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#title(止まり木) [#o9d94862]
>>1乙です。
生 昇天と合点 昇天紫緑+合点×昇天・灰先代司会者絡みのネ...
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
楽屋の中にそれぞれのテリトリーとも呼べる居場所があるのは...
当たり前かも知れない。
定位置に座った樂太郎は頭の中だけで自分の周囲を着物と同じ...
小優座は水色。菊王は外へ出かけて行ったから、今は透明。鯛...
到着にもう少し時間が掛かるとの事で、こちらも透明。
問題は、唄丸の深緑の端っこに滲んでいる灰色。否、樂太郎と...
そこまで大人気がない訳ではないので。大体翔太に妬いても仕...
話している二人の姿は、老人と孫の様なのだから。
翔太を孫呼ばわりしたら、きっと唄丸に睨まれるだろう。二人...
翔太の落ち着きのなさと童顔が悪いと、樂太郎は心の中で悪態...
この二人が仲が良いのは仕方が無い。仕方がないという言い方...
唄丸は前座の頃から翔太を見ているのだから、そりゃ情も湧く...
唄丸のお茶を淹れながら――――寄席の楽屋で散々淹れて来たから...
唄丸の好みのお茶を淹れて差し出す。ありがとうと礼を述べて...
ちらりと横目で見ながら、俺だって淹れられるぞっと言いたく...
心の中だけに留めた。
自分の分のお茶を淹れながら、ふと翔太が尋ねた。
「唄丸師匠は、どうして噺家になろうと思ったんですか?」
「んー、そうだねぇ。昔ね、まだあたしが子供って位の頃に、...
その話は知らないと聞き耳を立てていた樂太郎は、出てきた名...
師匠だ。
翔太も流翔からこの話は聞いていなかったのだろう。目を丸く...
「えっ、唄丸師匠のご両親と、うちの師匠って知り合いだった...
「違うよ。話はちゃんとお聞きなさいって。あたしの家は置屋...
お店の人達の娯楽で人を呼ぶ習慣があったんだよ。それで、う...
落語をやってもらったんだ。あんたの師匠、まだ二ツ目だった...
落語家になろうって決めたんだよ」
「そうだったんですか」
へぇーっと素直に感心した翔太は、不意に悪戯っぽく眼鏡の向...
唄丸がその表情を問い質す前に柔らかそうな唇が言葉を紡いだ。
「ねぇ、師匠。うちの師匠の落語聴いて、これならあたしも出...
「……あたしがこの話をしたら、あなたの師匠も同じ事を言いま...
嫌そうな言葉とは真逆に、柔らかく目を細めて唄丸が笑んだ。
その笑顔を向けられた翔太に対して、樂太郎が抱いた気持ちは...
ひどくささやかに、翔太が微笑んだので。
少し伏せられた視線の先にいるのが誰なのか、樂太郎には分か...
今はもう会えない、翔太の大好きな師匠が、流翔が、きっと其...
仲の良い師弟だった。決してべたべたしたものではなく、甘や...
育てた。また翔太もその愛情に応えて、しっかりと生命力逞し...
きっと翔太は何時かの師匠と今の自分が同じ感想を抱いた事を...
切なさに似た感情が胸の中を満たす。郷愁は薄い青色から始ま...
最後にはくすんだ紺色になった。そう、まるで園樂の着物の様...
吐き出された息に滲んだのは、きっとその色だ。師匠の不在に...
何時か慣れる日が来るのかも分からない。乗り越えた翔太は立...
視線を感じて顔を上げると、唄丸が樂太郎を見ていた。きっと...
樂太郎は知らず眉間に刻んでいた皺を解いて、ただ困った様な...
唄丸は心の内を覗き見しておきながら、それを隠す事もなくた...
慰められるよりも、それは堪えた。
悲しみの深さを知ってくれている人がいると思うと、寄りかか...
長らく樂太郎にとって大切な人であり、師匠とはまた違った尊...
心の内で己に喝を入れ、傾ぎそうになる気持ちをしゃんと立て...
大丈夫と視線で頷いて見せて、樂太郎はついっと立ち上がった...
