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65-216
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#title(ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )もうすぐで終わります。
「本気、か」
そして一カ月が経過した。
バルドに愛が芽生えたのかというとそれはわからない。
一度も愛しているという言葉を聞いたことがないからだ。
二人は正座して向き合っていた。
「じゃあお前にはこのエルブンランス持ってもらって、ローブ...
「…うん」
一カ月経過したら人間の魔法使いのようになってもらうという...
もうすぐ他の二人もやってくるらしい。
一人前に人間のように扱われることは夢だった。
そのはずなのに、なんでこんなにも胸にもやがかかったように...
「ヒールマッシュルームだろ、あと、灯籠な。ランプリングの...
「…うん」
「何だ、テンション低いな。人間と旅するの楽しみにしてたん...
「…当然だ」
人と一緒に旅をして、異世界に行って、結局賭けには負けたが...
けれど気になる。
「本当に愛すれば…」
ヴァンパイアになるかもな。
これはバルドが前に言った言葉である。
あれからずっとバルドと夜桜の関係は良好であり、バルドが暴...
愛すればヴァンパイアに。
愛さなかったらどうなるのだろう。
また独りに戻る?
こんなときに異世界の『レイン』は何をしたのだろう、一緒に...
それともヴァンパイアにずっとしたかったが、することがそれ...
そんなことを考えて、表情が曇る夜桜の頬に、バルドは手を伸...
途端、仲間二人の大きな声が響いて、バルドの手は引っ込んだ。
「ほら、他の奴らきたぞ。ん、夜桜?」
一階へ降りようとするバルドの甲冑の端を、夜桜はつかんだ。
「…好き」
一度それだけ言うと、ふいっとつかんだ甲冑を手放して、突き...
「え、あ、夜桜?」
戸惑ってバルドは夜桜を見るが、すぐに仲間の大きな声に、一...
「ヤッホー、元気にしてたー?」
「予定時刻きっちりに来たな、んじゃ呼んでくるよ」
そんなやり取りが聞こえる。
もうすぐバルドが来る。
夜桜はその場で正座したまま、エルブンランスを眺めていた。
もしもバルドが好きじゃなかったから立ち去る。そういったは...
けれどバルドの中では、夜桜は仲間になることが決定していて...
結局は利用なのか?
あの時押し倒したのは間違いなく欲情しただけで、愛なんてこ...
夜桜はぽたりとエルブンランスに落ちた涙をぬぐった。
(バルドは愛してなくてただ仲間に。ああ…ああ、ああああああ...
ガシャン、と心の何かが壊れるのを聴いた。
そして窓を開けると、ミストフードをかぶって飛び降りた。
「夜桜、すまん、長くなった。…夜桜?」
開け放たれた窓からは陽の光が入って来ていて、そこにエルブ...
当然夜桜はそこに正座しているはずもなく、まさに部屋はもぬ...
「何…?」
慌てて窓から見るが、夜桜の姿はなく、人通りは少ない。
『一カ月たったら、去る』
その言葉が頭をよぎった。
まさか、逃げた?
自分が愛してないと言ったから?
それより逃げ出して何をする気だ?
様々な不安がよぎり、慌てて仲間に知らせに行った。
一年が過ぎた。
エルブンランスを持ち、ミストフードをかぶった極悪人がいる...
何でもその髪は銀色で、目の色は邪悪なまでに赤い。
牙を見せてにやりと笑い、警備員ですら歯が立たない。
その噂を耳にしたのは、ずっと夜桜を探してきたバルドだった。
たまたま酒場で夜桜のうわさを探していた時に、まさに条件が...
「知らないんかい、バルド。このガルズヘイムを、歩きで移動...
マニカパ僧侶の友人の言葉に、信じられないといった様子でバ...
干し肉を食いちぎりながら、マニカパの友人は続ける。
「名前?名前は、名乗らないそうだ。だから依頼引き受け人も...
(夜桜…?)
