなんだ。
あのお三方が睦まじいと安心するよ。つい娯楽の種にしてしまうくらいに。
ははは、憲兵総監辺りの指示で拘禁されるかもな。記憶を抹消されたりとか。
それともこういう事は社会秩序維持局の管轄なのか。いっそ軍務尚書か?
笑い事じゃない? まあまあ、大丈夫だって。
噂を振り撒くでもなし、おれとお前でこうして話すぶんには問題ないだろう。

 【数日後】

ああ、皆さん遅かったですね。
B提督? 体調がすぐれぬそうですが……鬼の攪乱というやつでしょうか。
ところでこんな噂をご存知ですか? B提督ご不調の原因です。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

52 名前:砂色さんと琥珀色さん 訂正:2006/11/15(水) 19:33:08 ID:bsolztqY0
×公大妃
○大公妃

どうりで変換されないわけだ…原作再読の旅に出てきます。

53 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 00:04:29 ID:EhQuSBa00
>>21-28
。・゚・(ノд`)・゚・。
でも書いてくれてdです

54 名前:後輩×先輩・1:2006/11/16(木) 06:19:19 ID:8RQVNx2R0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジ。 急にチビ攻め+三角関係萌えが来たので・・・

「話があるんだけど、食事終わったら俺の部屋来ないか?」
「あ、はい。」
「待ってるよ。」
「早めに伺います。」
「おう、楽しみ。」
夕食の席でこんなやりとりを自然に交わせるようになったのは、いつからだろうか。

彼は同僚になって日も浅い頃から、俺にはよく付き合ってくれていた。180以上ある俺と並べば頭1つくらい違う背丈。
感情の動きをあまり表さない、憂いを含んだようにも見える眼差しが印象的な童顔。仕事は堅実で優秀なのに、
謙虚でおとなしい人柄。彼を自分の方に振り向かせようとする連中は多かったが、彼はとにかく引っ込み思案で、
あまり人と交わらなかった。だが彼は、俺が何かにつけ食事なんかに誘った時には、決して断らなかった。
妬ましそうな周りの視線には優越感をくすぐられたし、可愛い後輩を連れて歩くのは悪い気分ではなかったし・・・
何より真っ直ぐなその目で見上げてくる彼に慕われて、俺は嬉しかった。

「お前は入りたての頃、俺に憧れてるなんて言ってたな。」
「今でもそうです。」
「ははは、物好きだなあ。」
「そうですか?」
「いやだって、俺のどこに憧れるって言うんだ?」
「優しくて、明るくて、努力家で・・・こういう大人になりたいと思いました。」
「そんなに褒められると照れるなあ。」
「ほんとの事ですから。」
「うん、よし、お前は見る目あるよ。」
2人きりになった所で交わす、気軽でちょっと甘いやり取り。こんな時も、この子は本気だ。

55 名前::2006/11/16(木) 06:20:37 ID:8RQVNx2R0
彼と親しくなってしばらくして、俺は彼が本気で恋をしている事に気付いてしまった。問い詰めたら、彼はあまりためらう事もなく、
しかし切実そうな顔をして相手の名前を口にした。彼の「親友」という触れ込みの、同い年の同僚だった。
明るくて体格も顔も良く、男女問わず社内で一番人気のある奴だ。俺はもう、色んな意味でショックだった。男だったなんて・・・
つまり、俺にもチャンスはあったという事じゃないか。それにその「親友」に彼がそんな目を向けていたなんて、
全く気付かなかった。この子の事は俺が一番よく知っている、と自惚れていた自分が情けなく思われた。
そして最もショックだったのは、俺がこんなにショックを受けてあれこれ考えてしまって、挙げ句嫉妬してしまっている事だった。
どうやらまだ相手は彼の思いを知らないらしい、という事だけがただ1つの救いだった。

「なあ、あいつの見舞い、行ってるんだって?」
「はい。」
「そうか、どんな様子?落ち込んでなかったか?」
「それほどでもないと思います。」
「・・・みんな忙しい時期に安静にしてなくちゃならないなんて、相当辛いだろ?」
「はい、でも、今はしっかり治す事だけを考えてるって。」
「んー、あいつも大人になったもんだな。・・・お前のお陰だろうな。」
「確かに落ち着きましたけど」
「いやいや、お前が落ち着いてるから。合わせてるうちに成長したんだよ。妬けるね。」
後輩とその親友を見守る俺。今でも表面上はそれを保ててるんだから、不思議だ。

56 名前::2006/11/16(木) 06:21:45 ID:8RQVNx2R0
彼と自分自身の恋心に気が付いても、俺は身動きをとれなかった。彼の背中を押す事もできなかったし、
自分の思いをぶちまけてしまう事もできなかった。このまま彼の「親友」が俺たちの気持ちに気付かなければ、
すべては今まで通り、誰ともいい関係でいられるような気がした。しかし・・・知ってしまったからには、
やはり何かが違った。俺は「親友」の2人をずっと見守って、いや見張っていなければ気が済まなくなった。
2人を見ていて俺は、彼の思いはとうに叶っていると確信した。
切ない目をする彼に、それを伝えてやるべきだったんだろうけど、それはできなかった。
酒には強いこの後輩がほろ酔いで俺の胸に甘えてくるのも、トロンとした目で俺を見上げてくるのも、
この危ういバランスを保っていればこそだと思っていたからだ。

「隣においで。」
「は・・・い。」
「まただいぶ、髪が伸びたな。この髪、好きなんだよな。」
「今度切ろうと」
「だめだめ、長いままの方が触り心地いいんだよ。それに可愛いおメンにあってる。」
「可愛いなんて・・・もうとっくに三十路ですよ。」
「幾つになってもお前は可愛いんだからしょうがない。いつまでたっても日焼けしないし、顔のパーツは変わらないからな。
・・・フフ、背も変わってないしな。」
「どれも変えるのは難しいですね。」
「変わんなくていいぞ。ずっと俺が可愛がってやるから。」
そう、俺はいつでもこの子をこうやって可愛がっている。何があったとしても。

57 名前::2006/11/16(木) 06:22:22 ID:8RQVNx2R0
彼はある日シラフで、俺の腕の中で無邪気な顔をして、先輩を抱いてもいいですかと言った。
想像もつかなかった申し出にあっさり俺が応じてしまったのは何故なのか、今でもはっきりとは分からない。
濡れたような瞳に引き結ばれた唇、引き締まった顎に白い頬・・・見慣れているとはいえ、
どうにもそういう気分になるような顔ではあった。片恋のためか愁いを感じさせるような、低目の声にほだされた、とも言える。
ずっと可愛がってきて、密かに手中にしたいと思っていた後輩に今、どういう形にせよ自分が求められているというのが
嬉しかったのかもしれない。いつも真面目で潔癖に見える彼が見せた熱い眼差しに、押し切られた所もあると思う。
そして彼の「親友」殿をさしおいて一歩踏み出せるならば・・・という考えも、なかったとは言えないだろう。

「先輩。」
「分かってるって。慰めて欲しいんだろ?ん?」
「慰めてなんていうつもりじゃないです。」
「あ、すまん。・・・こんな時にもマジメで可愛いな、って言ったら怒るか?」
「いえ。」
「ん・・・そんなに抱きつくなよ。俺は逃げたり、しないから。な?」
「先輩・・・」
「ちょっと、ちょっと待て。電気消そうぜ、いい子だから。」
慰めてやってるわけじゃないのはよく分かってる。こんな風に懐かれるのが、俺の望みでもあるんだ。

最初は、後先考えていなかったが、漠然とこれきりだろうと思っていた。しかし結論から言うと、俺は彼に溺れた。
彼は上手だったし、何だか倒錯的な快感が忘れられなかった。厚みはあるが白くて小さい手とか、
いつもきつく結ばれている唇とかが俺の身体の上を這う。先輩先輩と俺に小さな身体を寄せてきながら、
俺の理性を少しずつ確実に崩していく。そこまで来ればもうされるがまま、後は彼の動きに酔っていればよい・・・。
彼もまた、俺が誘えば大抵は断らなかったし、いざ2人になればすべてに一所懸命な所を見せてくれた。
俺は彼にとって都合のいい存在になってるんじゃないだろうか、とは一度ならず思った。それでも構わないと今は言える。
彼は俺の前では俺に本気だし、俺は彼に・・・酔っていたいのだから。

58 名前:5(終):2006/11/16(木) 06:23:26 ID:8RQVNx2R0
「早く起きて下さいよ。」
「もうちょっとゆっくりしよう・・・胸板厚いね。着やせするタイプだ。」
「重たいです。」
「そりゃお前よりはな。あいつも多分、これくらいの重さだぞ。いや、もっと重いかも。」
「・・・はい。」
「だからな、これくらいで重いなんて言っちゃ駄目だ。もうちょっとこうさせてくれよ。」
「もう起きましょうよ。」
「いい胸だなあ、うん。何かこう、すべすべで気持ちいいし。あいつに渡したくないね。」
「・・・先輩。」
「仕方ないな、今日はこの辺で勘弁しておいてやる。また来いよ。」
「はい。」
常と変わらない表情で服を身につける彼は、朝の光の中、まぶしいくらいにきれいだ。

彼に出会ってもう、10年になる。最近の彼は、焦がれ続けた相手に友人としてではなく、近づこうとしている。
怪我をした「親友」の見舞いに足繁く通い、そういう時は彼の魅力を隠さない服装もするようになった。事情を知っている俺は、
彼を影から応援する事にした。彼の思いを遂げさせてやりたいからとか、彼の喜ぶ顔を見たいからとかだけではない。
そんな幸せな彼を、ずっと俺の傍にいさせたいのだ。彼もまた、俺の思いには気付いているはずで、
その上で俺のさりげない助言を受け取っている。お互い覚悟を決めて恋に臨んでいるという点では、同志になった気分。
そして長く続けてきた関係が、精神的な支えになっている。
彼の手を、俺ははなさない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
突発萌えそのまま投下ですみません。スレ汚し失礼

59 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 09:03:10 ID:/dO3Tx/e0
禿げ上がるほど萌えたGJ!

60 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 21:47:25 ID:EDE3IYX6O
>52
姉弟dってw
すげーわらかしてもらった!
姐さんさいこーだ!大好きだー!


61 名前:風と木の名無しさん:2006/11/17(金) 00:53:10 ID:r5wI8WpF0
>>54
GJ!禿萌えた…

62 名前:愛某鑑札官上司部下 1:2006/11/17(金) 23:53:09 ID:h4VUNqAp0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


 新入りの失態と上層部の横槍が、立て続けにやって来た。かなり苛ついていたことは確かだ。
 そこへ皆戸が、任務の進行が思わしくない、と馬鹿正直に申告してきたものだから …いや、言い訳はよそう。
つまり私は今日の昼間、何の罪も無い部下に、八つ当たりをしてしまったのだ。

 この世でただ一人の、己の心を委ねることの出来る相手。だからつい、気安くなる。正直言って甘えすぎた。
反省している。

「私が悪かった。 …頼むから、眼鏡を返してくれないか?」

 裸眼でもある程度は見えている。物があるかないかの区別ぐらいはつくし、漫画のように壁に激突したりは
しない。せいぜい、離れたところにある文字や人の顔が解らなくなる位だ。
 そう、顔が、その表情が、全く判らない。
 今は、それがとても困る。

『キスする時、邪魔なんですよ。』

 逢瀬のたびに皆戸がそう言っていたのを思い出して、今夜は、彼に触れる前に眼鏡を外した。
 預かってくれるというから、手渡した。
 そのまま、返してもらえない。


63 名前:愛某鑑札官上司部下 2:2006/11/17(金) 23:53:56 ID:h4VUNqAp0
 その状態が気に入ったから、という理由ならば構わないのだが。
 わからないから。
 舌先でころがすと震える胸が、指先で弄るとヒクリと跳ねるその体が、悦楽に反応しているのか、それとも
嫌悪に身じろいでいるのか。
 昼間の仕打ちをまだ怒っているのか、いないのか。
 相手の表情が見えないと、その判断がつかない。
 …困った。

 情を交わすからには、相手に悦んでもらえなければ意味が無い。
 想い人が嫌がっていることにも気付かないまま無理矢理強いた行為に、何の喜びが見出せようか?

 自分は口の達者な人間だと、ずっと思っていた。
 だがそれは、仕事の上では、という限定条件が付くことに、彼と付き合うようになってから気がついた。

 あなたの機嫌を損ねたままでは悲しい。
 大事にしたい。喜ぶ顔を見たい。
 あなたを愛しているから。

 要約すればたったこれだけのことを、伝えられないでいる。
 今に限ったことではなく、いつもそうだ。心を伝える術を、私は知らない。心を隠し通す方法ならば、いくらでも
知っているけれど。

「よく見えないんだ。」

 ようやっと、それだけを言う。
 不十分なのは解っているのだが、ならば一体何を付け加えればいいのか、わからない。
 
 皆戸。
 お前は今、何を考えている?


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

64 名前:風と木の名無しさん:2006/11/18(土) 00:12:45 ID:e9Fmrk9Q0
>>62
GJ!!
ラムネたんは攻めでもかわいいな。

65 名前:風と木の名無しさん:2006/11/18(土) 12:26:23 ID:2wj6RkR70
>62-63
GJ!
真面目に困って、しかも自分の気持ちを伝えられないラムネにテラモエス
堅物攻めが好物なので、よければまた投下お願いします!
部下の気持ちも気になってます。

66 名前:風と木の名無しさん:2006/11/18(土) 19:45:37 ID:l0ebGAZu0
>>62
好きドラマのSSキター!!
私生活では不器用な上司に萌えました

67 名前:無限大 赤+紫(1/3):2006/11/20(月) 04:50:52 ID:+jAFfSOd0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ注意。
無限大の8人組からメインボーカルとツッコミ隊長。


「すきやねん、雛」
ふざけてなら言える。
コントや歌の中でならいくらでも誰にでも言える。
ただ一人、本当の想いを知って欲しいと思う人にさえ冗談で言えてしまう。
ただ一人、俺の欲しいものを独占しているアイツにさえ言えてしまう。
「俺も好きやで、昴」
これは惰性かごまかしか、自虐か一片の希望か。
柔らかに微笑むこの笑顔が、今一瞬でも俺だけのものであればいい。
たとえ1時間後に、この笑みが他の誰かに向けられたとしても、
たとえ2時間後に、この手が他の誰かの手に握られていたとしても、
他の誰かのものになっても、誰かのものであっても。
「寒いなー。ちょぉ、その手袋貸せや」
些細な理由をつけて握った手は、布地越しでも温かくてぎゅっと握りしめる。
ワガママを言って甘えてみせるのは、お前が喜ぶから。
お前がそういう俺を望んでるから、俺はお前の望む俺になる。
「アホ、俺かて寒いわ」
他のやつやったら振り払う手も、お前は振り払わずに握り返してくれる。
俺の手が冷えやすいのも知ってるから、暖めようとしてくれる。
お前は優しい。優しすぎて、時々もの悲しいほどに。
「昴」
「んー?」

68 名前:無限大 赤+紫(2/3):2006/11/20(月) 04:52:31 ID:+jAFfSOd0
「……ごめんな」
何に謝ったのか、俺には分からない。
頭の中で浮かび上がるいくつかの可能性に蓋をして、俺は自分の気持ちに気づかないふりをする。
お前の気遣いに、お前の優しさに、お前の甘さにあぐらをかくフリをする。
「タラタラ歩いとると雪だるまんなるぞ、雛」
道路でぐしゃぐしゃになった雪の残骸を踏みつけて蹴りつける。


めちゃくちゃにしてやりたいんだ。
お前を。
そして俺のこんな気持ちを、蹴りつけて泥にまみれてぐしゃぐしゃにしてしまいたい。
お前を愛してるのに、お前のことが大事なのに、俺の気持ちはお前に傷しか付けない。
誰よりも幸せを願ってるのに、俺の存在は誰よりもその幸せを壊してしまう。
悲しい顔は見たくない。いつも笑っていて欲しい。
そう望めば望むほど、俺の望みは現実から遠ざかるような気がするんだ。
きっとアイツを憎んでしまえばもっと楽だった。
この思いを自覚する前、いがみ合っていたあの日の二人に戻れれば其れが正しい形なのだ。
それを思えば思うだけ、俺が独りであることを思い知らされる。
俺は、一人。
俺の思いは、独りきり。

だけど。

69 名前:無限大 赤+紫(3/3):2006/11/20(月) 04:54:13 ID:+jAFfSOd0
だけど、人を憎むには俺たちは長く一緒にいすぎた。
憎めない。けれど雛と同じように、他のメンバーと同じようには愛せない。
雛は雛だから愛せるのだし、アイツはアイツだから信頼しているんだ。
変えられない、変わらない関係と距離。
きっと、俺の思いだけが邪魔なのだ。
きっと、きっと、雛は……俺は……


「謝るくらいなら手袋よこせ」
「アホか!コラ、ちょ、はなせ昴っ!」
「お前が放したらええねん!お前が手袋渡したらええんじゃ!」
「なんやねん、そのジャイアニズムは!もぉー!伸びるから放せやー!」
「俺に暖房費かけんのと、これ渡して勘弁してもらうのとどっちがええねん!?
 あ?どっちがええねん、コラ」
「わかった!わかった渡すから放せぇよ!」
「やった!さっさと渡したらええんや、往生際悪いやっちゃ」
「手袋ぐらい自分で持ってこい!」


奪ってしまおうと思えば奪えてしまうこの距離。
俺も雛もそれを分かっていて、だから俺たちは、この距離をもどかしく大切に思う。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
気付かずage続けてしまったorz
スマソ、逝ってくる。

70 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 05:46:58 ID:kAnSDCoG0
>>69 GJ!表に出さない心が微妙でイイ!

71 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 14:27:08 ID:uUWDrhhiO
何がナマモノ注意だよ市ね
早速本スレに貼られてんじゃねーか市ね

72 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 21:07:08 ID:E5+nzUEe0
イジョウ、ジサクジエンデシタ!
は70の最後に付けた方がよくね?w

73 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:13:16 ID:UH3740cs0
ナマモノって禁止じゃないよね?
半生モノ投下しようかと思ってたんだが
伏字にしたほうがいいのかな

前はそうしてたんだが、今回はいいかなーと思ってたんだけど
上の流れ見てちょっと気になった


74 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:18:57 ID:MWP8QCfV0
>>73
大丈夫でしょ。
諌めてる人間がこんな口調で話すわけないじゃん。普通に。

75 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:35:27 ID:cKqpzL3CO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
ジサクジエンガ オオクリシマース
孤島医者もの。該当スレからの誘導があったのでこちらに投下。

その夜の診療所は仄かに明るい灯が点っていた。きっとその明るさの拠点であろう診察室の電気スタンドの前に、先生は腰掛けて甘い吐息を漏らしていた。
椅子はキシキシと音を立て、その音と合わさるように少々激しい呼吸が響く。
彼の腰は椅子から半ばずれ落ち、ズボンのファスナーやホックはだらしなく開かれ、そこから淡い桃色のモノが覗き見える。
彼は己の右手をソレにあてがい、激しく上下に揺らしていた。時にさわさわと触れるか触れないかの距離で指を踊らせ、何かを思い出すかのような手つきで自慰行為に耽る。
左手は全開となったYシャツの胸部分を弄り、小さな突起を指で転がすかのようにしては声を上げていた。
「…ッはぁん…足りない…です…いつものように激しく……欲し…ッあ」

[][]PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)
チョット チュウダーン!

76 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:39:36 ID:cKqpzL3CO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
ジサクジエンガ オオクリシマース

彼が誰に対してなのか、欲を求める声を上げたと同時に、少女がひとり、診察室のドアを彼の名を呼びつつ開け、そして奥に進んでから彼の為す行為に気がつき、はっ、と息を呑み歩みを止めた。
慌てて隠そうとした彼はモノを仕舞おうとしたのだが間に合わず、彼女と目が合ったまま固まってしまった。
「せん…せ…?」
「…ミナタソ」
彼女の名を呼ぶので精一杯だったのか、先生はそのまま口をつぐんでしまった
「あの、その…自慰ですか…?」
直球な言葉を前に、自然と彼の目には涙が浮かんできた。
それに気がついたミナは慌ててフォローをしようと口を開いた。
「気にしないで下さい!自慰は自然現象ですし…私もたまにしますし」
一旦話を途切れさせ、恥ずかしそうに俯いた彼女はこう続けた。
「あのっ、1人でするのは心細いでしょう?もしよかったら」
「ミナタソ…?」
この先の言葉を想像した先生は焦ったのかミナの名前を読んだ。しかし彼女は口をつぐんだ後、こう続けた。
「もしよかったら…その……ハラタソに…せめて電話を繋げましょうか……?」
先生は目を見開き、もう一度彼女の名前を呼んだ。

[][]PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)
チョット チュウダーン!

77 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:43:24 ID:cKqpzL3CO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
ジサクジエンガ オオクリシマース

何故、何故彼女が知っている?自分とハラタソとの関係は二人だけの秘密であり、誰にも口外していない。
それなのに…何故…
「なんで………何故…ハラタソを…」
だって、知る由も無いのだ。
二人の密事は、二人きりでの密事であり、周りに人が居るはずもないのだ。
「何故って…?」
ミナは間を置いて続けた。
「診察室の前を通りかかった時、先生がハラタソの名前を呼ぶのを幾度も聞いたから…自慰をしているなんて思わなかったですけど…
それにしても、あんなに切なく名前を呼ぶ人には初めて会いました。」


無意識に名前を呼んでいた自分に、快楽に彼の名前を使っていた自らへの嫌悪や、求めてはいけないはずなのに求めている虚しさや、何よりも会えない切なさやらが込み上げ、先生は更に涙を溢れさせ、小さな嗚咽を上げながら泣き出してしまった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )
イジョウ、ジサクジエンデシタ!

78 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:45:20 ID:YnlfhoPr0
>>75-77
好きドラマ!!
神ー!!!GJ!!!

79 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:48:14 ID:oF24hHOhO
wktk

80 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:54:20 ID:1BmRUcqf0
>>75
GJ!禿萌えた
しかしミナタンさりげなくすごいこと言ってるなw

81 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:55:48 ID:oF24hHOhO
GJ

82 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 22:56:19 ID:jxwRwtEnO
>75
GJ!好きドラマの作品が読めてうれしい。
ごちでした。

83 名前:風と木の名無しさん:2006/11/20(月) 23:03:29 ID:QHniA5Mf0
>>75
GJ!
待ってました。

84 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 14:56:55 ID:Y7KZCnb80
ミナタンのフォローバロスwww

85 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 16:57:24 ID:VmZFaqII0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 某スレに投下されていた作品の二次創作だモナ…
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 燃え滾るパトスに自分を抑え切れませんでした
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 某投下者さんゴメンナサイゴメンナサイ
 | |                | |     ピッ   (´∀`; )(・∀・;)(゚Д゚;) 阿呆の戯言と思って見逃してけろ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |


86 名前:妄想 1/4:2006/11/21(火) 16:57:55 ID:VmZFaqII0
「藤岡さん」

十分に一度、僕はこうして彼の名を呼ぶ。
大した用事がなくても。何も話す事がなくても。
すると彼は億劫げに低い声を出し、振り返らないままひらひらと手を振ってみせる。
十分に一度の確認では気が済まない日は、"彼は間違いなくここにいる"という
実感を得るために一時間に一度程度、彼に触れる。
指先で肩や髪に触れるだけの時も、彼の身体を腕の中に抱き締める事もある。
すると彼は決まって呆れたような、困ったようなため息をつき、僕の指先、
あるいは僕の腕をするすると撫でさすってくれる。
時には僕を安心させるような言葉をくれる。
『大丈夫』だとか、『どこにも行かないから』だとかの言葉を囁く彼の心地良い声を
耳にして、僕はようやく生きた心地がするのだ。
こんな僕を快く思ってくれているはずはなく、むしろ疎ましがっているというのが
彼の本音だろう。
かつてさんざんに言われた"うざったい、しつこい、空気を読め"という言葉が
今更ながら脳裏によみがえってきたりして、僕はますます気分が落ち込むのだ。
我ながらつくづくそう思う。
それでも、僕の本質は変わらない。変えられないのだ。
こんな自分が嫌になるけれど、ある種の恐怖が常に僕を責め苛む。
まるで遺伝子レベルで細胞に組み込まれた麻薬みたいに、僕を恐怖でもって苦しめるのだ。
手を伸ばせば触れられる場所に彼がいても、僕は常に"孤独"の恐怖に怯えていた。

「藤岡さん」
再び彼の名を呼び、今度は我が手で触れにいく。
実感を得るため。我が身を蝕む恐怖を少しでも軽減するため。
僕に背を向けたまま何かの文庫本を読み耽っている彼の髪にそっと触れると、
彼の手が心得たように僕の指先に触れた。
「浦江」
そして悪戯っ子を窘めるような茶目っ気のある声音で、わざと明るく僕の名前を呼んでみせる。


87 名前:妄想 2/4:2006/11/21(火) 16:58:52 ID:VmZFaqII0
それからぱっと素早い動きで振り返ると、可愛らしい顔に子供のような表情を浮かべて
僕のわき腹を乱暴にくすぐり始める。
機嫌がいい時、あるいはあまりにも暇な時、彼はこうして僕を構った。
根が陽気で明るい人だから、機嫌がいい時の彼はまるで子供のようにはしゃぎ、
大きな声で笑いながら僕がついぞ経験してこなかったような子供じみた悪戯を仕掛けてくる。
たまらず身悶えながら、僕はあまりにも場違いな感情を胸に覚えていた。
歓喜、狂喜、愉悦、感動……
とにかく僕の体内で幸福や喜びの気持ちが弾け、僕は狂ったように笑いながら彼を胸に抱き締めた。
彼の引き締まったわき腹をぎこちない手付きでくすぐりながら、僕はいつも泣き出しそうになる。

彼の匂い。彼の体温。彼の笑い声。柔らかな髪が僕の顎をくすぐる。
既に"執着"や"孤独"といった類の狂気に蝕まれている僕を、今度は"幸福"という
強い感情が蝕み始める。僕は狂ったように笑い、狂ったように彼を抱き締めたままくるくる回った。
すると彼はあわてた様子で僕の肩にしがみつき、『こら、落ち着け』と子供を叱る
親のような口調で僕を窘める。
僕はうわ言のような調子で、「大好き」と彼の耳もとに囁き続けた。
狂人の繰り言のように。魔女の呪詛のように。
彼のあたたかな手が僕の髪を撫で……、彼の柔らかな唇が僕の鼻先に口付けた。
僕はあわてて彼の唇を追う。
とらえた唇を貪り、己の舌でもって彼の舌を絡め取る。
こぼれる唾液はどちらのものだろうか、どちらにせよ、僕は一滴も逃さぬとばかり
彼の唇をすする。彼の頬は上気し、痛めていない方の足に体重を預けバランスを取っている。
それに気づいた僕は彼の腰を支え、彼の右足に負担をかけないよう注意を払った。

貪るような一方的な口付けを一旦終え、小休止を挟む。
名残惜しい心地で唇を離すと、彼はふうっと大儀そうに息をついた。


88 名前:妄想 3/4:2006/11/21(火) 16:59:23 ID:VmZFaqII0
「痛みますか?」
"どこ"が、と付け加えないまでも、彼は心得ている。
「いや。季節の変わり目に少し痛む程度だよ」
嘘だ。
今でも彼は時折鎮痛剤を飲んでいる。右足を睨みながら苦い顔をしている彼を目にした。
ふいに右足に体重をかけてしまって、短く悲鳴を上げる彼も。

鬱状態に移行し始めた僕を察したのか、彼がそれを阻止した。
彼の唇が僕のそれをとらえる。僕は口付けを再開した。

いくら触れても、いくら抱いても、満たされない。
むしろ恐怖や不安は増すばかりだ。
全身が彼を渇望している。全身の細胞という細胞が燃え滾り、彼を欲しているのだ。
全身が酸素を求めて痙攣するように、僕の身体は彼を求めて痙攣している。

「……浦江、大丈夫だから。大丈夫だよ」
彼のあたたかな手が僕の頬や髪を撫で、優しく穏やかな声が僕の耳へ吹き込まれる。
それにすら恐怖を覚えて、僕はますます力を込めて彼を抱き締めた。
幸福であればあるほど失うのが怖い。
僕の正気は紙一重だ。あるいは既にもう―――
「触れてもいいか?」
静かで落ち着いた声が控えめに尋ね、僕は彼の髪に頬を押し付けたまま何度も頷いた。
彼の手がそっと僕の背を撫で、僕のシャツをまくりあげる。
露出した肌に彼のあたたかな指先が触れ、僕は興奮に喘ぎながらもたつく手付きで彼の衣服を剥いでいく。
むき出しの肌に感じる彼の体温が狂おしいほど愛おしい。

痛めた彼の右足が僕の足に絡む。
彼の唇が僕の唇を食む。あたたかな舌が僕を舐める。あたたかな腕が僕の首を抱き締める。
「抱いても……?抱いてもいいですか……?」
せわしなく彼の後ろを解しながら紡いだ余裕のない僕の懇願を、彼は柔和な微笑みでもって了承した。


89 名前:妄想 4/4:2006/11/21(火) 17:00:27 ID:VmZFaqII0
むずむずとした疼痒感が額をくすぐっている。
虫でも這っているのかとぴしゃりとやった手のひらは、虫とは全く違うものの感触を伝えた。
同時に、顔のすぐそばで漏れる耳心地の良い笑い声。
うっすらと目を開けた先で、案の定彼が穏やかな顔で笑っていた。
僕の平手を受けても、彼の指先は相変わらず僕の前髪をかきあげている。
自然と浮かぶ笑みに口元が綻ぶのを感じながら彼を見つめ返すと、彼の愛らしい瞳がゆっくりと瞬きした。
あまりにも穏やかで、あまりにも幸福な瞬間を、それでも僕は恐怖と共に過ごした。
恐らく生涯にわたって味わうであろう恐怖に、相も変わらず怯えながら。

「好きです」
「知ってる」
どちらも囁き声というよりは吐息の一種のようだった。
それでも、僕にはそれでじゅうぶん事足りる。1センチと離れていない今の距離なら。
いつまでも僕の髪を撫でている彼の手をつかまえ、その指先に口付けた。
この指が若さを失うまで―――しみの目立つ皴だらけの指が温度を失うその時まで、
僕は彼の隣に居たい。彼をこの距離から見つめていたい。
手を伸ばせば触れられる場所に居たい―――けれど、彼はそれを望んでいないだろう。
そう遠くないいつか、彼の手は僕の手をすり抜け、次第に離れていくだろう。
そして、いずれは手を伸ばしても触れられなくなっていく。
「好きです」
「知ってるよ」
せめてそれまでは、幸福だけを感じていたい。彼の優しさに包まれて、
眠たくなるような安心感に包まれていたい。
臆病な僕はそれすらも叶わない。
孤独に怯え、失う事を恐れ、彼の優しさに溺れながら、僕はいまも恐怖に怯えている。
「好きです」
怖くて怖くてたまらない。
「……"俺もだ"、っていう答えを期待してるのか?浦江」
彼の鼻から吐き出された呆れにも似た吹き出し笑いに額をくすぐられて、僕は曖昧な笑みを浮かべた。


90 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 17:03:25 ID:VmZFaqII0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  以上です…こうだったら良かったなって妄想
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| …イチャラブを書きたかったはずが… 
 | |                | |             \
 | | |> STOP.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 作品ノ雰囲気ニ引ッ張ラレテ
 | |                | |     ピッ   (´∀`; )(・∀・; )(゚Д゚;)何ダカ重クナッチャッタ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |



91 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 19:49:26 ID:cT4E8brh0
おや、某所のですね。GJ!切ない。

92 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 20:31:32 ID:rgVFp++EO
元ネタわからんけど萌えたよ。GJ!
攻めのわんこっぷりと受けの余裕ぶりが萌えす

93 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 20:41:19 ID:m/c1IY2fO
>85
ばきゃーろう。
オイラの涙腺壊す気ですか!つД`)

これは本当に『孤島』に辿り着いた2人のパラレルかな。
GJ!

94 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 22:27:02 ID:QMwAyugv0
元ネタキボーンヌ。
本当は攻が受を殺すか何かする話なのか?

95 名前:風と木の名無しさん:2006/11/21(火) 23:34:22 ID:FAv4GadrO
>>94
YES。拉致監禁鬼畜プレイ。
↑は攻が26の誕生日を五日後に控えた夜に見た夢と、勝手に妄想させてもらった…。

96 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 00:31:53 ID:a+q+VaMY0
いや、元ネタって言うか元スレキボーンヌ・・・。

97 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 01:00:33 ID:XZ+X1TbE0
鬼畜スレかそのまとめからじゃない?

98 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 01:48:31 ID:qDc2qEAE0
ヒント出てんだから少しは調べろよ

99 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 02:02:43 ID:L7GuPtGb0
>>98
ヒントに見えねぇんじゃないの?w
小説読んでたけどわからんかったな、あの人らか。


100 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 10:50:52 ID:aC5xSLYc0
藤岡さんカッコイイな。
カッコイイ受け&可愛い攻めが好きなので萌えた。
同じく元ネタわからんが、元は悲劇なのかな

101 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 13:40:41 ID:A7zLiLEBO
鬼畜スレの孤島


102 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 21:04:57 ID:QEhLnjni0
パラレルとはいえ、ここで見れたおかげで
鬼畜スレの息詰まる空気を実感した

103 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 22:38:30 ID:UvXEAfoP0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某ナマスレより誘導されてきました。
話題が昇ったのは数日前ですが若干需要があったようなので投下。
仕事の悩みで落ち込みがちの後輩を励まそうと飲みにさそった先輩。
先輩(ニイサン)大好き!な後輩は終電逃したので先輩の家に泊めてもらう事に。
どっちもわんこ設定。

104 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 22:42:37 ID:UvXEAfoP0
「あいかわらずキレイですね。兄さんの部屋。俺んちなんて、急に人部屋にあげられないですもん。オナった処理のティッシュとかいっぱい転がってるから。」

「・・・・。オマエの言う事はそんなんばっかだなぁ?」

酔い覚ましの水を飲んでいた兄さんは、一瞬本気で呆れたカオをして、グラスについだオレのぶんを手渡してくれながら、「しょうがねぇ奴だなあ」と笑う。
へへへ。と笑い返したオレに

「そんなに言うんなら、見せてみろよ!」
「うわ、何すんですか!」
兄さんはオレのジーンズのジッパーをチャっと下ろし、手をつっこんできた。
酒のせいで熱くなってるその指が、マジでじかにオレのをぎゅっと掴んだ。
さすがにちょっと慌てたけど、こっちも酔ってっから、あんま恥ずかしくねぇの。
お互いゲラゲラ笑ってしまう。
「はははっ!ふーん細居くん、さすがに若いねぇ。」
兄さんはニヤニヤしながらチャックの間からソコだけむき出しにされたオレのを確認して笑う。
そのままひやかす様にゴシゴシと刺激してくる。
「っっオマエなぁ!俺に扱かれて勃ててんじゃねぇよw。」

「兄さんが、ヘンな事するからじゃないっすか!」
面白がって手を止めない兄さんにオレはつかみかかる。
「・・・・そんなら!兄さんのだって出してくださいよ!」
「アホか、ヤだよww!」
涙が出るほど笑い転げながら抵抗する兄さんに後ろから抱きつき、ベルトに手をかける。
オレより小柄な兄さんはそのまま潰されて、ベッドの上に転がりこんだ。


[][]PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)
トリアエズ、チュウダーン!

・・・続けて大丈夫なのか;。

105 名前:風と木の名無しさん:2006/11/22(水) 23:11:31 ID:a+q+VaMY0
>97>99>101
d。鬼畜スレは現行だけしか見なかったのでわからんかった。
一応電波スレとか死にネタスレも見たんだが。

106 名前:風と木の名無しさん:2006/11/23(木) 01:02:39 ID:/sNfyghs0
>105
まとめサイトあるよ。<鬼畜

107 名前:風と木の名無しさん:2006/11/23(木) 01:15:39 ID:Yqx9Fi9n0
>106
うむ。見れた。アリガトン。

108 名前:風と木の名無しさん:2006/11/23(木) 03:53:35 ID:DHOMoOwT0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  『車達』稲妻×医者
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  深夜に何ムキになってんだ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ギャオ、ツナガッタ、ヤター!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

109 名前:『車達』稲妻×医者1:2006/11/23(木) 03:55:16 ID:DHOMoOwT0
 巻き戻されるレーサー達。再生ボタンと共に、リスタート。
「だからね、第四ターンの後は一気に飛ばして」
 リモコンが脇から奪われる。再び画面の中のレーサー達が真顔のままでバックする。
「そんなに飛ばしてもタイヤが持たん。いくらグイ├゛のタイヤ交換が速くてもピット
インがかさむなら大した距離は稼げん」
 再スタート。今度はコマ送りで。
「この35番を良く見てろ。空気抵抗を利用して、路面に吸い付くように走っているだろう。
スピードを落としてもいい、路面に全身を貼り付ける気で行け」
ドック・八ドソンの冷静かつ理詰めなアドバイスをライトニング・MACィーンはふくれ顔で受ける。
「えー?それじゃあいつパフォーマンスするのさ?こう、ちらっと余裕見せてカチャ――」
「アピールはレースの後にしろ。大体坊や、お前は観客を気にしすぎなんだ」
「だってドック!お客さんは僕を見に来てるんだよ?」
「……。100m譲ってやって向こうがレーサーを見に来ているとしても、レーシングカーはお前一台じゃない」
「でもそうなの!」
八ドソンは軽くフレームを沈めて息をつき、隣のルーキーの繰り言に付き合うのをすっぱりやめた。
それから無言で目の前のテレビ画面とリモコン操作に集中し始める。

110 名前:『車達』稲妻×医者2:2006/11/23(木) 03:55:49 ID:DHOMoOwT0
 一週間後に迫るレースの舞台は、八ドソン・ホーネットの世代から存在する歴史あるサーキットだ。
 デビューしてまだ間もないMACィーンはここを走る機会に恵まれず、ここ数日間は過去の記録映像をあさって
研究を積み重ねていた。八ドソンも口頭のみでは伝えづらい諸々を伝授すべく、その隣に陣取っている。
「本当、あのジンクスが出来たのも分かるよ。これだけ記録映像見たら、歴代チャンプの走りが嫌でも頭に入るもの」
MACィーンがストローを咥えてぼやく。カップの中のオイルはかなり温くなったようだった。


 このレースには、とあるジンクスがある。
『このサーキットの周回タイムを更新すればシーズンチャンプの座につけるのはもちろんのこと、
後のレース史上に名を残す名レーサーになれる』
現在の周回最速タイム保持車は、既に現役を退いたキングだ。
 それを打ち破らんと意気込むMACィーンに対し、自身もまたジンクスを体現しているはずの
八ドソンはしらけたものだ。八ドソンの代にはジンクスが確立していなかったのもあるし、
八ドソン本人がその手の話を信じない主義だからなのもある。
(その癖火の玉やトラックおばけの話は普通に言ったりするし……まったく、ドックは
僕に名レーサーになってもらいたくないの?)
 MACィーンは溜め息の代わりにストローに息を吹き込んでカップの中身をぽこここ、と泡立たせた。

111 名前:『車達』稲妻×医者3:2006/11/23(木) 03:56:49 ID:DHOMoOwT0
「行儀が悪いぞ」
八ドソンが画面を見つめたままたしなめる。その視線は動かず、心はそっちへかかりきりのようだ。
 MACィーンもそれを悟って、あぶく遊びをすぐにはやめなかった。しかしそう息は続かず、
わざわざ息継ぎしてまでやる事でもない。
 ちらりと、傍らの八ドソンを見遣る。自分のそれとは微妙に色合いの違うブルーアイズ。例えるなら、大海の青。
その瞳が真剣な色味を湛え――――自分以外を見ている。

 唐突に腹が立った。

 泡の弾ける音が止まったのを八ドソンは特に何の感慨もなく認識した。が、次に響いたエンジンを吹かす独特の重低音に気が付いて、不思議そうにMACィーンへと遣った視線が幸いした。
 八ドソンの視界は、MACィーンの真っ黒なメカ部分に支配されていた。
「!」
反射的にギアをバックに入れて急発進。ウィリー状態にあったMACィーンは今まで八ドソンがいた位置に
空しく全身を叩き付ける。そして背後の事は考えもしていない八ドソンは、きちんと整理整頓してあった
工具置き場にバックから突っ込んで派手な騒音を巻き起こす。

 すべては、一瞬だった。


「…………ハエを追っ払うには大袈裟だな」
何とも言えない沈黙を最初に破ったのは、八ドソンの方だった。頭に乗ってしまったグリスの
ボトルを邪魔そうに振り払うと、缶と床面がぶつかって硬質の音が響く。テレビの中のレースはとうに最終ラップだ。
「……いきなり何のつもりだ」
「……だって」
タイヤから何から床にへばりつく格好になっていたMACィーンが、のそのそと態勢を建て直す。
「ドック、カッコ良かったから」
「坊や、悪いがまるで意味が分からん。俺にも分かるように言え」
そっけない八ドソンの注文にも、MACィーンは即座には答えない。一旦ハンドルを左に目一杯切ってバック、
それから少し前進して位置を調節すれば二台はすっかり向き合える。

112 名前:『車達』稲妻×医者4:2006/11/23(木) 03:57:47 ID:DHOMoOwT0
「つまり……僕のハートにびんびん来たからとりあえずスキンシップを」
「……。ミーティング中にサカるな馬鹿者」
『いつもの』切り返しに答える事なくMACィーンは今度は八ドソンから見て右へと進んだ。
再び左へハンドルを切り、そのリアフロントを八ドソンの前に晒して、バック。
するする進むその先は、八ドソンの右隣。
 ふっ、とMACィーンは笑う。どこか、切なげに。
「分かった、謝るよドック。けどね、『八ドソン』――――」
不意に呼ばれた本名に八ドソンは本能的に車体を強張らせた。その内にMACィーンが隣で止まる。
「大好きだよ。それだけは、本当」
いつもの軽薄さはどこへやら、MACィーンの低く抑えた真摯な囁きが八ドソンの聴覚を震わせる。
フロントバンパーからマフラーの先に至るまでがぞくっと波立つ感覚を錯覚だと思い込もうとしながら、
八ドソンはそっと甘えるように擦り寄せられるMACィーンのボンネットを、渾身の力を込めた
タイヤでひっぱたく。ぼむっ、と言う気の抜けた音とMACィーンの間の抜けた悲鳴が被った。


 潜在的に理解はしている。積極的なルーキーの『スキンシップ』をかわし続けるのもそろそろ限界だと。

 あの熱情的な告白から早数ヶ月。未だ、何の進展も無し。いや、八ドソンからしてみれば
自らの心境が怒涛の如く変化していったのを経験しているのだが、それを知るのは唯一町の保安官だけだ。
 それにしたって八ドソンも男だ。気持ちは受け入れておきながら、そこから先は一切許さない――
これでは生殺しに近い事は分かり切っている。若いMACィーンがいつまでも我慢していられるとは到底思えなかった。

 それでも、アクセルを踏み出すのは難しい。

113 名前:風と木の名無しさん:2006/11/23(木) 04:00:14 ID:DHOMoOwT0
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
嘘です。あんまり長いんで分けました。
続きは又今度。
ちなみにこの医者は吹き替え版であります(一人称は俺のが萌ゆる)

114 名前:月【鰤ーチ】 1:2006/11/23(木) 16:28:34 ID:xfOdDjTtO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )イマサラダケド…コソーリ



鰤の海縁←雨季竹、今日楽→雨季竹前提で海縁死後の話です
あまりに萌えが炸裂したので…(´・ω・`)







ふと、現れた気配に誘われ開けた障子。
微かな床の軋みを足裏に受けて出た縁側を照らす柔らかな月光は、荒んで落ち込んだ心にも暗がりに馴れた目にも酷く優しかった。
「―――――そんな所で何をしてるんだ?」
完全に霊圧を消す事も出来る癖に、ほんの僅かな綻びを作り佇む人影にそう声をかけると、腐れ縁と呼ぶには些か縁のありすぎるその男は砂利を踏む音を響かせ動いた。
「いい月だからね、月を見てる。」
奴らしい答えに零れる苦笑は、呆れ半分、感謝と懐かしさが少々。
軽薄さに隠した慧眼や驚くべき包容力に俺は何度救われただろうか。
縁側に腰掛けた彼の物言わぬ背中がいつもよりも広く温かく感じるのは気のせいではないだろう。
「……答えになってないような気もするんだが。」
「いいじゃないの。あまり細かい事を気にすると今度は禿げるぞ?
―――…まぁ座れ、色男。」

115 名前:月【鰤ーチ】2:2006/11/23(木) 16:30:01 ID:xfOdDjTtO
ふざけた返答と共に肩越しでこちらを見た今日楽の表情は笠の影に隠れて見えない。
恐らくいつもの調子で揶揄するような笑みを浮かべているのであろう彼との不毛な会話を切り隣に腰を下ろした。
「いい月だ…。」
囁くような独り言につられて見上げた空には鮮やかな三日月が一つ。
久しぶりにゆっくりと見た月は隣にいる男と同じ温かさを称え、その光は心に染みてくるようだった。
胸に刻まれた深く大きな黒い穴が癒えてくるような、そんな錯覚さえ覚えしまう。
大きな喪失感と激しい後悔、そして潰えぬ悲しみを、包み和らげてくれる温かな月光にこうして身を委ねるのも悪くないかもしれない。
「――――…飲むか?」
そっと差し出された盃に満たされた酒に映るのもまた、月。
無言のまま受け取った盃を煽りその月ごと飲み干すと、灼けつくような熱さと甘さを含む芳香が、先刻感じていた安堵を更に深くまで届けてきた。
「――――部下を……いや、腹心を死なせてしまった…。
なのに、何故俺は生きて……、」
ポツリと吐き出したそれは全てを知りこうしてここに現れた今日楽に聞かせるというよりも自身の傷を癒したいが為だった。
こんな最悪の形で大切な人を失う羽目になるなんて誰が想像しただろう。
いや、もしかしたら海縁自身はこの運命をどこかで感じていたのかも知れない。
愛する者を失い、自ら危険な任務を名乗り出たその時には、既に覚悟は決まっていたのだろう。
だがしかし最期に遺した彼の言葉は、胸に痛かった。
その胸に受けた痛みは燻り、今は後悔となってただ残るのみだ。

116 名前:月【鰤ーチ】ラスト:2006/11/23(木) 16:31:22 ID:xfOdDjTtO
あの時、有無を言わさず止めていれば。
あの時、彼を任務に就かせなければ。
こうして何度も何度も仮定を持ち出してみても、結局は何も出来なかった自身の不甲斐なさにぶつかるだけだ。
そんな堂々廻りの慚愧の念を隣にいるこの男は受け止めてくれるのだろうか。
「――――…で、代わりに自分が死ねば良かった、か?」
「え?」
黙したまま酒を煽っていた今日楽の唐突な問い掛けに思わず振り向くと、笠を僅かに上げて彼は鋭い眼光でこちらを見据えていた。
「お前さんらしいといえばらしいが、――――…それはあいつに対しての贖罪にならんだろ。」
ついぞ見せたことのない今日楽のその厳しい表情よりも、彼が投げてきた言葉の方が重かった。
そう、彼が言ったのは事実だ。
だが、そうはわかっていても、俺には海縁の死は重過ぎる。
付き合いの長いこの男は初めから気付いていたのかもしれない。
隊長という立場にして持つには許されない、心の奥深くに隠していた海縁への思いを。
「――――……ああ、そうだな、すまん。」
認めてしまえば何ということはない。
俺のくだらない感傷が海縁の死を受け入れられないだけだ。
そう認めた瞬間、空になった盃に落とした視線がぼやけ、込み上げてくる思いが喉を詰まらせた。
とめどなく溢れる涙と鳴咽にどうすることも出来ぬ俺を包むのは月明かりと友の温かな手。
肩に回されたその腕の温もりに逃げ込むように、俺は顔を今日楽の胸へと押し付けた。

117 名前:風と木の名無しさん:2006/11/23(木) 16:33:55 ID:xfOdDjTtO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ;)チュウトハンパダナ…



尻切れな上に今更ですみませんorz
お粗末ですみませんorz

118 名前:風と木の名無しさん:2006/11/24(金) 15:19:35 ID:J7ESa/bI0
>108
貴女は神で勇者だよ…
こっちも生殺しなので続き待ってます


119 名前:風と木の名無しさん:2006/11/24(金) 20:30:19 ID:Px4L1iLs0
おなじく、続き待ってます。
でも我慢できなさそうだから、も一度DVD見直すわ。

120 名前:オタク教師×ヤンキー生徒1:2006/11/24(金) 23:20:08 ID:qI+h7Z/A0
ガソガソで連載中『初めての甲子園』のオタク教師アミヒコ×ヤンキー生徒リュウ
コミックス読んでみたらデラモエして辛抱たまらなくなりますた。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )<8〜9レスほど使わせていただきます



"ドイナカ高校"という名前の小さな高校がある。
深刻な過疎化によって若者が減り交通は一日に二本しか通らないバスが頼りという
田舎町にあるその学校には校長を含め教師二名と生徒三名、そして犬が一匹在籍しており、
彼らは皆動機や事情は違えどひとまず同じ屋根の下で生活していた。
共同生活の場は校長が自宅の離れを提供した「野球部の寮」である。
そう、彼らは野球部なのだ。たった三人の。
三人ぽっちの野球部員たちは様々な思いを胸に、甲子園を目指していた。

121 名前:オタク教師×ヤンキー生徒2:2006/11/24(金) 23:20:48 ID:qI+h7Z/A0
「ミドリちゃん、もうロードワーク行くの?」
「ああ」
「僕もあとで追っかけるね!」
「わかった。でも落ち着いて食えよ」

それじゃあお先。そう言ってさっさと食卓を後にしたのは、
一見すると整った顔立ちの男子高校生だが実は女の子であるミドリ。
女といっても男顔負けの豪腕ピッチャーであり、この野球部の立派なエースである。
その彼女に声をかけつつ元気にもりもりと朝食を平らげているのが、
小柄ながらも日々努力を重ね野球に情熱を注ぐキャッチャーのニヤ。
一人だった生徒が三人に増え、そしてその三人が紆余曲折の後揃って野球部員になって以降、
ミドリとニヤのこのやりとりはいつしか毎朝の恒例になっていた。
そんな2人の爽やかさを微笑ましく眺めているのは、教師であるチヨダ アミヒコ。
見た目は気弱な優男といった風の彼は野球の知識がルール含め皆無というダメ顧問であり、
またギャルゲーマニアな生粋のオタクでもある。ちなみに漫画家になるのが夢。

「…っごちそーさま!それじゃあ先生、僕もロードワーク行ってくるね!」
「食べてすぐ走って大丈夫なの?ミドリちゃんは特製メニューだからいいけど……」
「大丈夫!それじゃいってきまーす!」
「はいはい、いってらっしゃい」
「リュウくんも早くきてね!」

箸を置くやいなや慌しく席を立ち、ニヤはミドリを追い元気にロードワークへと向かった。
聴こえてくるのはバタバタと廊下を走る足音、そして玄関の引き戸が開いて閉まる音。
ニヤくんは今日も元気だなあとのんきに思うアミヒコは、そこで眼鏡越しの視線をある方向へと向けた。
視線が向かった先にはここに残っているもう一人の人物がいる。彼はその人物へおもむろに声をかけた。

「リュウくん、起きてる?」

122 名前:オタク教師×ヤンキー生徒3:2006/11/24(金) 23:21:29 ID:qI+h7Z/A0
「…………ああ」

返されたのは短い返事。声の主は『リュウくん』ことゴジョウゲン リュウ。
野球は初心者だがスポーツ万能ゆえに光るものはあるという彼は見た目ヤンキーであり、
中身もヤンキーである。そしてその生粋のヤンキーである彼はつい最近、遅すぎる初恋に目覚めていた。

(起きてないなあ……)

返事の素っ気なさに肩を竦めつつ、アミヒコは味噌汁をすすった。
彼のことなど眼中にないのだろうリュウの視線は数分前までミドリが座っていた席に注がれている。
そう、彼の初恋の相手はミドリだった。最初は敵視していたはずの彼女に、いつのまにか惚れていたのだ。

入学早々教師をボコボコにして以前いた高校を退学になったという彼はそのくせ、
色恋沙汰に関しては意外とウブだった。自分の恋心を自覚して以降はミドリと2人っきりになると赤面硬直、
うまく想いを伝えるどころか普通の会話すら侭ならなくなる。当然、ミドリには何も伝わっていない。
そんな前途多難な初恋に今のところ砕けてばかりの生徒をアミヒコはそれなりには応援している。
が、実は素直に応援しにくいというか少々厄介な事情が彼とリュウの間にはあった。
それはもう、厄介な事情が。

「……なんでエッチしちゃったんだろうなあ」
「あぁ!?」
「あ……あれ?」

心の中で思うだけのつもりが、無意識に声に出てしまった呟き。
それは今まで気のない反応しか見せなかったリュウに普段の恐ろしい形相を取り戻させた。
いきなりドスの効いた声がきこえたことで、アミヒコは自身の失言を自覚し慌てて手で口を押さえる。
しかしもう遅い。家庭用のテーブルを挟んだ向かいに座る生徒は既に鬼の形相になっている。

「や……やだなぁリュウくん、普段から怖いんだからそんな怖い顔したら更に怖いじゃないかぁ」

なんとか空気を変えようと努めて明るくそう話し掛けたアミヒコだったが、当然効果は無い。
(あ、ぼく殺される。)リュウの全身から立ち昇る殺気を感じ取ったアミヒコは本気でそう思った。

123 名前:オタク教師×ヤンキー生徒4:2006/11/24(金) 23:23:22 ID:qI+h7Z/A0
だが、リュウの反応はいささか予想外のものだった。

「…………俺だって知りてーよ」
「え?」

少なくともボコボコにされることは間違い無いだろうと覚悟して目を閉じたアミヒコはしかし
鉄拳の痛みではなく耳に届いた意外な言葉によって今度はその閉じた目を恐る恐るあけた。
そうして視界に映ったのは、恐ろしい殺気を放っていたはずのリュウの不貞腐れたような、
むしろ怒っているうちにどんどん拗ねていってしまった子供のような表情。
こういう顔をすると年相応に残った幼さが出るんだなとアミヒコはこの時ぼんやりと思った。

(そういえば"あの時"も、こんな顔してたかもしれない。)



目が覚めると目の前至近距離にリュウの寝顔。
アミヒコは以前一度だけ、そんな目覚めを迎えたことがあった。
自分は裸で、リュウも裸で、2人1つの布団で、畳にはビールの空き缶。
わかりやすい状況証拠は揃いも揃ってまずい現実への裏付けにしかなってくれない。
震える手でひとまずメガネをかけたアミヒコは怖いくらい跳ねる心臓に吐き気を眩暈を併発しながら
大きく息を吸って深く吐き、バチバチとまばたきを数度くりかえしてごくりと唾を飲んだ。


『……あ?』

アミヒコに遅れること約30分、目を覚ましたリュウの第一声はそれだった。
寝起き特有の掠れとまだ状況を把握できていなさそうな呆けた顔の彼はしかし
既に僅かな違和感に気付いているようだった。起き抜けで鈍った思考で状況を掴もうとしている
リュウの顔をアミヒコは黙って見ている。泣きそうな気持ちだった。

124 名前:オタク教師×ヤンキー生徒5:2006/11/24(金) 23:25:44 ID:qI+h7Z/A0
『おい……アミ、ヒコ』
『……うん』
『何でお前……俺の布団で寝てんだ?』
『…………うん』
『つーか、オイ。何で俺らマッパ……それに……』

何かケツとか痛てーんだけど。リュウのその言葉に、アミヒコは思わず項垂れた。
そして、消えそうな声で呟く。

『ぼくとリュウくん、エッチしちゃったみたい』


ふざけんな、とか、んなことあるわけねーだろ、とか。
アミヒコはこの時リュウのそんな言葉を尚も項垂れたままきいていた。
最初は全く信じていなそうな、そう普段とたいして変わらない口調や声色だった。
むしろ、つまらない冗談を言うんじゃないとそういう意味で怒っていそうな。
しかし項垂れたままのアミヒコが自分の言葉に対し何も言い返さないことで、
リュウは無反応に対する苛立ちから徐々に不安を覚え始めた。
自分とアミヒコが結んだ関係が、つまらない冗談などではなく事実なのではないかという不安を。
それを振り払おうと、もしくは完全な否定の言葉を聞き出そうと、彼は声を荒げる。

『俺ぁ何も覚えてねーぞ!?お前とどうこうなった記憶なんざ何にも……』
『…………』
『……っなんとか言えやアミヒコ!』

アミヒコは思った。泣きそうな声だ、と。
そうして、彼はようやく、口を開いた。

125 名前:オタク教師×ヤンキー生徒6:2006/11/24(金) 23:26:37 ID:qI+h7Z/A0
『ぼくは、覚えてるんだ』
『あ……?』
『僕は……しっかり覚えちゃってるんだ……昨日の夜のこと』
それは、リュウが望んでいたものとは真逆の、それこそ彼にとっては絶望でしかない言葉だった。


その後、アミヒコはリュウに本気で殴られた。
気が失いそうな痛みと衝撃にチカチカする視界、更によろけた際に壁で頭を打ったので脳も揺れる。
殴られて熱を孕んだ頬を手で押さえ、アミヒコは自分を殴ったリュウを見た。
そして、思った。意外だ、と。常日頃から険しい表情を見せる事が多い彼だけに今だってきっと
恐ろしいほどの殺気や怒気に満ちた顔で自分を睨んでいるのだろうと思っていたのだが、
視線の先にいたリュウはまるで泣きそうな顔だったからだ。

(……僕は、)

確かに証拠は揃いすぎていた。裸で1つの布団に寝ていたというだけでも致命的だが、
それだけでなく例えばいかにもな脱ぎ散らかし方の2人の服とか汚れたシーツとか、
リュウの首筋に一つだけ付けられた赤い痕だとか。
まして記憶の中には、確かに自分が抱いている彼の様子やした行為が残っている。
苦痛に歪む表情や、吐く息に混ざった掠れた声や、彼の中に挿入した際に自分が感じた強い快感を。
リュウがいくら覚えていなくとも、完全に事実だった。自分とリュウは寝たのだ。

ただそれでも、嘘をついてやることだってできたのに。
アミヒコはじんじんと痛む頬とそこから伝わる熱を嫌というほど感じながら考えた。

大人として教師として、生徒である彼を傷付けないようにすべきだったのに。
しでかしてしまった以上傷付けないようにも何もあったものではないけれど、そうすべきだったはずだ。
どう見てもバレバレな嘘だったとしてもそうすることで逃げ道を作ってあげることはできたし、
彼にとっても自分にとってもそうする方がどれだけ良かったか。
なのに現実は、そんなポーズをとることすらできなかった、否しなかった。

126 名前:オタク教師×ヤンキー生徒7:2006/11/24(金) 23:27:08 ID:qI+h7Z/A0
(僕は教師失格かなぁ)

泣きそうな顔で自分を睨む教え子を見ながら、アミヒコは心の中で呟いた。
そんな、"あの時"。



「……あはは」
「あははじゃねーだろうがオラァ!」
「へぶっ!」

急にふざけた笑い方をしだしたアミヒコに、イラッとしたらしいリュウの鉄拳が飛んだ。
素晴らしいスピードのパンチに、ああいつものリュウくんだとアミヒコは思う。
彼のパンチは相変わらず痛かった。もちろん、あの日のそれには及ばないが。

「リュウくんあのね、僕一応キミの先生だから……暴力とかは……」
「うるせーオタク」
「ひどい」

どこからか取り出した美少女フィギュアを手にめそめそと泣くアミヒコを無視して、
リュウは途中になっていた朝食を改めて食べ始めた。今朝はもうロードワークには
行かないつもりらしい。ニヤくんとミドリちゃんに怒られても知らないよ〜という
アミヒコの言葉もきれいに無視している。
そんな彼を横目で見つつアミヒコはこっそりとため息をついた。


自分とリュウとの間にある秘密と、それにまつわる自分の言動。
あの日ぼんやりと考えた自分の『嘘をつかなかった理由』について、
実はアミヒコは既に答えを出していた。

127 名前:オタク教師×ヤンキー生徒8:2006/11/24(金) 23:28:33 ID:qI+h7Z/A0
「…………」

フィギュアをそっと置き、アミヒコは黙々と食事に没頭するリュウに近付く。
そして、何なんだてめーと言いかけて自分の方に首を向けたリュウの隙を突いて口付けた。
リュウは頭も体も瞬間的に固まったが、ハッと我に返り椅子から転げ落ちるようにして
アミヒコから離れる。アミヒコはそんなリュウの顔が赤いのを見て嬉しそうに笑った。

「なっ……何しやがったてめ……」
「何ってキ」
「黙れボケェ!」
「痛っ!リュウくんひどい」

真っ赤になりながら怒鳴るリュウに、アミヒコは痛がる言葉を吐きながらも
どうしても漏れる笑みを抑えられない。素直でかわいいなあ、なんてことを思って。
ゲームの中の女の子たちとは全然違うし、結婚詐欺師の仕事をしてた前の彼女とも全然違う。
文句無しにかわいいあの子たちと全然違うはずのリュウのことが、なぜかかわいく思えて仕方がない。
(……僕は、)

「僕はね、リュウくん」
「あ゙ぁ゙!?」
「リュウくんのこと好きなんだ」
「────っ、」



128 名前:オタク教師×ヤンキー生徒9:2006/11/24(金) 23:29:06 ID:qI+h7Z/A0
まっすぐにリュウの目をみて、アミヒコは好きだという言葉を口にした。
それは、今のリュウにとってしたくてもできない行為。
きっと怒鳴り返したりできないだろうと思ってのことだったが、
案の定リュウは言葉に詰まってただアミヒコを見た。その目には明らかな狼狽が滲んでいる。
喧嘩は強くてもこういうところは付け入る隙だらけだ。アミヒコは苦笑した。
別に彼とて色恋沙汰が得意なわけではなくむしろ苦手な部類だが、しかしそれでも彼は大人だ。
心は子供のままだ、なんて馬鹿にされても、幸か不幸かずるい大人の一面も持ち合わせている。
正面からつつけば意外な程に脆いこの教え子の中に入ることだってできるのだ。

(僕はやっぱり教師失格かなあ)

いつかと同じ疑問を再度胸に抱いたアミヒコは、尚も言葉を発せずにいるリュウに優しく笑ってみせた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )<ありがとうございました

129 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 00:05:48 ID:FEBPEvHY0
テ、テ、テラモエス!!!(*´д`*)ハァハァハァハァ 
マイナーだからただでさえないと思ってたのに、まさかここで拝めるとは

130 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 00:50:19 ID:jRJ7dRj0O
この二人に萌えてるの自分だけじゃなかった!
GJ!

