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66-10
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#title(はじめての 中編)
新スレありがとうございます。
前スレの508-516からの続きです。
516では二回コピペしてしまい読みにくくて済みませんでした。
昨年のタイガー・リョマ伝のお馬鹿弟子⇒堅物師匠です。
遥か前の本スレに投下されたネタを拝借しております。ありが...
訛りは適当なので間違いが有ったらすみませんです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
武知は顔を引き締めて伊蔵の肩を掴む手に力を入れる。
「伊蔵、これからわしがええと言うまで眼を瞑っちょき」
「眼ぇ、ですか?」
「それから、こうして両手で耳も塞いでおくがじゃ。……そんな...
不安になってきた伊蔵の表情をどうとらえたのか、武知は苦笑...
「おまんはわしに全て任せればええぜよ。何もせんで寝ておれ...
そんで、おまんが想う女子の事だけをひたすらに考えるがじ...
眼と耳と口と……頭ん中も閉じてしまえば、どんなに辛ろうて...
「……分かりましたき」
武知の言葉には若干の誤解が有った気もしたが、伊蔵は首肯す...
伊蔵にとって武知の言う事は絶対だ。
武知が間違う事など有り得ないのだから、今この場に置いては...
一心に見返していると、より一層悲しそうな顔をした武知はそ...
「さ、眼を閉じや―――そうじゃ、そのまま開けてはいけんちや。
えいか、ただ大切な女子のことだけを考えるぜよ伊蔵。……安...
分かったら早う耳も塞いでしばらく寝ちょり」
真っ暗で静かな世界で、伊蔵は独りになった。感じるのは己の...
これから何が起きるのか、漸く伊蔵は理解した。
つまり武知と伊蔵は見せモノなのだ。
大殿様と上士を楽しませるために、伊蔵は此処に呼ばれたのだ。
(別に構わんき)
それでも良かった。土佐において衆道などさほど珍しい事では...
伊蔵にとっては初めての事ではあるけれど、とくに抵抗は感じ...
むしろそれよりも、その相手が武知半平太であるという事の方...
武知が触れる処全てが熱い。
武知のひやりとした優しい手が心地よい。
くらくらとする頭で、しかし伊蔵は大事な事を思い出した。
武知には『大切な女子』の事だけを考えその名を呟いているよ...
ならば伊蔵はそれに従わねばならない。
伊蔵にとって大切な女子。誰が居ただろう。
身内の女子達はとても大切だけれど、この場合に想い浮かべる...
とすれば幼馴染であり坂本涼真の姉であるお留か。
同じく幼馴染で最近めっきり美しくなった佳緒だろうか。
それとも茶屋で馴染みのお近の方がいいのだろうか。
皆それぞれに大切だけれど、やはり違うような気がした。
今、頭の中を占めているのは只一人。
今、その名を呼びたいのは只一人。
それは伊蔵にとってとても大切ではあったけれど武知の言う『...
その人を想う事もその名を口にすることも今は武知の命に逆ら...
「―――?」
必死に考えを巡らせていた伊蔵は、ふと違和感を覚えた。
先ほどまで伊蔵を労っていたのは武知の優しい指で有ったはず...
それは丁寧に丹念に伊蔵を導こうとする、柔らかく濡れている...
これは。
……まさか。
「な、何をしゆうがですか先生ッ」
何が起きているのかに考え至り、伊蔵の声が思わず声が上ずる。
反射的に身を捩ろうとしたが、武知に只寝ているようにと言わ...
伊蔵から動く事は出来なかった。だから武知から離れてくれる...
「せんせ……だ、駄目ですき先生、そがな、」
そんな事をしては先生が穢れてしまう―――という言葉を伊蔵は呑...
……武知の指が伊蔵の唇にそっと触れている。
口を閉じろと言うことか。そう、伊蔵が今口にして良いのは『...
けれどそんなことを今考えられるわけがなかった。
武知の命だから従わねばならないのに、伊蔵の思考はあらぬ方...
段々と呼吸が荒くなる中で、伊蔵が考える事が出来たのはたっ...
(せめて、してはならん)
それだけは。師を汚すような事だけは。
―――絶対に堪えようと固く心に決したのも束の間、しかし伊蔵は...