夜まで噂を待ち、バルド達はガルズヘイムの都市に宿をとった。
バルドは一人で、ビアドソードを手に、都市を徘徊した。
いつも困った顔をしていた夜桜を思い出す。
(もうあれから一年もたった)
突然いなくなった夜桜は、本物の人間に成り済まして、人を襲...
突然、背後に気配を感じて、鉄壁の盾をとっさに出すと、エル...
(来たか!)
「…ちっ」
低い声がした。夜桜の声であって夜桜の声ではない。
一度体制をたて戻すと、相手はミストフードのフードをとった。
まさにその下にあった顔は、夜桜だった。だが、昔のように困...
唇が弧を描いて笑う夜桜に、バルドは体が動かなくなるのを感...
「これは懐かしい、流石、私がかつて惚れた男…」
「夜桜、なのか…」
「ふふ、君との生活で変わったよ、人間の愚かさを知った。同...
ヴァンパイアというモンスターでありながら人間を殺しては血...
エルブンランスをくるくる回すと、ぴたりとバルドの首をめが...
「懐かしいだろう、この武器。みなよ、このミストフードも。...
目に光がないが、ふと見せた表情には陰りがあった。
それはいつかに見た、悲しげな夜桜の表情だった。
「夜桜…、俺が拒んだせいでこうなったのか?」
バルドが悲しげに減る無の下から言葉を紡ぐ。それを聴いて、...
馬鹿にでもするかのようにくすりと笑い、ランスを振り回す。
「さあ、なんだろうね。私にはわからないよ。ただ、耐えられ...
所詮人間とヴァンパイアは相いれんのだ、人間はずっと殺人依...
バルドに惚れていたことは汚点だ。高潔な私がなんて愚かな行...
好き。
消える直前につぶやいた言葉と全く違う言葉を紡ぐ。
ずっとずっと一カ月の間苦しんでいたなんてバルドは知らない...
まさに血の涙が出るほどの思いでバルドのことが好きだったと...
夜桜なんて名前もいらない。
バルドに添い寝してもらった思い出なんていらない。
「…いらない」
夜桜はぼそりと呟く。
月明かりに照らされた。
雲がすっと流れて、月の光が夜桜の顔を照らした。その眼から...
「夜桜!」
「来るな!」
夜桜が、走りよるバルドに向けてエルブンランスを繰り出した。
だがそれは、刃の部分をつかんだバルドによって止められた。
手袋で覆われた手は、それが破れて、血がにじみだす。ヴァン...
「何で自分の心に嘘をつくんだ、夜桜。お前はそんな奴じゃな...
短い間でも、ずっと添い寝してほしい、添い寝すれば腕の中で...
「バルドに何がわかる…」
夜桜がエルブンランスを離すと、カランと柄の方が地面に落ち...
「利用したくせに、利用しようとして、ただ強いから、それだ...
夜桜は顔を覆った。強がっていた、先ほどまでの狂気は消えて...
「違うんだ、夜桜。俺はずっと旅をすればお前に対しての気持...
途端、バルドの首を、夜桜の右手がつかんだ。
「よくも嘘ばかりがそう出てくるものだ。このままへし折って...
好き。
バルド、好き。
愛してくれたらヴァンパイアになってくれる?
いや、一緒に旅をするだけでもいい。
首を折ってやろうと力を込めて、しかしそれがどうしてもでき...
月明かりに照らされたバルドの顔は、一年前と変わっていなく...
なぜその手に力が込められないのか、夜桜はわかっていた。
バルドは殺せない。ずっと殺そうとこの都市で悪事を繰り返し...
まさに名前の知れぬ悪の英雄となってしまった夜桜には、もう...
血まみれのフードとエルブンランスは何度も人間の喉を割いて...
血は洗っても洗っても取れなくて、何度も宿で泣いた。
「よ…ざ…」
はっと、その言葉で自我が戻る。
いくら力を込めなくても、首を絞めつけていれば死んでしまう...
ごほごほと咳き込むバルドは、夜桜に対して初めて刃を向けた。
「私を殺すのか」
夜桜は、エルブンランスを手に取ろうともせず、かといって魔...
