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63-12
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#title(三匹が斬る! 殿様×千石 「流恋情歌 Part2」)
>>1乙です。
前スレ>>427の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪...
訳あって殿様がオカマちゃん風味。エロなし。
全三回投下の二回目です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しぶる親父を拝み倒してその夜は飯屋に宿を借り、翌日ふたり...
親父に梅乃屋まで言づてをしてもらうと、おきみから事情を聞...
女達は死んだ筈のお絹と話が出来る喜びや、薄情な千吉への恨...
別れがたい女達の願いと、旅仲間と待ち合わせをしている都合...
そうなると宿代や飯代を稼がねばならず、あちこち訪ねて運よ...
男達を叩きのめしている最中にひょっこりお絹が顔を出し、兵...
ほとんどひとりで働き、なおかつ兵四郎を気遣ってやらなけれ...
だが乗り掛かった船だと開き直り、船着き場に通う兵四郎に付...
大店に泊まり込んでの用心棒暮らしが、そんな調子で三日を過...
親父の飯屋でふたりはまた、酒を酌み交わしていた。すると店...
「あっ殿様!仙石さぁん!」
「あらっ、ほんとだ。元気にしてた?昼間っから酒飲んで、珍し...
「やあ、お恵ちゃんに陣内。元気だぞ、酒は旨いしな」
「お前らも一杯やるか?おーい親父、もっと酒、酒くれ」
兵四郎は笑って挨拶を返し、真之介は奥に向かって徳利を掲げ...
そのかたわらに、鍔黒陣内とお恵は腰を落ち着けた。
「いや親父さん、俺達には飯を頼むよ。腹ぺこだし、ゆっくり酒...
「そうよね。ねえ殿様、ここの宿場にある梅乃屋って店知ってる...
着いたばかりのふたりの口から因縁のある店の名前が飛び出し...
「ああ知ってる。この先の色街の中心にある店だ。陣内、そこに...
「あら……ってことはお絹さんて人はもしかして、お女郎さんなの...
「おいお恵、お前なんで、梅乃屋のお絹を知ってるんだ」
お恵の言葉にますます驚いて真之介が尋ねると、ふたりは旅の...
三日前、陣内とお恵が連れ立って歩いていると、道外れの林の...
そっと覗いてみると旅姿の男達が何やら争っており、刃物を抜...
ふたりは襲われている男の顔を見て驚いた。旅仲間の真之介に...
慌てたお恵は人殺しだと大声を上げ、飛び出した陣内は仕掛け...
駆け寄ると傷だらけの男は、もはや虫の息だった。
よく見れば髷の形や着ている物は違うし、何より腕の立つ真之...
男は千吉と名乗り、絶え絶えの息の下からふたりに頼み事をし...
とある宿場の梅乃屋という店にいるお絹に、自分が死んだこと...
博打で当てた金を持って帰るつもりだったが、賭場から自分を...
約束を守れなかったことをどうか代わりに詫びてくれと、涙を...
陣内とお恵は、真之介によく似た男の最期の言葉を、無視する...
千吉の懐にあった残り少ない金で最寄りの寺に供養を頼み、遺...
なんという因縁であり皮肉な話なのだと、聞き終えた真之介は...
すでにお絹も生きてはいないことを告げると、恋人達のあまり...
「そうだったのかあ。とんだ無駄足になっちゃった。せっかくお...
陣内が懐紙に包まれた遺髪を懐から取り出すと、兵四郎が手を...
「ねえ殿様、どうしたらいいかしら、それ」
「またあの寺に戻って、墓に入れてもらうしかないかなあ。千吉...
「うん……あのな、ふたりとも、よく聞いてくれ。実はな、お絹っ...
兵四郎の手の中にある遺髪を悲しげに見つめるお恵と陣内に、...
すると兵四郎がいきなりぽろぽろと大粒の涙を零したので、一...
「ちょっと、ど、どうしたんだよ殿様!」
「やだあ、お腹でも痛いの?初めてだわ、殿様が泣くなんて」
うろたえる陣内とお恵を、真之介は慌てて諭した。
「大丈夫だ、お前ら落ち着け。おい、お絹、お絹だな。話を聞い...
「お絹ってなんだよ。仙石、お前何言って」
「しいっ。黙って、陣内さん」
戸惑い喚く陣内をお恵が制し、真之介が女の名前を呼ぶと、兵...
「……勝手だよ、全く。今更、こんな姿で戻って来て。お金なんか...
