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#title(板と缶) [#lb5d8c7f]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
| ilの板と缶...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| つきあ...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
今日、神部が登庁していたとは、伊民は知らなかった。
基本的に特/命係というのは、土日が休みだと思っていた。
あの部屋が空っぽな日があろうが誰も気にしないし、係長であ...
だが今日という日曜日、特別大きな事件も起きず、早く上がれ...
その特/命係の神部警部補からだった。
『今日は何か予定ありますか? もしお時間あったら、ちょっ...
こんなことは初めてだった。先日一緒に事件を捜査するはめに...
さてどう返事をしたものかと、伊民は2分ほど迷い、眉間に深...
さすがの伊民も知っている。今日は天下のバレンタインデーだ。
製菓会社が騒ぎ立てるのがいけないのか、イベント好きな女心...
捜/査一課の若い連中たちは心なしか朝から明るい顔をして携帯...
後輩の芹澤にいたっては、数ヶ月前からの激戦を勝ち抜いて、...
今日という日はそういう日だ。
そこここでチョコレートとメッセージカードが飛び交い、恋人...
そういう日なのだと、いくら伊民だって知っていた。
しかし不幸なことに伊民には、そういう相手がいなかった。も...
別に、チョコレートがほしいわけではない。菓子の類はあれば...
女子職員がくれた駄菓子っぽいチョコレートにしても、もらえ...
もちろん、彼女たちは「お返しはいりませんよ」と言ってくれ...
そんなところへ届いたのが、神部からのメールだった。
神部のような男に限って、バレンタインの夜が暇だとは伊民に...
予定をドタキャンされたか、それともコワイ女に好かれて逃げ...
伊民に予定がないことを見透かされたような気もする。それも...
断ろうかどうしようかと、なんでも即決体質の伊民にしては迷...
『警部補殿の奢りならご一緒しますよ』
すぐにOKの返事が来た。
***
6時過ぎにエントランスで待ち合わせ、一緒に歩いて有楽町ま...
「伊民さん、焼鳥なんて好きですか?」
と神部に持ちかけられ、前に一度行ったことのある焼鳥屋の話...
早足で歩けば、あまり遠くはない。
時には並んで、時には前後になって歩きながら、世間話をした...
正直、この男と何を話せばいいのかと思っていた伊民は、その...
「・・・俺、焼鳥屋ってあまり行ったことないんですよね。機...
「焼鳥屋には、きれいなおネエちゃんはいませんしね」
「え? なんですか、それ?」
「銀座のクラブのほうがお似合いなんじゃないですかね?」
「・・・ああ、この前の店ですか。あれはつきあいですよ。偉...
「さあ。俺たちにゃ雲の上のお話ですからねえ・・・」
「ははっ、もしかして羨ましいんですか、伊民さん?」
「いーえ、とんでもない。俺は焼鳥屋でけっこうですよ」
そんな調子の、軽いやりとり。伊民の棘のある言葉を、神部は...
ほどほど混んだ焼鳥屋のカウンターに滑り込み、生中をふたつ...
「警部補殿、何から行きますか?」
「こんなとこで、警部補殿はやめてくださいよ。あ、俺、ナン...
革のコートを脱いで、神部は無造作に椅子の背に掛けた。注文...
すいません、と微笑む神部に、店員は明らかに普段の愛想以上...
すすけた焼鳥屋には似合わない男だなと、伊民はあらためて神...
いかにもモテそうなこの男が、なぜ今日みたいな日に伊民なぞ...
神部はしかし気にしたふうもなく、楽しそうにメニューを研究...
「伊民さん、こういう店、詳しそうですよね」
「・・・普通ですよ」
「謙遜しないで、教えてくださいよー?」
屈託なく微笑みかけられると、悪い気はしなかった。
***
「・・・だからですね、俺としちゃ気に食わないわけですよ。...
「ええ、そうですよね。遵法精神は大事にしないと」
「なんかこう、涼しい顔してサラッとみんな持ってくでしょう...
「そういうこと、あるんですか?」
「そりゃありましたよ。こっちが必死になってやってんのに、...
いつの間にか伊民は、神部に向かって愚痴を並べてしまってい...
半分ほど酔いの回った頭で、相手はその杉/下警部の部下なのに...
神部はうんうんと頷きながら聞いてくれた。あの特/命係に飛ば...
「・・・まあ、ほどほどに行きましょうよ。俺だってあの人に...
「でしょう。警部補殿だって思うもん、俺たちが」
「ちょっとちょっと伊民さん。いい加減に警部補殿はやめてく...
「だいたい、特/命係にゃ捜査権はないんですよ・・・」
「わかってますよ。逮捕権もありませんよね」
「なのに、気がつきゃ現場をうろうろしてんですから」
「ねー。誰が悪いんでしょうねー」
クスクス笑いながら、神部がレシートを取り上げる。ふと時計...
