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#title(孤悲がたり) [#xbfc46c8]
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマ 三條→武智をベースにした明治に入ってからの三條とO...
内容がO殿に厳しめかもしれないので、O殿スキーな方は事前避けを...
特に関係なく読めますが、少しだけ前々スレ>>338と話が重なって...
対王荘と呼ばれるその風雅な別荘は、隅田川沿いの閑静な地に...
寝室の戸を開け放って臨む庭園には明るい陽光が差し込み、軽...
それを寝具の上に身を起こし眺めやっていた三條の耳に、その...
「いやぁ、お加減はいかがですろうか。」
入室の許可を口にする前に部屋に踏みこんできた男。
傍若無人とも豪放磊落とも取れる態度を取るその相手に、三條...
そして、
「よういらっしゃいました。山宇知殿。」
迎え入れたその名の持ち主は、かつての土イ左藩主、山宇知容道...
三條が皇城で倒れたのは、都を江戸から名を改めた東京へと移...
戊辰の頃から観察使として早く関東に赴いていた身ではあった...
頑強に異を唱え、しかしそれも適わぬとなった時には京の御所...
そんな板挟みによる疲れが心身共に出たのだろう。
少し休養を取るよう命じられ身を寄せたこの地に、見舞いとは...
「今日はいかがされましたか、山宇知殿。」
声色静かに聞く。そんな三條の枕元近くへ容道はこの時、遠慮...
「いや、近々この辺りにわしも別荘を建てようかと思うちょり...
足を運んだところ、そう言えばこちらに三條殿がいらしている...
「ようはついでと言う事ですか。」
「いやいや、これは手厳しい。」
年の差はかなりあれど、家同士は縁戚の関係にあるこの年輩の...
三條は彼の身の現状を思い起こす。
山宇知容堂。
隠居の身でありながら事実上土イ左一国の実権を握り、新政府設...
もたらしたこの男は、しかし昨今その要職をすべて辞し、今は...
数多の妾。身代を潰しかねないとまで噂される酒楼での豪遊。
一見派手なその暮らしぶりは、しかし口さがない者達に言わせ...
抱えているその裏返しであろうと揶揄されている
そしてそれを実際にそうなのだろうと三條も思う。
幕府を倒し、新しき国を作る為動き出した新政府内に置いて、...
札魔、徴収の二大雄藩出身の者達だった。
同じく功労があったとされる土イ左、火後は後手に回り、その後...
しかしそれも仕方があるまいと三條はどこか冷めた視点で見る。
あの何もかもが混沌とし、ただ一歩の先さえ何が起こるか分か...
自分もかつてはこの身を投じていた。
だからなのか。その際交わった者達と今の者達では何かが違う...
もちろん生き長らえた者達はいる。それでも、
徴収は死にすぎた。そして土イ左は……死に絶えた……
思った瞬間、脳裏によぎった面影に三條は片手で目の上を覆う。
その耳に驚いたような容道の声が届いた。
「どうされた?」
どうされた、か。いや、むしろ自分は何をしている、だろう。
人の事をとやかくは言えまい。生き伸びて変節してしまったと...
自分も同じだ。
だからこそ痛感する。
「貴方の顔を見たら…思い出してしもうた事がありまして…」
「わしの顔を?」
問い返され、伏せた顔の下に浮かぶのは冷笑。だから自嘲にも...
「ええ、昔の事です。昔の…恋の…」
ぽつりと告げる。その声に滲むのは甘さなど欠片もない、ただ...
寝具から抜け出し、立ち上がる。
そして庭の方へと足を向ける三條の背をこの時容道は追う事な...
それを受け止めながら三條は踏み出た廊下の上から口を開く。
「昔と言ってもそう遠くはない。それでももう遥か彼方の事の...
一つの恋をしました。」
告げた言葉に、ほう、貴殿がと言う声が飛ぶ。しかしそれにも...
「身分の高い者ではありませんでした。しかし才には溢れ、そ...
そんな不器用な生き方しか出来ぬ者でした。そんな相手に私は...
摘み、手元で飾り立て愛でてやりたいと思うのは私の独り善が...
手折ってはならぬ野の花でした。」
「お家の侍女か何かでしたか?」
「さて……なんにしても、手折ってしまった後も、どこまでも育...
そしてそれを私はとうとう止める事が出来なかった。」
「それで、どう?」
「死にました。一度離れた土に拒まれ、それでも自らの意思で...
枯れました。」
「それは…」
「知らせを聞いた時は後悔しました。やはり止めておけばよか...
手元に置いておけば、あのような無惨な事にはならなかったか...
私は都落ちをして力を失うてしまいましたが、それでも彼の者...