保っていられなさそうだ。
さも用事がある風を装って携帯を片手に廊下へと出た。携帯を...
いけないと話しかけてくるスタッフもいない。
人気のなさそうな非常階段の辺りに辿り着くと、細く細く息を...
浮かぶままに小さく笑った。
「……駄目だなぁ」
日が経つにつれ、悲しみは遠ざかるどころか樂太郎の中に深く...
こなくて、少しずつ当たり前のものとして馴染んでくれるのを...
きゅっと瞼を閉じて界を遮断する。そっと近付いてくる足音を...
――優しいんだから、もう。
樂太郎の強がりは点で通じなかったという事だ。土台唄丸を誤...
思っていなかったけれど。
せめて情けない姿は見せるまいと背を張って樂太郎は振り返っ...
立っている唄丸を見て負けたと心の中で呟いた。
叱るでも諭すでもなく、唄丸が名前を呼んだ。
「ねぇ、樂さん」
「はい」
「一門を背負って立つ大名跡を継ぐからって、感情に蓋をする...
あたしは思うんですよ」
「でも、弱いのは嫌です」
「感情を殺すのが強い訳じゃないでしょ。誰彼構わず見せろっ...
見せても構わない人間がいるでしょ。好樂さんにしろ、他の兄...
「そうですね……唄丸師匠もですか?」
「はい?」
「師匠も、ですか」
子供じみた口ぶりに自分でも笑うしかない。こんな甘えを見せ...
己の弱さはただただ苦い。
唄丸は一度あからさまな嘆息を静かな床の上に落とした。叱ら...
強張りを、いかにも唄丸らしい言い草の優しい声が解す。
「違うと思ってるのかい?」
「……思ってません」
「ならそれでいいじゃないか。あんたが今悲しいのは、それだ...
園樂さんがあんたに向けた愛情をちゃんと受け取っていた証拠...
愛情という単語に胸が詰まる。
尊敬している、なんて言葉だけでは言い表せない。父親の様に...
豪快な笑い声が耳に返って、樂太郎は俯きながら咽喉から掠れ...
「だったら、少し甘えさせて下さい」
「好きにおしよ」
背を丸めて、唄丸の細い肩に額を預けて、樂太郎はぎゅっと目...
頬を濡らすものはない。涙は師匠の棺の中に入れてきた。
頭の片隅を、先刻の翔太が過ぎった。翔太は泣いただろうか。...
あの伏せた睫毛が濡れたのを、誰かが見ていただろうか。
誰しもが通る道といえばその通りで、師匠を直に送れなかった...
壇 氏は家に足を向けなかったと聞いている。師匠を安置した家...
一晩壇氏を待っていたのは弟弟子の壱羽。ついぞ来なかった兄...
抱いただろうか。憤ったのか、あの人らいしと笑ったのか。破...
駆けつけなかった壇氏を薄情とは思わない。壇氏が子さんを惜...
決して背を抱いたりしない唄丸に妙な安堵をしながら、樂太郎...
***
着信を告げた携帯を三コール目に取ると、電話の主はいきなり...
名乗らなくても少し高いその声で分かる相手に、性急にそんな...
士の輔はかなり泡を食った。特に予定はなかったけれど、寄る...
バーの名前を告げた。
待ち合わせを決めた訳ではないが、落ち合う様にして顔を合わ...
腰をかけたものの、翔太はあんな電話を寄越したとも思えない...
口を付けている。
何か良くない事でも起こったかと、会うまで揉んでいた気を返...
それなりに理由があるからだとも思い直す。翔太が理不尽な真...
長くて深い付き合いでよく知っている。
焦れる気持ちを抑えつつも何度か横顔を伺っていると、ついに...
ぱっと逸らしてしまう。これじゃぁ盗み見していたのがバレバ...
自分を責めかけたけれど、それも翔太の忍び笑いで気勢を削が...
「翔ちゃん」
「ごめん、ごめん。そっか、そうだよね。あんたの事だし、あ...
考えてくれちゃうよね」
物事を考え込まずにはいられない士の輔の性質を簡単な言葉で...
