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#title(旅路に歌と橘を)
昇天、六代目三優亭円樂×桂唄丸
>>74の続き、退院後のお話となっています
ぬるめのエロシーンありますが、本番はしていません
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
とある温泉地、とある旅館の一室にて。
「全くもう、今回ばかりはひやひやしましたよ」
いつもの毒はなりを潜め、安堵にゆるんだ表情で円樂は呟く。
桂唄丸何度目かの入院、今回は少し長かったものの、無事に高...
「いや、樂さんには心配かけたね。沢山見舞いに来てくれてあ...
歴代名人のカセットテープを見舞いに持って来たりと、円樂は...
その見舞いのうちの一回、円樂は衝動的に自分の気持ちを吐露...
信頼のおける噺家仲間以上の、恋慕の情を抱いているというこ...
そして、唄丸も同じ感情を抱いていることがわかった。
円樂は、墓場まで持っていくつもりであった思いを伝えられた...
互いの残り時間が見えて来たからこそ、唄丸も素直になれたと...
「あたしからの、ささやかなお礼だ。ひとつゆっくりしていっ...
そう笑いながら唄丸は円樂の盃に酒をなみなみと注ぐ。
おっとと、などと言いながら、円樂は実にうまそうにそれを飲...
唄丸が知り合いから教えてもらったというこの旅館は、建物、...
素晴らしい景色を眺望できる露天風呂につかり、粋な柄の浴衣...
一時期は食事を摂れなくなり体を壊した唄丸だが、療養のかい...
円樂はそれをにこにこと嬉しそうに眺め、酒を飲む。
ああ、これ以上の肴があるかい。
「いやあ、本当に美味しかった!ご馳走様でした」
「そいつぁ何よりだ。あたしはもう一風呂浴びてくるけど、樂...
旅館の仲居さんが布団を敷いてくれる傍らで、そんな会話をす...
「そうですね、あんまり美味しいからって少し飲み過ぎました...
「構わないからゆっくりお休みなさい。明日は少し早い電車に...
布団を敷き終えた仲居さんと共に、風呂道具を持って唄丸も部...
敷かれた二組の布団の内の一組にたまらずもぐりこむ。
思いが同じだったからって別段どうこうなる訳じゃないんだ、...
もっとも、その眠りはすぐに破られるのだが。
「し、師匠?!」
「何だい」
「何だいじゃないですよ。あちらに布団があるじゃあないです...
眠気が一瞬で吹っ飛んだ。風呂から戻った唄丸が円樂の布団に...
「人肌恋しい季節になってきたね」
「まだ八月ですよ」
「全く五月蠅いねえ。あたしゃ年中冷え性なんだ、あっためと...
予想外の展開に頭の処理が追いつかない。くらくらするのは酒...
どうにも私の心臓は、このお方に振り回されてばかりだ。
「…師匠、こんな風にされると、私はどうにも勘違いしてしまい...
「勘違いじゃないよ。あたしも樂さんのことを慕っているんだ」
夢でも見ているんじゃないのか、円樂は己の理性が崩れる音を...
「冥土の土産に、こういうのも悪かないだろ」
唄丸は楽しそうにくつくつと笑いながら言う。
思いを通わせたその後のことは考えないように、考えないよう...
もうどうなっても知らないぞ、ジジイ。
焚き付けて、煽ったアンタが悪いんだ。
「唄丸師匠」
円樂は唄丸の細い体躯を自分の方に引き寄せる。
「三途の川で、舟が沈んで溺れちまうくらいの土産を持たせて...
耳元でそう囁くと、円樂は唄丸を抱き締めた。
硝子細工を触るように、壊れないように、そっと。かつ、強く。
かつて、これほどまでに心を砕いた抱擁をしたことがあったか。
今まで抱いたどんな女にも、したことがない。
「師匠、アンタやっぱり痩せ過ぎです。もっと体重増やしてく...
「そういう樂さんは大分丸くなったねえ。色んなところが」
腹の贅肉をつままれる。分けてあげたいと心底思う。
「酒をしこたま飲んでたせいかね、あったかいよ」
「もっとあたためて差し上げますよ」
そう言うと、円樂は唄丸の唇を塞いだ。
舌を滑り込ませると、驚いたように体が跳ねた。―――やりすぎた...