声に痛ましげな響きが滲む。
一度言葉を止め、息を噛み、しかし三條は尚、語る事を止めな...
「しかしそう思いながらもわかってはいるのです。例え時間が...
私については来なかっただろうと。」
きっぱりと言い切る、その語調に背後から容道の声が届く。
「何故そのように思われる?」
それはある意味、残酷な問いだった。しかしそれにも三條は退...
「想う者がおったようです。切れぬ縁もあるようでした。世の...
己が心一つ自由に出来ない身のようでした。そしてその果てに...
愚かです。そして……憐れでした。」
すっと上げる視線の先。
そこには明るい光が満ちていた。
こんな光を、あれは見た事があったのだろうか。思えば切なさ...
胸に込み上げる。
だから目を伏せ、三條はこの時白い病床の着物に包まれた己の...
「人の心はままならぬ。それでも憎うなりましたな。それほど...
踏みにじり、散らした男が。非力な身ゆえ、武家の仇討ちのよ...
それでもその相手を夢の中で何度呪い、恨んだ事か。」
強い思想に捕らわれた事はあっても、生来穏やかな気質をもっ...
言葉に、背後でこの時はっと呑まれる息があった。そして、
「…まるで、その相手の事を詳しゅう知っちゅうようですな…」
ボソリと零された呟き。それに三條は前を向いたまま、その口...
「新しき世になって、異国からは文明とやらが持ち込まれ、我...
白日のもとに晒され徐々にその力を失っている。こうなれば、...
呪い殺せぬものですなぁ。」
いっそ明るく朗らかに、告げる言葉にはどこか孕む狂気があっ...
「どれだけ恨んでも呪っても、一向に変わらぬ理不尽な現実に...
なりました。だからこの感情は抑え込む事にした。しかし駄目...
おかしげな笑い声が咽喉の奥でクツクツと鳴る。
そんな三條にこの時、微かに強張ったような容道の声が届いた。
「ならば、これからどうされるおつもりか?」
それに三條は尚も笑む事を止めない。
「どうする?どうしようもないでしょう。普段は忘れるのです...
笑い、怒り、諦め、そうやって日々を過ごしながらそれでも、...
胸の奥深くでただこう念じるのです。」
「………………」
「『八つ裂きにしてやりたい』と。」
すとんと告げた、その言葉に背後で沈黙が落ちた。
重く、昏い。しかしそれを知りながら、三條はこの時最後の言...
「私はきっと死ぬまでこんな事を繰り返すのでしょう。人を呪...
非道に心を染めていれば、私はいつか愚かだったあの者と同じ...
そうした私を、あれが受け入れてくれるかどうかはわかりませ...
それは詩でもそらんじるように。そして、背後の沈黙に倣うよ...
以後、もう何一つ声を発する事は無い。
光の満ちる部屋に張り詰める静寂。
その圧迫感に、先に耐えられなくなったのは背後の容道のよう...
耳に届いた辞去の言葉。心なしか声が震えている。しかしそれ...
無礼も非礼も承知の上。
それでもこの時、貫き通したい愚かな意地があった。
退出してゆく足音を聞く。そして再び訪れた静寂。
その中で、三條はこの時ようやくその場に身を落とす。
廊下に面した部屋の柱に背を預け、座り込むその根元。
ゆるりと顔をあげれば、そこには髪を揺らす風があった。そし...
にゃあ―――
不意に耳に届いた澄んだ鳴き声。思わずそれが聞こえた方角へ...
座り込む三條をまっすぐに見つめてくる一匹の猫がいた。
この館で飼っているものではない。ならば迷い猫か。
そう思った瞬間、三條の脳裏に蘇る光景があった。
あれは京の夜だった。
笛を吹く自分の指を止めさせた猫の声。
月明かりを受けて輝くその毛並みは、白にも黒にもなれぬ灰色...
それは謀らずしも彼の者の存在そのものを思い起こさせた。
だから、
「おいで。」
あの時もそう呼んだ。
近づいてくるその身を膝の上に抱き上げれば、近くに見たその...
それがこの時、妙に先程までの事を責められているようで、三...
「私を責めに来たのですか?」
ゆえに、優しく穏やかに問い掛ける。それに猫は鳴かなかった...
まっすぐにこちらに向けてくる。
それを三條は笑いながら見つめ返し、そして―――告げた。
「だとしても、これくらいの八つ当たりは許しなさい……武智。」
外には光が満ちていた。
眩しいほどに暖かな、その光に包まれて撫でるその毛並み。
それはかつて抱いた記憶の中の背と同様、泣きたい程に柔らか...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
こんなのを書いておいてなんですが、伝のO殿は好きです。夢見...
