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#title(笑う犬の冒険 てるとたいぞう 「Automatic」)
前スレでの照と退蔵2008の続きというか、そこから10年前に遡...
なので退蔵から先に好きになった設定のままで。サブタイは当...
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
7回目のコールで電話に出てくれた。
「…ぅあい。…もしもし」
まだ眠りの中にいるような照の声を聞いて、退蔵は見えないそ...
「起こしちゃってすいません。そろそろ時間です」
「…退蔵。…そっか、もうそんな時間か」
名前を言わなくても声でわかってくれる。
「起こしてくれて、ありがと」
けほんと咳をひとつしながら、電話は切れた。
ありがとうという声を聞くだけで、退蔵の気持ちは明るくなっ...
「これからおまえらで張り込みか?」
急に声をかけられて我に返る。机ひとつ隔てた向かいの席から...
「そうです。例のアパートです」
「おまえらも大変だな。昨日完徹なんだろ?オレも昨日からず...
しかめ面で肩を押さえる田所に、席を立ちながら退蔵は言った。
「オレ、肩もみましょっか?」
「まじで?おまえは気が利くね!ほんっといいヤツだね!」
田所は満面の笑みで調子よく返すと、早速眼鏡を外して机に顔...
「だいぶ凝ってますね」
「ぅおー、もうちょい上、…そこっそこ押して!…はー、うまい...
「オレね、結構コレ褒められるんですよ」
しばらく田所は「うあー」だの「もうちょい左」だの、こもっ...
「照にもこうやって、肩もんだりすんの?」
「え?」
不意を突かれて、一瞬答えに詰まった。
「いや、そういやまだした事ないっすね」
「ふうーん?」
なぜか笑いを含んだように田所は顔を上げたが、またすぐ伏せ...
「おまえらが2人で組むようになって、結構経つよな。もうオレ...
以前は田所と照の2人で組んでいた。
「…そう、ですね…オレ入ってからすぐだったんで…何年経つのか...
退蔵が考えだすと、答えを聞かずに田所は起き上った。
「あーだいぶスッキリしたわ。もう行っていいよ。時間ないだ...
言いながら眼鏡をかけ直す。退蔵は軽く頭を下げると照のいる...
歩きながら入署当時の事を思い出していた。
照に自己紹介した後、全然自分のことを思い出してくれなかっ...
刑事に就任したばかりの新米が、先輩と初対面の時に万引未遂...
高校生の頃の自分はつくづくバカだったんだろう、と退蔵は振...
言い訳にもならないが、若気の至りというか若さゆえの過ちと...
特に目的もなく入ろうとしたCDショップ。いきなり入口で、...
心が冷えた。その時急に魔が差した。どうせ誰もオレなんか見...
当然かもしれないが、すぐにバイトらしい店員に腕を掴まれた。
「今、鞄に入れたものを出しなさい」
「……」
パニクり過ぎておかしくなっていたのかもしれない。どうしよ...
心が動いていた。この気持ちがなんなのかは、よくわからない。
だけど、目の前の人の自分に向ける視線もまた、どこか柔らか...
同じ気持ち?この人も、同じ何かを感じ取っているんだろうか...
そんな場合じゃないのに、心が浮き立ってわくわくする気さえ...
そのタイミングで、適当に取ったそのCDの曲が、突然店内に...
『ラブストーリーは突然に』だった。
驚いて顔を上げた店員の脇をすり抜けて、退蔵はその場を立ち...
それからずっと、もう一度あの人に会ってみたいと思っていた...
こっそり陰から見たり尾行したりでほぼストーカーだったが、...
その人が刑事になった時、自分も刑事を志した。ゆくゆくは叔...
そうして長い時が経ち、春になって、再び出会うことが出来た。
ところがその日、自己紹介の後、退蔵は椅子に腰をおろした途...
―全然オレのこと憶えてなかった。その事実で力が抜けていた。
期待し過ぎな自分を自覚もしていたが、それでもせめて「どこ...
ここまでして、オレは結局何を得たかったんだろう…。この気持...
ただ、こうして間近で会えるようになって、改めて思った。
やっぱりこの人は、なんだか可愛い。遠くから見てた時も思っ...
目がクリクリしていて、真面目な顔してる時も口の端がキュッ...
人を寄せ付けないように伏し目がちで、一人で物思いに沈んで...
多分、この人が女だったら、なんのためらいもなく恋愛感情だ...
どう表現していいのかわからないこの気持ちを、退蔵は「尊敬...
椅子にへたりこんでいた退蔵は、一度大きく息を吐くと、立ち...
角を曲がると、木の実を齧るリスみたいな後ろ姿で、うずくま...