131 名前:期間銃 叔父甥 1:2006/11/25(土) 01:09:51 ID:c5xXo0Gk0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )女子高制服と期間銃の叔父甥。5〜6レスお借りします。

「おじちゃん、朝メシできたよ」
菜箸片手に声を掛ければ、広縁の金蔵がおう、腹を掻いて読みかけの新聞を畳んだ。
股引に腹巻、ラクダのシャツ姿の金蔵は極道というよりそこらの御隠居のようだ。
丸めた背中越しに小さな冬の庭が見える。
何の手入れもしていないはずの椿が見事に赤い花弁を広げているのを見て
そろそろおじちゃんの半纏を出す頃合いかと考える。
どこに仕舞っただろう。
「今日は朝から鰤かい。豪勢じゃねえか」
「昨夜魚八さんに顔出したら、売れ残りだけど持って行けって」
「そりゃ有難い」
小さな丸い卓袱台に二人分の朝食が並ぶ。
白飯と青菜と油揚げの味噌汁、沢庵と鰤の照り焼きという簡素な献立だが、二人にとっては立派な食卓だ。
やもめ暮らしが長かった金蔵とひきこもりだった建次にとって
誰かと向かい合う食卓はそれだけで貴重に感じる。
金蔵が箸を手に両掌を合わせて「いただきます」と頭を下げて、それに倣う。
箸をつけようとして、ぎょろりとした金蔵の目が一層ぎょろりとして食卓を見回した。

132 名前:期間銃 叔父甥 2:2006/11/25(土) 01:10:55 ID:c5xXo0Gk0
「おっと大根おろしがいるな」
「あっごめん、忘れた」
「いい、いい。俺がやろう」
急いで立ち上がろうとした建次を目で制して金蔵が台所に立つ。
「また指まで擦りおろされちゃたまらねえからなあ」
「…また言う」
「白い大根おろしが真っ赤になっちまってな」
「もう!おじちゃん!」
口を尖らせた建次をカラカラと笑い飛ばして持ってきたおろし金は銅製の年季ものだ。
鈍く光る刃先に指を引っ掛けたのはもう二年近く前のことなのに
おろし金を手にする度に金蔵は今でも笑う。
笑うくせに、その時一番慌てふためいたのは建次ではなく金蔵だった。

133 名前:期間銃 叔父甥 3:2006/11/25(土) 01:12:19 ID:c5xXo0Gk0

金蔵の家に引き取られたばかりの頃、慣れないおろし金を使って指を擦った。
感触の割に多かった出血に、金蔵は「ケソ坊の指が!指が!」と叫び散らしながら
筋張った体のどこにそんな力があったのか建次を米俵のように担ぎ、有無を言わせず最寄の医者へ運んだ。
行った先は時間外の上小児科だったけれど、そんなことは問題じゃないくらい怪我は軽いもので
医者は黙って絆創膏を一枚ペタリと巻いてくれた。
ようやく静かになった金蔵に文句のひとつも言ってやろうと建次が顔を向けると
金蔵の目は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
マル暴上がりのやくざ者で仏だの鬼だの言われている金蔵がこんなにも取り乱すのが
おかしくて嬉しくて切なくて、建次は何も言えなくなってしまった。
ただ笑いながらちょっと泣いた。
するとまた金蔵がケソ坊痛いのか大丈夫かと慌てて、建次はますます泣き笑いした。


134 名前:期間銃 叔父甥 4:2006/11/25(土) 01:13:08 ID:c5xXo0Gk0
「ケソ坊よう。大根おろしってのは怖い顔してちゃっちゃっと擦らなきゃ駄目なんだ」
金蔵が飛沫を上げるほどの速さで大根をおろしていく。
「おじちゃんはちゃっちゃとしすぎだよ」
飛び散る飛沫を建次が台布巾で拭っていく。
「お前みたいにニカニカ笑いながら擦ってたんじゃ甘くなっていけねえ」
ニカニカした顔は血筋だし、甘いのはそっちじゃないか。
大根を握り締めた節くれの目立つ手が忙しなく動くのを見ながら、喉まで出掛かった言葉を飲み込む。
あれから金蔵は一度も建次におろし金を触らせない。
秋刀魚を買った時など、魚屋の店先から「そう言や昔…」とあの時のことを茶化して
建次を拗ねさせて端っからおろし金を持たせないほどの徹底振りだ。
ここまでひどくはないけれど、ちょっと前までは煙草のお使いを頼まれては駄賃だと釣銭を渡されたり
夏場にはどの面下げて調達したのか冷蔵庫にカルピスがあって「腹壊すまで飲むなよ」と言われたりした。
いざ「おじちゃん」から「キソさん」になれば建次の胸倉を掴み上げて横面を張り倒したりもするのに
家では「仏のキソさん」どころじゃない。
甥っ子に滅法甘いただの爺だ。

135 名前:期間銃 叔父甥 5:2006/11/25(土) 01:14:44 ID:c5xXo0Gk0
「どうすりゃあいいのかなあ」
聞こえるか聞こえないかの声に顔を上げれば、いつの間にか大根は器いっぱいにおろされていて
金蔵が建次を見てもう一度漏らした。
「どうすりゃお前を幸せにしてやれるんだろうな」  
「…幸せ?」
「俺んとこに連れてきちまって、極道の道なんざ染まらせて。お前の幸せはもっと広くて真っ当で明るい表の世界にあったのかもしれねえのに」
金蔵の手が僅かばかり残った大根を置けば、卓袱台の上の水滴が揺れる。
「お前を堅気にしてやりてえ、お前を表の世界に戻してやりてえ……ただなあ」
長く吐かれた息に、金蔵が泣き出すんじゃないかと思った。
それほどに声は深く静かだった。
けれど、金蔵は笑った。
「俺ぁお前が可愛くて可愛くて仕方ねえんだよ」
笑みが深くなる。
「ケソ坊を誰よりも幸せにしてやりてえのに、俺はお前と一緒にいると本当に幸せなんだ」
しょうのねえ老いぼれだよなあ、と歯を剥く顔に瞼が熱くなる。
猫背越しの寒椿、半纏だけじゃなく炬燵布団も出さなくちゃ、ふた切れの鰤に触らせてもらえないおろし金。
ねえ、おじちゃん。
俺はもう十分に幸せだよ。

泣き出したのは建次の方だった。
小さな嗚咽に、お前はいつまで経っても餓鬼で困ったもんだと苦笑いする掌が不器用に金色の頭を撫でた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ラストの叔父と甥の幸せそうな笑顔に思わず打ってしまいました…スマソ

136 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 01:37:19 ID:DHHH7B4f0
泣かせんなよぅ。・゚・(ノд`)・゚・。
でもGJ!

137 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 01:58:04 ID:qVec002Q0
>131-135
GJ!
こういう関係大好きだ。萌え泣いた。

138 名前:キーバー:2006/11/25(土) 02:41:15 ID:vpMYBFtO0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )日曜朝のキバから31〜32話の間の妄想だよ。

砂霧はもう眠っただろうか。
野亜は視線を横に向けて隣のベッドを伺う。
かすかな寝息を立てて眠る砂霧を見つけると、野亜は起こさないようにそっと部屋を出た。

長い通路を歩き、その突き当りの豪奢な装飾の扉の前に立つ。
ノックをすると中から入るようにと声がかかった。
現在の野亜の体は一見すると健康なのだが、強い力を持つ灰ラムによるヒーリングでなければ体調を保てない程に衰弱しきっていた。
日中公務の忙しい灰ラムは夜しか時間が取れず、野亜はいつからか毎晩灰ラムの部屋へ通うようになった。

扉と同じく豪奢な装飾の施された部屋に入ると衣服を脱ぎ医療用コルセットを外すと灰ラムのベッドに横たわる。
より効果的なヒーリングのためとはいえ、明りのついた部屋で一糸まとわぬ姿を見られる恥ずかしさに頬が紅潮する。
灰ラムの手がかざされた部分が心地よい光と暖かさに包まれると、野亜は目を閉じてヒーリングが終わるのを待った。



139 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 02:42:08 ID:vpMYBFtO0
しかしすぐにヒーリングの暖かさが消えた。
「灰ラム様?」
怪訝に思い身を起こした瞬間、野亜の体に電流のような衝撃が走り一気に力が抜けた。
灰ラムはベッドに倒れこんだ野亜の上に覆いかぶさると、野亜のペニスをやんわりと握った。
「?!放して下さい!」
野亜は声は出せるものの、首から下を動かすことが出来なかった。
「ほう、マニュー場シャー度を使っても完全に動きを封じられるわけではないようだな。」
握った手を動かしながら下卑た笑いを浮かべる。
「だがそのほうが楽しめると言うものだ。」
「灰ラム様!止めてください!!」
叫ぶ野亜の耳元に灰ラムが囁きかける。
「抵抗すればあの規律違反の少年、Z゛と言ったかね?彼がどうなるか、お前ならわかるだろう?」
野亜は目を見開いた。
ジャウス戸のときZ゛は仲間を助けるために規律を破っている。この国では絶対規律を破ったものはどんな些細な罪でも処刑されるのが通例だ。
「今夜からお前が私に抱かれると言うなら、あの少年の件は考えてやろう。」
「Z゛の罪を、無かったことに、していただけるのですか?」
灰ラムは野亜の返事を待っているかのように、手を止めてじっと野亜を見つめている。
野亜は目を閉じてZ゛の顔を思い浮かべると、血の気の引いた唇で、
「灰ラム様、僕を、抱いて、ください。」
か細くそう答えた。

静寂の中、Z゛は誰かに呼ばれたような気がして目がさめた。
周りを見渡したが誰も居ない。
水でも飲もうかと立ち上がりかけたとき何かが光った。
月明かりを受けて光る、羽飾りの付いたお守り。
ベッドの端に腰かけ、肌身離さず持っているそれをそっと手に取る。
「……野亜……。」
ポツリと呟くと、もらった日のことを思い出す。
そしてついこの間のジャウス戸のことも。
野亜は本当に、ずっと俺を憎んでいたのだろうか……?
答えの出ない問いにZ゛は眉根を寄せると考えるのをやめて布団をかぶった。


140 名前:キーバーごめん下げ忘れた上に萌えないし尻切れ。:2006/11/25(土) 02:43:20 ID:vpMYBFtO0
静寂の中、野亜は誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。
周りを見渡すと豪奢なな装飾の施された室内が目に入る。
ああそうだ、僕は灰ラム様に……。
月明かりが朱と白で汚れた野亜の体を浮かび上がらせる。
のろのろとした動きで簡単に汚れを拭き取り、ベッドを降りると、コルセットと服を着た。
部屋を出ようとしたそのとき、背後から声が聞こえた。
「明日も今日と同じ時間、ヒーリングを受けに来なさい。」
野亜は返事をせずに部屋を出た。

長い通路を歩くと、だるさと鈍い痛みが体中に走る。
抱かれている間中、灰ラム様の名を呼んでいても心の中でZ゛を呼んでいた。
「っう……Z゛……Z゛!」
声に出すと途端に涙が零れ落ちる。
僕はもうあの頃のように君と並んで歩くことは出来ないだろう。
なのに、君を忘れたいのに、忘れることも出来ないでいる。
Z゛、僕は、僕は……。
野亜は自分を抱きしめるようにすると、壁にもたれずるずると落ちていった。

141 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 02:45:06 ID:vpMYBFtO0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )
すんませんお目汚しスレ汚しほんますんませんでした。

142 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 07:59:35 ID:EjthNBoH0
>>120
GJ!マジでGJ!
アミ×リュウ萌えで悶えてた私にとってまさに>>120

143 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 08:55:09 ID:62C7F5K10
>131-135

ありがとう、本当に素晴らしい…!下町の粋でいなせで可愛い爺と甥っコが
天国でも仲良くしてますように。

144 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 09:00:01 ID:M9v3sNOCO
>151-155
GJ
萌えた

145 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 09:01:17 ID:M9v3sNOCO
>131-135だた…
未来レスしてた…

146 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 10:02:44 ID:6xjhNWrz0
よっしゃ>151-155 萌え萌えなネタキボン

147 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 15:52:01 ID:CC3UoBQ/0
投下できないじゃないか……orz

148 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 21:22:59 ID:CC3UoBQ/0
>>144,146 すまない。野良犬に噛まれたと思ってあきらめてくれ。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟。リバ。平安。前編。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  後で残りを張りにきます。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソノカンカマワズトウカスイショウ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

149 名前:平安U 1:2006/11/25(土) 21:24:54 ID:CC3UoBQ/0

 八葉の車がゆったりと車宿りに着いた。
 随身の者が手を貸そうとするのを断り、慣れきった様子でそこから下りる。
 回廊を渡って東の対の母屋につくと、いく人もの侍女がかしずき仕える。
 気の張る衣装を脱がされて、練り絹の白い単に着替えると、
その上にふわり、と紋の入った袿を掛けられた。

 多分、ヤツは焦れなが待っている。
 どう扱おうかとてぐすね引いている。
 兄者は苦笑しつつ東北の対の自室に向かった。
 いつものことだった。正室のもとを訪れた後、弟者がむきになることは。
 すでに夜は明けつつある。
 鶏の声も重なって聞こえる。
 やきもきしながら待っているだろう。
 有明の月はかすんでいる。

 踏み込んだ部屋にその姿はなく、首をかしげた瞬間、押し倒された。
 どうやら、妻戸の影にいたらしい。
「―――時に待て、モチつけ」
「待てない」
 着替えたばかりの衣が剥がされる。
 噛み付くように唇づけられる。
「出仕に差し支えるぞ」
「たった今からオレは物忌みだ」
 どうやらさぼるつもりらしい。
「代わりに行こうか」
「当分無理だな。足腰立たなくしてやる」
「せめて文(メール)をしたためるまで待て」
「うるさい。黙って抱かれてろ」
 どうやら、後朝の文は限りなく遅くなりそうだ。

150 名前:平安U 2:2006/11/25(土) 21:28:00 ID:CC3UoBQ/0

 その時代、双つ子は忌むべき者として遇された。
 大納言家に生まれた彼らは、一つの名のみを表に現す。
裏に隠された弟も、その兄とともに育っていった。
 元服を迎えたころから、名は兄のままで、同じ面影を持つ二人はたびたびその身を入れ替え始める。
暴き立てる者のいないことを盾に、互いの役割を演じることが多くなる。
 5日に1度、兄者は自分に戻って参内する。
 それを勧める弟は、月に2度ほどほぞを噛む。
 出世を続ける意思のある父者は、更なる飛躍の礎として、左大臣の妹君を息子に娶わせた。
 その甲斐あってこの秋、内大臣の宣旨を受けた。
 兄者はその邸へ通わねばならなかった。


151 名前:平安U 3:2006/11/25(土) 21:30:44 ID:CC3UoBQ/0

「だから、オレが行くって行ってるのに」
 両の肩を押さえつけ、相手を逃がさない。臍から下は重ねているので、少しの動きで息が乱れる。
 けれどまだ、与えてはいない。
「そういうわけにはいかないのだ」
 弱々しく否定する声。それが弟者に火を点ける。
「何故だ。言えよ」
 兄者は答えない。わざとゆっくりなぞるような腰の動きに、声をあげそうになりながら、
それに耐えている。
 格子は一つだけ上げてある。そこから、朝の光が御簾ごしに射し込み、
淡く色付く二人を照らし出す。
「姫とはそういった関係ではない」
「んなわけないだろう。正室だぞ」
 むしろ、奨励されてしかるべき関係。筋金入りの禁忌である自分たちとは逆に。
 
 相手の膚に唇を当て、強く吸って痕をつける。少しずらして牙を立てる。
痛がっても止めずに傷を残す。それをいくつも繰り返す。
 誰かに見せつけるための所有の証。
 こいつはオレのモノでオレの下で喘ぐんだ、と仮想の敵に叫んでいる。
 それがわかるから逆らわない。意味のないことだと知っているが、弟者の好きにさせている。


152 名前:平安U 4:2006/11/25(土) 21:32:00 ID:CC3UoBQ/0

 痛みは嫌いだ。血を見ることも苦手だ。争うことも性に合わない。
 それなのに、この嫉妬深い恋人の下で、手酷い扱いを受けるのは何故だかあまり嫌ではない。
 大分俺も被虐の趣味に目覚めてきたもんだ、と彼は密かに自嘲する。

 傷よりも強い刻印が、そのに躯に刻まれる。
 流石に余裕がなくなり、夜具として使う大袿をつかんで、切れ切れの声を漏らす。
相手は手荒く彼を苛む。
 泣きそうな、辛そうな弟者の目。
 それを見ながら宿るのは、明らかに加虐の喜び。
 その身はいたぶられて快楽にむせび、その心は相手の傷を貪っている。
 ―――つくづく俺は欲深い。
 にやり、と口許に微笑いが浮かんだ。
 その途端、大きな波が押し寄せてきて、全てが白く弾けて消えた。


153 名前:平安U 5:2006/11/25(土) 21:35:22 ID:CC3UoBQ/0

 目が覚めると、陽が高い。
 青くなって硯箱に飛びつくと、奥の部屋から不機嫌な弟者が現れた。
「文なら送っておいた。あんたが寝坊したい朝に口ずさむやつ」
「忠岑か。あれは過去バナに使うものだろう」
「たった今のことでもつれなくされたわけでなくとも同じ想いがします。ですからわざとあかつきを避け、
遅れた時に送ります、と書き添えて置いた」
「さすが」
 口笛を一つ吹く。
 嬉しくもなさそうに一度引っ込み、膳と高杯を取ってきてくれた。
自分は先に済ませたらしい。
 熱々の白粥に鴨のあつもの、ゆでて醤をまぶした青菜などが用意されている。
粥を口に運ぼうとして、その手を取られた。

「猫舌のくせにあせるな」
 腕ごとつかんだ漆塗りのさじに口を近づけて、しばらく冷ましてくれる。
「もういいだろう」
 粥はほどよく冷めている。そのままだったら舌を灼いていたはずだ。
 口に入れてまたすくうと、そのたびに冷ましてくれる。
 有能で皮肉な弟の情人としての顔。他の女をどう扱うかは自分は知らない。

 ―――あの姫も、恋人の前では違う面を見せるのだろうか。
 秋の風に揺れる撫子のような彼女は、兄者の目から見ても充分に魅力的だ。
だからこそ、打ち明けられたときは驚愕した。 

154 名前:平安U 6:2006/11/25(土) 21:37:01 ID:CC3UoBQ/0
 雛遊びのように据えられて、扇の影でうつむく姫はなかなかに可憐だった。
 ラッキーだ、と彼は思った。
 少々色気には欠けるが、兄の大臣(おとど)が逼塞していたおりに育った和泉の国のなまりも可愛らしい。
 人払いがされたとき、胸が高鳴るのを感じた。
 ところが姫はしとねから下りると、いきなりその横に土下座する。
 しまった、こんな作法は聞いてなかった、と内心あせりながら自分も下りて土下座してみる。
 姫はそのままさめざめと泣き出した。
 俺も泣かなくてはならないのだろうか、と困っていると、彼女はしきりに謝っている。
 どうも様子がおかしい。
 顔を上げさせて事情を聞くと、わけを話してくれた。

 身分違いの恋人がいると。
 一応妻としての義務を果たし、こっそりとその男に会うつもりだったがどうしても無理だ、
兄者サン勘弁な、と言って泣き崩れた。
 大層残念である。
 しかし秘めた恋人を持つ気持ちは誰よりもわかるので、慰める。
しきりにすまながるからほんの少し打ち明けた。
 自分にも、公にできぬ情人がいると。
 なにせ秘密の恋なので、お互い他者に話したことがない。
微妙にぼかしながらものろけることが楽しくて、御帳台にも入らず語り明かした。

 三日夜の宴の後、赤い目をして帰宅したので、秘密の恋人はひどく荒れた。
 絶対次は自分が行く、と主張するので、そんなことをしたらおまえとの関係を絶つ、と脅した。
 たとえ相手が弟者でも、あえかな女人の名誉は守らねばならない。
 それ以来、誤解されたままである。


155 名前:平安U 7:2006/11/25(土) 21:39:44 ID:CC3UoBQ/0

 湯殿から戻ってみると、弟者は漢籍を紐解いている。
 もちろん自分と違って真面目なものである。
 真剣な横顔を邪魔したくなって、隣に座って頬をつつく。
 顔をあげてこちらを見て、書を閉じる。何かを思い出したように口を開いた。

「先日オレは勘違いをしていた」
「何を?」
「雑仕だと思っていたイノキだが、そうではなかった」
「ああ、あの雀を逃した大男か。ではなんだったのだ」
「女の子だ」
 兄者が師走の池のように固まる。
「な、なんだってーーー!(AA略」
「いや、汗衫(かざみ。童女の服)を着て簀子(すのこ)に座っているから
何事かと問い詰めたらそうだった。特注の衣が間に合わずに水干を着ていたらしい。
妹者の遊び相手兼侍女だ」
「俺の勘違いでなかったら、そのイノキとやらは顎のしゃくれてやたらと体の大きい、
どう見ても俺より大分年上に見える男のことだよな」
「大体合っているが、男ではない。本当に女の子なのだ」

 

156 名前:平安U 8:2006/11/25(土) 21:42:34 ID:CC3UoBQ/0

 二人で顔を見合わせる。弟者はどうにか言葉を継ぐ。
「落ち着いて考えろ。うちには母者がいるじゃないか。
あの母者を一目見て、高貴な女人と思うやつがいるか?」
「剛毅な巨人、と思うやつの方がほとんどだろうな」
「まあ、妹者の気持ちはわかる。母者が皇太后の院に詰めているから、
淋しくて少しでも似た者を置いておきたいのだ」
「にしたって……その上、不器用なのだろう」
「ああ。昨日もドールハウスを壊したらしく、せっせと妹者が修理していた」
「そそっかしいヤツだなぁ」
「なんにしろ、彼女が少しでも和んでくれればありがたい。飼って置く価値はある」
「楽そうでいい立場だな」
 弟者が少し目を光らせた。尖ったものがその底に沈んでいる。
けれどそれを素直には出さずに、いつものような軽口に変えた。

「ほう、あなたは拉致・監禁・調教プレイがお好みか。それは気づかず悪いことをした」
 ふいに腕をつかまれる。
「いや、あの、もう充分に堪能いたしました。どうぞお気遣いなく」
「いえいえ昨日一日無為に過ごしたので、こちらの体力は有り余っておりますから。
……誰かさんと違ってな」
「おまえ、少しセルフコントロールというものを覚えたほうがよくないか。
届いたばかりの『篁(たかむら)霊界ぶらり旅』を貸してやろう」
「なんだ、それは」
「小野篁が現世と霊界を行ったりきたりしながらスーパーえろえろを楽しむ話だ。
前半部の実妹との悲恋がテラモエス」
「生憎オレはリアルにしか興味ねぇ」
 ニヤリ、と口もとを歪めた。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)ゼンヘンココマデ。

157 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 21:47:13 ID:SHhhsGLG0
>148-156
GJ!GJ!
前回も十二分に楽しませて貰ったが
今回も期待してる!超!
あと、イノキワロスwww

158 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 21:50:47 ID:oTw+BvU00
>>148-156
平安流石兄弟キタァァァァァァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)ァァ(  ゚)ァァ(  )ァァ(`  )ハァ(Д`)ハァ(;´Д`)ハァハァ
大丈夫ですよ、充分果たしてますよ…!
雅で仄暗い雰囲気といい時々入ってくる2chネタといい大好きだw

>>手酷い扱いを受けるのは何故だかあまり嫌ではない
末期だな兄者wwwwwww

159 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 22:05:58 ID:mCZi5SHSO
>148-156
今回初めて目を通しましたが……

イノキWWWフイタWWWW

160 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 22:07:12 ID:mCZi5SHSO
sage忘れ……すみませんorz

161 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 22:56:43 ID:iEAssvlw0
あまり関係ないが光ってる源氏が激しく気になるw
なんていう良作だw

162 名前:平安U 9:2006/11/25(土) 23:03:32 ID:CC3UoBQ/0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )サイカイシマス


 内裏の中には鬼が住むか、蛇が住むか。
 自分は比較的上手くやっているほうだと弟者は思う。
 親しさを装った悪意、権謀術数。虚飾に満ちた駆け引き。
 まぁ、兄者がおっくうがる気持ちもわかる。しかし彼はその中を泳ぐことが割合に楽しい。
 宿直(とのい)の最中に同輩の一人が耳もとで囁く。他の同輩のゴシップを。
そこそこ使えそうな情報(ネタ)なので、礼の代わりにとある女房から聞いた話を伝える。
 真摯な恋の逸話さえ、利用価値で値段がつく。
 手慣れた様子で噂をさばいて、統合・集積・再分配を行っていると、冷たい一つの視線を感じた。

 ―――従兄弟者だ。
 けっしてこの輪に加わらない。超然とした態度が気に食わない。
 今でこそ主上に弟のように扱われているが、その父が前々帝の御世に謀反に関わった咎で、
遠い土地で流人の息子として育った。そのためか、性格も言動も並みの貴族の子弟とは異なっている。
 頭も切れ、機動性に富み、下々の心理にも詳しい。
 そして弟者にとって不愉快なことに、その面差しは彼に似ている。
 意味ありげなまなざしで、口もとには皮肉な笑み。
何か言いたそうにしているので立ち上がると、沓脱(くつぬぎ)の方に顎を向ける。
 承知して二人、外へ出た。


163 名前:平安U10:2006/11/25(土) 23:05:10 ID:CC3UoBQ/0
 割に親切な男だ、と兄者は評しているが弟者は彼を悪意の塊だと思っている。
 伯父が流されたおり、父者などはあおりをくって苦労したはずだし、
その方が亡くなった後はこの男が都へ戻れるように手をつくしたらしい。
なのに感謝の一つも示す様子はない。

 今も、葉が揺れるたびに音を立てる呉竹の陰で、人を喰ったような笑いを浮かべている。
「……女房たちの噂ほどではなかった、と言うことか。それとも片割れのバカがかまっているのか」
「どういうことだ」
 謎かけのような言葉にも、兄者に対する軽口にも腹が立つ。
「大臣の姫はおまえたちでは足りないようだな」
 意外な言葉に驚きを隠せない。
「…………」
「身をやつして情人と遊ぶのはいいが、市に行くのはやめるように伝えておけ。流石に人目が多い」
「なぜ、おまえは知っている。顔など晒さぬ深窓の姫だぞ」
「たまたま連れていた女房が、もともとそちらに仕えていた者だ。無論、口は止めておいたが」
「それは確かなのか」
「確かだ。ま、おまえの可愛い謀略ごっこなら噂程度でもいいのだろうがな」

 揶揄する言い方に血が昇るが、渾身の力で制御する。
「……礼を言う。見返りに欲しいものはないか。金か、女か、情報か」
「いらないねェ」
 楽しむように弟者を見据える。
「おまえのその嫌そうな顔。充分にそれが報酬だな」
 ニヤニヤしながら行ってしまった。屈辱で青ざめた彼を一人残して。


164 名前:平安U11:2006/11/25(土) 23:07:15 ID:CC3UoBQ/0

「………知っている」
 こんなときの兄者は動じない。庭に出た小さな蛇(くちなわ)一つで大騒ぎする人物と別人のようだ。
「なら何故オレに言わない」
「人の秘密を語りたくない」
「あんただけの問題じゃなかろう。流石家全体の興亡に関わる話だろう」
「あの姫はもともとお子のできない体質なのだ。だから入内なさらなかった」
「それだけのことじゃないっ」

 ……何故、自分はこんなに腹が立つのだろう。弟者は思う。
 兄者は嘘をついていたわけではない。その上結局、深い仲でもなかった。
安堵していいはずなのだが、それまで以上に胸が苦しい。

「その姫君に言ってや……む………」
 唇を塞がれた。思わず突き飛ばす。
 彼もよくやる手だ。口うるさい女房などに。
「オレを女のように扱うな」
「おまえ、怒ってると可愛いな」
「殴るぞ」

 意味は違っても、一日に二度もそんな形容は聞きたくない。
 降参、というように両手を上げて、首を少し傾けた。
「女扱いが嫌ならば、男らしさを証明してもらおうではないか」
 ミエミエの手だ。わかっている。
 問題は、単をちょい、とずらした鎖骨の線から目が離せないことだ。

165 名前:平安U12:2006/11/25(土) 23:08:59 ID:CC3UoBQ/0
 
 隣にいる人を抱き寄せようとして、虚しく空間をつかんだ。
 まだ早朝だ。なのに兄者はそこにいない。
 明かりを点して見渡すと、文机の上の書き置きがあった。
 “一日、頭を冷やせ”
 どうやら参内したらしい。自分と同じ手跡が癪に障る。自分自身もしゃくに障る。
お逝きなさい、と古いセリフを口走りたいほどに。

 珍しく相手は積極的だった。
 彼の欲望はいつも読みにくい。誘いにはのるし、選択をせまれば選ぶ。
けれど、自分から声をかけることはほとんどない。
唐櫃の中身は時たま増えるから、それが無いわけでもないはずだ。
 昨夜は誘いをかけた後も常とは違った。
 自分の上で弓なりになって吐息をこぼした彼の姿。謀みとわかっても胸が熱くなる。
 だからこそ、それを彼にさせた相手が憎くなる。
 そんなことでなだめられる、と思っている彼自身も憎い。
 なめられたもんだ、と反発したくなる。

 とはいえ、表の姿は取り返されて、存在しないはずの我が身一つ。
 さあ、どう出るか。


166 名前:平安U 13:2006/11/25(土) 23:11:31 ID:CC3UoBQ/0

 玉砂利を踏む音が激しい。
 しかし取次ぎの女房はゆったりと現れた。
 呼び出された兄者が簀子(すのこ)に降りると、高欄の下に家人がひざまづいて書状を差し出す。
 一目見て、慌てて殿上間(てんじょうのま)へ引き返す。
 どうにか同輩をごまかして、早々に退出する。
 落ち着いてゆったりとした、いかにも殿上人らしい足取りが、人目がなくなった途端に変わる。
 門から出てすぐ牛車に飛び乗り、可能速度の上限を出させた。

 いつのまにか、東北の対は空だったらしい。
 許されている場所に彼はいない。西の対の妹者の部屋にも。
 信じ難くていったん戻るが、人気のない部屋は妙に広い。
 思いついて引き返し、東門の門番に問う。次に西門に向かう。
「そういえば、母者様のお使いという女房が…」
 背の高い、見慣れぬ女房がむし衣姿で現れたそうだ。
「入らぬのに出て行くとは奇妙ではないか」
 供の者が取り次ぐには、東門から入ったと思ったらしい。
 ―――警備システムの見直しをせねばならん。いや、それは後だ。

「馬を引け!すぐに!」
 ―――あいつの行動力を見くびりすぎた。
 それに、普通の邸なら不信がられるはずの大柄な女房。
母者だのイノキだののいるここでは、そう珍しくも見えない。
 前駆けも出さずに馬を駆る。5名の随身が、さすが精鋭、ぴたりと寄り添う。
 胸の奥に暗い雲が垂れかかっている。
 一人の無事だけ、彼は祈った。


167 名前:平安U 14:2006/11/25(土) 23:14:05 ID:CC3UoBQ/0

 流石家の使いだという大柄な女房は、むし衣も取らずに目合わせを願った。
 やつしてはいるが、どうもただ人ではない。
 身内すじの誰かだろうと察して、左大臣家の姫君は自室前の庭に誘った。
 鮮やかな紅葉が、遣り水の上にはらり、とこぼれる。
 人払いをした庭は広く優美で、自邸のそれより趣き深い。
 陽の下で見る姫君は、思ったより少女めいた可憐さだ。
とても良人をこけにして、浮名を流す女には見えない。

「………お恨み申しあげております」
 無理に作った女声。驚愕した姫の大きな瞳。
「なんのことでっしゃろ。お会いするのは初めてですえ」
 初めてきいたその声は、なまりはあるが愛らしい。
 この声で、その瞳で、体さえ使わず彼の心を捕らえたかと思うと、胸の焔はひときわ燃え上がる。
「姫君は下々のよしなしごとに長けていらっしゃる」
 思うところがあるのだろう。彼女の顔色が変わる。
「けれどほどほどにしていただかなくては。市は人目に立つ場でございますから」
 ずい、と彼女に詰め寄った。

 その途端、築山のつつじの影から、ざっ、と人影が現れて、その身を呈して姫をかばう。
 なるほど、これが件の男であるかと考え、驚かすつもりで忍ばせてきた懐剣を抜いた。
 その光を受けた男の動きはすばやかった。
 怪鳥のごとく宙を飛び、弟者の前を一瞬掠めた。
 はらり、とむし衣がまう。
「…兄者サン?」
 動転した姫の声が聞こえた。


168 名前:平安U 15:2006/11/25(土) 23:17:41 ID:CC3UoBQ/0
 
 こうなりゃもう、仕方がない。
 開き直って腹をくくる。
「ええい、姦夫姦婦そこになおれ。刃の露と変えてくれよう」
「どうして……」
「今まで黙って見ていたが、やはり腹に据えかねた。
恥をかかされた夫の恨み、とくと思い知るがよい……って、聞けよ!」
 何故だか二人の視線は自分にない。それは背後にあてられている。
 そして聞きなれた声が耳もとに響く。

「……弟者、必死だな」
「……兄者サンが二人……」
 呆然とした姫の声。青ざめて、息を切らした兄者の姿。
どっちが必死なんだか、と言いたいところだ。
「そんなに、この女のことが心配なのか」
 仕事を放って、全速力で駆けつけるほど。
「愚か者!」
 ぴしり、と頬をはたかれた。

「俺が心配なのはおまえのことだ。姫の相手を知っているのか。超凄腕の瀧口の武士だぞっ。
坊ちゃんの遊び程度の武術でかなう男ではない。わきまえろっ!」

 改めて男を見る。
 異相だ。細い目、張ったえら。しかしその体は尋常でなく鍛え上げられてしなやかだ。
「……父者にさえぶたれたことがないのに」
 小声でつぶやいてみたが、兄者はかまわず二人に頭を下げている。
「……不肖の弟でして。ご内密に」

169 名前:平安U 16:2006/11/25(土) 23:19:10 ID:CC3UoBQ/0

「どうして兄者サンが知ってはりますのン?」
 姫がもっともな疑問を口にした。
「失礼とは思いましたが、手の者に調べさせました。万が一、姫に仇なす相手でもあったら
一大事ですから…口堅き者どもですのでご心配なさらぬよう」
「合格しはったわけですか」
「そうお思いになってもけっこうです」
 侍の、感情の見えにくい細い目が輝いた。
「ただ、市などはやはり避けていただきたい。風で市女笠が飛んだそうですね」
「気ィつけますわ」
 男が言った。

「さて」
 視線が弟者に戻る。
「女扱いは嫌だとか言ってなかったか」
「……他に手がなくてね」
「いつもの方が好きだな」
 からかわずに、ただ額を軽くこづいた。


170 名前:平安U 17:2006/11/25(土) 23:21:28 ID:CC3UoBQ/0

 風が梢を揺らし、いく枚もの紅葉が澄んだ陽光にきらめきながら散っていく。
 借りた牛車の中で、揺られながらそれを見る。
「…あまり、肝を冷やさせるな」
 女衣装のままの弟者を本当の女人にするように、いつもよりやわらかく後ろから抱きしめている。
「生きた心地もしなかった。あのむし衣の切れ口を見たか?
そのくせおまえの顔に一筋の傷もつけていない。大した手練だ」
「愚か者ですみませんね、と」
「その通りですよ、と。だが、それがいい…って気もするけどね」

 凝ったつくりの檳榔毛(びろうげ)の車に、人は自然と道を譲る。
止まることなくゆるゆると、晩秋の街路を渡っていく。

「少し驚いたな」
 胸もとに差し込まれた指に軽く抗いながら、弟者が言う。
「ん?」
「意外に従者の使い方が上手いな」
「俺はおまえみたいに行動力はないからな。出来ないことは人にまかす」
「おい、こら、よせ」
「あと半時はかかるよな。牛車の中、ってちょっと憧れのシチュでね」
「また例の唐櫃のやつか……やめろって………」
「いや、これは原典。某女流歌人の日記だ。なんと父者の蔵書だぞ。けっこうロマンティストだな。
まぁ、ほんとは車宿りに停めた車で一晩中、なんだが」 
「………う…………」
「……絶対、声を出すなよ」
 兄者が耳もとで囁いた。

                                    了

171 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 23:22:23 ID:CC3UoBQ/0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ アリガトウゴザイマシタ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

172 名前:風と木の名無しさん:2006/11/25(土) 23:44:31 ID:XYyXyPLB0
>>171
GJ!GJ!
セリフが粋で小ねたが面白くてキャラ立てが上手くてもうもう!
誰が誰だか分かるのも凄いな。
従兄弟者のひねくれっこ具合がイカスw

173 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 00:19:58 ID:mavahdcjO
>>171
God Job!
この感動、言葉にできないよ。新刊下さい。
夏に御所行って良かった。



って密通相手ニダーかwww

174 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 00:26:00 ID:zrEcRLd10
兄者じゃも弟者も、本妻も武士も
話し方で誰か解って面白かったです。
そしていわゆるカーセックス(*´Д`)

175 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 00:38:27 ID:GXjl0vdX0
カーセクースキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!
好きだからもっと平安もの勉強するよ!

176 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 00:50:23 ID:bl3XZyRv0
> 母者だのイノキだののいるここでは、そう珍しくも見えない。
ここで吹きました。GJです。

177 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 00:55:07 ID:s8i38OP30
『篁(たかむら)霊界ぶらり旅』の内容に吹いてしまった。
平安もの楽しいなw

178 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 05:33:23 ID:q4Snp50fO
>171
GJGJGJ!!!
続きお待ち申し上げておりましたノシ
そこはかとなく漂う文学のカホリの中にネタが入るところが最高です。
弟者カワユス!
牛車でセクロスキタ━━(゚∀゚)━━!!

179 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 05:59:32 ID:dV5LKYH/0
>>120-128
原作知らないけど萌えた。GJ!
先生可愛いな。

180 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 13:25:59 ID:xwShevOc0
格好いい兄者に萌えす〜!

181 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 14:58:42 ID:LZiGlKYu0
>>131-135
萌えたっちゅーか泣けたっちゅーか、もう…。・゚・(ノД`)・゚・。
GJでした

182 名前:キム空:2006/11/26(日) 18:44:55 ID:qposMedE0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  キム/タクと唐/沢がドラマで共演したらという妄想からだモナー
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  勝手に作ったオリジナル作品だカラナ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 前スレ403-409の唐視点・キム×唐だゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ※本人とはなんの関係もありません
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

183 名前:キム空1/7:2006/11/26(日) 18:45:43 ID:qposMedE0
この間、木村が一週間出張だった。
前日の晩飯の時だったか、突然
「あ、空沢さん、俺明日から一週間仙台なんで。ちゃんと一人でも飯食ってくださいね。」
と言った。
俺は木村が買ってきて木村が焼いた秋刀魚に木村が買ってきて木村が卸した大根を添えて口に運びながら
「おう、行って来い。しっかり偵察してこいよ」
なんて偉そうに応えたのだ。
その時は軽い気持ちだったんだ。一週間居ないのか、たまには一人もいいななんて思うくらいに。
次の日の朝、俺が起きた時には木村はもう出発していて居なかった。
キッチンに行くと朝飯にラップがかかっていた。

帰ってくると、家を出たままの状態の真っ暗な我が家があった。
朝飯の残骸がシンクに突っ込まれたままだった。
コンビニで買ってきた晩飯を食いながらテレビを見て過ごし、朝飯の片付けをしてシャワーを浴びて寝た。
木村の帰りが遅い事はたまにあるし、別になんとも思わなかった。
翌朝、そういえば朝飯を買ってくるのを忘れた事に気付いたけど、朝飯を抜く事もたまにあったから
やはり特に何も気にならなかった。
帰った時に部屋の見た目がスッキリしているように昨日脱いだシャツを洗濯機に放り込んで家を出た。

その日は外食をした。どうせ早く帰ってもやることは無いし、外食は嫌いじゃない。
コンビニで朝飯を買って家に帰った。
次の朝、寝坊した。遅刻しそうだったから、せっかく買った朝飯もそのままに家を出た。

184 名前:キム空2/7:2006/11/26(日) 18:46:23 ID:qposMedE0
帰ると、脱ぎ散らかされた服が出迎えてくれた。それらを洗濯機に突っ込み、今日の服も脱いで
洗濯機を回し、シャワーを浴びた。
出前を取り、そういやあったな、と思い出したコンビニ弁当は賞味期限がきれていた。
ベッドに入って、ゴミ出しをしていない事に気付いた。
次の朝、飯の事はもうどうでもいいと思いながら昨日の夜干して置いた洗濯物をそのままに家を出た。
会社に向かうバスの中で「ちゃんと一人でも飯食って下さいね」とか言っていたあいつを思い出していた。

その日は会社で理不尽なクレームを受けて俺はイライラしていた。
見かねた同僚が飲みに誘ってくれたので久々に酔いつぶれて帰った。

帰りがけのタクシーの中、俺は木村が予定より早く帰ってたりしないものか、なんて思っていた。
別になんてことはない、話す相手が欲しかっただけだ。同僚と馬鹿話をいっぱいして、気分が高揚してたからな。
なんだか話したり無いような、まだ誰かと話をしたいような、そんな気分だっただけだ。
マンションの前まで来た時、真っ暗な部屋の窓を見て、そりゃそうだよな、なんて一人苦笑したりして、
タクシーの運転手に「釣りはいらないよ」、なんて大した額でも無いのに言いながら部屋に戻った。

玄関を開ける。真っ暗だ。
酔って少し重い身体を引きずりながらリビングにあるソファへ倒れ込んだ。
…一週間て言ってたっけ。それって明日帰ってくんのか?それとも、日曜日か?
家の会社は土日休みだから、明日帰ってくるんだよな?…また明日の朝飯買って無いな。
ごちゃごちゃと考えながら、天井をみていた。
ここで呼んだら、玄関を開けて入ってくるような気がした。
あいつはなんでか知らないけど俺の事が好きだから、そのくらいはする気がする。
だけど呼ぶもんか。
お前が居なくたって、俺は平気だからな。
俺は別にお前の事は嫌いじゃないが、そういう意味の感情は持っていないんだ。
だから俺がお前の名前を呼ぶことは、無いよ。

185 名前:キム空3/7:2006/11/26(日) 18:47:17 ID:qposMedE0
そのまま少し寝てしまった。
気付くと時計は深夜3時を回っていた。
シャワーでも浴びてベッドで寝ようと身体を起こす。
ふと、キッチンを見た。
木村が料理している後ろ姿が思い浮かんだ。
あ、そうだ、明日はゴミの日じゃないか。
…うんそうだ、ゴミの日だ。
こんな真夜中に俺は家中のゴミを集めだした。
朝やると時間が無いからな。
そういえば干しっぱなしだった、と洗濯物を取り込んで、雑に畳んでタンスにしまう。
シワがよっている気がするが、アイロンをかける気にはなれなかった。
まあ明日、帰ってくるんだろう。あいつは。
さすがに掃除機をかけるのは面倒だったから、そのままシャワーを浴びて寝た。

今朝はすっきり起きた。
まとめておいたゴミを出して、会社へ向かった。
俺はどこか、気分が良かったかもしれない。
理由なんか少しわかっていたけど、わからない振りをして。

だけど木村はその日帰ってこなかった。
今日じゃないのか、土日も仕事なのか。休日出勤とは、ご苦労な事だ。
俺は残業もせずに帰って来たっていうのにな。
なんで俺が。
まあいい。
いいじゃないか、いいだろうが。

その日は何もせずに飯も食わずに寝た。

186 名前:キム空4/7:2006/11/26(日) 18:48:12 ID:qposMedE0
今日は休日なので、起きたら昼を過ぎていた。
昨日あんなに早く寝たのに、夢も見なかったな。
何もやる気がしなかった。掃除くらいしたいものだが、何もやる気がしないので仕方ない。
おかしいな。木村が来る前に一人暮らししていた期間だってあったのに。
そのままリビングでダラダラと過ごした。腹が減ったが、出前を取るのも面倒だった。
冷蔵庫を探すと林檎があったので、そのままかじって食べた。
夜、普段見ないような純愛物のドラマを見た。たまたまついていたチャンネルでやっていたからだ。
面倒だから変えずにそのままぼんやりと見ていた。
俺にもこんな時代があったなー。
木村は、今もそんな時代に居るのか?
俺にはわからんよ。俺のどこがそんなにいいんだか。俺みたいな、こんな男が。
今日は髭も剃ってないんだぜ。
テーブルの上に置いてある林檎の芯を見ながら、木村の事を考えていた。
あいつが女だったら…なんてのは、考えないようにしていたのに。つい、考えてしまう。
一人で居るとろくな事を考えないから困るんだ。
あいつもそう思うんだろうか。俺が女だったら、って。有り得ん。こんなだらけた女、余計嫌だろう。
そんな事を色々考えていたら、あいつと俺が絡み合ってる場面まで想像してしまった。
ほんっと、一人で居るとろくな事を考えない。
げええええええええええええええええええええええええええええええ
無理!無理無理無理!!とてもできない!!
まず、勃つもんか。触りたいとも思わんぞ。でも待て、あいつは思うんだよな。
現に俺に触ってくるし、キスもしてきやがるし、この前のあれはあぶなか…
ん?ちょっと待てよ俺ってそういえば女役?あいつの中ではそんな感じだったよな?
そうか、あいつも男だ、俺に抱かれたいと思ってるわけじゃなくて、俺を抱きたいのか!
途端、全身の血が沸き立ち、俺はソファの上で声にならない声を上げながら転がった。

187 名前:キム空5/7:2006/11/26(日) 18:49:13 ID:qposMedE0
…どうしよう…
いや、身の危険は感じていた。何度も何度もやばいと思った。
でも俺がそのつもりないから大丈夫だって思ってたんだ。
でも俺がそのつもりじゃなくても大丈夫じゃないかもしれない。大丈夫じゃないかもしれない。
…でもあいつ、よく持つよな…一緒に暮らしてて。
俺みたいなヤツを好きになって、飯作って掃除して洗濯して、たまに抱きついてくるけど、
俺が嫌がるような事はしない。
どこがいいんだ。どこがいいんだよなぁ。ただのくたびれた40過ぎの×一男だぞ。
なぁ。
木村。木村の馬鹿。
顔が熱い。
触ったら、髭がジャリジャリした。
俺、駄目だ。こんなんじゃ駄目だ。
「違うんだ…」
何が違うのか自分でもよくわからんが、知らず、呟いていた。
よくわからんままよくわからん焦燥感に駆られ風呂に入った。
一度考えてしまったよからぬ妄想は何をしていてもついて回るものだ。
考えまい、考えまいとしているのに、シャンプーをしながらこの間の夜の事を思い出していた。
俺、欲しかったんだよな。そういうんじゃないけど、木村が……欲しかった。でもそういうんじゃない。
ただ、木村、ここに居ればいいのにって、な…キスぐらいならしてもいいのに、みたいな。
むしろ、俺、したかった、気、が、する。いや、嘘だ。嘘だ嘘だ嘘に違いない。
でもそのまま木村が乗っかってきて腹めくられた時はそれは無理と思ったじゃないか。うん、まだ大丈夫だ。
でもキスはいいのか。…いいかも。いや、いや、いい時もあるって程度だ。
ここに居ればいいのにって思ったけど、朝起きて隣りに木村がいるのに気付いた時は腹が立った。
俺は、矛盾しているようだ。ああもうどうしたら…。どうしたらいい。どうしたらいいんだ俺は。馬鹿木村。
居なくて良かった。木村が今日居なくて良かった!どんな顔してりゃいいんだってんだよ。
風呂から出て身体を拭きながら、鏡を見た。…どう見てもおっさんだ。上から下まで全体的におっさんだ。
木村って、男が好きとかいう以前に、変態だな、きっと。あんな変態もいるんだなー世の中には。

188 名前:キム空6/7:2006/11/26(日) 18:50:13 ID:qposMedE0
ベッドに入ったのに、俺は眠れずに居た。今日は昼まで寝たからといって、もう2時過ぎだ。
なんとなく喉の乾きを覚えてキッチンへ行った。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし、コップに注ぐ。
このミネラルウォーターは木村が好きだからいつも置いてある。水道水をぐいぐい飲んでいた俺も
最近じゃこれしか飲まなくなっていた。
コップの中の水を一気に喉に流し込むと、軽くむせた。
ああ。
もう多分、ちゃんと認めなきゃ駄目なんだろう。
そういう所まで来ちまってるんだ。俺は。
目を逸らしていたけれど。

…俺の中には、木村が居る。

ちっさいけどな。こんっっっっっっっなにちっさいけどな。ちっさいけど、でも確実に。
居るんだ。
参った。
顔が見たい。つってんだよ、俺が。言ってねえけどな。
なぁ、来いよ。木村。
なぁ。
「………むら…」


呼んだのに、ヤツが来ないから。
俺はなんだか寂しくなって、ヤツの部屋に行って、きちんと整えられたヤツのベッドに潜り込んだ。
木村の匂いがする。同じもん食ってんのになんで人は違う匂いがするんだろう。
そのまま、俺は眠りについていた。

189 名前:キム空7/7:2006/11/26(日) 18:51:04 ID:qposMedE0
起きた時景色が違うので慌てた。
こんな所を見られたらマズイ。し、こんな事をしたとばれてもマズイ。
俺は飛び起きると元通りベッドを綺麗に整え、即行で木村の部屋を後にした。
顔を洗い、髭を剃り、身支度を整え買い物にでかけた。晩飯の材料を買いに。
帰ってから部屋の掃除、洗濯をして、まだ昼だというのに晩飯のカレーの支度にとりかかった。
これだけは、できるんだ。小学校の時キャンプで作って以来。
キャンプがすごく楽しかったから、ガキの俺はその後もキャンプ気分を味わいたくて何度も何度も作った。
いきなりこんな事をしたら木村がびっくりするかもしれない。
でも、作りたいんだからしょうがない。
お前が帰ってくるのが俺は嬉しいんだ。しょうがない。
でも勘違いするな。まだまだ全然そういうんじゃないからな。
ただ今日は、お前が帰ってくるのが、俺は嬉しいんだ。だから、しょうがない。


そんな事があって、俺はあいつを意識しだしてしまった。
たとえばそう、こんな階段であいつと二人きりになると。



190 名前:キム空:2006/11/26(日) 18:52:26 ID:qposMedE0
 ____________
 | __________  |                     ビデオケースに入ってた作者のメモを読むカラナ
 | |                | |                      「階段のくだりは近々投下させていただきたいと思っております。
 | | □ STOP.       | |                      前スレでリクエストしてくださった方ありがとうございました。
 | |                | |           ∧_∧        また、私こんな物を書いておりますがご本尊の知識は皆無で
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )        二人が共演した事があるという事を知りませんでした。 
 | |                | |       ◇⊂    ) __    「キミヲ忘レ無イ」今度見てみます。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |   感想を書いてくださった方本当に本当にありがとうございました。」
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

191 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 1日目2-1:2006/11/26(日) 19:30:30 ID:RUno5pLB0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 苦痛スレから誘導されてきました。連載です。

満月の夜は好きだ。
月明かりで夜道が照らされるから、出歩く人間がいる。
行方不明となる事件が続いているにもかかわらず、だ。
巷では様々な憶測が噂されている。
最も有力なのが【吸血鬼】説であるが、一般的に伝承されている
「血を吸われて死んだ者は、また吸血鬼として蘇る」という話が現実に
起こっていないから――――見た者が、いない。信憑性に欠けていた。
真相はというと当たり、で今夜もまた獲物を物色しに吸血鬼が闇の中を佇んでいる。
そうとは知らない男が一人で歩いてくれているから、吸血鬼は笑みを浮かべた。
だから、都会の街は好き。
その吸血鬼は成人間近の少年を思わせる姿をしていて、ボルドー色の瞳と
妖艶な口元が印象的だった。
獲物を定めた唇の奥には、二本の犬歯。
ふらりと現れた少年に惑わされた男が自ら近づいて、首筋を喰われる。
身体中の血を一滴残らず貪られて――――獲物の身体は霧散して消えた。
再び蘇ることはない、完全なる消滅。
だから吸血鬼など増産されない。

192 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 1日目2-2:2006/11/26(日) 19:31:17 ID:RUno5pLB0
食事を終えた吸血鬼が満足げな表情で闇に消えようとした時、空を切った何かが
上体に絡みついた。
「…………っ!」
強く引かれる力に抗われず、無様に転倒する。自身を拘束する正体を知った時には、
頭上で聖職者の服を着た男が不穏に笑っていた。
「失礼。でも不意をつかなければ、あなたを捕らえられないと思いましたので」
「――――捕らえる? 退治、の間違いじゃないのか?」
「いいえ。吸血鬼退治は禁じられているんですよ。ですから捕らえて、犠牲者をなくそうかと」
「……つまりオレ様を監禁するってこと?」
「はい。話が早くて助かります」
この場にそぐわない人当たりの良い笑みを浮かべて、純銀の鎖をまた乱暴に引っ張った。
力を封ずる、神聖なるもの。
だから今の吸血鬼は反撃など出来やしない。
なんたる失態。なんたる、屈辱。
ぎりぎりと奥歯を軋ませながらも、余裕の表情を保っていたのは彼の誇りゆえ。

193 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 2日目4-1:2006/11/26(日) 19:32:08 ID:RUno5pLB0
この聖職者は見た目以上に腕力があるようで、吸血鬼を容易く引っ張って行く。
上体を拘束されては足下のバランスが悪く、吸血鬼は引かれるまま歩くしかない。
少しでも近づけば食らいついて――――といきたいところだったが、聖職者はその辺りを
きちんと心得ているらしい。身体を不用意に密着させたりなどせず距離を保っている。  吸血鬼は、おとなしく隙を窺いながら黙って従っていた。
この鎖から抜けられない以上、吠えることが美徳だろうか。
否。
この街の中心となる修道院にたどり着く。
ここで暮らす他の修道士は寝ているのだろう――――誰もいない回廊を明かりも点けずに
進む。靴音と鎖が動く音だけが、やけに響く。
途中で夜警をしていた修道士に会い、吸血鬼を訝しげに見る視線にも司祭と呼ばれた男は
「これから彼に悔い改めていただくんですよ」と何でもないように答えていた、満面の笑みで。
やがて禁域らしいところに入り込み、突き当たりの手前で隠し扉を開けた。
このまま進めば、おそらく地下牢があるのだろう。秘密の隠し部屋といったところか。
吸血鬼は反抗的な表情を隠しもせずに司祭を睨みつけるが、彼は笑みを浮かべたまま動じない。
吸血鬼がここで騒ごうが構わないとでも言いたげだ。

194 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 2日目4-2:2006/11/26(日) 19:32:55 ID:RUno5pLB0
「ようこそ。ここがお楽しみの部屋ですよ」
秘密の隠し部屋の方が正しかったようで、簡素でありながら整えられた部屋。
太陽の光すら入らないが寝心地の良さそうなベッドがあった。
「……おまえだけが楽しいだけじゃないか?」
「いいえ? もちろん、あなたにも楽しんでいただきますよ……」
吸血鬼は今、腕ごと上体を鎖で巻き付けられている。
拘束し直すには、一度はこの鎖を外す必要があり――――それが脱出の機会である。
けれど司祭はここでも隙を見せることはなく、先に吸血鬼の足を純銀の鎖で封じ、
更に首までをベッドに固定する周到さで――――これでは、喰らいつくこともできない。両手首を別々に吸血鬼の頭上に繋いだ。
首と足を解きながら、司祭はふふっと笑う。
「あなたは、ここで私に飼われ続けるんですよ……」
「いやだ、と言ったら?」
「あなたに選択肢などないでしょう? あるのは、反抗的なまま痛い目を見るか、
それとも私に従って快楽を楽しむか、だけです」
「そういう趣味かよ。司祭サマが聞いて呆れるな」
人間と交わるなど屈辱以外なにもない。ましてや、自分が犯されるなど……っ。
「わりと多いんですよ、実は。……で、どちらを選びますか?」
「嬲るのが好きなんだろ? この変態が」
「おやおや。仕方のない子ですねぇ」
司祭が、くすりと笑った。  


195 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 2日目4-3:2006/11/26(日) 19:34:40 ID:RUno5pLB0
「気が変わったら、いつでもどうぞ?」
言いながら、吸血鬼の服を乱暴に引き裂いていく。見せつけるように、布を
裂く音を楽しみながら一糸まとわぬ姿を値踏みしながら見下ろす。
「ああ……とても綺麗な乳首をしていますね」
「……っ」
司祭の細やかな指が触れて、吸血鬼は息を詰める。外気に触れたのと与えられた刺激で
きゅっと縮みながら硬くなるから、面白そうに舌先で愛撫した。
「……ぁ……ん」
「どんなに声を出しても、外に聞こえたりしませんから安心して下さいね」
胸先に触れながら囁くからくすぐったい。歯で甘噛みされて、身体がびくりと強張った。
「……っ……ぅ」
「あなたさえ素直になって下されば、優しくしてあげますよ?」
「――――おまえがヤりたいだけだろ?」
オレにはその気がないと吸血鬼が応じると、司祭は少し笑った。
「では。誰が主人であるか、わかっていただきましょう」
ベッドから立ち上がりながら、机に置かれていた水差しを手にする。
「いったい、いつまで耐えられますか?」
手のひらに水をかける。こぼれて床が濡れることなどかまわない。
滴のしたたる指を吸血鬼めがけて弾くように動かすと、飛び散ったそれが彼の肌を焼いた。
「……! ああっ!」
燻った煙を上げて、水が蒸発するまで酸のように皮下を傷つける。
血が流れ、けれど熱が治まる頃には肌が再生して元の美しい身体に戻る。
しかし、痛覚は人並みにあるから痛みに耐えた息が荒い。
「聖水ですよ。どうです、ずっとこうやって遊びますか?」
「おまえこそ、素直に遊ばせて下さいって言えば?」
互いに譲るつもりもない瞳が、刹那にぶつかる。


196 名前:オレ様鬼畜吸血鬼×鬼畜聖職者 2日目4-4:2006/11/26(日) 19:36:08 ID:RUno5pLB0
「強情な人だ。……けれど、そうでなくては私も楽しくありません」
「狂ってるよ、あんた」
その言葉ににこりと微笑んだ司祭が、再び手に滴らせた聖水を吸血鬼の身体に散らしていく。
さすがに声を押し殺して耐え、血の焦げる臭いに気分が悪くなりかけた。
美しき吸血鬼が苦悶する表情は司祭の目を愉しませ、また鬱屈していた欲求を確実に
満たしてくれた。
「ねぇ、もっと苦しんで」
恍惚と呟きながら、堅苦しい服の奥から自らの男根を取り出して聖水をたっぷりとかけた。
その先の行為を察した吸血鬼が顔色を変えながら、唯一自由のきく下肢を暴れさせて抵抗
するが、叶うはずもない。足首を容易く押さえつけられて、開かされて――――凶器でしかない
モノが吸血鬼の身体を貫く。
「――――あああああっっっっ!!」
声の限り、叫んだ。見開いたボルドー色の瞳から大粒の涙が溢れ、身体が痛みに耐えられずに
狂ったように暴れる。そのたびに手首の鎖が食い込んで皮膚を裂くが、その痛みなど感じない。
焼きごてで貫かれているようなものだ。これ以上の苦痛はあるだろうか。
司祭が貫いた秘部からは血が流れ、腸壁を焼く音がいやに大きく聞こえる。
内部では未だ聖水が彼の身体を傷つけ続けている。
「あなたの中は、とても熱い……最高の身体ですよ」
言って、そろそろ傷の癒えた秘部を揺さぶって最奥までつながる。
病的な息を繰り返す吸血鬼の姿は、もう司祭の手に堕ちたのだろうか?
焦点の定まらない瞳は、どこを見ようとしているのか……。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・) また今夜来ます。

197 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼:2006/11/26(日) 19:42:30 ID:RUno5pLB0
……なんてこったい。
カプ表示間違えた。逆です。ギャァ。

198 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 21:07:30 ID:dwe5mIYU0
>>182-190
テラモエス!!!!
空沢さんかわいいよ空沢さん(*´Д`)ハァハァ
続きもwktkして待ってます。

199 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 21:20:54 ID:ZOSw14ce0
>182
うわー待ってた!GJ!!空沢さんカワエエ…
ジリジリしながら続き待ってるよー!

200 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 21:27:14 ID:zrWdHWIN0
>197
GJJJJJJJ!!!
続き気になる!かなり期待して待ってるノシ

吸血鬼萌えだ

201 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 21:38:10 ID:I8zoMcBA0
続きは先日見たような・・・気のせいかしら(・ω・)?

202 名前:風と木の名無しさん:2006/11/26(日) 22:08:18 ID:dylZbxV20
>>190
GJ!
必死に自分に言い訳してる空さんテラカワイス!

