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#title(ヘンリ-とうわさばなし) [#bb3331b8]
ちょいとスペースをお借りします。
きか○し。ト-マス 擬人化(機関車→機関士)エロ有。
4×3に4←6絡み。6好きな方はスルー推奨でお願いいたしま...
以前こちらに投下しました「ゴードンとヘンリーと腕の中のホ...
といっても、前の読んでなくても読めますが。だいぶマイ設定...
少々長いので2分割で。エロは後半にて。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマー...
噂話はとにもかくにも時間も場所も選ばずに、いつも不躾に舞...
人が集まれば集まっただけいろんなネタがあるわけだけど、中...
彼がそこにいるだけで、彼の名前が出るだけで、新しい噂が次...
僕の恋人は今日もまた、噂話の真ん中にいた。
「なぁヘンリ-、知っているかい? タンク機関車の機関士で...
ジェ-ムスはワクワクが止まらないといった表情で、僕の肩を...
「噂は聞いているけど、タンク機の機関士って女の子はロージ...
「六号機の子だよ」
「六号って……パーシ-? まさか。男の子だろ」
「そうなんだ。モテるのは相変わらずだけど、まさか男まで落...
ジェ-ムスはゴ-ドンと僕の関係を知らない。
ゴ-ドンと僕が男同士でありながら恋人として付き合っている...
僕らが付き合うきっかけになった出来事に、トビ-が少し関わ...
男同士の社内恋愛なんて隠して当然のものだし、何よりゴ-ド...
いつも一緒にいる僕らは表向き親友ということになっていて、...
勤務中は仲良くするよりも鼻息荒く言い争っている事の方が多...
「よくもこう毎日、新しい相手との噂が立つもんだよね。でも...
「うん。面と向かって言った子は初めてだね。男の子も……初か...
「君も寂しくなるんじゃないか? 親友に恋人なんか出来ちゃ...
「そんな事ないけどね。四六時中一緒ってわけじゃないんだし」
そっけない事を言っておく。食い下がって怪しまれると面倒だ...
「それにまだ、ゴ-ドンが付き合うって返事をするとは……」
OKなんてするはずがないのは判っている。彼には既に僕という...
「いーや、するさ。可愛いからなぁ」
「確かに可愛いけど、それだけでOKするとは思えないな」
「性格もそれなりでしょ。僕ほどじゃないけどね」
よく言うよ、この自惚れやさん。
「なるようにしかならないよ。僕らが口を出すことじゃない」
「まぁね。でも見てなよ。明日には、溶けちゃうくらいくっ付...
「他人事だと思って……」
意地悪そうににんまり笑うジェ-ムスに呆れた視線を送って、...
ジェ-ムスはあとを追いかけてきて、まだこの話題を引きずろ...
「なんでも、みんなの前で堂々と『好きです。僕と付き合って...
「だからこんなに噂されているのか」
今回は特に、ソド-鉄道の関係者でこの噂を知らないのはトッ...
『噂話が広まるのはゴ-ドンの急行より速い』なんて誰かが言...
「そうなんだよ。それでその時、ゴ-ドンがまんざらでもない...
「……へぇ」
あくまでも噂だ。見てもいないのに、気にすることなんかない。
「あれ、噂をすればだ。それもふたり一緒だぜ」
線路を何本も挟んだ向こうにある建物から、ゴ-ドンとパーシ...
ゴ-ドンは僕らに気付くと、いつもと変わらない様子で手を上...
ゴ-ドンの後ろで、パーシ-も手を振っている。小さい身体を...
「一便追加になった。帰るのが少し遅くなるぞ」
相当な距離があるにもかかわらず、ゴ-ドンがよく通る声で言...
「わかった。先に帰って待ってるよ」
もう一度手を振りあって了解したことを確認しあう僕らを見て...
「でも、一番怪しいのは君なんだよね」
「怪しいって、なにが?」
「実は付き合ってんの? ゴ-ドンと」
「外出なんかに付き合う事は多いよ」
「その付き合うじゃないよ。君がゴ-ドンの恋人なんじゃない...
「何処から出てくるんだ、そんな話」
「夕飯はいつも一緒なんだろ。しかも君が作ってるって」
「ひとり分より二人分作るほうが効率がいいんだよ。無駄がな...
「そうじゃなくて。なんでわざわざ手料理なのかって事」
「僕の健康管理のためだよ。へンリエッタから自炊を勧められ...
「そう? だったら、あの二人がくっついても、ほんとうに寂...
「……寂しくないよ」
「強がっちゃって」
ジェ-ムスは呆れたように言って僕の肩を叩くと、彼の真っ赤...
その後姿を見送りながら、ため息をつく。
そうだ、強がりだ。
ゴ-ドンの事は信じている。誰に告白されようと、彼が浮つく...
男が男を好きなるって、そしてその想いを伝え合うなんて、生...
でも、誰かと噂になるたびに、誰かと二人だけで居る姿を見る...
無駄なヤキモチで生まれる疲労感と、妬いた自分に対する嫌悪...
自分の中にこんなにねちっこくて湿った部分があるなんて、彼...
一体いつまで、これからいくつの噂に、悩まされ続ける事にな...
今日の仕事は定時で終わり。愛車の点検をして、いつものよう...
着替えを済ませてから宿舎の自室に帰る前に、駅前の商店街で...
ジェ-ムスにも説明したとおり、最近は自分の健康管理のため...
新婚気分を味わっているわけでは、決してなくて。
ゴ-ドンと僕が付き合いだした頃の事。愛車の不調のストレス...
食べない日が何日か続くと、このまま何も食べなくても生きて...
水分さえ取っていれば動けてしまうから、お腹も空かないし、...
でもそれから、頻繁に貧血を起こすようになった。そして、つ...
それを助けてくれたのがゴ-ドンとトビ-で、そのときのある...
後日事情を知ったへンリエッタから勧められて、彼女の助力を...
無理せずに食べられる量を、毎日きちんと摂る。独りだと不精...
それからは、夜行や早朝便なんかで時間が合わないとき以外は...
始めてみると意外と料理が楽しくて、食べてくれる人がいるの...
気付けばレパートリーもかなり豊富になったし、彼の好みも完...
長い絶食でガリガリに痩せていた身体も今ではだいぶふっくら...
顔見知りになった商店街の人たちにすすめられたら、あっとい...
今日は安くて良いものが沢山手に入った。気分がいいから、ゴ...
夕飯の準備はばっちり。お風呂も済ませて、ベッドを整える。
男の単身部屋に似つかわしくないダブルのベッドに洗いたての...
一緒に眠る機会が増えたから、成人の男二人でシングルベッド...
みんなにバレないように運び入れるのに苦労したんだ。独り住...
でも実は、この上で肌を重ねたことはまだ数えるほどしかない。
この宿舎の壁は結構薄くて、隣の部屋に音が漏れてしまうこと...