近づいていくと、床いっぱいに広がったゼムピンをせっせと拾...
横に並んで拾い出すと、照は顔を傾けて退蔵を見た。
「落として全部ぶちまけちまったよ」
「オレ手伝いますね」
退蔵はでかい手のひらでザーッと寄せ集めると、照の持ってい...
「悪いな。ありがと。…おまえ、どんくさいとこ見て、今、安心...
照はチラッと上目使いになって笑った。つられて退蔵も笑った。
「言っとくけど、これからビシビシしごくからな」
そう言って笑顔のまま、照はゼムピンの箱を持って去って行っ...
その後ろ姿を見ながら、あ、オレまたカワイイって思ってる、...
かといって「先輩」は可愛いだけの人間ではなかった。
2人で組んで行動するようになった最初の頃、中国マフィアの構...
香港の中国返還に伴って流れてきた、下部組織の構成員のその...
拳銃を持ったまま走り去る男の逃走経路を読み、覆面パトカー...
発砲沙汰が初めてな退蔵は、その時正直びびっていた。そんな...
「援護しなくていい。運転に専念していてくれ」
それからはっきりこう言った。
「おれがおまえを守るから」
一瞬息が止まった。前だけを見ていた照は声を上げた。
「ここだ。停めてくれ」
路肩に停めて、角から現れるであろう男を待ち伏せる。照は車...
防弾衣を着用してるとはいえ、車から降りては危険だと退蔵は...
左足の爪先をわずかに外側に移動させただけで、車から降りた...
その先に、角から飛び出すように男が現れた。
照の姿に気付き慌てて銃身を構えるが、その腕は大きく揺れて...
パアン。
乾いた爆竹のような音がひとつ。火薬の匂いが立ち込める中、...
容疑者の動きがないまま、明かりを消したアパートの一室で張...
思えば長い年月、ずっと一緒にいた。一緒にいるうち、なんと...
今では署の誰より、照の事を理解出来ていると思えた。
真夜中だ。照は布団で仮眠をとっていた。夕方にもうとうとし...
暗がりの中で、窓の隙間から双眼鏡で外を眺めて、退蔵は夕方...
「毎日毎日顔を合わせていたら、考えも一緒になってくるって...
そうかもしれない。照が何を考えているのか、次に何を望んで...
先輩も、オレと同じ考えになってくれているんだろうか?
オレが思うように、オレのことを思ってくれてるんだろうか…
夕方、交替で仮眠をとって寝かかっていた時、退蔵は照の顔が...
あれって…、もしかしてキスしようとしてた?
寝かかった意識の中で少し、それに気づいていた。次に「うわ...
…もったいないことしちゃったのかな……まさかな…
退蔵は窓から離れて、照の枕元にしゃがみこんだ。
同じ気持ち。本当にそうだったらいいのに。
退蔵は静かに膝をついて、照の額にそっと唇をおとした。
照の瞼と指がぴくっと動いたので、慌てて離れる。
一瞬2人とも動きが止まった。それからまた寝息が聞こえてきた...
退蔵はそーっと音をたてないように、窓際まで後退りした。そ...
だめだオレ。この人の事が可愛い。
どう考えても「尊敬」だけの気持ちではなくなっていた。
射撃訓練の的の中心を、最後の弾が撃ち抜いた。
なんとか中心に狙いをつける事が出来るようになってきた。退...
「息の止め方が上手くなったな」
後ろから見ていた照が声をかけてくる。耳栓を外しながら退蔵...
「ほんとですか!」
「照準も正確だし、銃口の動きも最小限だ」
笑いかけられて退蔵はめちゃくちゃ嬉しくなった。嬉し過ぎて...
「退蔵。また指噛んでるぞ」
照が退蔵の仕草を真似して、指を口元に持っていって見せた。
「え?あ。」
無意識に指の第二関節を噛んでいた。そわそわしてる時の退蔵...
「おまえ、その癖子供っぽいぞ」
言った直後、照は急にクシャッとくしゃみをした。両手を揃え...
「……」
退蔵は黙ってその姿を眺めた。
「そろそろ捜査会議の時間だな。退蔵、訓練後の点眼とうがい...
「あ、ハイ」
後片付けしながら退蔵は照の後ろ姿を見た。スーツの袖から指...
…スーツ、でか過ぎるんじゃ?心の中で呟いた。
子供っぽいのって…。見送りながら退蔵はまた笑った。
会議室には既に大方が集まっていた。ホワイトボードに田所が...
照と退蔵で横並びに座る。始まるのを待っている間、退蔵は横...
退蔵はひょいっと照の太腿に手を伸ばして、ギュッと押さえつ...
「ぅあっ!?」
照がすっとんきょうな声を上げた。退蔵は大口を開けて笑いか...