口にした。謝られてしまえば強くも出られず、別にいいけどと...
「嫌な事があったんじゃないんだよ。……唄丸師匠にね、どうし...
聞いたんだよ」
「うん」
「そしたらさぁ、子供の頃にうちの師匠を見たから、だって師...
『これならあたしも出来るって思ったんでしょ?』って言った...
言いましたよ』って」
小さな声で、まるで宝物の在り処を告白する様な口調で、翔太...
嬉しさと切なさの混じった表情に士の輔は翔太を抱き締めてや...
勿論この場でそんな暴挙に及ぶ事も出来ずに、持ちうる限りの...
「そっか」
「うん。そんだけなんだけどね。……帰り道に思い出してたら、...
会いたくなっちゃって。悪いね、忙しいのに」
珍しいまでの直球な素直さを晒した翔太に、その心の中で流翔...
また再確認する。
敵わないと思う気持ちに悔しさは滲まない。そんな不遜さは持...
士の輔にとって稀有だと思う翔太の感性を、寄席や伝統といっ...
また囲い込んでしまう事もなく深い愛情の元の放任で育て上げ...
明るく軽いキャラクターだけでなく、計算高くてしたたかで、...
挑んでいく、そんな翔太だからこそ惚れ込んだのだから。
カウンターの上に放り出していた煙草の赤い箱を取ると、中か...
一口吸ってから、何も気付いていない風に明るい口調で言った。
「指名してくれて、俺は嬉しいけどな」
「あんた指名すると、後々高くつきそうで嫌なんだよなぁ」
わざと顔を顰めた翔太に、そんな事ないだろと言い返す。
どれだけ忙しくても、翔太に求められればこうして来てしまう...
分かっている筈の横顔が小憎らしくて、少しいじめてみようか...
「翔ちゃん、他にいないもんな」
「何が?」
「こんな風に甘えられる相手。……って、俺の自惚れ?」
「勝手に自惚れとけばいいじゃん」
先刻の素直さを何処に仕舞いこんだのか、つっけんどんに言い...
本心だというのは、もう分かっているから気分を害する事もな...
ちらりとこちらを伺った翔太の瞳に、気持ちを探ろうとする気...
妙な所で弱気になる翔太が可愛い。
「じゃぁ、勝手にそう思い込んどくわ」
「……うん」
カウンターの下で互いの手の甲が触れる。それ以上は触れない...
温もりが言葉にされない翔太の答えだ。
だから士の輔は自惚れていられる。お互いが唯一の相手だと。
遅くなれば明日に響くと分かっていながら、士の輔は三杯目の...
タイミグを合わせて飲み干したグラスを掲げて、翔太も同じも...
翔ちゃんも分かってるとは思うけど、と前置きを口にしようと...
恥かしいのでもなく、言いづらいのでもなく、必要がないと思...
ふと交差した視線が呼んだのはささやかな笑み。わざわざ声に...
今士の輔が翔太の隣にいるのが、その証拠だ。
――俺にとっても、他にいないよ。
飲み込んだ言葉の代わりに、空になったグラスの中で氷がカラ...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
途中ageてしまった件と、ナンバリングミス、すみませんでした...
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>>1乙です。
生 昇天と合点 昇天紫緑+合点×昇天・灰先代司会者絡みのネ...
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楽屋の中にそれぞれのテリトリーとも呼べる居場所があるのは...
当たり前かも知れない。
定位置に座った樂太郎は頭の中だけで自分の周囲を着物と同じ...
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そこまで大人気がない訳ではないので。大体翔太に妬いても仕...
話している二人の姿は、老人と孫の様なのだから。
翔太を孫呼ばわりしたら、きっと唄丸に睨まれるだろう。二人...
翔太の落ち着きのなさと童顔が悪いと、樂太郎は心の中で悪態...
この二人が仲が良いのは仕方が無い。仕方がないという言い方...
唄丸は前座の頃から翔太を見ているのだから、そりゃ情も湧く...
唄丸のお茶を淹れながら――――寄席の楽屋で散々淹れて来たから...