「師匠、嫌だったらきちんと拒んでください。…このままでは、...
「大口叩いといて今更何言ってるんだい。こうなりゃ好きなだ...
「…本当に、いいんですね?」
「くどい!男に二言はありません」
そう言うと、今度は唄丸の方から口づけてきた。
―――ああ、このお方の覚悟を疑うなんてのは野暮な与太郎のする...
合せられた唇を割って舌をすくい上げ、絡め取った。唾液の水...
この人を、どろどろになるまで甘やかして、気持ちよくさせた...
円樂は、唄丸の浴衣の帯に手を掛ける。
「唄丸、覚悟!」
いつものように茶化しながら、浴衣の帯を解く。そうでもしな...
「こんな骨と皮、今更見たって楽しかないだろ」
されるがままに浴衣を脱がされながら、半ば呆れたように唄丸...
円樂は掛け布団を脇にやり、唄丸を組み敷く体勢になった。
細い体躯が、薄くつけられた室内灯のもとに照らされる。
「楽しいですよ、とっても」
耳元に口を近づけながら低く囁く。息がくすぐったかったのか...
耳に、広い額に、頬に、口に、首に、何度も唇を落としていく...
温泉に入る時に見た時は思わなかった、思わないようにしてい...
「…ちょっと、あたしだけ真っ裸で馬鹿みたいじゃないか。樂さ...
「黒いお腹がそんなに見たいだなんて、ンもう唄丸さんったら...
シナを作って冗談を言いながら浴衣を脱いでいると、渋い顔を...
二人とも生まれたままの姿になり、視線を合わせる。この状況...
円樂は再び唇を重ねると、舌と舌を絡めていく。
唇を離し、首筋、鎖骨、腕、薄い胸板、腹にも口づけの雨を降...
重ねた肌からお互いの体温が混ざり、どんどんと火照っていく...
「っ、はあ、女の気持ちがわかるようだね。こりゃあ噺に役立...
ああ、このお方の頭の中はいつだって落語のことでいっぱいだ。
そういうところも敬愛してやまないのだが、今夜は。今夜だけ...
「落語のことも、他のことも、何も考えないでください。私の...
円樂は、唄丸の目を見つめながら懇願する。我ながら女女しい...
「何だい、樂さん。落語に妬いてるのかい?」
目を細めながら、唄丸は実に楽しそうに笑った。そうだ、妬い...
「そうです。どうにも悋気が強くってね。今、この瞬間だけで...
「殺し文句だね。…あい、わかった。アンタのことだけ見ていま...
まっすぐ目を見られながらそんなことを言われたら、もう止ま...
円樂は唄丸に口づけ、口の中を蹂躙していく。唄丸の耳に届く...
絡めた指と指が時折思いがけず強く握られ、唄丸の良いポイン...
長い口づけの後口を離すと、最早どちらのものともわからない...
「樂さん、若いね。先代の意思を継いだかのように馬並みだね」
そんな円樂を恨めしそうに見ながら、唄丸は円樂の昂ぶりにそ...
今度は円樂が体を跳ねさせる番だった。ゆっくりと撫でられ、...
「師匠こそ、よくおっ起ちましたね。生涯現役は落語だけじゃ...
この齢できちんと勃起していることに少し驚いたが、自分の愛...
腹から、太腿、ふくらはぎに何度も唇を落とし、屹立に手を添...
「はあ、人の陰茎ってこんな風になっているんですねえ」
まじまじと唄丸のそれを見つめながら、感動したように円樂は...
唄丸は時折びくびくと体を震わせながら、そんな野暮なことは...
「気持ちいいですか、師匠」
「見りゃ、わかんだろ」
「いや、わかりませんね。顔を隠されちゃあ」
顔を覆っていた腕を優しくどけてやるとその表情はもうすっか...
「もっと気持ちよくなってください」
そう言うと、円樂はそっと鈴口に音を立てて口づけ、そのまま...
唄丸は大きく体を震わせ、甘い声を上げた。唾液をたっぷりと...
「っ、いけません樂さん。こんなことしちゃあ」
「男に二言はない、ですよね?気持ちよくなかったらやめます...