ただ白く何もない世界に佇む伊蔵に、すぐに羞恥と後悔が押し...
(わしは先生になんちゅう事をしゆう)
伊蔵は己の情けなさに潰されそうになった。
腹を斬って師に詫びたいと心底願ったけれど、その武知が赦さ...
あんな事をしてしまったのだからすぐにその機会は訪れるに違...
その上あろうことか再び武知が伊蔵の身体に触れている。また...
やわやわとした優しさに身体があっさりと力を取り戻し、伊蔵...
まさかまた同じ轍を踏まねばならないのだろうか。
「……せっ」
先生と言いかけて、今度はすぐに口を閉じねばならない事を思...
だから必死に口を噤んだけれど、一旦落ち着いたはずの呼吸が...
必死に吐息を堪えているうち、やがて武知のひんやりとしたし...
次に起こるであろう事を思い浮かべ、伊蔵は血の引く思いにな...
今度は同じことになるのは嫌だった。
師を守りたいとこれだけ思っているのに、その師の顔を文字通...
今度こそ、師の導きに抗えるだろうか。先ほどはとても簡単に...
しかし、次に伊蔵が感じたのは先ほどの濡れた柔らかさではな...
重み。人の身体の重み。―――武知の、重み。
それはとても優しく温かく伊蔵を包み込んでくれた。
何か堪え切れない感情が突き上げてくる。
……何時だって、遥かな存在だった。
どれだけ渇望してもどれだけ己の修練に励んでも、その存在に...
なのにその武知半平太が、こんなにも。
(近い―――)
一粒、涙が溢れたことに気が付くのに少し時が掛かった。
それを自覚した刹那、またも真白な世界に導かれる。
かつてないほど美しく、身が震えそうになるほど甘美な場所だ...
ぼんやりしていた伊蔵をよそに武知の始末は素早かった。
己のみならず伊蔵の分まで身なりを整え、大殿様と上士に慇懃...
(流石は武知先生ぜよ)
前を歩く武知の背を見つめながら、伊蔵はまだ陶酔に浸ってい...
自分の身に起きたことが今だに信じられなかった。
勿論上士たちに強制されての屈辱的な状況ではあった。しかし...
心の奥底の密やかな望みをこんな形で叶えることになるとは。
あの一時を思い出し今更になって赤らんできた顔を伊蔵は押さ...
武知は優しかった。信じられない心地よさだった。喝采を叫び...
伊蔵が味わった悦びのほんの一部でも、武知も感じてくれたの...
―――否。
それまで夢見心地だったのにあることに思い至り、顔から血の...
女と情を交わす時には大切に慈しみを与えなければいけないの...
丁寧に労って、優しく慰めて、それでようやく受け入れる事が...
そうでなければとても辛い思いを味あわせることになるのだと...
であるならば、元々そう出来ていない男が相手を受け入れる為...
腕が総毛立つのを感じた。
何もなかった。
伊蔵は武知に対してなにもしていない。ただ馬鹿みたいに横た...
そして武知が己の身体を整えている気配も時間も無かった。
つまり武知が少しでも苦痛を和らげることが出来るような要因...
それでも武知は伊蔵を受け入れた。時間を取ってせめて己で整...
理由など簡単だ。
―――岡田以蔵を、一刻も早く城から帰す為。
ならば目を瞑らせたのは苦痛が浮かぶ顔を見せぬ為か。耳を塞...
(先生はいつもそうじゃ)
幼いころから武知はそうなのだ。
好物の饅頭だって、自分の分を平らげた伊蔵が物欲しそうにし...
動きの鈍い涼真が転んで饅頭を落としたのを見ては残りの半分...
皆の事ばかり考えて。己の事は後回しにして。それが武知半平...
伊蔵は切なくなった。
ここは武知に礼を言うべきなのだろうか。それとも。
(今度は痛とうしませんき)
そう伝えるべきなのだろうか。今度を求めるのは望みすぎだろ...
伊蔵が伝える言葉に悩んでいると、武知がぴたりと足を止めた。
「すまんかったのう、伊蔵」
振り向かぬままにそう呟いた武知の声には、深い自責の念が滲...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
次回で終わります。来週に来ます。
>>15
投下に苦労していたので助かりました。支援ありがとうござい...