普通の会話なら漏れはしないけど、どうやら僕は事の最中の声...
僕の部屋の両隣はジェ-ムスとゴ-ドン。問題はジェ-ムスだ...
それはゴ-ドンだって同じ考えのはずで、だから今まで、みん...
寄り添って眠るだけの愛の巣。それでも、独りじゃないならい...
仕事の都合で離れて眠らなくてはならないとき、広い広いベッ...
一度だけ、独りは嫌だって、離れて眠るのは寂しいと言って駄...
次の日に、彼は大きなくまさんのぬいぐるみを抱えて帰ってき...
それでもやだって泣いた僕を優しく抱いてくれたけど、彼が本...
寂しくなったらくまさんを抱っこ。それがこの部屋で過ごす時...
自分の部屋なのに独りで居られないなんて……変な癖ついちゃっ...
ふと時計を確認する。
「遅いな……ゴ-ドン」
増えた仕事が一便だけなら、もう帰ってもいいはずなんだけど...
もう少し独りで待たなくてはならないらしい。今日もいつもの...
しんとした静けさが耳に痛い。自分の心臓の音だけがやたらと...
どくん、どくん、どくん……心臓ってこんなに大きな音を立てて...
一定のリズムを乱すことなく刻まれるその音に集中すると、指...
身体の奥の奥の、真ん中の部分が握りつぶされるようにきゅっ...
ここのところ体調はいいはずなのに、ご飯もちゃんと食べてい...
おかしいな。なんなんだろ?落ち着かなくちゃと思って深呼吸...
寂しいからって、泣くか、普通?男だろ。
もうすぐゴ-ドンが来てくれるんだから。追加の仕事を終わら...
大丈夫。独りじゃない。この子がいる。ゴ-ドンがくれた、く...
いつからだろう、この子の存在に頼り始めたのは。この布と綿...
いつまで、この子に頼らなくちゃならないの?
ゴ-ドンの気持ち次第では……これからも、ずっと?もし彼が、...
ありえないことだと判っていても、恐ろしいくらい不安になる...
早く会いたい。早く触れたい。この冷たいぬいぐるみじゃなく...
どくん、どくん……
僕の中で鳴り続ける鼓動、その音だけを残して、次第に他の感...
意識が朦朧としてきた。痛みもなくなった。
どくん、どくん、どくん……かちゃ……どくん、どくん
ただひたすら事務的に刻まれていく音に、違うものが混ざる。...
どくん、どくん……ぱたん……どくん、どくん
まただ。あぁもう邪魔しないで。
ゴ-ドンが来てくれるまで、くまさんと二人で待っていなきゃ...
腕の中で何かが動いた。するりとすり抜けようとする感覚に気...
やめて、逃げないで。……盗らないで。捕まえようともがくけど...
なんで居なくなるの?なんで置いていくの?独りにしないでよ…...
襲ってくる喪失感から逃げ出したくて、夢中で手探りした。何...
絶望に似た感情が沸きあがってきた。怖い……独りは怖い。
いやだ!助けて、ゴ-ドン!捨てないで……置いていかないで。...
「うぁあああああぁああ!!」
うるさい、誰の声?僕?叫びたくなんかないのに、叫んでいる...
突然、身体が強い力でぐっと包み込まれた。直後に聞こえた声...
「……リー! 起きろ! 目を覚ませ、ヘンリ-!!」
「あ……」
一気に、失っていた全ての感覚を取り戻した。指先の痺れも、...
そして、腕の中から消えた存在と、換わりに僕を包み込んだ腕...
「………」
声が出ない。身体が震える。心臓の音は、もう聞こえない。
「ヘンリ-、もう心配ない。俺だ、ゴ-ドンだ。わかるな?」
「……ゴ-ドン……」
「あぁ、俺だ。……今帰った。遅くなってすまない」
「……」
確かに、ゴ-ドンだ。彼の事を確認した途端、どっと疲労感に...
「もう大丈夫だ。何処にも行かない」
「……?」
「だから泣かないでくれ。捨てたりなんかするもんか……!」
身体が痛いくらいに力強く、抱きしめられた。ゴ-ドンの声が...
かろうじて動かせる左腕をゴ-ドンの背中に回して、掌でぽん...
「……どうしたの?」
「お前がうなされていた。泣いていたんだ」
「僕が?」
「寂しかったんだろう。ごめんな」
「……うん」
肩越しに見えた枕元にくまさんが居た。投げ出されたようにお...
なんであんなところに?くまさんのほうに伸ばせる限り手を伸...
「! あんなものの相手をするな!」
不意に腕を曲げられて肩に痛みが走る。
「痛っ」
「っ、すまん! ……もうあれに触らないでくれ」
「どうして?」
「お前があれを抱いているところを見たくない」
「君がくれたんだよ」
「そうだ。だが、ここまであれに依存するとは思わなかった」
「依存なんかじゃ……」
そりゃぁ、頼りにはしているけど。君がいない間、慰めてくれ...
そもそも、君が早く帰ってきてくれれば寂しい思いすることな...
なんでこんなに遅かったんだろう?追加が一便だけならもっと...
「ねぇ……追加の仕事って何だったの?」
「……クロバンズゲートからナップフォードまでの定期便だ」
それは多分、十八時にクロバンズゲートを出る普通客車便のこ...
でも、それを牽いて今の時間?時計の短針は、もうとっくに十...
聞かなきゃよかった。ため息をつきながら、頭をゴ-ドンの肩...
腕、離してくれないかな。握られた部分が痺れてきた。さっき...
「……パーシ-のところに寄っていた」
「!」
全身から血の気が引いた。とっさに両耳を手で塞ごうとしたら...
ありったけの力で逆らうけど、ゴ-ドンに敵うわけはない。た...
腕が痛くて、胸の奥が握りつぶされるような圧迫感に襲われる...
「聞いてくれ」
「聞きたくない!」
「聞いてもらわなくちゃ困る」
「困らないよ! 言い訳なんか聞きたくない!」
「言い訳じゃない」
「パーシ-の所に寄って遅くなったんだよね、わかったから、...
「寄る必要があったんだ、どうしても」
「寄っちゃ駄目だなんて、言ってない」
「だったら聞け!」
「やだ……聞きたくないよ……」
「話をしてきた。断ったんだ、付き合えないと」
「! ……どうして」
「どうしてって……俺にはお前がいるじゃないか」
「……パーシ-は、いい子だよ。僕なんかより、ずっと……」
「そうだな。お前みたいに泣いたりせず、真剣に話を聞いてく...
「……」
「あいつの場合はな、勘違いだ」
「……勘違い?」
「憧れと恋心を混同してしまっていた。話し合ったらわかった...