振り絞るような声で呟くと、兵四郎はまた顔を伏せた。
「ねえ仙石さん、これってまさか」
「ああ。信じられんだろうが、お絹の魂は今、殿様の身体にいる...
「え、えーっ!またまたあ……どうせ、殿様の冗談なんでしょ」
「たこ、この馬鹿。いくら殿様でも、こんなたちの悪い冗談なん...
優しく語りかける真之介の様子に、これはまさしく本当らしい...
再び顔を上げた兵四郎の涙は止まり、悲嘆に染まっていた顔付...
「お絹……いや、殿様、か?」
「うん。お絹は引っ込んだ。俺の奥深くに、隠れちまったようだ」
様子を伺う真之介に頷くと、兵四郎は取り出した手ぬぐいで涙...
「そうか。よっぽど悲しかったんだな。幽霊が死んだ男を悼むっ...
「ああ、今お絹は自分でも、どうしていいのかわからないんだ。...
そうだな、と真之介が呟くと一同はまたしばらく沈黙し、それ...
静寂を破る声と共に、男が慌てて店に転がり込んで来た。見れ...
兵四郎と真之介は押っ取り刀で飯屋を飛び出し、陣内とお恵も...
「てめえら、いい加減にしろ。あんだけ痛め付けられて、まだ懲...
「うるせえ、さんぴん!今までみてえにゃいかねえぜ、今日のこ...
真之介に喚き返した男の言葉通り、店の前には目つきの鋭い喧...
連日不様に追い返されたのが余程腹に据えかねたのか、一家を...
「どうだかねえ、数が増えたからいいってもんでもないぜ。こっ...
「なんだと仙石!そんなこと言うと陣ちゃん、いち抜けたってし...
居並ぶやくざの中に、旅から帰ったばかりなのか、手甲脚半を...
「どうかしたのか、たこ」
「うん、ちょっとね殿様、あそこの三人、見覚えがあるような……」
「あーっ!陣内さん、あいつらよ。殿様、仙石さん!あの三人が...
「なぁにぃ!?ほんとか、お恵っ」
「陣内、確かか。確かにあいつらか」
「うんうんそうだ、間違いないよ。くそうお前ら、よくも千吉の...
兵四郎達が怒りを漲らせた表情で向き直ると、追いはぎ一味は...
「な、なんでえ!千吉なんて奴、知るもんかっ」
「俺達ゃ、この一家の身内だ。おかしな難癖つけやがって、てめ...
それを合図に、やくざ達が一斉に長脇差を抜き放った。
「このろくでなしの盗っ人共が、しらばっくれやがって!千吉の...
愛刀を抜いた真之介の喚き声を皮切りに、兵四郎と陣内も刀と...
野次馬達が悲鳴を上げて遠巻きに眺める中、喧嘩は始まった。...
兵四郎は追いはぎの男達と向き合い、険しい顔で睨みつけた。
別のやくざを峰打ちで倒した真之介は、刀を構える兵四郎の肩...
「よくも、よくもせんさんを……ぶ、ぶっ殺してやる!」
呻くように叫んだ兵四郎の身体からは、怒りと憎しみの焔が噴...
「お絹、待て!気持ちはわかるが、今は出て来るな。俺達に任せ...
諌める声に聞く耳を持たず、兵四郎は刀を振り上げ、やみくも...
追いはぎのひとりの長脇差が唸りを上げて刀を叩き、その衝撃...
ぎらつき迫る刃に目をつぶった兵四郎の前に、素早く駆け付け...
男の刀を力任せに跳ね返すと、返す刃で着物の前を斬り裂いた。
すると懐から零れた紺色の胴巻きが、ずしりと重そうな音を立...
「おっと、どうやら当たりだな!そいつに幾ら入ってる?音から...
「千吉は、五十両盗られたって言ってたよ!」
「そいつ、逃げる時に千吉さんから、その胴巻きを引ったくって...
畳み掛けるように真之介と陣内、そしてお恵に追い詰められ、...
「返してもらうぜ。千吉がいない今、そいつはお絹のもんだから...
真之介は伸ばした刀の先に胴巻きを引っ掛け、掬い上げてから...
涙を浮かべた兵四郎は、ひどく大事そうに両手で胴巻きを握り...
「お兄さん方、ご覧の通りこいつら盗っ人だよ!お上に訴えたら...
「それがいやなら今すぐ、こいつらと縁切れ。ついでにこの店か...
陣内と真之介の言葉を受けて、格上らしき数人の男達が話し合...
「わかった。役人なんざ怖くもねえが、そいつらあ一家の面汚し...