長く場所をお借りしてきましたが、武智ベース話は次でラストになり...
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タイガードラマ 三條→武智をベースにした明治に入ってからの三條とO...
内容がO殿に厳しめかもしれないので、O殿スキーな方は事前避けを...
特に関係なく読めますが、少しだけ前々スレ>>338と話が重なって...
対王荘と呼ばれるその風雅な別荘は、隅田川沿いの閑静な地に...
寝室の戸を開け放って臨む庭園には明るい陽光が差し込み、軽...
それを寝具の上に身を起こし眺めやっていた三條の耳に、その...
「いやぁ、お加減はいかがですろうか。」
入室の許可を口にする前に部屋に踏みこんできた男。
傍若無人とも豪放磊落とも取れる態度を取るその相手に、三條...
そして、
「よういらっしゃいました。山宇知殿。」
迎え入れたその名の持ち主は、かつての土イ左藩主、山宇知容道...
三條が皇城で倒れたのは、都を江戸から名を改めた東京へと移...
戊辰の頃から観察使として早く関東に赴いていた身ではあった...
頑強に異を唱え、しかしそれも適わぬとなった時には京の御所...
そんな板挟みによる疲れが心身共に出たのだろう。
少し休養を取るよう命じられ身を寄せたこの地に、見舞いとは...
「今日はいかがされましたか、山宇知殿。」
声色静かに聞く。そんな三條の枕元近くへ容道はこの時、遠慮...
「いや、近々この辺りにわしも別荘を建てようかと思うちょり...
足を運んだところ、そう言えばこちらに三條殿がいらしている...
「ようはついでと言う事ですか。」
「いやいや、これは手厳しい。」
年の差はかなりあれど、家同士は縁戚の関係にあるこの年輩の...
三條は彼の身の現状を思い起こす。
山宇知容堂。
隠居の身でありながら事実上土イ左一国の実権を握り、新政府設...
もたらしたこの男は、しかし昨今その要職をすべて辞し、今は...
数多の妾。身代を潰しかねないとまで噂される酒楼での豪遊。
一見派手なその暮らしぶりは、しかし口さがない者達に言わせ...
抱えているその裏返しであろうと揶揄されている
そしてそれを実際にそうなのだろうと三條も思う。
幕府を倒し、新しき国を作る為動き出した新政府内に置いて、...
札魔、徴収の二大雄藩出身の者達だった。
同じく功労があったとされる土イ左、火後は後手に回り、その後...
しかしそれも仕方があるまいと三條はどこか冷めた視点で見る。
あの何もかもが混沌とし、ただ一歩の先さえ何が起こるか分か...
自分もかつてはこの身を投じていた。
だからなのか。その際交わった者達と今の者達では何かが違う...
もちろん生き長らえた者達はいる。それでも、
徴収は死にすぎた。そして土イ左は……死に絶えた……
思った瞬間、脳裏によぎった面影に三條は片手で目の上を覆う。
その耳に驚いたような容道の声が届いた。
「どうされた?」
どうされた、か。いや、むしろ自分は何をしている、だろう。
人の事をとやかくは言えまい。生き伸びて変節してしまったと...
自分も同じだ。
だからこそ痛感する。
「貴方の顔を見たら…思い出してしもうた事がありまして…」
「わしの顔を?」
問い返され、伏せた顔の下に浮かぶのは冷笑。だから自嘲にも...
「ええ、昔の事です。昔の…恋の…」
ぽつりと告げる。その声に滲むのは甘さなど欠片もない、ただ...
寝具から抜け出し、立ち上がる。
そして庭の方へと足を向ける三條の背をこの時容道は追う事な...
それを受け止めながら三條は踏み出た廊下の上から口を開く。
「昔と言ってもそう遠くはない。それでももう遥か彼方の事の...
一つの恋をしました。」
告げた言葉に、ほう、貴殿がと言う声が飛ぶ。しかしそれにも...
「身分の高い者ではありませんでした。しかし才には溢れ、そ...
そんな不器用な生き方しか出来ぬ者でした。そんな相手に私は...
摘み、手元で飾り立て愛でてやりたいと思うのは私の独り善が...
手折ってはならぬ野の花でした。」
「お家の侍女か何かでしたか?」
「さて……なんにしても、手折ってしまった後も、どこまでも育...
そしてそれを私はとうとう止める事が出来なかった。」
「それで、どう?」
「死にました。一度離れた土に拒まれ、それでも自らの意思で...
枯れました。」
「それは…」
「知らせを聞いた時は後悔しました。やはり止めておけばよか...
手元に置いておけば、あのような無惨な事にはならなかったか...