「憧れていただけ……ってこと?」
「そうだ。心や身体を求められたわけじゃない」
「……最悪だ、僕」
「まったくだ。ぽろぽろ泣きやがって。俺を疑ってんのか?」
「疑ってなんかないよ! 信じてる! ……ただ……」
「ただ?」
「噂が多すぎて……イライラする。辛いんだ」
「聞くたびにこうなのか」
「今回は、特別、だけど……」
「まったく……身が持たないぞ。少し割り切れ」
「……うん」
「相手には困らない俺様が、何故お前を選んだのか……少し考え...
「…………」
「自分の魅力に自覚はないのか」
ゴ-ドンは明らかな呆れ顔。今思えば彼が僕の何処を好きにな...
最初に繋がったのは身体から。いきなり強引に奪われて、その...
でもその後、心から僕の全てを欲していたのだと聞かされたら...
なにより僕もゴ-ドンの事が好きだったから、好きな人から本...
それに乗じて彼を自分のものにしてしまおうと、我ながら随分...
全てが都合よく上手く進みすぎたせいで、好きになったきっか...
ひとつだけ、彼を惹き付けているのが確実なものといえば……
「……身体?」
「否定はしないが……」
力強い腕に支えられて、僕の身体が横に寝かされる。枕の上に...
僕が手を伸ばすより早くゴ-ドンの手がくまさんを鷲掴みに持...
そっぽ向かせたりして、これからする事を見られないように……...
僕を気遣ってそうしたのだろうけど、時折垣間見えるゴ-ドン...
「……なにがおかしい」
「見られるのが恥ずかしいの?」
「そんなんじゃない。独り占めしたいんだ。見られるのも気に...
「ぬいぐるみじゃないか。……君って意外と可愛いところあるよ...
「言ってろ」
身体全体に、慎重にふわりと重みが掛けられる。彼の唇と僕の...
「ごはん! 食べる?」
「! ……なんだいきなり」
「晩御飯だよ。まだなんだろ?」
「後でいい。先にお前を食べたい」
「遅くなるよ」
「欲しいんだ。今すぐ」
「仕方ないなぁ……晩御飯を入れるスペース、ちゃんと残してお...
「心配するな。いくら食っても食い足りないよ」
ゴ-ドンが笑った。僕の頬を撫でながら、唇を重ねてくる。
大きくて強いゴ-ドンも、唇はとても柔らかくて暖かい。その...
帰ってきてくれたんだ。僕のところに。そう思うと、やっと、...
二人を隔てる邪魔な服がゴ-ドンの巧みな手捌きで抜き取られ...
お互いの胸に二ヶ所ずつ、小さく硬くあたる部分がくすぐった...
それに気付いたゴ-ドンが、僕の胸に掌を当てて硬い部分を転...
いつのまにやら僕の身体は感度が上がって、完全に食べ頃にな...
彼の唇は僕の耳に移り、舌先で耳に軽く触れながら、熱い吐息...
「もう気持ちよくなってきたのか」
「……うん」
「自分で魅力だと言うだけのことはあるな。いやらしい身体だ」
「いやらしいのが嫌いなら、食べなくてもいいんだよ」
「好き嫌いはしないんだ」
「明日のごはんはホワイトアスパラのフルコースだね」
「……緑のにしてくれ」
「白いのも、美味しいのに……んっ」
ゴ-ドンの手が胸からわき腹へ、更に下へと降りていき、妙に...
僕が間違いなく男なのだと主張するそこに手が触れると、さっ...
既に緊張しきったそこを解きほぐすようにやさしく摩られる。...
容赦なく襲い掛かってくる快感に必死に抗うけれど、不意に胸...
「んっ! ……ぅあ……っ!」
この部屋ではご法度の喘ぎ声。
一瞬だけ、隣室のジェ-ムスの存在が頭をよぎる。今日の彼は...
でも一度声を出してしまったら、もう止められない。止める気...
声は美味しく食べてもらうための調味料だから、出来るだけ色...
ゴ-ドンの手や舌の動きに合わせて、身体が敏感に反応する。...
「あんっ……あっ、はぅ……んっ」
足の間に鈍い痛みが走って、直後に更に強い快感が、お腹の底...
くちゅくちゅとソースをかき混ぜるのに似た音と、ちゅっちゅ...
頭の中が真っ白になって、あっという間に何が何だかわからな...
「あっ、あっ……んっ、ぁっ!」
足の間はとても熱い。けれど、急激に寒気を感じた。またあの...
ゴ-ドンに触れられている、その感触は確かにあるのに、実感...
「ゴ-ドンっ! ……どこ? ……ごーどん……!」
力が抜けてベッドに落ちかけた腕が、途中で受け止められた。
「ここだ、大丈夫。……離さない。何処にも行かない」
ふわりと身体を包み込む確かな温もりを感じて、胸の痛みが和...
「……ゴ-ドン、よかった。ゴ-ドン!」
「ずっと側に居る。だから泣くな」
声がとても優しくて、言葉が発せられる度に耳に当たる吐息が...
「ずっと、ずっと一緒だ。ヘンリ-」
「うんっ……うん、ゴ-ドンっ! 一緒、に……んっ……うぁっ」
引き裂かれるような異物感が、お腹のそこのほうから身体の中...
一緒どころじゃない、溶け合って同化するようなこの感じ。迫...
もう二度と離れないようにゴ-ドンの身体に必死で縋りつきな...
「はっ……んっ、ゴ-ドン、ゴード……ンっ! あんっ、あっ……ゴ...
「くっ……ぅっ……ヘンリ-……っ!」
呼び返してくれるゴ-ドンの声も、段々荒くなってくる。
小刻みに激しく突き上げられる振動とゴ-ドンの吐く息のリズ...
「ヘンリ-……ヘンリ-!」
「はっ、はっ……あんっ、ゴー……ドンっ! あぁっ、うぁ、あっ…...
一段と強い刺激が、頭の先からつま先までを一気に駆け抜ける。
雷に貫かれたような、強い衝撃。それを最後に、僕の意識は完...
今日もゴ-ドンはいつもどおり。快調に急行をすっ飛ばし、時...
そして僕は、少し遅れる。
「ヘンリ-! また遅れやがって! 何度やったら気が済むん...
「うっるさいなぁ……。支線が遅れてきたんだよ、これでも随分...
「支線の遅れくらいお前のところで全部取り戻せ! でかい機...
「でかいとかでかくないとか関係ないだろ! 安全運転が基本...
「安全かつ時間通り、それが基本だ! それをお前ときたら……」
恒例の口げんかに、駅員と車掌たちは肩をすくめて苦笑い。助...
「鈍行は一区間分の走行距離が短いから、速度が出せないんだ...
「お前に出来ないだけだろうが。俺様を見習って精進するんだ...
「あぁぁもう! ……そうだね、そうするよ! ぜーんぶ、君の...
これ以上言っても無駄。こんなときは大抵、僕が折れて言い合...