203 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 00:02:43 ID:USr9fChE0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  輝き193を読んで1日妄想が止まらなくなった。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  事件の影に女ありなので嫌だった人はスルーしてね。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ネ、ボクタチスザマジクズレテネ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

204 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 00:03:26 ID:NR7Wb5PH0
風呂上りで濡れた頭を拭きながら、目の前の男は彼女の話を続けている。
「汚いって断ったんだけどさあ、止めてくんないんだよね」
余程印象が強烈だったのだろう先ほどから彼女との夕べの経緯を延々と、そして滔々と語り続けているのだこの男は。
今晩は泊めてもらうことになっているからもしかすると一晩中聞かされるのかもしれない。とちょっと憂鬱な心持になりながら、同じく風呂上りの俺もゆっくりと爪を磨いている。

「ふーん。でもさ大丈夫なの?」
見えてはいないがキョトンとした顔で僕を見ているのが手に取るようにわかる。
「ケツの穴広がってたりしてwww」
ビクッと飛び上がった男はパジャマの上から自分の尻に手を当てる。
俺の前では高校生の時分と思い出させる子供っぽい仕草。
それを見てふと長いこと忘れようとして忘れることのできない考えが頭に浮かぶ。
「・・・見てやろうか」
「おえ?」
「今更なに言ってんだよ、お前のケツなんてガキのころから見慣れてるじゃん。」
男はケツとケツの穴は別もんだと笑いこげた。



205 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 00:04:01 ID:NR7Wb5PH0
俺はことさら陽気を装って笑いながら男を後ろ向きに膝立ちにさせる。
「ほれ、手を突いて。」
男が言われるままに四つんばいになった処で、パジャマとトランクスを膝まで一気に押し下げた。
「おい、ちょっと待てやー」
我に返ったらしいが、すでに俺は男の膝を固めさらに背中を押し倒した。
尻の肉を押さえると腰がビクリと震えて笑い出す。
「あほー。やめれー。」
まだ冗談のうちだと思っているのだろうが、湯上りの温もりを持つ肌に触れてしまった俺はもう止められそうにも無い。

肛門にそっと指を添えてみると更に背中が震え、激しく上体をそらそうとしたがクッションへと押さえ込んだ。
「むぎゅ」
なにか抗議の声を上げてるらしいが、聞こえない振りをする事にした。

改めて尻をしっかりと押さえると広げた中心に唇を寄せてみる。
「ふ・・・」
男の声にならない声を聞いたとたん俺の理性は砕け散り夢中で唇と舌を動かしていた。
指も沿え縁を撫で回しそっと差し入れてみる。

206 名前:終わり:2006/11/27(月) 00:04:47 ID:NR7Wb5PH0
「あ、はぁ、はぁ、はぁぁ…」
飲み込まれていった指の数は3本になり、気がつくと少なかった抵抗もほぼ消えて切ないあえぎ声だけが耳に届く。
俺は膝の上から降りて男の膝を割ると男が抗議するようにうっそりと腕を動かした。
その手を掴み男のペニスに添える。
「え・・・」
自分自身の反応に驚いているらしく撫で回している。そう先ほどから驚くほどの雫が男のペニスから滴っているのだ。
やがて男は自分で扱きだしたが俺は邪険にその手を払いのけた。

「もっと良い事しようか」
俺はゆっくりと男の体に自分の体を重ね耳もとで囁いた。
「ゴム持ってんだろう、出しな。」
素直に枕元からそっと取りだされた小さなパッケージを受取りながら俺はほくそ笑んだ。
もう少ししたらキスもしてやろう。
今までできなかった分全てのキスを。

207 名前:終わり:2006/11/27(月) 00:07:08 ID:NR7Wb5PH0
 | __________  |                     良く分からないがつぼにはまったらしい。
 | |                | |                 本分よりも擦るテンプレ苦闘した1時間であった。     
 | | □ STOP.       | |                   しかもタイトル名前欄忘れて申し訳ありません。
 | |                | |           ∧_∧     以上オソマツ!!      
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )       
 | |                | |       ◇⊂    ) __   
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |  
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


208 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 00:21:28 ID:SEalAlslO
>>182
キム空カワユス
もう一息っぽいよ木村

209 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 00:47:17 ID:qNiQW4WK0
>>203-207
元ネタは分からないけど萌えました!
攻カッコヨス…!

210 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 01:10:42 ID:znC9AtR30
>>203
むぎゅに萌えた
攻め素敵だよ攻め

211 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 01:17:00 ID:hkVVqXJQ0
>>182
キム空まってました!!!
階段のお話お待ちしてます!!

212 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 3日目3-1:2006/11/27(月) 02:09:50 ID:p76LcNLR0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 

強張りの解けた身体はだらしなく体重を預けていた。
無理もない。
あれだけの苦痛を受けて、それでも平静を保つことができるだろうか。
吸血鬼の瞳は虚ろで血で滑りの良くなった秘部に司祭を何度も受け入れた。
「ほら。誰が寝て良いと言いました?」
頬に平手打ちされる痛みが走って、吸血鬼は意識を取り戻す。
「……なん……だよ。まだヤッてるのか?」
相当溜まってるんだな、と鼻先で笑うと司祭は満足げに応じる。
「ええ。あなたの中はとても具合が良いので、つい」
吸血鬼が彼を怯えるのでもなく、服従する気もない様子を察して笑いがこぼれる。
最高のおもちゃを手に入れた、と。
どんなに痛めつけても決して壊れない。
皮膚を裂けば悲鳴を上げ、けれどすぐに美しい姿に再生する。
これ以上のものはないと思った。
自分の隠してきた欲望を満たしてくれる存在。
この秘密の部屋でいつまでも続けられるのかと思うと笑いが止まらなかった。
正気をなくされてはつまらない。
服従されたら興味が失せる。
この、生意気な口をきく彼が愛おしい。
どこまでも加虐心を煽ってくれるから。

213 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 3日目3-2:2006/11/27(月) 02:10:48 ID:p76LcNLR0
「……あっ……ん……」
「気持ちよくなってきましたか? あなたのココ……勃ってますよ」
腰を掴まれながら揺すられて、強弱のある動きで突かれる身体は快楽を知りはじめた。
先ほどの地獄を味わったかのような苦痛は、もう消えた。
司祭の男根が吸血鬼の最奥を突くたびに身体中がぞくぞくと総毛立って、
彼の中心からはぬるぬるとした体液がこぼれてくる。それを司祭が指でこすりつけて
刺激を与えるから、気持ちよくてたまらずに声が出た。
「……っ……ああ、やぁ……ぅ」
「ふふっ。毎日こうして可愛がってあげますからね」
「……ふざ……、けるな」
情欲に濡れた瞳で、ぎっと司祭を睨みつける。
「こんな状態で私を見てもダメですよ。ほら、ちゃんとイかせてあげますから……」
交わる動きを早めると、吸血鬼は切なげに声を上げた。
「……あ…や、やめ……そんな……ん……深……くっ……」
「ちゃんとあなたをマゾに躾けてあげましょう」
その言葉の意味を、吸血鬼は気に留めなかった。もっとも気に留めたところで、
司祭の性癖から逃れる術はないのだが。
聖水に濡れた手が、また吸血鬼めがけて滴を飛ばす。
――――今度は、その美しい顔に。
「……っぎゃあああぁぁぁ!」
醜く焼け爛れ、耐えきれずに無様な悲鳴を上げた。
その拍子で自らが白濁したものを飛沫させたとは気づかずに。
「……ああっ、いい締め具合です……きつすぎますよ」
身体が激痛にのたうち回ろうとして、秘部の中を司祭ごと強く締めつけた。
まるで搾り取られるようにして、彼の中で司祭も達し――――どろりとしたもので
吸血鬼の最奥を汚す。 


214 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 3日目3-3:2006/11/27(月) 02:12:08 ID:p76LcNLR0
「……おまえっ……よくもオレ様の顔を」
ようやく傷が癒えて美しい顔を取り戻した吸血鬼が、怨望を吐き出すような声で司祭を見た。
「いいですね……その顔。とても魅力的ですよ」
うっとりと見つめて、司祭は吸血鬼の頬を指で愛しげに触れる。
その指に喰らいつこうとするより先、司祭は素早く引っ込めて満足げに笑った。
「どうですか、人間に陵辱された感想は?」
司祭が吸血鬼の秘部に視線をやった先で、とろりと白濁した体液が血の赤とともに
流れこぼれてくる。
それを肌で感じ取ったのか、吸血鬼が嫌悪を露わに司祭をもう一度睨んだ。
「――――楽に死ねると思うなよ、この似非司祭が!」
「はははっ。あなたが私を殺すというのですか。悪くありませんけど、
いったいどんな死に方をするんでしょうね?」
「簡単だよ。オレ様に、血を吸われればいいだけのこと」
いつまでもその隙を狙ってやるからな、と言って言葉を続ける。
「なぁ、おまえ。オレ様が獲物を綺麗に食べ尽くすの、何故か知ってる?」
「さぁ? お腹が空いてるからですか?」
「オレ様に吸われると毒が回るからさ。毒が回って、狂いながら苦しんで死ぬ。
……いっそ消滅させてやるのがオレ様の優しさと美徳なワケ」
「つまり、私の場合は中途半端に吸われてしまうと」
「ああ。品行方正を装った偽善者な司祭サマが狂うさまは見物だなぁ。今まで
培ってきたもの全てを失うのさ。地位も名誉も、何もかも」
言って愉快そうに笑う。それはとても無邪気な笑みで、両手首を鎖で繋がれた
吸血鬼が見せる態度ではない。
「それは楽しみですね。私が堕ちるか、あなたが堕ちるか……」
司祭は本当に嬉しそうに微笑んだ。  

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・) まだ続きます。また今夜。

215 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 03:15:23 ID:QLLEuAYU0
>191-196>212-214
俺様受けに激しく萌えた
これって原作あり?
原作も読んでみたす
今晩も楽しみにしてます(-人-)萌えネ申様

216 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 中の人:2006/11/27(月) 05:46:57 ID:p76LcNLR0
>215
ありがとうございます。
これは苦痛スレの住人が投下した萌えに吸血鬼スキーな自分が釣られて
書いたオリジです。説明不足で申し訳ない。

217 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 06:36:50 ID:6Cdbqu8E0
>214
 とても面白くなおかつ萌えるのだが、やや鬼畜スレ向けでないかとも思う。
 でも、続き楽しみ。

218 名前:キム空:2006/11/27(月) 19:25:34 ID:EueSKtM80
>>201
前スレのが出張から帰ってきたキム視点で
今回のがキム出張中の空視点で
感想の姐さん方が言ってる「続き」っていうのは「階段のくだり」
っていう新しいお話の事だと思います。
今回のお話の続き(キム帰宅)は確かに前スレにありますよー

219 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 19:52:58 ID:L9gPr0VI0
>190
キム空だ〜〜〜!!GJです!!
もうそろそろアレですか!?
キムがんがれ〜〜〜vvvvvv
でもそうなっちゃうとちょっと寂しい自分もいる。

220 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 21:00:54 ID:WABxxJip0
>>218
201ですアイシー!。クレ厨イクナイのでイロイロ期待だけ書いておきます(*´Д`)ハァハァ

221 名前:風と木の名無しさん:2006/11/27(月) 23:43:06 ID:mtQ0C2Vd0
鬼畜スレ荒れてるからなあ

222 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 4日目3-1:2006/11/28(火) 05:26:12 ID:ObsVkLzl0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 日頃の自分にはあり得ない速度で書いてるよ。

司祭は昼間は本来の職務に就き、夜になれば吸血鬼を監禁した隠し部屋を訪れる。
吸血鬼はといえば、夕方までを寝て過ごし――――もっとも、窓がないので正確な
時間はわからない。司祭がいない時間がそうなのであろう。従来であれば活動をはじめる
はずの夜間は、司祭の相手をさせられている。
このうえなく屈辱で、無比なほど不愉快だ。
そんな日々を何日も過ごした。
何日も、何日も。
じっと。
吸血鬼はその瞬間を待ち続ける。
時として司祭のする行為に憤慨しながらも、妙に冷静な吸血鬼の様子が司祭は気になった。
「いったい、何を待っているのですか? 仲間の助けでも?」
「まさか。そんな情けねぇ真似はしない。それにオレ様は仲間などいない」
「一人ですか。まぁ、自由奔放なあなたらしいですね」
「ああ。格下の奴らとつるむなんて、冗談じゃない」
自分は高貴な存在なんだぞ、という吸血鬼に笑って、司祭はグラスに赤ワインを注ぐ。
「食事ですよ」
「ふざけるな。人間の血を飲ませろ」
「あなたのご要望にお応えしたいのですが……それは無理です」
にこりと微笑んで、グラスを吸血鬼の口元に近づける。しかしベッドに頭上で両腕を
繋がれた姿勢では飲みにくい。司祭は手慣れた仕草で吸血鬼の顎関節の辺りを力強く片手で
押さえながら、自らの口に含んだ赤ワインを口移しで飲ませた。
吸血鬼の口を動けないように固定しなければ、噛みつかれてしまうからだ。
「……っ……ぅぅ」
「どうです? この修道院で造ったワインはなかなかの評判なんですよ」
「……最悪の気分で飲まされるワインが、美味いわけないだろ」
「それは残念です。しかし、飲まないと餓死してしまいますよ?」
そうなれば私を出し抜けません、と再び口移しを繰り返す。
 

223 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 4日目3-2:2006/11/28(火) 05:27:02 ID:ObsVkLzl0
何度も男に抱かれた身体は、快楽に従順になった。
幾度もイかされ、秘部に司祭の男根がねじ込まれただけでも白濁したのを飛沫させた。
もともと快楽に弱い生き物。
その魔性の力でもって淫らに溺れ、また相手を溺れさせるのも自在なはず。
けれど吸血鬼は認めなかった。
確かに司祭の巧みな責め苦に耐えきれず、貪淫なまでに懇願させられたことは
思い出したくもないほどあった。
朝方になり、司祭が出て行った部屋に一人残されて悔し涙を流す。
互いの体液で白く汚れた身体。
身体の最奥で拭えずにいる残滓。 
夜になって司祭が身体を清めてくれるも、また汚されてしまうのだ。
そんな吸血鬼を支えたのは、やがて来る月齢。
――――新月の、夜。
他の夜に力が弱くなると言うわけではないのだが、この新月の夜が最も彼の
能力が強まる。
新月になれば、この忌まわしい純銀の鎖など何の意味もなくなる。
十字架も、もちろん聖水も吸血鬼を阻む存在など何一つない。
司祭は、そのことを知らない。
無理もないことであった。
正統なる継承者である彼は、希有な存在なのだ。
その力のほとんどは世に知られておらず、記述もない。
世間一般の吸血鬼に関する知識とは違うのだ。 
一つだけ司祭にそのヒントをくれてやったが、あいにく気づいていないらしい。

224 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 4日目3-3:2006/11/28(火) 05:28:55 ID:ObsVkLzl0

『毒が回って、狂いながら死ぬ。だからいっそ消滅させてやる』
 
吸血鬼はそう言った。
しかしそれでは『吸血鬼に殺された者は、吸血鬼として蘇る』とは矛盾する。
全身の血液を吸い取ったところで、干からびた死体ができるだけだ。
そしてその死体が、吸血鬼として動き出す。
けれど彼が食事した人間は全て霧散した。
それが、彼の違い。
実際の彼の本音を言わせれば、「なんでたかが食事で下等な奴らをつくらなきゃいけない」
だの、「獲物を減らすような真似、誰がするかよ」らしいのだが。
――――新月の夜が来た。
吸血鬼は司祭の訪れていない部屋で高笑いをしながら、身体中に力が漲るのを
心地好く思った。
彼を戒めていた純銀の鎖が、脆くも腐って手首から崩れる。
ようやく自由になった身体で大きく伸びをしていると、司祭の靴音が聞こえた。
彼らしい、ゆっくりとした足取り。
この音を今までは不快に感じていたが、もう何も思わない。
くすり、と口元に笑みが浮かぶ。
扉が開けられた時には、ベッドどころか部屋に吸血鬼の姿はなかった。
さすがに司祭が慌てた表情を浮かべて部屋中を見ると、一羽の鷲と目が合う。
露に濡れたように艶やかな漆黒の鷲。ボルドー色の目。
「――――しまっ……!」
とっさに正体を悟るが、鋭い爪とくちばしが獲物に向かって空を切っていた――――。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
明日いよいよ最終回です。もう少しだけおつきあい下さい。

225 名前:風と木の名無しさん:2006/11/28(火) 08:42:44 ID:p/vAIyy+0
GJ!GJ!
明日も楽しみ。司祭どーなる。

226 名前:風と木の名無しさん:2006/11/28(火) 19:15:38 ID:xOjRnfJH0
>>222-224
GJ!
強がり吸血鬼カワイスwこういうキャラが虐められるの超萌える
どうなるかwktk

227 名前:風と木の名無しさん:2006/11/28(火) 21:09:26 ID:r5HPm+jcO
>>222
俺様受け萌えるハアハア
自分も続き楽しみにしてますノシ

228 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 01:32:05 ID:dGDKASif0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  デト□イト・メ夕ノレ・シティのギターボーカル×ベースボーカル
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  TRACK801:YAOI
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ エロがないから濡れねーぞファーック
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


229 名前:D/M/C ギター×ベース1:2006/11/29(水) 01:33:23 ID:dGDKASif0
自室に戻ったネギシは、部屋に入った途端に半ば倒れるようにして座り込んだ。
「うう……今日のライブは本当に最低だった……」
彼にとって最低なのはいつものことなのだが、今日は最低の意味が違っていた。
それはライブも終盤の時のこと、ちょっとしたアクシデントが起こった。
最初は嫌々でもライブが始まってしまえばテンションが上がってしまうのもいつものことなのだが、
今日はちょっと上がりすぎた。
ライブの終盤、資本/主義/の/豚を客の方へと蹴り飛ばした時に、
勢い余ってクラ/ウザーは横で演奏していたジャ/ギとぶつかり、彼の上に重なるようにして倒れこんだ。
「ワ、ワダくん、ゴメン」
小声で謝り、立ち上がろうとするがマントがジャ/ギの下敷きになってて上手く立ち上がれない。
そうこうしているうちに客席からは歓声が上がっていた。
「クラ/ウザーさんがジャ/ギ様をレイプしてるー!」
「でたぁークラ/ウザーさんの公開アナルファックだぁー!」
「クラ/ウザーさんにとってはバンドのメンバーすら性欲の対象でしかないんだー!」
「あまりにも貪欲だぁー!」
ちょっとやめてよ、ジャ/ギ様をレイプってそんな。
そう思いながらフォローを求めてジャ/ギを見下ろすものの、
アドリブに弱い彼は完全にテンパってるようで、どうにもなりそうにない。
どうしよ、どうしよ。
戸惑っているうちに、どんどんテンションは高まっていく。

230 名前:D/M/C ギター×ベース2:2006/11/29(水) 01:34:28 ID:dGDKASif0
ええい、使えない奴だ。
ちょっと容姿端麗って設定だからっていい気になりやがって!
素顔もカッコいいからって図に乗りやがって!
服のセンスが悪くても女にモテるからって調子コキやがって!
「今宵の生贄は魔界時代から因縁極まるこやつだー!とりあえずレイプしてくれるわー!」
ギターの音もベースの音も消えた場内に、観客の歓声と、
こんな状況にも全く動じないカミ/ュのドラムの音だけが響き渡っていた。
そんなわけで大盛り上がりのままライブは終了したのだが、
普段はライブが成功すると常に上機嫌のワダはほとんど口を利かずにさっさと帰ってしまった。
ネギシは声を掛けるタイミングも掴めず、もやもやした気分で帰宅するしかなかった。
「ワダくん、いつもなら率先して打ち上げに参加してるのにな……やっぱり怒ってるのかな……
そりゃ怒るよな……ステージ上でレイプしてやるとか言われたらな……」
ぶつぶつ呟きながら、電話して謝ろうかとも思うが、何と切り出していいのか思いつかない。
「レイプしてごめんなさい、とかじゃないよな、大体、本当にレイプしたわけじゃないし、
いや、本当にしてたら大変だけど」
悩みながらも、解決策が見出せないと、何となく腹が立ってきた。
「でもワダくんだって、もう少しアドリブきかせてフォローしてくれてもいいのに、
普段はヘンなパフォーマンスばかりさせるくせに」
やっぱりレイプ、とクラ/ウザーの部分が出そうになって、慌ててその考えを打ち消す。

231 名前:D/M/C ギター×ベース3:2006/11/29(水) 01:35:32 ID:dGDKASif0
そうじゃないって!何でバンド仲間をレイプしなきゃいけないのー」
しかし、客は当然のように受け止めていた、と言うか大ウケだった。
「うう……異常性欲者と言われるのはいい加減慣れてきたけど、まさかバンド仲間もレイプするって
思われてるなんて……まだワダくんで良かったけど……っていや良くないよ!」
何が良いんだ、一体何が、とネギシは頭を抱えて床を転がり始める。
「そりゃニシダくんよりはワダくんの方が遥かに想像しやすいけど!いや想像なんてしちゃいけないけど!」
しかし、いったん頭の中のスイッチが入ると切り替えが困難になってくる。
ネギシの頭の中ではワダの整った顔立ちとか、着替えの時に見た上半身とかがぐるぐると回ってきた。
「そういやワダくん、結構色白かったな……って違う違う!クラ/ウザーはともかく、
僕はそんなこと考えてないし!」
そこで、はっと気が付いた。
クラ/ウザーならジャ/ギをレイプするんだろうか。
ネギシソウイチである自分にとってワダマサユキはただのバンド仲間のはずだけど、
クラ/ウザーにとってのジャ/ギはそうじゃないんだろうか。
ライブ中に押し倒されて押さえ込まれる体勢になり、メイクを通しても明らかに狼狽が伝わる
ジャ/ギの表情が思い出される。クラ/ウザーはそれに嗜虐心を刺激されなかっただろうか。
クラ/ウザーはジャ/ギをどうするつもりなのか、そう考えて、ネギシはその馬鹿馬鹿しさに気がつく。
「何考えてるんだ、だって僕がクラ/ウザーなのに」
気が抜けたようにネギシはベッドに横たわった。無言で帰っていくワダの姿が頭から離れない。
「ワダくんに変な妄想をするなんて最低だ……僕は最低だ……」
D/M/Cの活動を始めて以来、最も落ち込んだ気分でネギシは溜め息をついた。

232 名前:D/M/C ギター×ベース4:2006/11/29(水) 01:36:39 ID:dGDKASif0
その頃、ワダも自室でベースを手に、落ち込んだ気持ちでいた。
今日のことが、腹立たしくて仕方なかった。
ネギシのアドリブに付いていけなかった自分に。
ネギシはやっぱりスゲェ。客の反応を見てアクシデントをアドリブでフォローし、
場を盛り上げることに繋げている。けど俺は、慌てちまって何も出来なかった。
「やっぱり、あいつはメタル/モンスターだ」
呟きながらベースを爪弾く。
練習は欠かしてない。演奏のテクニックなら、負けていないという自信がある。
けれどもやっぱり、圧倒的な才能の差を感じる。特にステージでのパフォーマンスの差は歴然としていた。
普段の消極的な態度からは考えられないほどに、ネギシはクラ/ウザーになりきっている。
けれど自分は、打ち合わせ上のパフォーマンスならともかく、
今日のように予定外のアクシデントが起こると素に戻ってしまい、ジャ/ギとして振舞えなくなる。
俺も演じるんじゃなく、ジャ/ギになりきらなくてはいけない、と練習の手は止めずにワダは考えた。
とりあえず、今日のアクシデントにジャ/ギならどう反応しただろうか。
「やっぱり炎で反撃して焼き殺すってとこか?」
物騒なことを口にしつつも、何となく釈然としない。
「考えるんじゃダメだ、ジャ/ギだったらどうしたかじゃねえ、俺がジャ/ギなんだから」
すると、あの時、クラ/ウザーに押し倒されて呆然としつつも、
決して嫌な気分ではなかったのではないかと思い当たり愕然とする。練習の手もいつの間にか止まっていた。
おいおい、何でだよ、何でそうなんだよ」
独り言を呟きつつ、ワダはジャ/ギの気持ちに立ち返ろうとする。

233 名前:D/M/C ギター×ベース5:2006/11/29(水) 01:37:44 ID:dGDKASif0
ジャ/ギはクラ/ウザーと殺しあった末にバンドに加入したことになっている、そういう設定だ。
そして、自分がジャ/ギである以上、それは事実なんだ、とワダは自らに言い聞かせる。
殺しあった相手と共にバンドをやることになったのは何故だ。
才能に惚れたからだ。
ジャ/ギがクラ/ウザーの才能に。
ワダマサユキがネギシソウイチの才能に。
クラ/ウザーに組み敷かれた場面が脳内にフラッシュバックし、ワダはそれを必死に追い払った。
一瞬、自分がクラ/ウザーに応じてしまいそうな気がした。
応じてどうすんだ、そんなことになりゃ大騒ぎだぞ。盛り上がって社長は喜ぶかもしれねえけど。
「あ、社長が喜ぶならいいのか……って良くねぇよ!」
つい一人ツッコミ状態になってしまい、ワダは肩を落とす。
「……どうかしてるぜ」
浮かない気持ちながらも練習を再開した。
もっともっと上手くなって、ネギシの才能に引け目を感じなくなれば、
このばかげた感情も消えるだろうと期待する。
ネギシがスゲェからだ、そう思うことにしよう。
そう結論づけて、ワダは手にしたベースに全神経を集中させることにした。

そうやってギターボーカルとベースボーカルが悩んでいる頃、
ニシダは月末三日間に丸印がついた12月のカレンダーを眺めていた。
「突発本多数の予感。カタロム検索吉」

234 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 01:38:58 ID:dGDKASif0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ カミ/ュさんオチ要員かよ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

235 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 01:51:47 ID:foSP/2Iu0
ファーーーック!
濡れさせてくれるじゃない>>228-234!!
クラジャギもネギワダも美味しいです。
これは本当に突発本の予感ww

236 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 04:07:27 ID:jFa6MzRJO
GJ!!最後のニシダに噴いたwwwwwwwwwwwwwww
まさかこの作品で萌えるとは思わなかった!!

237 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 5日目4-1:2006/11/29(水) 04:20:09 ID:2/gwnPue0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) …最終回だって宣言したのに、続いてしまったorz

司祭の両肩に爪を食い込ませ、鋭いくちばしは獲物の頸部を確実に捕らえた。
勢いのまま男を押し倒し、その肉を食い千切る。
「……っが……ぁ!」
死には至らないが大量の血が溢れ、司祭の視界が眩んだ。
それは吸血鬼の毒なのか出血のせいかはわからない。身体が痺れ、動くことなど
できなかった。
そんな司祭の身体の上で、吸血鬼が人姿に戻りながら唇についた血を満足そうに
舌なめずりをしながら、妖艶に微笑んだ。
「くくくっ。オレ様の勝ちだな」
「……その……ようですね……」
司祭は辛うじて浅く笑った。声すら満足に出せない状態で、精一杯の虚勢を張る。
「おまえ本当にイカれてるな。死にかけてるのに、ナニ硬くしてんの?」
「ゾクゾク、してるからですよ……」
吸血鬼が自身の身体に当たる存在に気づいて嘲笑する。
「あなたが、一糸まとわぬ憐れな姿で私の上に跨っている……最高の眺めだと思いません?」
「そうかよ。……じゃあ、最期のお別れにオレ様から餞別をくれてやる」
何を思ったのか、吸血鬼が司祭から男根を露わにして扱き始める。
硬く張りつめていたそれは、ますます質量を増して――――吸血鬼の秘部に迎入れられた。
「……っ! なにを……」
彼の行動の意図がわからずに司祭は困惑を浮かべた。
嫌悪されていたはずの行為を、今目の前で自らしているのだ。
そしてその姿はこれまで見たことのないほど淫猥で、艶めかしい。
「ほら……死に損ないがイキなよ、オレ様の中で」
腰を振る律動が激しくなり、司祭は吸血鬼によって昇り詰めさせられた。
「……く……ぅっ」
「……ああっあぁ!」
自らも達し、司祭の黒い聖衣に白濁した汚れをつくる。

238 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 5日目4-2:2006/11/29(水) 04:20:56 ID:2/gwnPue0
乱れた呼吸を整えて、吸血鬼は司祭から身体を離した。
「……一週間と持たないさ……。せいぜい豪快に狂ってしまえよ?」
高笑いをして、吸血鬼は姿を消した。
身体の自由がきかない状況で、司祭はこのまま朽ちるのかと思った。
この修道院の隠し部屋は代々の司祭しか知らない。
動けぬ自分は、誰にも見つけられずにここで死ぬのだろう。
何を、狂うのだろうか。
死など怖れはしない。
それとも彼の毒が、やがては発狂するほどの苦痛でも与えるのだろうか?
別に狂っても、この部屋なら誰に見られるというわけではない。
「……はは……っ、はははははっ……は……はは……」
思わず笑いが溢れて、祭司は微睡みはじめた意識を素直に手放した。


目が覚めると、不思議と身体は動けるようになっていた。
胸ポケットの懐中時計が一晩過ぎたことを教えてくれ、もう正午に近い。
姿の見えぬ自分を修道士たちが探しているのだろうと思いながら、こんな状態で
保身のことを考えている自分が滑稽だった。
何気なく鏡を見て、司祭は息を飲む。
――――死相が、出ていた。
違う。既に死んだ人間の顔だ。
どす黒く、青く、血の気など感じさせない土色の肌。
皮膚を裂かれたはずの頸部からは傷が消え、なのに、指も、身体中が死人のそれ。
「……生きている……私は、生きている……っ」
けれど、鏡に映る姿は生きている死体。
そんな馬鹿な、と呟いて引き出しの短剣で自らの皮膚を傷つけてみる。

239 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 5日目4-3:2006/11/29(水) 04:21:53 ID:2/gwnPue0
裂かれた皮膚の下から、赤い血が流れた。    
「……っ」
けれど、すぐに傷が消えてしまうから司祭は驚愕を隠せない。
試せることは、この部屋で全てやった。
結果は同じだった。
あれだけ馴染みのある聖水も今となっては、吸血鬼同様に酸の性質を持ち、そして再生する。
死人の姿をしていながら、死ぬことができない。
いや。死体だから、もう死ねないということなのか。
「……これが、毒の効力か?」
そんなはずはない、と司祭は頭の中で否定した。
それならば伝承とたいして変わりはない。
だが、あの吸血鬼は違う。
あの漆黒の鷲を見た時にそう感じた。
彼が何気なく語っていた「高貴な存在」というのは、本当のことなのだろう。
司祭が死人の姿でいるのは、ただの過程でしかない。
真の『毒』は、もっと別な――――。
考えて、ぞっとする。
何が起こる?
こんな身体のままでは、確かに常人であれば気も狂うだろう。
それで終わるはずがない。
彼が、それだけで済ますはずがないのだ。
「どちらにせよ、人前に出られなくなりましたねぇ」
常の口調で呟くと、心が落ち着いた。
さぁ、何が出る?
何が出たって、変わりようがないと思っていた――――。

240 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 5日目4-4:2006/11/29(水) 04:23:32 ID:2/gwnPue0
夜になって、司祭の中で抑えきれない欲望が渦巻き始めた。
…………欲しい。
その口元から、荒い息が絶えず聞こえる。
――――欲しい。
ふらり、と隠し部屋を出る。
その表情からは何かに取り憑かれたような虚ろさで、理性などあるはずもない。
ただ自らが望む欲求を満たしたいが為。
「……司祭さま? 今まで、どうされて――――っ」
夜の見回りをしていた一人の修道士が、蝋燭の明かりの先にある司祭の形相に気づいて、
言葉を途切れさせる。
「……ひっ……!」
本能的に逃げようとしたのだが、尋常ではない力に取り押さえられ――――司祭の男根が
何も知らない身体を無情にも襲う。
「ぎゃああああぁぁぁぁっっっ!!」
断末魔のごとき悲鳴。
この回廊ではなおさら響き渡る。
身体のつくりを無視した、非道までな仕打ち。
修道士の下半身から止めどなく血がこぼれ、彼の下肢を濡らしながら床に血溜まりをつくる。
そんな彼を壁に押さえつけながら、司祭はがくがくと身体を揺さぶった。
修道士がやがて白目を向き、よだれを垂らし絶命しても、止められることはなかった。
司祭が精を吐き出すまで、続く。
全てが終わって修道士の死体は乱暴に放られ、司祭はふらりと隠し部屋に戻っていく。
その頃になって、ようやく騒ぎを聞きつけた他の修道士が駆けつけて、あまりの残虐さに
皆が恐怖に怯えた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
……明日こそ、多少長くても最終回に…デキタライイナ。

241 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 06:24:25 ID:tfM+aRzZ0
早起きしたら二つも作品がうpされてたよ(-人-)ありがたや
二つとも続編期待してます

原作が分からずぐぐったらツボだったので
今度原作も読んでみる予定
いいもの紹介してくれてありがとう

242 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 07:39:09 ID:4cbPJnxe0
>228
ファーーーーック!! ビチョ濡れのラブ話じゃねぇか!最高だぜえええ!
…ずっと彼ら二人で妄想してきて良かった!早起きして良かった!

243 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 10:29:41 ID:Syut5Evp0
俺は>>228に感謝している…
>>228が無ければ猟奇的腐女子になっていたから…

>>237
次終わっちゃうのか…非常にツボです。

244 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 18:07:23 ID:Wb6tcauE0
>>228は本物の悪魔

245 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 19:44:42 ID:PJGYaAQa0
>>237
吸血鬼エロいよ吸血鬼(;゚∀゚)=3
彼はもう出ないのかしら

246 名前:風と木の名無しさん:2006/11/29(水) 20:30:05 ID:tCExdr5W0
>237
ありがとうありがとう
吸血鬼はもちろん、変態司祭に萌えた

247 名前:風と木の名無しさん:2006/11/30(木) 01:09:13 ID:5qeJDMty0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>108の稲妻医者、続き。まだまだ長いので今回は中編。


「ドック、ドーックーってば、おーい?」
「うん?」
はたと我に返ったドックが最初に見たのはラモーソが自分の眼の前でちらちらと振るスプレーガン、
最初に聞いたのは熱の篭った遠いざわめきだった。
「――すまん、聞いていなかった。何の話だった」
「いーや、大したこっちゃねェ。あんたのカスタムは3分前に終わったぜっつー話」
半眼でさらりと言ってのけたラモーソはスプレーを元の位置に戻す。サーキット内のカスタムブースに
移っても、本日メタルレッドにトライバル風味にアレンジした黒い稲妻を走らせた塗装の魔術師の腕に
狂いはちっとも見られない。何とかはタイヤを選ばずという事かもしれない。
「毎回すまんな」
「今更気にすンなよ、あんたには世話になってるし――っても、町からこのまんま来りゃオレも楽なんだけどなァ」
「……それは勘弁してくれ」
 車体をすくめ微笑った八ドソンを、ラモーソは顔をしかめて見つめた。
「――ドック、調子でも悪いのか?」
「いや?……何でだ」
「ノリが悪いったらなかったぜ、これが全身ペイントなら日を改めてもらいてェところだ」
「……カスタムペイントにのりのいい悪いがあるのか?」
タイヤのカバーや車体のあちこちを包むマスキングビニールを少しでも剥がすべく、もぞもぞと
タイヤをよじらせながら八ドソンは尋ねた。
「あるとも、ドック。ボディとスプレーは正直だ……今日のあんたはどうにもよくねェ。
いつもなら眼ェ瞑ってたって完璧に出来る自信があるんだが――今日と来たらちょっと油断すれば
ステッカーはよれるわスプレーにムラは出るわ。おっと、オレの腕がどうかしたとかはナシだぜ?」

248 名前:>108の続き/稲妻×医者U・2:2006/11/30(木) 01:10:28 ID:5qeJDMty0
ラモーソの軽口とともに、カバーが外されていく。光を照り返す滑らかな仕上がりのボディとは裏腹に、
八ドソンには『どうにもよくねェ』原因が不本意ながら分かっている。

『大好きだよ』

「――――……」
「……おいドック、本当に大丈夫か?あんたに『医者の不養生』なんて言葉は似合わねぇぞ」
「!――気にするな、心配ない。今日は暑いな……」
思い出したようにボンネットに篭る熱を何でもいいから放出したい衝動に駆られながら、
八ドソンはいつもの『冷静なクルーチーフ』の表情であり続けていた。



「――いいか、何度も言うが丁寧に走れ。1m1mを大切にすれば知らない内に勝てる。それと」
「『目標は目標であって絶対ではない』だろ?ドック、本当に何度も言い過ぎだよ」
いつものように生意気なしたり顔でそらんじると、ライトニング・MACィーンは大仰にフレームを上下させた。
その口振りと見慣れた仕草が妙に可愛らしく、八ドソンは無意識に相好を崩した。
「言うじゃないか坊や、だったら無駄なパフォーマンスも控えてみせるんだな……無論、アレも」
アレすなわちお馴染の稲妻パフォーマンスまでに停止令を出され、MACィーンは思いきりふくれた。
「あのね、ドック。勝つのが全てじゃないって僕も学んだつもりなんだけど?」
「その分をパフォーマンスに回していいとは言ってないぞ」
「ちぇー…………それじゃ、行ってくるねドック。帰ったら、映画でも行こうよ」
「――ああ」
八ドソンが頷いたのをきちんと確認し、MACィーンはコースへと向かう。途中メーター達と行き合い様に
しっかりタイヤを打ち合わせ、今日この日の勝利を祈る。
「頑張れよ!」
「ああ!」
全員とそんな感じの短い会話を交わしてしまえば、MACィーンはただ一台。
 その顔が笑んでいるのを、八ドソンは中央のスクリーンで見届けた。

 至極普通だ――何もかも。だが、八ドソンには予感があった。
 それは、稲妻を秘める一面の黒雲に似ている。

249 名前:>108の続き/稲妻×医者U・3:2006/11/30(木) 01:11:09 ID:5qeJDMty0
『さてじきに100周に手が届く頃合いですが、キングの記録を更新しジンクスの新たな一ページになるのは――』
『ちょっとまだ気が早いんじゃないかいボブ?けどまあそれは置いとこう、今回の大本命と言えば
やっぱりこいつだライトニング・MACィーン!』
スクリーンにMACィーンのイメージ映像が流される。
『あの八ドソン・ホーネットをクルーチーフに迎え入れた事でも話題のルーキー……そろそろこの呼び方は潮時ですかね!?』
『その走りはまさしく溢れんばかりの実力によるもの!只今トップを独走する彼はあのジンクスを
信じているかどうかが気になるところですが――』
『ともあれ運命のフラッグまで残り100周、MACィーンは伝説となりうるのかーっ!?』

 狙うなら、最終ラップ以外になかった。
 当たる保証がまるでないジンクスよりも、八ドソンはまず勝利を確保する事を優先した。一クルーチーフとして当然の判断だ。
タイムを更新するだけして後は力尽きられてはあんまりにも情けない。
「坊や、次でタイヤ交換だ。急加速は出来るだけするな」
『ドック、それじゃコーナーで離される!』
「ピット通過直後にバーストされるよりマシだ。グイ├゛、頼むぞ」
グイ├゛がきりりと頷く。ちらりとスクリーンを見上げれば、赤いボディが独走するのが眼に入る。
その走りと順位には先程から変化はなく、ある意味ではつまらない展開だろう。チッ9・ヒックスでも
いれば嫌な方向で面白くなっただろうが、風邪をこじらせていては無理な相談だ。
 一周はすぐに終わる。ピットに滑り込んだMACィーンはタイヤ交換を済ませて最近のお気に入りな
オーガニックオイルで喉を潤す。
「これなら周回遅れさせちゃうかもね!」
「無茶はするな、自分からトラブルに突っ込んでやる義理はない」
「わかってる!」
短いやりとりに掛けられる時間すら惜しいと見え、爆音と共に走り出すMACィーン。
あっと言う間にサーキットの彼方へと遠ざかる赤いボディをしかめ面で見送る。




250 名前:>108の続き/稲妻×医者U・4:2006/11/30(木) 01:11:46 ID:5qeJDMty0
 サーキット内は、何とも言えない空気に満ちていた。増えるラップ数につられて零れる溜め息のような音。
気のせいか、他のレーサーの解説に勤しむダリルとボブの口調も上の空に聞こえる。

 MACィーンのタイムが、伸びない。

 無論一レーサーとして、またマックィーンがルーキーである事を鑑がみれば、素晴らしいの一言に
尽きるタイムだ。だが、走るコースがいけなかった。日頃タイムより一着が誰かが焦点となるはずの
レースなのに、余分なジンクスなどがあるとこうなる。八ドソンは恐れていた事態にも関わらず冷静に
スクリーンを見上げた。サーキット側が外観を重んじる故にマスコミ用のスペースが用意出来ず、
中央に急遽立てられた電波受信用の貧相な鉄骨がやけに気に障る。
 やがて八ドソンは、決してMACィーンにこちらの空気を伝えぬように口を開く。
「焦るな。いいか、お前は今一位なんだぞ」
『…………けど』
インカム越しのMACィーンの声は沈んでいた。その走り方も、焦りで雑になっているのが一目で分かる。
『あと10周しかないのに?』
「あと10周もある。その程度の気構えもない癖に、良くも今まで走って来れたな」
すかさずぴしゃりと言い返した八ドソンに、MACィーンの声が力無く笑った。
『もう、ひどいなぁドックは。そこまで言われちゃ、名レーサーの名が泣くね」
「『未来の』が抜けているな」
『――あれ、『未来の』付けるだけでいいの?』
「…………そうでなきゃ――」
そこまで言い掛けて、八ドソンは黙る。
「……走りが雑になってるぞ」
改めて口にしたのはまるで違う内容だ。MACィーンが何事か言い掛けたのも無視して、
次のピットインだけ指示して通信を切った。

 残り、後10周。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チュウダーン!ルールとか細かいことは無視してくださいorz

251 名前:風と木の名無しさん:2006/11/30(木) 02:35:00 ID:ICu8EhiYO
>247
ファステストキター
全台惜しみなく愛を注ぐ貴方の作風が大好きです
後半も超期待。

252 名前:ウマ1/2:2006/11/30(木) 17:31:41 ID:5bLZczeq0
海外でお騒がせな六冠四歳→国内で唯一彼に先着した五歳(昨年冬のグランプリ覇者)
……人間じゃないナマモノです、スマソ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


僕等には、言ってはいけない言葉があった。言っても仕方ない言葉。
僕や先輩には、もう一つこれから大切な責任があるから。でも。

「……黙っていなくなるって訳にはいかなかったな」
「当たり前です」
ニュースを聞いて慌てて駆けつけた僕が頷くと、先輩はそう言って初めて僕に笑顔を見せた。
先輩と同期だった相手から聞いた話では、堅苦しくなくて気さくな性格、先輩はそう言われていた。
僕の前では今まで見せてもらえなかったそんな態度を、この時初めて見ることができた。
「まあ、お前も今年一杯なんだよな。俺は一年多かったからな、悔いもないさ」
ちらりとこちらを見て、先輩は何のてらいもなく涼しげな顔で微笑んでいる。
見たいと思っていたその笑顔を、実は見たくなかったことに気がついたのは、今だった。だって。
「……っ……そんな……」
誰だって、ライバルにこんな緩んだ笑顔を向けない。それが世界で一番分かり合った相手だとしても。
僕はそう信じていたし、そう思われていたとも信じたい。でも、今は違うんだ。
先輩は、もうターフでの僕のライバルではない……。
「すまないな。でも、勝ち逃げじゃないだろ?JC、いい脚だった、おめでとう」
控えめに差し出された手を、僕は思わず乱暴に払いのけていた。

253 名前:ウマ2/2:2006/11/30(木) 17:32:34 ID:5bLZczeq0
それが引き金になって、喉でつかえていた言葉が、言っても仕方ないと諦めなければいけない言葉が、待っていたゲートが開いたように飛び出てしまう。
「嫌だ!後一戦、有馬があったのに!僕を置いていくんですか?!走ることをまだやめないで!」
「……言うな」
「あ……」
鹿毛に映えるすんなりした流星が、不意に僕の目の前から背けられた。
僕等は一人で走っているのではない。そして、幸運にも僕等には走る以外の責任がある。
あらゆる意味で無理をしてはいけない、自分のためにも、周りのためにも。
もちろんそれはわかっている、わかっているんだけれども。
「喉は本当におかしいんだ、潮時だったんだよ」
僕に、というよりも自分に、納得させるようにその綺麗な流星の持ち主は呟いた。
「……」
僕はもうかける言葉を持たなかった。僕の気持ちは、さっき言ってしまったのが全てだから。
だって僕は。僕こそが。
「ほら、次は違うもので対決だろ?次世代勝負だ、スタリオンで待ってるよ」
「……はい」
他の誰よりも貴方を見たい、貴方の走っている姿を、ターフで見たい。
でもこれ以上彼を困らせたくはなかったから、僕は辛うじて物分りのいい後輩に戻った。

今年最後で、僕にとっても最後のレースも、当然僕がもらってやる。
海外の時みたいないちゃもんなんて付けさせない。
でも、その舞台に先輩はいないから。
想いが駆け抜けるためのゴール板は、どこにあるのだろうか。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

引退……サビシス

254 名前:風と木の名無しさん:2006/11/30(木) 18:17:05 ID:SYDMJTwv0
>>252
GJGJ!!
まさかこんな所で読めるとは思ってなかったよありがとう!
しかし>>252さんのおかげで、今ここで五歳の引退を知った…まさに泣きそうだ。・゚・(ノД`)・゚・。

255 名前:風と木の名無しさん:2006/11/30(木) 19:33:58 ID:a1KYtXFr0
>>252
(;つД`)なんか凄く胸がキュンキュンした

256 名前:風と木の名無しさん:2006/11/30(木) 20:44:25 ID:mqBI5nv80
>>252
GJ!切ないよ…

257 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 6日目3-1:2006/12/01(金) 01:02:54 ID:/TGj3kla0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) やっぱり今日も終われなかったorz

翌日から夜警を数人で行動するようにしたが、司祭の尋常さに欠いた所業の前では功を奏さなかった。
一撃を食らって身動きを封じられ、一人ずつ犯されていった。
司祭の去った回廊には数人の死体。
犯されて、おそらくは臓器が破裂したのだろう。
ショック死した者もいた。
…………たりない。
何人も陵辱したというのに、司祭の渇望ともいうべき情欲は全く満たされなかった。
――――足りない。
なぜ。
ふと、吸血鬼の姿が脳裏を掠める。
ああ……。あの人をまた抱きたい。
彼は、今どこ?
またふらり、と夜の中を彷徨った。
二人がはじめて会ったあの場所……。
しかし、吸血鬼の姿はどこにもいない。
当然だ。
そんなことが何日も繰り返され、けれど、眠りを必要としない司祭は朝には理性を取り戻していた。
夜のことが、記憶の断片としてある。
全て自分のしたことだと、自分は化け物なのだと、司祭は慟哭して自責続けた。
自分を慕ってくれていた者がいた。
自分が目をかけてやっていた者もいた。
「……これが……あなたの『毒』ですか?」
なんて、残酷な。
なんて冷酷な。
「……あんまりだ……!」
本当に狂ってしまいそうだと思った。

258 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 6日目3-2:2006/12/01(金) 01:03:50 ID:/TGj3kla0
――――いや、少なくとも夜の自分は狂っている。
このまま、全て狂ってしまえたら楽なのに。
殺してよ。
誰か、殺して。
この姿だ。昼のうちに表に出れば、きっと殺してもらえる。
そして、地位も名誉も全てが剥奪される。
彼の望み通りに。
「……でも『狂いながら死ぬ』のではなく、私は『狂う前に死にます』よ」
そう呟いて、司祭ははじめて白昼に姿を人前に現した。
修道院中が騒然となり、腰を抜かして動けなくなる者、悲鳴を上げながら
怯える者、敵意をむき出しにする者など様々だった。
やがて、誰とはなしに猟奇的なあの事件の犯人はこの司祭なのでは、と声がして皆が
同調し――――司祭を征伐すべく体制が整えられる。
純銀の鎖と聖水。そして心の臓を打つ杭が用意され、司祭に向かって襲いかかる。
司祭は、いっさい抵抗をしなかった。
鎖で身体を拘束され、かけられた聖水に身体が焼け爛れても悲鳴を堪え続けた。
先日まで寝食をともにした仲間に襲われる司祭の姿は、吸血鬼を愉しませただろうか。
ふと思い、司祭は自嘲する。

表面上の付き合いしかせず、心を許した者などいなかった――――。

騒動が終わって、残された光景はまさに罪人のそれだった。
両手の平に杭で石壁に張りつけられ、心臓は太い杭で潰された。

259 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 6日目3-3:2006/12/01(金) 01:05:22 ID:/TGj3kla0
……それでも、司祭は死ななかった。
心臓を貫かれた時は「これで死ねる」と安堵し、激痛故に気を失った。
目が覚めれれば、身体の傷は再生を終えていて外れた杭が転がっていたのだ。
修道院の者たちが「司祭を退治した」と思い込んで撤退した後のことである。
司祭は絶望した。
瞳から涙がこぼれる。
何故。何故、なぜ。
譫言のように繰り返す。

『――――楽に死ねると思うなよ』 

頭の中にあの時の声が聞こえた。
ああ、そうか。そういうことか。
死ねないんだ、私は。
あの吸血鬼にしか私を殺せる者がいないんだ。
彼を捕らえるべく様子を窺っていた光景を思い出す。
血を吸われて、消滅していった『獲物』。
私は、あの人の気が晴れるまで行かされ続ける――――。
そして夜になれば、色に狂った自分がまた罪を重ねる。
彼を求めながら、代わりを見つけようと動き出す。
司祭はたまらずに全身で絶叫した。
「……は……ははっ…………うわあああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チュウダーン! 明日こそ本当に最終回。吸血鬼タン登場します。

260 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 :2006/12/01(金) 01:08:35 ID:/TGj3kla0
……誤字ハケーン。orz

261 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 01:32:00 ID:BlHrtpgs0
吸血鬼たんwktk GJ

262 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 7日目最終日4-1:2006/12/01(金) 02:53:47 ID:/TGj3kla0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 書き終わったから、早速ageてみた。

司祭は冷たい石畳に身体を横たえさせたまま、動かなかった。
自身を照らしている夕日がいつもより赤く鮮やかだった。
――――もう少しで、日が暮れる。
夜が深まれば、狂宴のはじまり。
「……楽に、死ねなかっただろ?」
夕日のきつい日差しが遮られて、影ができた。
不遜な声は耳に懐かしく、司祭は声の主を見ずに口元を歪める。
また会えると思ってた。
だって死ねないはずなのに彼は『狂いながら苦しんで死ぬ』と言った。
それは吸血鬼が来るという約束。
狂った司祭を見に。
そろそろ一週間が経とうともしている。
「……お願いがあります……」
司祭のその言葉に、吸血鬼は皮肉げな笑みを消して驚いた。
(――――こいつ、まだ理性を保って……!)
「このまま死ねないのなら、私を連れて行ってください。……あなたの、そばに」
「……殺してくれって言われると思った」
司祭は渇いた笑いを浮かべる。
「そう言ったら、殺してくれました?」
「まさか。オレ様はそんなに優しくないよ」

263 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 7日目最終日4-2:2006/12/01(金) 02:54:32 ID:/TGj3kla0
殺すつもりで、来た。
司祭のこれまでのことは何も聞かずとも、最初から想像がついている。
そして目の前の彼の姿を見れば尚更に。
全て思惑通りだ。
ただ違ったのは、彼がまだ理性を保っていること。
本当は狂った彼を見に来て。
狂っていたら、自らの手で心臓を抉ってやろうと思っていた。
なのに。
「私は、あなたを抱きたい。……他の者では、代わりにならないんです」
ようやく司祭は起き上がって、吸血鬼の前に片膝をついた。
「――――あの毒は、オレ様と交われば一晩だけ中和される」
「ああ、それで。だから、あなたは」
あの時、自ら交わったのだと。
司祭の苦しみを増長させるために。
「……主人は誰だ?」
「あなた様ですよ、ヴァンパイア」
「なら、いい。……狂わずにいられた褒美だ。けれどオレ様は格下の者に
肌を許すつもりはない」
だから特別だ、と自らの血を口移しで司祭に与える。
「――――我が、眷属に」
意識のない司祭の身体は死人のそれではなく、血の気のいい以前の姿に戻っていった。
もう、毒は消えた。
司祭の身体を抱きかかえながら吸血鬼は艶やかな笑みを浮かべる。
「……これからたっぷり仕えてもらおう」
そして、二人はその場から消えた。

264 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 7日目最終日4-3:2006/12/01(金) 02:55:19 ID:/TGj3kla0
こんな風に口づけをするのは、はじめてだ。
何度も唇を重ね、舌を交わらせて互いの吐息を湿らせる。
そのままベッドになだれ込んで、また口づける。
「ねぇ、キスに弱い?」
「……っうるさい」
唇を重ねながら素早く吸血鬼の服を脱がすと、彼自身が硬く濡れていた。
「あの隠し部屋では、あなたを警戒して出来ませんでしたからね」
言いながら、耳や首筋や鎖骨にも唇の愛撫をする。びくりと感じやすそうに
震える身体につい愛撫を強めてしまう。
「あなたは全身が感じやすそうですね……いやらしい人だ」
「あんた……いい気になるな……っ」
いつの間にか司祭を呼ぶ二人称が変わっていた。
「ふふっ。いい気にもなりますよ。あなたをこうして抱ける……有頂天に
なっているんです」
色づく胸先に、舌が触れた。
「……あ……っん」
わざと音を出して啜るように吸うと、切ないような声を上げる。
それがたまらなくて、何度も何度も両方を啜った。味などしないのに、
美味しいと思えてしまうから不思議だ。硬く尖って色も充血して、ますます
口に含みたくなる。
「……もぅ……や……ぁ」
胸先の快楽にたまらなくなったのか、吸血鬼の腰がもどかしげに動く。
もじもじとしたそれは何だかせがまれているようで、司祭は素直に愛撫を下肢の方へ
移していった。股関節の辺りを念入りに舐めると、やはり敏感な反応をして、吸血鬼は
その享楽を嫌がった。
もっといじめて声を聞かせて欲しかったが、司祭自身も抑えがきかないところまでに
なっていて、本当は今すぐにでも身体を重ねたかった。
けれど、もう手荒なことをしなくないし、そんな真似をしなくても司祭の性癖は満たされるのだろう。

265 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 7日目最終日4-4:2006/12/01(金) 02:56:11 ID:/TGj3kla0
これだけの極上な身体だ。
苦痛に歪む顔もいいが、淫らに惑溺する方が魅力的だと思う。
そしてその姿にもっと溺れる自分。
――――それでいい。
吸血鬼から溢れる滴をたっぷり指に絡めて、彼の秘部を少しずつ慣れさせていく。
「……なに、やって……」
「こうしないと傷つくでしょう。あなたを大切に扱うつもりです」
「……オレ様が主人なんだから、あたりま……っ……やぁ!」
「ああ……ちゃんと解けてきた……」
指である程度の挿入を繰り返すと、ぬめりが乾いて足りなくなってきた。腰を持ち上げると
直接秘部を口で愛撫して、唾液を奥に流し込みながら舌先で手懐かせる。濡れた音を立て、
時々吸うと吸血鬼はいやいやをして司祭に強請った。
「……もうそんな……の、いいから。早く……っ」
「――――早く、何です?」
「挿れて……っ! オレ様の中、あんたで掻き回してぇ」
そう言われてしまえば、これ以上焦らす必要もない。今すぐ挿れたいという気持ちの方が
強くなって、上に反り勃つ男根をぐっと押し込んだ。
「ああぁぁっ、……やぁ……!」
全身にぞわりとしたものが駆け抜けて、吸血鬼は反射的に自らの体液で腹部を汚した。
「ああ……一週間ぶりのあなただ……」
恍惚とさえしている表情で、司祭は身体を重ねて吸血鬼を抱く。
その重みを受け止めながら最奥を突かれ、吸血鬼は司祭の耳元で淫らな声を上げる。
「……やぁ……、気持ちいい……もっ……もっと……」
激しくして、と囁かれ、司祭は抱きつかれた指先で背中に傷をつくりながら思いきり
吸血鬼を突いた。無我夢中な様子で彼の中で果てる。腹部に新たなぬめりを感じ、
二人同時だったと知った。
「――――愛してます」
つぶやいて唇を重ねると、吸血鬼は満足げに微笑んだ……。

266 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 おまけ:2006/12/01(金) 02:57:11 ID:/TGj3kla0
「……お出かけですか?」
「ああ。食事をしに行く。……あんたこそ、いい加減血の吸い方覚えたら?」
上着を羽織りながら身支度する主人に、かつての司祭はおおげさに肩を竦めた。
「嫌ですよ。私の身体にあなた以外の血が入るなんて」
だからワインとフルーツだけでいいんです、と言えば吸血鬼はふぅんと応じた。
「帰ってきたら風呂に入る」
「用意してお待ちします。今夜は何を入れますか?」
「……白い薔薇の花びら」
命じて、吸血鬼は姿を闇に融けさせた。

「――――行ってらっしゃいませ」
執事の真似事も楽しいものだと、司祭は思った。

267 名前:鬼畜聖職者×オレ様鬼畜吸血鬼 :2006/12/01(金) 03:00:31 ID:/TGj3kla0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 苦痛スレ出身なので攻にも苦痛して
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) もらいました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 受の反撃が大好物です。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | 司祭タンは鬼畜から変態言葉に
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | 攻チェンジしちゃいましたよ。ナニヤッテンダ。
                                  すごく楽しくて充実した一週間でした。アリガトウゴザイマシタ。
                                  そしてコメを下さった方、読んで下さった皆さんアリガトウです。

268 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 04:51:35 ID:l+NQYJE+0
吸血鬼たんGJ
司祭がツボでした。苦しむ攻もいいね。

269 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 13:28:13 ID:5+pVz0rT0
GJ!GJ!最高!
予想以上に素敵な結末。とっても面白かったです。

270 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 17:19:20 ID:smYKnf8i0
GJ!高飛車でも快楽に弱い吸血鬼テラモエス

271 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 17:21:13 ID:smYKnf8i0
その後に恐縮なんですが
                     |  >108の続き/稲妻×医者V
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ようやく完結……今未知の領域
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ジカンカケズギダロ、オイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

272 名前:>108の続き/稲妻×医者V:2006/12/01(金) 17:23:23 ID:smYKnf8i0
 最終局面を迎え、状況が変わってきた。未だダンゴ状態の後続選手達にマックィーンが追い付いてきたのだ。
 だが、残されたのはただ一周。
『ドック、こいつらを抜いちゃえば――』
マックィーンの声に期待がにじむ。
「無茶はするなと言っている」
密集した後続車群。誰もがそこから脱して、ライトニング・マックィーンに次ぐ第二位になりたいのだ。
焦りと睨み合いが爆発すれば、いつクラッシュの大連鎖が発生してもおかしくはない。
 しかし、慎重策から先を出ないハドソンに流石のマックィーンもイラついたらしく、少しだけ声音が強くなった。
『けど、抜かなきゃ先に行けない!』
「記録より大事なものがあるだろう!」
『――ッ!勝たなきゃダメなんだよ!絶対に』
『おおーーっ!?第四ターン直後で続々とクラッシュ!マックィーン、抜けられるのかー!?』
あわや口論となりかけた二台を強引に止めたのは、ダリルの熱い絶叫とあまり聞きたくはない
機械と機械のぶつかり合う嫌な音。
『いや!クルーチーフが許さないでしょう、彼はこのままだって勝てるんですよ?』


『…………ドック』
二台の掛け合いをよそに、マックィーンがそっと切り出した。
『ごめんね。心配ばかりかけてる』
「分かっているならスピードを落とせ!」
『……ハドソン』
「!」

『そろそろキングのタイムまで猶予がありません!』
『本来ならタイムは関係ないんですが――ああっどうなるんだマックィーン!』




273 名前:>108の続き/稲妻×医者V・2:2006/12/01(金) 17:24:40 ID:smYKnf8i0
「……、いきなりその呼び方はやめろ!」
メーター達に聞かれまいと、思わず声のトーンを落とす。だが返ってそれが不自然だったと見えて、
グイドが訝しげに見上げてくる。
「おい、聞いてるのか若僧」
『もう二度と不安にさせないよ、ハドソン……これっきりだ』
「坊や!」
マックィーンの声が決意の色に染まったのを聞き取り、ハドソンは願うように声を荒げる。
 煙と鉄屑舞い散る第四コーナーまで後100m。
『ねぇ、ハドソン!』
「何だ!?」
『勝手なお願いするよ!』
ハドソンの答える間はない。
『最高タイム出したら、キスしていい?』
「――」
『それじゃ、後で。見ててよ……サーキットの『稲妻』をさ』
「ライトニング!!」
RSの面々が一斉にハドソンを振り仰いだのは、その声の大きさと取り乱した様子のためだけか。


 ハドソンの悲鳴にすら似た努声も聞かずにマックィーンはみるみる内に加速する。
そのままカーブに突っ込み強引なハンドリングで回り切るとタイヤカスがいつもの倍以上飛んで行き
黒々とタイヤ痕がコースに刻み付けられる。

 もう解説者の声も観客の熱狂も、ハドソンの声すらも届かない。
 稲妻とは、音すら追い付かぬ光の疾走なのだから。

 ターンの半ばから視界はクラッシュによる不穏な白煙で包まれる。その中から現れる引っくり返ったレーサーを、
まさしく稲妻のごとき走りで避ける、避ける、避ける。スピードは緩むこと無く、むしろ上がっていく。
鬼神の如きその走りは全てを振るい落とす。不意に飛んで来た鉄片が派手にボンネットの左側を擦っても
それすら意識の外。白煙が晴れる。そこには、白と黒のチェッカーフラッグ。

274 名前:>108の続き/稲妻×医者V・3:2006/12/01(金) 17:25:12 ID:smYKnf8i0
 限界までアクセルを踏み込む。天も裂けよと言わんばかりのエンジンの咆吼。加速。だがそのスピードに
今度は自身が対応仕切れずタイヤが浮いた。それを無理矢理押さえ込み、射抜くように見つめるその先。


 ゴールラインを、突き抜けた。


 光が閃くより短いその出来事に、誰もが何もかもを忘れていた。
 最初にそれを打ち破ったのは、解説席のダレルだった。
『たっ……タイム!タイムは!?』
その一言で会場の全員がスクリーンを見上げた。
 一拍の間を置き、タイムが表示される。

『とと取った!越えた、越えましたよボブ!』
その瞬間、世界が熱狂へと転じた。

 もちろん、RSチームも。
「やった!マックィーンやったなーッ!」
びょんびょん跳ねまくるメーターの隣でマックは雄叫び代わりのクラクション、ルイジとグイドは
イタリア語と英語をごっちゃにしながらくるくる回る。あの速さを実戦に……と思わず呟いたサージは
フィルモアにまったりとどつかれた。シェリフはついに感涙に咽び泣いた最初の一泣きを、しっかりラモーンと
フローに目撃されてしまった。
 ハドソンは、未だ唖然とその場に立ち尽くす。

『っ……信じられないあのキングのレコードを2.88秒縮めました!まごう事なき新記録!!今伝説が生まれました!!
我々は確かに伝説を』
興奮のるつぼにある解説すらもハドソンの思考回路を通過する。
 様々な思いが、じわじわと突き上げてくる。
「……あの、馬鹿が」
ぽつりと呟いた直後、タイヤが発する悲鳴が辺りの音という音を切り裂いた。

 マックィーンが、よたよたと入場ゲート辺りで止まりかけていた。

275 名前:>108の続き/稲妻×医者V・4:2006/12/01(金) 17:25:51 ID:smYKnf8i0
 それを見た瞬間、ハドソンはインカムをかなぐり捨てた。
「持ってろ!」
放り投げた先に誰がいるかも確かめず、スタンドから飛び降りる。豪快に着地すれば、かつて『弾丸』と
謳われた最盛期を彷彿とさせる走りで力尽き掛けたルーキーの元へ突っ走る。そしてその目の前で、
思い切りブレーキをかけた。

 赤とネイビーブルーが正面からぶつかり合って互いのタイヤがギャギャギャ、と摩擦音を掻き立てる。
ハドソンの勢いに押され、二台はぐるりと一回転して止まった。

『ハドソン・ホーネットが飛び出した?一体――――ギャアアアアア!』
『カメラ!カメラどうしたの!?映像早くして何やってんだぁぁぁぁ!!』
唐突に真っ黒に染まったモニターに解説席が阿鼻叫喚の様に転ずる。


 ――ハドソンにいきなり投げられたインカムを追い掛け上手く捕まえたはいいもののうっかり受信用鉄骨から
伸びるコードを轢いてしまったメーターと、ついつられて追い掛けてその巨体のブレーキングを間違え、
引っ掛かけたついでに鉄骨を傾けてしまったマックは暫し無言で見つめ合い、徐にタイヤを差し出して
固く握手を交わした――――


 観客が身を乗り出しても良くは見えないゲート前で、マックィーンとハドソンは、コースの中で長い事
そのままの態勢だった。
 ボンネット同士をぶつけて眼を閉じて。もう少し長ければ、事故を疑われてしまう事うけあいの長い時間。

276 名前:>108の続き/稲妻×医者V・5:2006/12/01(金) 17:26:31 ID:smYKnf8i0
 先に音を上げたのは、ハドソンだった。
 ぷはっ、と吐息を零してマックィーンを突き放す。押されたマックィーンは涼しい顔でバックしてやる。
 ハドソンは、げっそりと言葉を押し出した。
「…………息が続かん」
「おじいちゃんに無理はさせられないって事だね……覚えとく」
悪戯っぽく笑ってから、マックィーンの表情がゆっくりと驚きに塗り変わる。
「あれ――何で、ドック?」
急におたおたし始めたルーキーを、ハドソンは大仰な溜め息で制した。
「……勝手に訊いておいて勝手に通信を切られちゃあいい迷惑だ。――聞いていなかったのか」
何が?と尋ね掛けて黙る。記憶の引き出しを怒涛の勢いで開けていく。
 通信を切る直前、確かにハドソンの声はした。それはきっと制止を意味する手合いの言葉だろうと――聞き流していた。
「…………」
「……本当にお前は勝手な奴だな、若僧」
ハドソンの責めるようなじっとりした視線にマックィーンは身体を縮こまらせる。
 その様子にハドソンはそっと笑って、続けた。

「――――好きにしろ、と言ったんだ」

「…………!」
すぐさま顔を上げて、ハドソンを見つめ返すが――ハドソンはそっぽを向いていて叶わない。
「〜〜〜〜〜〜っ、ハドソンー!やった、僕はやったんだ!」
マックィーンが飛び付いてくる。目一杯擦り寄せられる赤いボンネットにハドソンは呆れたような顔を向けるも、
払い除けはしなかった。
「ハドソン、ね、聞いて」
「何だ」
あまりぐいぐいと擦り寄せられるのは勘弁とタイヤで微妙に牽制しながらハドソン。
「キングさんが結婚したのって、いつか知ってる?」

277 名前:>108の続き/稲妻×医者V・6:2006/12/01(金) 17:27:06 ID:smYKnf8i0
知らない。そう答えると、マックィーンは歴代のタイム保有車であり名レーサー……つまり、ジンクスの
体現車を次々と挙げていく。最後に、先と同じ質問をくっつけて。
 それらにもかぶりを振ると、マックィーンはそれはそれは幸せそうに笑った。
「みんな、ここで走ってから――なんだよ」
「……――!」

 あれだけ、こだわっていた。

 くだらぬジンクスだと笑い流していた。
 まさか……そんな『副賞』が存在するとは露も知らなかった。
「……」
見開かれたハドソンの眼が、一気に眇められる。
「そのために、あの中をぶち抜いたのか」
「うん」
腹の立つ事に、即答だ。
「まったく、お前ときたら――――」

きたら、何なのだろう。

 何度言っても無駄なパフォーマンスをやめないし。
 何度拒んでも果敢にアタックを繰り返してくるし。
 何度暗に告げても(分かっていないだけか?)レース前にささやかな約束を取りつけるのを、やめない。

 彼なりの気遣いだ、すべて。
 例えメーター達と流行りの映画は全て観てしまっていたとしても、フローのオイルなんて毎日浴びる程飲めるとしても、ダートのドライブにちょっと飽き気味だったとしても。

『自分はクラッシュなんかしない。
 必ず帰ってくるから、ささやかな約束に付き合って』




278 名前:>108の続き/稲妻×医者V・7:2006/12/01(金) 17:27:58 ID:smYKnf8i0
「……きたら、何?」
「――――。そら、そろそろ行け。ウイニングランだ」
「えぇっ!?じ、じゃあちょっと待ってハドソン」
急に態度がいつも通りに戻ったハドソンに、マックィーンは眼を白黒させた。
「さっきの通信!残り10周ぐらいの……何て言い掛けたの?」
ハドソンはすぐには答えず、マックィーンを押し出した。
「そうでなきゃ、俺がクルーチーフをやる意味がない!」




「………………」
ラモーンは生来の飽き性であるので、歓喜と熱狂も比較的早く去っていっていた。なので、時間潰しに見るのはコースだ。
 コースの中でマックィーンとドック・ハドソンが何か喋っている。笑っている。おまけに過剰なスキンシップも少々。
 ハドソンが押し出し間際にバックをばん、と叩くとマックィーンが悲鳴を上げた。その顔は笑っている。
「……ポリマー加工、サビ系のチェック、あー後デントリペアだろ……ついでにガラス関係もやっとくか
……うん?ちょい待て、シャフトが歪んじまったら誰が直すんだ?」
眼を細めた職人の顔で、何やらぶつぶつ考えている彼に近寄って行くのは、愛妻フローだ。
「あら、ラモーン?どうしたの、難しい顔して」
「んー……――フロー」
「なぁに?」
「――俺、整形外科の勉強するわ」
「……えぇ!?」
驚くフローとは対照的に、ラモーンは至極真顔でこう言った。

「これから何かと、役に立つんだよ」

279 名前:風と木の名無しさん:2006/12/01(金) 17:29:48 ID:smYKnf8i0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ あああ伏せ忘れたああアアア
 | |                | |     ピッ   (TAT )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
これぞ生き恥orz 
読んでくださってありがとう、コメントくださってありがとう。
お付き合いありがとうございました!