円樂はにっこりと笑うと、また口淫を再開する。口づけの時と...
時折口を離し、唾液で濡れたそれを手で愛撫してやる。眼を閉...
本当に悪い奴だ、腹黒、などと喚く声が聞こえた気がするが、...
甘い声でそんなことを言われても、私を煽るだけですよ、師匠。
唄丸が目を開けると、満足げな笑みを浮かべ、実に楽しそうに...
「止めとくれ」
ぴしゃりと唄丸に言われると、円樂は素直に手を止めた。
「すみません、痛かったでしょうか」
それとも、調子に乗り過ぎただろうか。さっと、表情が翳る。
「立ちなさい」
「は」
思わず、間の抜けた声が出る。もどかしそうに唄丸は続ける。
「わからない人だね。やられっぱなしは性に合わないんだよ」
皆まで言わせんじゃないよ、この与太郎。早くしなさいと毒づ...
めまいがしたのは、酒のせいでも、急に立ち上がったせいでも...
円樂のそれを前にし、きちんと正座をしてことに及ぼうとする...
恐る恐る、といった風に口を近づけると、ゆっくりとその中に...
「師匠っ…、気持ちいい、です」
勝ち誇ったような表情で、唄丸は円樂を上目づかいに見る。や...
始めはぎこちなかったものの、やがてコツをつかんだのかスト...
円樂が唄丸の頭を撫でると、鼻にかかったような甘い声が漏れ...
快感、興奮、罪悪感、背徳感、すべての感情がない交ぜになっ...
まずい、このままだと感極まって果ててしまいそうだ。
円樂は唄丸を自分の屹立より離し、折角だから、といって座っ...
唾液まみれになった互いの陰茎を近づけると、手でまとめて上...
「ふっ、ん、中々悪くない、じゃないか……はあ、あ」
唄丸は、もう嬌声を隠すことも忘れているようだった。
いつも大勢の人間に向けられて発されるあの色ある声音を、今...
それが男をたまらなく興奮させた。
「そいつぁ、何よりです。ふっ、私も気持ちいい、ですよっ…」
絶頂が近い事を知りつつ、この時が終わるのが惜しく、押し寄...
「―――あたしはもう、達してしまいそうだよ。最後に、どうか口...
「私も、っそろそろ………最後だなんて、やめてください。いつで...
円樂は唄丸を愛おしそうに見つめながらそう言うと、もう何度...
優しく、激しく舌を絡めながらも、手の動きは休めない。もう...
飛びきり甘い嬌声が上がったかと思うと、唄丸は絶頂を迎えた。
その声を聞いてしまったら、もう駄目だった。
「―――ッ」
間もなく円樂も絶頂に達した。
お互いの吐き出した精が混ざり合って零れ、ひどく熱く感じた。
熱い息を吐きながら余韻に浸った後、風邪を引くといけねえと...
円樂の腕の中に抱かれた唄丸は、間もなく規則正しい寝息を立...
本当に、今にも壊れてしまいそうな心もとなさだ。
だが、確実に今私の腕の中で心の臓を動かし、息をし、体温を...
本当に、これ以上の幸せがあるものだろうか。
円樂は満ち足りた気持ちで眠りに落ちていった。
もっとも、その眠りはしばらくして破られるのだが。
「樂さん、起きなよ。風呂に行くよ」
「へえ、師匠。おはようございます……なんです、まだ五時じゃ...
寝ぼけまなこをこすりながら、抗議する。
「老人の朝は早いんだよ。第一、汗かいちまったのはアンタの...
そう言われ、昨晩の出来事が鮮明に蘇って来た。眠気が一瞬で...
「はいはい。おじいちゃん、お風呂に行きましょうねえ」
照れ隠しに、いつもの大喜利でのように冗談を言いながら布団...
これまた絶品の朝食を摂り、東京へ向かう電車へ乗り込んだ。
ボックス席が丁度空いていたので、向かい合って他愛もない話...
ふいに会話が途切れ、円樂と唄丸は窓の外の景色を眺める。
ぽつんと、唄丸が呟いた。
「三途の川で溺れるには、まだまだ土産が足りないね」
そう言うと、唄丸は円樂を見据えながらくつくつと笑うのだっ...