わかったらいいんだ、と言わんばかりの笑みを浮かべて頷くゴ...
僕なんかよりゴ-ドンのほうがずっとずっと腕がいいのは確か...
それに誰かさんのせいで、朝からずっと腰が重いんだ。レバー...
「あれが先輩に向かって吐く台詞!? っとにわがままなんだ...
「俺がいつわがままを言った?」
僕の真後ろで声がする。
いつの間に?ゴ-ドンが、機関室のドアの前に立っていた。
「いつもだろ! 俺様俺様、急行急行って……すっとばせばいい...
「生憎すっ飛ばすしか能がないんだ。こんな風にな」
ゴ-ドンが機関室に乗り込んできて、僕の腕を掴む。
やばい、言い過ぎたかな。
後悔は一瞬。それも、違う意味で。
「なにすっ……んっ……」
腕を引かれ、抱きしめられた。そして、深い、深いキス。助手...
駅員は?車掌は?お客さんは?……他に見られたら大変だ。引き...
「んんーっ!……んっ……んぅっ」
こんな状況でも、ゴ-ドンのキスはとろけそうな位甘いから始...
息継ぎのために接続が緩んだその隙に逃げるのも忘れて、流れ...
「んっ、んくっ……はぁっ」
唇が離れた途端、僕は口を押さえてへたり込んだ。頭がぼやけ...
腰が砕けたってやつ。勤務中なのに……。
「ほら」
座り込んだ僕の膝の上に、紙袋が置かれた。
「本土との乗換駅でよく会う行商の夫人から貰ったんだが」
「……え?」
「例の……白いのだ」
わけが判らないまま、袋の中を確認する。中には季節のお野菜...
「あ……あぁ、なんとか、するよ。スープやソースにすれば、緑...
「そうか、よかった」
ほっと胸をなでおろして笑みを浮かべたゴ-ドンは僕の頭をひ...
立ち上がれず座り込んだままの僕に向かって笑顔で手を振ると...
「せ、先輩?」
「……誰か、見てた?」
「い、いえ! あ、ぼ、僕だけ、です」
「よかった。……じゃぁ、君も、忘れて」
「え……は、はい!!!」
助手が慌てて作業を再開する。
やられた。不意打ち。あの悪ガキめ……!
掌を当てた額には、汗がにじんでいる。身体が熱い。頭が痛く...
「へぇ、なるほどねぇ」
「!」
ホームとは逆の方から声がする。聞きなれた、今のタイミング...
恐る恐る横目で確認すると、見慣れた赤いボディの機関車がい...
よりによって、なんでこんな時に、機関室がぴったり横付くよ...
「何か言いたいことはある?」
「……君の予想通りだと思うから、何も聞かないで」
「怪しいとは思っていたけど、まさか本当にその通りだとはね...
噂が広まってしまうのを覚悟した。ずっと必死で隠してきたの...
「昨日の晩といい、今といい。ほんっとお盛んだよねぇ、君達...
「……きのう…の、晩?……その……」
「最初は君が女を連れ込んでいるのかと思ったんだけどね。名...
「あ……」
最悪だ。
自業自得には違いない。隣室のジェ-ムスが部屋にいるのを承...
でもやっぱり、実際に聞こえていたと言われると、どうしよう...
「……そういえばさ、急行の客車係のアリスのことなんだけど。...
突然、何の話?アリスなんて子、知らない。ふるふると首を横...
「小柄でふっくらしたほっぺが可愛い栗毛の女の子さ。急行の...
「……え?」
「今度はまた女の子だ。君の旦那様ってほんと、罪作りだよね」
きょとんとする僕を見て、ジェ-ムスがにやりと笑った。
「噂なんてね、根も葉もない奴のほうが面白いんだよ。憶測が...
「それって……」
みんなには言わないでいてくれるってこと?
「今度夕飯おごってくれる? エドワ-ドの分もね。その時に...
「……そのくらいで済むなら」
ほっと、安堵のため息が出る。
「ま。旦那様には噂立てられないように気をつけろって言って...
「そうするよ。……ありがとう、ジェ-ムス」
「あと、声は控えめにね。まったく、君の声がよすぎて……参っ...
「! ……あ……う、うん……」
よすぎるとか……僕の声ってどれだけいやらしかったんだろう……...
「あはは、耳まで真っ赤だよヘンリ-。助手君、火が強すぎる...
「えっ、あっ、……は、はいっ!」
振られた助手も、真っ赤になってしどろもどろ。もうどうしよ...
「おっと時間だ。じゃぁ、また後で!」
ジェ-ムスは人好きのする顔に悪戯っぽい微笑みを乗せて、手...
僕も手を振り返す。彼の愛車の後姿を見送りながら、ほっとた...
ジェ-ムスがフォローしてくれたおかげで、幾分具合がよくな...
「……ヘンリ-先輩。そろそろ時間だけど、走れますか?」
助手が遠慮がちに声をかけてきた。一連の出来事に気圧されて...
まぁ、いきなりあんなシーンやこんな会話、彼には刺激が強す...
重い身体をなんとか持ち上げて立ち上がり、頭をわしわしと撫...
「大丈夫、行けるよ」
「はい!」
助手の笑顔に笑顔を返して、操縦盤のレバーを握る。
車掌の合図を貰ってから、ゆっくりと緑色の愛車を発車させる...
「アリスは一ヶ月くらい前に、付き合っていた彼氏と別れたら...
「へ?」
「新しい恋をしたんですね」
「……厄介な相手選んじゃったなぁ」
「付き合ってる事、後悔してるんですか?」
「僕じゃなくて。アリスが、だよ」
「そうですね。最初から負けてる勝負、ですからねぇ」
「知らないから仕方ないんだろうけど……申し訳ないな」
「でも……噂ですから」
「まぁ、ね」
なんて、そんな事よりも。今の僕にとって何よりも重大なのは...
ゴ-ドンの苦手なホワイトアスパラ。あれをどう料理しよう?...
それにしても、あれを食べたときのゴ-ドンの顔。思い出して...
「どうかしたんですか?」
「いや、何も」
強がりで見栄っ張りな彼のあんな顔、知っているのはきっと僕...
顔も知らない恋のライバル達には悪いけど、ちょっとだけ優越...
明日の相手は誰だろう。いつかは僕の名前が出てきて、噂が終...
「そうだ。僕らの事は、忘れておいてね。噂になると困るんだ」
「わかってますよ。噂は根も葉もない奴のほうが、面白いです...
「言うね。……ありがとう」
大きなものも、小さなものも、転がるたびにいろんなものをく...
いろんな噂を背中に乗せて、僕らは今日もしゅっぽしゅっぽと...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ヘンリ-兄さんお気に入りのくまさんはディーゼル7101号とは...
