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#title(薬と犬と鐘の音) [#bcdb1f99]
大我ドラマ1話あたりの伊蔵→武智先生+涼真。
武智先生と涼真はたぶん気心しれた友情関係。
何はともあれ、土佐弁に撃沈。寛容に生温く見守ってもらえる...
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
その家は主人に似て、いつも小綺麗に整った印象だった。
夕暮れ時の門前、そこで伊蔵は足を止める。
どうしてこんなところまで来てしまったのか。頭の悪い自分は...
まとめきれず、少しの戸惑いの後急いでその場から立ち去ろう...
しかしそんな背中にこの時かけられる声があった。
「伊蔵か?」
家の中から聞こえてきた声。
それに伊蔵が思わず後ろを振り返れば、そこには玄関口からこ...
武智の姿があった。
いつも道場で見るのとは違う着流し姿で、それに伊蔵の焦りは...
「すんません。具合はどうやろかと思うて来てしもうただけで...
慌てて叫び、脱兎のごとく走り出そうとする。
しかしその際握っていた拳の力をグッと強くすれば、途端手の...
それに伊蔵は思わず手にしていた荷物を取り落としていた。
「…って…」
小さな悲鳴が口を突く。
するとそんな自分に武智はまたしても屋内から声をかけてきた。
「伊蔵、こっちに来いや。」
「えっ、でも…」
「えーから、言う事聞き。」
たしなめるように言うと、武智はそのまま家の奥に入っていっ...
だからそれに逆らう事も出来ず、伊蔵は落とした荷物を拾い直...
気後れする足をその家の方角に向けていた。
家に上がり通されたのは、縁側に面した武智の部屋だった。
座れと促され小さく固まっていると、その前に薬箱を持った武...
そして手を出せと言われ、思わず反射的に両手を差し出せば、...
苦笑しながら痛む方の手を取り、一言腫れちゅうなと呟いた。
「誰にやられた?」
問いただしながら、武智はこの時伊蔵の手に箱から取り出した...
それには伊蔵は答えるより先に驚いた。
「そんなっ、武智さん、ええですきにっ」
慌てて取られていた手を引っ込めようとするが、それを武智は...
そして、おまんにこがな怪我させられるんは涼真くらいか、と...
あいつは何をしちゅうがかと続けた。
呆れたような声。しかしそれと同時にそこににじむ親しげな響...
ザワザワとした感覚を覚える。
けれど武智はそんな伊蔵の気持ちなどまるで気付かないように...
つかんだ手の甲に塗り込んできた。
そしてまたしても短く、すまんかったなと告げられれば、それ...
「どういて武智さんが謝るがか」
「わしが二日酔いなんぞで道場に行けんかったせいだからの。...
言ったつもりじゃったが、何がどうして…」
そう説明する武智の二日酔いとは、昨日の道場仲間の祝言に端...
文武両道に優れ、若くして人望に篤いがゆえに仲人役を頼まれ...
弱点は酒で、勧められたたったお猪口いっぱいの酒でもその場...
そしてそんな人を背に負って帰ったのも、やはり涼真で。
武智とは遠縁にあたる6才年下の幼馴染。
その存在が時にどうしても胸にざわめくから、今日もつい武智...
突っかかってしまった。
その代償がこの手の腫れだった。
飄々とした態度が気に食わず、勝負を挑み、返り討ちにされた。
昔は細くて小さくて泣き虫だったくせに、いつの間にやら体も...
それが悔しいと同時に、敵わぬ自分の非力が情けなくて、その...
足がここに向いていた。
身分の上下が厳しいこの国で、唯一人自分を侍として認め接し...
たぶん、ただそれだけだった。なのに、
「さて、こんなもんでええじゃろ。」
塗り込んだ薬を最後更に押しこむように、広げた手の平を伊蔵...
その指が長く綺麗だと、本来の目的を越えた望外の展開に伊蔵...
が、そんな呆然としつつも幸せな時間は、さほど長くは続いて...
「しかし、ちょうど良かったのかもしれんのう。おまんがここ...
唐突にそんな事を言われ、えっ?と伊蔵が顔を上げる。
するとそれに正面に座していた武智は、手にしていた薬を見せ...
「わしも今日使うたところじゃったからな、おかげで探さんで...
普段は薬箱の中身なんぞ気にもせんからのぉ、と事もなげに言...
それに伊蔵の眉は途端ピクリと寄った。
「どこか怪我でもされたがですか?」
心配そうに問う。と、それに武智は一瞬ん?とした表情を見せ...
「おまんと一緒じゃ。涼真にやられた。」
そう言い、少しだけ着物の袖をめくりあげ見せられた手首。
そこにはうっすらと赤く浮かび上がる、小さな痣のようなもの...
「どうしたがですか?!」
思わず驚いて声を荒げてしまう。
しかしそんな伊蔵の心中など知らぬげに、武智の声はこの時、...
響きを持っていた。
「昨日の事でちっくとやり合う事があっての。それでわしが暴...
あいつは加減ちゅうもんを知らん、もうわしより体も大きく力...
先程まで自分が考えていた事を、自分とは違う昔を懐かしむ様...
それはまるで、長く成長を見守ってきた人懐っこい犬を愛おし...
だからそんな武智の様子に伊蔵はこの時、それまで必死に抑え...
一気に膨れ上がるのを止めようがなかった。
「どういて…」
だから最初小さく落とされた声は、一度溢れればもはやただた...
「どういて武智さんはそんなに涼真に甘いがですか!」
「伊蔵?」
「そんなに大きい犬が可愛えがですか!」
感情のまま叫んだ言葉は、胸の中に渦巻いていた想いをそのま...