唄丸の好みのお茶を淹れて差し出す。ありがとうと礼を述べて...
ちらりと横目で見ながら、俺だって淹れられるぞっと言いたく...
心の中だけに留めた。
自分の分のお茶を淹れながら、ふと翔太が尋ねた。
「唄丸師匠は、どうして噺家になろうと思ったんですか?」
「んー、そうだねぇ。昔ね、まだあたしが子供って位の頃に、...
その話は知らないと聞き耳を立てていた樂太郎は、出てきた名...
師匠だ。
翔太も流翔からこの話は聞いていなかったのだろう。目を丸く...
「えっ、唄丸師匠のご両親と、うちの師匠って知り合いだった...
「違うよ。話はちゃんとお聞きなさいって。あたしの家は置屋...
お店の人達の娯楽で人を呼ぶ習慣があったんだよ。それで、う...
落語をやってもらったんだ。あんたの師匠、まだ二ツ目だった...
落語家になろうって決めたんだよ」
「そうだったんですか」
へぇーっと素直に感心した翔太は、不意に悪戯っぽく眼鏡の向...
唄丸がその表情を問い質す前に柔らかそうな唇が言葉を紡いだ。
「ねぇ、師匠。うちの師匠の落語聴いて、これならあたしも出...
「……あたしがこの話をしたら、あなたの師匠も同じ事を言いま...
嫌そうな言葉とは真逆に、柔らかく目を細めて唄丸が笑んだ。
その笑顔を向けられた翔太に対して、樂太郎が抱いた気持ちは...
ひどくささやかに、翔太が微笑んだので。
少し伏せられた視線の先にいるのが誰なのか、樂太郎には分か...
今はもう会えない、翔太の大好きな師匠が、流翔が、きっと其...
仲の良い師弟だった。決してべたべたしたものではなく、甘や...
育てた。また翔太もその愛情に応えて、しっかりと生命力逞し...
きっと翔太は何時かの師匠と今の自分が同じ感想を抱いた事を...
切なさに似た感情が胸の中を満たす。郷愁は薄い青色から始ま...
最後にはくすんだ紺色になった。そう、まるで園樂の着物の様...
吐き出された息に滲んだのは、きっとその色だ。師匠の不在に...
何時か慣れる日が来るのかも分からない。乗り越えた翔太は立...
視線を感じて顔を上げると、唄丸が樂太郎を見ていた。きっと...
樂太郎は知らず眉間に刻んでいた皺を解いて、ただ困った様な...
唄丸は心の内を覗き見しておきながら、それを隠す事もなくた...
慰められるよりも、それは堪えた。
悲しみの深さを知ってくれている人がいると思うと、寄りかか...
長らく樂太郎にとって大切な人であり、師匠とはまた違った尊...
心の内で己に喝を入れ、傾ぎそうになる気持ちをしゃんと立て...
大丈夫と視線で頷いて見せて、樂太郎はついっと立ち上がった...
保っていられなさそうだ。
さも用事がある風を装って携帯を片手に廊下へと出た。携帯を...
いけないと話しかけてくるスタッフもいない。
人気のなさそうな非常階段の辺りに辿り着くと、細く細く息を...
浮かぶままに小さく笑った。
「……駄目だなぁ」
日が経つにつれ、悲しみは遠ざかるどころか樂太郎の中に深く...
こなくて、少しずつ当たり前のものとして馴染んでくれるのを...
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――優しいんだから、もう。
樂太郎の強がりは点で通じなかったという事だ。土台唄丸を誤...
思っていなかったけれど。
せめて情けない姿は見せるまいと背を張って樂太郎は振り返っ...
立っている唄丸を見て負けたと心の中で呟いた。
叱るでも諭すでもなく、唄丸が名前を呼んだ。
「ねぇ、樂さん」
「はい」
「一門を背負って立つ大名跡を継ぐからって、感情に蓋をする...
あたしは思うんですよ」
「でも、弱いのは嫌です」
「感情を殺すのが強い訳じゃないでしょ。誰彼構わず見せろっ...
見せても構わない人間がいるでしょ。好樂さんにしろ、他の兄...