バルドはビアドソードを突き付けたまま、微動だにしなかった。
「そうか。殺すのか…」
頭を垂れて涙を流す夜桜を、バルドは見つめていた。
何度も頭の中にあるのは、安心して腕の中で眠る夜桜の寝顔。
いつも寂しいといっては話をせがむ姿。
ではこの一年、どれだけ夜桜は寂しかったのだろう。
こんなか弱い奴が、どうして悪の英雄にまでなってしまったの...
「殺すなら、早く殺せ。何も抵抗はもうしない。もう疲れた。...
すっと顔をあげた。
涙でぬれた夜桜の顔はとても月に映えて美しかった。
「もし、死んだなら、最後にその死体をお前の腕の中で抱いて...
「っ…、夜桜」
ビアドソードが奇跡を描くのを感じる。
刃が首に来たと思い、夜桜は目をぎゅっと閉じた。
だが、刃が転がる音とともに、夜桜は抱きしめられていた。
「え」
ギュッと抱かれ、その温かさにめまいがした。
一年前に抱きしめられた時を思い出す。その腕の中で眠ってい...
あたたかい、血なんてものよりよっぽどあたたかく、生臭くな...
「夜桜、本当は辛いんだろう。俺にはわかるぞ。夜桜、今心か...
「…あ」
涙がこぼれて、夜桜は顔を覆う。
情けないまでに小さな、蚊の鳴くような声ですすり泣きはじめ...
「強いわけがないじゃないか…。バルドと私は種族が違う、愛す...
「夜桜」
昔の優しい声が響いた。
耳元で、なでるようなその声に、懐かしさを覚えた。
「やり直そうか」
「バルド…?」
「またうちに来い。また一緒に寝よう。今度はさ、夜桜の心の...
「…うん…、言った…」
「お互い信じられなかったからこう何ったんだろ、今度はもう...
一つ、息をついて、バルドは夜桜の髪をなでる。
「俺は本当に夜桜が世界を旅して喜ぶところを見たかったんだ...
今でも持っている、荷物の中にあるその本。
いつも宿でその本を出しては、読んで、頬を寄せた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )恐らく次で終わりです、長々と失礼...
- 切なくて……泣きそうです。夜桜…… -- [[リィ]] &new{2011-07-2...
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|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )もうすぐで終わります。
「本気、か」
そして一カ月が経過した。
バルドに愛が芽生えたのかというとそれはわからない。
一度も愛しているという言葉を聞いたことがないからだ。
二人は正座して向き合っていた。
「じゃあお前にはこのエルブンランス持ってもらって、ローブ...
「…うん」
一カ月経過したら人間の魔法使いのようになってもらうという...
もうすぐ他の二人もやってくるらしい。
一人前に人間のように扱われることは夢だった。
そのはずなのに、なんでこんなにも胸にもやがかかったように...
「ヒールマッシュルームだろ、あと、灯籠な。ランプリングの...
「…うん」
「何だ、テンション低いな。人間と旅するの楽しみにしてたん...
「…当然だ」
人と一緒に旅をして、異世界に行って、結局賭けには負けたが...
けれど気になる。
「本当に愛すれば…」
ヴァンパイアになるかもな。
これはバルドが前に言った言葉である。
あれからずっとバルドと夜桜の関係は良好であり、バルドが暴...
愛すればヴァンパイアに。
愛さなかったらどうなるのだろう。
また独りに戻る?
こんなときに異世界の『レイン』は何をしたのだろう、一緒に...
それともヴァンパイアにずっとしたかったが、することがそれ...
そんなことを考えて、表情が曇る夜桜の頬に、バルドは手を伸...
途端、仲間二人の大きな声が響いて、バルドの手は引っ込んだ。
「ほら、他の奴らきたぞ。ん、夜桜?」
一階へ降りようとするバルドの甲冑の端を、夜桜はつかんだ。
「…好き」
一度それだけ言うと、ふいっとつかんだ甲冑を手放して、突き...