280 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(始):2006/12/02(土) 00:42:12 ID:S+tbYiYO0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |・来月20歳になるモナー
                     |・戦争が終わったら彼女を連れ帰ってケコーンするモナー
                     |・わが国は史上最強だモナー他
                     |明らかな死亡フラグからの生還チャレンジモナ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  クレイジーな挑戦だな。
 | |                | |             \ 注意書き多いぞ。
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ スデニ該当
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) カンヨウクジョウタイ?
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スラッシュスレ561です。結局あれから半年近く経つ今も見つけられず自家発電。
米ブラックコメディ反戦文学/映画<キ-ャ-ッ-チ=22>。ネイ卜リー総受け。
原作キャラ萌と映画の中の人萌が入り混じっている為、映画と原作の設定が混じってます。
・ネイ卜リー……名家の19歳のお坊ちゃん。
・ヨサ-リアン……28歳の主人公。
・夕゙ンバー……26歳くらい。人生を退屈で満たし、時間を長く感じる(主観的に長生きする)
ことが目標。

<注意>
・受けの想い人は女性です。彼女との逢瀬シーンがあります。(エロなしです)
・慰安婦的売春と軽度の女装ネタが含まれます。
・これ以前の時期に部隊内で2名の死亡者と1名の行方不明者が出ています。
 うち1名の死に方はグロいです。(直接の描写はありません)

281 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(1/9):2006/12/02(土) 00:43:09 ID:S+tbYiYO0
―たったひとつだけ落とし穴(キ-ャ-ッ-チ)があり、それがキ-ャ-ッ-チ22だった。

1944年12月

 一目惚れだった。
その無邪気な姿を見た瞬間、夕゙ンバーは彼がその身を貶め、自分の欲望に奉仕するのを夢見た。
 いつも通りのピアノ一サ島の1日だった。集会で飛行義務回数が65回から75回に
引き上げられたことが告げられ、ネイ卜リーを除く全部隊員から不満の呻き声が漏れる。
他の部隊では30回飛べば帰国できるのだから。
 
 68回飛んで、すでに帰国の権利を手にしていたはずのネイ卜リーは集会後、その顔に
間の抜けた幸せそうな笑みを浮かべている。
「なに笑ってるんだよ」と夕゙ンバーはつまらなさそうに問いかける。
「帰らなくて済む……"彼女"と一緒にいられるんだ。まだ国には連れ帰れないし」
 夕゙ンバーはその予期された返答に苛立つと同時に嬉しく感じる。これから彼と喋るのはさぞ
『面白くない』時間になるに違いない。それは自分の寿命を延ばしてくれるはずだ。
「"彼女"?あんな淫売に入れ込んで……お前はたった5分のよがり芝居に騙されて、病気を
 抱え込んだ挙句に一生を棒に振るんだろうよ」
「僕の婚約者を侮辱するのはよしてくれ!」
「誰とでもやる"婚約者"か……それなら買い占めておけよ。不細工が商売しているのは目障りだ」
 ネイ卜リーが独善的な笑みを浮かべて反論する。
「第一に彼女は美しい。第二に、気高い彼女は僕に『買われる』のを好まない。
 愛しているなら、彼女は返して、他の女を買うだろうって」
「お前はそれを信じるのか?どうせ金は払わされるんだろう?」
「もちろん信じるし、彼女はその金額に値する」その理屈の馬鹿馬鹿しさは夕゙ンバーを苛立たせ、
同時に喜ばせる。このつまらない時間で自分の寿命はさぞや延びたことだろう。

282 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(2/9):2006/12/02(土) 00:44:12 ID:S+tbYiYO0
 ある朝の作戦伝達会中に夕゙ンバーがメモを回し始めたのは、単なる退屈しのぎの冗談だった。
「“Nately's whore(ネイ卜リーの淫売)”:
 今夜、皆で買い占めよう。あいつが彼女とやれないように」
 ただしその紙が回っている過程で、誰かがタイトルにたった一文字を付け足した。
そいつも軽い気持ちでやったのだろう。
 しかしそのたった一つの不定冠詞で意味は決定的に変化していた。
「“Nately's a whore(ネイ卜リーは淫売)”:
 今夜、皆で買い占めよう。あいつが彼女とやれないように」
 そして"ワシン卜ン・ア一ヴィング"の署名。従軍牧師を窮地に陥れた謎の検閲官のサインだ。
手元に戻ってきたメモを見つめ、夕゙ンバーは笑みを浮かべる。
今夜はきっと楽しい時間になるだろう。自分の寿命には悪影響を与えるだろうが。
 その日一日、部隊は奇妙な活気を帯びる。ある一人を避けて伝言ゲームが行われる。

 夜、談話室でネイ卜リーは仲間に取り囲まれる。
「お前は婚約者に、他の女を買う分の金を渡したいんだよな。
 でもお前は他の女とは寝たくないんだろう?」
ネイ卜リーは頷く。
「ならお前が金を稼いで、その分を彼女にやったらどうだ?」
「そうしているよ」彼は誇らしげに胸を反らせる。『金のためにはなにもする必要がない』
ネイ卜リー家出身の彼にとって、自分で金を稼ぐのはこの軍隊が生まれて初めての体験なのだ。
「もっとちゃんと……彼女と同じ仕事で稼いでさ」
「僕は男だから無理だよ」
「俺たちが買ってやるって」
 ネイ卜リーは不思議そうに皆を見回し、首を傾げて微笑む。このこと全体を冗談だと思って。
「身体洗って部屋で待ってろ」
 そう告げられたネイ卜リーは、後ろ手をひらひらさせながら部屋を出て行く。
どのみち彼は毎晩神経質に身体を洗い上げる。

283 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(3/9):2006/12/02(土) 00:45:55 ID:S+tbYiYO0
 時間を見計らって皆で彼の部屋を訪ねる。軍隊支給のものではない、高級な石鹸の匂いを
振りまく彼がなんの疑いもなく出迎える。
「さあ、お前を買いに来たよ」ネイ卜リーを簡素なベッドの上に座らせると、夕゙ンバーが
口火を切る。
 面白くもない冗談をしつこく重ねられた、と言いたげにネイ卜リーが顔をしかめる。
「君たちにもお気に入りの女性がいるんだろう?」
「お前のように気に入っている訳じゃない……もうとっくに飽きているんだよ。お前と違って。
 女を買うこと自体もう飽き飽きだ。だから、目先を変えてお前と遊ぼうと思ってな」
隣でマイロ・マイン夕゙ーバインダーが口を開く。先ほどのメモを手にして。
「キ-ャ-ッ-チ22は、部隊中に回覧された文書は公式のものと同等になると定めている。
 検閲官のサインもある。 これは既に命令書だよ、ネイ卜リー大尉」
 あらゆることを規定する軍規を持ち出され、ネイ卜リーは黙り込む。

 善意に満ちた表情のマイロが、持参した袋から様々な商品を取り出す。
ふんわりとした純白の衣装……皆から取り上げたパラシュー卜の絹地で縫い上げられたものだ。
"M&Mエンタープライズ"所属のお針子達の手をぐるりと回り、魅力的なドレスに仕立て上げられている。
液体の入った数本の瓶。
「ローション。こっちは麻酔入り、もう1本は催淫剤入りだよ」そして大量の避妊具をバラバラと床に落とす。
「ありがとう、マイロ……最初に俺が買うから、皆部屋から出て行ってくれないか?」

284 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(4/9):2006/12/02(土) 00:46:48 ID:S+tbYiYO0
 枕元にガラス瓶を置き、そこに紙幣を落とす。『彼女』の7割ほどの額だ。決して高くはないが、
店を通さないことを考えれば割のいい商売だろう。
 服を脱ぐとベッドに上り脚を開く。パラシュー卜製ドレスのみを身にまとって、途方に暮れた
表情でベッドにしゃがみ込んでいる彼に麻酔剤入りのローション瓶を手渡し、こう告げる。
買い手として、傲慢に。
「自分で準備しろ。その間はこっちを咥えてもらおうか」躊躇う彼に畳み掛ける。
「やり方わかるか? 彼女はお前には何もしてくれなかったのかもしれないからなぁ」
ネイ卜リーは掌に液体を垂らしてその手を後ろにまわす。むきになったように自分の肉体に
塗りつけ、指を動かして慣らす。上半身を傾け、客の脚の間に顔を寄せる。
 舌が性器の先端に触れる。夕゙ンバーは彼の頭を押さえて根元まで含ませ、噎せるまで押し込む。
 手を離すとネイ卜リーが咳き込みながら涙目で見上げる。その肩に乗る生地を引張り、
服を脱ぐよう促す。
 裸になった彼を仰向けにさせる。装身具のように、一つだけ彼の首に下がった認識票が目に付く。
〔エドワード J.ネイ卜リーIII〕
「エドワード三世か。さすが立派な名前だな」
 コンドームをつけ、ネイ卜リーの脚を開かせて、ゆっくりと挿入していく。
 ネイ卜リーは息を詰める。ローションのせいか感じるのは痛みではなく、漠然とした不快感のみ。
 その間、数度に渡ってネイ卜リーが枕元の時計に視線を走らせるのが夕゙ンバーの目に入る。
彼は今、夕゙ンバーが常に手にしたいと思っている時間―不快で、静止しているように、
無限に続くように感じられる時間―を過ごしている。彼の寿命はその分延びているのだ。
後で友人としてそのことを教えてやったらきっと喜ぶだろう。夕゙ンバー自身は、
時間が自分の周りを容赦なく飛び去っていくのを感じている。

285 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(5/9):2006/12/02(土) 00:47:23 ID:S+tbYiYO0
 体内にある、ネイ卜リー自身も知らなかった部分に性器の先端を圧し付ける。彼の両目が
見開かれ、夕゙ンバーの顔に釘付けになる。それまで他人事として対応することに、その間は
『目を閉じてイングランドのことを考え』ていようと決めていた友人とのセックスが、突然
彼自身の肉体に襲いかかってくる。気を紛らわせてくれるはずの痛みはなく、体内に生じる
衝撃のみを感じる。二つの肉体に挟まれたネイ卜リーの器官が急速に硬くなる。
 夕゙ンバーが身体を小刻みに動かす度に、ネイ卜リーの太腿と腹部が震える。
あくまでも優しくそっと動き、夕゙ンバーはネイ卜リーを刺激し続ける。
 やがてネイ卜リーはその動きに応じて身体を動かし始める。それを見て夕゙ンバーは初めて
彼に口づけ、乳首に指を這わせ、軽くつねる。あくまでも優しく愛撫を続ける。
 彼があの女を抱くように、愛情深い恋人のように。
 夕゙ンバーはベッド脇からもう1本の瓶をとり、手に垂らしてネイ卜リーの性器をつかみ、
先端を撫でる。媚薬…あるいは単なる刺激剤が粘膜から吸収されるに従い、ネイ卜リーの表情は
切迫したものとなる。それを見た夕゙ンバーが苦笑いする。
(色々サービスを受けるのは初めてなんだろう)
 数回扱き上げると、ネイ卜リーは夕゙ンバーを上に乗せたまま反り返って達する。続いて
夕゙ンバーも射精する。
「お前もいつもしていることだろ」呆然としたままの彼の頬を撫で、後始末を済ませた
夕゙ンバーが退室する。
 ベッドに仰向けに横たわったままのネイ卜リーは、肉体的なものだけではないショックで
しばらく動けない。
金銭を介した関係で、この後も同じような行為が待っている状況で、相手から快楽を与えられる
のは『疎ましい』。愛する女性に対して自分が行っていたことが同じ行為とは思いたくない。

286 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(6/9):2006/12/02(土) 00:48:14 ID:S+tbYiYO0
 続いてマインダ一バインダーが音もなく部屋に滑り込んでくる。
ベッドに腰かけた彼はネイ卜リーを見下ろし、ゆっくりと諭す。
「君は馬鹿だよ。僕に言ってくれたらあんな年増女じゃなくて、14歳の処女を紹介したのに
 ……まぁその女性は本当はたった32歳で、10歳の息子がいるんだけどね。
 でもあまり違いはないだろう?」
「それなら彼女の方が若いし、だいたい14歳の処女に興味なんてないよ」ネイ卜リーが反論する。
 マインダ一バインダーはシンジケー卜の商品としてのネイ卜リーを見つめ、
その肉体を試し、値踏みしていく。
―悪くない。外に出すときにはきちんと軍服を着せた方がいい。ドイツ兵に好評を博するだろう。
 マインダ一バインダーは次回の交渉について思い巡らせる。商談の隣室、あるいはいっそ
同室に、アメリカ軍の正規の軍服を着込み、後ろ手に拘束したネイ卜リーを転がしておけば、
取引を有利に進められるに違いない。そうだ、この前彼らが受けた勲章も忘れずつけさせよう。
 その成功への予感こそが、彼を絶頂へと導く。

 その後出入りした数人の兵士は、手近で多少安価な女の代用品しか求めていない。
ネイ卜リーは部屋を薄暗くし、ベッドに臥せて単なる穴の役割を果たしていれば良い。

 もう部屋に入ってくる者がいなくなると、ネイ卜リーは深い溜息をつく。色々考えるのは
翌日に延ばすことにして、床からパラシュー卜生地を拾い上げ、毛布代わりに被ってそのまま
眠りに落ちる。

287 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(7/9):2006/12/02(土) 00:48:54 ID:S+tbYiYO0
 室内に一歩足を踏み入れると同時に、ヨサ-リアンは別の世界へと飛ばされた。暑い機内で、
自分が掛けたパラシュー卜にくるまれて凍死したスノー卜゙ンがそこにいた。
……いや、ネイ卜リーだ。
ひんやりとしているのに、ムッとする暑さを感じる室内のベッドに横たわるネイ卜リー。
パラシュー卜生地がその身体を覆っている。ネイ卜リーがだるそうに枕から顔を上げる。
「ああ、ヨサ-リアン……君まで僕を買いに来たの?明日でもいい?
 今夜はもう店仕舞いなんだ」
 ヨサ-リアンは無言でベッドに上る。彼が被る布を剥ぎ取る。肌を確認する。
 今日つけられたらしい、新しい引掻き傷やつねられたらしい薄い色の痣が目に付く。
深刻なものはないようだ。ネイ卜リーがヨサ-リアンに突然『秘密』を暴露することはないだろう。
 サイドテーブルから瓶を取る。麻酔入りと表示されている。これが1瓶でもあれば、
あのときのスノー卜゙ンはどれほど楽になったろう。傾けて、残りの液体を全部彼の身体に空ける。
「お前はクレイジーだ」
「男を買いに来た君のほうがクレイジーだよ。僕は軍規に従っているだけ」
「そう思っているのがクレイジーなんだ……キ-ャ-ッ-チ22なんて存在しないのに」
 どうでもいいように、ネイ卜リーが首を振る。
「でも、君だって従っているだろ?
 こんなことを自分にする相手が何を信じてようと、僕には関係ない。
 金は要らないから、とっとと済ませて寝かせてよ」
 ヨサ-リアンは首を振ると、やはり金を瓶に落とす。
 ローションの効果と、今までの行為で鈍麻している彼の身体を撫でていく。その耳元で呟く。
「aを書き足して、署名をしたのは俺だ。本当に冗談だったんだ」
「ああ、君だろうと思っていた」
 そのまま覆い被さるヨサ-リアンを、ネイ卜リーが脚を開いて受け容れる。

288 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(8/9):2006/12/02(土) 00:50:02 ID:S+tbYiYO0
 ネイ卜リーはヨサ-リアンの背中に腕を回し、耳にぼんやりとこう囁く。
「…そう、そこ……そこ…」
 彼は気のない淫売として、口先のみの媚を売っている。それを耳にしたヨサ-リアンの全身が
強張る。彼が口にしたのは、自分が断末魔のスノー卜゙ンに囁いていたのと全く同じ単語
-there-だ。
(……よーしよーし……)
機首にいたネイ卜リーが知るはずはない。単なる偶然だ。……心底ぞっとする。
その無意味な音を発する口を自分の唇で塞ぐ。切れ切れに呟く。"スノー卜゙ン"に語りかける。
「お前と…ちが……俺はぜった…死なな…。絶対」
 横たわるネイ卜リーに身体を密着させてその体温を感じるようにする。彼は死後やっと
その名を知ったスノー卜゙ンではない。愛すべき自分の親友で、同じように命ある存在だ。
自分が肉体の一部を埋め込んでいる上下の部分以外に、身体に裂け目など入っていない。
その傷ではない開口部を確認するように、ヨサ-リアンは何度も何度もネイ卜リーを貫き、
その唇を貪り、舌を差し込む。
 彼の身体の奥深くで達し、彼に圧し掛かって息を整える。
「俺が最後の客だよな……ここで寝てもいいか?」
 撃墜され、海に不時着したオーアが行方不明の今、マインダ一バインダーのせいで着任前に
死んだマッド少尉の荷物が待つ自室に戻り、独り冷たい床に就くのはとても不快なことに思える。
9歳下の親友の温かい身体を抱き寄せて眠る方がはるかに魅力的だ。ネイ卜リーは既に
半睡状態で、肯定とも否定ともつかない声を漏らすと、その身体から力が抜ける。
 その寝顔にヨサ-リアンは囁きかける。
「オーアのように消えさせたりしない。これからは必ずお前と一緒に飛ぶ」

289 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(9/9):2006/12/02(土) 00:51:27 ID:S+tbYiYO0
 夜を部隊専属の淫売として過ごすネイ卜リーは、皮肉なことにそれまでより『男らしく』なる。
子供のようだった、疑いを知らぬその瞳は相手の反応を読みとるものとなる。鋭く、思慮深い
表情を浮かべる。
その腕や脚で二人分の体重を支えることを繰り返した肉体は、単なるやせぎみではなく、
引き締まったものとなる。
 金を稼ぐ手段を見つけた彼は、手当目当てに他の兵士の搭乗を代わる必要はなくなる。
 ヨサ-リアンと一緒に飛んでいる限り、彼が飛行中に死ぬことはないだろう。
―彼は来月の20歳の誕生日を無事に迎えるに違いない。

 ネイ卜リーの非番の日の前夜には、夕゙ンバーとヨサ-リアンが必ず彼の部屋を訪れる。
 夕゙ンバーはネイ卜リーを熱心に愛撫し、彼が快感に身を震わせるのを見つめる。
 入れ替わりに入室したヨサ-リアンは、やるやらないに関わらず、ネイ卜リーを抱き寄せて眠る。
彼が必要としているのは、ネイ卜リーの体温だ。

 翌日、ネイ卜リーは花束を持って安娼館に"婚約者"を訪ねる。金をすっかり渡し、2人は
アメリカでの生活を語り合い、その後昼中単に寄り添って眠って過ごす。
彼との時間は身体を休められるので、彼女は今ではネイ卜リーに優しくできるし、
彼を本当に愛していると思っている。

 ネイ卜リーは彼女に恋し、ヨサ-リアンの保護と抱擁を喜び、夕゙ンバーの行為を愉しむ。
今の彼はもう無垢ではないかもしれないが、それでも無邪気な好青年であり続けている。
 娼館のじいさんなら彼を見て
「自分と同じくらい道徳的になった。彼は立って生きるほうがましと、やっと気づいたのだ」
と褒めるかもしれない。
ネイ卜リーはじいさんと同じ107歳まで生きるかもしれない。

290 名前:キ-ャ-ッ-チ=22(終):2006/12/02(土) 00:52:50 ID:S+tbYiYO0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                
 | |                | |           ∧_∧ 色々な矛盾は
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 『キ-ャ-ッ-チ=22!』で
 | |                | |       ◇⊂    ) __ ごまかすよ
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

とにかく、どうあっても生き残って欲しかっただけですorz
長々とスマソ。

291 名前:1:2006/12/02(土) 08:24:49 ID:2eCNfrBG0
やまだたいちのミラクル。
矢島×たいちのつもりだけど、矢島さん最後にしか出てきません。
6レスほどお借りします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 あさってからの三連戦に向けてデータをまとめていた平田は、ようやく一区切りをつけたところでウンと伸びをし、席を立った。
さて、これから軽いストレッチでもして身体をほぐそうかと思ったところへ、こんこんとノックする音が響き、平田が口を開くより前に、
ドアがすっと開く。わずかな隙間から顔だけだしたのは、たいちだった。
 大きな瞳をきょときょとさまよわせ、
「今、平田さんだけ?」
 と頬を紅潮させて、必死な形相で訊いて来る。
「ああ」
 平田はたいちの前に立って答えた。それでもたいちは、用心深く、
「八木沼さんはいない?」
 と重ねて問いかけてくる。平田のルームメイトは、おそらく屋上で素振りでもしているに違いない。一体なにがあったんだと平田は
戸惑いつつ、
「大丈夫、とうぶん八木沼は戻ってこないよ」
 そう言ってドアを開け放ち、たいちを部屋の中に招き入れる。それにしても、いったいたいちは何の用でここに来たのだろう?
 八木沼には聞かれたくないことなのか?
 そんな平田の疑問は、すぐさま氷解することになる。そして、すっかり保健体育の先生になった気分になった。
もしくは子どもの悩み相談室の相談員。まかり間違ってもプロ野球選手の先輩という立場ではない。
 あぐらをかいたまま頭を抱えた平田の前で、たいちは正座をして畏まっている。
「だって平田さん、東大出で頭いいってみんな言ってるもん。おれの千倍は頭いいって!」
 最上級の褒め言葉を贈られ尊敬の眼差しを向けられても、平田の困惑は深まる一方だ。

292 名前:2:2006/12/02(土) 08:27:11 ID:2eCNfrBG0
「だから、どーやったら生えるのかおしえてよー」
 涙と鼻水で顔をぐちゃくちゃにしてたいちは平田の肩を激しく揺さぶる。そして、返答に窮する平田はされるがままになるしかなかった。
 18にもなって、未だにアンダーヘアが生えない。そもそもアンダーヘアどころか……というのがたいちの最大のコンプレックスだ。
トイレや風呂、もちろん練習中でもさんざん「つるちん」ネタでおちょくられるのは、気持ちのいいものではないに決まっている。
 もちろん、そんなことは「つるちん」命名者である八木沼を初めとするチームメイト全員分かってはいるのだ。
分かっていても、やめられない。プロ野球というある意味男らしさを誇り競う世界において「つるちん」という存在。これは面白すぎる。
おまけに、一々顔を真っ赤にしてムキになるたいちの反応も面白い。これでは、おもちゃになるのも当然である。
だが、当然とは言え、おちょくられる当事者が納得できるはずがない。
 しかし「生やせ」といきなり言われても、なにをどうすればいいというのか。
「そもそも、俺は法学部で医学部じゃないし」
 医者でも、おそらくはお手上げだろう。陰毛が生えるというのは、第二次性徴を迎えるということだから
『性腺刺激ホルモン分泌ホルモンの増加が生じ……うんぬん』という堅苦しい保健の教科書のフレーズがぱっと頭に浮かんだが、
これをたいちの小学生並の頭で理解させることが出来るのか。司法試験ではなく教員試験を受けるべきだったかと平田は後悔した。
「ええーと」
 困り果てた平田は、ついにやけになって手にしたノートと鉛筆で、おしべとめしべを描きはじめる。

293 名前:3:2006/12/02(土) 08:28:39 ID:2eCNfrBG0
 その様子をドアの隙間からこっそり覗いているのは、八木沼だった。左手にはバットをぶら下げ、中腰で覗き込んでいる。
正当な部屋の住人であるにも関わらず、こうしてこそこそしているのは「二階堂みたいにボーボーになりたいんだいっ」
というたいちの喚き声がドアの向こうから聞こえたからだ。
 そこでドアを思い切り開こうとしていた八木沼の手の動きがぴたりと止まる。先ほどの悲痛な訴えに続いて、
平田の「うーん」「ちょっと落ち着けよ、な」というその場しのぎの取り繕いの言葉が聞こえてくる。
 これはなにか面白いことになるだろう。間違いない。
 八木沼は一人にやりと笑い、ノブを用心深く開けて中をうかがうと、まさに想像通りの光景が繰り広げられていた。
悩めるたいちの性相談室だ。
 講師役の平田がへたくそなおしべとめしべのイラストで講義している。しかし、生殖について学んでも結局「生えて」
くるこたぁないわなあ、だいたい、そんなこと知らなくても勝手に生えてきたし、などと思いつつ、無駄に真面目きわまる
二人きりの性講座を熱心に覗き続ける八木沼だった。だが、寮の廊下でいつまでもそんな不自然なことをしていられるはずもない。
 何者かが八木沼の肩を叩いた。
「うへっ」
 思わず八木沼は飛び上がって後ろを振り向くと、そこにはトムと二階堂と大山がそろって並んでいた。
三人そろって、にやにや笑っている。
「なんで自分の部屋なのに入っていかないんだ?」
 と八木沼の驚きようをおちょくるように、トムはさらにぽんぽん肩を叩く。
「他にだれかいるんだなー、きっと。はっはっは」
 好奇心まんまんで二階堂が八木沼を押しのけようとする。
「けけ。まさか平田さんが女でも連れ込んでいるとか?」
 八木沼の傍らをすり抜けて、いきおいよく大山が部屋の中に入っていった。
 平田の講義はいよいよ佳境を向かえ、「受精」の説明に差し掛かっていた。

294 名前:4:2006/12/02(土) 08:30:36 ID:2eCNfrBG0
「でていけーっ」

 たいちの絶叫が寮内いっぱいに響いた。だが、もちろん、出て行くはずがない。
逆に中にずんずん押し入り、たいちに詰め寄っていく。
 必死になって八木沼たちを追い出そうとするたいちと、それを適当にあしらう四人を尻目に、平田はあわてて、
おしべとめしべの次の段階を描いたイラストを破り捨てて屑篭に投げ入れる。
 とうとう、二階堂の右脚がたいちの身体を踏みつけ床に押し付けた。そして、
「そんなに下の毛が欲しーっつんなら、おれさまのをやるよ。はっはっは」
 無造作に己のパンツの中に手を突っ込むと何本か引っこ抜き、たいちに見せ付けるように振ってみせる。
「あ、それなら俺も俺も」
 お調子者の八木沼がさらに続いて自分の毛を引っこ抜き、
「じゃあ、俺もだー」
 とトムがいそいそとたいちに差し出すと、
「あ、キンパツじゃねーか。俺が欲しー」
 ものほしげに八木沼がそれを見つめた。
「バカ言ってんじゃねーっ」
 耳まで顔を赤くしたトムが八木沼に殴りかかるが、あっさりとかわされ、そのまま壁に衝突し、そして、この俺も、と大山が
ベルトを緩めかけたところへ、
「このハゲちびのは下のより上の毛の方がきちょーだよなっ」
 という二階堂の声とともに、ぶちぶちと無慈悲な音が大山の頭上を襲ったのだった。
 あまりに不埒な二階堂のふるまいにショックを受けた大山は二階堂へ身体ごと突っ込んで行き、さしもの巨漢二階堂もぐらりとよろける。
こうして、たいちは息絶え絶えになりつつ二階堂の足元から這い出すことに成功し、おもむろに身体を起こした。
 そして、未だ乱闘騒ぎを続ける連中に向かって、
「そんなもん、いらないもんねー」
 と力いっぱい怒鳴りつけた。なにが悲しくて他人の毛を見せびらかされなくてはならないのか。
その気迫に気おされて、ようやく四人は殴り合いをやめてその場に直立不動する。

295 名前:5:2006/12/02(土) 08:32:21 ID:2eCNfrBG0
「まあ、たいち。あまり怒るなよ」
 つられて自分も陰毛を引き抜きかけた平田だったが、たいちの怒鳴り声で思いとどまりベルトを
締めなおした。そして、八木沼たちとなにより自分の行動をフォローしようと、
「いいか、たいち。下の毛はな、古来より縁起のいいお守りとされているんだ。みんなお前のことが心配なんだよ」
 ともっともらしい言葉を並べ立てた。
 もちろん、先ほど下の毛を差し出したのはそんな理由ではないのだが、
「お前のことが心配だ」という言葉自体には嘘はない。
 たいちは、じっと平田の目を見つめ、そして、八木沼、トム、大山、二階堂の顔を順ににらみつけていった。
 なにやらモノ言いたげな四人だったが、たいちの後ろにいる平田ににらみ付けられ、ぎくしゃくとそろってうなずく。
「そうだよ、たいち、ホームランを打ってくれよ」
「そんで、エラーしないよーにってな」
「明日、おめーが大活躍するよーにってこった」
「で、ちゃーんと生えるといいなー。けけけ」
 これでようやく事態が収拾しかけたと、平田は安堵のため息をつきかけるその寸前に、
「だがよー、そのお守りってーのは処女のじゃねーと効力ないって、知ってたか。お前ら」
 そう言い放ったのは、いつの間にか全開のドア前に陣取っていた三原だった。しっかと腕を組み、
意味深な不敵な笑みを浮かべている。
 たいちを除く全員が、この不埒な乱入者の発言に、
(一体全体、誰のせいで効力なくなったと思っているんだっ)
 と思ったのだが、さすがに口に出せる剛の者は存在しなかった。
 それぞれがそれぞれの思いを胸に、改めてベルトをぎゅっと締めなおすのが精一杯だ。
いきなり静まり返った部屋の中、たいちの声が響く。
「ねー、なんでお守りにならないの、ね、ね。なんでーどうしてー」
 興味津々で平田に尋ねるが、彼は頬を赤くしたまま沈黙を守り続ける。仕方ないので、八木沼、トム、二階堂、大山に
対しても同じように質問をしたが、誰も答えてくれない。最後にようやくたいちは、待ち構える三原の元へやって来た。
「ねー、なんでー?」
「それはなー、たいち」

296 名前:6:2006/12/02(土) 08:35:16 ID:2eCNfrBG0
 好奇心丸出しで三原に詰め寄るたいちの頭を撫で回し、三原は満を持して解説しようとした。
平田たちの背に冷たいものが走り抜ける。
 ゆっくりと三原の口が開き……。
「たいち」
 横から口を挟む穏やかな声は、矢島のものだった。一体いつから、その場にいたのか、さすがの三原も動揺を隠せない。
その声音は激しくはなかったが、何者にも口を挟ませぬ迫力があった。
「いいか、毛が生えていないというのはな『ケガない』に通じるとして縁起がいいものなんだからな。たいちはな
生えなくてもいいんだ。ケガをしないのが一番大切なことなんだから」
 その言葉にたいちは顔を輝かせた。今までからかいの対象でしかなかった自分の「つるちん」を全面肯定してくれる
言葉を初めて与えられたのだ。感激のあまりに瞳まで潤ませ、鼻水を盛大に垂らす。
「分かったか、たいち」
「うん、矢島さん。おれ、すっごーくよく分かっちゃった。ケガなんてしないよ、ぜったいにねっ」
 ずるずるとたいちは鼻水を勢い良く啜り上げ、矢島に飛びついた。矢島のシャツにべったりと鼻水がついたが、
少しも動じることなく、彼はポケットからティッシュを取り出すと、丁寧にたいちの鼻を拭いてやる。
「ああ、そうだな。じゃあたいち、二人で一緒にストレッチでもしようか」
「はーい」
 たいちはすっかり上機嫌で、矢島の手をぐいぐいと引っ張る。何事も無かったかのように矢島は一礼し、
たいちに手を引かれるまま去っていってしまった。
 そして、後に残された者たちは、
(それは……つまり、一生つるちんでいてくれってーことなのか)
 と、矢島に対して形容しがたい敗北感を抱くのだった。

 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投下なので、改行等おかしかったらすいません。自分で書くと801っぽさが薄いけど、
こんな感じが一番萌える二人です。

297 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 00:13:06 ID:HYClVLOX0
元ネタが分からないけど凄く面白かったです!


298 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 01:15:07 ID:2ZPb5W960
>228
三日前にハマった作品だ・・・
神!!神すぎて震えたぜ・・・


299 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 05:35:19 ID:z6PdGQSq0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 流石兄弟
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ネタなし
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 地味
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


300 名前::2006/12/03(日) 05:37:46 ID:z6PdGQSq0

 陽が沈もうとしていた。
 雲は茜に染まり、空はグレイを含んだ妖しい紫。
 もうすぐ紺色に染まるその前に、真紅と最後の戯れをしている。
 普通ならオレはこの時間の空を見ることがない。
 大抵バイトを入れてるし、そうでなければテスト前だ。

 だが今日は、何もかも面倒になってさぼってしまった。
 そのくせ狡猾で小心者だから、きちんと雇い主に連絡している。
熱が出た、とかお決まりの嘘を。
 普段の信用で、あっさりそれは了承された。

 ぽっかりと空いた夕暮れの時間。
 それは自由というより牢獄めいて、暗い空白としてそこにある。
 悪友を誘って遊ぶ気も、女を呼び出して味わう気も起きない。
 仕方なく、のろのろと家路をたどった。

 帰りたいのか、帰りたくないのかよくわからずに、自宅前で自室を見上げた。
 西側の窓が開いている。そこに人影が佇む。
 落ちていく陽光の最後の一閃を受けて、輪郭がほのかに光って見える。
 兄者はオレに気づかずに夕陽を眺めていた。


301 名前::2006/12/03(日) 05:38:55 ID:z6PdGQSq0

 パソコンの前にいる姿か、ベッドで眠っているか、マンガでも読んでいる姿ぐらいしか
見ていなかったので、少し驚いた。
 彼でも、外を眺めたい気分のときがあるのかと。
 というか、箱を通して以外に外が存在することを知っているのかと。

 考えてみれば当たり前の話で、やつだって引きこもる前は普通に外に行き、
どうにか他人とも接していたのだ。
 あまりに間抜けで脳天気なので、考えたこともなかったが、己を悔いたり、
外に憧れたりすることもないことはなかろう。
 きっと今までも、こうして窓を開けて外を眺めることがあったに違いない。

 夕陽が沈むまで、彼を見ていた。
 姿はオレに似ていて、性格はオレと違っている。
 思いっきりとんまだが、オレの邪悪さをやつは持たない。
 別に天使のように清らかな心を持つわけじゃないが、誰もが持っていて特にオレに濃い、
ズルくて黒くて淫猥な部分が少し、人よりも薄い。
 だから、外に出られないのだろう。


302 名前::2006/12/03(日) 05:40:04 ID:z6PdGQSq0
 このところ、オレとあいつの関係性は変だ。
 幼いころから慣れ親しんだ通常の兄弟としてのポジションから、明らかに逸脱しかけている。
 きっかけは冗談としてのキス。
 ベッドを共にし、家にいる間はいつも一緒だなんて恋人同士か夫婦のようだ。
そんな軽口を叩き合っているうちに、遊び心でそれを与えた。
 酔芙蓉の花みたいに膚が染まっていくのを見て、そういやこいつ、女づきあいがまるでなかった、
どう考えてもファーストキスです、ありがとうございました、と考えた瞬間、こっちまで赤くなった。
 軽口にまぎらしていつものようにふるまったが、なんだか二人してぎこちなくなった。

 忘れたふりをして、2,3日過ごした。
 相手も当然そんな顔をしている。
 だが、オレの視線は今までと違う。あいつの、意外にやわらかかった唇や、
少し細い首の線などにあてられる。
 最近ではそれが進んで、無防備に投げ出される体のラインや、
まだ誰も知らないはずの腰のあたりに目がいってしまう。

 まずい。無茶苦茶まずい。
 体の中で警告音(アラーム)がなる。
 あいつは年子の兄で、DQNでニートで引きこもり。
 マイナス要素のてんこもり。
 おまけにオレは女好きで、男に興味を持ったためしがない。

303 名前::2006/12/03(日) 05:41:25 ID:z6PdGQSq0

 街灯がいつのまにか灯った。
 窓を閉めようとしてオレに気づき、少し微笑ってこちらを見た。
 オレは笑わずに彼を見た。
 見つめあう男同士。はたから眺めるとさぞや滑稽なことだろう。
 しかもこの位置じゃ、とんだ笑えるロミジュリだ。
 無表情に右手を上げてみると、あいつは左手を上げる。鏡のような左右対称。
似ては見えても真逆の二人。

 真逆であることに感謝している。
 心までオレに似ていたら、オレはあいつを誰よりも憎んでいただろう。
 その上、オレの中の闇を止める者がいなくなる。

 たとえば姉者。
 女を見ると無意識に分類・評価してしまうオレは、実の姉さえその枠から外さない。
 容姿・スタイル一流品で、キャラクターはビッチでヴァンプ。その上えらく切れる女だ。
 しかも、彼女はオレに似ている。そしてそれは外観ではない。
 心の中に抱く闇。それはオレの比ではないほど深く、重く、澄んだ美しい結晶だ。
 あの女の闇が虚無の細い触手と絡み合って、時たまちらり、と姿を現す時、
オレの躯はぞくり、と震える。
 もし他に兄弟が無く、二人きりだったとしたら、少しやばかったのではないだろうか。
いや、兄弟がいたとしても、それが兄者でなかったら、大いに苦しかった気がする。
 しかし運良く彼がいるので、俺は彼女に家族以上の愛情も執着ももたず、
冷静にみつめていることができる。
 もちろん彼女はストイックに自分を制御できるので、めったにその闇を露出させることはない。
それでもその希少な機会に、うっかり眩惑されそうになるオレに気づきもせず、
なんだか外した言動でその闇を一瞬のうちに追いやるのはいつも彼だ。

304 名前::2006/12/03(日) 06:00:41 ID:z6PdGQSq0
 あるいは、妹者。
 幼いなりに美の片鱗を見せる彼女を、そのまま自然に育つのを眺めるのではなく、
少し手を加えてみたらどうなるか、と考えてしまう。
 ほんの少しずつ毒を滴らせて、姉者とは違う別種の闇を水晶のように抱かせてもいいし、
反対に過剰にピュアに育てて、世の汚れに涙させるのもいい。
 優しくして慕わせて、時おり冷たくして、惑わせるのも楽しそうだ。

 心の底から難破船のように浮かび上がるよくない想い。
 もちろん実行するわけがない。
 けれど無邪気に笑う彼女の横で、優しい兄を装いながら、
邪気だらけの想いを一つ、二つと数えている。
 そんな時大抵、フリーズしただのブラクラgetだのの騒ぎを起こし、あっという間にそれを払う。

 いや、そんな騒ぎも言動もいらないのだ。
 あいつがあいつとしてそこにいれば、その空間に邪悪なモノは潜むことが出来ないのだ。

 それならばあいつに対するこの感じは、いったい何だと言うのだろう。
これは、悪ではないのだろうか。


305 名前::2006/12/03(日) 06:02:23 ID:z6PdGQSq0
 右手を下ろして歩き出す。
 玄関に向かうオレへの彼の視線を感じる。
 それは羽根のように軽く、やわらかい。

 雑用を済ませて上がっていくと、いつもどおりにディスプレイの前だ。
 ふり向きもせずに、お帰り、と言うから、いきなり椅子を回してこちらを向かせた。
 少し驚いてオレを見る。
 何の疑いも持たない瞳。
 突然いたずらを仕掛けてきた、親しい兄弟を見る眸。
 オレの中の濃い闇は、払われる前に挑みかかった。

 冗談では済まされないキス。
 強引に舌を絡めて、ちゃんと両腕で抱きしめて。
 今までのどんな女に対してより、本気になって唇づけた。


306 名前::2006/12/03(日) 06:05:25 ID:z6PdGQSq0

 目を開けたまま硬直している。
 それをいいことに椅子を動かしてベッドに寄せた。
 肩を押してそこに転がし、上から覆い被さった。

 体の一部が脈打っている。心臓の鼓動と同じリズム。
 多分これは、やはり欲望。
 認めたくはないが、情欲そのもの。
 オレはこいつとやりたいらしい。
 …………なかなか、笑えない冗談だ。

 ため息をついて離してやり、ごろりと横に転がった。
 兄者はコトを理解していない。逃げもしないで横にいる。
 隣でオレが獣になろうか、人のままでいるか、悩んでいるのに気づかない。



307 名前::2006/12/03(日) 06:06:32 ID:z6PdGQSq0

「………バイトは?」
「さぼった」
「今のは?」
「本気」

 引かせるつもりで答えた。
 何かをひどく壊したかった。
 困り果てた兄者の顔。そりゃそうだろう。オレだって困っている。

 拒否やなぐさめやからかいや恐怖だったら、襲っていた。
 嫌悪だったら、部屋を出た。
 だが彼はそのどれも選ばず、困ったままで横にいる。

308 名前::2006/12/03(日) 06:07:28 ID:z6PdGQSq0
 どんな欲望が正しいのか。
 年ごろの男女だったらそれでいいのか。
 そんなカードはダースで引いた。
 そのどれもが、取替え可能。華麗な手つきでシャッフルできる。
 なのにこいつはとんだJorker。ルールを外して忍び込む。

 恋という字に下心。
 悪という字も下心。
 惑っていても下心。
 忍んで患い悲しくて、懲りずに憑かれて忘れられない。
 怒ってくれてもいいけれど、恐れと怨みはどうしよう。
 念じて感じて想うだけ。
 慰めてほしい愚か者。

 かってなことを考えて、困った人を抱きしめる。
 やはり逃げずに途方に暮れる。
 全くおまえはバカなやつ。
 突きとばして逃げればいいのに。

309 名前:10:2006/12/03(日) 06:29:39 ID:z6PdGQSq0

 堅くしたまま、ただ抱きしめていた。
 一触即発、限界間近。綱渡り気分でそれに耐えた。
 そのうち鼓動が重なって、二つの音が一つになった。

 ………気がつくと、腕の中で眠っていやがる。

 ほんとにおまえは大バカ野郎。
 凶悪なケモノになりそこなったじゃないか。
 仕方がないからこのままで、夢の守人になりきってみようか。


                             了

310 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 06:32:15 ID:z6PdGQSq0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オシマイ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
|

311 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 09:16:41 ID:k7EWrmo30
>>310
GJ!
悩める弟者の葛藤がひしひしと伝わります。
姉者への評と妹者育成妄想にはぞくりと来た。
恋〜慰は見事過ぎ。マイッタ!

312 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 09:59:40 ID:Qp10OmBG0
> ………気がつくと、腕の中で眠っていやがる。
兄者ワロスwGJ!

313 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 16:39:52 ID:u4uzZ8WuO
>>310
SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEGJ!!
いやマイッタね。続編を期待してもいいかね?

314 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 16:43:19 ID:fNUsyOg30

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  南瓜鋏の准尉×伍長のエロ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  本人はアニメしか見てないのに呼び方は原作だよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.        | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 中途半端なエロかよ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


315 名前:南瓜鋏 准尉×伍長:2006/12/03(日) 16:47:53 ID:fNUsyOg30
珍しくあくびを始めた午後の昼下がり。

珍しく口うるさい上司のいないこの有意義な午後をどう過ごそうか、折レルドは考えていた。仕事が無いわけではないが特に重要と思われるものもなく、あまりにも退屈だったので仲間の目を盗んで折レルドは部署を抜け出した。
廊下を歩きながら、どこの部署の女性の所へ遊びに行こうかと考えていると、床が小さく響いているのに気づく。
そして遠くから聞こえる悲鳴が段々とこちらにも聞こえてきた。
遠くの廊下に映ったのは自分の部下である伍長・尾ーランドとその背後に見えるは間ーキュリー号。
どうやら間ーキュ理ー号が尾ーラン度を追い掛け回しているようだ。
狭い廊下をぐるぐると回りながら逃げている。
いつもなら動きが鈍い彼はすぐさま間ーキュリー号の餌食になるのにも関わらず、今日は思った以上に俊敏に逃げていた。

鬼ごっこを高みの見物していると、尾ーラン度がこのままでは終わらないと悟ったのか逃げる場所の方向を変え、こちらに向かって突進してくるのが見えた。
まさかこっちへ来るとは思わなかった折レルドは、同じく逃げ道はないだろうかと左右を見渡すがすでに地響きは大きく近づき、前を見ればそこには大きな男の胸元が折レルドの顔に迫っていた。
ぶつかって転がる男二人。

その光景はあまりにも滑稽で、折レルドが望んではいない午後だった。


316 名前:南瓜鋏 准尉×伍長2:2006/12/03(日) 16:49:24 ID:fNUsyOg30

「いててて」
「あの、やっぱり医務室へ行ったほうが・・・」
折レルドは医務室ではなく倒れた廊下の近くにあった用具室に入り、尾ーランドに自分のケガの手当てをさせていた。
これ以上怪我をしたくはないので間ーキュリー号は部署へ帰るよう命令し、今に至る。
ケガと言っても頬を少し擦りむいた程度で、とりあえずハンカチを濡らしてキズ部分に押し当てていた。
少しとはいえ、自分の上官にケガをさせてしまったことに後悔している尾ーランドに、折レルドは笑顔で答える。
「こんくらい、どーってことねーよ」
かがんでいる自分の頭を撫でられ、尾ーランドはぎこちない笑顔を返す。
「ところで、間ーキュリーはまだお前を恨んでるみたいだな」
間ーキュリー号は尾ーランドの配属が決まった同日、伍長から上等兵へ降格処分となってしまった。
それを逆恨みしているのかあまり尾ーランドに懐かず、むしろ噛む勢いで日々尾ーランドを追いかけている。
いつものことと言えばそれで終わるが、しかしながら先ほどの尾ーランドの逃げ方がどうも気になる。
そして折レルドの言葉に尾ーランドは目線を横へ逸らして少し眉をひそめたので余計に気になってきた。

しばらくの沈黙の後、少し震えたような声で尾ーランドは口を開く。
「・・・ど、どうも今、は、発情期のようで・・・その・・・押し付けて・・・くるんで・・・す・・・」
語尾が聞き取りにくいほどの小さな声で、尾ーランドは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
大概訓練犬は去勢を行うが、間ーキュリー号は捨テッキンの涙の抗議、まぁ簡単に言えば可哀想だという理由で去勢されてはいない。
当たり前だが、なにかあった際には速やかにそれ相応の措置を行うことが条件付で許可がおりている。
まぁお祭り部隊の犬だから、どうでもいいように思われているのも癪な話だ。

その事情を知らない新人には、確かに先ほどの動物の狂いようはさぞ怖かっただろう。
しかし犬に迫られた位で泣きそうな顔をしているこの部下は、唖然とするが初々しくもある。
その表情に折レルドは悪い虫が腹を蠢くのを感じて抑えようと試みたが、女たらしに我慢は辞書に載っていなかった。

317 名前:南瓜鋏 准尉×伍長3:2006/12/03(日) 16:51:44 ID:fNUsyOg30
「なに?感じて、自分も大きくしちゃった?」
ストレートな言葉に思わず尾ーランドは顔を上げる。
その目にはゆらぎと体が少し震えた。
折レルドは緩やかな笑みを浮かべ、両手で尾ーランドの顔を包んで自分の顔を近づけた。
図星だったのか近づいた瞳は動揺を隠せず、動くはずの腕は相手を拒絶できずに床へ垂れている。
左手が尾ーランドの股間を捕らえ、布越しに軽く握ると手に収まりきれないそれは硬く、大きく怒張していた。
「自分がヤラレる姿でも想像しちゃったんだ?」
何度か上下に股間を擦ると、尾ーランドの口から抑えたような声が漏れる。
泣きそうだった顔は既に崩れているが、口元だけきつく結んでいた。
閉じた唇をこじ開けようと自分の唇を当てて尾ーランドの頭を抱える。
首を振り、もがく彼の耳たぶを含んで舌で愛撫する。
わざと唾液を含んだ口内で耳を万遍なく噛み、舐め、音が聞こえるように吸い上げると尾ーランドの体が今度は大きく震えた。
上半身を剥かれ、露になった胸の突起を摘まれる。
「アッ・・・」
思わず声が出てしまい手で口を押さえる仕草に折レルドは気を良くし、その手の甲にキスを贈る。
右乳首を口に含まれ、耳たぶの時のように何度も舐められ吸い上げられる。
電流のような刺激に体は細かく痙攣し、体温も上がる。
「あっ・・・や、やめてくだ・・・っ・・・あ・・・んっ」
「いやらしいな。そんなに感じるのかよ、おっぱい」
尾ーランドはこんな羞恥に涙が零れているものの、だらしなく口の端から涎がこぼれている自分に絶望する。
逃げたければ体格の差も力の差もあるのだからいつだって突き飛ばして逃げられるはずなのに、拒めない。
どれほど自分が淫猥なのかを、身を持って体験している現実に押しつぶされそうになっていた。

318 名前:南瓜鋏 准尉×伍長4:2006/12/03(日) 16:53:20 ID:fNUsyOg30
唾液でぬるついた胸はとても卑猥で、指の腹で少し乳首をいじるだけで呻いた声が漏れる。
股間は苦しそうなほど盛り上がり、尾ーランドの呼吸も苦しそうに上下している。
ふやけた耳を再び舌で舐めあげながら、折レルドは優しいながらも低い声で呟く。
「いやらしいからだでごめんなさいって言ったらイカせてやるよ」
一瞬目が見開いたがすぐにくすみ、早くこの体の疼きを終わらせるためにも呪文のように折レルドに懇願した。
「・・・いやらしい、からだ・・・で、ごめんなさい・・・あああっ!」
懇願と同時にジッパーが下ろされ、中のものを引きずり出される。
片手じゃ覆いきれないほど反りあがった大きな性器は脈を打ち、先端からは透明な液体がこぼれていた。
ぼたぼたと落ちる続ける液に羞恥が増し、腕で顔を隠す。
折レルドは気にせず、性器を下から上へと舌で嬲りながら指で先端を中心にいじり始めた。
さすがに大きすぎて全部は口には含めないが、所々唇ではさんで吸い付く。
「あっ、やっっ、あ、あ、ああっ、じゅ、じゅんいっ、ああっ」
顔を隠す腕は解かないが、きっと今彼の顔は真っ赤な頬に涙でぐちゃぐちゃになっているだろう。
それを想像するだけで、彼もまた興奮する。
無意識に腰を上下に動かす動作に合わせて性器をしごかれ、それはもうすぐ射精をしそうなほど血管を浮かび上がらせている。


319 名前:南瓜鋏 准尉×伍長5:2006/12/03(日) 16:55:55 ID:fNUsyOg30
声も抑えきれなくなるほど、快楽に素直に流され解放を待っていた。
隠す腕の隙間から指を伸ばし、尾ーランドの口内を指が犯す。
指を出し入れされ、その指先には唾液がたっぷりと粘りつく。
「うっ」
小さな抵抗で指を噛まれるが、甘噛みに近いほどの抵抗力に痛みは一瞬しか感じなかった。
下着ごとズボンをずらされ、濡れた指を無防備な蕾に当てられた尾ーランドの体は硬直し、そのまま慣らすことなく指を入れられ、内壁をわざとえぐるように動かされるとあまりの痛みに上半身が起き上がる。
どれほど涙を流したのか、彼の目は充血し、隠していた腕や涙の痕が顔中に出来ていた。
少しいじめすぎたと折レルドは反省し、彼の体を自分の体に預けさせ抱えるような体勢でぐっと抱きしめる。
と、彼もおずおずと折レルドの背中に両腕を回した。
右手で性器をしごかれ、左手で蕾をいじられ、折レルドの荒い息遣いが尾ーランドの耳をくすぐる。
尾ーランドは何も考えられず、何度も准尉と呼びながら彼の背中に爪を立てる。
しかしやはり自分の痴態を見られたくないのか相手の首筋に顔をうずめ、見えないように隠していた。
狭い室内に荒れている息と湿った音に、時折外から聞こえる廊下を歩く人たちの声。
集中しているようでやけに頭が冷静だった折レルドは、怯えながらもよがり苦しがっている彼に更に追い討ちをかけることで楽にしてやろうと考えた。
「こんなに後ろいじってる音がでかいと、外にも聞こえてるかもね」
その言葉に尾ーランドはドアを向き、声が上擦る。
「伍長さんは見た目はデカブツでこわーいイメージなのに、実はこんなにエロくて男にいじられるのが大好きな人だったんだって廊下で話してるんじゃない?ほら」
性器をきつく握られ、尾ーランドは短く喘ぐ。
「やめてください・・・そんなこと言わ・・・」
「伍長は本当にいやらしい」
「あっ・・・あうっ・・・!」
「いやらしい」
「ううぅ・・・!」
言葉で攻められて彼の耐える力は途切れたのか、それでも最後の理性を残し、声を押し殺しながらそのまま尾ーランドは勢いよく射精を行った。
 

320 名前:南瓜鋏 准尉×伍長6:2006/12/03(日) 16:57:03 ID:fNUsyOg30
廊下からまた大きな音が近づいてくる。
向かいから走ってやってきたのは同じ部署の間ーチス。
「あ!いたいた!もー、サボるなよ。仕事が少なくても手伝う気なんてないんだから!」
「はいはい」
あっさりと観念した態度が些か腑に落ちないが、気が変わる前にと間ーチスは折レルドの背中を押した。
しかしその押す感触に違和感を感じて間ーチ巣は背中を見るなり驚きの声を上げた。
「なにこれ、折レルド。服がボロボロじゃないか」
彼の背中には毟り取られたような破けた跡が無数に出来ていた。
「さっきまでデカイ犬と遊んでたからねぇ」
飄々とした顔で彼は言う。

長い付き合いなので何か隠しているのはわかっている。
考えてもみれば数時間前、伍長を追いかけ飛び出した間ーキュリー号がその後すぐにひとりで帰ってきた。
伍長もしばらくしてから帰ってきたが、あまりの顔色の悪さと熱で安静のために早退させた。
あえて女性の名前を出さない彼は怪しさ満点。
折レルドを捜索中、二人が廊下で一緒だったという目撃情報もある。
本人から言わない以上は詮索はしないと決めているので断定は決してしない。
が、大事な仲間をあまりいじめるなよと心に思いながら、間ーチスはため息だけを零した。

321 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 16:59:43 ID:fNUsyOg30
____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オヤジくさくて正直スマンカッタ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 「いやらしい」って単語を言いたかっただけなんだ。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
|

322 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 19:37:05 ID:fJ9XyaF30
>>321
>オヤジくさくて

だがそれがいい
萌えた…GJ!!!!

323 名前:風と木の名無しさん:2006/12/03(日) 21:13:54 ID:J/FClSM70
原作知らないが剥げたww
思わずぐぐったじゃないかwww

324 名前:風と木の名無しさん:2006/12/04(月) 00:09:13 ID:1uYYZvad0
>>321
やばい禿げた!!
伍長かわいやらしいよ伍長…!!