ひとりが言うと、他のやくざ達も刀を仕舞った。身内に見放さ...
胴巻きを懐に抱いた兵四郎はふいに顔を上げると、先程落とし...
「旦那、あたしゃやっぱりやりますよ。せんさんの仇を取るんだ」
「いや、いかん。お前は手を出すな。その手を血で汚しちまった...
きつく諭す真之介の厳しい顔を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
その隙を見て、男達が襲い掛かってきた。だっとその間を駆け...
どうっと倒れ伏した音を背に息をついた真之介は、刃を染めた...
「お絹、お前は綺麗なまんまで、せんさんの待つあの世に行くん...
振り返りにやりと笑った真之介に、泣き笑いの表情で兵四郎が...
それを見た陣内が、ちぇっ、あいつひとりでかっこつけやがっ...
その夜、梅乃屋は店を挙げてのどんちゃん騒ぎとなった。受け...
真之介達は元より、世話になった飯屋の親父や、真之介達の雇...
艶やかな遊女の酌に照れた親父は、顔を赤くして滅多に呑めぬ...
つまらぬことが原因でいがみ合っていた主人と親分は、仲裁を...
兵四郎とお絹は交互に入れ代わり、賑やかな宴を楽しんだ。浮...
上客に満面の笑みを浮かべたやり手婆は、いそいそと酒や肴を...
大いに盛り上がった宴は、やがて静まった。千鳥足で帰った客...
滅法酒に強い真之介はあぐらをかき、ひとりまだ手酌で呑んで...
かたわらで寝転がっていた兵四郎が、ふいにゆらりと上体を起...
「……せんさん」
「おいお絹、お前まだ俺をそう呼ぶのか」
寝ぼけまなこで呼びかけられ、真之介は苦笑した。
「ふふ、冗談ですよ。これが最後ですから、勘弁しておくれな」
「おい、最後って……」
「ねえ旦那、ちょっとふたりだけになりませんか。あたしの部屋...
真之介の手を取り立ち上がると、兵四郎は広間を出て彼を奥に...
廊下から薄明かりがほのかに差し込むお絹の部屋は、隅に行灯...
畳の真ん中に腰を下ろした真之介の正面に、兵四郎は正座をし...
「あたし、旦那方には本当に感謝してるんですよ。せんさんのお...
「まあな、いろいろ運がよかったんだ。それもこれも皆、お前の...
「そうねえ……あの人、約束を守ってくれたんだね。この世ではと...
「うん……そうか」
切なげな表情の兵四郎に、真之介はただ頷くしかなかった。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回で終わります。
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>>1乙です。
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全三回投下の二回目です。
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しぶる親父を拝み倒してその夜は飯屋に宿を借り、翌日ふたり...
親父に梅乃屋まで言づてをしてもらうと、おきみから事情を聞...
女達は死んだ筈のお絹と話が出来る喜びや、薄情な千吉への恨...
別れがたい女達の願いと、旅仲間と待ち合わせをしている都合...
そうなると宿代や飯代を稼がねばならず、あちこち訪ねて運よ...
男達を叩きのめしている最中にひょっこりお絹が顔を出し、兵...
ほとんどひとりで働き、なおかつ兵四郎を気遣ってやらなけれ...
だが乗り掛かった船だと開き直り、船着き場に通う兵四郎に付...
大店に泊まり込んでの用心棒暮らしが、そんな調子で三日を過...
親父の飯屋でふたりはまた、酒を酌み交わしていた。すると店...
「あっ殿様!仙石さぁん!」
「あらっ、ほんとだ。元気にしてた?昼間っから酒飲んで、珍し...
「やあ、お恵ちゃんに陣内。元気だぞ、酒は旨いしな」
「お前らも一杯やるか?おーい親父、もっと酒、酒くれ」
兵四郎は笑って挨拶を返し、真之介は奥に向かって徳利を掲げ...
そのかたわらに、鍔黒陣内とお恵は腰を落ち着けた。
「いや親父さん、俺達には飯を頼むよ。腹ぺこだし、ゆっくり酒...
「そうよね。ねえ殿様、ここの宿場にある梅乃屋って店知ってる...
着いたばかりのふたりの口から因縁のある店の名前が飛び出し...
「ああ知ってる。この先の色街の中心にある店だ。陣内、そこに...
「あら……ってことはお絹さんて人はもしかして、お女郎さんなの...
「おいお恵、お前なんで、梅乃屋のお絹を知ってるんだ」
お恵の言葉にますます驚いて真之介が尋ねると、ふたりは旅の...