ああ、こりゃあこのお方はまだまだ元気そうだ。
楽しそうに笑う男の隣にある車窓の景色が、後ろへ後ろへ飛び...
風と共に流れてゆく萌える山々は見慣れたいつもの着物の色と...
■後日潭■
「この歳になって益々色気が出て来たというのも、何というか...
女の演技に益々色気が出たと最近評判の唄丸であるが、素直に...
「見ているとぞくぞくしますよ、師匠」
『土産』を持たせる度、噺に益々艶が出てきているのを最も間...
「ふん、相変わらず若いね。血圧上がりすぎてあたしより早く...
「いやいや、芸に益々磨きがかかるのは素晴らしいことですよ...
「…そうかい」
「ゲイだけにね」
まんざらでも無さそうな色を浮かべていた唄丸だが、小声で囁...
「…座布団剥がしに山田くんを呼んで来ようか」
「そいつぁ歓ゲイし難いですねえ」
「いやだよ、くだらない」
二人は顔を見合わせ、秘密を共有する子供たちのように笑った。
自分はこのお方を見送らねばならないだろう。
その瞬間は想像もしたくないが、確実にやってくる。
三途の川で溺れる位沢山土産を持たせるから、どうか向こうで...
それまでに、絶対にアンタを超えてみせる。
アンタが思わず惚れ直しちまうような名人になってみせるから...
リアリストであると自負している男であるが、この時ばかりは...
願わくば、少しでもこの幸福な時間が続いて欲しいと。
強いていうなら、落語の神か。
(了)
円樂さんがどうにもヘタレになってしまいましたが、師匠のお...
ふたりのいつものやりとりを見られる日を、首を長くして待っ...
スレ占拠、途中でのナンバリングミス、大変失礼いたしました
- まさかこのお二方に萌える日が来ようとは・・・。新しい世...
- 読み応えある紫緑をありがとうございます。最高です! -- ...
- ありがとうございます。寿命が伸びました。なるべく長くお...
#comment
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#title(旅路に歌と橘を)
昇天、六代目三優亭円樂×桂唄丸
>>74の続き、退院後のお話となっています
ぬるめのエロシーンありますが、本番はしていません
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
とある温泉地、とある旅館の一室にて。
「全くもう、今回ばかりはひやひやしましたよ」
いつもの毒はなりを潜め、安堵にゆるんだ表情で円樂は呟く。
桂唄丸何度目かの入院、今回は少し長かったものの、無事に高...
「いや、樂さんには心配かけたね。沢山見舞いに来てくれてあ...
歴代名人のカセットテープを見舞いに持って来たりと、円樂は...
その見舞いのうちの一回、円樂は衝動的に自分の気持ちを吐露...
信頼のおける噺家仲間以上の、恋慕の情を抱いているというこ...
そして、唄丸も同じ感情を抱いていることがわかった。
円樂は、墓場まで持っていくつもりであった思いを伝えられた...
互いの残り時間が見えて来たからこそ、唄丸も素直になれたと...
「あたしからの、ささやかなお礼だ。ひとつゆっくりしていっ...
そう笑いながら唄丸は円樂の盃に酒をなみなみと注ぐ。
おっとと、などと言いながら、円樂は実にうまそうにそれを飲...
唄丸が知り合いから教えてもらったというこの旅館は、建物、...
素晴らしい景色を眺望できる露天風呂につかり、粋な柄の浴衣...
一時期は食事を摂れなくなり体を壊した唄丸だが、療養のかい...
円樂はそれをにこにこと嬉しそうに眺め、酒を飲む。
ああ、これ以上の肴があるかい。
「いやあ、本当に美味しかった!ご馳走様でした」
「そいつぁ何よりだ。あたしはもう一風呂浴びてくるけど、樂...
旅館の仲居さんが布団を敷いてくれる傍らで、そんな会話をす...
「そうですね、あんまり美味しいからって少し飲み過ぎました...
「構わないからゆっくりお休みなさい。明日は少し早い電車に...
布団を敷き終えた仲居さんと共に、風呂道具を持って唄丸も部...