325 名前:風と木の名無しさん:2006/12/04(月) 00:39:15 ID:dt2iEtUu0
>>321
恐るべしっ!間ー君並びに俺ルドの絶倫ファイアーw

326 名前:風と木の名無しさん:2006/12/04(月) 22:49:07 ID:E9PNUxMo0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  タクミくんシリーズ新刊記念SS。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  何故か夏休みをぶっ飛ばして秋真っ只中。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |


327 名前:コスモス1:2006/12/04(月) 22:52:20 ID:E9PNUxMo0
懐かしい――夏休み。
あの頃、ギイが飽くことなくぼくの肌にちりばめた赤やピンクのしるしは、とっくの昔に消えてなくなっていた。
けれどぼくの体は覚えている。
よく、覚えている。
ふれあう、ギイの肌。重ねられる鼓動――
ギイから与えられる、悦びを。
まるでコスモスみたいに――こよみが秋に変わったのを、人知れない地中で、どうやって正確に察知しているのか、去年とまったく同じ場所で鮮やかに蘇る、咲きこぼれるあの花のように、ギイにふれられると、ぼくはたちまち思い知るのだ。
この体が、いかに、ギイの与えてくれる快感をくっきりと記憶しているのかを。

ぼくの奥深くにその種がひそんでいることを自覚させたのは、ギイからの、突然のメールだった。
『消灯後、ゼロ番で』
たった一行。
だけど、最高に、ぼくを動揺させる。
『うん』
はやる心をおさえられず、さらに短い一言のみで返信した。すぐに、送った。
夏休みにギイがプレゼントしてくれた、お揃いの携帯電話。
祠堂に戻ってからは、もっぱらメール機能を活用している。
共犯者、なのにもかかわらず、相変わらず、友達のふりが苦手なぼくにとっては、ギイと、誰の目も気にすることなく「おしゃべり」を楽しめる、大変便利で重要なツールなのだ。
とはいえ親指打ちもいっこうに上達しないぼくなので、ちまちまと返事を打っているあいだに、じれたギイから先に返信がきてしまうこともままあった。
ギイからの返信は、驚くほど即行だった。
『鍵はかけないでおくから。ノックもいらない。ドアの前で待ってる』
一刻も早く、返事がしたい。ぼくはまたしても芸も色気もないメールを送った。
『うん。わかった』
それにしても、ギイの素早い返信にはなにか秘密の技でもあるんだろうか。
つねづね、面と向かったら聞いてみたいと思っていたその疑問は、しかし本物のギイを目の前にしたら、あっさり忘れ去っていた。
「託生」
「ギイ…!」
ふわりと抱きしめられる。ギイのコロン、甘い花の香りに包まれる。久しぶりすぎて、酔ってしまいそうにくらりとした。

328 名前:コスモス2:2006/12/04(月) 22:53:37 ID:E9PNUxMo0
「会いたかった、託生」
「ギイ、ぼくも……」
やさしい口づけに、ぼくの中で眠っていたその種が、芽吹く。
重ねられるキスに、みるみる成長していく。
きつく抱擁されれば蕾が膨らみ、肌と肌がふれあうときにはもう――
もう、ぼくは……
「ん……」
新月か、それとも細いほそい三日月という、今夜はそんな闇夜だ。
けれどベッドに横たわったぼくは、ギイの熱っぽい視線を唇に感じていた。
ギイの指をくわえている、ぼくの口。
「う……ん」
ぼくの舌がギイを愛撫しているのか、それとも、ギイの指にぼくが愛撫されているのか、もはや定かではない、ひそやかなやりとり。
ひとしきりぼくに舐めさせたあと、ギイはゆっくりと指を抜いた。
それが唇から離れるまぎわ、名残を惜しむキスにも似た、湿った音がした。ギイの体重を受け止めるため、その肩に置いていた手を、ぼくは思わず拒むように握りしめた。
「託生……」
ギイにうながされ、それでもそっと、足をひらく。
つけ根に、ギイの指が忍びこむ。長くてかたちのいい指を、ぼくの体はのみこんでいく。期待に甘くゆるんで、しっかりとくわえこむ。――えっちな、ぼくの体。
「……っ」
恥ずかしさのあまり、とうとう、のしかかってくるギイの胸を押し返してしまった。
「託生……?」
ギイはぼくの耳朶に軽いキスをした。
「どうした? 久しぶりだから――信じられんことに、あれからかれこれ二ヶ月ぶりだもんな、オレたちこうするの。だし、きついか?」
「ちが……」
その、逆、なんだよ。
だから、耳元で囁かないで。
だめなんだ。
低い声の甘い響きだけで、ギイを受け入れてるそこが、ぴくぴくと歓喜に震える。こんなに浅ましい自分が、いっそ逃げだしたいくらいに、たまらなく恥ずかしいんだ。
「二学期になってからは、初めて、だもんな。学園祭やらなにやらで、放課後の逢瀬すらなかなかままならなかったし。だけどオレ、ずーっと託生が欲しかったんだ」
「ギイ……」
意地悪だ、ギイ。

329 名前:コスモス3:2006/12/04(月) 22:54:45 ID:E9PNUxMo0
睦言をふきこんで、ぼくの体が反応するさまを、楽しんでるね?
そう。ブランクなどなかったかのように、全身が疼いている。
ギイを欲している。
抱きしめられて、貫かれたい。
指、一本きりなのがもどかしい。
そう感じた瞬間に、するりと、指が増やされた。
「あ……っ、やだ……」
「託生――」
ぼくが今どんな表情をしてるかなんて、ギイにも見えないはずなのに。
だのに、ギイにはばればれなのだ。
乱れる呼気、火照った頬の熱さだけで、十二分にギイはぼくを見抜いてしまう。気の利きすぎるくらい利く恋人を持つと、こういうとき、はてしなく恥ずかしい気分を味わわされてしまうんだ……
「託生――オレが、欲しい?」
たまらず、ぼくは顔をそむけた。
ギイが艶っぽく笑う。その息遣いをうなじに感じて、背筋にぞくっと痺れが走った。
「おまえ、そんなに可愛いカオ、するなって」
久しぶりなのに、だから託生のここはまだきつくオレの指を締めつけてるのに、そんな風に初々しく恥らわれたら、ただでさえ残り少ない理性が消し飛んじまうだろ?
ギイはそう熱っぽく囁いた。
「託生……たくみ、タクミ……」
何度もなんどもぼくの名前を呼びながら、ぼくの頬や唇へ手当たり次第という感じでキスを繰り返す。ぼくも観念して、ギイの広い背中へ腕を回した。
「ごめん託生、もう我慢が限界だ」
――ぼくもだよ。
ギイ、ぼくも、今すぐに、ギイが欲しい。
めちゃくちゃ恥ずかしいけど、顔どころか全身から火が出るくらい恥ずかしいけど、自分から足をさらにひらいて、ギイにすがりついた。
ギイはいったん指を抜くと、ぼくの腰を両手でつかんだ。
「恥ずかしがってる託生、ものすごく可愛いな……たまらん」
「ばか……っ」
ますます羞恥心をあおられて身をよじったけれど、ギイは意外なほどきつい力でぼくをがっちりと拘束したまま、固くて太い屹立を埋めこんでいった。
「――ッ」
ああ――ギイ。
ギイだ。

330 名前:コスモス4:2006/12/04(月) 22:57:30 ID:E9PNUxMo0
圧倒的な質量に息苦しくなりながらも、ぼくは、よく知っている、と思っていた。
なので、ようやく真実が手の中に落ちてくる。
ギイの愛し方を、心だけでなく体でも覚えてることは、そしてそれを全身全霊で欲することは、べつに浅ましいことじゃない。
えっちなぼくでも、かまいはしないんだ。
――や、恥ずかしいには変わりないけど、それもこれも、なにもかもをひっくるめてのぼく、だもんな。
「……やっぱきつかったな。ごめん、託生」
「いいよ、ギイ、平気」
「ばか、そんなこと言うなよ、マジで止まらなくなっちまうだろ……っ」
ギイはどこか悔しそうな声で呟くと、いきなり激しく腰を突き上げてきた。
苦しさとはべつに胸に差したのは、幸福感。
ギイも、こんなにもぼくを欲しがってくれている。
ふたりを隔ててた時間などまるで存在しなかったみたいに、まるきり、いつもの夜、みたいに、深く求めてくる。
本当は体は少しきついけど、このいきなりのクライマックスは、全然いやじゃなかった。
ところで。ギイも当然、ぼくの体をよく知っているのだ。
「――あ…!」
そこを突かれたら条件反射で喘ぎのもれてしまう箇所を、熱くて固いギイに、乱暴にえぐるようにこすられた。
そ、そんなに何回も激しくされたら、ギイ――
「や、……っやだ、ギィ」
跳ねる体を、止められない。こぼれる吐息も、止められない。ことばではイヤダって言ってるくせに、裏腹に、ギイに甘えてる声すら。
密着して、ぼくの背中に腕を巻きつけたギイは、腰の動きをいっそう妖しくさせた。
「あっ、や……ん、もうっ……ギ…っ、てば、やめ……ッ」
暗闇だからなのか、ギイの荒々しい息遣いや、ベッドのきしみがひどく耳につく。ぼくよりずっと熱くて、汗でしっとりと湿った肌がそこかしこでこすれるたびに、じんじんと苛まれる。
やりすごしたはずの恥ずかしさがどっと戻ってきて、全身を巡る血の温度を上げたみたいに錯角した。
「やっ、ダメ、ギィ…、ちょっ、ま、まって」
「タクミ――オレ、もう止まらないって、さっき言ったろ? タクミもどうにかなっちまえよ、早く」

331 名前:コスモス5:2006/12/04(月) 23:00:02 ID:E9PNUxMo0
恥ずかしいのに、まだ、恥ずかしいと思うしらふなぼくが残っているのに、ぼくの体はすでに、巧みなギイの責めに蕩けかかっている。
そのアンバランスに、ぼくは、少しだけ泣いた。
ギイはいつでも、強引にぼくを攫ってしまうんだ。ぼくの知らない世界へ。
でもそれは、ちっとも、いやじゃないよ。
いやじゃ、ないんだ。
こめかみをつたう涙に気づいたギイが、そこへ頬をすりよせてきた。
「タクミ……たくみ、あいしてる。……あいしてるよ」
その睦言は、ちょっとうわずってるようにも聞こえた。気のせいなのかもしれなかったけど。
ぼくはギイに誘われるがままだから。体を、中から外からゆすぶられて、徐々に、ゆるやかに、意識に霞がかかってきている。
ギイはさらにぎゅっとぼくをかき抱き、執拗に、突き刺す動きを繰り返した。
「あいしてるんだ」
ぼくも――ぼくだって、ギイ。
そう答えようとして、けど、もう、声が声にならなかった――


「……あー、すまん、託生」
しばらく、ぼくへ覆い被さるように倒れこんでいたギイが、むくりと上半身を起こした。
「……ん?」
目じりをそっとなでられて、泣いていたのを思い出す。
「あんま、よくなかっただろ? ごめんな、オレばっか感じちまって」
「そんなこと、ないよ、ギイ……」
それはちょっと混乱したけど、けっして居心地の悪いものじゃなかった。
むしろ、しあわせ、だった。
いつもいつも簡単に煽られてしまうぼくだけど、そんなぼくをして少し置いてけぼりにしてしまうくらい、ぼくが欲しかったってことだよね、ギイ。
それで、十分だから。
「けどおまえ、まだイッってないじゃんか」
「あ、ちょっと、ギイ――」
ギイはギイとぼくのあいだにはさまれている、ぼくのを握りこんだ。同時に、深く奪われる唇。ぼくの中にとどまっていたギイが、嵩と固さを取り戻していく。
「……今度は、よすぎて泣いちまうくらいにしてやるから、な?」
「や、いいってば、ギイ、そんな……」

332 名前:コスモス7:2006/12/04(月) 23:01:41 ID:E9PNUxMo0
「遠慮するな。ということで託生くん、もう一回」
って、もうすでに始まってるんじゃないか!?
そんなぼくの抗議は、ギイの舌に他愛なく絡めとられた。



そして翌朝――
早朝。空が、黒と見まがう一番濃い藍色をまとっている時刻。
「――ギイ! どうしてくれるんだよ、これ!」
「しっ、託生、声が大きい」
「……っ。あのね、今日、ぼくは体育があるんだぞ?」
「そんなの見学しろよ」
「もうギイ、他人事だと思って」
「いいか託生。誰にも見せるんじゃないぞ」
「ギイに言われなくたって、そんなのわかってるってば」
「だから、体育は見学。な?」
しっとりと汗ばんだ肌に、ギイが散らした欲情の痕跡が、コスモスの花びらのようなそれが、そこかしこに点々とはりついている。
にやにやしているギイを、ぼくは睨みつけた。
「ギイ、おもしろがってるだろ」
「違うぞ託生。これは思い出し笑いだ」
「はい?」
「今日一日、いや数日間か、託生にはオレの残したキスマークがついてるんだ。離れていても、つねにオレが託生の最も側にいるって感じ、するだろ?」
「……うん」
たしか夏休みのあれは数日で消えてくれるようなかわいいものではなかったような、今回のこれもあれと同じくらい、きつく刻まれているような気がするけど、ギイがつけたしるしは、ぼくにとっても嬉しいものであるのはたしかだ。
「それを思い返してもだな、うっかり人前でにやけたりしないように、今のうちに、たっぷりと思い出し笑いをしてるんだよ、託生くん」
その理屈、ちょっとおかしくないですか、ギイくん?
「でも、結局、今、これを見ながらにやにやしてるんだろ? そんなの思い出し笑いにはならないじゃないか」
「細かいことは気にするな」
「気になるってば」
「こら、託生」
ギイはぼくの肩を抱くと、唇を重ねてきた。

333 名前:コスモス7':2006/12/04(月) 23:03:28 ID:E9PNUxMo0
昨夜の余韻をくすぐる、甘いキス。
そうやってギイ、またぼくに、たくさんの種を撒くんだね。
そしてぼくは、誰にも知られないよう――ぼく自身さえふだんは忘れるくらい、自分の奥深くへと、いつしかひそやかに植えてしまうのだ。
だからぼくのギイへの想いは、ギイだけが、封印をとくことができる。
ギイ、これは共犯者の特権だよ。
――ギイ。
次の逢瀬は、いつだろうか。次はいつ、また、こんなふうに、ぼくの肌、ぼくの心を、コスモスみたいな赤や紅の花びらでいっぱいにしてくれる?
だけどぼくはそれは問わず、ただ、ギイの口づけに、忍びこむ舌に、応えた。
「……許せよな」
少し、唇を離したギイが、呟くように言った。
「ギイ?」
ギイはぼくの目を覗きこんで微笑した。
「また、連絡するから。近いうちに、必ず」
「うん。……ギイ、待ってる」
「愛してるよ、託生」
「ギイ、ぼくも、愛してる」

たとえそれがどんなに先になったって――どれほど歳月がたとうとも、ぼくに宿った種は必ず蘇る。
会えない時間は、問題じゃない。
ギイが訪れるたび、ぼくの中のコスモスは花ひらくのだ。
鮮やかに、華やかに。

334 名前:風と木の名無しさん:2006/12/04(月) 23:07:01 ID:E9PNUxMo0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ バンゴウフリマチガエタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

思くそ捏造だけど、夏休みが終わって学園祭も終わる頃には
このSS、十分時効を迎えてるはずだw

335 名前:風と木の名無しさん:2006/12/05(火) 00:19:13 ID:nOoo8VUDO
GJ!

336 名前:風と木の名無しさん:2006/12/05(火) 00:30:59 ID:OjawXLPN0
>>334
GJ!&新刊出たのか、読まなくちゃ。Thx

337 名前:風と木の名無しさん:2006/12/05(火) 09:35:38 ID:Y4J2r+vx0
わーい、お待ちしておりました。超GJ!!
逆視点ですね。どうすりゃこう、綺麗なエrが書けるものか。
拝みつつ(´Д`*)

338 名前:num*b3rs 工ップス兄弟 :2006/12/05(火) 23:03:13 ID:IHUUnUYU0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  狐犯罪CHで放送中のNUMB*3RSスラです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  カプは工ップス兄×弟だよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ドラマ自体知っている人はあんまりいない気もしますが
 自分のなかでは超ブームなので投下。
 近親相姦やおいなので注意!

339 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 1:2006/12/05(火) 23:04:55 ID:IHUUnUYU0
 小さな頃から、チャ―リー・工ップスにとってト゛ン・工ップスは「まともな人間」
の代表格だった。ト゛ンはチャ―リーの血の繋がった兄であり、同じ家で暮らし、同
じものを食べて育ったにも関らず、チャ―リーにとって彼は常に理解しがたい存在、
孤独を感じさせ、自分が人とは違うのだということを思い知らせてくる人間であり続
けた。
 もちろん、チャ―リーは優れた存在だった。3歳のときには4桁同士の掛け算を暗算
し、次の年には天才児教育を受け始め、IQテストでも高い結果を出し、13で高校を卒
業してプリンストンの数学科に入り、16の時には論文を完成させた。一方、ト゛ンは
飛び級もせず、18のときに13歳のチャ―リーと一緒に高校を卒業し、4桁の数字を掛
け合わせた暗算もいくつになってもしてみせなかった(チャ―リーは今でもたまに疑
うことがある。ト゛ンは本当はそれくらいの暗算はできて、人前ではできないふりを
しているだけではないのかと。「まともな人間」を装うために)。
 そんな兄と自分なら、どちらが優れているだろう?答えは明白だ。自分の方が優れ
ており、世間は彼を天才と呼ぶ。ト゛ンは優秀なFBI捜査官かもしれないが、天才とは
呼ばれない。30歳の若さで数学教授の座に着いているのはチャ―リーであり、彼のそ
の能力、数字に関する飛びぬけた才能は現在の数学会でも一、二を争うと言われてい
るほど。結局、自分は「特別」で、ト゛ンは月並みな存在なのだ。チャ―リーはそう
思ってきた。――にも関らず、小さな頃からト゛ンといるといつも、より「まとも」
で「完璧」に近いのは自分でなく兄の方だという劣等感を覚えるのだった。

340 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 2:2006/12/05(火) 23:06:21 ID:IHUUnUYU0
 確かに、専門的な教育を必要とし、その才能を潰してしまわないようにと厳密な注
意を払って育てられてきたチャ―リーと違って、ト゛ンは手の掛からない、よくでき
た子供だった。或いは、両親がチャ―リーの教育に時間を割き過ぎるあまりに、ト゛
ンの自立心も成長を促されたのかもしれない。子供の頃からト゛ンは何でも自分でやっ
てきた。母親がチャ―リーを遠くのセミナーに連れて行くので忙しいときには、自分
で朝食のシリアルを用意し、野球の新しいグローブを買いに行くときも、両親の車に
乗ってではなく、父親から小遣いをもらって友達とバスに乗って出かけた。14、5才
になるとブロンドの可愛い女の子をガールフレンドにし、野球の試合に連れていった
り、図書館で一緒に試験勉強をしたりするだけでなく、ティーンエイジャーらしい悪
ふざけに興じたりもしたが、家族に深刻に心配を掛けるようなことはほとんどなかっ
た。スキップはしなかったものの学校での成績は良かったし、クラスでのリーダーシ
ップも秀でていた。SAT(大学進学適正試験)では良い点数を収め、しかも野球での
活躍によって奨学金までもらうというおまけつきだ。そんなト゛ンは18になると意気
揚々と大学進学のために家を出、一人で暮らし始めた(チャ―リーは30歳になった
今でも、父親のアランと、生まれ育った家で暮らしている)。彼には友達も大勢いて、
女の子にも人気があった。
 チャ―リーはト゛ンが高校のプロムのパートナーに誘った女の子のことを、今でも
覚えている。ブロンドで背が高く、ほっそりとしていて、勉強もできたし礼儀正しい、
魅力的な子だった。一方、チャ―リーの高校での立場は「ト゛ンの天才の弟」でしか
なかったから、友人もほとんどいず、プロムにも興味がなかった。ただ、ブロンドの
子をパーティの前に家に連れてきて、両親とお茶を飲むト゛ン、その日のために父親
に借りた車に乗せて、会場へ行くト゛ンの後姿を見ながら、彼女でなく自分を誘って
くれればよかったのにとは思った。この考えは馬鹿馬鹿しいし、「まとも」ではない
ということくらいはチャ―リーにもわかったので、口には出さなかったが。

341 名前:numb*3rs工ップス兄×弟 3:2006/12/05(火) 23:08:47 ID:IHUUnUYU0
子供の頃からチャ―リーは知りたがり屋で落ち着きのない、情緒不安定な性質だっ
た。自分が何となく人と違う、ということは感じられたが、それが何故なのかはよく
わからなかった。チャ―リーはすべてを数学と関連させて話すことを好んだ。ト゛ン
が野球の試合で勝つ確率も、そこに自分がいて、相手の癖や何かから展開を予想し、
ト゛ンの打線について指示を出せば、より勝率を高めることができるということも、
すべて。しかし、そういう話し方はト゛ンの好みには合わなかった。ト゛ンはいつも結
論を急ぎ(「チャ―リー、お前は俺の試合を観に行くって言いたいのか?」)、そし
てチャ―リーの数式に沿った理論的答えを退けた(「試合には来るな。打ち方くらい
自分で決めたいし、お前は興奮すると特にうるさいから」)。チャ―リーにはそれが
歯がゆくてたまらなかった。自分は絶対にト゛ンの役に立てるのに、ト゛ンにとっては
チャ―リーはわけのわからないことを捲くし立てる、頭でっかちの弟に過ぎないのだ。
チャ―リーは月並みな筈のト゛ンから感じられる、完成された何か、チャ―リーを惹
きつける何かの秘密を知りたかった。フィボナッチ数列から掬い出す黄金比が、世界
と調和した美しさを見せるのとおなじように、ト゛ンという存在にはほとんど乱れが
なく、ありふれてはいたがそれだからこそ完璧に近いように思えた。チャ―リー自身
が突出して優れていながら、世界と不調和であるのと対照的だった。
 

342 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 4:2006/12/05(火) 23:10:12 ID:IHUUnUYU0
 チャ―リーはいつもト゛ンのことを知りたかったから、小さい頃から彼の部屋に忍
び込んでは、ベッドの下の宝物を勝手に探り出したり、ト゛ンがガールフレンドと出
かけて何をしているのかをしつこく詮索したりした。ト゛ンのベッドの下から見つけ
出した、女の子から贈られたカードや、ウイニングボール、『プレイボーイ』などは、
大人の教育関係者に囲まれて育ったチャ―リーにとって衝撃的なものだったので、子
供だった彼はたびたび両親にその驚きを語った。ト゛ンはそれについて怒り、チャ―
リーがぶしつけでおしゃべりだと非難した(このイメージは今でもト゛ンの中にある
らしく、チャ―リーは不本意に感じている)。チャ―リーはそれについて自分なりに
反論し、どうして自分が彼の部屋に忍び込んだのかも説明しようとした。けれども、
弟の回りくどい話にト゛ンは苛立ち、話の途中でいつもため息を吐き、弁解するチャ
―リーを押しのけて、友達と野球をしに外に出て行ってしまうのだった。
 もちろん、ト゛ンは横暴な兄ではなかった。チャ―リーを殴ったりしたことはなか
ったし、チャ―リーの詮索癖を責めたことはあっても、最後には許すという態度を取
った(ただし、ため息を吐きながら)。チャ―リーが彼より5歳も年下で、力も弱く、
取っ組み合いの喧嘩をするのはフェアではないこと、「人とは少し違う」才能と性質
があり、それは生まれついてのものだから、彼を叱責しても仕方がないのだというこ
とをちゃんと理解していた。けれどもト゛ンはたびたび、チャ―リーの話を最後まで
聞こうとしなかったし、チャ―リーがト゛ンの高校に入った頃からは、彼のことをま
ともに見つめることもしなくなった。

343 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 5:2006/12/05(火) 23:11:35 ID:IHUUnUYU0
 ト゛ンは親愛の情をこめて弟の名前を呼ぶような兄ではなかった。チャ―リーを近
所の友達との草野球に誘ってくれたこともなかった。だが、チャ―リーはどうしても
ト゛ンに見つめられたかったし、自分のことを理解してほしかった。だから彼はト゛ン
の前に立ち、彼と会話を交わすときはとても緊張した。緊張し、頭脳をフル回転させ、
いつもの早口をさらに早め、理論的な筋道を立てて自分が持っている答えをわかりや
すく提示しようとした。だがそうすればするほど、ト゛ンは困惑した表情を見せ、そ
れに気づくとチャ―リーの舌も震え、最後には気まずい思いで唇を噛んだ。二十歳そ
こそこの頃から、大学で講義を持ってきた彼が、たった一人、兄の前に立つと上手く
喋れなくなるのだった。――数学的なことを除いては。
 一度だけ、ト゛ンがまともにチャ―リーを見つめ、彼の襟首を掴んで怒鳴ったこと
があった。彼らの母親が癌で亡くなったときだ。ト゛ンは大学を卒業した後FBIに就職
し、アルバカーキに赴任して一人暮らしをしていたが、彼らの母親が癌のために入院
したと聞き、キャリアを犠牲にして、故郷のカリフォルニアに戻ってきた。母親が余
命三ヶ月だと知って、ト゛ンは忙しい仕事の合間を縫って病院に通い、妻を看護する
父親を助け、家のことにも気を配った。一方、実家で暮らしていたチャ―リーは、母
親に会いに病院へ行くことはなかった。彼は家のガレージにこもり、決して解けない
P≠NP問題を解こうと躍起になって、外界との接触を断っていた。父親のアランとト
゛ンが代わる代わるにガレージを訪れ、病院へ見舞いに行こうと彼を説得しようとし
たが、チャ―リーは計算に一心不乱になり、それを聞かずにいた。
 

344 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 6:2006/12/05(火) 23:12:56 ID:IHUUnUYU0
 結局病院でチャ―リーに会わないまま母親が死んだとき、ト゛ンは目を真っ赤にし
て弟の襟首を掴み、自分より背が低いチャ―リーの身体を乱暴に揺さぶって怒鳴った。
それは初めてのことだった。お前は頭がおかしいとト゛ンは言い、チャ―リーはぎゅ
っと目を瞑って殴られるのに耐えようとしていた。だが、ト゛ンは結局チャ―リーを
殴りはせず、彼を解放するとため息を吐き、そのまま背を向けて、葬儀の準備をする
父親を手伝いに行った。それからはますます二人の関係は距離のあるものになった。
チャ―リーはそのとき、母親の存在と同時に、それだけでない何かを失ったことを感
じた。
 それでも転機は不意にやってきた。チャ―リーが自分の方程式を使って、FBIでト゛
ンのチームが担当している事件の捜査を手伝うようになってからだ。自分の考えた
数式が、現実のものと関っているのだということ、自分が語る言葉、数字の世界が、
単なる夢想ではないのだということを、ト゛ンにもほんの少しだが理解してもらえた
ことが、チャ―リーには嬉しかった。ト゛ンに理解してもらうということは、チャ―
リーにとって、自分の中の欠けた何かを拾う作業に似ていた。自分の中に他の人と変
わらない部分もあるのだということ、それらを確認し、さらにト゛ンと自分の中に類
似性や共通項を見出すことで、自分と世界の調和が生まれるような気がした。

345 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 7:2006/12/05(火) 23:14:14 ID:IHUUnUYU0
 鍵はいつもト゛ンが握っていた。世界の中で完璧な円を描くその秘訣を解き明かす
ためには、ト゛ンが必要だった。ト゛ンは以前よりはチャ―リーの話に耳を傾けてくれ
るようになり、チャ―リーも以前よりはト゛ンの前で緊張しなくなった。ト゛ンはたま
にチャ―リーを小突いてからかい、同僚や友人たちに対するのと同じように、軽口を
叩いたりもし始めた。もちろん、衝突することはあったし、そのたびにチャ―リーは
ひどく傷ついたが、それでも前のように存在を無視されることよりはずっとよかった。
衝突の後には理解と和解があり、そのたびに二人の距離が縮まった気がしたから。
 チャ―リーはト゛ンといるとき、いつも真剣に考えた――どうやったらト゛ンが微笑
んでくれ、どうやったらト゛ンが自分の言葉を聞き、数字を通して世界を見る自分を
理解してくれるのか。ト゛ンがどうやったら自分を好いてくれ、気さくに肩を叩き、
仲間のように扱ってくれるのか。数字ではなかなか表せないト゛ンという存在を解こ
うとし、彼の表情やしぐさを一つ一つ注意深く観察した。仏頂面や諦めの混じった困
惑の表情だけでなく、もっと柔らかな何かを、ト゛ンから向けてほしかったから、そ
のためのアルゴリズムを探した。
 けれどもト゛ンに関することはいつも、計算通りにはいかない。ふとした瞬間、チ
ャ―リーは誤算に気づいた。事件の捜査のためにFBIのオフィスにチャ―リーが呼ば
れたとき、ト゛ンがある表情を見せたのだ。チャ―リーではなく、同僚のテリ―に。
ブロンドで華奢、けれども勇敢な女性捜査官の肩をト゛ンが軽く叩いたのだったか、
コーヒーを渡したのだったか。徹夜続きで二人ともかなり疲れていたようで、ト゛ン
が見せた一瞬の表情は、そのせいだったのかもしれない。けれどもその一瞬の間に走
った何か、ト゛ンの瞳にこめられた柔らかいもの、温かな何かが、チャ―リーをひど
く戸惑わせた。テリ―とト゛ンは10年以上も前、学生時代にデートした仲だったと聞
いたことはあったし、二人の間に未だに残る親密さも理解していたつもりだった。だ
が、とにかくト゛ンがテリーに――チャ―リーではない誰かに――愛情と労わりを見
せ、それはチャ―リーの見たことのない種類の表情だったということが、彼を落ち着
かなくさせた。

346 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 8:2006/12/05(火) 23:15:34 ID:IHUUnUYU0
 彼は自分のこの戸惑いにひどく戸惑い、その理由を考えた。今ここで問題なのは、
ト゛ンではなかった。テリ―でもなかった。チャ―リー自身であり、けれどもそこに
深く関っているのは、やはりト゛ンだった。そのときの事件はチャ―リーの協力で解
決したが、チャ―リー自身の問題は依然として残っていた。事件の解決を祝う席で、
よくやったじゃないか、チャ―リー、そう言ってト゛ンが肩を叩いた。とても気さく
で、親しいしぐさで、チャ―リーが望んでいたはずのものだった。だが、それがテリ
ーにあの晩向けられた表情とは違うというだけで、チャ―リーは息苦しいものを感じ
た。
 答えはもう見えていた。チャ―リーは彼なりにいろいろな事実をいろいろな方向か
ら検討し、式を立て直し、必死でその答えを否定しようとした。けれどもどうやって
も否定しようがない(なぜなら彼は真実を愛する数学者だから)、そのことに気づい
たとき、チャ―リーは数年前、母親を亡くしたときと同じように、ガレージにこもり
始めた。


347 名前:numb*3rs エップス兄×弟:2006/12/05(火) 23:18:19 ID:IHUUnUYU0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 長イノデココデ一休ミ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

今晩はここまでにしときます
この兄弟はほんともうホモにしか見えません

348 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 00:36:49 ID:re6GFunFO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 最近良くTVに出てるイケメン弁護士タソと、ヨスモトゲイニソ炉算のボケの話。
マイナーにもほどがあるよ。

349 名前:ヤツロ×須賀1:2006/12/06(水) 00:37:38 ID:re6GFunFO
それまで断続的に続いていた細い声が、一瞬だけ途切れた。
部屋に響く、二人分の脱力した息遣い。
痛いほどに絡ませていた指がそっと離れて、ひとつになっていた身体もふたつに戻る。

何故だろう。
少し寂しいと思った。



「わ…いっぱい出てるやーん」
「い、いいよ見せなくて…」
「若いなー、ほんまに42?」

さっきの行為で疲れ果てた俺は、ベッドの上で動けずにぐったり。
彼は、俺の精液が溜まってるゴムの残骸を眺めながら無邪気に笑っている。
…頼むから早く捨ててくれないかな、それ。

「あ、そうや」

あーもう、次はなんだい?
「ヤツロさんてさぁ」
「はいはい」
「いつになったら、上になってくれるん?」
「へ?」
「いっつも俺が自分で挿れてるやん、エッチの時」
「それは…君の方が慣れてるからに決まってるじゃない」

男とセックスした経験の無い俺が、挿入なんて怖い事出来るわけないよ!
…という俺の訴えが見事受理され、今まで騎乗位で済ませていたわけだが。

「えー?やからってヤツロさん、いっつもマグロ…」
「ま、マグロ?!」

350 名前:ヤツロ×須賀2:2006/12/06(水) 00:39:50 ID:re6GFunFO
ひどい…。
声が裏返ってしまった俺を尻目に、どうやら彼はかなりご不満の様子。
でもこればっかりは仕方無い…気がする。

「まぁ…頑張ってはみるよ…」
「あはは」
「うーん…」

どうも俺は彼に弱い。
可愛い顔して、結構イジメっ子なんだもんなぁ。
女の子みたいな性格だけど、体つきはやっぱり男らしいし。
彼を知れば知るほど、何がなんだか分からなくなってくる…そんな感じ。

「ヤツロさん、先にシャワーどーぞ」
「あ…うん」

そういえば、身体は汗ばんだままだった。
洗い流してさっぱりしよう。
そう思い起き上がろうとした時、何気なく触れた胸元にぬるっとした感触。

「?」

薄明かりの中目を凝らして指先をよく見てみると、それは先程彼が出したであろう精液。
気付かなかったが、あの瞬間俺の胸や腹に飛び散っていたらしい。
しかも、結構な量。

「っ…」

これはやばい。
さっきまでしていた行為が、強烈にフラッシュバック。
急に恥ずかしくなって、慌ててティッシュを掴むと少し乱暴に拭き取る。
俺の肌の上で温度を無くした彼の精液。

351 名前:ヤツロ×須賀3:2006/12/06(水) 00:40:37 ID:re6GFunFO
全て除去出来ないまま、ぐしゃぐしゃに丸めたティッシュを投げ捨てた。

「じゃ、シャワー浴びてくる…」
「はーい」

この恥ずかしさは、いったい何なんだ。
バスルームの扉を閉めて大きく息を吐く。
な、何してるんだろう…俺。

「はぁ…」

少し熱めにしたシャワーを、首筋から胸元に浴びせていく。
肌に残っていた俺と彼の体液は…綺麗に洗い流されて何も残らなくなる。
痕を付けられていないかを鏡でチェックするのも、もはや癖になった。
鏡に映る自分は、何だかひどく悩んでいる様子で。

「ほんと、何してんだろ…」

いくら可愛いからって、強引に誘われたからといって男と関係を持つなんて。
それも一回だけじゃない…もう数回にはなる。
一夜の過ちでは済まなくなっているのは事実。
タオルで髪を乾かしながら、ぐちゃぐちゃな頭の中をいったん整理。

俺は彼の事が好きなのか?
でも「好き」と言われた事も無ければ、言った事も無い。
キスだって、そういえばした事無い様な気がする。
いや、セックスの時はするけれど…そういうのじゃなくて愛情表現としてのキス。

352 名前:ヤツロ×須賀4:2006/12/06(水) 00:45:52 ID:re6GFunFO
…じゃあ逆に、彼は俺の事好きなのか?
やっぱり遊ばれてんのかな?少し悩む。
何で俺を選んだんだろう?少し考える。
これって浮気かな?少しはっとする。
俺より一回り下で、可愛い顔してて、小さくて、でも俺よりアッチの方の経験ある彼…もしかして、あの笑顔にだまされてる?俺。

「お待たせ」
「あ…ちょっと寝てもーてた…」
「ははは」

サラサラした髪を優しく撫でたら、気持ち良さそうに微笑んでくれた。
うん、やっぱり可愛い。騙されてたっていいじゃないか。
多分ね。
いや、駄目だって。

「ほら、シャワー浴びてきなよ」
「うん…先に寝たら嫌やで?」
「待ってるよ、ちゃんと」

笑って彼の後ろ姿を見送る。
扉の閉まる音。
静かに聞こえてくる水音。
突然の彼のくしゃみ…しかも三連発。
横たわりながら、思わず吹き出す。
こんな関係、幸せと思っちゃいけないんだろうけど…彼と一緒にいて口元が緩むのは否めない。
そう、だからこそ。

「もう、こんな関係やめよう」

早く言わないとな。
先に言われて、深く傷付くのは辛いから。

353 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 00:48:59 ID:re6GFunFO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )マイナーってレベルじゃねーぞ。

改行エラーで思いのほか時間かかってしまいました…。
ヤツロ弁護士萌えしてるものの、吐き出す場所もカプも無くて困ってます。

354 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 01:41:00 ID:c+iYPG1C0
>>353姐さん
一褒め二そしり三惚れられ……ですねw<三連発くしゃみ

355 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 01:42:56 ID:B+XrfTjs0
>>347
続きを楽しみにしております。

356 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 04:16:17 ID:BUJj+2pR0
>>353
ちらりとも考えたこと無かったのに
言葉とか関係性とかものすごくリアルに感じてしまいました。
なにこの可愛くて切ないふたり。
これからかようぷぃぷぃ録画だちくしょう

357 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 09:34:01 ID:aieoUqmmO
>>353
マイナーだとしてもついていきます!w

ところで須賀ちゃんが既に経験多数なのは、愛方のせいということでよろしいでしょうか?


358 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 14:21:46 ID:fBCSx0320
>>347
続きテカテカして待ってます
原作知らないけどキュンキュンしました

359 名前:numb3rs 昨夜の続き:2006/12/06(水) 20:38:07 ID:Pb4nalps0
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  昨夜投下したNnumb*3rsの続きだよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  当然のようにエロがあるよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

そういうわけで兄弟でセクースとかありなので注意。兄×弟。
反応してくれる方がいて嬉しかったです


360 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 9:2006/12/06(水) 20:39:32 ID:Pb4nalps0
 「チャ―リーがガレージにこもってる」
 深夜に実家に帰ると、キッチンでゴルフ雑誌を読んでいた父親のアランが開口一番
にそう言った。ト゛ンはネクタイを緩め、冷蔵庫からバドワイザーを取りながら、そ
の言葉に肩をすくめた。もう12時を過ぎている。そう込み入ったものではないものの、
事件が続いており、彼は疲れていた。だからこそ一人暮らしをしているアパートでは
なく、より職場に近いこの実家に帰ってきたのだ。疲れているときに殺風景な自分の
アパートに帰ると、妙に神経が冴えて眠れなくなる。だが、この家に帰ると心が落ち
着き、ソファで一晩眠って、早朝にはオフィスに戻るだけの気力を取り戻せる。母親は
もういないが、父親と彼女が作り上げた温かいこの空間には、何故だかそういう力が
あった。
 「数学の問題を解くために?論文が佳境に入っているんじゃないのか?……よくわ
からないけど」
 キッチンの椅子に腰を下ろし、バドワイザーを一口飲んでト゛ンは言った。チャ―
リーが大学でどんなふうに何をしているか、あまり知らなかったから、確信はなかっ
た。アランは頭を振り、読んでいた雑誌を伏せてゆっくりと答えた。「いいや、違う
ね。そんな話は聞いていない」
 「……じゃあ、なんのために?」
 「わかったら苦労しないさ。……もう5日経つ。まるで狂人だぞ。大学からまっす
ぐ帰ってガレージにこもって、朝になったらまたガレージを出て大学に行って。一言
も口を利かないし、下手すると食事もしない。ひげも伸びっぱなしで、……あれじゃ
あ恋人がいないのも無理はない」
 「何も食べない?」
 ト゛ンの問いにアランは片眉を上げた。「昨日は無理やり食べさせたがね。ピザひ
とかけら」

361 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 10:2006/12/06(水) 20:40:36 ID:Pb4nalps0
 ト゛ンはバドワイザーの瓶を白熱灯の明かりで透かして見つめた。ブルーに近いグ
リーン。ティールグリーン。言葉に不得手なチャ―リーは、この色をきちんと言い当
てられるだろうか?そう想像し、くすっと笑った。チャ―リーは驚くべき数学的能力
の持ち主のくせに、ある分野については子供並の知識しか持っていない。スペルもし
ょっちゅう間違うし、歴史や政治にも疎い。一人だけ違う世界に住んでいるみたいで、
世の中の雑音に耳を傾けたことなどないといった風情で、ト゛ンはそんな弟のことを
長いこと理解できなかった。家族として接しようと思っても何を話せばいいのかもわ
からず、ただ遠巻きに眺めてきたこの弟のことが、少しずつわかりはじめてきたのは、
つい最近のことだ。
 くたくたに疲れていたし、正直に言うと寝たかった。けれどもアランが今自分に、
チャ―リーのことを話すのは、どうにかして解決してほしいからだろう。ト゛ンには
長いことチャ―リーと疎遠だったという負い目があるし、アランは以前、チャ―リー
はずっとト゛ンに認められることを望んできたと言った。そして兄弟二人が仕事で協
力して、絆を深めるのを見ると自分も嬉しいと。母親もそれを望んでいただろうと。
アランはト゛ンがチャ―リーに対して兄弟らしく振舞うことを望んでいるのだ。ト゛ン
はそれを感じて軽く頷いた。「話してみる」
 「頼む」
 そう言ってアランは立ち上がり、雑誌を持って寝室のある二階へ上がっていった。
ト゛ンはバドワイザーを空け、こめかみを軽く揉んでから腰を上げた。説得できると
いう自信はなかったが、チャ―リーが何故そうしているのかを、せめて知ることがで
き、アランにも教えておけたらと思った。ト゛ンも彼なりにチャ―リーを理解したい
と思っていた。今では。
 チャ―リーがガレージにこもる。これは以前もあったことだった。もともとチャ―
リーはガレージの壁一面に黒板を掛け、数式や座標を一心不乱に書き連ねて過ごすこ
とを好む。ト゛ンには理解できなかったが、それが彼にとって一番心が落ち着く時間
らしかった。

362 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 11:2006/12/06(水) 20:42:01 ID:Pb4nalps0
 だから母親が余命三ヶ月になったときも、自分の方程式通りに事件が解決せず、そ
れどころか死者を出したときも、チャ―リーはガレージにこもった。そして解けない
数式を解こうとし、熱中することで逃避を図る。母親はチャ―リーが病院に面会に来
なかった理由を知っていただろうとアランは言うが、ト゛ンはそれについては確信を
持てない。未だに許せないと思うこともある。あれだけチャ―リーの教育に時間を割
き、最高の環境で彼の才能を保護し、そのためにアランやト゛ンとの生活を犠牲にし
たとすら言える母親が死ぬ間際に、ガレージにこもって数式に熱中した弟。母親を愛
していなかったわけではない、それどころか愛していたから現実から逃げざるを得な
かったのだということを、今ではト゛ンも理解していたが、それが本当に母親に伝わ
っただろうか?彼女は死ぬ瞬間、寂しくなかっただろうか?
 ト゛ンは寂しかった――両親がずっと、弟にばかり時間を費やしてきたことが。テ
ストで良い成績を取り、野球の試合で活躍し、ディベートの大会で賞をもらうと、両
親は抱きしめてお前を誇りに思っていると言ってくれた。けれどもチャ―リー――「
特別」に生まれた彼の前に立つと、いつもト゛ンは主役ではなくなった。両親はチャ
―リーが才能に押しつぶされ、挫折しないようにと常に気を配っていて、平凡なト゛
ンが挫折しないように気を配る暇はないようだった。それでもト゛ンは家族を愛してい
たし、足を引っ張らないようにと努力もした。早く自立して両親を助けられるように
もなりたいと思った。母親が重病に掛かっていると知れば出世を後回しにして故郷に
帰り、彼女の手を握ってきっとすぐ治るよと明白な嘘も吐いた。それなのにチャ―リ
ーはその間、ずっとガレージにいたのだ。
 

363 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 12:2006/12/06(水) 20:43:43 ID:Pb4nalps0
 今度もそういうことなのだろうか?ト゛ンは考えた。チャ―リーは少し人と違う。
もう30歳になるのに、もっと幼く見える。数学に熱中するあまりぶしつけになったり
もする(尤も、これはお前が事件に熱中しているときだってそうだとアランは言う)。
でも悪い人間ではない。冷たくもない。むしろ人一倍繊細で、愛情深く、無邪気な優
しさと寛容さがある。以前はただ数学に夢中の、無神経な子供だと思っていたが、弟
のそういった人間らしさを知るにつれて、ト゛ンの中で凍り付いていた兄としての愛
情も少しずつ溶け始めてきた。チャ―リーのことを理解したいと思うし、保護してや
りたいとも思う。おかしな話だが、とっくに成人しているはずのチャ―リーには、未
だに保護が必要なのではないかとト゛ンはたまに感じる。おそらくアランもそう感じ
ているから、もっと自立心を持ってほしいと文句を言いながらも、彼と暮らし続けて
いるのだろう。
 チャ―リーが何かの理由で打ちのめされ、ガレージにこもっているのなら、誰か―
―家族が手を差し伸べ、立ち上がらせてやらなければ。そう思い、ト゛ンはガレージ
のドアをノックした。ドアの隙間から明かりが漏れているから、確かにチャ―リーは
ここにいるのだろう。もう一度ドアをノックし、それからト゛ンはあくびをした。本
当に、彼は疲れていた。
 「チャ―リー?いるんだろ?」
 何か物音がして、しかし返事はなかったので、彼は迷わずにドアノブに手を伸ばし
た。鍵は取り付けられていないから、開けることができるのは知っていた。ドアを開
いて中を覗くと、蛍光灯の下で怯えたようにチョークを持って、黒板の側に立つチャ
―リーが見えた。――予想通りだ。
 壁や天井中の黒板に数式が埋め尽くされ、至る所に紙が散乱している。ト゛ンは肩
を竦めた。片付けに苦労しそうだ。
 「ト゛ン?」
 無精ひげをうっすらと生やしたチャ―リーが小声で名前を呼ぶ。あの妙に甘ったる
いような、子供っぽい呼び方で。濃いまつげを瞬かせ、上目遣いにト゛ンを見つめる。
けれどもそのくせト゛ンがガレージのドアを後ろ手で閉めると、怯えたように一歩後
ずさった。

364 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 13:2006/12/06(水) 20:44:51 ID:Pb4nalps0
 「チャ―リー、今度はどうしたんだ?父さんが心配してる」
 「……心配なんてする必要ないよ。ただ――熱中してるだけ、もう少しでわかりそ
うなんだ、もう少し…」
 そうチャ―リーは呟き、黒板に向き直ったが、手が震えたのかすぐにチョークが折
れ、舌打ちしながら彼はそれを拾った。ト゛ンはズボンのポケットに手を突っ込みな
がらそれを眺めていた。
 「とにかく、一人にしてほしいんだ。ちょっと考えたいんだ」
 ト゛ンは肩を竦め、一歩チャ―リーに近づいた。チャ―リーはその動きに肩を震わ
せてみせた。
 「いいさ。ただ、食事はしろ」
 「してるよ」
 「二日か三日に一度?普通は毎日三回食べる」
 チャ―リーは横顔を向けたまませわしなく何度も頷いた。「わかった。食べる。だ
から放っておいて」
 「何かあったのか?」
 チャ―リーは顔を上げ、眉を寄せて見せた。「何が?」
 「何か……トラブルだよ。お前がそんなふうになる理由さ。話してみろよ。兄弟だ
ろ?」
 ト゛ンはそう言い、床に腰を下ろしてドアに背中を預けた。チャ―リーはそれを見
て、口を開きかけ、それからかぶりを振った。「僕らは普通の兄弟じゃない」
 その言葉にト゛ンは軽く顎を上げて反応した。チャ―リーがそんなことを言ったの
は初めてだった。どちらかというとそれを言いかねないのは、今まではト゛ンの方だ
ったのだ。彼は幾ばくかの衝撃を受けたが、平然を装って頷いて見せた。「どのあた
りが?」

365 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 14:2006/12/06(水) 20:46:02 ID:Pb4nalps0
 これはまずい質問だった。口にした途端、ト゛ンにもそれはわかった。くたくたに
なったパーカーとジーンズを着たチャ―リーは引きつった笑顔を浮かべ、神経質な声
で言った。「――わかってるくせに!僕はト゛ンの望んだとおりの弟じゃなかった。
ト゛ンはいつも僕を置いて野球に出かけたし、高校でだって声を掛けてくれなかった。
キムと婚約してたことだって、言ってくれなかった。これって普通?」
 チャ―リーはため息を吐き、手のひらで短髪を掻き回した。「チャ―リー、それに
ついてはこの間話し合っただろう?あの頃は今とは違ったんだ。悪かったと思ってる」
 ト゛ンは以前キムという女性と婚約したことがあったが、チャ―リーに彼女を紹介
したこともなかったし、婚約していたことも話したことがなかった。ふとした事件を
きっかけに、キムと再会し、チャ―リーも彼らの昔の関係を知ると、彼はト゛ンが内
心驚くほどショックを受けて、これまでそれを話さなかったことを暗に責めた。しか
しそれはアルバカーキにいたころの話で、そのときはチャ―リーとも疎遠だったから、
ト゛ンからしてみれば仕方がなかったのだ。そのまま結婚することになればいつかは
紹介しただろうし、今そういう女性がまた現れれば、今度はきちんとチャ―リーにも
教えるだろう。今は昔とは違うとト゛ンが弁解したときは、チャ―リーも納得したよ
うな態度をとっていたので、今になって話を蒸し返されたことにト゛ンは苛立った。
 チャ―リーはト゛ンの答えにまた引きつった笑いを浮かべた。彼がたまに見せる、
自分より賢い人間なんていないとでも言いたげな笑い。世界のすべてが馬鹿げていて、
自分だけが答えを知っているかのような。そのくせ小さな頃からチャ―リーはト゛ン
に妙に構い、あらゆることを詮索し、口を突っ込んできて、ト゛ンには弟が何をした
いのかよく理解できなかった。世界を動かすには自分だけでことが足りているという
ような態度を取りながら、チャ―リーはいつもト゛ンに何かを求めてくる。母親や父
親にあれだけ構われながら、家の中で暮らすあと一人の人間が、自分を構わないとい
うだけで大げさに取り乱してみせる。子供の頃、ト゛ンは自分の弟を天才だと実感し
たことなどなかった。ただ厄介で手間のかかるガキだと思っていた。

366 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 15:2006/12/06(水) 20:47:39 ID:Pb4nalps0
 ト゛ンはもう一度ため息を吐き、質問を繰り返した。「話したいのはそんなことじ
ゃないだろ?何が原因なんだ?」
 「何もない。何も話したいことなんかない」
 チャ―リーは両手を広げ、大げさな身振りでそう断言した。ト゛ンはそれを見上げ、
立ち上がった。「わかった。俺はもう寝る。――なんだろうと、食事はしろ。父さん
のためだ」
 そう言ってドアノブに手を掛けると、震えた声が背後でした。「ト゛ン?」
 いつものパターンだ。やれやれ。半ば本気で腹を立てながらも、ト゛ンは振り向い
て首を傾げた。「何だ?」
 チャ―リーはこぶしを握り締め、小声で聞いた。「僕みたいな弟じゃないほうがよ
かった?」
 ト゛ンは呆れて顔をしかめてみせた。「おい、まさか本当にそのことで悩んでいる
のか?」
 「答えてよ。僕みたいな弟はいらなかった?」
  ト゛ンはチャ―リーに早足で歩み寄り、彼の肩を揺さぶった。「おいおい、今更
なんなんだ?まともじゃないぞ」
  チャ―リーは身をこわばらせ、じっと俯いていた。ト゛ンは間近でそれを眺めて
いたが、しばらくして肩から手を離して答えた。「……いろいろ普通じゃなかったに
せよ、俺たちは兄弟だろ?お前は俺の弟だよ」
 チャ―リーはまたあの神経質な笑いを響かせた。
 「それは答えになってない。僕は仮定の話をしてる。ト゛ン、単純な話だよ。もし
弟が選べるなら、ト゛ンは別の人間を選んだ?数学きちがいじゃなくて、一緒にキャ
ッチボールをしたり……そういう弟。学年のスキップもしなくて、母さんや父さんに
も安心させられる、まともなやつだよ。ト゛ン?ずっとそうだったらいいのにって思
ってた?もしもの話だよ」
 

367 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 16:2006/12/06(水) 20:49:05 ID:Pb4nalps0
 ト゛ンは黙ってチャ―リーの横顔を見つめていた。ふさふさした黒い巻き毛に、大
きな目と濃い睫。高い鼻は少しだけ自分や父親に似ている。体つきが華奢で童顔なと
ころは似ていない。数字を通して世界を見るところも似ていないし、ト゛ンのように
テニスや野球をしたりもしない。大学と家をただ往復し、わけのわからない数式を書
き連ね、子供みたいに些細なことで苛立ったり笑ったり、自分と似ているとは思えな
い。チャ―リーのような友人すらいない。こんな人間は他に知らない。ト゛ンは躊躇
ってから目を伏せて、正直に答えた。「……子供の頃なら、そうだったかもしれない」
 チャ―リーはちらりとト゛ンを見上げたが、すぐに視線を落として頷いた。「そう
だよね」
 「――だけどそれは昔の話だ。今は違う。違うだろ?俺とお前は……なんていうか、
やっとまともに関りあうようになったし、俺はお前を誇りに思ってる。普通ならでき
ないことを、お前はやりとげてみせる。立派だ」
 「もちろん。僕は普通じゃないからね」
 チャ―リーは奇妙に明るい声でそう言い、顔を上げてト゛ンを見つめた。そして唇
を引き結んで黒板に向き直り、また数式を書き始めた。チョークの音が響くのを聞き
ながら、ト゛ンは答えに困った。チャ―リーはト゛ンを見ないまま続けた。
 「普通じゃない。普通じゃない。小さい頃からずっと僕はそう言われて育ってきた。
――変なんだ。天才なんて言われてるけど、おかしいだけだ。まともに学校に行けな
かったし、毎月毎月知能テストを受けて、専門家にチェックされて、まるで精神異常
者と同じ扱いだよ。その証拠に母さんはいつも僕の行動にひどく注目してて、僕がお
かしくならないように気を配ってた。――無駄だったけど。だってこれ、生まれつき
なんだ。笑えるよね!僕はト゛ンみたいにまともじゃない。たまに役に立つみたいだ
けど。たまに役に立つおかしいやつだって、それだけ」
 「チャ―リー、母さんのことをそんなふうに言うもんじゃない」
 低い声でト゛ンが言うと、チャ―リーは肩をすくめてみせた。「そう?でも事実だ。
ト゛ンは放っておかれることが多かったのに、こんなにまともに育った。それに比べ
て僕は……ね?今もこんなふうにガレージにこもって、まともじゃない」

368 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 17:2006/12/06(水) 20:50:06 ID:Pb4nalps0
 「何が言いたいんだ?」
 子供の頃のことを持ち出されて、ト゛ンは腹の底が熱くなるのを感じた。チャ―リ
ーはいつだってこうなのだ。本人にもいろいろ苦労はあっただろうが、それでも周囲
に十分愛され、構われ続けてきたのにまだ不満を言う。確かにチャ―リーは普通とは
違うが、だとしても家族だ。彼を受け入れ、愛したいと思っているのに、チャ―リー
はいつも不可解な言動でト゛ンを混乱させ、遠ざけ、そうかと思うと土足で彼の領域
を踏みにじる。こんな弟をほしいと思えたはずがない。今もチャ―リーは得意の早口
で捲くし立てている。
 「僕が何が言いたいか?それは問題じゃない。論点がずれてるよ。僕は確かめたい
だけ。ト゛ンにとって僕が理想的な弟じゃなくて、僕はト゛ンから見てまともじゃない
ってことをね。はっきりしてよかったよ。今日はありがとう」
 「おい、ふざけてるのか?」
 肩を掴んできつく問い詰めると、チャ―リーは激しくかぶりを振って苦しげに顔を
ゆがませた。「違う。違う、そうじゃない!」
 「じゃあ何なんだ?」
 手のひらの下のチャ―リーの身体はこわばっていた。ト゛ンは自分を落ち着かせよ
うと弟から視線を逸らし、答えを待った。「何をさせたいんだ?俺に」
 「――何も、何もしてほしいことなんてない。問題は僕なんだ。いつもまともじゃ
ない。ト゛ン、気が狂いそうなんだ。いや、僕はもうずっと前からおかしかった。小
さい頃から。ト゛ン、ごめん」
 「何を謝ってるんだ?」
 ト゛ンは驚いて手を離し、チャ―リーを見つめた。けれどもチャ―リーは顔を上げ
ないまま、ト゛ンの肩に額を押し付けて泣き始めた。「ごめんなさい、ト゛ン」
 温かい涙がシャツを濡らすのが感じられた。ト゛ンは戸惑い、躊躇ってからチャ―
リーの震える肩を抱いた。チャ―リーはその動作にびくりと身体を動かしたが、振り
ほどこうとはしなかった。

369 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 18:2006/12/06(水) 20:51:45 ID:Pb4nalps0
 「何を悩んでる?お前は俺の弟だよ。今は一緒に仕事もしてる。お前は俺の目から
みたら確かにちょっと変わってるけど、それは職業も全然違うせいもあるだろ。お前
はまともだよ。思いやりもある。才能もあるし、素晴らしい弟だと思ってる。キャッ
チボールに誘わなかったのが悪かったなら、今からでもするか?」 
 その言葉にチャ―リーが微かに笑う気配がし、ト゛ンは弟の両肩を掴んで顔を上げ
させた。チャ―リーの目は充血し、潤んでいた。ト゛ンは取り乱した子供にするよう
に肩を撫で擦りながら聞いた。「何をしてほしい?何を望んでるんだ?」
 「何もしなくていいよ」
 「チャ―リー」
 「何もしなくていいんだ。僕が変わりたい」
 「チャ―リー……」
 「もっとまともになって、ト゛ンに好かれたかった。小さい頃から。ずっと僕はト
゛ンに……駄目だ、頭がおかしくなる。ト゛ン、息ができない。苦しいんだ。変になる。
ト゛ン」
 チャ―リーは掠れた声でそう呟くと、上半身を折り曲げて腹を抱えた。ト゛ンは慌
ててそんな弟の身体を支え、彼を床に座らせようと肩に手を廻した。チャ―リーは身
体を痙攣させ、呼吸を荒くし、震えた指先で自分のパーカーを掴んだ。こめかみには
汗が浮かび、顔は真っ青になっていた。ト゛ンは床にひざをつかせ、一方の手でチャ
―リーを支えながら、もう一方で背中を撫でた。確かに、明らかにチャ―リーはおか
しかった。感情を揺らしやすい性質だといっても、こんなふうになるのは流石に行き
過ぎているように感じた。――もしかしたら、本当にどこか病んでいるのかもしれな
い。研究に没頭するあまりに、神経が疲弊したのかもしれない。両親が昔から心配し
ていたように。だとしたらアランにも相談しなければ。ぞっとしながらト゛ンはチャ
―リーの巻き毛に指を絡め、自分の胸に彼の頭を押し付けるようにして囁いた。「落
ち着いて。ゆっくり息をしろ。大丈夫だ。焦るな。ゆっくりでいい」
 抱きしめながらそう繰り返すと、次第にチャ―リーの呼吸は穏やかになったが、数
秒すると今度は歯をがたがた鳴らして震え始めた。ト゛ンは眉をひそめながら、そん
な弟を至近距離で観察していた。
 

370 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 19:2006/12/06(水) 20:53:10 ID:Pb4nalps0
 「――ト゛ン、僕が気が狂ってるみたいに見える?答えてよ……」
 チャ―リーが震えながら聞いてきた。ト゛ンはその答えにひどく戸惑い、それから
かぶりを振った。「お前はきっと疲れてるんだ。食事もしてないし、寝てないんだろ
?何か食べて、よく眠ればよくなる。休暇をとるのもいい」
 「眠れない。もう何日も寝てない」
 チャ―リーはぽつりと呟き、震えを抑えるためなのか、自分を両腕で抱きしめて、
目を瞑った。憔悴した別人のような横顔に、ト゛ンは何か恐ろしいものを感じた。―
―もう家族を失いたくなかった。
 「チャ―リー、大丈夫だ。お前は疲れてる。何か簡単なことで治るはずだ。眠れる
ようにもなる。一緒に考えよう」
 「眠れない。これを治さないと……」
 かたかたと歯を鳴らしながらチャ―リーは言う。ト゛ンはそれを止めるために、ま
すますきつく弟を抱きしめながら聞いた。震えは少し収まったようだった。「これ?
何のことだ?何か原因があるのか?」
 チャ―リーは我に返ったように顔を上げ、口を僅かに開けたまま黙ってト゛ンを見
つめた。
 「チャ―リー?」
 「――僕は頭がおかしい」
 「チャ―リー!馬鹿なことを言うな!」
 ト゛ンは苛立って叫んだ。けれどもチャ―リーはかぶりを振って続けた。「頭がお
かしい。僕が今考えていることを知ったら、ト゛ンは僕を嫌うに決まってる」
 「何を考えてるっていうんだ?おい、俺たちは兄弟だぞ、今更……」
 「――兄弟だから、もっと好かれたいって思ってる」
 チャ―リーが息を震わせながら呟いた。ト゛ンは驚いて、微かに身を離し、弟を見
つめた。チャ―リーは苛立った子供そのものの表情で、半ば泣きながら繰り返した。
「ト゛ンに好かれたい。そればっかりなんだ」
 ト゛ンは唖然としながら、乾いた声で答えた。「……好いてるよ。家族だろ?わか
りにくいかもしれないけど、俺だってお前のことは……」
 チャ―リーがその言葉を遮って続けた。
 「でも兄弟だからってだけじゃ駄目だ。もっと好かれたい。テリーやキムみたいに。
……おかしいだろ?まともじゃない」

371 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 20:2006/12/06(水) 20:54:55 ID:Pb4nalps0
 ト゛ンは何と言うべきか迷いながら、チャ―リーの身体に廻していた腕を解いた。
チャ―リーは静かに泣き始めた。
 好かれたい。そこまではまあいい。けれども、テリーやキムを例えに出すのは、ど
う考えてもおかしい。その関連性を考えようとすると、ひどく混乱して、ト゛ンは額
に手をやった。そんなト゛ンを見て、チャ―リーは微かに笑った。「ほら、おかしい
と思ってる」
 「……思ってない」
 ト゛ンは呟き、それからチャ―リーを見つめた。子供みたいに泣いているその様子。
濡れた睫ごしに、いつものようにト゛ンを見上げる弟。彼が言っていることはおかし
い。けれども、おかしいと言ったらチャ―リーはきっと死んでしまうだろう。ト゛ン
は手のひらに汗が滲むのを感じ、太ももに手をこすりつけてそれを拭いた。そしてFB
Iの交渉術のクラスで習った通りに、ゆっくりと繰り返して強調した。「おかしいと
は思ってない」
 「嘘だ」
 チャ―リーが絶望的な表情で呟く。また汗が浮かび、ト゛ンは不安になった。彼は
手を伸ばし、チャ―リーの肩を擦って言った。「お前は大事な弟だよ。おかしいなん
て思わない。チャ―リー、一緒に考えよう。俺たちが疎遠だったせいで、お前にも何
か心の傷ができたのかもしれない。俺の兄弟としての接し方が冷たかったのかもしれ
ない。悪かったよ。俺にも責任がある。だから、一緒に考えて……とにかく一緒に考
えて、眠って、食事をしよう。お前は正気だよ、大丈夫だ」
 ト゛ンの言葉にチャ―リーがきつい口調で返した。
 「正気な人間が兄と寝たいなんて考える?僕が言ってるのは、そういう意味だよ。
一緒に解決なんてできるわけない。消えたいよ。生まれてこなきゃよかった。そした
らト゛ンももっと幸せになれた」
 「チャ―リー……」
 「気持ち悪い?」
 チャ―リーが口の片端を上げて問う。ト゛ンは躊躇いながらもかぶりを振った。「
……ゲイの人間はいくらでもいる」
 「兄弟相姦願望のあるゲイはそんなにいないと思うけどね」