パーシ-には申し訳ないことをしました。ごめんなさい……orz
きか○しゃジャンルになので衝突事故もネタ的に面白かったw
お目汚し失礼いたしました。
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4×3に4←6絡み。6好きな方はスルー推奨でお願いいたしま...
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噂話はとにもかくにも時間も場所も選ばずに、いつも不躾に舞...
人が集まれば集まっただけいろんなネタがあるわけだけど、中...
彼がそこにいるだけで、彼の名前が出るだけで、新しい噂が次...
僕の恋人は今日もまた、噂話の真ん中にいた。
「なぁヘンリ-、知っているかい? タンク機関車の機関士で...
ジェ-ムスはワクワクが止まらないといった表情で、僕の肩を...
「噂は聞いているけど、タンク機の機関士って女の子はロージ...
「六号機の子だよ」
「六号って……パーシ-? まさか。男の子だろ」
「そうなんだ。モテるのは相変わらずだけど、まさか男まで落...
ジェ-ムスはゴ-ドンと僕の関係を知らない。
ゴ-ドンと僕が男同士でありながら恋人として付き合っている...
僕らが付き合うきっかけになった出来事に、トビ-が少し関わ...
男同士の社内恋愛なんて隠して当然のものだし、何よりゴ-ド...
いつも一緒にいる僕らは表向き親友ということになっていて、...
勤務中は仲良くするよりも鼻息荒く言い争っている事の方が多...
「よくもこう毎日、新しい相手との噂が立つもんだよね。でも...
「うん。面と向かって言った子は初めてだね。男の子も……初か...
「君も寂しくなるんじゃないか? 親友に恋人なんか出来ちゃ...
「そんな事ないけどね。四六時中一緒ってわけじゃないんだし」
そっけない事を言っておく。食い下がって怪しまれると面倒だ...
「それにまだ、ゴ-ドンが付き合うって返事をするとは……」
OKなんてするはずがないのは判っている。彼には既に僕という...
「いーや、するさ。可愛いからなぁ」
「確かに可愛いけど、それだけでOKするとは思えないな」
「性格もそれなりでしょ。僕ほどじゃないけどね」
よく言うよ、この自惚れやさん。
「なるようにしかならないよ。僕らが口を出すことじゃない」
「まぁね。でも見てなよ。明日には、溶けちゃうくらいくっ付...
「他人事だと思って……」
意地悪そうににんまり笑うジェ-ムスに呆れた視線を送って、...
ジェ-ムスはあとを追いかけてきて、まだこの話題を引きずろ...
「なんでも、みんなの前で堂々と『好きです。僕と付き合って...
「だからこんなに噂されているのか」
今回は特に、ソド-鉄道の関係者でこの噂を知らないのはトッ...
『噂話が広まるのはゴ-ドンの急行より速い』なんて誰かが言...
「そうなんだよ。それでその時、ゴ-ドンがまんざらでもない...
「……へぇ」
あくまでも噂だ。見てもいないのに、気にすることなんかない。
「あれ、噂をすればだ。それもふたり一緒だぜ」
線路を何本も挟んだ向こうにある建物から、ゴ-ドンとパーシ...
ゴ-ドンは僕らに気付くと、いつもと変わらない様子で手を上...
ゴ-ドンの後ろで、パーシ-も手を振っている。小さい身体を...
「一便追加になった。帰るのが少し遅くなるぞ」
相当な距離があるにもかかわらず、ゴ-ドンがよく通る声で言...
「わかった。先に帰って待ってるよ」
もう一度手を振りあって了解したことを確認しあう僕らを見て...
「でも、一番怪しいのは君なんだよね」
「怪しいって、なにが?」
「実は付き合ってんの? ゴ-ドンと」
「外出なんかに付き合う事は多いよ」
「その付き合うじゃないよ。君がゴ-ドンの恋人なんじゃない...
「何処から出てくるんだ、そんな話」
「夕飯はいつも一緒なんだろ。しかも君が作ってるって」
「ひとり分より二人分作るほうが効率がいいんだよ。無駄がな...
「そうじゃなくて。なんでわざわざ手料理なのかって事」
「僕の健康管理のためだよ。へンリエッタから自炊を勧められ...
「そう? だったら、あの二人がくっついても、ほんとうに寂...
「……寂しくないよ」
「強がっちゃって」
ジェ-ムスは呆れたように言って僕の肩を叩くと、彼の真っ赤...
その後姿を見送りながら、ため息をつく。
そうだ、強がりだ。
ゴ-ドンの事は信じている。誰に告白されようと、彼が浮つく...
男が男を好きなるって、そしてその想いを伝え合うなんて、生...
でも、誰かと噂になるたびに、誰かと二人だけで居る姿を見る...
無駄なヤキモチで生まれる疲労感と、妬いた自分に対する嫌悪...
自分の中にこんなにねちっこくて湿った部分があるなんて、彼...
一体いつまで、これからいくつの噂に、悩まされ続ける事にな...
今日の仕事は定時で終わり。愛車の点検をして、いつものよう...
着替えを済ませてから宿舎の自室に帰る前に、駅前の商店街で...
ジェ-ムスにも説明したとおり、最近は自分の健康管理のため...
新婚気分を味わっているわけでは、決してなくて。
ゴ-ドンと僕が付き合いだした頃の事。愛車の不調のストレス...
食べない日が何日か続くと、このまま何も食べなくても生きて...
水分さえ取っていれば動けてしまうから、お腹も空かないし、...
でもそれから、頻繁に貧血を起こすようになった。そして、つ...
それを助けてくれたのがゴ-ドンとトビ-で、そのときのある...
後日事情を知ったへンリエッタから勧められて、彼女の助力を...
無理せずに食べられる量を、毎日きちんと摂る。独りだと不精...
それからは、夜行や早朝便なんかで時間が合わないとき以外は...
始めてみると意外と料理が楽しくて、食べてくれる人がいるの...
気付けばレパートリーもかなり豊富になったし、彼の好みも完...
長い絶食でガリガリに痩せていた身体も今ではだいぶふっくら...
顔見知りになった商店街の人たちにすすめられたら、あっとい...
今日は安くて良いものが沢山手に入った。気分がいいから、ゴ...
夕飯の準備はばっちり。お風呂も済ませて、ベッドを整える。
男の単身部屋に似つかわしくないダブルのベッドに洗いたての...
一緒に眠る機会が増えたから、成人の男二人でシングルベッド...
みんなにバレないように運び入れるのに苦労したんだ。独り住...
でも実は、この上で肌を重ねたことはまだ数えるほどしかない。
この宿舎の壁は結構薄くて、隣の部屋に音が漏れてしまうこと...
普通の会話なら漏れはしないけど、どうやら僕は事の最中の声...
僕の部屋の両隣はジェ-ムスとゴ-ドン。問題はジェ-ムスだ...