敷かれた二組の布団の内の一組にたまらずもぐりこむ。
思いが同じだったからって別段どうこうなる訳じゃないんだ、...
もっとも、その眠りはすぐに破られるのだが。
「し、師匠?!」
「何だい」
「何だいじゃないですよ。あちらに布団があるじゃあないです...
眠気が一瞬で吹っ飛んだ。風呂から戻った唄丸が円樂の布団に...
「人肌恋しい季節になってきたね」
「まだ八月ですよ」
「全く五月蠅いねえ。あたしゃ年中冷え性なんだ、あっためと...
予想外の展開に頭の処理が追いつかない。くらくらするのは酒...
どうにも私の心臓は、このお方に振り回されてばかりだ。
「…師匠、こんな風にされると、私はどうにも勘違いしてしまい...
「勘違いじゃないよ。あたしも樂さんのことを慕っているんだ」
夢でも見ているんじゃないのか、円樂は己の理性が崩れる音を...
「冥土の土産に、こういうのも悪かないだろ」
唄丸は楽しそうにくつくつと笑いながら言う。
思いを通わせたその後のことは考えないように、考えないよう...
もうどうなっても知らないぞ、ジジイ。
焚き付けて、煽ったアンタが悪いんだ。
「唄丸師匠」
円樂は唄丸の細い体躯を自分の方に引き寄せる。
「三途の川で、舟が沈んで溺れちまうくらいの土産を持たせて...
耳元でそう囁くと、円樂は唄丸を抱き締めた。
硝子細工を触るように、壊れないように、そっと。かつ、強く。
かつて、これほどまでに心を砕いた抱擁をしたことがあったか。
今まで抱いたどんな女にも、したことがない。
「師匠、アンタやっぱり痩せ過ぎです。もっと体重増やしてく...
「そういう樂さんは大分丸くなったねえ。色んなところが」
腹の贅肉をつままれる。分けてあげたいと心底思う。
「酒をしこたま飲んでたせいかね、あったかいよ」
「もっとあたためて差し上げますよ」
そう言うと、円樂は唄丸の唇を塞いだ。
舌を滑り込ませると、驚いたように体が跳ねた。―――やりすぎた...
「師匠、嫌だったらきちんと拒んでください。…このままでは、...
「大口叩いといて今更何言ってるんだい。こうなりゃ好きなだ...
「…本当に、いいんですね?」
「くどい!男に二言はありません」
そう言うと、今度は唄丸の方から口づけてきた。
―――ああ、このお方の覚悟を疑うなんてのは野暮な与太郎のする...
合せられた唇を割って舌をすくい上げ、絡め取った。唾液の水...
この人を、どろどろになるまで甘やかして、気持ちよくさせた...
円樂は、唄丸の浴衣の帯に手を掛ける。
「唄丸、覚悟!」
いつものように茶化しながら、浴衣の帯を解く。そうでもしな...
「こんな骨と皮、今更見たって楽しかないだろ」
されるがままに浴衣を脱がされながら、半ば呆れたように唄丸...
円樂は掛け布団を脇にやり、唄丸を組み敷く体勢になった。
細い体躯が、薄くつけられた室内灯のもとに照らされる。
「楽しいですよ、とっても」
耳元に口を近づけながら低く囁く。息がくすぐったかったのか...
耳に、広い額に、頬に、口に、首に、何度も唇を落としていく...
温泉に入る時に見た時は思わなかった、思わないようにしてい...
「…ちょっと、あたしだけ真っ裸で馬鹿みたいじゃないか。樂さ...
「黒いお腹がそんなに見たいだなんて、ンもう唄丸さんったら...
シナを作って冗談を言いながら浴衣を脱いでいると、渋い顔を...
二人とも生まれたままの姿になり、視線を合わせる。この状況...
円樂は再び唇を重ねると、舌と舌を絡めていく。
唇を離し、首筋、鎖骨、腕、薄い胸板、腹にも口づけの雨を降...
重ねた肌からお互いの体温が混ざり、どんどんと火照っていく...
「っ、はあ、女の気持ちがわかるようだね。こりゃあ噺に役立...