「はい、タイムリミットです。2時間ルールにしときましょう...
「・・・ああ」
「お約束どおり、奢らせていただきます」
「いや、それは・・・割り勘にしましょう」
「いいですよ」
「いやいや、俺のほうがいろいろくっちゃべっちまって」
「じゃあ、この次の機会に奢ってください」
そう言うと神部はコートを手にさっさと立って、レジへ行って...
伊民もタバコとライターをポケットに放り込んで、その後を追...
店を出て、裏通りを歩いた。駅までの距離はあまりない。
つい愚痴を並べてしまったうえに飲み代まで持ってもらって、...
やがて曲がり角に来たとき、その神部が唐突に立ち止まった。
伊民が追いつくのを待って、のんびりとした口調で言った。
「今日、伊民さんと話せてよかったです」
「・・・そうですか」
「わざわざ出てきた甲斐がありました」
「は?」
「俺、今日は休みだったんです。ダメもとでメールしたら伊民...
「はあ?」
「これ、どうぞ」
そう言って神部がポケットから取り出したのは、手のひらくら...
まるで絵に描いたような、・・・これはチョコレートの箱だろ...
「伊民さんにあげます」
「えっ、これはどういう」
「どうもこうもないでしょ」
きらきら輝くような小箱を伊民の胸元に押しつけておいて、神...
伊民は彼の心情を謀りかねて、しばらくその場を動くことがで...
「け、警部補殿!」
やっと声をかけたときには、神部は何歩も先に行っていた。呼...
「・・・あーあ。『警部補殿』は勘弁してくださいって、あん...
それから周囲をきょろきょろと見回して、声の聞こえる範囲に...
まるで日本画のモデルのように整った神部の顔だちを、繁華街...
「あのねえ、伊民さん。知らなかったと思いますけど、俺、あ...
今度こそ、伊民の頭の中は真っ白になった。あまりに驚きすぎ...
神部はさすがに照れくさそうな微笑を浮かべ、
「じゃ、また。この次は奢ってくださいよ?」
と言い残して、足早に駅のほうへ歩き去った。
その姿が角を曲がって見えなくなってからやっと、伊民は胸の...
麻痺した頭で、神部の言葉の意味を考えた。
よりによって今日という日に、きれいにラッピングされた箱と...
<おしまい>
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
前回、ドンマイみたいに言ってくれた姐さんたち、本当にあり...
色々とご心配かけたうえ、こんな会話だけの話でさらにすみま...
さらに7あると思ったのが6だったというバカなミスもすみま...
#comment
終了行:
#title(板と缶) [#lb5d8c7f]
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| ilの板と缶...
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| つきあ...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
今日、神部が登庁していたとは、伊民は知らなかった。
基本的に特/命係というのは、土日が休みだと思っていた。
あの部屋が空っぽな日があろうが誰も気にしないし、係長であ...
だが今日という日曜日、特別大きな事件も起きず、早く上がれ...
その特/命係の神部警部補からだった。
『今日は何か予定ありますか? もしお時間あったら、ちょっ...
こんなことは初めてだった。先日一緒に事件を捜査するはめに...
さてどう返事をしたものかと、伊民は2分ほど迷い、眉間に深...
さすがの伊民も知っている。今日は天下のバレンタインデーだ。
製菓会社が騒ぎ立てるのがいけないのか、イベント好きな女心...
捜/査一課の若い連中たちは心なしか朝から明るい顔をして携帯...
後輩の芹澤にいたっては、数ヶ月前からの激戦を勝ち抜いて、...
今日という日はそういう日だ。
そこここでチョコレートとメッセージカードが飛び交い、恋人...
そういう日なのだと、いくら伊民だって知っていた。
しかし不幸なことに伊民には、そういう相手がいなかった。も...
別に、チョコレートがほしいわけではない。菓子の類はあれば...
女子職員がくれた駄菓子っぽいチョコレートにしても、もらえ...
もちろん、彼女たちは「お返しはいりませんよ」と言ってくれ...
そんなところへ届いたのが、神部からのメールだった。
神部のような男に限って、バレンタインの夜が暇だとは伊民に...
予定をドタキャンされたか、それともコワイ女に好かれて逃げ...
伊民に予定がないことを見透かされたような気もする。それも...
断ろうかどうしようかと、なんでも即決体質の伊民にしては迷...
『警部補殿の奢りならご一緒しますよ』
すぐにOKの返事が来た。
***
6時過ぎにエントランスで待ち合わせ、一緒に歩いて有楽町ま...
「伊民さん、焼鳥なんて好きですか?」
と神部に持ちかけられ、前に一度行ったことのある焼鳥屋の話...
早足で歩けば、あまり遠くはない。
時には並んで、時には前後になって歩きながら、世間話をした...
正直、この男と何を話せばいいのかと思っていた伊民は、その...