#comment
終了行:
#title(はじめての 中編)
新スレありがとうございます。
前スレの508-516からの続きです。
516では二回コピペしてしまい読みにくくて済みませんでした。
昨年のタイガー・リョマ伝のお馬鹿弟子⇒堅物師匠です。
遥か前の本スレに投下されたネタを拝借しております。ありが...
訛りは適当なので間違いが有ったらすみませんです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
武知は顔を引き締めて伊蔵の肩を掴む手に力を入れる。
「伊蔵、これからわしがええと言うまで眼を瞑っちょき」
「眼ぇ、ですか?」
「それから、こうして両手で耳も塞いでおくがじゃ。……そんな...
不安になってきた伊蔵の表情をどうとらえたのか、武知は苦笑...
「おまんはわしに全て任せればええぜよ。何もせんで寝ておれ...
そんで、おまんが想う女子の事だけをひたすらに考えるがじ...
眼と耳と口と……頭ん中も閉じてしまえば、どんなに辛ろうて...
「……分かりましたき」
武知の言葉には若干の誤解が有った気もしたが、伊蔵は首肯す...
伊蔵にとって武知の言う事は絶対だ。
武知が間違う事など有り得ないのだから、今この場に置いては...
一心に見返していると、より一層悲しそうな顔をした武知はそ...
「さ、眼を閉じや―――そうじゃ、そのまま開けてはいけんちや。
えいか、ただ大切な女子のことだけを考えるぜよ伊蔵。……安...
分かったら早う耳も塞いでしばらく寝ちょり」
真っ暗で静かな世界で、伊蔵は独りになった。感じるのは己の...
これから何が起きるのか、漸く伊蔵は理解した。
つまり武知と伊蔵は見せモノなのだ。
大殿様と上士を楽しませるために、伊蔵は此処に呼ばれたのだ。
(別に構わんき)
それでも良かった。土佐において衆道などさほど珍しい事では...
伊蔵にとっては初めての事ではあるけれど、とくに抵抗は感じ...
むしろそれよりも、その相手が武知半平太であるという事の方...
武知が触れる処全てが熱い。
武知のひやりとした優しい手が心地よい。
くらくらとする頭で、しかし伊蔵は大事な事を思い出した。
武知には『大切な女子』の事だけを考えその名を呟いているよ...
ならば伊蔵はそれに従わねばならない。
伊蔵にとって大切な女子。誰が居ただろう。
身内の女子達はとても大切だけれど、この場合に想い浮かべる...
とすれば幼馴染であり坂本涼真の姉であるお留か。
同じく幼馴染で最近めっきり美しくなった佳緒だろうか。
それとも茶屋で馴染みのお近の方がいいのだろうか。
皆それぞれに大切だけれど、やはり違うような気がした。
今、頭の中を占めているのは只一人。
今、その名を呼びたいのは只一人。
それは伊蔵にとってとても大切ではあったけれど武知の言う『...
その人を想う事もその名を口にすることも今は武知の命に逆ら...
「―――?」
必死に考えを巡らせていた伊蔵は、ふと違和感を覚えた。
先ほどまで伊蔵を労っていたのは武知の優しい指で有ったはず...
それは丁寧に丹念に伊蔵を導こうとする、柔らかく濡れている...
これは。
……まさか。
「な、何をしゆうがですか先生ッ」
何が起きているのかに考え至り、伊蔵の声が思わず声が上ずる。
反射的に身を捩ろうとしたが、武知に只寝ているようにと言わ...
伊蔵から動く事は出来なかった。だから武知から離れてくれる...
「せんせ……だ、駄目ですき先生、そがな、」
そんな事をしては先生が穢れてしまう―――という言葉を伊蔵は呑...
……武知の指が伊蔵の唇にそっと触れている。
口を閉じろと言うことか。そう、伊蔵が今口にして良いのは『...
けれどそんなことを今考えられるわけがなかった。
武知の命だから従わねばならないのに、伊蔵の思考はあらぬ方...
段々と呼吸が荒くなる中で、伊蔵が考える事が出来たのはたっ...
(せめて、してはならん)
それだけは。師を汚すような事だけは。
―――絶対に堪えようと固く心に決したのも束の間、しかし伊蔵は...