それはゴ-ドンだって同じ考えのはずで、だから今まで、みん...
寄り添って眠るだけの愛の巣。それでも、独りじゃないならい...
仕事の都合で離れて眠らなくてはならないとき、広い広いベッ...
一度だけ、独りは嫌だって、離れて眠るのは寂しいと言って駄...
次の日に、彼は大きなくまさんのぬいぐるみを抱えて帰ってき...
それでもやだって泣いた僕を優しく抱いてくれたけど、彼が本...
寂しくなったらくまさんを抱っこ。それがこの部屋で過ごす時...
自分の部屋なのに独りで居られないなんて……変な癖ついちゃっ...
ふと時計を確認する。
「遅いな……ゴ-ドン」
増えた仕事が一便だけなら、もう帰ってもいいはずなんだけど...
もう少し独りで待たなくてはならないらしい。今日もいつもの...
しんとした静けさが耳に痛い。自分の心臓の音だけがやたらと...
どくん、どくん、どくん……心臓ってこんなに大きな音を立てて...
一定のリズムを乱すことなく刻まれるその音に集中すると、指...
身体の奥の奥の、真ん中の部分が握りつぶされるようにきゅっ...
ここのところ体調はいいはずなのに、ご飯もちゃんと食べてい...
おかしいな。なんなんだろ?落ち着かなくちゃと思って深呼吸...
寂しいからって、泣くか、普通?男だろ。
もうすぐゴ-ドンが来てくれるんだから。追加の仕事を終わら...
大丈夫。独りじゃない。この子がいる。ゴ-ドンがくれた、く...
いつからだろう、この子の存在に頼り始めたのは。この布と綿...
いつまで、この子に頼らなくちゃならないの?
ゴ-ドンの気持ち次第では……これからも、ずっと?もし彼が、...
ありえないことだと判っていても、恐ろしいくらい不安になる...
早く会いたい。早く触れたい。この冷たいぬいぐるみじゃなく...
どくん、どくん……
僕の中で鳴り続ける鼓動、その音だけを残して、次第に他の感...
意識が朦朧としてきた。痛みもなくなった。
どくん、どくん、どくん……かちゃ……どくん、どくん
ただひたすら事務的に刻まれていく音に、違うものが混ざる。...
どくん、どくん……ぱたん……どくん、どくん
まただ。あぁもう邪魔しないで。
ゴ-ドンが来てくれるまで、くまさんと二人で待っていなきゃ...
腕の中で何かが動いた。するりとすり抜けようとする感覚に気...
やめて、逃げないで。……盗らないで。捕まえようともがくけど...
なんで居なくなるの?なんで置いていくの?独りにしないでよ…...
襲ってくる喪失感から逃げ出したくて、夢中で手探りした。何...
絶望に似た感情が沸きあがってきた。怖い……独りは怖い。
いやだ!助けて、ゴ-ドン!捨てないで……置いていかないで。...
「うぁあああああぁああ!!」
うるさい、誰の声?僕?叫びたくなんかないのに、叫んでいる...
突然、身体が強い力でぐっと包み込まれた。直後に聞こえた声...
「……リー! 起きろ! 目を覚ませ、ヘンリ-!!」
「あ……」
一気に、失っていた全ての感覚を取り戻した。指先の痺れも、...
そして、腕の中から消えた存在と、換わりに僕を包み込んだ腕...
「………」
声が出ない。身体が震える。心臓の音は、もう聞こえない。
「ヘンリ-、もう心配ない。俺だ、ゴ-ドンだ。わかるな?」
「……ゴ-ドン……」
「あぁ、俺だ。……今帰った。遅くなってすまない」
「……」
確かに、ゴ-ドンだ。彼の事を確認した途端、どっと疲労感に...
「もう大丈夫だ。何処にも行かない」
「……?」
「だから泣かないでくれ。捨てたりなんかするもんか……!」
身体が痛いくらいに力強く、抱きしめられた。ゴ-ドンの声が...
かろうじて動かせる左腕をゴ-ドンの背中に回して、掌でぽん...
「……どうしたの?」
「お前がうなされていた。泣いていたんだ」
「僕が?」
「寂しかったんだろう。ごめんな」
「……うん」
肩越しに見えた枕元にくまさんが居た。投げ出されたようにお...
なんであんなところに?くまさんのほうに伸ばせる限り手を伸...
「! あんなものの相手をするな!」
不意に腕を曲げられて肩に痛みが走る。
「痛っ」
「っ、すまん! ……もうあれに触らないでくれ」
「どうして?」
「お前があれを抱いているところを見たくない」
「君がくれたんだよ」
「そうだ。だが、ここまであれに依存するとは思わなかった」
「依存なんかじゃ……」
そりゃぁ、頼りにはしているけど。君がいない間、慰めてくれ...
そもそも、君が早く帰ってきてくれれば寂しい思いすることな...
なんでこんなに遅かったんだろう?追加が一便だけならもっと...
「ねぇ……追加の仕事って何だったの?」
「……クロバンズゲートからナップフォードまでの定期便だ」
それは多分、十八時にクロバンズゲートを出る普通客車便のこ...
でも、それを牽いて今の時間?時計の短針は、もうとっくに十...
聞かなきゃよかった。ため息をつきながら、頭をゴ-ドンの肩...
腕、離してくれないかな。握られた部分が痺れてきた。さっき...
「……パーシ-のところに寄っていた」
「!」
全身から血の気が引いた。とっさに両耳を手で塞ごうとしたら...
ありったけの力で逆らうけど、ゴ-ドンに敵うわけはない。た...
腕が痛くて、胸の奥が握りつぶされるような圧迫感に襲われる...
「聞いてくれ」
「聞きたくない!」
「聞いてもらわなくちゃ困る」
「困らないよ! 言い訳なんか聞きたくない!」
「言い訳じゃない」
「パーシ-の所に寄って遅くなったんだよね、わかったから、...
「寄る必要があったんだ、どうしても」
「寄っちゃ駄目だなんて、言ってない」
「だったら聞け!」
「やだ……聞きたくないよ……」
「話をしてきた。断ったんだ、付き合えないと」
「! ……どうして」
「どうしてって……俺にはお前がいるじゃないか」
「……パーシ-は、いい子だよ。僕なんかより、ずっと……」
「そうだな。お前みたいに泣いたりせず、真剣に話を聞いてく...
「……」
「あいつの場合はな、勘違いだ」
「……勘違い?」
「憧れと恋心を混同してしまっていた。話し合ったらわかった...
「憧れていただけ……ってこと?」
「そうだ。心や身体を求められたわけじゃない」
「……最悪だ、僕」
「まったくだ。ぽろぽろ泣きやがって。俺を疑ってんのか?」
「疑ってなんかないよ! 信じてる! ……ただ……」
「ただ?」
「噂が多すぎて……イライラする。辛いんだ」
「聞くたびにこうなのか」
「今回は、特別、だけど……」
「まったく……身が持たないぞ。少し割り切れ」
「……うん」
「相手には困らない俺様が、何故お前を選んだのか……少し考え...