「え、あ、夜桜?」
戸惑ってバルドは夜桜を見るが、すぐに仲間の大きな声に、一...
「ヤッホー、元気にしてたー?」
「予定時刻きっちりに来たな、んじゃ呼んでくるよ」
そんなやり取りが聞こえる。
もうすぐバルドが来る。
夜桜はその場で正座したまま、エルブンランスを眺めていた。
もしもバルドが好きじゃなかったから立ち去る。そういったは...
けれどバルドの中では、夜桜は仲間になることが決定していて...
結局は利用なのか?
あの時押し倒したのは間違いなく欲情しただけで、愛なんてこ...
夜桜はぽたりとエルブンランスに落ちた涙をぬぐった。
(バルドは愛してなくてただ仲間に。ああ…ああ、ああああああ...
ガシャン、と心の何かが壊れるのを聴いた。
そして窓を開けると、ミストフードをかぶって飛び降りた。
「夜桜、すまん、長くなった。…夜桜?」
開け放たれた窓からは陽の光が入って来ていて、そこにエルブ...
当然夜桜はそこに正座しているはずもなく、まさに部屋はもぬ...
「何…?」
慌てて窓から見るが、夜桜の姿はなく、人通りは少ない。
『一カ月たったら、去る』
その言葉が頭をよぎった。
まさか、逃げた?
自分が愛してないと言ったから?
それより逃げ出して何をする気だ?
様々な不安がよぎり、慌てて仲間に知らせに行った。
一年が過ぎた。
エルブンランスを持ち、ミストフードをかぶった極悪人がいる...
何でもその髪は銀色で、目の色は邪悪なまでに赤い。
牙を見せてにやりと笑い、警備員ですら歯が立たない。
その噂を耳にしたのは、ずっと夜桜を探してきたバルドだった。
たまたま酒場で夜桜のうわさを探していた時に、まさに条件が...
「知らないんかい、バルド。このガルズヘイムを、歩きで移動...
マニカパ僧侶の友人の言葉に、信じられないといった様子でバ...
干し肉を食いちぎりながら、マニカパの友人は続ける。
「名前?名前は、名乗らないそうだ。だから依頼引き受け人も...
(夜桜…?)
夜まで噂を待ち、バルド達はガルズヘイムの都市に宿をとった。
バルドは一人で、ビアドソードを手に、都市を徘徊した。
いつも困った顔をしていた夜桜を思い出す。
(もうあれから一年もたった)
突然いなくなった夜桜は、本物の人間に成り済まして、人を襲...
突然、背後に気配を感じて、鉄壁の盾をとっさに出すと、エル...
(来たか!)
「…ちっ」
低い声がした。夜桜の声であって夜桜の声ではない。
一度体制をたて戻すと、相手はミストフードのフードをとった。
まさにその下にあった顔は、夜桜だった。だが、昔のように困...
唇が弧を描いて笑う夜桜に、バルドは体が動かなくなるのを感...
「これは懐かしい、流石、私がかつて惚れた男…」
「夜桜、なのか…」
「ふふ、君との生活で変わったよ、人間の愚かさを知った。同...
ヴァンパイアというモンスターでありながら人間を殺しては血...
エルブンランスをくるくる回すと、ぴたりとバルドの首をめが...
「懐かしいだろう、この武器。みなよ、このミストフードも。...
目に光がないが、ふと見せた表情には陰りがあった。
それはいつかに見た、悲しげな夜桜の表情だった。
「夜桜…、俺が拒んだせいでこうなったのか?」
バルドが悲しげに減る無の下から言葉を紡ぐ。それを聴いて、...
馬鹿にでもするかのようにくすりと笑い、ランスを振り回す。
「さあ、なんだろうね。私にはわからないよ。ただ、耐えられ...
所詮人間とヴァンパイアは相いれんのだ、人間はずっと殺人依...
バルドに惚れていたことは汚点だ。高潔な私がなんて愚かな行...
好き。
消える直前につぶやいた言葉と全く違う言葉を紡ぐ。
ずっとずっと一カ月の間苦しんでいたなんてバルドは知らない...