372 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 21:2006/12/06(水) 20:56:26 ID:Pb4nalps0
 尖った声で皮肉まじりにチャ―リーは反論し、ト゛ンはただ喉の渇きを感じていた。
彼はひどく疲れていたし、混乱もしていた。おそらくチャ―リーも。ト゛ンはチャ―
リーの肩を擦っていた手を移動させ、背中を撫でた。チャ―リーは目を瞑り、それか
らまた開けて囁くように言った。「触られると身体が熱くなる。気が変になりそうに
なるんだ。ト゛ン、気持ち悪い?」
 「……気持ち悪くなんかない」
 ト゛ンは呆然としながらそう答え、パーカー越しに指先でゆっくりと弟の背筋をな
ぞった。ト゛ンにはどうすればいいのかわからなかった。お前はおかしい、疲れてい
るというのが一番本音に近かったが、それを言ったらチャ―リーを失うこともわかっ
ていた。この年になってやっと近しくなり、ト゛ンにとって保護の対象となっている
弟を。気難しく、ト゛ンから見れば不思議な才能があり、どこか無垢なチャ―リーを。
傷つきやすくて、以前はト゛ンの前ではいつも身をこわばらせていた弟、今は生意気
な口を利くことはあっても、彼の手の届く場所にいる、30年かけてやっと得た弟を、
失うかそれを回避するかの瀬戸際が今だということくらいはわかった。わかりすぎる
ほどわかった。ト゛ンは疲れで頭をぼんやりとさせたまま、チャ―リーのパーカーの
下に指先を滑り込ませた。チャ―リーがびくっと肩を震わせて彼を見上げてきた。微
笑みたくなるようなかわいらしい表情だった。そう、チャ―リーにはどこか庇護欲を
誘うところがあり、だからこそト゛ンはずっとこの気に障る弟を許してきたのだ。彼
はそんな弟を見ながら、服の下に滑り込ませた指をさらに奥へと進ませ、腰に触れ、
腹の内側にまで指を這わせた。チャ―リーはその動きに身体をいちいちびくつかせて、
唇を動かし、微かに吐息をこぼした。「……ト゛ン?」
 「黙れ、チャ―リー。じっとしてろ」
 「ト゛ン、何をするつもりなんだ?これじゃまるで……」
 「眠れないんだろ?」
 

373 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 22:2006/12/06(水) 20:57:28 ID:Pb4nalps0
 ト゛ンはチャ―リーを眠らせたかった。とにかく一晩眠らせ、落ち着かせてから、
もう一度考えようと言いたかった。今その問題について、深く考えられるとは思えな
かった。ト゛ンもチャ―リーも何日も寝ていなくて、疲れきっている。まともな答え
にたどり着けるはずがない。一晩眠ったあとなら、いい方法が見つかるような気がし
た。そして眠るのに最適な方法も知っていた。
 ト゛ンはチャ―リーのパーカーを脱がせ、彼の乳首――当たり前だがふくらみのな
い胸についていた――を指で愛撫し、覆いかぶさるようにしてガレージの床に寝かせ
た。軽く唇をこすりつけるようなキスをすると、チャ―リーは腰を揺らして、ジーン
ズを履いた脚を絡ませてきた。それに誘われるようにして、もう一度、今度は舌を軽
く絡めたキスをしてみれば、チャ―リーが囁いた。「キムやテリーにもこんなふうに
した?」
 「黙れよ」
 この弟はこんなときにもおしゃべりで知りたがり屋なのか。呆れてト゛ンは言った
が、チャ―リーはかぶりを振った。「答えて。知りたいんだ」
 ト゛ンは肩を竦めた。本当に、この弟は理解不能だと思った。
 「ああ、したよ。でも、お前もしてほしかったら、黙ってろ」
 簡潔にそう命じると、チャ―リーはそれを聞いて呟いた。「――してほしいよ」
 ト゛ンは頷き、まだ何か言いたげなチャ―リーの口を手で覆い、もう片方の手で弟
のベルトを外した。もう一度キスをし、ジーンズを脱がせると、やっとチャ―リーは
口を閉じた。ト゛ンはそのことに感謝して、ただ行為に集中した。男とするのは初め
てだったが、別に難しくないような気もした。チャ―リーだけいかせようと思ってい
たのに、彼がト゛ンにも服を脱ぐようにねだるので(「恥ずかしいし、フェアじゃな
いよ、ト゛ン」)、抗う気力もなくワイシャツやスーツを脱いだ。腕時計を外し再び
チャ―リーに覆いかぶさると、数学者はト゛ンの首筋に鼻を寄せてこの匂いが好きだ
と言った。シェービングクリームとヘアトニックと、ト゛ンの肌の香りが混ざり合っ
た匂い。そんなものは意識したことがなかったので、ト゛ンは少し驚き、お前は変わ
っていると言いそうになった。

374 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 23:2006/12/06(水) 20:58:40 ID:Pb4nalps0
 一度目は手で互いに擦り合い、あっけなく果てた。ところが驚いたことに、チャ―
リーだけでなくト゛ンも一度では満足しきれず、いつの間にかト゛ンはチャ―リーの尻
の穴に指を滑らせていた。ほとんど潤滑剤もなく、男同士のセックスには不利な状況
で、彼らは初体験するティーンエイジャーみたいに焦りながら互いの身体を寄せ、肌
に舌を這わせて、手足を絡めあった。正常位では難しそうだったので、ト゛ンはチャ
―リーに四つ足の姿勢を取らせ、舌で入り口を愛撫してから、唾液で濡れた尻の穴に
自分のペニスを慎重に挿入した。チャ―リーは呻きはしても痛いとは言わなかったが、
ト゛ンは不安だった。
 腰を抱え、身体を揺さぶると、チャ―リーが聞いたこともないような甘い、掠れた
声でト゛ンの名前を呼んだ。それが馬鹿みたいに可愛くて、ト゛ンはどうしてもチャ―
リーを守らなければいけないと思った。こんなふうに大事に思っている人間を失うこ
とに、耐えられるわけがない。彼はチャ―リーに対する責任を感じ、その重さに視界
が暗くなった。
 チャ―リーを守りたい。ことが終わり、繋がりを解いた後で、彼の巻き髪を撫でな
がらト゛ンは切実にそう思った。けれどもそれは絶対に、こんな方法ではないはずだ
った。ト゛ンにはわかった。自分が間違ったことが。チャ―リーを正しく導かなけれ
ばいけなかったのに、しくじって引き返させずに、あろうことか一緒に進んだのだ。
今夜チャ―リーは眠れるかもしれないが、自分は絶対に眠れない。眠れるわけがない。
眠る資格もない。
 「あのブロンドの女の子、あの子にもこうしたの?」
 ぼんやりと考えていると、チャ―リーが腕の中で不意にそう言ったので、ト゛ンは
ぎょっとして聞き返した。「なんだって?」
 「プロムに誘った子、いただろ?名前は忘れちゃったけど。あの子にもこうした?」
 無邪気さと嫉妬が奇妙に同居した瞳をしてチャ―リーは言う。ト゛ンは弟を見つめて、
ただ言葉を探した。チャ―リーは本当に頭がおかしいのではないかとまた思った。

375 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 24:2006/12/06(水) 20:59:43 ID:Pb4nalps0
 「……寝たよ。あの子にもこうした。でも何故そんなことを?」
 ト゛ンが答えると、チャ―リーは肩を竦めた。「ただ知りたいんだ。ずっと知りた
かった。小さい頃から僕はずっと、ト゛ンのことなら何でも知りたかった」
 そのころからおかしかったんだね。ト゛ンはそれを聞き、チャ―リーの身体に廻し
ていた腕を解き、上半身を起こした。こめかみが痛み、疲労感だけが彼の身体を支配
していた。ト゛ンが無言でそこらに散らばった服を手に取ると、チャ―リーは不安げ
な声を上げた。「ト゛ン?」
 「……ソファで寝るよ。明日も早くから仕事なんだ。……それから」
 ト゛ンは裸のまま無防備に床に寝そべっている弟に視線を向け、すぐに目を逸らし
て服を着ながら言った。「お前は俺の弟だよ。俺に他に弟はいない。お前が生まれた
朝のことを、今でも覚えてる。クリスマスの朝が10年分いっぺんに来たみたいな気分
で、父さんに車でお前と母さんがいる病院まで連れて行ってもらった。お前はまだち
っぽけで、俺が誰なのかなんてわからなくて、でもこれが俺の弟なんだって思ったん
だ。代わりなんかいない。お前は俺の弟だ。誰も代わりにはなれない。これからもず
っと。……きちんと食事はしろよ」
 ト゛ンはそう言って、振り向かずにガレージを出た。プロムの日、女の子を車に乗
せて家を出た後、13歳のチャ―リーが窓からそれをずっと眺めていたことを思い出し
て、不意に胸が苦しくなった。呼吸ができなくなるほど。


376 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 これでおしまい:2006/12/06(水) 21:00:55 ID:Pb4nalps0


 チャ―リーは久しぶりに深く眠り、しかし夜明け前には目が覚めた。周囲を見渡す
と、自分の服が床に散乱しており、身体を動かすと痛みが走ったので、昨夜のことは
夢ではないのだと思った。ト゛ンの唇も指先も、あの言葉も。あの最後の言葉は、ど
ういう意味だったのだろう?彼はぼんやりと思い巡らせた。相変わらずト゛ンはチャ
―リーには理解が難しい存在だった。昨夜はそれを考えようとするうちに、何日ぶり
かで眠りに落ちたのだ。確かにト゛ンは眠るための最適な方法を知っていた。
 けれど今、目覚めて、一人ガレージに取り残されてト゛ンの言葉を考えているうち
に、チャ―リーは胃が軋むのを感じた。行為についての罪悪感ではない。自分は異常
なのではないかという不安すら既になかった。何故ならト゛ンが受け入れてくれたか
ら。ト゛ンが認めてくれるのなら、社会的規範などどうでもよかった。だが――自分
はト゛ンを無理やり追い詰めたのだという自覚はあった。甘えや誘いが混ざった言葉
で脅しをかけ、自分の命で釣って誘った。自分が安心するために。
 クリスマスの朝が10年分。それはずっとチャ―リーが言ってほしかった言葉だった。
代わりがいないという言葉も。ほしいものすべてを手に入れた代わりに、ト゛ンを引
きずり込み、正しくない形で愛を示させた。完璧に近い形で円を描くト゛ンという数
式を、チャ―リーは無理やり汚し、正しくないものにした。
 しかもそれでもまだ足りない。キムやテリーやブロンドのあの女の子にしたのと同
じこと一度だけというだけでは、チャ―リーは満足できなかった。彼はまだほしかっ
た。ト゛ンが。
 だからきっとこれは続くのだ。完成された答えを差し出さないままで。
 「間違ってる。これが答えじゃない」
 そう呟いてチャ―リーは身体を起こした。この方法では二人とも幸せになれない。
正しいものにたどり着けない。けれどもこれしか答えが見つからない。チャ―リーと
世界の間にはまだ不調和があり、それでもやはりチャ―リーはト゛ンのことが必要だ
と思った。これから先、ト゛ンのせいで不調和がいっそうひどいものになったとして
も。もしかしたら、これまでの不調和はすべて彼がいたから感じてきたのだとしても。
そうだとしてもやはり彼のことが必要だと思った。


 

377 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/06(水) 21:04:38 ID:Pb4nalps0
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 長々トスマソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・; ) スタートノテンプレガズレタ…
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

とにかく原作の弟は兄ラブで兄は弟過保護気味なので
やおらずにはいられない、そんな熱い思いをぶつけてみました
続きを待ってくれた方々アリガトン!

378 名前:風と木の名無しさん:2006/12/06(水) 21:59:09 ID:fBCSx0320
>>377
GJ!!!
なんかつながらない切ない感じにちょと泣いた…

379 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 01:26:29 ID:UPehoRe90
>>377
話に引き込まれました。
二人が心配…。


380 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 01:28:30 ID:f4emc8wJO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・)ドラマi某の12/6放映分からのモーソーでつ

381 名前:i某 高利貸し×評論家1:2006/12/07(木) 01:29:32 ID:f4emc8wJO
店の者は既に帰った、深夜。
二人だけでこの薄暗い地下にいるという状況はそれだけで私を興奮させた。
貴方のぴんと伸ばした白い背には、冷たい汗が伝っているのだろうか。

「先生のその顔が見たかった」

私だけに見せて欲しかった。
思わずこの指でその血の気の引いた頬に触れてしまいたくなる。
思っていた通りに、
美しい。
あの晩私を嘲った顔に寸分劣らない。

あのレストランでの夜はもうどれだけ前のことになるだろう。
私は会社の部下を連れて、貴方の横にも細君がいただろうか?
私が犯した過ちは、あれはほんの些細なものだったのだろう。
無論ワインは嫌いではなかったが、料理とワインの相性なぞ私にはそもそもどうでもいいことだった。
それを、わざわざ評論家である貴方の前で講釈をたれてワインを注文したのは何故か、
今となってはどうしてそんな真似をしたのか、私自身解らないと言ったっていい。
ただ、少し考察できるのは。
貴方にとっては定期的に私と共にするだけのテーブルが、
いつしか私にとっては何日も前から日を数える、何よりの優先事項になっていたこと。

382 名前:i某 高利貸し×評論家2:2006/12/07(木) 01:30:50 ID:f4emc8wJO
その席で私がふと口にしたワインの知識などに、決して大袈裟に褒めそやすのではなく、けれどさりげなく貴方が頷くこと。
その唇がグラスから離れて、私に微笑むのを、私はただ黙って見つめるようになったこと。
そのような無意識のうちになされた小さなことの積み重なりが誘因か、
ともかく私は貴方の前でワインを注文した。
その一瞬のちに失笑とともに貴方に、それに店のソムリエにまで全否定されるとは予想せずに
ただ、貴方にまた、さりげなく頷いて欲しかったのだろうと、
今ではそうも思える。

いずれにせよそれは大したことではなかった。
私は侮辱されたと感じ、人前での貴方の心無い行為を恨みもした。
けれど、嘲笑に包まれながら私の心の平静を奪ったのは怒りと恥ばかりではなかった。
可笑しそうに目を細める貴方の顔が、
そう、私を馬鹿にしている筈の他でもないその顔が、
美しいと思った。
その瞬間、私に潜在していた些細なことたちが一気に辻褄が合い、表面化した。
それは私を混乱に突き落とし、
そんな私をまだ貴方は笑っていた――
ああ、私は、
彼のことを。


383 名前:i某 高利貸し×評論家3:2006/12/07(木) 01:32:03 ID:f4emc8wJO
まだ呆然としている私の前に、貴方が注文し直したワインが運ばれて来たが、口にしても味などろくに解らなかった。
私にできたのは貴方が噛むように動かしてワインを味わう唇に見入ることだけ。
私は不可解な物を見るような気分で、器用に動くその口元を見ていた。
欲しい。
突如私の中に涌いたその欲求こそ不可解さの正体であった。
私は正気なのか。
本当に、欲しいなどと。
――彼を。

それからは狂ったように策を考えた。何度もあの夜を夢に見て、目覚める度身体は燃えるように熱かった。
どうにかして。私があの晩、笑う貴方の前でしていたような脱力した表情を、貴方に。
いやそれだけでは済まない。どんな表情も、どんなあられもない姿さえも、貴方の見せる全てを私が握りたくて仕方なかった。そのためなら金だろうが書類の小細工だろうが厭わなかった。
その時がくれば、いつも上品に振る舞う貴方はどんな変貌を見せてくれるのだろう?
汚い手で貴方を裏切った私の前で――そればかりを夢想した。
けれどそう、貴方も私を裏切ったのだ。あの晩、確かに。

384 名前:i某 高利貸し×評論家4:2006/12/07(木) 01:32:51 ID:f4emc8wJO
穏やかに貴方との日々を過ごす私の中に巣くっていた、どうしようもない強烈な欲望。それに気付かせるなんて。

そして私は、手に入れた。
ああ可笑しいほど困惑に歪んだ貴方の顔。けれどこれはほんの第一歩。
あの時の貴方にお返しするように嘲笑ってあげたいのに上手くいかない。どうしても愉悦に頬が上がるのを止められない。
ワインをまだ飲んでいないのに身体が熱い。急いてはいけない、そうワインを飲まなくては。
この二人だけの夜に、祝杯を。

385 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 01:34:19 ID:f4emc8wJO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・)捏造にも程があるね!

携帯からは初なので、色々おかしいと思いますがすみません…

386 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 02:38:53 ID:Sra5wGlF0
>>377
このドラマ大好きvやっぱりこちらに走った人っているんだねwGJ!!

387 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 02:41:28 ID:Sra5wGlF0
>>385
姐さん、ものっそ上がってますお( ^ω^)

388 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 04:53:03 ID:NLcF4XPO0
ここってsageるのが義務なんだっけ?

389 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 09:04:34 ID:qJbegXs80
>>388
どのスレであっても、上がっていると、嵐が大量に流入してきた場合、
攻撃対象になることがあるから、ageはあまりおすすめできないかと。
もっとも最近は嵐も色々種類が増えたから、なんとも言えないけれど。
>>380
携帯だとsageにくいのかな。
その二人萌えたので、書いてくれた人がいて嬉しい。
GJ!

390 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 10:21:35 ID:vKRlXIzqO
そりゃそうだけど、もうそういう意見って
久しく聞いてなかったからちょいびっくり。
一時期下げ強制やめろみたいなムードなかっけ?
いや、どっちでもいいんだけどさ。




391 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 12:38:16 ID:NkRXeqSJ0
>377
元ネタ知らないんだがテラモエス
翻訳小説調の文体もばっちりハマってて素敵だ。
萌え過ぎてモエと素敵しか言葉が出てこない自分が欝になるぐらい素敵だ。

392 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 19:42:06 ID:kRmLvgc00
・ 初投稿
・ 初めての小説、エロ
・ ライオンに変身する深夜特撮 錠/之/介/受
・ 無理やり系

 ____________
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393 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 19:42:37 ID:kRmLvgc00

ある夜、錠/之/介は豪/山に呼び出された。
理由はわかっている、ネ/オ/歌/舞/伎/町の事件調査の状況と例のあの男に関する話だろう。

男の名前は獅/子/丸といった、
錠/之/介と同じく超越的な力によってラ/イ/オ/ン/丸に変身する人間だ。
もともとJ/r/.の借金返済を理由に傾/奇/者への囮として利用しようとしていたのだが、
どうやら唯の男ではなかったらしい。自らの危機になると変身しすべてが終わると怯え逃げ出す。
錠/之/介には獅/子/丸と言う男が全く理解できなかった。
力と戦うことをすべてとしている自分にとって獅/子/丸と言う男はまるで正反対だ。
同じく変身する者として戦いを挑めば傷つきたくない、戦いたくない、認めたくない、
泣き叫んで頭を床に擦りつける。


どうして戦わない。
苛立ちが頭の中を包み込んでいく、同じく選ばれたものが・・・どうして。

錠/之/介はあの事件の事を思い出した。
町の神社で獅/子/丸を狙っていたシ/ャ/ド/ー達は間違いなく豪/山の仕向けたものだった。
何故、自分が獅/子/丸と接触した時男は厳かに告げた「これ以上奴に近づくな」と、
ではどうして・・・。
足を止め、目の前の扉を開く。薄暗い部屋の隅にはあのシ/ャ/ド/ーが微動だにせず立っていた。
そしてその先に豪/山は佇んでいる。
黒い衣装に身を包み全てを見透いた瞳で部屋の周りをぐるりと見渡すと、
その瞳は錠/之/介に止まった。

394 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 19:43:10 ID:kRmLvgc00
「来たか・・・」
「・・・」
「報告しろ・・・」
「ス/カ/ル/ア/イを奪った時/田はまだ逃走中、
目撃証言を元に範囲を絞ってきている、捕まるのは時間の問題だ」
「まだ捕まらんのか・・・J/r/.は何をしている」
「今はそこまでしか進んでいない、報告は以上だ」


「・・・錠/之/介」

重い声が室内に響いた。

「何故またあの男に関わろうとした」

ぎらりと豪/山の眼が錠/之/介を捕まえた、威圧が周りを包み込む。
やはりあの神社での事を話すつもりだったらしい。

「それよりこっちも質問がある、どうしてシ/ャ/ド/ーを仕向けた?」
「ワシが今お前に問うている、答えろ」

いつの間にか部屋の隅にいたシ/ャ/ド/ーが錠/之/介の後ろに回りこんでいた。
答えなければどうなるかわかっているのかと言っているようだった。

395 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 19:43:44 ID:kRmLvgc00
「奴はあんたが思っているような男じゃない、
目の前で戦いが起きても戦おうとしない臆病者だ」

脳裏でフラッシュバックする死体、
何もできずに叫んでいる自分が憎くて憎くて仕方がない、
そして泣き叫んでいる子供が獅/子/丸の姿へと変わっていく。
思わず頭を振った、脳裏の映像は消え、
怠情な嫌悪感が錠/之/介を包み込んでいく。
豪/山は首を振り、うねる様に言葉を吐いた。

「忠告はしたはずだ、だがお前は守らなかった・・・罰を、やらねばならぬな」

豪/山がゆっくりと指を上げる、
その瞬間一人のシ/ャ/ド/ーが恐ろしい速さで錠/之/介の腕を捕らえた。
反応ができない、ここでの戦闘はできない。容赦なく締め上げるシ/ャ/ド/ーを睨み付け暴れる。
束縛された腕がわずかに緩んだかと思った刹那もう一人のシ/ャ/ド/ーが覆いかぶさった。
二人がかりとなってはどうすることもできず、
もがこうとしても押さえつけられた腕は少しもう動かない。足の付け根を指が弄る、
あらかじめ用意されていたかのようにシャドーたちはあの鋭い爪を装備していなかった。
豪/山ははじめからこうする事をメインとして考えていたのかもしれない。
なんとか蹴りを入れる事が出来ればいいのだが
がっちりと押さえ込んでいる男たちの手は決してそれを許そうとはしなかった。
ぎり、と歯を食いしばり豪/山を見上げる。
いつもと変わらぬ瞳だったが、口元は微かな笑みを作っていた。


396 名前:ラ/イ/オ/ン/丸/G シャドー(+豪/山)×錠/之/介:2006/12/07(木) 19:47:38 ID:kRmLvgc00
タイトル入れ忘れた・・・すみません (´・ω・`)


「・・・・・・っ」

錠/之/介の下半身は一切の衣類を剥ぎ取られ、
股を無理やり器具によって開かされ全てが豪/山の前で露にされていた。
手足は荒縄できつく縛られ一切の抵抗は出来ないようにされている。
舐めるような視線が突き刺さり、錠/之/介は恥と怒りでどうにかなりそうだった。
やがて豪/山が指を上げると、シ/ャ/ド/ーの手が忍び寄り始めた。
一方は性器に、もう一方は入り口をいじり始める。
ずぶりと入り込んでくる指に堪えられず呻くがとめるはずも無く
さらにシ/ャ/ド/ーは本数を増やし内部を抉った。
気休め程度の慣らしが終わるとシ/ャ/ド/ー達は錠/之/介の身体を仰向けにさせ、
今度はシャツのボタンを外していった。
もう堪えるしかない、決して屈せぬ瞳で豪/山を睨むが何の意味も無かった。



じりじりと入り込んでくる男の一物を錠/之/介は嫌というほど感じていた。
簡単な慣らししかされていない穴は悲鳴を上げ、なんとか食い止めようとしている。

「うっ・・・あ」

しかしそうした抵抗も空しくシ/ャ/ド/ーの一物は完全に内部へと侵入を果たした。
鈍い痛みが走る、もしかしたら耐え切れず切れてしまっているのかもしれない。


397 名前:ラ/イ/オ/ン/丸/G シャドー(+豪/山)×錠/之/介:2006/12/07(木) 19:48:56 ID:kRmLvgc00

「うっ・・・あ゛っ・・・うぅ・・・っ」

嬌声とは遠く離れた声だった。
シ/ャ/ド/ーの腰使いはますます激しくなり錠/之/介の前立腺が刺激され背筋が凍るような快感が走る。

シ/ャ/ド/ーの腰が一瞬大きく跳ね上がると、
錠/之/介の内部に精液を注いでいく、この瞬間が錠/之/介は一番嫌っていた。
自分の中に汚らしい物が入ってくる、
それも理由のひとつだったが彼が一番快感を覚え、震えるのもこの時だったからだ。
こんな自分が憎らしい、許せない。屈辱で涙が溢れそうになる、
そして止められず錠/之/介も射精した。

激しい快感の余韻に浸る錠/之/介の身体は、
すぐに落ち着くはずも無く火照った身体は汗を生みますます妖しく映る。
ふと、妙な感覚が走る。太股に何かがある。
錠/之/介が視線をずらすと、もう片方のシ/ャ/ド/ーが錠/之/介に足に何かを刺している。
何だ、と声を上げようとすると口を塞がれる。

「ワシはもっと乱れるお前が見たくなった・・・」

今までずっと視姦を楽しんでいた豪/山は声を漏らした。
必死に睨み付けると、豪/山はにやりと笑った。




398 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 19:51:04 ID:kRmLvgc00
 ____________
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 | |                | |           ∧_∧ コレテ ゙オワリ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

初投稿だったので間違ってるところがあったらすみません。
小説を書いて見たはいいがサイトを作る気力も無いのでここに晒してみた。


399 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 21:21:19 ID:P4ElNdu20
姐さん仕事早すぎww

400 名前:風と木の名無しさん:2006/12/07(木) 23:00:29 ID:PmdaxiylO
ここでこのジャンルを見れるとはww
それにしても萌えた!GJ!!

401 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 10:13:27 ID:D6aY1wjJ0
>>380
高利貸し×評論家先生ktkr!!!
あの2人の絡みはテラエロスでした。オサーンばかりのドラマとは思えぬほどに・・・
GJ!

402 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 11:58:35 ID:x62vSHF4O
>>380
高利貸し×評論家キタ――(*´∀`)――!!!!
しかも文章が上手い&読みやすいで最高ですたヾ(≧∇≦*)ゝ
良ければ、もっと見たいのですが…(σ・∀・)σ

403 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 18:27:15 ID:pbV2TiCNO
突然すみません‥
ホモビデオや18禁ホモアニメをレンタル出来る店ってあります?
近所のT〇UTAYAじゃ当然置いてなくて‥
やはり買うしかないんでしょうかね?

404 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 19:47:16 ID:RgN9i6SZ0
>>403
エロビコーナーに隔離されてるかもしれんね。入った事無いから知らん。
まあ女一人で中に入るのなら、気をつけた方がいいと思うけど。
18禁ゲームコーナーと違って入り口しか外に向いてないからな。

405 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 20:00:49 ID:pbV2TiCNO
>>404
やはり買うしかないですね‥
ご意見有難うございました!

406 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 20:15:11 ID:O1FIF2gu0
>403
例えば
ttp://www.dmm.co.jp/rental/
アダルト→ジャンル一覧から探すと多少は出てくるかも知れない。

407 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 20:22:55 ID:pbV2TiCNO
>>406
な、何ですか?この便利なサイトは!
有難うございます!利用させて頂きます!

408 名前:風と木の名無しさん:2006/12/08(金) 21:05:42 ID:IqdQD1mm0
>>404,406
故意犯乙

409 名前:380:2006/12/08(金) 22:30:36 ID:jtPZl0f/O
あわわわ、sage忘れとか初歩的ミスをしてすみません…
一応テンプレ確認はしたんだけど、姐さん方が言うようにとりあえずsageた方が
無難なのはどこも同じですよね。逝ってくるよ…orz

なのにレスくれた方々本当にありがとうございます。
あんな脇萌えにも同士がいてくれて嬉しい!

410 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 09:16:55 ID:A+UrZPvBO
なんだKorea

411 名前:キム空:2006/12/09(土) 18:44:56 ID:SS5cGSbx0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  キム/タクと唐/沢がドラマで共演したらという妄想からだモナー
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  勝手に作ったオリジナル作品だカラナ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 前回の続きのような単発 キム×唐だゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ※本人とはなんの関係もありません
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

412 名前:キム空1/7:2006/12/09(土) 18:45:38 ID:SS5cGSbx0
認めたくないが
認めざるを得ないかもしれない
俺が、あの男を少し意識しているという事を

たとえばそう、こんな階段であいつと二人きりになると―――――


会社にある階段は、どこか不思議な雰囲気を持っている。
フロアを出た廊下の途中に扉がある。そこが階段への入口だ。
扉は分厚く、一歩その中へ入ると外の音はほぼ遮断される。
騒がしい社内のざわめきも、電話の呼び出し音も、キーボードを叩く音も、機械の動く音も聞こえない。
まるで、密室に入ったような、シンとした静けさがそこにある。
このビルにおいて階段を使う者は、1、2階程度を移動したいという社員だけだ。
外からの客はまずエレベーターを使うし、階段入口の扉には「階段」という案内が書かれているものの
分厚いその扉はどこか入りにくい雰囲気を持っていて、慣れている者以外はあまり入ろうとは思わない。
また階ごとに別の会社が入っているこのようなビルで、1、2階程度移動する、という事も希で、
つまり、階段にはあまり人が来ないのだ。
「…空沢さん、俺、この階段てなんかいいなってずっと思ってたんですよ。」
一階下にうちの会社の資料室兼物置として使っている部屋がある。
俺と木村はその部屋へ行くためにこの階段を使う事になったのだった。

扉が閉まったその瞬間、俺達は異世界にいた。
扉が閉まった途端、辺りは静寂に包まれたのだ。
その瞬間ほんの少しだけ感じる違和感は、俺に木村の言葉の意味を考えさせる。
――とか、言ってる場合か。ここってこんなに静かだったか?妙に静かだな。
「へぇ。そうか?どんな所が?」
この妙な静けさが嫌だったので俺はわざと茶化すように喋った。

413 名前:キム空2/7:2006/12/09(土) 18:46:21 ID:SS5cGSbx0
静かな事の何がいけない。いや、なにも悪いことなどない。わかっている。
わかっているんだ。静かな事、ただそんな単純な事が気になってしまうのは場所のせいじゃない。
一緒にいるこの男のせいなんだろう。…最近、こうなんだよな、俺…。
「いい感じじゃないすか?」
だから何が。と言おうと思ったが、次のセリフが透けて見えるのでふーんとだけ答えた。
以前の俺なら気付かなかったのかもしれないが。
いや、このアホの考えそうな事だくらいは思っただろうか。
突然、後ろに引っ張られる感覚に俺は階段を踏み外した。幸い一段で済んだが。
何事かと思いきや、後ろを歩いていた木村が俺の右腕を掴んでいたのだ。
あまりに突然で、何も構えていなかった俺は思いっ切り体勢を崩された。
何の冗談かと振り返って二段上に居る木村を見上げると、薄茶色の目とぶつかった。
「…そんなに急いだら危ないですよ。」
「お前がこういう事する方が危ないだろうが!」
木村が笑う。笑ってる場合か。ドキドキしたじゃないか。お前にじゃないぞ転げ落ちるかと思ったからだ。
しかし言われて気付いたのだが、俺は知らず足早になっていたようだ。
だってここなんか居心地悪いんだもん。お前と居ると。
まぁでもここは会社だ、何も考える事は無いはずだ。なんだって俺は…
「もっとゆっくり行きましょうよ。」
嫌だね。俺は早くここを出たいんだ。なんとなく嫌だから。
お前は俺を引き留められるけど、俺は足早になるしかないんだよ。
「何言ってるんだ。木村、仕事は機敏にな。」
そして腕を離せ、と俺は腕を振ったが木村はしっかり掴んでいて離れなかった。あぁ?
「おい、木村。」
木村がニヤリと笑う。ムカツク。

414 名前:キム空3/7:2006/12/09(土) 18:47:05 ID:SS5cGSbx0
二段下に居た俺に近付く為に木村が一段降りてくる、から、俺も一段降りる。
また木村が一段降りてくるから俺も一段降りる。何笑ってんだ、気持ち悪い。それでなんだこれは。気持ち悪い。
また一段降りてくるから、一段降りようとしたらそこは踊り場で、降りるつもりで居た俺はバランスを崩した。
その隙をついて木村が俺の腰を掬うように持ち勢いに乗せて後ろに押してきた。
そして俺はまんまとヤツに踊り場の壁の角まで追いつめられてしまったのだ。
木村はニヤついたまま慌てふためく俺の顔の横に手を付いて通せんぼしてきやがった。
腕の下をくぐり抜けて出ようとしたら腕を下に下げて来て出させないようにされた。
なんだ、なんだこの状況は有り得ん。ここ、会社だよな?なのになんだこれは。
「あのなぁ…」
と言ったところで素早く顔を近付けられたので一瞬息を飲んだ。
木村が吹き出す。殺すぞお前。
「やっぱいいわコレ。…あ、顔、赤くなってますよ?」
木村は腕を俺の両サイドの高い位置につき直し、顔を目の前に近付けたままクスクスと笑っている。
誰だこの男をこんな風に育てたのは。
ていうかお前、性格変わってないか?家と違わないか?俺、今お前の上司なんですけど。
それに顔が赤いのはお前のせいだろうが。意識してなくたってなぁ、こんな事されたら誰だって赤くなるんだよ!
俺がおかしいんじゃない、お前がおかしいんだ。なんなんだ突然こんな所で盛りやがって。
「これな、どう考えてもおかしいだろうが。いいからやめろよ。」
クッククック笑いやがって。お前は青い鳥か。
落ち着け俺。ここは会社だ家じゃない。そうだ会社だ、だからそこまですごい事はしないはずだ。
もう充分すごい事の域に入っているがな。だってここ会社だぞ。そうだ会社だ。会社なんだよ。
こんな場面を他の社員に見られたら…ていうかこういう場所って監視カメラとか無いのか大丈夫なのか
そもそもこの男何してる?ここは家じゃない会社だ!いや家でも許さんがな!
「早くどけ!」
「静かにしてくださいね…誰か来ちゃいますから。」
静かにしてなくたって誰か来る可能性は充分にあるんだよ。ここはか・い・しゃ・だっ!!
何をするかと思えば壁についた手を軸に少し離れていた木村が、身体をくっつけてきやがった。

415 名前:キム空4/7:2006/12/09(土) 18:47:46 ID:SS5cGSbx0
「お前っ何考えてるんだ?」
「この階段使う度に思ってたんですよねぇ。」
顔が近い。身体が近い。こんな場所で、こんな時間に、何やってるんだ。何考えてる、木村。
「な、何を」
木村が本当にくっつくほどにグッと顔を近付けてきた。横を向いても逃げ場が無い。
「『あー、ここで空沢さんと二人きりになれたらなー』って。」
「…馬鹿な事するんじゃない。ここは会社だぞ木村、早くどけよ。」
「いい雰囲気でしょ、この階段。誰も居ない、二人だけの空間みたいな。でも、会社。」
聞いてるのかこの男は。
「早くどけよ。」
近いんだよ。顔も、身体も。何もかも!
「俺、ずっと思ってたんです。ずーーっと。」
「…変態だろ。」
綺麗な顔して。卑怯だ、なんだその顔は。
「俺が変態なのは空沢さんに対してだけですよ。」
そういう事はな、本人には言わないんだよ。恐いだろうが。しかもこんな近くでな、息がかかるような距離でな。
必死にあごをひいてるから俺はぶさいくだろうが。どけよ、どーけーよ。何するつもりなんだよ。
「あっおまっ」
頬にキスしてきやがった。…正直こんなのは慣れてきていたはずなんだが、場所が場所だけに反応してしまう。
「ちょっと…やめてくださいよ…」
「それは俺のセリフだろうが!!」
本当にやめてくれ。いい加減恥ずかしいし、誰か来るんじゃないかと気が気じゃない。
「スゲェいい反応してくれますね。」
「お前馬鹿だろう」
「ハイ。いつか空沢さんをこの階段でこういう風に壁に追いつめてキスしたかったんですよ。
なんか思ったより空沢さんが可愛すぎるんで結構ヤバイっす。」
だからそういう事は本人には言わないんだよ!!他人にも言うな!!それと年上を可愛いとか言うな!

416 名前:キム空5/7:2006/12/09(土) 18:48:45 ID:SS5cGSbx0
「ほんっとうに変態だな?」
「だからそう言ってるでしょう。」
木村はそのまま何か考えあぐねているようだ。だからお前殺すぞ。
「おい、本当にいい加減…」
途端、木村が視線をあげ、俺をジッと見つめてきた。まだ何かするつもりだ。
またお前そんな真剣な顔すんなよ状況わかってんのか。ものすごく居心地が悪い。
しばらくチラチラ見たがずっと俺を見ている。もうやめてくれ。顔が近すぎて下を向く事もできない。
いたたまれなくなり木村の背中を引っ張る。本当は胸を押してどかしたかったが、手が入る隙間が無いのだ。
引っ張っても背広はボタンがとまっていないのであまり効力が無い。なんだ、何する気だこの馬鹿は。
「木む」
俺が何か言うのを待っていたかのように、木村がキスをしてきた。
俺が口を開けていたのを利用して舌が入ってきた。こいつ、噛み切ってやりたい。
木村の舌が俺の口内をまさぐる。こいつ、いつも思うが息をするタイミングを作るのがうまい。
だけどキスすると思ってなかった俺の息はだんだん苦しくなってきた。
俺をどんだけ羞恥に晒せば気が済むんだこの男は。冗談じゃない。こんな時に誰か来たら…嫌だなぁ
木村、許さん。
「…もっと抵抗して下さい。」
やっと口を離したと思ったらそんな冗談を言う。抵抗なんかさっきからしてるだろうが。
俺は息が苦しくて肩で息をしていて何も言えなかったので、きつく睨んだが、
木村の目はそんなものじゃ効かないとばかりにニヤニヤ見つめ返すだけで、なんだか恐くなってきた。
「ハァ…ハァ…やめてくれ」
「はいダメーそれ逆効果。」
「…嫌いになるぞ」
木村は目を見開くとパチパチとまばたきをした。あ、効いた。
「嫌われたくねー…!」
渋い顔。ほんとに馬鹿だな。なんでここに拘ってるんだ。…家でいつも二人きりの癖に。
だからといって家でならなんでもいいわけじゃないがな。ここより、まだマシってだけだ。

417 名前:キム空6/7:2006/12/09(土) 18:49:30 ID:SS5cGSbx0
木村はまたしばらく唸りながら考えていた。俺はその間も誰か来ないかずっとヒヤヒヤしているというのに
この男、どうでもいいのかそんな事はすっかり頭に無いのか。
男に壁に追いつめられ通せんぼされて密着状態で待たされる俺の身にもなれってんだよ。
「わかりました。…でも一つだけお願い聞いてもらっていいですか」
「嫌だね」
「嫌って言ってもやるつもりですけどね」
「なんだ!」
「…あの。背中なら触ってもいいですかね?」
はぁ????
通せんぼの手がズズズズと下に降りてきたと思ったら俺の背広を広げて脇の間から背中にグイッと入ってきた。
良いとも言ってないのに。本当に答えを聞くつもりは無いらしい。
背広を着ているのに、背広の中に手を入れられてシャツの上から背中を触られるのはひどく気持ち悪かった。
「うわっ…お前、いい加減にしろ!」
自然と背中が浮き、のけぞってしまう。木村の手が背中を縦横無尽に撫で回す。たかが背中だろうが。
されど背中なのか?これは結構厳しい。シャツ越しだから木村にはかわらないだろうが肌が粟立ってしまう。
木村の肩に必死にしがみつく。まるで抱き締め合っているみたいでムカツク。
あーなんだか変な気分になるなぁ。俺が流されてどうする。気を紛らわす為に右手の人差し指を軽く噛む。
「…俺、新人の頃からあなたの事ずっと好きでした。」
耳元で木村の声がする。俺は目をギュッと瞑っていたからか、その声はやたらはっきり聞こえた。
「…すっげぇ、好き。」
そう言って木村は俺の頭に自分の頭をぐりぐりと押しつけてきた。
俺にはなんて言って良いのかわからず、だから何も言わなかった。
ずるいか?木村。でも俺にはまだ木村に応える勇気は無いんだ。
木村はまた俺の頬にキスをしてきた。そのキスはそのままだんだん唇に近付いてくる。
これやったらもう終わりだぞ、もう絶対離れさすぞ、と、思っていたら何故か木村がピタッと止まった。
不思議に思って目を開けると目を丸くした木村が俺を見ていた。

418 名前:キム空7/7:2006/12/09(土) 18:50:09 ID:SS5cGSbx0
「…なんだ」
「…指。」
「なんだ。」
「噛んでた」
「だからなんだ」
それでキスできなかったと。知るか。
「…まぁもういいだろ」
「普通噛むかぁ?!」
「な、」
「色っぽいでしょ?!そういう事したら。俺の事誘ってるとしか思えないんですよ。あなたっていちいち!」
「誘ってないっ!」
またこの男はおかしいことを言い始める…
「あと一回キスしたらやめようと思ってたのにさぁ!」
「俺もそう思ってたよ!!知るか!もう終わりだ終わりだどけ!!この色魔!」
木村の顔が赤く染まる。なんだよ、色魔だろうが。…言い方が古いの?
「わーーーあーーーもう!!信じらんねえこの人!」
木村が勢いよく俺から離れた。あー終わったよよかった。色魔。信じられないのはお前の行動だ馬鹿。
俺は安堵の溜息をついて、気を取り直しまた階段を降りようと歩き始めた。
のに、また木村に引き寄せられて、チュという音と共に素早く一瞬のキスをされた。
そして木村はそのまま俺の横をすり抜け、先に階段を駆け降りていった。なんなんだ。
階下のドアの前で木村が振り向く。
「空沢さんもあと一回キスしようと思ってたって言うからしました。」
木村は捨てゼリフのようにそう呟くと、すかさずドアを開けて走り去って行った。

俺は呆然とした。
自分の顔が熱くなっていくのを感じた。

419 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 18:50:50 ID:SS5cGSbx0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧      じれったい関係が好きなもので…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )      うちはなかなかくっつきませんすいません
 | |                | |       ◇⊂    ) __ こんなどこにも貰い手の無いカップリング作品を
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | 読んで頂き本当にありがとうございますカラナ
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

420 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 18:58:44 ID:TCuOTlrV0
>>419
うはwカワユスwwwGJ!

421 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 19:27:49 ID:vBA7nk2f0
>>420
指かむ空沢さんエロス
GJ!

422 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 22:13:23 ID:Ess1fZ/fO
>>348で、弁護士×須賀チャソを書いた者です。
賛同カキコくれた姐さん達、アリガトン!!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )今回は、本命の彼とイチャつく須賀チャソだよ。


423 名前:炉算氏×須賀:2006/12/09(土) 22:14:17 ID:Ess1fZ/fO
久々に俺の部屋で、2人きり飲んだ。
仕事の話とかこれからの事…色々とのんびり語り合いながら。



気付けば午前3時。
すっかり出来上がった須賀が、俺の事を「うーちゃん、うーちゃん」としつこく呼び出す時間。
俺はただ、うんうんと頷いて髪を撫でてやる係。
セミダブルのベッドに横たわり、押し寄せる眠気と戦いながら須賀を甘やかす。

「うーちゃん…なぁ、こうしててえぇ?」
「えーよ」

須賀が俺の体に腕をまわして、しっかりと抱き付いてくる。
いつもより高めの体温が妙に心地良い。

「お前、むっちゃ酒くさいで…」
「だって結構飲んだもん」
「明日起きれるかぁ?」
「大丈夫…うーちゃんが起こしてくれるんやろ?」
「うわ、人任せやん」

キスもせず、それ以上の行為も求めないままただ抱き締める。
眠る事すら勿体なくて、明かりを消して真っ暗になってもお互いの存在を確かめるために会話を続けた。

「なぁなぁ、須賀」
「んー?」
「今思ってんけどさ」
「うん」
「修学旅行の夜思い出さへん?」
「あー分かる分かる」

424 名前:炉算氏×須賀2:2006/12/09(土) 22:15:59 ID:Ess1fZ/fO
ひそひそと息を潜めておしゃべり。
くすくすと声を殺して笑い転げる。
2人以外この部屋に誰もいないのに、誰にも聞かれない様に楽しむ秘密の会話。

「あ、そうや。須賀、耳貸して」
「なになに?」
「………。聞こえた?」
「うわー、ベタすぎ」
「えぇやんか」
「恥ずかしいわー…そんな愛の告白されても」
「たまには言いたいよ、俺も」
「ほな、もっかい言うてー」
「それは恥ずかしい…」

あぁ。
なんて幸せなんだろう。
ぎゅっと互いの体を抱き締めて、体温を分かち合う。
そしてまた2人で笑う。

「ずっと、須賀とこうしていられるかなぁ…」
「…いられるんちゃうか?だってさ、今までずーっとこうしてきたやんか」



こんな満ち足りた夜。
キスとかエッチなんて、俺らには必要無くて。


425 名前:風と木の名無しさん:2006/12/09(土) 22:19:33 ID:Ess1fZ/fO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )いい男を二人も手玉に取る須賀チャソは、もはや魔性だと思うよ。
ヒラーイケンの「ev/en i/f」が弁護士タソ×須賀チャソソングだという事を記して、名無しに戻ります。

426 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 01:55:42 ID:Vjf4yIEm0
>>377
亀な上に原作知らずですが、とても萌えました

427 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 01:56:30 ID:g1HUUEd50
>>425
魔性と言うか、小悪魔と言うか。
何であんなにかわいいんでしょうね、あの人は。

いつまでたってもラブラブな2人に萌えました。
前作に続き、GJ!!

428 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 03:11:28 ID:RKahQSd30
>419
GJ!!いつもものすごく楽しく読ませてもらってるよー!
くっついた後も楽しそうだwというかくっつく瞬間が楽しみだ!

429 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 03:17:48 ID:C0xdq0tz0
>>419
自分も毎回すっごく楽しみにしてます。
本当に大好きだいつもいつもありがとう!
空沢さんの変化に萌え殺されそうだよー

430 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/10(日) 17:52:38 ID:hh3k0mIf0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  この間投下したnumb*3rsネタだってよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  一応前回と続いてるらしい
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
萌えが収まらないので懲りずに投下…だってあまりに萌えが…
相変わらず近親相姦で暗いです。過疎ジャンルなのにスマソ
今回も前編・後編に分けるつもりです

431 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 1:2006/12/10(日) 17:54:04 ID:hh3k0mIf0

 チャ―リーは昔から弟として扱いにくい存在だったが、恋人としての要素が加わるとその
性質はさらに強まった。少なくともト゛ンにはそう感じた。こんなことはやめよう、とト゛
ンが言うと、震えた声で(それなのに落ち着き張った振りをしながら)、何故と問う。実の
兄弟同士でこんなことをするのは正気じゃない、と告げると、「正気」の定義から議論を始
めようとして、ト゛ンをうんざりさせる。どうしてもやめなければいけないのならもうFBIで
の捜査には協力しない、と言ってト゛ンを戸惑わせたかと思えば、お願いだからどんなこと
になっても側には置いて、役には立てるはずだからと懇願する。しまいにはこの関係を続け
てくれないのなら、これまでのことを父さんにばらすと泣きながら脅してきたりもした。け
れどもト゛ンにはそれが本気ではないことはわかっていた。チャ―リーには家族の関係を壊
すようなことなどできはしない。
 おかしなことに、そうやってチャ―リーが子供じみた反抗をするたびに、ト゛ンの彼への
愛情は強くなった。ト゛ンは結局いつも、彼の魅力に屈し、望まれた通りにキスをし、彼を
抱き、望まれていないようなことまでした。だが、何度繰り返してもことが終わったあとは
決まって間違いを確信するのだった。だからト゛ンはチャ―リーに妥協案を出した。つまり、
チャ―リーが望むのなら、今のところこの関係は続けよう。しかしそれは永続的なものであ
ってはならないし、お互いが持つ唯一の恋愛関係にするべきでもない。ト゛ンもチャ―リー
も他に恋人を見つける努力をするべきだし、もしお互い以外に誰か本気で愛する存在が見つ
かったなら、この関係はやめようと。チャ―リーは乗り気ではなさそうだったが一応その言
葉に頷き、ト゛ンは手始めにチャ―リーの助手であるアミー夕をデートに誘ったらどうかと
仄めかした。もしそれが嫌なら、ト゛ン以外の男性でも。するとチャ―リーは傷ついた瞳を
して、いつかねと言った。

432 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 2:2006/12/10(日) 17:56:40 ID:hh3k0mIf0
 そんなときに、フィラデルフィアに行こう、と言ったのはト゛ンだった。四月の初め、イ
ースターの後にでも、三日間ほど旅行しよう。実家のキッチンで昼食を摂っているときに不
意に誘うと、チャ―リーは驚いたようだった。「――旅行?」
 ト゛ンはピザのソースで汚れた指を舐めながら頷いた。「ああ。休暇を取ることに成功し
たんだ。お前も大学は休めるだろ?」
 「もちろん、もちろん休めるよ。有給も消化していないし、講義だって……」
 上ずった声でチャ―リーは捲くし立てるのを最後まで聞かずに、ト゛ンは言った。「飛行
機のチケットももう取った。たった2泊だけど、気分転換にはなる」
 「二人で行くんだよね?」
 瞬きを繰り返しながらチャ―リーが聞く。ト゛ンは自分の指先に視線を落としたまま肯定
した。「ああ」
 「――ト゛ン、嬉しいよ」
 掠れた声で言われて、ト゛ンはやはり弟を見ないままで頷いた。チャ―リーが喜ぶことは
知っていた。小さな頃からト゛ンは弟に対して、二人で出かけようと提案したことはほとん
どなかった。そしてチャ―リーはいつもそれを待っていたのだ。サラダをつついていたフォ
ークをかちゃかちゃ音を立てて置いて、チャ―リーは子供みたいな口調で繰り返した。「嬉
しいよ」
 「――よかった」
 呟くように言い、ト゛ンは水を飲んだ。チャ―リーがそれをじっと見つめる。不安と喜び
がないまぜになったあの表情だ。「ト゛ン、嬉しいよ。でも何故突然……フィラデルフィア
?」
 「休暇が必要だと思ったんだ。長年働き詰めだった。仕事から離れて遠い場所で少し楽し
みたいのさ」
 僅かに口元を上げて説明すると、チャ―リーもつられて微笑んでみせる。安心させるため
に手を伸ばして弟の肩を叩くと、チャ―リーは一瞬俯いてからすぐに顔を上げて言った。「
――キスしない?」
ト゛ンは躊躇いながら弟の顔を見た。チャ―リーが瞳を覗き込んでくる。彼は小さな、け
れども断固とした声で繰り返した。「ト゛ン、キスしない?今」
 

433 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 3:2006/12/10(日) 17:58:15 ID:hh3k0mIf0
 ト゛ンは視線をさ迷わせた。父親は外出していて、ここには自分とチャ―リーしかいない。
だから二人きりだ。誰も見ていない。けれどいつも誰かに見られているような気がする。
 「ト゛ン」
 弟の囁きにト゛ンはため息を吐いて腰を上げた。そして柔らかい頬に唇を押し当てた。巻
き毛がくすぐるように鼻先を掠め、ト゛ンは一瞬目を瞑ってから、すぐに唇を離した。
 視線が絡み合う。弟が望んだのはこんなキスではないことはよく知っていた。
 「ト゛ン」。咎めるような声でチャ―リーが名前を呼んでくる。無言のまま見返すと、巻
き毛の数学者は唇を噛んでから言った。「……キスしてもいい?」
 ト゛ンは黙って頷いた。断ることなどできるわけがない。安堵と失望が入り混じった表情
をしたチャーリが、身を乗り出してテーブル越しにキスをしてきた。柔らかい唇がト゛ンの
唇に触れ、すぐに温かい舌が滑り込んでくる。長いキスの後で、チャ―リーは震えた声で囁
いた。「旅行、楽しみにしてる」
 ト゛ンはまた頷いた。頷くしかなかった。彼にはこの後どうなるかがわかっていた。二階
に上がり、チャ―リーの寝室で服を脱ぎ、抱き合う。実の弟と。そして父親が帰ってくる頃
までには身支度を整え、何事もなかったかのように三人でディナーをする。もう何度も繰り
返したことだ。
 「……父さんが帰ってくるまでまだ時間があるよ」
 案の定チャ―リーがおずおずと言い、ト゛ンは反応に迷った。数学においては一度の過ち
が決定的なものになる、といつかチャ―リーが言っていたことを思い出した。一つの答えを
間違うと、それを利用して導き出した次の式も誤ったものとなり、その過ちは連鎖していく。
世界が理性的なものではなくなり、混乱に満ちたものになる。だから数学者は注意深く一つ
一つの答えを見つけていかなければならないと、いつか弟は言った。数学だけの話じゃない、
とト゛ンは思った。自分たちもそうだ。
 「嫌?」
 悲しげな呟きにト゛ンはかぶりを振った。「嫌じゃない」
 そうして立ち上がり、弟を二階にある彼の寝室まで誘った。望まれているとおりに。

434 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 4:2006/12/10(日) 17:59:51 ID:hh3k0mIf0

 彼らが住んでいるカリフォルニアに比べて、フィラデルフィアは気温も低く、日の光も弱
かった。父親に嘘を吐いて外出した挙句(チャ―リーは学会でボストンに行くと言い、ト゛
ンは南部に釣りにでも行くと言った)、飛行機の狭い椅子に6時間も座り続け、たどり着い
たのが殺風景なビル群が並ぶ、曇り空の都市だったのだから、普通なら楽しい旅とは言わな
いのかもしれない。けれどもチャ―リーははしゃぎっぱなしで、普段は興味を示さない歴史
的建築物――独立記念館やウォルナット・ストリート劇場でも積極的に探索していた。ト゛
ンはチーズステーキが気に入り、チャーリはウォーターアイスを褒めそやした。チャ―リー
が腕を組んで歩きたい、と言うので、ト゛ンはそれを許した。ト゛ンもチャ―リーもこの街
に知り合いはいない。少なくともお互いが兄弟だと知る者はいないはずだ。だからト゛ンは
弟の願いを聞きいれ、チャ―リーはそれでも遠慮がちに腕に触れてきた。ホテルのレストラ
ンにもそうやって入ると、ウェイターが彼らをゲイカップルのように扱って、一際ロマンチ
ックな席に案内したので、チャ―リーは笑い転げた。
 「僕たちが兄弟だって知らないんだよ!僕らを恋人同士だって思ってる」
 テーブルで声を潜めながらチャ―リーが言ってきたので、ト゛ンは肩を竦めた。
 「それはそうだろうな」
 普通いい年をした兄弟は腕を組んで歩いたりしないだろう。ゲイカップルだと考えた方が
自然だ。そう思って肯定すると、チャ―リーはまだ笑ったまま片手で顔を覆った。「信じら
れない!ねえ、ト゛ンがこの街に行こうって言った理由がわかった。誰も僕たちを知らない
からだ!家を出てたった六時間で僕たちは自由になれる」

435 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 5:2006/12/10(日) 18:01:09 ID:hh3k0mIf0
 「――仕事からも解放される。どうせ携帯を鳴らされても駆けつけることなんてできやし
ないから、電源を切る思い切りがついた」
 オフにした携帯電話を手の中でちらつかせると、チャ―リーは瞳を輝かせた。
 「グレイト!正しいよ。ト゛ンはいつだって仕事に打ち込みすぎる」
 「そうかもな」
 ト゛ンは軽く受け流した。私生活を犠牲にしてFBI捜査官としての仕事に打ち込みすぎるの
を、以前の恋人にも非難されたことはあった。だがト゛ンからしてみればそれは当然なこと
だった。人が殺されたりレイプされたりして、その犯人が捕まえられずに野放しにされてい
るときに、自分の楽しみを優先させることなどできない。だからこんなに完全な休暇は就職
をしてから数えるほどしか取っていない。ト゛ンの簡潔な答えに、チャ―リーは敏感に何か
を察したらしく、すぐに真顔に戻って言った。「もちろん、それは素晴らしいことだけど。
皆を助けているんだもの」
 「とにかく、今日から三日間は仕事はしない」
 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた微笑んだ。そして子供のように無邪気な様子で明日のプ
ランなどを話し始めた。二人とも家族や友人のことは話題には出さずに、カリフォルニアで
の日常を忘れて他愛ない話をした。
 ディナーを終え、ホテルの部屋に戻ると、無言のままで抱き合った。二人がこんなに時間
をかけてセックスするのは初めてだった。いつも父親とチャ―リーが住むあの家や、ト゛ン
のアパートでせわしなく抱き合い、ことが終わるとト゛ンはなるべく早く弟から離れた。恋
人同士のように睦み合い、行為に慣れるのが怖くて、毎回ト゛ンは名残惜しそうなチャ―リ
ーを置いてシャワーを浴びたり仕事に戻ったりした。けれども今日はなるべく時間をかけて、
ゆっくりと丁寧に抱いた。
 二度目の繋がりを解いた後で、上半身を起こしたト゛ンにまたがるような姿勢でキスを繰
り返していたチャ―リーが囁いた。「ト゛ン、僕の兄さん」
 ト゛ンはそのときチャ―リーの太ももを撫でていたが、それを聞いて手を止めた。間近に
あるチャ―リーの瞳は潤んでいて、彼はト゛ンに猫のように鼻を擦り付けてもう一度呟いた。
「兄さん」

436 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 6:2006/12/10(日) 18:02:23 ID:hh3k0mIf0
 それはト゛ンが今まで聞いた中で、一番柔らかで幸せそうなチャ―リーの声だった。にも
関らずト゛ンは胸が痛むのを感じ、めまいを覚えた。歯を食いしばってそれに耐えていると、
チャ―リーが顔を上げて瞳を覗き込んできた。「ト゛ン?」
 「――なんでもない。ちょっと……」
 掠れた声で答えて額に手をやると、チャ―リーは唇を引き結んだ。そして沈黙の後でぽつ
りと言った。「やっぱり、こんなときでもつらいんだね」
 「違う。ただ――」
 「ごめんねト゛ン。全部僕のせいだ。ト゛ンは悪くないよ」
 静かな声でそんなことを言うので、ト゛ンは弟の身体を押しのけて立ち上がった。チャ―
リーはベッドに座り込んだままで、苛々と歩き回るト゛ンを見上げていた。
 「ト゛ン?」
 甘ったるい呼び方。彼はまだ子供だ。30歳を過ぎていても。きっと永遠にそうなのだろう。
チャ―リーはおそらく一生無邪気な天才のままだ。この弟に罪を被せることなどできはしな
い。もしそんなことができるのなら、どれほど楽だったろう。けれどもチャ―リーはト゛ン
が知っているなかでも最も無垢で、保護すべき存在だった。
 ト゛ンはもうやめよう、と幾度となく繰り返した言葉をまた言おうとした。だがチャ―リ
ーの怯えたような目に気づいて、すぐに口を閉ざした。その代わり微笑んで、弟を安心させ
ようとした。チャ―リーはそれを見てぎこちなく微笑み返しながら、続ける?と小さく聞い
てきた。ト゛ンは知っていた。彼がこんなふうに疑問形を使うのは、そうしてほしいという
ことなのだ。だがト゛ンはかぶりを振り、シャワーを浴びてくると丁寧な口調で言った。チ
ャ―リーは目を伏せた後無言で頷いた。
 お互いがシャワーを終えて、眠る準備が整うと、ベッドの中でチャ―リーはおずおずとト
゛ンの首筋に腕を巻きつけてきた。そして肩の辺りに顔をうずめ、こんなふうに眠ることを
ずっと夢見ていたと囁いた。

437 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 7:2006/12/10(日) 18:03:39 ID:hh3k0mIf0
 
 
 翌日は車で少し遠出をしてアトランティックシティのビーチまで出かけた。まずいことに、
二人で屋台の飲み物を買おうとしているときに、ト゛ンは昔の知り合いに会った。FBIの研修
生だったころのクラスメイト。もう10年も会っていない仲間だったが、ト゛ンを目ざとく見
つけて話しかけてきた。
 もっと別の場所での再会だったならト゛ンも喜んだだろう。だが彼はチャ―リーと繋いで
いた手をさりげなく解くことに必死で、友人との会話を楽しむ余裕がなかった。興味深そう
にチャ―リーを見る友人に、ト゛ンは嘘を吐き、チャ―リーのことをただの友達だと言った。
そして屋台から飲み物を受け取らないままで、慌しくその場を去った。
 チャ―リーがト゛ンの嘘に傷ついたことはわかっていた。それどころかト゛ンはその後、
チャ―リーに腕を組むことも手を繋ぐことも許さず、普通の兄弟のように接しようとした。
それでもチャ―リーは何も言わず、ト゛ンより少し遅れてついて来て、彼が話すフィラデル
フィア・フィリーズの逸話などに大人しく耳を傾けていた。
 けれども日が沈み、ビーチサイドのレストランに入ると、それまで言葉少なだったチャ―
リーが不意に口を開いた。「踊りたい」
 ト゛ンはぎょっとして弟の顔を見た。二人はせっかく海辺のレストランにいるというのに、
昨日のような景色のいい席ではなく、普通のカウンター席に並んで座っていた。ト゛ンが、
ましてやチャ―リーがそれを望んだわけではなく、自然にその席に案内されたのだった。
 「皆踊ってる。僕らも踊りたい」
 サラダを食べるというよりフォークでつつきまわしながら、チャ―リーは固い声で言った。
ト゛ンはカウンターからフロアの方を振り向いた。ジャズバンドの生演奏に合わせて、何組
もの客が踊っている。けれどもその中に兄弟はいないようだった。いるのはドレスアップし
た男女のカップルがほとんど。それからゲイのカップル。男同士や女同士。どう見ても自分
たちとは違う組み合わせばかりだ。先ほど会った友人の顔が脳裏を掠めた。彼がこのレスト
ランに来ているとしたら?それとも、もっと別の知り合いが。ト゛ンとチャ―リーが兄弟だ
と知っているような近しい人物が。ト゛ンは戸惑い、それからかぶりを振った。

438 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 8:2006/12/10(日) 18:04:47 ID:hh3k0mIf0
 「チャ―リー、冗談だろ?」
 「人の目が気になる?」
 チャ―リーは横顔を向けたままそう言って微かに笑った。ト゛ンは答えあぐねて、ただ弟
の横顔を見ていた。
 「チャ―リー……」
 「プロムのあの女の子とそうしたみたいに踊ってよ。でも僕はト゛ンが絶対頷かないこと
も知ってる。だけど踊りたいんだ。――もうこんなのは嫌だ」
 チャ―リーはフォークを持ったままのこぶしをまぶたに押し付け、俯いた。そして震えた
声で続けた。「フィラデルフィアに来たのだって、単に知り合いがいないからってだけじゃ
ない。そうだろ?ト゛ン。昔僕たちはここに来た。家族で――僕が三つのときだ。父さんと、
母さんとト゛ンとで……」
 ト゛ンは目を見開いた。チャ―リーが一瞬視線を上げ、すぐにまた目を伏せる。確かに小
さな頃、家族でフィラデルフィアやアトランティックシティに来た。でもそれは本当に昔の
ことだから、チャ―リーは忘れているだろうと思っていた。驚いているト゛ンに構うことな
く、チャ―リーは言葉を続けた。
 「僕がハイアリー・ギフテッド・スクールに入る前の、一番最後の旅行だ。フィラデルフ
ィア・フィリーズの試合も皆で観に行ったね。スコアだって覚えてる。母さんは管弦楽団の
演奏を聞けないのを残念がってた。こういう海辺のレストランで食事をして、僕はテーブル
と椅子の数を数えて、それを掛け算したりして完全数を見つけ出した。ト゛ン、僕だってち
ゃんと覚えてるんだよ。最初は突然旅行に行こうなんて言われて不思議だったけど――ちゃ
んと思い出した」
 勝ち誇ったようにチャ―リーは言う。そしてまた挑戦的にト゛ンを見つめてきた。神経が
冴えているときの彼の常で、まなじりが微かに釣りあがっている。ト゛ンは答えに困り、そ
れから苛立ちを覚えた。いつものように。
 そうだ。確かにここに来たことはある。チャ―リーが天才児のための学校に入る前、彼ら
がまだ「普通」だった頃の、一番最後の旅行。旅行を終えてカリフォルニアに帰り、半年後
にチャ―リーは数学の才能を伸ばすために特別教育を受け始め、両親、特に母親はそれから
ずっとチャ―リーにつきっきりになった。そうなる前の一番最後の思い出がこの街にある。
 

439 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 9:2006/12/10(日) 18:06:42 ID:hh3k0mIf0
 それを思い出したくてト゛ンはチャ―リーをこの旅行に誘った。二人が普通の兄弟だった
頃のことを思い出したかった。
 「ト゛ンは昔に戻りたいんだろ?僕が天才だって言われる前に。だからここに来たんだ。
恋人同士みたいに振舞うためじゃない」
 チャ―リーはそう言って、乱暴にフォークを置いた。ト゛ンはそれを見て眉を顰めた。「
チャ―リー」
 「ト゛ンは、ト゛ンはいつも僕を傷つける。僕は自分が間違ってることをト゛ンといると
思い知らされるんだ。だけど正しいことを確信するにも、ト゛ンの存在が必要だ。必要なん
だ。なのに……」
 震えた息を吐き、呼吸を整えるために黙り込んでから、チャ―リーはにらみつけるように
見つめてきた。彼の目は真っ赤だった。「踊ってよ、ト゛ン」
 ト゛ンはそんな弟を見返してから、また首を横に振った。「できない」
 自分の存在がいつも弟を傷つけると聞いて、ト゛ンは傷ついていた。そんなことを率直に
言うチャ―リーに腹立たしさも感じた。けれどどこかでそれを知っていたことも事実だ。チ
ャ―リーはよくト゛ンの前で悲しみと苛立ちをまじえた瞳をする。理解されていないことを
自覚している人間の目。少年の頃、チャ―リーにそんな表情をされるのが嫌で、ト゛ンはあ
まり弟と話さなかった。
 ト゛ンはため息を吐き、しばらく考えてから口を開いた。「俺がお前を傷つけるっていう
なら、なおさらこんなことは続けるべきじゃない」

440 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 10:2006/12/10(日) 18:07:26 ID:hh3k0mIf0
 その言葉にチャ―リーがぐらりと身体を揺らすのがわかった。ト゛ンはなるべくそれを見
ないように、前を向きながら続けた。「お前と俺の関係が不健康だっていう証拠じゃないか。
俺はお前に幸せになってもらいたいんだ。傷つけたいわけじゃない。お前にはわかりにくい
かもしれないけど、俺はお前にまともな幸せを見つけてもらいたいんだ。わかるだろ?いつ
までも俺との少年時代を引きずっているんじゃなくて、もっと前向きで発展性がある、そう
いう……」
 「ト゛ン、僕が望んでいるのはト゛ンとの関係なんだ。ト゛ンから見れば後ろ向きで発展
性がないかもしれないけど、僕にとってはそれが一番なんだ。――わかってない。だから僕
は傷ついてるのに」
 掠れた、高い声で早口で言うと、チャ―リーはナプキンをテーブルに置いて席を立った。
そして足早にレストランを出て行った。ト゛ンは追いかけることもできずに、呆然としてそ
の背中を見つめていた。

441 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/10(日) 18:11:22 ID:hh3k0mIf0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | [][] PAUSE      | |
 | |                | |           ∧_∧ 前編オワリ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 
萌えすぎてもうダメポ。なんだこの萌え兄弟…
前回感想くれた皆さんアリガトン
このドラマは1月から狐本家でもやってくれるらしいので
観られる方はぜひ。お薦めです。

442 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 18:31:08 ID:dbrimHitO
前回同様泣ける…!
続きをお待ちしております。
払唐といい、萌えるシリーズ物が多くて楽しみだー

443 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 18:36:15 ID:Vjf4yIEm0
>>441
続きktkr!! この兄弟萌えすぎる
ヌカパー入ってるから狐買おうかな

444 名前:風と木の名無しさん:2006/12/10(日) 19:00:05 ID:iUnaTmr60
>>228
オ〜〜〜ウ
ジ〜ザ〜〜〜ス
遅レスですまんが感動した

445 名前:竜ファ:2006/12/11(月) 02:14:19 ID:oLj18b2rO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )

こういう小説書くのも初めてだしこのスレ使うのも初めてです。
至らないところがあったらすいません。


446 名前:竜ファ:2006/12/11(月) 02:15:27 ID:oLj18b2rO
最近やたら体が疲れる、と背後から愚痴とも独り言ともつかない言葉が聞こえた。
「大丈夫か?」
俺は後ろを振り返る。ファウストは既に浴衣を着て、後は寝るばかりの格好で壁にもたれていた。
「勿論。体が疲れるのは前からでスシ。」
それでも眉をしかめて軽く肩を回す。どこかの骨が鳴ったのだろう、こきんと乾いた音がした。
「これでも医者ですから、どこが悪いのかは判るのですヨ。」
多分筋がすっかり固くなっているのでしょうね。そう言って不愉快そうに自分の体を睨んだ。
「それ治んねえのか?」
「多分治りますケド。開いて直接ほぐせばそれはもう一発で…」
さらりと恐ろしい治療法を呟く。
「モルヒネの量をもっと増やせば何も感じなくなる代わりに疲れも感じなくなるのでは…。」
「やめとけ!」
これ以上ヒートアップする前に突っ込みを入れる。何より怖いのはこいつが至って真面目に言ってる事だ。
早めに何とかしないと、そのうち本当に自分に麻薬を大量投与しかねない。
「つまり体が凝ってんだろ?」
「まぁ、そういう事でスネ。」

447 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 02:16:58 ID:ODGyyQsw0
>441
続編北!GJ!
狐公式サイト→兄弟確認→ヌカパーのチャンネル加入
コンボしました。
弟魔性すぎ。後編も期待してます!