「そうですね……唄丸師匠もですか?」
「はい?」
「師匠も、ですか」
子供じみた口ぶりに自分でも笑うしかない。こんな甘えを見せ...
己の弱さはただただ苦い。
唄丸は一度あからさまな嘆息を静かな床の上に落とした。叱ら...
強張りを、いかにも唄丸らしい言い草の優しい声が解す。
「違うと思ってるのかい?」
「……思ってません」
「ならそれでいいじゃないか。あんたが今悲しいのは、それだ...
園樂さんがあんたに向けた愛情をちゃんと受け取っていた証拠...
愛情という単語に胸が詰まる。
尊敬している、なんて言葉だけでは言い表せない。父親の様に...
豪快な笑い声が耳に返って、樂太郎は俯きながら咽喉から掠れ...
「だったら、少し甘えさせて下さい」
「好きにおしよ」
背を丸めて、唄丸の細い肩に額を預けて、樂太郎はぎゅっと目...
頬を濡らすものはない。涙は師匠の棺の中に入れてきた。
頭の片隅を、先刻の翔太が過ぎった。翔太は泣いただろうか。...
あの伏せた睫毛が濡れたのを、誰かが見ていただろうか。
誰しもが通る道といえばその通りで、師匠を直に送れなかった...
壇 氏は家に足を向けなかったと聞いている。師匠を安置した家...
一晩壇氏を待っていたのは弟弟子の壱羽。ついぞ来なかった兄...
抱いただろうか。憤ったのか、あの人らいしと笑ったのか。破...
駆けつけなかった壇氏を薄情とは思わない。壇氏が子さんを惜...
決して背を抱いたりしない唄丸に妙な安堵をしながら、樂太郎...
***
着信を告げた携帯を三コール目に取ると、電話の主はいきなり...
名乗らなくても少し高いその声で分かる相手に、性急にそんな...
士の輔はかなり泡を食った。特に予定はなかったけれど、寄る...
バーの名前を告げた。
待ち合わせを決めた訳ではないが、落ち合う様にして顔を合わ...
腰をかけたものの、翔太はあんな電話を寄越したとも思えない...
口を付けている。
何か良くない事でも起こったかと、会うまで揉んでいた気を返...
それなりに理由があるからだとも思い直す。翔太が理不尽な真...
長くて深い付き合いでよく知っている。
焦れる気持ちを抑えつつも何度か横顔を伺っていると、ついに...
ぱっと逸らしてしまう。これじゃぁ盗み見していたのがバレバ...
自分を責めかけたけれど、それも翔太の忍び笑いで気勢を削が...
「翔ちゃん」
「ごめん、ごめん。そっか、そうだよね。あんたの事だし、あ...
考えてくれちゃうよね」
物事を考え込まずにはいられない士の輔の性質を簡単な言葉で...
口にした。謝られてしまえば強くも出られず、別にいいけどと...
「嫌な事があったんじゃないんだよ。……唄丸師匠にね、どうし...
聞いたんだよ」
「うん」
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『これならあたしも出来るって思ったんでしょ?』って言った...
言いましたよ』って」
小さな声で、まるで宝物の在り処を告白する様な口調で、翔太...
嬉しさと切なさの混じった表情に士の輔は翔太を抱き締めてや...
勿論この場でそんな暴挙に及ぶ事も出来ずに、持ちうる限りの...
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会いたくなっちゃって。悪いね、忙しいのに」
珍しいまでの直球な素直さを晒した翔太に、その心の中で流翔...
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「……うん」
カウンターの下で互いの手の甲が触れる。それ以上は触れない...
温もりが言葉にされない翔太の答えだ。
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翔ちゃんも分かってるとは思うけど、と前置きを口にしようと...
恥かしいのでもなく、言いづらいのでもなく、必要がないと思...
ふと交差した視線が呼んだのはささやかな笑み。わざわざ声に...
今士の輔が翔太の隣にいるのが、その証拠だ。
――俺にとっても、他にいないよ。
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第68巻
第67巻
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第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
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第58巻
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第2巻
第1巻
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