まさに血の涙が出るほどの思いでバルドのことが好きだったと...
夜桜なんて名前もいらない。
バルドに添い寝してもらった思い出なんていらない。
「…いらない」
夜桜はぼそりと呟く。
月明かりに照らされた。
雲がすっと流れて、月の光が夜桜の顔を照らした。その眼から...
「夜桜!」
「来るな!」
夜桜が、走りよるバルドに向けてエルブンランスを繰り出した。
だがそれは、刃の部分をつかんだバルドによって止められた。
手袋で覆われた手は、それが破れて、血がにじみだす。ヴァン...
「何で自分の心に嘘をつくんだ、夜桜。お前はそんな奴じゃな...
短い間でも、ずっと添い寝してほしい、添い寝すれば腕の中で...
「バルドに何がわかる…」
夜桜がエルブンランスを離すと、カランと柄の方が地面に落ち...
「利用したくせに、利用しようとして、ただ強いから、それだ...
夜桜は顔を覆った。強がっていた、先ほどまでの狂気は消えて...
「違うんだ、夜桜。俺はずっと旅をすればお前に対しての気持...
途端、バルドの首を、夜桜の右手がつかんだ。
「よくも嘘ばかりがそう出てくるものだ。このままへし折って...
好き。
バルド、好き。
愛してくれたらヴァンパイアになってくれる?
いや、一緒に旅をするだけでもいい。
首を折ってやろうと力を込めて、しかしそれがどうしてもでき...
月明かりに照らされたバルドの顔は、一年前と変わっていなく...
なぜその手に力が込められないのか、夜桜はわかっていた。
バルドは殺せない。ずっと殺そうとこの都市で悪事を繰り返し...
まさに名前の知れぬ悪の英雄となってしまった夜桜には、もう...
血まみれのフードとエルブンランスは何度も人間の喉を割いて...
血は洗っても洗っても取れなくて、何度も宿で泣いた。
「よ…ざ…」
はっと、その言葉で自我が戻る。
いくら力を込めなくても、首を絞めつけていれば死んでしまう...
ごほごほと咳き込むバルドは、夜桜に対して初めて刃を向けた。
「私を殺すのか」
夜桜は、エルブンランスを手に取ろうともせず、かといって魔...
バルドはビアドソードを突き付けたまま、微動だにしなかった。
「そうか。殺すのか…」
頭を垂れて涙を流す夜桜を、バルドは見つめていた。
何度も頭の中にあるのは、安心して腕の中で眠る夜桜の寝顔。
いつも寂しいといっては話をせがむ姿。
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こんなか弱い奴が、どうして悪の英雄にまでなってしまったの...
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涙でぬれた夜桜の顔はとても月に映えて美しかった。
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「っ…、夜桜」
ビアドソードが奇跡を描くのを感じる。
刃が首に来たと思い、夜桜は目をぎゅっと閉じた。
だが、刃が転がる音とともに、夜桜は抱きしめられていた。
「え」
ギュッと抱かれ、その温かさにめまいがした。
一年前に抱きしめられた時を思い出す。その腕の中で眠ってい...
あたたかい、血なんてものよりよっぽどあたたかく、生臭くな...
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「…あ」
涙がこぼれて、夜桜は顔を覆う。
情けないまでに小さな、蚊の鳴くような声ですすり泣きはじめ...
「強いわけがないじゃないか…。バルドと私は種族が違う、愛す...
「夜桜」
昔の優しい声が響いた。
耳元で、なでるようなその声に、懐かしさを覚えた。
「やり直そうか」
「バルド…?」
「またうちに来い。また一緒に寝よう。今度はさ、夜桜の心の...
「…うん…、言った…」
「お互い信じられなかったからこう何ったんだろ、今度はもう...
一つ、息をついて、バルドは夜桜の髪をなでる。
「俺は本当に夜桜が世界を旅して喜ぶところを見たかったんだ...
今でも持っている、荷物の中にあるその本。
いつも宿でその本を出しては、読んで、頬を寄せた。
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