「…………」
「自分の魅力に自覚はないのか」
ゴ-ドンは明らかな呆れ顔。今思えば彼が僕の何処を好きにな...
最初に繋がったのは身体から。いきなり強引に奪われて、その...
でもその後、心から僕の全てを欲していたのだと聞かされたら...
なにより僕もゴ-ドンの事が好きだったから、好きな人から本...
それに乗じて彼を自分のものにしてしまおうと、我ながら随分...
全てが都合よく上手く進みすぎたせいで、好きになったきっか...
ひとつだけ、彼を惹き付けているのが確実なものといえば……
「……身体?」
「否定はしないが……」
力強い腕に支えられて、僕の身体が横に寝かされる。枕の上に...
僕が手を伸ばすより早くゴ-ドンの手がくまさんを鷲掴みに持...
そっぽ向かせたりして、これからする事を見られないように……...
僕を気遣ってそうしたのだろうけど、時折垣間見えるゴ-ドン...
「……なにがおかしい」
「見られるのが恥ずかしいの?」
「そんなんじゃない。独り占めしたいんだ。見られるのも気に...
「ぬいぐるみじゃないか。……君って意外と可愛いところあるよ...
「言ってろ」
身体全体に、慎重にふわりと重みが掛けられる。彼の唇と僕の...
「ごはん! 食べる?」
「! ……なんだいきなり」
「晩御飯だよ。まだなんだろ?」
「後でいい。先にお前を食べたい」
「遅くなるよ」
「欲しいんだ。今すぐ」
「仕方ないなぁ……晩御飯を入れるスペース、ちゃんと残してお...
「心配するな。いくら食っても食い足りないよ」
ゴ-ドンが笑った。僕の頬を撫でながら、唇を重ねてくる。
大きくて強いゴ-ドンも、唇はとても柔らかくて暖かい。その...
帰ってきてくれたんだ。僕のところに。そう思うと、やっと、...
二人を隔てる邪魔な服がゴ-ドンの巧みな手捌きで抜き取られ...
お互いの胸に二ヶ所ずつ、小さく硬くあたる部分がくすぐった...
それに気付いたゴ-ドンが、僕の胸に掌を当てて硬い部分を転...
いつのまにやら僕の身体は感度が上がって、完全に食べ頃にな...
彼の唇は僕の耳に移り、舌先で耳に軽く触れながら、熱い吐息...
「もう気持ちよくなってきたのか」
「……うん」
「自分で魅力だと言うだけのことはあるな。いやらしい身体だ」
「いやらしいのが嫌いなら、食べなくてもいいんだよ」
「好き嫌いはしないんだ」
「明日のごはんはホワイトアスパラのフルコースだね」
「……緑のにしてくれ」
「白いのも、美味しいのに……んっ」
ゴ-ドンの手が胸からわき腹へ、更に下へと降りていき、妙に...
僕が間違いなく男なのだと主張するそこに手が触れると、さっ...
既に緊張しきったそこを解きほぐすようにやさしく摩られる。...
容赦なく襲い掛かってくる快感に必死に抗うけれど、不意に胸...
「んっ! ……ぅあ……っ!」
この部屋ではご法度の喘ぎ声。
一瞬だけ、隣室のジェ-ムスの存在が頭をよぎる。今日の彼は...
でも一度声を出してしまったら、もう止められない。止める気...
声は美味しく食べてもらうための調味料だから、出来るだけ色...
ゴ-ドンの手や舌の動きに合わせて、身体が敏感に反応する。...
「あんっ……あっ、はぅ……んっ」
足の間に鈍い痛みが走って、直後に更に強い快感が、お腹の底...
くちゅくちゅとソースをかき混ぜるのに似た音と、ちゅっちゅ...
頭の中が真っ白になって、あっという間に何が何だかわからな...
「あっ、あっ……んっ、ぁっ!」
足の間はとても熱い。けれど、急激に寒気を感じた。またあの...
ゴ-ドンに触れられている、その感触は確かにあるのに、実感...
「ゴ-ドンっ! ……どこ? ……ごーどん……!」
力が抜けてベッドに落ちかけた腕が、途中で受け止められた。
「ここだ、大丈夫。……離さない。何処にも行かない」
ふわりと身体を包み込む確かな温もりを感じて、胸の痛みが和...
「……ゴ-ドン、よかった。ゴ-ドン!」
「ずっと側に居る。だから泣くな」
声がとても優しくて、言葉が発せられる度に耳に当たる吐息が...
「ずっと、ずっと一緒だ。ヘンリ-」
「うんっ……うん、ゴ-ドンっ! 一緒、に……んっ……うぁっ」
引き裂かれるような異物感が、お腹のそこのほうから身体の中...
一緒どころじゃない、溶け合って同化するようなこの感じ。迫...
もう二度と離れないようにゴ-ドンの身体に必死で縋りつきな...
「はっ……んっ、ゴ-ドン、ゴード……ンっ! あんっ、あっ……ゴ...
「くっ……ぅっ……ヘンリ-……っ!」
呼び返してくれるゴ-ドンの声も、段々荒くなってくる。
小刻みに激しく突き上げられる振動とゴ-ドンの吐く息のリズ...
「ヘンリ-……ヘンリ-!」
「はっ、はっ……あんっ、ゴー……ドンっ! あぁっ、うぁ、あっ…...
一段と強い刺激が、頭の先からつま先までを一気に駆け抜ける。
雷に貫かれたような、強い衝撃。それを最後に、僕の意識は完...
今日もゴ-ドンはいつもどおり。快調に急行をすっ飛ばし、時...
そして僕は、少し遅れる。
「ヘンリ-! また遅れやがって! 何度やったら気が済むん...
「うっるさいなぁ……。支線が遅れてきたんだよ、これでも随分...
「支線の遅れくらいお前のところで全部取り戻せ! でかい機...
「でかいとかでかくないとか関係ないだろ! 安全運転が基本...
「安全かつ時間通り、それが基本だ! それをお前ときたら……」
恒例の口げんかに、駅員と車掌たちは肩をすくめて苦笑い。助...
「鈍行は一区間分の走行距離が短いから、速度が出せないんだ...
「お前に出来ないだけだろうが。俺様を見習って精進するんだ...
「あぁぁもう! ……そうだね、そうするよ! ぜーんぶ、君の...
これ以上言っても無駄。こんなときは大抵、僕が折れて言い合...
わかったらいいんだ、と言わんばかりの笑みを浮かべて頷くゴ...
僕なんかよりゴ-ドンのほうがずっとずっと腕がいいのは確か...
それに誰かさんのせいで、朝からずっと腰が重いんだ。レバー...