絶対に理解の出来ないだろうものだった。
だから案の定、
「……犬?」
呆然とした声色でポツリと零された、そんな武智の一言に伊蔵...
そしてそうなればもう恥ずかしさで、どうにも居た堪れなくな...
「すんません、なんちゃーないですきに!」
叫ぶのを止められないまま、慌てて立ち上がり、勢いのまま頭...
そして薬の礼もそこそこに、武智の前を後にすれば、その胸の...
どういて、どういてわしはこう頭が悪いがじゃ!
家から飛び出て、手にした荷物を胸にギュッと押し抱けば、そ...
けれどその上には今は武智が塗ってくれた薬があって。
それが更に痛いのか、切ないのか、甘いのか。
泣きそうになりながら走る伊蔵に、この時考える力はもうカケ...
一方、武智は。
「伊蔵?!」
走り去る背中に一度名を呼びかけてみるが、それに彼が振り返...
部屋に取り残される。
そしていったい自分の何が伊蔵を怒らせたのかとその場で自分...
それでも心当たりはまったく無く、だから、
「わしは……小さい猫も好きじゃが……」
ポツリと小さく零した呟き。
しかしこの時それに応えてくれたのは、夕暮れ刻を耳に知らせ...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ガンバレ、ワカゾー!ならぬイゾー!
- 萌え過ぎて言葉に出来ません。最高ですご馳走様でしたww...
- コメントありがとうございました。気付くの遅くてすみませ...
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大我ドラマ1話あたりの伊蔵→武智先生+涼真。
武智先生と涼真はたぶん気心しれた友情関係。
何はともあれ、土佐弁に撃沈。寛容に生温く見守ってもらえる...
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
その家は主人に似て、いつも小綺麗に整った印象だった。
夕暮れ時の門前、そこで伊蔵は足を止める。
どうしてこんなところまで来てしまったのか。頭の悪い自分は...
まとめきれず、少しの戸惑いの後急いでその場から立ち去ろう...
しかしそんな背中にこの時かけられる声があった。
「伊蔵か?」
家の中から聞こえてきた声。
それに伊蔵が思わず後ろを振り返れば、そこには玄関口からこ...
武智の姿があった。
いつも道場で見るのとは違う着流し姿で、それに伊蔵の焦りは...
「すんません。具合はどうやろかと思うて来てしもうただけで...
慌てて叫び、脱兎のごとく走り出そうとする。
しかしその際握っていた拳の力をグッと強くすれば、途端手の...
それに伊蔵は思わず手にしていた荷物を取り落としていた。
「…って…」
小さな悲鳴が口を突く。
するとそんな自分に武智はまたしても屋内から声をかけてきた。
「伊蔵、こっちに来いや。」
「えっ、でも…」
「えーから、言う事聞き。」
たしなめるように言うと、武智はそのまま家の奥に入っていっ...
だからそれに逆らう事も出来ず、伊蔵は落とした荷物を拾い直...
気後れする足をその家の方角に向けていた。
家に上がり通されたのは、縁側に面した武智の部屋だった。
座れと促され小さく固まっていると、その前に薬箱を持った武...
そして手を出せと言われ、思わず反射的に両手を差し出せば、...
苦笑しながら痛む方の手を取り、一言腫れちゅうなと呟いた。
「誰にやられた?」
問いただしながら、武智はこの時伊蔵の手に箱から取り出した...
それには伊蔵は答えるより先に驚いた。
「そんなっ、武智さん、ええですきにっ」
慌てて取られていた手を引っ込めようとするが、それを武智は...
そして、おまんにこがな怪我させられるんは涼真くらいか、と...
あいつは何をしちゅうがかと続けた。
呆れたような声。しかしそれと同時にそこににじむ親しげな響...
ザワザワとした感覚を覚える。
けれど武智はそんな伊蔵の気持ちなどまるで気付かないように...
つかんだ手の甲に塗り込んできた。
そしてまたしても短く、すまんかったなと告げられれば、それ...
「どういて武智さんが謝るがか」
「わしが二日酔いなんぞで道場に行けんかったせいだからの。...
言ったつもりじゃったが、何がどうして…」
そう説明する武智の二日酔いとは、昨日の道場仲間の祝言に端...
文武両道に優れ、若くして人望に篤いがゆえに仲人役を頼まれ...
弱点は酒で、勧められたたったお猪口いっぱいの酒でもその場...
そしてそんな人を背に負って帰ったのも、やはり涼真で。
武智とは遠縁にあたる6才年下の幼馴染。
その存在が時にどうしても胸にざわめくから、今日もつい武智...
突っかかってしまった。
その代償がこの手の腫れだった。
飄々とした態度が気に食わず、勝負を挑み、返り討ちにされた。
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たぶん、ただそれだけだった。なのに、
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そしてそうなればもう恥ずかしさで、どうにも居た堪れなくな...
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叫ぶのを止められないまま、慌てて立ち上がり、勢いのまま頭...
そして薬の礼もそこそこに、武智の前を後にすれば、その胸の...
どういて、どういてわしはこう頭が悪いがじゃ!
家から飛び出て、手にした荷物を胸にギュッと押し抱けば、そ...
けれどその上には今は武智が塗ってくれた薬があって。
それが更に痛いのか、切ないのか、甘いのか。
泣きそうになりながら走る伊蔵に、この時考える力はもうカケ...
一方、武智は。
「伊蔵?!」
走り去る背中に一度名を呼びかけてみるが、それに彼が振り返...
部屋に取り残される。
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それでも心当たりはまったく無く、だから、
「わしは……小さい猫も好きじゃが……」
ポツリと小さく零した呟き。
しかしこの時それに応えてくれたのは、夕暮れ刻を耳に知らせ...
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