三日前、陣内とお恵が連れ立って歩いていると、道外れの林の...
そっと覗いてみると旅姿の男達が何やら争っており、刃物を抜...
ふたりは襲われている男の顔を見て驚いた。旅仲間の真之介に...
慌てたお恵は人殺しだと大声を上げ、飛び出した陣内は仕掛け...
駆け寄ると傷だらけの男は、もはや虫の息だった。
よく見れば髷の形や着ている物は違うし、何より腕の立つ真之...
男は千吉と名乗り、絶え絶えの息の下からふたりに頼み事をし...
とある宿場の梅乃屋という店にいるお絹に、自分が死んだこと...
博打で当てた金を持って帰るつもりだったが、賭場から自分を...
約束を守れなかったことをどうか代わりに詫びてくれと、涙を...
陣内とお恵は、真之介によく似た男の最期の言葉を、無視する...
千吉の懐にあった残り少ない金で最寄りの寺に供養を頼み、遺...
なんという因縁であり皮肉な話なのだと、聞き終えた真之介は...
すでにお絹も生きてはいないことを告げると、恋人達のあまり...
「そうだったのかあ。とんだ無駄足になっちゃった。せっかくお...
陣内が懐紙に包まれた遺髪を懐から取り出すと、兵四郎が手を...
「ねえ殿様、どうしたらいいかしら、それ」
「またあの寺に戻って、墓に入れてもらうしかないかなあ。千吉...
「うん……あのな、ふたりとも、よく聞いてくれ。実はな、お絹っ...
兵四郎の手の中にある遺髪を悲しげに見つめるお恵と陣内に、...
すると兵四郎がいきなりぽろぽろと大粒の涙を零したので、一...
「ちょっと、ど、どうしたんだよ殿様!」
「やだあ、お腹でも痛いの?初めてだわ、殿様が泣くなんて」
うろたえる陣内とお恵を、真之介は慌てて諭した。
「大丈夫だ、お前ら落ち着け。おい、お絹、お絹だな。話を聞い...
「お絹ってなんだよ。仙石、お前何言って」
「しいっ。黙って、陣内さん」
戸惑い喚く陣内をお恵が制し、真之介が女の名前を呼ぶと、兵...
「……勝手だよ、全く。今更、こんな姿で戻って来て。お金なんか...
振り絞るような声で呟くと、兵四郎はまた顔を伏せた。
「ねえ仙石さん、これってまさか」
「ああ。信じられんだろうが、お絹の魂は今、殿様の身体にいる...
「え、えーっ!またまたあ……どうせ、殿様の冗談なんでしょ」
「たこ、この馬鹿。いくら殿様でも、こんなたちの悪い冗談なん...
優しく語りかける真之介の様子に、これはまさしく本当らしい...
再び顔を上げた兵四郎の涙は止まり、悲嘆に染まっていた顔付...
「お絹……いや、殿様、か?」
「うん。お絹は引っ込んだ。俺の奥深くに、隠れちまったようだ」
様子を伺う真之介に頷くと、兵四郎は取り出した手ぬぐいで涙...
「そうか。よっぽど悲しかったんだな。幽霊が死んだ男を悼むっ...
「ああ、今お絹は自分でも、どうしていいのかわからないんだ。...
そうだな、と真之介が呟くと一同はまたしばらく沈黙し、それ...
静寂を破る声と共に、男が慌てて店に転がり込んで来た。見れ...
兵四郎と真之介は押っ取り刀で飯屋を飛び出し、陣内とお恵も...
「てめえら、いい加減にしろ。あんだけ痛め付けられて、まだ懲...
「うるせえ、さんぴん!今までみてえにゃいかねえぜ、今日のこ...
真之介に喚き返した男の言葉通り、店の前には目つきの鋭い喧...
連日不様に追い返されたのが余程腹に据えかねたのか、一家を...
「どうだかねえ、数が増えたからいいってもんでもないぜ。こっ...
「なんだと仙石!そんなこと言うと陣ちゃん、いち抜けたってし...
居並ぶやくざの中に、旅から帰ったばかりなのか、手甲脚半を...
「どうかしたのか、たこ」
「うん、ちょっとね殿様、あそこの三人、見覚えがあるような……」
「あーっ!陣内さん、あいつらよ。殿様、仙石さん!あの三人が...
「なぁにぃ!?ほんとか、お恵っ」
「陣内、確かか。確かにあいつらか」
「うんうんそうだ、間違いないよ。くそうお前ら、よくも千吉の...