448 名前:竜ファ2:2006/12/11(月) 02:19:05 ID:oLj18b2rO
「じゃあ俺が指圧してやるよ。何もしねぇよりましだろ?だからあんま怖い事言うなって。」
「怖い事って何でスカ?」
戯けた事を抜かしながらも、ファウストは布団にごろりと寝転がる。指圧されることに異存はないらしい。背中向けろ、と言うと素直にうつ伏せになった。
ぐっと力を入れて指圧する。やはり相当凝っている。ツボとか筋とか専門的なことはよく知らないが、大体こういうのは勘で判る。
「あー…。竜クン意外と上手ですネェ。」
そこはもう少し右の方が良いかもしれまセン、と気持ち良さそうに言う。
自分に自分の指圧を試す事は出来ないが、俺は力もあるし、上手い部類に入るのだろう。
普通なら一番疲れが溜まる部位、肩に手を置いた時ぴくりとファウストが動いた。
「あの…そこはいいデス。」
首を傾げて俺を見上げる。
「え?何で?痛ぇのか?」
痛いのは指圧が効いている証拠だ。そういうところこそほぐさなければ意味がないのに。
「我慢しろよ。肩なんて一番凝る所じゃねぇか。」
しばらく何か考えていたが、はい、と小さく呟いてファウストはまた俯く。肩を押すたびまるで何かに耐えるみたいにぴくん、と反応する。
そんなに痛ぇのかな、と不思議に思う。首に触れた時とうとう小さく声を上げた。
息が苦しいのか顔を横に向けて、俺にもファウストの表情がしっかり見えるようになった。

449 名前:竜ファ3:2006/12/11(月) 02:22:12 ID:oLj18b2rO
目をぎゅっと瞑ってはいるが、痛いのを我慢してる顔ではない。むしろ、気持ち良さ、それも性的なもの、を我慢しているように見えた。
…ああ、そうだ、そう言えば。こいつは痛みなんか感じないんだった。試しに首筋をなぞってやると、固く結んだ唇の端から微かな声を漏らした。
いつもは具合でも悪いのかと思う程白い肌なのに、赤味まで差している。多分首周辺が性感帯だったりするのだろう。
恐らくこの憶測は間違ってない。前から変だとは思っていたが本当に変わっている奴だ。
「竜クン?」
突然手を止めた俺を不思議に思ったのだろう、切なそうな青い目が俺を見上げる。
不覚にもそれが色っぽく思えてしまって、もうしばらくだけこの状態を維持したくなってしまった。
「どうしまし……っ!」
首筋をつぅっとなで上げると、不意打ちに体を震わせた。
「わりぃ…ちょっとぼーっとしてた…。」
その間も肩をほぐす要領で首を指圧してやる。
「……うっ。」
耐えきれなくなってきたらしく、手がシーツを引っかいた。
「りゅ、竜クン…もういいっ…んっ。」
やっとのことで、といった声を出すけれど、敢えなく途切れていく。ちらりと青い瞳が見えたがそれもすぐに閉じられた。
ただどうしようもなく感じているらしい、それでも必死で平静を装っている姿が堪らなくて、罪悪感と共に何か違う感情が押し寄せる。

450 名前:竜ファ4:2006/12/11(月) 02:27:16 ID:oLj18b2rO
聞こえなかった振りをして行為を続行すると、ファウストの目に涙が滲んで少し青色が濃くなった。決して小さくはない罪悪感が募るが、俺の手は止まらない。
軽く爪を食い込ませると、泣きそうな声を上げた。

俺も頭に血が上っていたんだろう。しばらく、と呼べる程の時間が過ぎても俺は状態を維持するどころじゃなく、もっと深いところに届きたいとまで思っていた。
「…ファウスト。」
ぐったりしたファウストがとろんとした、涙ぐんだ目を向ける。
どれだけ抵抗しても与えられ続ける快感に最早無駄だと悟ったのか、平然を装う努力はしなくなっていた。それでも必死でシーツを掴んで、感情を分散させようとしてはいたが。
「その…もっと気持ち良くしてもいいか?」
「え…?」
思考が停止状態になっているらしく、ぼーっとしたまま返事はない。それをいいことに、ファウストを抱き起こすようにして体制を変えた。背面座位に近い形になる。
まだよく状況が把握できていないファウストの体の下の方に手を伸ばした。既に勃っているものに触れる。
「ひっ!?」
流石に我に返ったような声を上げ、硬直する。浴衣の上から軽く擦ってやると喘ぐような声を出した。


451 名前:竜ファ5:2006/12/11(月) 02:31:14 ID:oLj18b2rO
乱れた浴衣の中に手を滑り込ませて直接触ると、既に先走った液でぬるぬるしているのがわかる。
「りゅ、竜クン…。これは、」
「言うなって。」
ファウストの言を遮った。もうこの行為は完全に指圧の範疇を超えている。ファウストは恥ずかしそうな、困ったような顔をしていた。
でも抵抗しないってことはもういいということなのだろう。ファウストのものを握った手を動かした。
「あっ…。」
徐々に勢いを強くする。ぐちゅっと淫らな音をたてる。ファウストの口の端を唾液が伝った。
「いっ、嫌だ…ぁっ。」
ファウストの頬を涙が一筋落ちる。
金色の睫も、柔らかそうでその実触れたことは無い金髪の先端をも濡らした。でもそんなことには構いやしないで、俺はただこいつが乱れた所を見たくて手を動かす。
こいつを気持ち良くさせる事なんかより、そっちの方を優先させていた。全くもっておかしいと思う。
男同士なのに、美少年なら兎も角こいつは俺より年上なのに。愛している奥さんもいるのに、それが更に俺の罪悪感を膨らませた。
恐らくファウストも同じようなことを思っているのだろう、いやそれとも何も考えられないのかもしれない。
俺がぐるぐる色んな事を考えている間にも俺の手は動いているし、ファウストは絶頂に近づいていく。

452 名前:竜ファ6:2006/12/11(月) 02:36:40 ID:oLj18b2rO
「あ、あっ…竜クンっ、」
「どうした?」
尋ねても返事は返って来ない。耐えきれず、腰を動かすのがわかった。行動とは裏腹に閉じられた目からは涙が溢れている。
ぐちゅぐちゅと、絡み付く様な音がやけに大きく響いた。声を出したくないのか、自らの細い腕に噛み付く。
そして、ファウストは達した。熱い白い液体が浴衣もこいつの体も俺の手も汚した。


正気に返ったファウストは呆然としていて、羞恥に打ちのめされて泣くことも出来ない様だった。俺は酷い罪悪感と背徳感に苛まされていた。
ファウストがか細い声で竜クン、手を汚してしまって申し訳ありまセン、と言った他に会話は無く、重苦しい沈黙が漂っていた。
ファウストの頬の涙の跡と腕に付いた噛み傷と、ファウストの浴衣の染みと乱れた布団と、俺の手に付着しファウストの腿を伝う固まりつつある白い液体が全てを物語っていた。
俺が謝るタイミングを模索していると、ファウストがすっと立ち上がった。
「…お風呂にもう1回入ってきます。」
ふらふらと歩く。足元には事の最中大人しくしていた忠犬の姿があった。主人を気遣うようにキュウーンと鳴く。
…そうか、そういえばあいつが居たのだ。よろよろと部屋から出ていく直前、責めるようにあの犬が俺を見やった気がしたが、俺は気の抜けたように座ったままだった。


453 名前:竜ファ7:2006/12/11(月) 02:37:49 ID:oLj18b2rO
第一あの犬の目は空洞だから俺を見たのかどうかも定かでは無い。俺は俺でどうにか処理しなきゃな、と自分のすっかり勃ち上がったものに触れた。
でも今はどう処理しようがあいつの事しか浮かんで来なくて、罪悪感が増すばかりなのだった。

454 名前:竜ファ:2006/12/11(月) 02:42:01 ID:oLj18b2rO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )
なんか暗くなってしまった…。
でもこいつらはほんとにいいコンビだと思うよ。大好き。
読んでくれた人達ありがとう。

455 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 14:34:49 ID:V7qTuiGL0
元ネタなんなんだろうと考えてたら
懐かしのあれか!おもい出せなくて参った。

456 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 18:13:49 ID:7hOByTwn0
竜ファはもちろんフランケンシュタイニーにすら萌えたよ!(*´Д`)ハァハァ

457 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/11(月) 20:45:33 ID:iUav+KSV0
   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 昨夜のnumb*3rsスラの続きだよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 相変わらず兄弟やおいだってよ 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

そんなわけで後編です。相変わらず痛いです
ここをきっかけに狐に加入してくれた人までいるとは…嬉しい!
原作そのものがホモホモ兄弟エピソードで構成されているので
こんなフィクなんかよりずっと萌えるはず。楽しんでください。



458 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 11:2006/12/11(月) 20:47:04 ID:iUav+KSV0
 

 まずはト゛ンのように携帯の電源を切り、チャ―リーはひたすら海辺の通りを歩き続けた。
たまにト゛ンが追いかけてきているかと思って振り向いてみたり、似た外見の人間を見かけ
ると足を止めてみたりしたが、ト゛ンはいなかった。帰りたい、とチャ―リーは思った。カ
リフォルニアのあの家に帰り、ガレージにこもって数式を解き、すべてを忘れたかった。
 この関係を続けることをト゛ンは望んでいないのは、もちろんわかっていた。数ヶ月前、
ガレージでト゛ンと寝た直後から、ずっとそれは理解していた。でも続けることが自分にと
って必要なのも事実で、だからこそチャ―リーはこの数ヶ月一番苦手な種類の努力を重ねて
きた。ト゛ンにキスやセックスを強請り、みっともない脅しを掛け、懇願までした。そのた
びにプライドも傷ついたし(相手が自分を必要としていないとわかっていて、自分から身体
を差し出すことの苦痛をト゛ンは理解していないだろうといつも思う)、何より嫌なのはト
゛ンが困惑した表情を毎回向けることだった。
 だが、その苦痛を差し引いても、ト゛ンと身体を重ねる時間は素晴らしかった。ト゛ンの
手のひらや唇が肌をさ迷い、名前を耳元で呼ばれると、あまりに幸せですべてを忘れた。た
まにト゛ンが見せる微笑、そのときに目尻に浮かぶ皺、誠実で愛情に満ちたあのまなざしが、
チャ―リーにとってはすべてで、ほかのものなど必要なかった。それなのにト゛ンはアミー
夕や、あまつさえト゛ン以外の男との――ト゛ンはチャ―リーが男性への欲望に耐えかねて、
一番身近な若い男としてト゛ンを選んだとでも思っているのだろうか?――との関係を勧め、
チャ―リーをひどく傷つけた。
 

459 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 12:2006/12/11(月) 20:48:36 ID:iUav+KSV0
 自分が無神経だということをわかっていない、と今またチャ―リーは、街灯に照らされた
砂浜を歩きながら思った。ト゛ンは確かにいつだって「まとも」だ。しかしそうではない人
間について、理解できているとは思えない。チャ―リーにだってト゛ンが望むような存在に
なりたいという思いはある。小さな頃からずっとある。でもなれないのだ――ト゛ンが望む
ような弟には未だになれない。だがト゛ンはそれでもチャ―リーは唯一無二の弟で、代わり
はいないと言ったではないか?それなら何故ありのままのチャ―リーを受け入れようとしな
いのだろう?せめてその在り方を認めるくらいはするべきではないか?
  チャ―リーは苛々しながらにぎわっている通りを見た。この街にはビーチの他にカジノが
ある。そしてチャ―リーは賭け事が得意だった。当たり前だ。彼は賭けるのではない。計算
するだけだ。馬鹿げている、とチャ―リーはいつものように大勢の人間が夢中になる賭け事
について思った。ギャンブルにあるのはスリルではない。単なる統計だ。
 

460 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 13:2006/12/11(月) 20:49:24 ID:iUav+KSV0
 財布に入っている金額を確かめてから、小さなカジノに入ると、チャ―リーはまっすぐル
ーレットのテーブルに向かった。ポーカーやクラップスでは簡単すぎる気がした。彼はテー
ブルの側で、まずはディーラーがルーレットを回すのを何度か観察し、そのディーラーの癖
や戦略を見抜いた。そしてテーブルに参加し、注意深く賭け始めた。
 一時間経つ頃にはト゛ンと二人で地球の裏側に旅行できるほどの金額が手元にあった。チ
ャ―リーはその成果にではなく、自分の理論が正しいことに満足をしながら、ふと顔を上げ
た。テーブルから少し離れた席で、チャ―リーより少し年齢が上に見える男がじっと彼を見
つめている。ト゛ンのようなダークヘアではないが、ト゛ンのように短髪で、筋肉質の身体
をしており、ト゛ンみたいに清潔で誠実そうに見える。FBIでよく見かける、ト゛ンやト゛ン
の同僚のような、学者とは違う種類の知的な面立ち。チャ―リーは数秒彼を見返してから、
すぐに目を伏せてテーブルのコインを換金するために寄せ集めた。
 換金を終えてカジノを出るとき、チャ―リーはもう一度さっきの男がいる場所を振り返っ
た。彼はまだギャンブルに参加せず、チャ―リーの方を見つめていた。チャ―リーは躊躇っ
てから足を止めた。すると彼はゆっくりと歩み寄ってきた。

461 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 14:2006/12/11(月) 20:50:18 ID:iUav+KSV0
 フィラデルフィアのホテルに戻るころには、夜明けも近くなっていた。ドアの前でベルを
鳴らすと、すぐに扉が開き、やりきれない表情のト゛ンに迎えられた。「携帯電話の電源を
切ったな」
 「ト゛ンだって切ってるんじゃないの?」
 そう言ってチャ―リーは兄の側を通り抜けて部屋の中へ入った。ひどく疲れていたし、ト
゛ンに会うのが怖かった。だが一方でト゛ンがちゃんとホテルにいてくれてよかったと思っ
た。もし自分を見限って先に帰られたりしたら、本当に傷ついていただろう。
 話さなければいけない、とチャ―リーは思った。ト゛ンはTシャツにボクサーという姿で、
寝るための準備はしていたようだが、寝ていないことは顔をみればわかった。まぶたの辺り
が落ち窪んで、疲れが伺える。
 ベッドに腰を掛けて、ト゛ンを見上げると、彼はため息を吐きこめかみを揉んでから、少
し離れたところにある椅子に座った。そして弱弱しい声で言った。「一体一晩中どこへ?―
―もう四時だぞ」
 「カジノに行ってたんだ……」
 チャ―リーは小さな声で言ってから、ちらっとト゛ンの表情を伺った。ト゛ンは頷き、そ
れからまた息を吐いた。「心配する」
 「ごめん」
 「もういい。寝ろ。ひどい顔してるぞ」
 ト゛ンはそう言って手を振り、立ち上がってミニバーにある酒を手に取った。そして小さ
なウォッカの瓶を一気に開けると、ごみ箱に投げ捨てて繰り返した。「寝ろ」
 「ト゛ン、ごめん」
 不安になってチャ―リーは腰を上げかけた。するとト゛ンは顔を顰めてそれを遮った。「
――どうしろっていうんだ?!俺はお前の兄なんだぞ!お前のことを放っておけない。チャ
―リー、お前にはわからないかもしれないが、俺はお前に対して義務がある。幸せになって
ほしいんだ。間違った人生を歩ませたくない」

462 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 15:2006/12/11(月) 20:51:36 ID:iUav+KSV0
 「――他の恋人を見つけろっていうから、僕だって努力してる」
 チャ―リーは震えた息を吐きながら言った。ト゛ンが驚いた顔でチャ―リーを見た。それ
を見返しながらチャ―リーは続けた。「ちゃんと、言われたとおりに努力してる。アミー夕
ともいい感じなんだ。前は彼女のこと、なんとも思ってなかったけど、そういうのも悪くな
いって感じてきた。昔は恋人なんてもう必要ないって思ってたんだ。これからの人生は研究
に捧げたいって。でも、ト゛ンとFBIの仕事に関るようになってから、少しそういうことの価
値がわかってきた。友達も増えた。――僕の側にいるのは、前は学者や研究者ばっかりだっ
たんだよ。例えばデイヴィッドみたいなFBIにいるようなタイプなんて、全然周りにいなかっ
た。ああいういかにもタフガイっていうか、実際的なタイプはね。でもああいう友達もいい
なって思うようになった。数学的な話をできない友達も。ちょっとずつ世界は広がってるん
だ。全部ト゛ンのおかげだよ」
 チャ―リーが一気に言うのを、ト゛ンはぽかんと口を開けて見ていた。そして暫くしてか
ら頷いた。「……それはよかった」
 ト゛ンはよかったと繰り返し、またミニバーに手を伸ばして酒を取った。そしてウィスキー
を舐めながら、まぶたを手の甲で乱暴に擦った。 
 チャ―リーはじっとそれを見つめた。小さな頃から何度も繰り返したように、兄を注意深
く観察し、疲労しきった表情の中から感情のかけらを探し出そうとした。ト゛ンはこめかみ
を揉みながら言った。
 「……お前はいい人間だよ。賢いだけじゃなく柔軟性があって、思いやりもある。友達だ
ってもっとできるし、恋愛だってまだまだこれからできる。わかるか?俺を最終点にするべ
きじゃない。もっと広い世界があるんだ」
 それを聞いてチャ―リーは喉元が熱くなるのを感じた。きっと一生自分たちはわかりあえ
ない、と思った。でもやはり、目の前で疲れと困惑を持て余しているト゛ンが好きだとも。
小さな頃と同じように、いやむしろ一層強く、ト゛ンのことを愛していると思った。チャ―
リーは泣くまいとしながら、視線を下げて言った。
 

463 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 16:2006/12/11(月) 20:52:33 ID:iUav+KSV0
 「――もしそうなれたら、それは全部ト゛ンのおかげだよ。わかる?ト゛ンがいるからな
んだ。ねえ、僕はこの先、ト゛ンが望むとおりに恋に落ちるかもしれない。ト゛ン以外の誰
かと恋愛して、研究と家族のほかの人生もあるって知るかもしれない。友達もたくさんでき
て、いろんなことを理解して。でもねト゛ン、それはト゛ンがいるからだ。ト゛ンを基点に
しているから存在する可能性なんだ。もしト゛ンを失ったら、僕はもうきっと……何もでき
ない。一番最初にあるのはト゛ンで、最後もト゛ンなんだ。わかってよ……」
 嗚咽が零れ、チャ―リーはそれを押さえようと手のひらで口を覆った。変われない、と思
った。この先何があっても、ト゛ンより大きな存在は自分の中には現れないだろう。ト゛ン
がどんなにそれを望んでも、永遠に。
 「……子供じみてるかもしれないけど、それが僕なんだ。ごめん」
 「チャールズ」
 ト゛ンがウィスキーの瓶をテーブルに置き、ベッドに歩み寄ってきた。傍らに腰を下ろし、
硬い、鍛えられた手で肩を擦る。チャ―リーはその手のひらの温かさに促されるようにして、
何度もト゛ンの名前を読んだ。
 「チャ―リー、もういい。泣くな」
 「――僕は変われない。変わることを望むなら、振ってくれたほうがいいんだ。応えられ
ないのは仕方ない。……傷つくけど、それはト゛ンの意思だろ?でも、受け入れるふりをし
て変わることを望むのはやめて」
 そう言ってから、チャ―リーはふっと息を吐き、間近にある兄の顔を見上げた。「我侭言
ってるかな?」
 ト゛ンがその言葉に微かに目を細め、苦笑した。「そうかもな。――いや、お前が言って
ることは筋が通ってる。正しいよ」
 「ト゛ン、僕を振る?」
 小さく問うと、ト゛ンが視線を泳がせるのがわかった。「……いいや」
 「弟だから?」
 チャ―リーの言葉にト゛ンはまた苦笑した。そして彼の巻き毛を撫でてから、肩を竦めた。
「そうかもしれない」
 「……一生振られないなんて、弟に生まれて得だよね」
 冗談めかして言うと、ト゛ンは目を伏せた。「俺が悪い。お前を傷つけたくない。何でも
してやりたい。でもそれがお前の人生に傷を与えてる。わかってるのに、お前が大事だから
手放せない」

464 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 17:2006/12/11(月) 20:54:00 ID:iUav+KSV0
 「――傷じゃないよ、ト゛ン」
 呟くようにチャ―リーは言った。ト゛ンはそんな弟を見つめてから頷いた。「わかった」。
チャ―リーは頷き返してから、ホテルの広い窓を見つめた。高層ビルの群れの向こうに、日
の出を迎える水平線がかろうじて見える。チャ―リーは掠れた声で言った。
 「……ピタゴラスがね、無理数を隠したんだ。知ってる?古代ギリシアにいた人だよ。彼
は偉大な定理をいくつも発見し、数字によって世界は支配されていると考えていた。そして
世界の理を読み解くためには数字が鍵となるとも思った。そんな彼にとって、無理数の存在
はあってはならないものだったんだ」
 「……無理数?」
 訝しげにト゛ンが問う。チャ―リーは頷き、微笑んでから説明した。「πみたいな……ほ
ら、円周率だよ。ああいう、分数でも表せない数字。同じパターンが繰り返されることもな
く、永遠に少数の羅列が続く数字のこと。それをピタゴラスの弟子があるとき発見したんだ
けど、ピタゴラスはそれに動揺して、その弟子を殺してしまったんだ。無理数は彼の世界観
を覆すものだったから」
 ト゛ンは肩を竦め、そして黙った。チャ―リーはそれを見てまた微かに笑った。こうやっ
ていつまで経っても数学者との会話に慣れないト゛ンが好きだと思った。彼は会話を続けた。
「僕はね、無理数が好きなんだ。無理数って、すごくたくさんあるんだよ。有理数――分数
で表せるような数字のことだよ――より多いんだ。この世界にはたくさんそういう数字があ
って、例えば黄金比だってそうだし、とにかく謎めいていて素敵だと思うんだ。だって無限
に続くんだよ!まるで数字が生きているみたいじゃない?世の中が有理数だけで成り立って
いたら、つまらないよ」
 「――読み解けないものが好きだなんて意外だな」
 ト゛ンの呟きにチャ―リーは首を傾げた。「そうかな?」
 「もっと明確に答えが出るものが好きだと思ってた」
 「――逆に言えば、もしかしたら僕が一番最初に謎を解けるかもしれない。それって素敵
だろ?……それに間違いという現象はないって考えが、僕は好きなんだ。人の解釈に誤りが
あっても、現象自体には常になんらかの意味があると思いたいんだ。しかも終わりがないん
だよ。……理解しがたくても、永遠に続くんだ」


465 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 18:2006/12/11(月) 20:55:45 ID:iUav+KSV0
 「……なるほどな」
 言わんとしていることが伝わったのが、ト゛ンが静かに頷いた。チャ―リーはほっとして
ト゛ンの肩に頭を預け、数時間ぶりの彼の匂いを感じた。温かい肌や呼吸を感じていると、
髪をまた撫でられ、続いて指先が頬を掠めていく。視線を上げると、ト゛ンは穏やかな目を
していた。チャ―リーはそれを見て、躊躇ってから言った。「――今日のことだけど――こ
こに帰ってくるまで、知らない男といたんだ」



 「……何?」
 頬を撫でていた指先が止まり、ト゛ンの身体が強張ったのがわかった。チャ―リーは冷や
汗が浮かぶのを感じながら繰り返した。「知らない男と過ごしてたんだ。カジノで会ったん
だよ。声を掛けてきて……」
 ト゛ンが勢いよく立ち上がり、こぶしでテーブルを叩いた。「どういう意味なんだ?」
 チャ―リーは乱暴な仕草に肩を一瞬揺らしたが、落ち着くように自分に言い聞かせた。「
わかるだろ?……ト゛ンが、ト゛ンが言ったとおりに努力しただけだよ。他の男とデートし
ろって言った。だから……」
 「四時までデートしてたっていうのか?知らない男と?チャ―リー、正気なのか?」
 もう一度ト゛ンがテーブルを叩き、チャ―リーもまた肩を揺らした。ト゛ンはファックと
呟き、それから天井を見上げ、すぐに視線を戻した。「寝たんだな?」
 チャ―リーは躊躇ってから目を逸らした。「どうして怒るんだ?ト゛ンが望んだことじゃ
ないか」
 「――くそっ!」
 ト゛ンは怒鳴り、それからうろうろと歩き回り、テーブルにあったウィスキーを飲み干し
た。そして繰り返した。「くそっ」
 「……怒るのはおかしいよ」
 小さな声で指摘すると、ト゛ンは大げさに頷いた。「ああ、そうかもな。だけど、なんだ
ってお前は――自分がやったことをわかってるのか?チャ―リー、俺の目を見ろ。お前は本
当に……」
 ト゛ンに肩を掴まれ、無理やり視線を重ねられた。チャ―リーが怖くなってすぐに目を逸
らすと、ト゛ンはもう一度目を見ろと言った。チャ―リーはそれに従わずに、ト゛ンの腕を
宥めるように擦った。「ト゛ン、怒らないで」

466 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 19:2006/12/11(月) 20:56:59 ID:iUav+KSV0
 ト゛ンはその手を振り払いながら言った。「怒ってなんかいないさ。だけど答えてみろよ。
昨日俺たちがしたようなことをしたって言うのか?知らない男と?」
 チャ―リーは俯いた。ト゛ンの手のひらは熱く、吐息に酒の香りが混じっている。答えが
ないことに苛立ったのか、ト゛ンはチャ―リーの肩をもう一度掴み、ベッドに押し倒した。
チャ―リーの脚の間にト゛ンの身体が滑り込み、それに驚く間もなく耳をきつく噛まれたの
で、思わず声を上げると、ト゛ンが名前を読んできた。「チャ―リー」
 ト゛ンの目には怒りとそんな自分への戸惑いが滲んでいて、それを見たチャ―リーの胸に
は罪悪感が浮かんだ。彼は手を伸ばし、ト゛ンの短髪を撫でてから言った。
 「……怒ってる?」
 「怒ってるわけじゃない。ただ……ただ……」
 ト゛ンの手が震えている。チャ―リーは唇を引き結んでから、すぐに開いて言った。「好
きだよ。怒らないで。……嫌わないで」
 そういってチャ―リーはト゛ンを抱き寄せた。ト゛ンの唇がじれったげに頬や首筋を掠め、
それからチャ―リーのそれに重ねられる。舌が咥内をかき回し、チャ―リーは場違いにもト
゛ンはやはりキスが上手いと思った。乱暴に服を脱がされ、いつもよりずっと恥ずかしい姿
勢を取らされ、貫かれたときにはチャ―リーも極度の興奮でわけがわからなくなっていた。
ト゛ンの太く、引き締まった腕に羽交い絞めされるような姿勢で揺さぶられ、そのくせト゛
ンは手でチャ―リーが達するのを妨げて焦らした。チャ―リーは何度もプリーズと言い、声
が掠れる頃にやっと許された。しかもその後も身体の隅々まで観察され、他の人間の痕跡が
ないかを探られた。まるで捜査されてるみたいだ、とチャ―リーは思ったが、事件の捜査な
どよりずっと性的な快感があることは確かだった。
 何度も行為を繰り返すうちに、いつもより乱暴だったト゛ンの手も次第に穏やかな動きを
取り戻し、チャーリは前の晩にもそうしたようにト゛ンの上に跨ってキスを繰り返した。繋
がったままで自分から腰を揺らし、名前を呼ぶと上半身を起こしたト゛ンにきつく抱きしめ
られた。

467 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 20:2006/12/11(月) 20:58:11 ID:iUav+KSV0
 「ト゛ン、僕が他の人間と寝ると、嫉妬する?」
 行為が終わったあとで抱き合いながらチャ―リーは聞いてみた。チャ―リーはそのことが
知りたかった。だがト゛ンは腕を自分のまぶたの上に落とし、呻いてみせた。「どうしてお
前はそうなんだ?」
 「……答えてよ」
 言うと、ト゛ンが眉を上げてみせた。事件が行き詰ったときによくそうするように、指先
で眉間を擦り、ため息を吐いてみせる。
 「知りたいんだな?チャ―リー」
 「……そうだね、知りたい」
 小声でチャ―リーは肯定した。例えばチャ―リーはト゛ンが他の誰かと寝るのを想像する
と、何も食べたくなくなる。胃が痛み、ト゛ンをどこかに閉じ込めてしまいたいとすら思う。
そういう感情がト゛ンにもあるのか、知りたいと思った。
 ト゛ンは長い息を吐き、それから頷いた。「嫉妬する。これで満足か?」
 「――自分にとってそれが苦痛なのに、僕にそれを勧めるのは何故?」
 弟の言葉にト゛ンはまたため息を吐いた。「お前のためになると思うからだ」
 でもそれは決して、会ったばかりのやつと簡単に寝ることじゃない。それは違う。わから
ないのか?心配になるんだ。苦い声で言われ、チャーリーはせわしなく頷いて受け流した。
 「僕のことを思って我慢してるの?僕は僕のためになるはずのことをすると、ト゛ンに苦
痛を与えるってこと?」
 「――黙れチャ―リー。もう話したくない。あと数時間でホテルも出なきゃいけない。昼
近いんだぞ。もう俺は……とにかく眠りたいんだ」
 ト゛ンはそう言って目を瞑った。長年の経験から、これ以上話しても無駄なことはわかっ
ていたので、チャ―リーは話しかけるのをやめた。その代わり眠らずに、ずっとト゛ンを眺
めていた。ドンは何度も寝返りを打った。チャーリーは彼もまた眠っていないことを知っていた。
 ト゛ンには悪いと思ったが、チャ―リーは幸せだった。彼は少し泣いた。



468 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 21:2006/12/11(月) 20:59:58 ID:iUav+KSV0
 夕方に飛行機に乗る前に、ト゛ンとチャ―リーは踊った。郊外の小さなレストランで。誰
か見てるかもよ、とチャ―リーは言い、ト゛ンは誰か見てるかもな、と弟の言葉に頷いてみ
せた。二人のステップはちぐはぐで、決して息が合ってるとは言えないものだったので、ト
゛ンは顔を顰めた。「これはもう既にダンスじゃない」
 「いいだろ、別に。僕は楽しいよ」
 そう言ってターンをすると、ト゛ンが苦笑したのでチャ―リーもほっとして笑い返した。
ダンスは確かに不恰好で、チャ―リーもこれだったら二人で事件を解決する方がずっといい
と思った。お互いの足りないところを補い合え、やはりちぐはぐに見えるときはあるかもし
れないが、最後には息の合ったところを周りにも見せられる。FBI捜査官のト゛ンと数学者の
チャ―リー。こんなコンビは他にいない。まるでドラマのヒーローたちのようではないか?
 踊りながらト゛ンがチャ―リーを見る目には、やはり悲しみとぎこちない愛情が見え隠れ
し、チャ―リーはきっと自分がト゛ンを見るときもそうなのだろうと思った。お互いへの愛
ゆえに負い目を感じ、これは正しくない形の愛なのだとも思い、相手のために正しさを追求
しながらも、お互いへの愛も捨てられない。だが何が正しいかなど、誰にわかるだろう?普
通の兄弟がどんなものかを決めるのは誰なのか?ト゛ンとチャ―リーがその規範に収まらな
いことを責められる人間などいるだろうか?
 自分たちは兄弟で、お互いに代わりはいない。そして少なくとも今この瞬間は、二人とも
幸せなのだ。
 

469 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 22:2006/12/11(月) 21:01:05 ID:iUav+KSV0
 そうは言ってもト゛ンが自分のために苦しむ要素は、少しでも減らしたいと思ったので、
帰りの飛行機の中でチャ―リーは思い切って勇気を出した。「ねえ、ト゛ン」
 「なんだ?」
 眠たげに雑誌を読んでいたト゛ンに問われ、チャ―リーは躊躇ってからわざとらしく微笑
んだ。「あの、実は言わなきゃいけないことがあるんだ」
 「おいおいおい、何なんだ?もうやめてくれ」
 ト゛ンが悲鳴まじりの声を上げ、周囲の乗客が彼に視線を向けたので、チャ―リーは慌て
て声を潜めた。「悪いニュースじゃないと思うよ」
 「嘘を吐け。お前に良い報せをもらったことなんてほとんどない」
 チャ―リーはその言葉にむっとして顎を上げた。「何それ」
 「いつもそうだろ?お前はいつもトラブルをもちこんでばかりで……」
 「――トラブルなんて持ち込んでない!むしろ解決してあげてるだろ」
 思わず声を上げると、また周囲の視線が集まり、近くにいたフライトアテンダントがうず
うずと身体を動かしたので、チャ―リーは我に返ってまた声を潜めた。「――とにかく、悪
いニュースじゃなくて、むしろいいニュースで、でももしかしたらト゛ンが怒るかもってこ
となんだけど……」
 ト゛ンはそれを聞いて雑誌を伏せ、目を眇めた。
 「いいニュースなのに俺が怒るのか?怪しいな」
 「……っていうか最終的には喜ぶと思うよ。ただ衝撃を受けるかもしれないってだけ。だ
から約束してほしいんだけど、怒らないって」
 ト゛ンの片眉が意味深に上がるのを見ながら、チャ―リーは繰り返した。「……怒らない
って約束してくれる?」
 「……聞いていないのにどうやったら確約できる?」
 尤もなことを言われれ、チャ―リーは苛立ちを覚えた。「いいから約束してよ」
 ト゛ンがため息を吐く気配がした。数秒して、彼は言った。「わかった。約束する。だか
ら言ってみろ」
 チャ―リーはごくりと喉を動かしてから、ト゛ンの顔に自分の顔を近づけ、一層声を潜め
て告白した。「昨日の話、嘘なんだ」

470 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟  22:2006/12/11(月) 21:02:21 ID:iUav+KSV0
 「――は?」
 大声で問われ返され、チャ―リーは無意識のうちに身を仰け反らせた。するとト゛ンが素
早く腕を掴み、すぐ側まで引き戻して言った。「嘘?」
 「嘘っていうか、よく思い出してほしいんだけど、僕は言わなかっただろ?セックスした
って。ほら、例の知らない男のことだよ。ト゛ンは誤解、そう誤解してたみたいだけど……」
 ひそひそ声で弁解すると、ト゛ンは信じられないものを見るような目つきで弟を見た。「
誤解?」
 「――悪かったよ。でもほら、知ると気が楽になるかなって思って、やっぱり言わなきゃ
なって……」
 語尾が怪しくなり、チャ―リーはやがて口を閉ざした。隣のト゛ンがじっと見詰めてくる。
彼の眉間にはくっきりと皺が浮かんでいた。
 「ごめんね」
 小声でチャ―リーが言うと、ト゛ンは顔を引きつらせた。「――あれは嘘だっていうのか
?」
 「嘘っていうか、誤解というか」
 「騙したんだな?」
 低い声で問い詰められ、チャ―リーは躊躇った後頷いた。「そう、騙したんだ。ごめん」
 ジーザス。ト゛ンが呻き、飛行機の狭い天井を睨んでからすぐに頭を振った。「何故そん
な馬鹿なことを?お前、俺がどれだけ――くそっ、どうりで跡も何も……」
 「カジノで知らないやつに声を掛けられたのは事実なんだ。だから捏造ってわけじゃない。
ちょっとした演出……」
 「それを言うなら脚色だろ!……信じられない。信じられない!」
 ト゛ンは繰り返し、それから舌打ちをした。「チャ―リー、お前がやったことは馬鹿げて
る上に不誠実だ」
 「ト゛ン、ごめん。でも……でも不安だったんだ。ちゃんと求められているかどうか、ど
うしても知りたかったんだ。僕は……そう、あの男に声を掛けられて、ちょっとだけ考えた
んだ。……つまり、ト゛ンが誤解したようなことを。彼はト゛ンに似てて、感じもよかった
し、なんていうか……誰かに優しくされたかったんだ。わかるだろ?……ト゛ンに似てたん
だ」
 

471 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 23:2006/12/11(月) 21:04:08 ID:iUav+KSV0
 ト゛ンは黙ってそれを聞いていた。チャ―リーは手のひらで座席の肘置きを落ち着きなく
握ったり話したりしながら、話を続けた。「……でもすぐにやっぱり嫌だって思った。だっ
てト゛ンじゃないし。だから結局、朝になる前にホテルに帰ったんだ。他に、他に代わりは
いないんだもの」
そう言ってからチャ―リーは乾いた唇を舐め、それから呟いた。「……ごめん」
 返事がないことに不安を覚えて、チャ―リーは肘置きから視線を上げた。ト゛ンはまだじ
っとチャ―リーを見詰めていた。
 「……怒ってる?」
 その言葉にト゛ンが呆れた様子で瞳をくるりと回した。「当たり前だろ」
 「だけど、他に確かめようがなかったんだよ」
 「――チャ―リー、お前は本当にガキだ。どうしようもない子供だ。信じられない、あん
な……」
 鋭くそう言い、それからト゛ンは唐突に喉の奥から笑いを零した。「本当にお前はガキだ
よ。信じられない」
 身を折り曲げるようにして、くつくつと笑う兄を、チャ―リーはただ眺めていた。チャ―
リーにはどう反応すればいいのかわからなかった。ここで兄が笑うとは思っていなくて、や
はりト゛ンのことはなかなか理解しきれないと思った。
 もっと簡単にト゛ンの行動や感情のパターンを読めたらどんなにいいだろう。チャ―リー
はそう思った。いつかはそういうものを見つけられるだろうか?
 

472 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 24:2006/12/11(月) 21:04:38 ID:iUav+KSV0
 「……僕なりの背理法的証明だったんだけど」
 チャ―リーの弁解にト゛ンは冷たく返した。「言ってろよ」
 「……怒ってる?」
 「当たり前」
 「あのさ、じゃあどうして笑ってる?それって、それって――おかしくない?」
 「おかしいのはお前だ」
 「……嫌いになった?」
 チャ―リーが問うと、ト゛ンは目を細めた。目尻に皺が浮かび、チャ―リーが好きなあの
表情になる。ト゛ンは笑いで涙が浮かんだらしいまなじりを乱暴に擦り、それから言った。
 「自分で考えろ」
 チャ―リーは言われたとおり暫く真剣に考えた。そしてともかくト゛ンが笑っているとい
うことは、嫌われていないだろうという結論を出す頃には、カリフォルニアへの到着も近づ
いていた。その間ト゛ンはずっと、本気で頭を悩ませる弟のことを、笑いながら見つめてい
た。



 終


473 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 21:11:09 ID:iUav+KSV0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ マタテンプレズレチャッタヨ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

暗くて生ぬるい内容になっちゃいましたが
原作のこの二人の視線が絡み合うとき、
特にチャーリーは妙に思いつめた感じの表情のくせに、ドラマ自体は
家族団らん・ほのぼのムードでいつも終わるのが好きなのでした…
長々と失礼!

474 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 21:12:22 ID:UeVv5oUF0
GJ!
いつも知らないものはスルーする性質だったので始めて目を通したんですが、
思わず遡って全部読んでしまいました(*´∀`)

475 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 21:21:53 ID:ydH2re5u0
>473
魔性弟後編ktkrー!!!
1月からの狐視聴が待ちきれないですよ!
ごちそうさまでした!

476 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 21:40:13 ID:WXBkWq/Y0
>>445
亀でごめん。でも書いてくれてありがとう
こいつら大好きなんだ。
また見れたのが嬉しくて目から涎が止まらん。

477 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 22:06:22 ID:WZ2kprSwO
>>473
GJ!すれちがいながらも向き合っていく感じがたまりません。
元ネタ全然知らないんですが、大好きだー!

478 名前:風と木の名無しさん:2006/12/11(月) 22:12:29 ID:21R8t7+a0
>>473
切なくてキュンキュンした でも
最後ほんのり幸せ風味でほっとした
GJ!!!!!!!!!!!!

479 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 00:01:43 ID:dLOU1FH90
>>437姐さんマジでGJ!このドラマ、萌えも燃えも詰まってて大好きなんだ(*゚∀゚)=3
こりゃ、FO.X CRI.M.Eの正月一挙放送がますます楽しみになってキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!

480 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 00:03:42 ID:dLOU1FH90
× >437
○ >473

…スマソ_| ̄|○

481 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 01:38:42 ID:wCVn8x4k0
>>473
萌えすぎる…!一挙放送なら狐C.R.I.M.Eの方を買った方がいいのか

482 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 02:22:09 ID:+lGn6uce0
湧き上がる萌を抑えきれず投下させていただきます。
初投稿です。
至らない点あったら申し訳ないです。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  『一瞬の風になれ』センバ×タカナシ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  脇キャラですみません
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |


483 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 02:23:48 ID:+lGn6uce0
 カズヤ、と。
 400mリレーのゴールに飛び込んだばかりのセンバに、タカナシは声をかけた。
 飛び込んだ。そう、まさしくセンバはゴールに飛び込んだのだ。
 いつもどおりなら、ただ通過すればよかった。王者の貫禄を持って、当然の権利を
行使するようにゴールに踏み込めばよかった。
 それが。
「見たか、マサミ」
 何を言う間も与えられずに、問いを投げられた。日に灼けた肌の中、
燃え立つ瞳をしていた。
「見た」
 4継の四走。リレーが陸上競技の花形なら、そのアンカーは英雄だ。
 その英雄ばかりが集う戦場で、センバは堂々たる王者だった。その権勢を
脅かすものは、いないはずだった。
 それが。
「足音が聞こえた。初めてだ」
 高校総体へ挑む最後の年になって、玉座を脅かすものが現れたのだ。
「驚いたね、まったく」
 飄々とした声で、タカナシはセンバに答える。わずかに垂れた目尻で、
へらりと笑って。
「何が一番驚きかって、一ノ瀬じゃなくてタクアンくんだってことだよねえ」
 もっとも、もうタクアン・ヘアじゃないけど。
 そう続け、タカナシは喉の奥を鳴らした。

484 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 02:26:19 ID:+lGn6uce0
 春野台の二人のエースとは、高校陸上界では、足を踏み入れた頃からの付き合いだ。
おそらく、足を洗うまで付き合うことになるだろう。
 一方は、中学陸上界で有名だった。二年して全中の決勝に進んでおきながら、
そこで陸上をやめた一ノ瀬連。他方は、中学陸上界では無名どころか存在もしていない、
高校から陸上を始めた元サッカー小僧。オレンジ・イエローの髪が印象的だった神谷新二。
だったと過去形なのは、この大会で再会したときには地色なのだろう黒に染められていたからだ。
 一年のときから通した髪色だ。今さら、他者の介入で染め直したりはしないだろう。
ということは、自分から戻したということだ。
 前日の100mの準決勝、タカナシはセンバよりも先に神谷と走ることになった。
そこで、会話したときの感触を思い出す。そして、その二時間後、
決勝で初めて神谷に負けたときの感触を。
「本当に、こわい選手になったね」
「マサミ」
「なに」
「まだ、200がある。それに、あいつらとは関東でもやることになるんだ。
あまり、こわいなんて言うんじゃない」
 センバの言葉に、タカナシはにんまりと笑んだ。
 追い上げられた事実は、センバに悪い影響を残してはいない。もう、いつものセンバだ。
「200かぁ。準決勝で神谷と一緒にならないように、今から祈っとこう」
「マサミ!」
 タカナシの発言を消極的なものと捉えたセンバが、声を張り上げる。

485 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 02:27:46 ID:+lGn6uce0
「やだよ、おれは。カズヤになんて言われても。走るなら、決勝でいいよ。誰かがあいつに、
流すって言葉を教えてくれたら別だけどね」
 あんなガツガツやられたらまいっちゃうよ、とタカナシは笑う。
 驚異の成長の裏には、きっとそんなこともあるのだろう。
試合での一本一本に、手を抜かない。
 真剣に、予選から走ってくる。
 そのことが、神谷の糧になっているのだろう。
 そうは思っても、タカナシにはできない走り方だ。
「マサミ」
 センバの声に、深みが増した。
 タカナシの言葉に、神谷の走りを思い出したのだろう。後半、神谷に追い上げられたことを。
 近づいてくる、足音を。
「今日、うちに泊まれ」
 深みを増した声で、耳元に囁かれる。他の誰にも、
4継メンバーである堺田にも聞こえないように。
「……りょーかい」
 常と変わらぬ声で、タカナシは応えた。

486 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 02:28:59 ID:+lGn6uce0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


生ぬるくてすみません。
伏せ忘れすみません。
スレ汚し失礼いたしました。

487 名前:風と木の名無しさん:2006/12/12(火) 20:47:36 ID:2emhSprU0
>411
キムから姐さんブラボーーー!!
階段、まっていました〜
私はこんなジレジレした二人にも萌vvvv
GJですたvvv

488 名前:1:2006/12/13(水) 22:37:25 ID:RL/k9R6W0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )

「ヤマダタイチの奇/跡」の火の玉男×遊び人
本編開始より一年前くらいの大捏造。4レスほどお借りします。

 これは、やるか、やられるかの真剣勝負だった。負けるわけにはいかない。集中しろ、流れを読め、あせらずに
間合いを取れ。
 八/木沼は深呼吸すると、おもむろに告げた。
「タイム、ターイム!」
「はぁ?」
 ともに卓を囲んでいた連中が殺気だった形相でこちらを見るが、八/木沼はへらへらした顔で、
「トイレだよ、トイレ。このままじゃ漏れちまう」
 とさっさと立ち上がり、手のひらをひらひらさせながらそそくさと部屋を出てこうとする。
「てめえ、勝ち逃げだけはゆるさねーかんな」
「さっさと戻ってこねーと、どうなるか分かってんだろーな」
 などという軽い罵声を背中に浴びながら。
「うう、さぶっ」
 廊下に出た瞬間、八/木沼は軽く震える。まったく、春とは名のみの風の寒さときたものだ。
 卓を囲んで牌を打っていた時には気にも留めなかったが、廊下に出るとばらばらと雨粒が激しく窓を叩いている。
この大雨のおかげで、練習もそこそこに八/木沼たちは喜び勇んで麻雀大会を開催することが出来たのだった。
 さっさと用を足した後、急ぎ足で大会会場へと戻ろうとする八/木沼は、向かいからゆっくり歩いてくる人影に気づいた。
「よう、八/木沼」
 少しでもはやく卓に戻りたかったが、呼び止められて仕方無しに立ち止まる。
「ナンですか、監督」
「麻雀大会開催中らしーな。その様子だと本業とは違って大絶好調みてーだな」
「えへへへへぇ」



489 名前:2:2006/12/13(水) 22:38:41 ID:RL/k9R6W0
 プロ意識皆無の最低最悪選手と評されることにすっかり慣れっこになっている八/木沼も
さすがに後ろめたさを感じたのか、わざとらしい笑い声を立てる。相手は肩をすくめ、顎を撫でた。
「まあ、今すぐやめろなんて野暮なことは言わないけどよ。すってんてんにされたって泣きつかれる
こっちの身にもなってみろってんだ」
 その言葉に、盛り上がってきた大会途中に乱入してきた男のことを八/木沼は思い起こし、
軽く眉根を寄せた。
「いきなり下着姿の中年男に泣きべそかかれて、こっちは大変だったんだからな。いろいろ」
 その言葉に八/木沼はぐにゃりと笑みを崩し、困惑の表情を浮かべる。
 口やかましく正論を吐き麻雀大会阻止を図る大友を舌先三寸で丸め込み、卓に引き込んだのは
他ならぬ彼自身。
「だって、金品かけるのはご法度ですからねえ。ちょっと趣向を変えて脱衣麻雀しただけ……」
 そして、さんざんカモにした挙句、口うるさいコーチどのに退場願ったのだった。せめて下着を残したのは武士の情け
というものだ。しかし、あのままの姿で監督に泣きつきに行くとは計算外だった。その場の様子を想像しかけ、八/木沼は
あわてて首を振ってその妄想絵図を振り払う。
 その不意をつかれた。ぐいと力強く右手首を引かれて、つんのめった。一瞬、背筋に冷たいものが走る。そのまま彼の
胸の中に抱き寄せられるかのような錯覚を覚え、八/木沼は反射的に踏ん張り、腕を引き放そうと試みた。だが、彼の
大きな手のひらはしっかりと掴んだまま離さない。そのまま、ぐいと顔の間近まで手のひらを引き寄せると、
じっくりと値踏みするかのような視線を八/木沼の右手に向けた。


490 名前:3:2006/12/13(水) 22:40:18 ID:RL/k9R6W0
 やがて、彼の左手が軽く握られていた八/木沼の手のひらを開かせる。冷や汗に濡れた手のひらの上を彼の節くれ
だった指がゆっくりと這う。じっくりと皮膚の感触を味わうように。指が、手のひらが、触れて、重なっていく。手のひらを
密着させ、強引に指を開かせ、こじ開け、互いの指と指を絡らめる。
 八/木沼より背は低いものの、彼の手のひらは大きく力強く、重ねた年月の重さを感じさせる。
 ぴったりと手のひらを密着させたまま、二人は無言を貫く。
 強引な仕草と伝わる肌の熱さは彼の気性をそのままに表していたが、その意図するところが八/木沼には掴めない。
自分が緊張しているのか、脅えているのか、それも分からない。ただ、されるがまま、早鐘のように鳴る心臓の音が
時を刻み続けた。
 相変わらず、雨の音が響いている。止む気配はまったく無い。
「まったくらしくねぇ、手のひらだよな」
 その声に、八/木沼はようやく我に返る。腕の自由を奪われたまま、鋭い視線に射抜かれる。
彼の口調は冗談めかしていたが、決して瞳は笑ってはいない。その感情を押し殺した瞳の中に隠されたものは
一体なんなのか。
 軽く身じろぎすると、それに合わせて彼は一気に間合いを詰めてきた。
 唇が、耳たぶに触れるか触れないかというところまで近づく。
「やったら柔らかくて、これじゃあまるで箸より重いものなんて持ったこたぁねえって手だ。これがプロで飯食っていく男の手かよ」
 お前の実力に見合った手か?
 押し殺した低い声、吐息とともに注ぎ込まれる言葉が、八/木沼を嬲る。
 突如として生じた胸の中のわだかまりに八/木沼は顔をしかめた。

491 名前:4:2006/12/13(水) 22:44:25 ID:RL/k9R6W0
 不快、不愉快? 違う。率直に痛いところを突かれたという思いと、そして……不可解な感情。
けれども、八/木沼は己の中に生じたその感情と向き合うことを無意識に避け、湧き上がる戸惑いをごまかそうと、
わざとらしい笑い声を立てた。
「は、はははは。そーんなに柔らかいですか?」
 おどけるように手のひらを広げて、これ見よがしに人差し指を指し示す。
「ほらほら、人差し指のとこに立派なタコがありますよ」
「バーカ。そりゃあ、おめえ、麻雀ダコってやつだろーが」
 先ほどの態度とは打って変わって一瞥もくれずに彼はそう言い捨てると、くるりと背を向けて引き返していく。
足早に去っていく背中はみるみるうちに小さくなっていく。その姿が角を曲がって消える前に、八/木沼は俯き
、己の手のひらを見つめた。
 らしくない、手のひら、か。
「……でも、まぁ、これが俺らしいと思うんだけどよ」
 誰に向けられたものでもない言い訳めいた呟きは、相変わらず土砂降りの雨音に紛れて消える。
 八/木沼は手のひらをぐっと握り締め、乱暴にポケットに突っ込んだ。手のひらを合わせた時の熱が生々しく残り、
掴まれた手首がずきずきと疼き続けている。
 冷え切った空気が身体を蝕んでいるはずなのに、彼に触れられた部分全てが熱くてたまらなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

勢いはあっても、萌えを形にするのは難しい…。

492 名前:風と木の名無しさん:2006/12/14(木) 00:31:47 ID:Q6Hq4Lbh0
>>488
うわあああああ!
現在萌えてやまないカプがここに!!!ありがとう!ありがとう姐さん!!
監督×八/木/沼エロス…!大/友コーチカワイソスw
ツボすぎて萌え死ぬ寸前です超GJです!