ああ、このお方の頭の中はいつだって落語のことでいっぱいだ。
そういうところも敬愛してやまないのだが、今夜は。今夜だけ...
「落語のことも、他のことも、何も考えないでください。私の...
円樂は、唄丸の目を見つめながら懇願する。我ながら女女しい...
「何だい、樂さん。落語に妬いてるのかい?」
目を細めながら、唄丸は実に楽しそうに笑った。そうだ、妬い...
「そうです。どうにも悋気が強くってね。今、この瞬間だけで...
「殺し文句だね。…あい、わかった。アンタのことだけ見ていま...
まっすぐ目を見られながらそんなことを言われたら、もう止ま...
円樂は唄丸に口づけ、口の中を蹂躙していく。唄丸の耳に届く...
絡めた指と指が時折思いがけず強く握られ、唄丸の良いポイン...
長い口づけの後口を離すと、最早どちらのものともわからない...
「樂さん、若いね。先代の意思を継いだかのように馬並みだね」
そんな円樂を恨めしそうに見ながら、唄丸は円樂の昂ぶりにそ...
今度は円樂が体を跳ねさせる番だった。ゆっくりと撫でられ、...
「師匠こそ、よくおっ起ちましたね。生涯現役は落語だけじゃ...
この齢できちんと勃起していることに少し驚いたが、自分の愛...
腹から、太腿、ふくらはぎに何度も唇を落とし、屹立に手を添...
「はあ、人の陰茎ってこんな風になっているんですねえ」
まじまじと唄丸のそれを見つめながら、感動したように円樂は...
唄丸は時折びくびくと体を震わせながら、そんな野暮なことは...
「気持ちいいですか、師匠」
「見りゃ、わかんだろ」
「いや、わかりませんね。顔を隠されちゃあ」
顔を覆っていた腕を優しくどけてやるとその表情はもうすっか...
「もっと気持ちよくなってください」
そう言うと、円樂はそっと鈴口に音を立てて口づけ、そのまま...
唄丸は大きく体を震わせ、甘い声を上げた。唾液をたっぷりと...
「っ、いけません樂さん。こんなことしちゃあ」
「男に二言はない、ですよね?気持ちよくなかったらやめます...
円樂はにっこりと笑うと、また口淫を再開する。口づけの時と...
時折口を離し、唾液で濡れたそれを手で愛撫してやる。眼を閉...
本当に悪い奴だ、腹黒、などと喚く声が聞こえた気がするが、...
甘い声でそんなことを言われても、私を煽るだけですよ、師匠。
唄丸が目を開けると、満足げな笑みを浮かべ、実に楽しそうに...
「止めとくれ」
ぴしゃりと唄丸に言われると、円樂は素直に手を止めた。
「すみません、痛かったでしょうか」
それとも、調子に乗り過ぎただろうか。さっと、表情が翳る。
「立ちなさい」
「は」
思わず、間の抜けた声が出る。もどかしそうに唄丸は続ける。
「わからない人だね。やられっぱなしは性に合わないんだよ」
皆まで言わせんじゃないよ、この与太郎。早くしなさいと毒づ...
めまいがしたのは、酒のせいでも、急に立ち上がったせいでも...
円樂のそれを前にし、きちんと正座をしてことに及ぼうとする...
恐る恐る、といった風に口を近づけると、ゆっくりとその中に...
「師匠っ…、気持ちいい、です」
勝ち誇ったような表情で、唄丸は円樂を上目づかいに見る。や...
始めはぎこちなかったものの、やがてコツをつかんだのかスト...
円樂が唄丸の頭を撫でると、鼻にかかったような甘い声が漏れ...
快感、興奮、罪悪感、背徳感、すべての感情がない交ぜになっ...
まずい、このままだと感極まって果ててしまいそうだ。
円樂は唄丸を自分の屹立より離し、折角だから、といって座っ...
唾液まみれになった互いの陰茎を近づけると、手でまとめて上...
「ふっ、ん、中々悪くない、じゃないか……はあ、あ」
唄丸は、もう嬌声を隠すことも忘れているようだった。
いつも大勢の人間に向けられて発されるあの色ある声音を、今...