兵四郎達が怒りを漲らせた表情で向き直ると、追いはぎ一味は...
「な、なんでえ!千吉なんて奴、知るもんかっ」
「俺達ゃ、この一家の身内だ。おかしな難癖つけやがって、てめ...
それを合図に、やくざ達が一斉に長脇差を抜き放った。
「このろくでなしの盗っ人共が、しらばっくれやがって!千吉の...
愛刀を抜いた真之介の喚き声を皮切りに、兵四郎と陣内も刀と...
野次馬達が悲鳴を上げて遠巻きに眺める中、喧嘩は始まった。...
兵四郎は追いはぎの男達と向き合い、険しい顔で睨みつけた。
別のやくざを峰打ちで倒した真之介は、刀を構える兵四郎の肩...
「よくも、よくもせんさんを……ぶ、ぶっ殺してやる!」
呻くように叫んだ兵四郎の身体からは、怒りと憎しみの焔が噴...
「お絹、待て!気持ちはわかるが、今は出て来るな。俺達に任せ...
諌める声に聞く耳を持たず、兵四郎は刀を振り上げ、やみくも...
追いはぎのひとりの長脇差が唸りを上げて刀を叩き、その衝撃...
ぎらつき迫る刃に目をつぶった兵四郎の前に、素早く駆け付け...
男の刀を力任せに跳ね返すと、返す刃で着物の前を斬り裂いた。
すると懐から零れた紺色の胴巻きが、ずしりと重そうな音を立...
「おっと、どうやら当たりだな!そいつに幾ら入ってる?音から...
「千吉は、五十両盗られたって言ってたよ!」
「そいつ、逃げる時に千吉さんから、その胴巻きを引ったくって...
畳み掛けるように真之介と陣内、そしてお恵に追い詰められ、...
「返してもらうぜ。千吉がいない今、そいつはお絹のもんだから...
真之介は伸ばした刀の先に胴巻きを引っ掛け、掬い上げてから...
涙を浮かべた兵四郎は、ひどく大事そうに両手で胴巻きを握り...
「お兄さん方、ご覧の通りこいつら盗っ人だよ!お上に訴えたら...
「それがいやなら今すぐ、こいつらと縁切れ。ついでにこの店か...
陣内と真之介の言葉を受けて、格上らしき数人の男達が話し合...
「わかった。役人なんざ怖くもねえが、そいつらあ一家の面汚し...
ひとりが言うと、他のやくざ達も刀を仕舞った。身内に見放さ...
胴巻きを懐に抱いた兵四郎はふいに顔を上げると、先程落とし...
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「いや、いかん。お前は手を出すな。その手を血で汚しちまった...
きつく諭す真之介の厳しい顔を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
その隙を見て、男達が襲い掛かってきた。だっとその間を駆け...
どうっと倒れ伏した音を背に息をついた真之介は、刃を染めた...
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振り返りにやりと笑った真之介に、泣き笑いの表情で兵四郎が...
それを見た陣内が、ちぇっ、あいつひとりでかっこつけやがっ...
その夜、梅乃屋は店を挙げてのどんちゃん騒ぎとなった。受け...
真之介達は元より、世話になった飯屋の親父や、真之介達の雇...
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つまらぬことが原因でいがみ合っていた主人と親分は、仲裁を...
兵四郎とお絹は交互に入れ代わり、賑やかな宴を楽しんだ。浮...
上客に満面の笑みを浮かべたやり手婆は、いそいそと酒や肴を...
大いに盛り上がった宴は、やがて静まった。千鳥足で帰った客...
滅法酒に強い真之介はあぐらをかき、ひとりまだ手酌で呑んで...
かたわらで寝転がっていた兵四郎が、ふいにゆらりと上体を起...
「……せんさん」
「おいお絹、お前まだ俺をそう呼ぶのか」
寝ぼけまなこで呼びかけられ、真之介は苦笑した。
「ふふ、冗談ですよ。これが最後ですから、勘弁しておくれな」
「おい、最後って……」
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真之介の手を取り立ち上がると、兵四郎は広間を出て彼を奥に...
廊下から薄明かりがほのかに差し込むお絹の部屋は、隅に行灯...
畳の真ん中に腰を下ろした真之介の正面に、兵四郎は正座をし...
「あたし、旦那方には本当に感謝してるんですよ。せんさんのお...
「まあな、いろいろ運がよかったんだ。それもこれも皆、お前の...
「そうねえ……あの人、約束を守ってくれたんだね。この世ではと...
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