493 名前: ◆V9X8M0rLH2 :2006/12/16(土) 06:15:35 ID:vc09n1Wn0
・ヤングマガジンで連載中の漫画。
・エロくない。
 ____________
 | __________  |   
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | | 
 | |                | |           ∧_∧眠れないから書いた。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 後悔はしてない。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


494 名前:@ ◆V9X8M0rLH2 :2006/12/16(土) 06:16:35 ID:vc09n1Wn0
 目の前を、親子が通り過ぎて行く。
「今日、晩御飯何にしよっか?」
「カレー!」
「カレーは昨日食べたじゃない」
「じゃあ、ラーメン!」
「ラーメンねえ……むむ」
 ほほえましい親子の情景。
 親子、か。
 どこか遠いものを見るような目で、おれ、四月−日君尋はその親子の後ろ姿を見送った。
「ふう」
 現在時刻、五時十五分。校門前になぜおれが突っ立っているのかというと――

「四月−日」
「なんだよ」
「今日、一緒に帰るぞ」
 昼休み――一緒にメシを食べていたら急に、思いついたようにあいつ、百日鬼静は言った。
「はあ!? なんでおまえと」
「今日、九軒居ないだろ。だから」
「や、別におれひとりでも帰れるし」
「いいから。校門前で待ってろ。おれは放課後、用事を片付けたらすぐ行くから」
「ちょ、勝手に決めんなよ」
「ん……この卵焼きうまいな」
「そうだろう! わざわざこの四月−日様が朝一で養鶏場から取ってきた卵だからな!」
「そうか」
「そうか、じゃねえ! ツッコめよ! わざわざ朝一で養鶏場まで行って取ってくるわけねえだろうが!」
「違うのか?」
「ちげえよ!」


495 名前:A ◆V9X8M0rLH2 :2006/12/16(土) 06:18:11 ID:vc09n1Wn0
 …………。
 ちょっと回想長すぎたな。まあいいや。
 そんなわけで、おれは断ることができなかったので、仕方なく……そう、仕方なくだ! 
校門前であいつを待っているのだった。
「ていうか遅えよ。何やってんだあの馬鹿……」
 ちなみに今日のバイトはなし。つーか当分なさげ。
 店主から、しばらく留守にするから来なくていいと言われたのだ。
 なにやら険しい顔つきをしていたけれど、とくに気にする事でもないだろう。
 そういえば、全く何も言ってくれないけど、いつになったら対価が貯まるんだか。
 結構、働いた気がするんだけどな……。このまま彼女が消えて、今までのバイト代が
パーになったらさすがに――笑えないよなぁ。考えただけで凹む。

「なに言ってんだ?」
「ほわぁあッ!?」

 いきなり後ろから声をかけられた。
 百日鬼だった。
「ひとりでブツブツと……何か、視えないモノでも視えたのか?」
「や、そんなんじゃねえよ。ちょっと考え事」
 おれは足元に置いといた鞄を手に取った。
「帰るぞ」
「おう――じゃなくて、おまえ、待ってやったんだからなんか言えよ!」
 こうは言っても、こいつに礼の言葉を求めるのは無意味というものだが。やれやれ。そ
の事は重々承知しているのだが一応、形だけでも言ってほしいなあ――なんて、思ったりして。
 どうせ無視されるのがオチなんだけどな。
 ――と思っていたそのとき。
 百日鬼は振り向き、そして――目を細めた。


496 名前:B ◆V9X8M0rLH2 :2006/12/16(土) 06:19:26 ID:vc09n1Wn0
 俺の両の目を射抜くように、百日鬼は見つめてきた。
「な、なんだよ……」
 思わず焦るおれ。
 ていうか、そんなふうにじーっと見るな。
「……………………」
「お、おい!?」
「……………………」
「なんか言えよ!」
 無言でおれを見つめる百日鬼。おれはついに耐えられなくなり、俯いてしまった。
 なんでだよ。なんで恥ずかしがってるんだよおれ。ちょっと見つめられただけだろうが。くそっ。
「――行こうぜ」
 百日鬼の声におれは顔を上げる。
 するとそこには――夕陽を背にして百日鬼が不敵な笑みを浮かべていた。
 くそう、なんて憎らしさだ。ちくしょう。
 ――それでも。
 帰り道を共に歩きながら思う。
「ああ、そうだ。四月−日」
「なんだよ」
「明日も卵焼き作れ」
 どうやら、おれは――
「……わかったよ。仕方ねえな。作ってやるよ」
 どうやらおれは、百日鬼がいいらしい。
 認めたくないけれど、こいつと一緒にいるのが心地いいみたいだ。
「養鶏場から取ってきた卵でな」
「って無理言うなー! おれは何時に起きればいいんだよ!!」


オワリ。

497 名前: ◆V9X8M0rLH2 :2006/12/16(土) 06:20:15 ID:vc09n1Wn0
____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ これでようやく眠れそうです。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

498 名前:風と木の名無しさん:2006/12/16(土) 21:20:17 ID:UxisC6PZ0
>497
GJ!ピュアでいいな。(我が身を振り返って軽く欝)
このおにーさん、ほんとにたまご取りに行きかねん。

499 名前:風と木の名無しさん:2006/12/16(土) 21:27:27 ID:UxisC6PZ0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟 平安 リバ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  後で残りを張りにきます
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

500 名前:平安V 1:2006/12/16(土) 21:30:12 ID:UxisC6PZ0
 

 雨が降っている。
 今宵は兄者が珍しく宿直(とのい)に出たので、火桶は近づけてあるが薄ら寒い。
 格子は全て下ろしているので、燭台の灯りのみの部屋は暗い。影だけが大きく映る。
 つなぐ必要のある幾人かの女房のための文を書き上げた弟者は、薄様をそのままにして御帳台に体を移した。
 この中で寝るのも久しぶりである。
 無茶をやるので以前壊した。まさか閨の行為が激しくてそんなことになったとは思われてはいまいが、さすがに気恥ずかしい。
この東北の対で使う雑仕は、口のきけない者、口の少ない者を選んではいる。

 夜は更けている。けれど弟者は眠れない。膚寒くて眠れない。
 自分が宿直の夜なぞは決まった時間以外は誰かの局を訪れるし、同輩と砕けた話をしながら過ごしたりもする。
それでどうにか紛らわせる。
 けれど、こんな夜はいつも不安になる。
 もともとこれが自分本来の立場なのに、華やいだ場を知ることになった。
それは楽しいが、いざとなれば捨てることが出来る。振り出しに戻ればいいだけだ。
 しかし、捨てられないモノが一つある。
 ―――バカ野郎。
 寝返りだけが増えていく。

501 名前:平安V 2:2006/12/16(土) 21:31:41 ID:UxisC6PZ0

 今は内大臣である方が大納言であった時、その時代忌まれる双つ子がそこに生を受けた。
 その母君の恩により、それは秘されて一人とされた。
 世にときめくはただ兄の名のみ。
 けれども真実(まこと)は一つにあらず。元服を過ぎたその頃から、二人は自由に入れ替わる。
 それもそのはずその面差しは、二つに割った玉の如く、どちらがどちらと見分けにくい。
 しかしその性質は大きく異なる。お互いの好みに従って、五日に1度は兄者が表、残りの日は弟者が表を演じている。

502 名前:平安V 3:2006/12/16(土) 21:34:37 ID:UxisC6PZ0

 渡殿を通る足音で、ふいに機嫌が直る。
 妻戸が開いて外の風が入る頃には、世間ではクールとされる自分に戻っている。
 すっかり冷え切った指がいきなり髪に埋められ、少しかき乱したあとすぐに離れた。
 「お休み」
 「おい」
 「寝てないのだ」
 「どこへ行った!」
 「行ってない。来たのだ」
 思わず胸元をつかむが、相手は落ち着いて肩を叩く。
 「まず左馬頭(友者)と藤式部の丞(オタラー)だ」
 桐壺に与えられたその宿直所に、彼らが訪れて話し込むことは多い。
なんだ、と彼は手を放す。二人して厚畳の上に座る。
 「中流の女はいいな、とか、あんまり所帯じみてるのもな、とか浮気っぽいのもちと困る、とか、
しかし女博士もあんまりだ、とかバカ話をしていた」
 彼らならそうだろう、と弟者はうなづく。
 「そのうち萌え語りになった」
 「ほう」
 「で、俺が妹萌えについて語っていると、すごい勢いで何者かが飛び込んできた。
誰かと思えば左大臣の末の弟君、従五位下だがまだ官職にもついてない坊やがいるだろ、あいつだ」
 「うむ」
 「そうして俺の言葉をさえぎって姉萌えについて熱く語るではないか。
あっけにとられたがここは妹萌えの首領としてこちらも黙っているわけにはいかん。
ケンケンガクガク言い争っていると、そこに式部卿の宮、つまりモララー殿が現れた」
 「ふむふむ」
 「そして彼はSMの真髄について語りだすのだ。これは萌えとは違うモノだと思うがどうだろう」
 「さあ」
 「まあ、主上の同腹の弟君に逆らうのもよくないだろう、と思って聞いていると、
なんせ坊やはまだ若い。平気でさえぎって姉萌えオプションGカップを語る」
 「それなら語りがいがあるだろう」

503 名前:平安V 4:2006/12/16(土) 21:39:39 ID:UxisC6PZ0
 「らしいな。しかしモララー殿もさるもの、ご自分の寵愛なさるスィート・ハニーについて誰も聞きたくないぞ、
といいたくなるほど話し続ける。もちろん、性的な意味で。こちらもさすがに面倒になり、
妹キャラの愛らしさについてつい話したくなる。そこに先の二人が加わって、あーだこ―だと言い争っていると、
来たね、ヤツが」
 「誰だ?」
 「我らが上司。左大臣の弟君の一人。蔵人の頭にして右近衛の中将。略して頭中将だ」
 「ヤツか」
 「うむ。騒がしいから抑えに来たのかと思った。だが違う。やつにも萌えがあったのだ」
 「あの男にか。なんだ」
 「百合萌えだ」
 「………激しく納得」
 「萌えるに足るはただ百合のみ、姉萌え妹萌えSM萌えも全て含むことの出来る懐深い萌えだと力説。
彼の弟である坊やなんか口を開けてぽかーんとしている」
 「だろうな」
 「俺でさえ一瞬、洗脳されそうになった。オパーイが二つでなく四つ。なんだかお得な気分がしてな」
 「ってゆーか…」
 「だがしかし、今まで妹単体萌えであった俺が、そうも簡単に宗旨替えするのも業腹である。ここは一つ踏みとどまろうとがんばった。
そのうち収拾がつかなくなり、そう決まったのだ」
 「どう決まったのだ」
 「萌え合わせを試みようと。今月末、左大臣家のヤツの居室だ」

504 名前:平安V 5:2006/12/16(土) 21:43:26 ID:UxisC6PZ0
 「なんだ萌え合わせとは」
 「歌合せのようなものかな。まあ和歌でも漢詩でもSSでもイラストでも作ってきて、自分の萌えをアピールしようと」
 「作るのか?」
 「絵師や小器用な女房などに頼まず、自分でやることに意義があるのだ。
で、中でも最もいい作品を作った者には【萌え王】の称号を与えようと」
 「イラネ」
 「何を言う。すばらしいではないか。俺は狙っている」
 兄者は得意そうに腰に手をあてた。
 「萌え王様に俺はなる!」
 「超どうでもええ。一首詠んでやる。柔肌のあつき血潮に触れもみで寂しからずや萌えを説く君」
 「時代が違ううえに先に誰かが思いついていそうだな」
 「いいんだ。まあとにかく、触れなば落ちん、といった女房たちがいくらでもいるのにあんたらは何故、そんな戯れに走る」
 「わかってないなぁ」
 あきれたように弟を見る。
 「やることなんて猫でも出来るだろう。しかし欲望を見据えていったん虚構化し、
なおかつ人様に見てもらうなんてなかなか高等な遊びだぞ」
 ―――おまえこそ、わかっていない。
 誰もいないこの部屋で、与えられた物語などは体を温めてはくれなかった。
彼らはしょせん坊ちゃんで、恵まれたリアルに飽いているから平気でそれを食い散らし、
自由に虚構を弄ぶことが出来るのだ、と弟者は考える。
 「猫ですか」
 どうも視線が怪しい。兄者は少し体をずらした。逆に弟者は間をつめる。
 「とすると、後ろからだな。首に鈴でもつけてみようかな」
 「俺は寝てないのだが」
 腕を捕らえて、引き寄せる。
 「………オレもですよ」
 浮かべた笑みは凶悪、と評するにふさわしかった。


505 名前:平安V 6:2006/12/16(土) 21:45:07 ID:UxisC6PZ0

 雨は降り続いている。
 その音に、途切れがちな声が混じっている。
 呼ばれないときには人を近寄せないこの場所を、区切っている笹の葉鳴りがそれを秘める。
 唯一、気ままにそこを訪れる妹君も、宿直開けをおもんぱかってか近寄らない。
 声はいつしか濡れていく。
 外の雨に侵されたように。
 相手を追いつめながら、自分も追われて、瀬戸際にたどり着く。
 確かに彼は感じている。吐息は熱く、雄のにおいが濃い。
 しかし判るのはそれだけだ。心の中など見えはしない。
 同じ顔をしてはいても、どんなに体を重ねても、相手になれるわけではない。
 それでも。

 躯が震えた。自分の熱が吐き出される。
 少し遅れて相手が揺らぐ。
 それを固く抱きとめる。
 果てた後でも抱きしめたい唯一の人。
 自分の執着。自分の劣情。自分の全て。
 そして−−−自分の憎しみ。
 雨はまだ、降り続いている。


506 名前:平安V 7:2006/12/16(土) 21:48:46 ID:UxisC6PZ0

 奏上する文書を用意して、頭中将に手渡した。
 彼はいつもの表情の読めない顔で受け取り、そのくせ小さな声で「負けませんよ」と囁いた。
 激しくどうでもいい。歌いたくなるぐらいどうでもいい。
 しかしここは兄者になりきって、「こちらこそ」と答えてすましている。
 大体、この男は得体が知れない。
 職に関しては有能だ。どんな状況でも激することなく、淡々と事柄を裁いていく。
 言葉は慇懃なほどに丁寧で、下の者にもそれは変わらない。
 また、楽の腕も確かで、さまざまな音を自由に扱う。
 容姿もけして悪くない。たとえにくい独特の顔立ちだが、割に好感が持てる。
 けれど、何をどうみてどう感じるのか。それがどうも窺い知れない。
 かてて加えてその上に、彼方にいると思ったらこちらにいるし、空間を切り取って動くのではないかと
疑いたくなるような現れ方をする。
 ―――まさか、あの姫は話してないだろうな。
 この男の妹の二の姫が、兄者の正室である。ただし通常の関係ではない。その上自分の存在を知っている。
 しかし彼にそんな気配はなく、文書を抱えて陣座(じんのざ)に向かった。
 安堵していると、モララー殿が扇の影から目配せする。あいまいに微笑み返す。
 その後なんと通りすがった従兄弟者が、「当日行くとあのバカに伝えて置け」とひとこと。
 驚いて振り返ったときにはもういない。
 あんな男でも何か萌えがあるのか。実に不思議である。きっとモララー殿と同じ系統だろう、と考える。
 そんなこんなでどこか宮中の空気が浮ついている。
 だが隙をついて遊びに行った女房たちはいつもと変わらなかった。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)シバラク チュウダーン!カマワズトウカシテクダサイ



507 名前:平安V 8:2006/12/16(土) 23:04:10 ID:UxisC6PZ0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) サイカイシマス



 みちのく紙を前にして、真剣な表情で筆を取る。
 充分に墨を含ませたそれを一息に走らせる。柔らかな曲線が描かれるが、思うものではないらしい。
 兄者は、顔をしかめてそれを丸めた。
 筆の後ろをくわえて考え込んでいると、慣れた足音が響いてきて、やがて妻戸が開かれた。
 「文か?」
 冷えた頬が近寄るので、そこに軽く口付ける。
 身を寄せると立ち上る甘い、誰かのにおい。
 いつものことだ、と内心肩をすくめる。
 「いや、イラストだ。なかなか上手くいかん」
 「どれ、見せてみろ」
 燭台を手近に寄せ、反古の中からましな物を選んで広げる。
 「……バランスが悪いな。妹者か?」
 「うむ。なかなか難しい」
 「衣装は割合によく描けている。問題は顔だな」
 「可愛いものはかえって描きにくいな。そうでないものは簡単なのだが」
 「たとえば」
 「ふむ。見ておけ」
 さらさらと筆が流れる。あっという間に輪郭が築かれ、十二単衣姿の人物が描かれる。
 「うおお……イノキか」
 「イノキだ。髪と着物は脚色したが」
 「目をつぶりたくなるほどにそっくりだ。見事だ、この顎のしゃくれ具合」
 「我ながら恐ろしいまでの才能だ」

508 名前:平安V 9:2006/12/16(土) 23:05:30 ID:UxisC6PZ0
 イノキとは、妹者気に入りの侍女である。残念ながらあまり麗しい乙女とは言いがたい。
その上かなりそそっかしくて、雀を逃がしたりドールハウスを壊したりしている。
 「なんだか見ているうちに呪われているような気分になってきた」
 「女の子の絵姿に対して、それはあまりに失礼であろう。…とはいえ俺もうなされそうだ」
 兄者は少し考え、ぽん、と手を打った。
 「そういえばこの間、非常に短くて効果的だという経の一説を習った。
なんでも、清めたい人物の名を唱えてこの経を叫ぶのだそうだ」
 「ほう、どんなのだ」
 「陀羅尼経の一種らしい。俺が唱えたらすぐに復唱しろ。
何回か叫ばなくてはならんらしい。いいか」
 「わかった」
 「イノキ!梵婆家っ!」
 「イノキっ!梵婆家!」
 「イノキ!梵婆家っ!」
 「イノキっ!梵婆家!……本当に効果があるのか?」
 「……さあ」
 絵姿を脇に避け、新しい紙を取り出す。
 「せっかくだから、これは本人にやろう」
 「喜ぶ…かもしれん」
 「それはそうと妹者だ……ぐがぁ、またダメだ」
 「どれ貸してみろ……ここはこう」
 「ほう」
 「で、こう描いて、こう」
 尊敬のまなざしが注がれる。
 「さすがだな。これはいい。実に愛らしい。これを出すことにしよう」
 「自作を出すんじゃなかったのか」
 「なに、おまえのなら俺のだよ、うん」
 「………そうか」
 弟者はそれ以上何も言わず、嬉しそうな兄の横で目を伏せた。

509 名前:平安V 10:2006/12/16(土) 23:06:54 ID:UxisC6PZ0

 誰もいない釣り殿で、篝火に照らされた池を見ている。
 雨はやんだが雲が濃く、優しいはずの月は見えない。
 遣り水の流れはゆるく、池の水面をそっと揺らす。
 高欄に寄りかかり、その波紋を眺めていると、水に映った自分の顔が乱れていく。
 ―――昔はものを思はざりけり、とは言ったもんだな。
 渡殿を走って帰ってきた、幼い兄者が目に浮かぶ。
 とびついてまず抱きついて、頬を合わせた。それから外を話してもらった。
 あの頃も妬みも恨みもあったが、こんなもの想いではなかった。
 空気はひどく冷たい。小袖の上に幾枚もの衣を重ねているが、耳や指先が凍りそうだ。
 これ以上、何を求めているのかよくわからない。多分、兄者を閉じ込めて、完全になり代わったとしても、
この憂いは晴れない気がする。
 振り返ると対の屋は全て静かで、宿直の者まで眠っているように見える。
 夜だったら、完全に人払いをした後ならここで二人で遊んでいいと、その頃に父者に言われた。
 夏にほとりで遊ぶのは実に楽しかった。
 秋はどんぐりを拾った。
 冬は氷に石を投げた。
 春は桜を眺めた………全て夜に。
 弓は自室の裏で練習できたが、馬は兄者と交代か、深夜に父者にじきじきに習った。
 オレはあんたじゃねぇよ、とつぶやいてみた。

510 名前:平安V 11:2006/12/16(土) 23:07:38 ID:UxisC6PZ0

 出仕した彼の帰りを待っている。
 細い月は高く昇ったが、兄者は帰らない。
 宿直の予定ではなかったが、と首をかしげていると妹者が渡殿を駆けて来た。
 「小さい兄者、大臣の姫より文なのじゃ」
 開いてみて動転した。兄者か頭中将にさらわれたらしい。
 自室には入れないが、様子だけは伺えたことが記されている。
 彼女のことは気に食わないが、この時ばかりは感謝した。
 「妹者、頼まれてくれるか」
 「もちろんじゃ」
 またアレか。弟者は軽くため息をついた。


511 名前:平安V 12:2006/12/16(土) 23:08:52 ID:UxisC6PZ0

 部屋の室礼(しつらい)は悪くなかった。
 御簾や几帳も新しく、色目もなかなか洗練されている。畳の雲繝縁(うんげんべり)も鮮やかだ。
 そんな中で、柱に縛り付けられている。
 「いい加減、離していただけませんか」
 「申し訳ありませんね、話してくださるまでそうはいかないのですよ」
 「弟君のでも探ったらどうです」
 「漢詩らしいですね。平仄がどうのこうのとつぶやいていましたから。
モララー殿の趣味はあまり支持を集めないようですし、
左馬頭・式部丞も恐るにに足らず……あなただけなのですよ、義弟殿」
 「従兄弟者とシーン殿も参加なさるようですよ」
 「彼らは彼らで競っていただきましょう。例のご趣味ですから。…しかし、あなたは侮りがたい。
道は違えど敬意はもってますよ、わが桃姫」
 悪趣味なことに、長らく人気のエンターティメント(特殊な双六)にたとえられた。
 「髭の救助者が亀を踏みながら現れてくれるといいのですけれどね」
 「心あたりがありますか」
 「残念ながら、よい髭にめぐり合っておりませんので」
 「そうですか。それではお話ください、扱ってらっしゃる題材を」
 「妹萌え、とは語ったはずです」
 「和歌ですか?SS?ワタクシ、この萌え王に命を賭けておりますので、ぜひ教えていただきたい」
 安い命だ、と思う。確かに萌えは大事だが、俺の命は別のものに賭ける、と考える。
 「お話にならないな」
 両手を広げて言いたいが、あいにく縛られている。

512 名前:平安V 13:2006/12/16(土) 23:10:59 ID:UxisC6PZ0
 「仕方がありませんね。私、そんな趣味はありませんが嫌がらせをさせていただきます。失礼」
 「………」
 割りにこいつ、キスが上手いな、と兄者は考える。
 「いかがです?おや、お困りのようですね。…話していただけませんか。そうですか。
初菊を散らすのは痛いそうですよ」
 ―――いや、初めてじゃないから。
 「そのような経験がおありですか」
 「いえ全然。わたくしめは百合にしか興味ございません。……なんですか?」
 部屋の外の廂(ひさし)に侍女がひざをついて何か言っている。

 「彼女の部屋に美しい姫君が!行きますっ!失礼っ!」
 凄い勢いですっ飛んで行ってしまった。
 その後に逆側の回廊から人影が現れる。
 妻戸をくぐる長い髪。柔らかな衣擦れの音。
 「今、何していた」
 「おお、本格的だな。ヅラか?」
 「そうだ。妹者と来た。彼女はあんたの正室のとこにいる」
 「なるほど。…ほどいてくれ」
 「その前に言え。何をしていた」
 「俺はかわいそうな犠牲者だ。助けてくれ」
 むっとした表情のままの弟者が顔を近づけると、なぜか兄者は体を避ける。
 「ヤツには許しといて俺とは嫌なのかよ!」
 「あれはいきなりで逃げられなかったんだ。それとその格好、某人物にそっくりで怖い」
 ああ、と彼は納得する。
 「確かに鏡を見てぞっとした……でも、中身はオレだ」
 そっと唇を重ねる。
 「……なるほど、おまえだ」
 「だろ」
 ふいに妻戸が開いた。

513 名前:平安V 14:2006/12/16(土) 23:12:09 ID:UxisC6PZ0
 「可愛い姫君ですが私、ロリ趣味は……あなたは!」
 さっと扇を広げ、瞳だけ出して嫣然と笑う。
 「お忘れですか、頭中将」
 「……尚侍の君」
 似ているのをいいことに、姉者になりきる。
 「弟を返していただきますわ」
 「何故ここに?どうしてご存知なのですか?」
 軽いウィンクが投げられる。
 「妹君にお伝えくださいな。あの日のアナタは素敵だったって……」
 ぱたり、と中将が倒れた。
 「……萌え死んだな」
 「生き返る前にさっさと帰ろう」
 「頭を潰しといたほうがよくないか」
 「そんなことをすると多分、増殖する。ほっておこう」
 「うむ」



514 名前:平安V 15:2006/12/16(土) 23:13:20 ID:UxisC6PZ0


 騒ぎの為か、次の日兄者は熱を出した。
 それでも他者の作品が気になって、止める弟者を振り切って強引に出仕したのがたたったらしい。
萌え合わせの当日、どう無理しても体が動かなかった。
 「仕方がない。おまえが行け」
 「仕事じゃないんだから休めばいいじゃないか」
 「仕事より大事だ」
 「それが人生で一番大事なモノなのか」
 「それはおまえ。次が妹者。その次がこれだ」
 相変わらず弟を使うのが上手い。赤面しつつ承諾せざるを得ない。
 「あれから休み続けた頭中将も気になる。見事萌え王になったあかつきには、ざまあみろ、と嘲笑ってやれ」
 「承知……だが、黙って寝とけ」
 心配で、ぎりぎりまで枕もとで見守り、せかされて慌てて絵を抱えて左大臣家へ向かった。


515 名前:平安V 16:2006/12/16(土) 23:14:43 ID:UxisC6PZ0

 浅い夢をいくつか見た。
 自分の帰りを待っていた小さな弟者が飛びついて頬をくっつける姿や、池の水面に散った桜の花びら。
 冴え渡る月の銀の光。牛車から眺めた風にのる紅葉。
 華やかに人を呼び、宴となった自分の元服。
 家族だけで見守った彼の元服。
 気持ちを止められずに重ねた唇。
 ―――そりゃ違うけどさ、そこが良くないか。
 熱に浮かされつつそう思う。
 恵まれた立場である自分がそう考えるのは傲慢かもしれない。けれど今のままの彼が好きだ。
 眠りがまた、彼をさらう。近寄ってきた夢の中に、中将の唇。
 ―――OK、精神的ブラクラget……
 その夢を遠くへ蹴りやって、別の小さな夢を探した。

516 名前:平安V 17:2006/12/16(土) 23:18:41 ID:UxisC6PZ0

 夕闇が落ちてきた頃に響く足音は、いつもより速い。
 病んだ相手への気遣いと、別種の気持ちの揺れとが読み取れる。
 兄者は体を起こしてそれを迎えた。
 「……大丈夫か?」
 「大分、楽だ。して、首尾は?」
 「その前にだ、知っていたならなぜ教えてくれんのだ。腰を抜かしそうになった」
 「ん?」
 「従兄弟者だ。コスプレか。コスプレが萌えなのか、あの男は」
 「情報通のおまえが知らなかったのか?有名な話だぞ」
 「あいつのことは頭が拒否するんだ。シーン殿はわかる。並みの女房には近寄れない美しさだった。
だが、あの男だぞ。あのひねた男が楊貴妃だぞっ」
 「ほう、今回は唐ものか。シーン殿は?」
 「当然、西施だ。いや、だからあいつが何故……」
 「おまえだって似たようなコトしたじゃん」
 「オレはあんたのために仕方なくだっ。そんな趣味あるか!」
 「まあまあ。で、萌え王は?」
 「違う。左馬頭は萌え萌えの打臥(うちふし)の巫女のイラストで、式部丞は行平と美人海女姉妹のSS。
あ、判者は左大臣の弟で好きでどさまわり(国司)をやっている男がいるだろ、あいつがたまたま一時帰省してたので頼んだ」
 「ああ、あの身をやつして市で物を売るのが趣味だと言う変わった男だな」
 「そうだ、そいつだ。モララー殿は予想通り。和歌入りイラストだが30枚もあの手を見せられて気分が悪くなった」
 「で、萌え王は誰なのだ」
 弟者が口ごもる。兄者がその袖を引く。目つきが鋭い。
 「言え」
 「………頭中将だ」
 「なんだとーーっ」
 「落ち着け。熱が上がる」
 「これが落ち着けるかっ。題材は何だっ!」
 「あせるな。坊やはやはり漢詩だった。大津皇子とその姉の大伯皇女の悲話をけっこう上手に詠みあげた」
 「それか?」

517 名前:平安V 18:2006/12/16(土) 23:23:01 ID:UxisC6PZ0
 「違う。左馬頭は萌え萌えの打臥(うちふし)の巫女のイラストで、式部丞は行平と美人海女姉妹のSS。あ、判者は左大臣の弟で好きでどさまわり(国司)をやっている男がいるだろ、あいつがたまたま一時帰省してたので頼んだ」
 「ああ、あの身をやつして市で物を売るのが趣味だと言う変わった男だな」
 「そうだ、そいつだ。モララー殿は予想通り。和歌入りイラストだが30枚もあの手を見せられて気分が悪くなった」
 「で、萌え王は誰なのだ」
 弟者が口ごもる。兄者がその袖を引く。目つきが鋭い。
 「言え」
 「………頭中将だ」
 「なんだとーーっ」
 「落ち着け。熱が上がる」
 「これが落ち着けるかっ。題材は何だっ!」
 「絵巻だ。物語りもイラストも自作。あいつ休んだのみならず徹夜で作ったらしい」
 「内容は?」
 「それが」
 落ち着きなく視線をさ迷わせる。兄者は彼の衿もとを掴んだ。
 「さっさと言え」
 「当然百合だが……お前の正室とうちの姉者のエロエロのやつ……」
 さすがに怒るか、と思ったが、兄者は別の方に激した。
 「見たかった−−−!」
 「『お姉さま、堪忍……ウチ、もう………』『こんなにしてしまって……いやらしい子……』
といった具合で凄いんだ、これが」
 「俺の、というかおまえのは?次点ぐらいいったか?」
 「………」
 珍しく弟者がキョドっている。不審に思った兄者が揺さぶる。
 「すまん」
 「何だ?」
 「あの時、慌てて出かけたもんだから、その…間違えて……」
 「?」
 「イノキのイラストを持って行ってしまった」
 ぱっくりと開かれた瞳と口のせいで、兄者は別人のように見える。
 「な、な、なんだとーーーっ」
 「間違いだから取りに帰ると言ったのだが、許してもらえずに………
おまえ、今回の萎え王に決定した」

518 名前:平安V 19:2006/12/16(土) 23:24:32 ID:UxisC6PZ0
 ぱたり、と兄者が倒れた。これは萎え死にというべきか、と弟者が思案していると、
あっという間に生き返って、瞬時に彼を押し倒した。
 「お、おい」
 「お仕置きというものが必要のようだな、弟者くん」
 「よせ、熱が上がるって!」
 「やかましい。黙って下で喘いどけっ」
 黙ったまま喘ぐとはこれ如何に、と考える間もあらばこそ、衣がふわりと舞い散った。
 「ちょ、ちょ…待………」
 「待たねぇ」
 「時にモチつけ!……っ………」
 腕の中に捕らわれて、いつもより熱い体に抱きすくめられて逃げられない。
供えられた贄のように扱われる。
 「覚悟しろよ」
 ―――熱あるくせに無茶だって
 とは言うもの少し手荒い行為に、ちょっと感じてしまったことは誰にも秘密だ。



                                    了

519 名前:風と木の名無しさん:2006/12/16(土) 23:26:13 ID:UxisC6PZ0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オシマイ!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

遅くなりましたが、以前AA作ってくださった方、ありがとう!

520 名前:519:2006/12/16(土) 23:54:59 ID:UxisC6PZ0
しまった。今気付いた張り間違い 17

 夕闇が落ちてきた頃に響く足音は、いつもより速い。
 病んだ相手への気遣いと、別種の気持ちの揺れとが読み取れる。
 兄者は体を起こしてそれを迎えた。
 「……大丈夫か?」
 「大分、楽だ。して、首尾は?」
 「その前にだ、知っていたならなぜ教えてくれんのだ。腰を抜かしそうになった」
 「ん?」
 「従兄弟者だ。コスプレか。コスプレが萌えなのか、あの男は」
 「情報通のおまえが知らなかったのか?有名な話だぞ」
 「あいつのことは頭が拒否するんだ。シーン殿はわかる。並みの女房には近寄れない美しさだった。
だが、あの男だぞ。あのひねた男が楊貴妃だぞっ」
 「ほう、今回は唐ものか。シーン殿は?」
 「当然、西施だ。いや、だからあいつが何故……」
 「おまえだって似たようなコトしたじゃん」
 「オレはあんたのために仕方なくだっ。そんな趣味あるか!」
 「まあまあ。で、萌え王は?」
 「あせるな。坊やはやはり漢詩だった。大津皇子とその姉の大伯皇女の悲話をけっこう上手に詠みあげた」
 「それか?」

ごめん。

521 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 00:13:14 ID:QjxlaZE10
>520
GJ!
このシリーズすごく好きだから今回も楽しませてもらった。
梵婆家ッ!がツボだったwww
あと、個人的に姉×正室にすごく萌えてしまった。
次回作も楽しみにしてます。

522 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 02:46:00 ID:8z75CJVU0
このシリーズ大好きなんですが今回は笑い通しでした!
萎え王のオチまで。


523 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 02:53:16 ID:rvzcWUyX0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
某推理小説主人公と犯人 ネタバレ注意


姦淫は地獄へ堕ちる罪だそうだ。

俺の下に組み敷かれた坊主が前に言っていた。
掛け値なしの貧乏寺、隙間風どころの騒ぎではない冷たい風が入りたい放題の部屋。
食うものも食ってないで万年腹減らしの破戒坊主。
あんまり可哀想になったもんだから仕事帰りに牛丼を買って持って行ってやった。
それこそ三日は絶食していたのではないかと思う勢いで食べる坊主を、
貧乏寺には似合いの煎餅布団に勝手に転がって眺めていた。
食べ終わったあいつと何を話したのかはよく覚えていない。
こっちを覗き込むように覆いかぶさってきたあいつに他意はなかったのだろう。
男色の趣味は俺には無かったつもりだが、ふと抱こうかという気になった。
女房持ち子供有り。
別にそっちで困っているわけでもないのに、そう思った。
つぎはぎだらけの僧衣の襟元を掴んで布団に引き倒した時、あいつはただ
困惑したようなきょとんとした顔をしただけだった。
口付けしても抵抗は無く、舌を差し入れたらあっさりと応じてきてようやく、
そういえば仏教には男色があったっけなと思い至った。
「こっちの趣味があったんですか?」
と事も無げに聞かれて返事が出来なかったのは俺のほうだ。
答えずに僧衣を引き剥がし、乱暴に事に及んだ。
痛いのか嫌なのか顔を顰めて俺にしがみつくあいつの様からは、
何をどうしてやればよかったのか結局俺は読み取ることさえ出来なかった。
酷いことをしたもんだと思う。
果てて倒れ込んだ俺の耳元で、あいつが掠れた声で囁いた。
「地獄に堕ちますよ」
それも仕方ない、と俺は思った。そもそも飲酒が止められない時点で
俺の地獄行きは決まってる、そう言い返して俺は寝た。

524 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 02:56:59 ID:rvzcWUyX0
次の日、あいつは何事もなかったようにおはようございます、と言った。
昨日のことなどなかったようだった。
俺も気にもしなかった。

……あいつが死んだ今だからこそ思うのだ。
あの夜の出来事はけして嘘ではないし本当にあったことなのだ、と。
一番近くにいたつもりで知っていたつもりで何も知らなかった、友人と思っていた殺人犯。
「地獄に堕ちますよ」
そう言った時のお前の心境はどうだったんだ。拒まなかったのは俺に来て欲しかったからか、
確かめる術はもうどこにもない。いつか俺が死ぬ日まで分かる事はない。

仕方ない。
地獄で会おう、友よ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
勢いだけで失礼。

525 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 04:27:25 ID:W0LVyoGB0
>488  Σ(゚Д゚;)うわまさか連載終わって10年以上立ってるこの作品が!
未だにヤ-マダタイ-チ萌えまくりですよ!久しぶりにこのスレ来たけど、来て良かった!!
くすぶってる柳沼とそれを止めるでも無い監督がそれっぽいよ!
その時のまだ菌に感染する前の平/田や矢/島さんやト/ムの反応が気になる!
姐さんありがとう!大好きだ!!

526 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 04:28:54 ID:J1HWS0JyO
【宣伝用】
801の皆さん手伝ったください!

こんな夜中におっぱいうpします
http://ex17.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1166296323/

1 名前:味噌出汁[] 投稿日:2006/12/17(日) 04:12:03.14 ID:53k2FceZ0
スレが立ってから1時間以内に1000いったら自分のおっぱいうpします


男だけどね☆

527 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 04:59:41 ID:jbUFhQqV0
>524 GJ!
一見軽く書いてるみたいなのに、とても切ない。
もとネタなんなのかも気になる。

528 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 08:24:07 ID:oiXBZOdw0
>>525
姐さん、専用スレがありますのでぜひいらしてください。
作品名そのままのスレタイなのですぐ見つかるはずです。
連載終了して10年以上経ってからこんなに語れるとは思わなかった(*´Д`)

529 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 08:31:53 ID:W5tL75gV0
>>525
嬉しいのは分かるがとりあえずモチツケ SSの設定を100回嫁
「山田兄弟が入団する1年前」だからト/ムは来日していないぞ

数字板に対地スレあるよ

530 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 22:49:23 ID:YlyxTCWQ0
>>519
GJ!与謝野晶子ワロタ
小ねたの応酬に笑い通し!
百合厨が頭に浮かんでwww

531 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/17(日) 23:29:05 ID:zD+QPNRG0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  例によってnumb*3rs兄弟ネタだってよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  これで終わりだから安心しろってさ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヨカッタ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

そんなわけでnumb*3r兄弟ネタです
立て続けに申し訳ないんですが、これで終わりなので見過ごしてやってください
とりあえず前回までと続いてます
今更気づいたのですが、このドラマを観たことない方にとっては複数の
小ネタをばらされていることになりますね。今回もそうです。スマソ…
今回は前・中・後編にわけて投下しようと思います

ちなみに平安兄弟のファンです。いつも笑いつつ萌えてます。トンクス!


532 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 1:2006/12/17(日) 23:30:25 ID:zD+QPNRG0
 もうずいぶん昔のことだが、チャ―リーが生まれたとき、ト゛ンはこれで相棒ができたと思
った。賢くて強くて信頼がおける、一番の親友ができたのだと。その頃の彼のお気に入りの遊
びは「刑事ごっこ」だった。ト゛ンはじきにその遊びをするときには、この弟が常に傍らに控
え、悪人を(といっても本当は、極悪非道な犯罪者を演じる近所の友達に過ぎないのだが)自
分と一緒に捕まえるようになるだろうと考えた。母親の腕に抱かれてすやすや眠り、そうでな
いときはミルクを飲んでいるちっぽけな赤ん坊を眺めながら、その日が早くこないかと5歳の
ト゛ンはわくわくしながら待った。
 ところが、現実はそうはいかなかった。チャ―リーは3歳になる頃までには既に、ト゛ンが
思い描いていたのとは違う弟になっていた。お絵かきのために与えられたクレヨンでそこらじ
ゅうに数字の羅列を書き殴り、おもちゃの銃になど見向きもしない。もちろんト゛ンが大好き
な野球のバットやボールには、触れることすらない。どうやら半永久的に頼りになる相棒を得
られないことを理解した少年のト゛ンは、その代わりに弟の世話で忙しい両親を助けるために、
誰にも頼らずに一人で何でもできる存在になろうと思った。いわばプランBだ。物語の中の、相
棒のいない英雄たちは大体、相棒がいない代わりに自分だけで何でもできる。そういうふうに
なればいいのだと自分に言い聞かせて、そしてほぼその通りになった。少年時代を一貫して、
彼は自立心の強い子供だった。
 

533 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 2:2006/12/17(日) 23:32:05 ID:zD+QPNRG0
 自立を心がけたト゛ンが、FBIに入るまで、一番愛したものは野球だった。野球で大学の
奨学金をもらい、マイナーリーグでとは言えプロとして金を稼いでいたこともあるほど、彼は
野球に打ち込んだ。けれどもト゛ンは23歳のときに、それまでで一番愛した野球を捨てるこ
とを決めた。自分のこの才能ではメジャーには行けない。野球を続けたいのなら、マイナーリ
ーグで不安定な生活することになると悟ったときだ。これまでで一番愛した「野球」と、一番
重んじてきた「自立」を量りにかけると、否応なしに「自立」の方に天秤が傾いた。野球は職
業にするにはリスクが高すぎる。若い、ほんの一時しかそれで金は稼げないだろうし、そうす
ることが許されるのは、自分がその一時で一生分の金が稼げる才能の持ち主の場合だけだ。そ
してト゛ンにはそこまでの才能はない。そこで彼はFBIの試験に志願し、難関を見事にパス
した。
 FBIに就職が決まったよと言うと、両親はまず驚き、それから手放しで祝福した。ト゛ンもも
ちろん満足していた。知性体力ともに抜きん出た(と目の高いFBIの試験官に判定された)
人間しかこの仕事にはつけない。やりがいはありそうだし、サラリーもいい。少なくとも表面
的には、欠けたところが見えない存在になれたのではないだろうか?小さな頃、心に決めた通
りに。
 ところがそんなト゛ンに、水を注す人間がいた。もちろんチャ―リーだ。チャ―リーはその
とき17歳で、一年前にプリンストン大の数学科を卒業し、スタンフォードの院に進んだとこ
ろだった。卒業論文として発表した研究が、学会で大変に評価されたらしいということはト゛
ンも両親から聞いていた。だがト゛ンは正直に言うとチャ―リーの業績にそんなに興味もなか
ったし、普段離れて暮らしていたせいもあって、弟自身とさほど親しいわけでもなかった。そ
んな弟が、ト゛ンの就職を祝うために久しぶりに家族が集まったディナーの席でこう言ったの
だ。「野球はどうしたの?」
 

534 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 3:2006/12/17(日) 23:33:09 ID:zD+QPNRG0
 何気ない一言だったが、ト゛ンの心にそれは妙に鋭く響いた。弟に悪気はないということは
わかっていた。両親が気遣わしげな視線を交わすのを目でやり過ごしながら、ト゛ンはさらり
と答えた。「野球はやめた。FBIで働くんだ」 
 チャ―リーはそれを聞いて瞬きし、それから何か口ごもった。この弟は普段は早口で捲くし
立てるくせに、何か大事なことを言おうとすると上手く話せなくなるらしい。しかもそれは自
分が同席しているときによく起きる現象だと知っていたト゛ンは、見ないふりをして母親が焼
いたリブをほおばった。
 「あんなに、あんなに才能があったのに?もったいないよ、ト゛ン」
 囁くような声でチャ―リーが言う。母親が窘めようとしたのか身を乗り出したが、チャ―リ
ーは巻き毛を揺らしながらそれを手で制した。
 「野球が好きだったんじゃないの?――僕は、僕は力になれるよ。ト゛ンが野球を続けるな
ら……」
 「力になれるって?」
 ト゛ンは苛立ちながら聞き返した。そもそもこの弟に助けなど求めたことは、これまでで一
度もない。ましてや人生の一大事を、任せられるわけがない。一体弟が野球の何を知っている
だろう?ト゛ンがどれだけ野球を愛し、それに打ち込み、どんな思いでそれを捨てたかなど、
この弟は知らない。チャ―リーは小さな頃から数字と戯れ、しかもどうやらそれが職業として
ものになりそうなのだ。彼は諦めるということが、どんなことなのか知らない。ト゛ンの声に
チャ―リーはびくりと肩を揺らしたが、一瞬俯いた後で意を決したようにまた顔を上げた。
 「僕なら有効な打線を読める。数学で試合の展開を読めるよ。確率論を使うんだ。そうした
ら――」
 「そんなことは誰にもできない。チャ―リー、野球はもうやめた。捜査官になるんだ。俺は
満足してる。お前の助けも必要ない」
 そう言い放ってト゛ンは立ち上がり、キッチンの冷蔵庫にビールを取りに行った。テーブル
に戻ってくる頃には、両親が無理やり挿入した別の話題が始まっていた。チャ―リーはまだ何
言いたげだったが、母親に釘を刺されたのかその後はずっと黙っていた。

535 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 4:2006/12/17(日) 23:34:02 ID:zD+QPNRG0
 自分と似通ったものを人はよく愛する。同じ趣味を持つ友人、同じ価値観の恋人。自分を生
み、育てた両親。そして同一の血が流れる兄弟。そう、兄弟はその象徴だ、とチャ―リーは階
段を駆け上がりながら思った。その証拠に、相手がまったくの他人だったとしても、親しみが
生じたときにはよく「兄弟」と呼びかけるではないか。この世界に兄弟ほど自分に近い存在は
いない。そういうことになっているはずだ。
 ところが同じであることが前提であるがゆえに、違いが際立って見えるという逆の特色もま
たここには見える。カインとアベルのように。自分とト゛ンもその実例だ。ト゛ンと自分はま
るで違う。そんなことを考えながら乱れた呼吸を整え、チャ―リーはアパートのベルを鳴らし
た。腕時計を見ると、12時を過ぎている。今日の午後、仕事を終えて帰宅したら連絡する、
とト゛ンはチャ―リーに電話で約束した。絶対だよ、待ってるから、とチャ―リーは言い、そ
して忠実にそれからほぼ12時間経つ今まで、ト゛ンからの電話を心待ちにしていたのだ。最
後の数時間は待ちきれなくなって、呼ばれたらすぐに駆けつけられるように、ト゛ンのアパー
トの近くのレストランで時間を潰していた。この部屋の鍵を渡してくれればいいのに、とチャ
―リーは思った。不安な気持ちで外で電話を待つのではなく、ト゛ンのアパートで彼が帰って
くるのを待てたらどんなにいいだろう。
 でもト゛ンが渡すことはないだろう、と客観的に考えながら、チャ―リーはもう一度ベルを
鳴らした。「ト゛ン?僕だよ、開けてよ」
 わかったわかった。そんな物憂げな声と共にゆっくりとドアが開く。巻き毛を揺らしながら
チャ―リーはドアの狭間から顔を出した。「自分の誕生日に真夜中過ぎまで働くなんて正気じ
ゃないよ、工ップス捜査官」
 

536 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 5:2006/12/17(日) 23:35:55 ID:zD+QPNRG0
 冗談と本気を混ぜ合わせた口調でチャーリは言い、アパートの中に入った。そう、今日――
いや実際は既に昨日なのだが――はト゛ンの誕生日なのだ。ト゛ンはこの歳になれば誕生日な
んてめでたくもなんともない、と言ったが、チャーリはどうしても祝いたかった。ト゛ンの誕
生日に二人きりで祝うなど、今までには絶対に考えられなかったことだ。特に祝わなくていい
なんてぼやきながらも、ト゛ンがチャ―リーの願いを聞き入れて会う約束をしてくれたことが、
彼には嬉しかった。
 「こんなに遅くなるなんて、ややこしい事件なんだね?ト゛ン。力になるよ」
 チャ―リーが振り向きながら、ドアにチェーンを掛けているト゛ンに言った。ト゛ンは肩を
竦めた――そして顔を顰めた。痛みを感じたかのように。ト゛ンは本当に今帰ってきたばかり
なのだろう、まだスーツ姿で、けれどもジャケットは脱いでいた。ト゛ンの白いシャツは右袖
ごと破り捨てられ、その代わりに肩に包帯が巻かれている。ト゛ンは右腕を擦りながら疲れの
滲んだ口調で言った。
 「ややこしい事件“だった”んだ。もう解決した。つい数時間前にな」
 振り向いたチャ―リーはもうト゛ンの言葉など聞いてなかった。彼はプレゼントの入った箱
を小脇に抱えたまま、包帯が巻かれたト゛ンの肩に手を伸ばした。「どうしたの?これ」
 「チャ―リー、大したことない」
 「怪我?深いの?」
 シャツを落ち着きなく見ながら、チャ―リーは問うた。ト゛ンはかぶりを振り、自由な方の
腕を動かしてチャ―リーの肩に触れた。「落ち着け。大したことない。掠り傷だ」
 「――撃たれたの?」
 身体中の血の気が失せていくのがわかった。ト゛ンは構うな、というように手を振って繰り
返した。「弾が掠っただけだ。すぐに治る。チャ―リー、落ち着け」
 「弾って、銃弾?ト゛ン、撃たれたんだね?」
 チャ―リーはそう言って、視線を泳がせた。シャツの襟に微かに血痕が飛び散っている。ト
゛ンの血。ト゛ンは返答に困ったのか、瞬きを繰り返した。「……撃たれそうになったんだ。
撃たれたわけじゃない」

537 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 6:2006/12/17(日) 23:37:24 ID:zD+QPNRG0
 「でも怪我してるじゃないか!ト゛ン、撃たれたんだね」
 悲鳴まじりの声を手で制し、ト゛ンはゆっくりと言った。「チャ―リー、犯人はもう捕まっ
た。……死んだんだ。終わったんだよ。落ち着け」
 そう言ってト゛ンはため息をついてみせた。だがチャ―リーはそんな兄の様子に構うことは
なく、うろうろと彼の周囲を歩き回ってから言った。落ち着いていられるわけがなかった。「
どうして僕を呼ばなかった?解決まで何日かかったの?包囲網の人数は?FBIが投入した人
数が少なかったの?だからト゛ンが……」
 「チャ―リー、終わったんだ」
 子供相手にするように繰り返され、チャ―リーは思わず声を荒げた。「怪我してるんだよ!
ト゛ン、あともう少しで死ぬところだったんだ!わかってるの?」
 ト゛ンはうんざりしたように眉間を指で擦った。そして言った。「こんなことはよくあるこ
とだ。チャ―リー、知ってるだろ?」
 それが嫌なのだ、とチャ―リーは思った。こういうことがト゛ンの生活に織り込まれている
ことが。ト゛ンがやっている仕事は素晴らしいとは思う。人々を助け、彼らの生活を守ってい
る。そのことは誇りに思う。だが撃たれたり切り付けられたりすることが日常であってもらっ
ては困るのだ。だからこそチャ―リーはもっと確実に、迅速に事件を解決されるために、方程
式を使う。ト゛ンを助けるために。よりスマートで安全な方法を採るのだ。
 「僕が捜査に参加してたら、こんな――怪我なんてしなかったかもしれない!ト゛ン、何故
僕を呼ばなかった?事件は何?何だったの?」
 震える声で言うと、ト゛ンは目を眇めてみせた。チャ―リーは苛立ちながらそれを見返した。
 「……幼児誘拐事件だよ。チャ―リー、今回は犯罪社会学者と幼児性愛専門の心理分析官が
協力して、迅速に……」
 「僕の方が役に立てたよ!絶対だ!どうして僕を呼ばなかった?」
 繰り返される問いに、ト゛ンはしばし沈黙してから答えた。「今回はお前より彼らの方が必
要だと思った。居場所の分析パターンも確立しつつある。それにお前も忙しそうだったじゃな
いか」
 

538 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 7:2006/12/17(日) 23:38:53 ID:zD+QPNRG0
 数日前までチャ―リーは学会での発表を控えていて、そのためにずいぶん時間を割いていた。
そのこともあって、ト゛ンは今回チャ―リーを捜査に呼ばなかった、とト゛ンはあっさりと言
ってみせた。
 チャ―リーはそれを聞いて思わず引きつった笑みを浮かべた。「――学会?僕はポイントカ
ードにスタンプ押してもらえるくらい学会に出てるんだよ!10代のときから何度も出てるし、
発表してる。そんなの問題ない。ト゛ンに協力できた。彼らって――彼らってその何とか学者
?社会学?馬鹿にしてる!僕は犯人像を予想したりはできないけど、犯人を効率的に探す方法
は知ってるんだよ!僕の方が役に立つ。ト゛ンを助けられる。居場所の分析パターンなんて、
僕の思考の劣化コピーじゃないか。笑わせないでよ」
 わざと険のある言い方をしてやるとト゛ンは眉を顰め、感情のない声で返した。
 「お前は役に立つが、お前以外にも役に立つ人材はいる。数字以外のアプローチの方が有効
なこともある。現に今回は州警察から事件を引き継いですぐに、それ以上犠牲者を出さずに解
決した。……最後に誘拐された女の子は助かったんだ」
 チャ―リーはそれを聞いて唇を動かし、それから手を口のあたりに押し当てて俯いた。最近
はほとんどそんなことはなかったのに、久々に自分がコントロールできなくなりそうな気がし
た。上手く話せず、無理に話そうとすると舌が震える。子供の頃よくそうなったように。ト゛
ンはやはり子供の頃よくそうしたように、そんなチャ―リーに対して何も言わず、落ち着いた
態度のままでいる。呼吸を鎮めて平常心を取り戻そうとし、話せる程度には落ち着くと、チャ
ーリはそれでも震える声で言った。「僕の方がト゛ンを助けられた」
 「チャ―リー」
 「どうして言わなかったの?手伝えって、どうして――」
 唇が戦慄き、チャ―リーは必死で考えた。ト゛ンが自分に助けを求めなかった理由を。ト゛
ンがさっきまでよりは少し苛立ちを含んだ声で言った。
 「もうやめろ、チャ―リー」
 これがプレゼントか?怪我をしていない手でチャ―リーが大事そうに抱えている箱を取り上
げると、ト゛ンは軽く眉を上げてみせる。チャ―リーはそれに答えずに主張した。「僕の方が
役に立てたんだよ。ト゛ンを守れた。どうしてわからないの?」

539 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 8:2006/12/17(日) 23:40:31 ID:zD+QPNRG0
 「事件が解決したのにお前はどうしてそうこだわるんだ?」
 答えの代わりに鋭い問いが返され、チャ―リーは不意に不安に襲われた。ト゛ンの苛立ちが
強まってきているのがわかる。こうなると口論するのが怖くなるのはいつもチャ―リーの方だ
った。言いたいことが言えなくなり、口を閉ざして頷いてしまう。何故かト゛ンに本気で歯向
かったり立ち向かったりすることができないのだ。もう子供ではないというのに。今夜はそう
なってはいけない、とチャ―リーは自分に言い聞かせた。これはとても大きな問題だからだ。
 「……もっといい方法があるのに、黙って見過ごすことなんてできない。一般の人が、子供
が、――ト゛ンが危険に晒されているなら、ベストの方法を……」
 完全に正しい方程式を使わないといけない。危険と労力を最小限に留めるようなやり方をし
ないと、ト゛ンは守れない。そうしたときでさえト゛ンはたびたび銃を持ち、犯人を対峙する
のだから、推論だけで動いたときにはどれほどの危険が待っているのか。チャ―リーはそう説
明しようとしたが、例によって上手く言えなかった。
 「彼らのやり方も知らないのに、何故自分の方が優れているとわかる?」 
 ト゛ンの尋問するような言葉にチャ―リーは口ごもった。「……ただ、ただ、わかるからだ
よ。僕は……」
 「違うな。お前は個人的な感情から言ってる。チャ―リー、これは仕事なんだ。いつもお前
と組めるわけじゃないし、それを優先するつもりもない」
 開けてもいいのか?ラッピングされた箱を軽く振ってみせるト゛ンに、チャ―リーは違う、
と呟いた。チャ―リーは真っ青になって、違う、と繰り返した。ト゛ンの傷を見ながら。
 ト゛ンの言っていることにはどこか嘘がある、と思った。漠然と彼はそう感じ、過去の記憶
を探った。彼の言うことは確かに筋が通っている。ほころびはほとんどない。だが、彼の態度
はどうだろう。ト゛ンはいつも自分が窮地に陥っても、チャ―リーに関らせない。FBIの捜
査で協力を要請するときも、お前はお前がやれることだけをやればいいと言って、ト゛ンが何
をしているのかは教えようともしない。今度もきっとそうなのだ。ト゛ンは怪我をしており、
そしてそれをチャ―リーとの話題にしたくないのだ。
 

540 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟 9:2006/12/17(日) 23:41:21 ID:zD+QPNRG0
 「違うよ。個人的な感情なんかじゃない。それだけじゃない。単に僕は、事実を……」
 「いいや、お前は個人的な感情から意見してる。――この話はもう終わりだ」
 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた口ごもった。そして何秒かのちにやっと口を開き、感情的
になっているのは僕だけじゃない、と言い返そうとした。
 けれどもそれはできなかった。何故ならト゛ンがキスをしてきたからだ。宥めるように。
 「開けていいんだろ?」
 耳元で囁き、プレゼントの入った箱を軽く掲げるト゛ンに、チャ―リーはただ頷いた。こん
なのはおかしい、という気持ちはまだ燻っていた。だが、ト゛ンはそれを見透かしたようにも
う一度キスをし、チャ―リーを簡単に篭絡した。ト゛ンはチャ―リーをソファに座らせ、自分
も隣に腰を掛けてプレゼントをありがとうと言った。チャ―リーは何も言えずにまた頷いた。
 「いいネクタイだな」
 器用に箱を片手で開けたト゛ンが目を細めて言う。チャ―リーのとても好きな表情で。だが
チャ―リーはその顔を見ても、いつものように幸福にはなれなかった。誤魔化されたことが彼
にはわかっていたし、自分がそれに対抗できないのが空しかった。黙り込んでいるとまたキス
が振ってきて、ベッドへ誘われた。
 その夜、望んだ通りにト゛ンのベッドで彼と一緒に眠り、誕生日の夜――実際はそれはもう
過ぎているのだが――に彼を独り占めしたというのに、チャーリは不安だった。いつまで経っ
ても傷を負ったト゛ンの肩を直視できなかった。そしてト゛ンに対等に扱われていないという
ことにも気づいて、彼は孤独を感じた。チャ―リーは自分では、事件を通してト゛ンの相棒に
なれたつもりだったのだ。




541 名前:numb*3rs 工ップス兄×弟:2006/12/17(日) 23:45:21 ID:zD+QPNRG0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | [][] PAUSE      | |
 | |                | |           ∧_∧ 前編オワリ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 
ゴメソ。ちょっとわかりにくいかもしれませんが
3と4の間で一度行間開けるつもりでした。視点変わるので。
そんなわけでまた後日。いつも長々と占領して申し訳ないー


542 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 00:09:29 ID:xHbmVPO70
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) モイチド シツレイシマー
某推理小説主人公と犯人 ネタバレ注意

痛みには鈍感で、思うことは他人の愚かさばかりだ。
詐欺集団に混ざって何度も仕事をこなすうちに、いつの間にか組織は
宗教団体の様相をとるようになっていた。それがもっとも効率が良いからだ。
そして気づけば教祖の立場に祭り上げられていた。
そんなことはどうでもよかった。
馬鹿から金を巻き上げる手段と効率だけ気にしていればよかった。
警察に捕まる前に教団まるごとトカゲの尻尾きりがごとく切り捨てる、
その算段までしっかりしてあった。
それでもどこかで何かが引っ掛かっていた。
いつか誰かに全ての企みを見抜かれて、今まで築いてきた虚構の城が
綺麗さっぱり崩れ果ててしまうような予感があった。
予感。
というよりむしろ無意識の切望。
こんなことを続けていたらいつか罰が当たる、死んだ祖母の声でそんな
幻聴が聞こえた気がした。分かっている。私は地獄に堕ちるだろう。

人が住んでいるのかも怪しい荒れ寺で、三日ほど水ばかり飲んで過ごしていた。
彼が尋ねてきたのはそんな事を考えていた頃だった。手には牛丼。どうやら
貧しい生活を送っている私への手土産らしかった。
有難く頂いた。
というよりむさぼりくった。
仕事の都合上仕方がないこととはいえ、この貧乏暮らしは流石にきつかった。
昔、山篭りをしていた頃並にきつい。途中、彼が呆れたような眼差しでこちらを
見ていた気もするが、どうでもいい。むしろ呆れられるくらいのほうが丁度いい。
疑われずに済む。

543 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 00:10:16 ID:xHbmVPO70
今日まで起きた地蔵事件の犯人は私だ。彼はそれを知らない。
私の適当な推理と称する口からでまかせ嘘八百を事件の真相だと思っている。
おめでたいことだ。
食べ終えて振り返ると彼は私の布団に勝手に寝そべっていた。
ぼんやり天井を眺めながら「寝心地の悪い布団だなあ」と言ったので、
彼の顔を覗き込んで「慣れればなんてことはありません」と返した。
それだけのやり取り。何が発端なのか私には分からないが、ふと彼は
私の着ているみすぼらしい僧衣の襟元を掴むと、私を布団の上に引き倒した。
何がしたいのか分からずただぽかんと上になった彼の顔を見上げていたら、
そのまま唇を重ねてきた。
驚くより先に何年ぶりだろう?と考えた。
他人とこうして触れ合うのは随分と久しいことだった。
差し入れられた舌に応じたら、彼のほうが困惑したようだった。無理もないか。
止めたいのか続けたいのか自分でもよく分からなかった。ただ彼の体温を
手放すのは惜しかった。寒かったからか、寂しかったからか。
「こっちの趣味があったんですか」
尋ねたが返答は無かった。ただ行為の続行は行動で示された。
明らかに初めてと思われる、不器用で不慣れな彼の行為に身を任せても
快楽は得られない。むしろ得るものはただ苦痛ばかりだったが、いっそ
そのほうが心地よかった。自分にはそれが相応だと思えた。

544 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 00:20:05 ID:xHbmVPO70

いつか罰が当たるよ。祖母の声の幻聴が耳の奥で渦を巻く。
生きたまま与えられるこれが罰かもしれない。
救いを求めても蜘蛛の糸など何処にもありはしない。ただ彼の身体に
しがみついて耐え忍ぶように終りを待った。
短く呻いて彼が私の上に倒れ込んでくる。
朦朧とした意識で呟いた。
「地獄に堕ちますよ」
それは自分自身への言葉だった。間違いなく。
だが彼はそう思わなかったらしい。面白くもなさそうに「どうせ俺は地獄行きだよ」と
言葉を返した。そういえば彼は酒飲みだったなと以前の会話を思い出した。

地獄行き、二名か。
……それならば悪くない、と思ったことは地獄まで秘密のまま持って行こうと思う。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
二晩連続でお邪魔しましたー。

545 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 00:28:06 ID:EHmkVPVL0
>>541
また続きが読めてうれしいです。
すごく引き込まれてます。

546 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 10:00:30 ID:BiIdXpt60
>>541
終わってしまうのですか、寂しい。
でもそれまで充分味わせていただきます。

私もあなたの作品大好きです。
ぜんぜん知らないのに目に浮かぶ気がします。

>>544
うわ。両視点で完全体。GJ!

547 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 10:18:08 ID:lDVIlhS10
>542
元ネタ知らないけど好きだなあ…

548 名前:風と木の名無しさん:2006/12/18(月) 19:12:45 ID:tRdRhuc30



               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

  
・死帳の得る×白付き。のつもりで書いたはずが、後から見返してみるとどちらが攻めだか大してハッキリしてない事が発覚。でも、敢えてこう言い張る。
・時系列は例の極悪人→善良市民へのビフォーアフターを遂げた記憶喪失&24時間手錠生活期間。
・甘甘傾向の話が苦手な方はスルー推奨。( ;・A・)カナリミジカインダケドネー
・映画のせいでなぜか唐突に原作の手錠時代を書きたくなった。反省はいつかする。


549 名前:死帳1:2006/12/18(月) 19:17:14 ID:tRdRhuc30
 君はいつだって強引で、人の気持ちなんかこれぽっちも考えたことが無くて。
 自分のやりたいようにやって、人を振り回して、満足したと思ったら次の瞬間にはもう別のことに目を向けてる。
 君と手錠で繋がって、一緒に暮らすようになってからというもの、僕の苦労が絶える日は無い。
 猫のように(と言ったら、少し可愛すぎる喩えだけれど)気まぐれで、それでいて執念深い君の性格は、初めて会ったあの春の日から薄々知っていた筈なんだけどね。


「……何ですか」
「ん」
「あんまりジロジロ見ないでくださいよ、人のこと」
 不機嫌そうな、低い声。今日も君は椅子の上で膝を抱えて、僕の隣で座っている。昨日や一昨日と、同じように。
「別に。いつになったら竜崎が仕事するのかなって、ちょっと見張ってただけ」
「……やっぱり見てるんじゃないですか」
 君はそう呟いて、コーヒーカップを口に運ぶ。おかしな持ち方をするのも、筋張った細い指も、飽きるくらいに眺めてきた、いつもの君だ。
「じゃあ、竜崎は僕に見られるのは嫌い?」
「まあ……見られるよりは、見るほうが私は好きですね」
「へえ……」
 なるほどね。監視カメラに監禁、そして24時間の手錠生活。前科三犯のこの男としては実にらしい発言だ。僕はふうんと喉を鳴らし、含み笑いを浮かべた。
「何ニヤニヤしてるんです?」
「別に、さあ捜査に戻ろうか」
 僕はパソコンに振り返ると、威勢よくキーボードを叩き始めた。君は訳がわからないと言った風に頭を掻いて僕を眺め、またコーヒーカップを手に取った。
 ディスプレイに浮かぶ無数の文字。それを目で追う――ふりをしている内に、知らず僕の唇は苦笑いで歪んでいた。
 本当に、僕ときたら、どうかしてしまっている。
 君に信じてもらいたくて、君から解放してもらいたくて、このろくでもない日々を受け入れたはずなのに。僕の疑いが晴れた日には、真っ先にこの鎖を外そうと心に決めていた筈なのに。
 君と縛られたこの生活を、続けたいと思っている、僕がいる。
 信じられるか? 
 


550 名前:死帳2:2006/12/18(月) 19:18:35 ID:tRdRhuc30
 
 君に散々振り回され、順調だった人生をめちゃめちゃに崩されたはずの、この僕が。
 君が左隣にいるこの毎日を、心地いいとさえ、感じ始めているのだ。
 頚の産毛をくすぐられたような、柔らかくてむずがゆい快楽。それはいつしか、僕の心の中で確実に面積を占めていた。
「……正気じゃないな」
 思わず自嘲の笑みが漏れた。
「なんです? 今度は独り言ですか?」
 君が僕を覗き込んでくる。真っ黒いふたつの瞳の中で、僕の顔が揺れている。
 ――いったい何時から、これを当たり前だと思うようになったのだろう?
「なんでもないよ、竜崎」
 でも、あんまり見つめてこないで欲しい。そんなに近づかれたら、ついきみに触りたくなってしまう。
 君の肌や髪の感触、顔を埋めたときに仄かに漂う、甘い匂い。瞬きひとつの瞬間でイメージできるくらい、全身の細胞に隈なく擦り込まれたはずの君を、また僕は懲りもせずに求めてしまう。
「ねえ、……竜崎の事触ってもいい?」
「……? さっきから本当に変な人ですね」
「竜崎のが移ったんだよ、きっと」
 言われなくても分かってるよ。こんな自分、マトモじゃないって。
 僕の手のひらに納まった君の頬は、やっぱり予想通り冷たくて。いぶかしむように僕を見るきみの目は、いつも通り猫のように鋭くて。
 我侭なきみに縛られ、引きずられる毎日。面倒くさいようで、そんなのも案外嫌じゃない。
 全くどうかしてるよな、お互いに。
 吐息が混ざるくらい顔を近づけあって、僕らはどちらからともなく、笑った。君の手が僕の顔を包んで、そのままゆっくり、僕らの唇はひとつに溶けた。

 例えば、君のいない宇宙。例えば、君だけがいる無人島。
 どちらを選ぶかと訊かれると、きっと答えを出し兼ねてしまう。
 そんな僕が、今は此処に、いる。



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