それが男をたまらなく興奮させた。
「そいつぁ、何よりです。ふっ、私も気持ちいい、ですよっ…」
絶頂が近い事を知りつつ、この時が終わるのが惜しく、押し寄...
「―――あたしはもう、達してしまいそうだよ。最後に、どうか口...
「私も、っそろそろ………最後だなんて、やめてください。いつで...
円樂は唄丸を愛おしそうに見つめながらそう言うと、もう何度...
優しく、激しく舌を絡めながらも、手の動きは休めない。もう...
飛びきり甘い嬌声が上がったかと思うと、唄丸は絶頂を迎えた。
その声を聞いてしまったら、もう駄目だった。
「―――ッ」
間もなく円樂も絶頂に達した。
お互いの吐き出した精が混ざり合って零れ、ひどく熱く感じた。
熱い息を吐きながら余韻に浸った後、風邪を引くといけねえと...
円樂の腕の中に抱かれた唄丸は、間もなく規則正しい寝息を立...
本当に、今にも壊れてしまいそうな心もとなさだ。
だが、確実に今私の腕の中で心の臓を動かし、息をし、体温を...
本当に、これ以上の幸せがあるものだろうか。
円樂は満ち足りた気持ちで眠りに落ちていった。
もっとも、その眠りはしばらくして破られるのだが。
「樂さん、起きなよ。風呂に行くよ」
「へえ、師匠。おはようございます……なんです、まだ五時じゃ...
寝ぼけまなこをこすりながら、抗議する。
「老人の朝は早いんだよ。第一、汗かいちまったのはアンタの...
そう言われ、昨晩の出来事が鮮明に蘇って来た。眠気が一瞬で...
「はいはい。おじいちゃん、お風呂に行きましょうねえ」
照れ隠しに、いつもの大喜利でのように冗談を言いながら布団...
これまた絶品の朝食を摂り、東京へ向かう電車へ乗り込んだ。
ボックス席が丁度空いていたので、向かい合って他愛もない話...
ふいに会話が途切れ、円樂と唄丸は窓の外の景色を眺める。
ぽつんと、唄丸が呟いた。
「三途の川で溺れるには、まだまだ土産が足りないね」
そう言うと、唄丸は円樂を見据えながらくつくつと笑うのだっ...
ああ、こりゃあこのお方はまだまだ元気そうだ。
楽しそうに笑う男の隣にある車窓の景色が、後ろへ後ろへ飛び...
風と共に流れてゆく萌える山々は見慣れたいつもの着物の色と...
■後日潭■
「この歳になって益々色気が出て来たというのも、何というか...
女の演技に益々色気が出たと最近評判の唄丸であるが、素直に...
「見ているとぞくぞくしますよ、師匠」
『土産』を持たせる度、噺に益々艶が出てきているのを最も間...
「ふん、相変わらず若いね。血圧上がりすぎてあたしより早く...
「いやいや、芸に益々磨きがかかるのは素晴らしいことですよ...
「…そうかい」
「ゲイだけにね」
まんざらでも無さそうな色を浮かべていた唄丸だが、小声で囁...
「…座布団剥がしに山田くんを呼んで来ようか」
「そいつぁ歓ゲイし難いですねえ」
「いやだよ、くだらない」
二人は顔を見合わせ、秘密を共有する子供たちのように笑った。
自分はこのお方を見送らねばならないだろう。
その瞬間は想像もしたくないが、確実にやってくる。
三途の川で溺れる位沢山土産を持たせるから、どうか向こうで...
それまでに、絶対にアンタを超えてみせる。
アンタが思わず惚れ直しちまうような名人になってみせるから...
リアリストであると自負している男であるが、この時ばかりは...
願わくば、少しでもこの幸福な時間が続いて欲しいと。
強いていうなら、落語の神か。
(了)
円樂さんがどうにもヘタレになってしまいましたが、師匠のお...
ふたりのいつものやりとりを見られる日を、首を長くして待っ...
スレ占拠、途中でのナンバリングミス、大変失礼いたしました
- まさかこのお二方に萌える日が来ようとは・・・。新しい世...
- 読み応えある紫緑をありがとうございます。最高です! -- ...
- ありがとうございます。寿命が伸びました。なるべく長くお...
#comment
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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