私は都落ちをして力を失うてしまいましたが、それでも彼の者...
声に痛ましげな響きが滲む。
一度言葉を止め、息を噛み、しかし三條は尚、語る事を止めな...
「しかしそう思いながらもわかってはいるのです。例え時間が...
私については来なかっただろうと。」
きっぱりと言い切る、その語調に背後から容道の声が届く。
「何故そのように思われる?」
それはある意味、残酷な問いだった。しかしそれにも三條は退...
「想う者がおったようです。切れぬ縁もあるようでした。世の...
己が心一つ自由に出来ない身のようでした。そしてその果てに...
愚かです。そして……憐れでした。」
すっと上げる視線の先。
そこには明るい光が満ちていた。
こんな光を、あれは見た事があったのだろうか。思えば切なさ...
胸に込み上げる。
だから目を伏せ、三條はこの時白い病床の着物に包まれた己の...
「人の心はままならぬ。それでも憎うなりましたな。それほど...
踏みにじり、散らした男が。非力な身ゆえ、武家の仇討ちのよ...
それでもその相手を夢の中で何度呪い、恨んだ事か。」
強い思想に捕らわれた事はあっても、生来穏やかな気質をもっ...
言葉に、背後でこの時はっと呑まれる息があった。そして、
「…まるで、その相手の事を詳しゅう知っちゅうようですな…」
ボソリと零された呟き。それに三條は前を向いたまま、その口...
「新しき世になって、異国からは文明とやらが持ち込まれ、我...
白日のもとに晒され徐々にその力を失っている。こうなれば、...
呪い殺せぬものですなぁ。」
いっそ明るく朗らかに、告げる言葉にはどこか孕む狂気があっ...
「どれだけ恨んでも呪っても、一向に変わらぬ理不尽な現実に...
なりました。だからこの感情は抑え込む事にした。しかし駄目...
おかしげな笑い声が咽喉の奥でクツクツと鳴る。
そんな三條にこの時、微かに強張ったような容道の声が届いた。
「ならば、これからどうされるおつもりか?」
それに三條は尚も笑む事を止めない。
「どうする?どうしようもないでしょう。普段は忘れるのです...
笑い、怒り、諦め、そうやって日々を過ごしながらそれでも、...
胸の奥深くでただこう念じるのです。」
「………………」
「『八つ裂きにしてやりたい』と。」
すとんと告げた、その言葉に背後で沈黙が落ちた。
重く、昏い。しかしそれを知りながら、三條はこの時最後の言...
「私はきっと死ぬまでこんな事を繰り返すのでしょう。人を呪...
非道に心を染めていれば、私はいつか愚かだったあの者と同じ...
そうした私を、あれが受け入れてくれるかどうかはわかりませ...
それは詩でもそらんじるように。そして、背後の沈黙に倣うよ...
以後、もう何一つ声を発する事は無い。
光の満ちる部屋に張り詰める静寂。
その圧迫感に、先に耐えられなくなったのは背後の容道のよう...
耳に届いた辞去の言葉。心なしか声が震えている。しかしそれ...
無礼も非礼も承知の上。
それでもこの時、貫き通したい愚かな意地があった。
退出してゆく足音を聞く。そして再び訪れた静寂。
その中で、三條はこの時ようやくその場に身を落とす。
廊下に面した部屋の柱に背を預け、座り込むその根元。
ゆるりと顔をあげれば、そこには髪を揺らす風があった。そし...
にゃあ―――
不意に耳に届いた澄んだ鳴き声。思わずそれが聞こえた方角へ...
座り込む三條をまっすぐに見つめてくる一匹の猫がいた。
この館で飼っているものではない。ならば迷い猫か。
そう思った瞬間、三條の脳裏に蘇る光景があった。
あれは京の夜だった。
笛を吹く自分の指を止めさせた猫の声。
月明かりを受けて輝くその毛並みは、白にも黒にもなれぬ灰色...
それは謀らずしも彼の者の存在そのものを思い起こさせた。
だから、
「おいで。」
あの時もそう呼んだ。
近づいてくるその身を膝の上に抱き上げれば、近くに見たその...
それがこの時、妙に先程までの事を責められているようで、三...
「私を責めに来たのですか?」
ゆえに、優しく穏やかに問い掛ける。それに猫は鳴かなかった...
まっすぐにこちらに向けてくる。
それを三條は笑いながら見つめ返し、そして―――告げた。
「だとしても、これくらいの八つ当たりは許しなさい……武智。」
外には光が満ちていた。
眩しいほどに暖かな、その光に包まれて撫でるその毛並み。
それはかつて抱いた記憶の中の背と同様、泣きたい程に柔らか...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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