「・・・俺、焼鳥屋ってあまり行ったことないんですよね。機...
「焼鳥屋には、きれいなおネエちゃんはいませんしね」
「え? なんですか、それ?」
「銀座のクラブのほうがお似合いなんじゃないですかね?」
「・・・ああ、この前の店ですか。あれはつきあいですよ。偉...
「さあ。俺たちにゃ雲の上のお話ですからねえ・・・」
「ははっ、もしかして羨ましいんですか、伊民さん?」
「いーえ、とんでもない。俺は焼鳥屋でけっこうですよ」
そんな調子の、軽いやりとり。伊民の棘のある言葉を、神部は...
ほどほど混んだ焼鳥屋のカウンターに滑り込み、生中をふたつ...
「警部補殿、何から行きますか?」
「こんなとこで、警部補殿はやめてくださいよ。あ、俺、ナン...
革のコートを脱いで、神部は無造作に椅子の背に掛けた。注文...
すいません、と微笑む神部に、店員は明らかに普段の愛想以上...
すすけた焼鳥屋には似合わない男だなと、伊民はあらためて神...
いかにもモテそうなこの男が、なぜ今日みたいな日に伊民なぞ...
神部はしかし気にしたふうもなく、楽しそうにメニューを研究...
「伊民さん、こういう店、詳しそうですよね」
「・・・普通ですよ」
「謙遜しないで、教えてくださいよー?」
屈託なく微笑みかけられると、悪い気はしなかった。
***
「・・・だからですね、俺としちゃ気に食わないわけですよ。...
「ええ、そうですよね。遵法精神は大事にしないと」
「なんかこう、涼しい顔してサラッとみんな持ってくでしょう...
「そういうこと、あるんですか?」
「そりゃありましたよ。こっちが必死になってやってんのに、...
いつの間にか伊民は、神部に向かって愚痴を並べてしまってい...
半分ほど酔いの回った頭で、相手はその杉/下警部の部下なのに...
神部はうんうんと頷きながら聞いてくれた。あの特/命係に飛ば...
「・・・まあ、ほどほどに行きましょうよ。俺だってあの人に...
「でしょう。警部補殿だって思うもん、俺たちが」
「ちょっとちょっと伊民さん。いい加減に警部補殿はやめてく...
「だいたい、特/命係にゃ捜査権はないんですよ・・・」
「わかってますよ。逮捕権もありませんよね」
「なのに、気がつきゃ現場をうろうろしてんですから」
「ねー。誰が悪いんでしょうねー」
クスクス笑いながら、神部がレシートを取り上げる。ふと時計...
「はい、タイムリミットです。2時間ルールにしときましょう...
「・・・ああ」
「お約束どおり、奢らせていただきます」
「いや、それは・・・割り勘にしましょう」
「いいですよ」
「いやいや、俺のほうがいろいろくっちゃべっちまって」
「じゃあ、この次の機会に奢ってください」
そう言うと神部はコートを手にさっさと立って、レジへ行って...
伊民もタバコとライターをポケットに放り込んで、その後を追...
店を出て、裏通りを歩いた。駅までの距離はあまりない。
つい愚痴を並べてしまったうえに飲み代まで持ってもらって、...
やがて曲がり角に来たとき、その神部が唐突に立ち止まった。
伊民が追いつくのを待って、のんびりとした口調で言った。
「今日、伊民さんと話せてよかったです」
「・・・そうですか」
「わざわざ出てきた甲斐がありました」
「は?」
「俺、今日は休みだったんです。ダメもとでメールしたら伊民...
「はあ?」
「これ、どうぞ」
そう言って神部がポケットから取り出したのは、手のひらくら...
まるで絵に描いたような、・・・これはチョコレートの箱だろ...
「伊民さんにあげます」
「えっ、これはどういう」
「どうもこうもないでしょ」
きらきら輝くような小箱を伊民の胸元に押しつけておいて、神...
伊民は彼の心情を謀りかねて、しばらくその場を動くことがで...
「け、警部補殿!」
やっと声をかけたときには、神部は何歩も先に行っていた。呼...
「・・・あーあ。『警部補殿』は勘弁してくださいって、あん...
それから周囲をきょろきょろと見回して、声の聞こえる範囲に...
まるで日本画のモデルのように整った神部の顔だちを、繁華街...
「あのねえ、伊民さん。知らなかったと思いますけど、俺、あ...
今度こそ、伊民の頭の中は真っ白になった。あまりに驚きすぎ...
神部はさすがに照れくさそうな微笑を浮かべ、
「じゃ、また。この次は奢ってくださいよ?」
と言い残して、足早に駅のほうへ歩き去った。
その姿が角を曲がって見えなくなってからやっと、伊民は胸の...
麻痺した頭で、神部の言葉の意味を考えた。
よりによって今日という日に、きれいにラッピングされた箱と...
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