ただ白く何もない世界に佇む伊蔵に、すぐに羞恥と後悔が押し...
(わしは先生になんちゅう事をしゆう)
伊蔵は己の情けなさに潰されそうになった。
腹を斬って師に詫びたいと心底願ったけれど、その武知が赦さ...
あんな事をしてしまったのだからすぐにその機会は訪れるに違...
その上あろうことか再び武知が伊蔵の身体に触れている。また...
やわやわとした優しさに身体があっさりと力を取り戻し、伊蔵...
まさかまた同じ轍を踏まねばならないのだろうか。
「……せっ」
先生と言いかけて、今度はすぐに口を閉じねばならない事を思...
だから必死に口を噤んだけれど、一旦落ち着いたはずの呼吸が...
必死に吐息を堪えているうち、やがて武知のひんやりとしたし...
次に起こるであろう事を思い浮かべ、伊蔵は血の引く思いにな...
今度は同じことになるのは嫌だった。
師を守りたいとこれだけ思っているのに、その師の顔を文字通...
今度こそ、師の導きに抗えるだろうか。先ほどはとても簡単に...
しかし、次に伊蔵が感じたのは先ほどの濡れた柔らかさではな...
重み。人の身体の重み。―――武知の、重み。
それはとても優しく温かく伊蔵を包み込んでくれた。
何か堪え切れない感情が突き上げてくる。
……何時だって、遥かな存在だった。
どれだけ渇望してもどれだけ己の修練に励んでも、その存在に...
なのにその武知半平太が、こんなにも。
(近い―――)
一粒、涙が溢れたことに気が付くのに少し時が掛かった。
それを自覚した刹那、またも真白な世界に導かれる。
かつてないほど美しく、身が震えそうになるほど甘美な場所だ...
ぼんやりしていた伊蔵をよそに武知の始末は素早かった。
己のみならず伊蔵の分まで身なりを整え、大殿様と上士に慇懃...
(流石は武知先生ぜよ)
前を歩く武知の背を見つめながら、伊蔵はまだ陶酔に浸ってい...
自分の身に起きたことが今だに信じられなかった。
勿論上士たちに強制されての屈辱的な状況ではあった。しかし...
心の奥底の密やかな望みをこんな形で叶えることになるとは。
あの一時を思い出し今更になって赤らんできた顔を伊蔵は押さ...
武知は優しかった。信じられない心地よさだった。喝采を叫び...
伊蔵が味わった悦びのほんの一部でも、武知も感じてくれたの...
―――否。
それまで夢見心地だったのにあることに思い至り、顔から血の...
女と情を交わす時には大切に慈しみを与えなければいけないの...
丁寧に労って、優しく慰めて、それでようやく受け入れる事が...
そうでなければとても辛い思いを味あわせることになるのだと...
であるならば、元々そう出来ていない男が相手を受け入れる為...
腕が総毛立つのを感じた。
何もなかった。
伊蔵は武知に対してなにもしていない。ただ馬鹿みたいに横た...
そして武知が己の身体を整えている気配も時間も無かった。
つまり武知が少しでも苦痛を和らげることが出来るような要因...
それでも武知は伊蔵を受け入れた。時間を取ってせめて己で整...
理由など簡単だ。
―――岡田以蔵を、一刻も早く城から帰す為。
ならば目を瞑らせたのは苦痛が浮かぶ顔を見せぬ為か。耳を塞...
(先生はいつもそうじゃ)
幼いころから武知はそうなのだ。
好物の饅頭だって、自分の分を平らげた伊蔵が物欲しそうにし...
動きの鈍い涼真が転んで饅頭を落としたのを見ては残りの半分...
皆の事ばかり考えて。己の事は後回しにして。それが武知半平...
伊蔵は切なくなった。
ここは武知に礼を言うべきなのだろうか。それとも。
(今度は痛とうしませんき)
そう伝えるべきなのだろうか。今度を求めるのは望みすぎだろ...
伊蔵が伝える言葉に悩んでいると、武知がぴたりと足を止めた。
「すまんかったのう、伊蔵」
振り向かぬままにそう呟いた武知の声には、深い自責の念が滲...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
次回で終わります。来週に来ます。
>>15
投下に苦労していたので助かりました。支援ありがとうござい...
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