「あれが先輩に向かって吐く台詞!? っとにわがままなんだ...
「俺がいつわがままを言った?」
僕の真後ろで声がする。
いつの間に?ゴ-ドンが、機関室のドアの前に立っていた。
「いつもだろ! 俺様俺様、急行急行って……すっとばせばいい...
「生憎すっ飛ばすしか能がないんだ。こんな風にな」
ゴ-ドンが機関室に乗り込んできて、僕の腕を掴む。
やばい、言い過ぎたかな。
後悔は一瞬。それも、違う意味で。
「なにすっ……んっ……」
腕を引かれ、抱きしめられた。そして、深い、深いキス。助手...
駅員は?車掌は?お客さんは?……他に見られたら大変だ。引き...
「んんーっ!……んっ……んぅっ」
こんな状況でも、ゴ-ドンのキスはとろけそうな位甘いから始...
息継ぎのために接続が緩んだその隙に逃げるのも忘れて、流れ...
「んっ、んくっ……はぁっ」
唇が離れた途端、僕は口を押さえてへたり込んだ。頭がぼやけ...
腰が砕けたってやつ。勤務中なのに……。
「ほら」
座り込んだ僕の膝の上に、紙袋が置かれた。
「本土との乗換駅でよく会う行商の夫人から貰ったんだが」
「……え?」
「例の……白いのだ」
わけが判らないまま、袋の中を確認する。中には季節のお野菜...
「あ……あぁ、なんとか、するよ。スープやソースにすれば、緑...
「そうか、よかった」
ほっと胸をなでおろして笑みを浮かべたゴ-ドンは僕の頭をひ...
立ち上がれず座り込んだままの僕に向かって笑顔で手を振ると...
「せ、先輩?」
「……誰か、見てた?」
「い、いえ! あ、ぼ、僕だけ、です」
「よかった。……じゃぁ、君も、忘れて」
「え……は、はい!!!」
助手が慌てて作業を再開する。
やられた。不意打ち。あの悪ガキめ……!
掌を当てた額には、汗がにじんでいる。身体が熱い。頭が痛く...
「へぇ、なるほどねぇ」
「!」
ホームとは逆の方から声がする。聞きなれた、今のタイミング...
恐る恐る横目で確認すると、見慣れた赤いボディの機関車がい...
よりによって、なんでこんな時に、機関室がぴったり横付くよ...
「何か言いたいことはある?」
「……君の予想通りだと思うから、何も聞かないで」
「怪しいとは思っていたけど、まさか本当にその通りだとはね...
噂が広まってしまうのを覚悟した。ずっと必死で隠してきたの...
「昨日の晩といい、今といい。ほんっとお盛んだよねぇ、君達...
「……きのう…の、晩?……その……」
「最初は君が女を連れ込んでいるのかと思ったんだけどね。名...
「あ……」
最悪だ。
自業自得には違いない。隣室のジェ-ムスが部屋にいるのを承...
でもやっぱり、実際に聞こえていたと言われると、どうしよう...
「……そういえばさ、急行の客車係のアリスのことなんだけど。...
突然、何の話?アリスなんて子、知らない。ふるふると首を横...
「小柄でふっくらしたほっぺが可愛い栗毛の女の子さ。急行の...
「……え?」
「今度はまた女の子だ。君の旦那様ってほんと、罪作りだよね」
きょとんとする僕を見て、ジェ-ムスがにやりと笑った。
「噂なんてね、根も葉もない奴のほうが面白いんだよ。憶測が...
「それって……」
みんなには言わないでいてくれるってこと?
「今度夕飯おごってくれる? エドワ-ドの分もね。その時に...
「……そのくらいで済むなら」
ほっと、安堵のため息が出る。
「ま。旦那様には噂立てられないように気をつけろって言って...
「そうするよ。……ありがとう、ジェ-ムス」
「あと、声は控えめにね。まったく、君の声がよすぎて……参っ...
「! ……あ……う、うん……」
よすぎるとか……僕の声ってどれだけいやらしかったんだろう……...
「あはは、耳まで真っ赤だよヘンリ-。助手君、火が強すぎる...
「えっ、あっ、……は、はいっ!」
振られた助手も、真っ赤になってしどろもどろ。もうどうしよ...
「おっと時間だ。じゃぁ、また後で!」
ジェ-ムスは人好きのする顔に悪戯っぽい微笑みを乗せて、手...
僕も手を振り返す。彼の愛車の後姿を見送りながら、ほっとた...
ジェ-ムスがフォローしてくれたおかげで、幾分具合がよくな...
「……ヘンリ-先輩。そろそろ時間だけど、走れますか?」
助手が遠慮がちに声をかけてきた。一連の出来事に気圧されて...
まぁ、いきなりあんなシーンやこんな会話、彼には刺激が強す...
重い身体をなんとか持ち上げて立ち上がり、頭をわしわしと撫...
「大丈夫、行けるよ」
「はい!」
助手の笑顔に笑顔を返して、操縦盤のレバーを握る。
車掌の合図を貰ってから、ゆっくりと緑色の愛車を発車させる...
「アリスは一ヶ月くらい前に、付き合っていた彼氏と別れたら...
「へ?」
「新しい恋をしたんですね」
「……厄介な相手選んじゃったなぁ」
「付き合ってる事、後悔してるんですか?」
「僕じゃなくて。アリスが、だよ」
「そうですね。最初から負けてる勝負、ですからねぇ」
「知らないから仕方ないんだろうけど……申し訳ないな」
「でも……噂ですから」
「まぁ、ね」
なんて、そんな事よりも。今の僕にとって何よりも重大なのは...
ゴ-ドンの苦手なホワイトアスパラ。あれをどう料理しよう?...
それにしても、あれを食べたときのゴ-ドンの顔。思い出して...
「どうかしたんですか?」
「いや、何も」
強がりで見栄っ張りな彼のあんな顔、知っているのはきっと僕...
顔も知らない恋のライバル達には悪いけど、ちょっとだけ優越...
明日の相手は誰だろう。いつかは僕の名前が出てきて、噂が終...
「そうだ。僕らの事は、忘れておいてね。噂になると困るんだ」
「わかってますよ。噂は根も葉もない奴のほうが、面白いです...
「言うね。……ありがとう」
大きなものも、小さなものも、転がるたびにいろんなものをく...
いろんな噂を背中に乗せて、僕らは今日もしゅっぽしゅっぽと...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ヘンリ-兄さんお気に入りのくまさんはディーゼル7101号とは...
パーシ-には申し訳ないことをしました。ごめんなさい……orz
きか○しゃジャンルになので衝突事故もネタ的に面白かったw
お目汚し失礼いたしました。
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シリーズものインデックス2
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第28巻
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第26巻
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第23巻
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第21巻
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第8巻
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第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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