「貧乏揺すり。悪い癖ですよ、先輩」
「………急に、びっくりするだろ……」
照はぼーっと退蔵の顔を見た後で、少し焦ったように周囲を気...
あれ?耳まで真っ赤…。退蔵は笑いを噛み殺しながら前に向き直...
田所に声をかけられたのは、会議後、退蔵が一人になった時だ...
「これ内密の話だから、絶対誰にも口外しないでほしいんだ」
他に誰もいなくなった会議室に、田所の声がやけに響いた。
「三合会の下部組織に、呉朴龍がいたのを覚えてるか?」
それが昔、照が狙撃した男だった。退蔵は頷いた。
「あいつは本国に送還された後、公開処刑になったらしい」
「…麻薬で摘発されてましたからね。あっちじゃ重罪ですよね」
「それでな、あいつの兄が幹部となって、東京でまたドラッグ...
「強制捜査、行くんですか?」
「いや…、それが難しくてさ…、…あそこは前からなんていうか…...
残虐なリンチや報復は、それこそ公開処刑同然だと知らされて...
「裏から証拠を集めて、一斉検挙に繋げたいというのが上の判...
それを聞いて退蔵の表情が翳った。
「…でも…それは…」
「朴龍の兄が、どれだけ照を恨んでいるか、おまえ知ってるか...
田所の顔が強張っていた。
「とっ捕まったら、ヤク漬けどころじゃすまないぞ」
「……」
考えたくもないのに、裏切り者として始末された組織の女の死...
「先輩は外すべきです」
「オレだってそう言いたいよ。ただ、上から任命されて照がど...
田所は青ざめた顔で、退蔵の顔を真正面から見た。
「あいつは引き受けると思う。自分が一番実情を知っていると...
退蔵の額に冷たい汗が滲んできた。
「あいつはこんな時、危険だとどんなに周りが止めても自分か...
「……」
その通りだと思った。まるで自分を痛めつけるかのように、自...
「……オレだって実情は知っています」
退蔵は乾いた声で言った。やけに喉が渇いていた。
「先輩にはこの件は伏せてもらえませんか。オレが一人でやり...
田所はしばらく黙ってから、少し目を反らして言った。
「ずっと照とコンビを組んでたおまえが、単独行動をとるのか...
「言い訳は後で考えます、とにかくこの件は先輩を外して下さ...
必死だった。万が一にも照を、危険だとわかりきっている現場...
田所は探るように退蔵の目を覗き込んでいたが、ぼそっと呟い...
「……おまえが、いっそ死んだことにすれば…」
「……え」
退蔵は静かに目を見開いて田所の顔を見た。田所の眼は座って...
「照の目の前で殉職するフリをするんだ。その後おまえは現場...
「……」
突飛過ぎる考えに声を失った。
しかし、少し考えるうちに、それはベストかもしれないと思え...
「2、3年。早けりゃ1年ちょいで戻ってこれるんじゃないか?...
急に饒舌になった田所の言葉に、退蔵は激しく混乱しながらも...
翌日、止めていたタバコを吸いたくなって署の外に出た退蔵の...
田所が何か冗談を言ったらしく、照が田所の背中をはたく。そ...
やけに楽しげに笑いながら何か言い返した田所が、ふと視線に...
―その瞬間、田所は何故か激しく動揺した。
それから「しまった」と思った表情を反射的に浮かべ、次の瞬...
「……」
一連のその変化を見て、退蔵はなんとなく気付いてしまった。...
何もなかったように照の背中を押して去って行く田所の後ろ姿...
つづく。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ごめんなさい8で終わるつもりが10までかかっちゃった。
何かと設定はムチャした。続きは多分10日くらいかかりますが...
#comment
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#title(笑う犬の冒険 てるとたいぞう 「Automatic」)
前スレでの照と退蔵2008の続きというか、そこから10年前に遡...
なので退蔵から先に好きになった設定のままで。サブタイは当...
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7回目のコールで電話に出てくれた。
「…ぅあい。…もしもし」
まだ眠りの中にいるような照の声を聞いて、退蔵は見えないそ...
「起こしちゃってすいません。そろそろ時間です」
「…退蔵。…そっか、もうそんな時間か」
名前を言わなくても声でわかってくれる。
「起こしてくれて、ありがと」
けほんと咳をひとつしながら、電話は切れた。
ありがとうという声を聞くだけで、退蔵の気持ちは明るくなっ...
「これからおまえらで張り込みか?」
急に声をかけられて我に返る。机ひとつ隔てた向かいの席から...
「そうです。例のアパートです」
「おまえらも大変だな。昨日完徹なんだろ?オレも昨日からず...
しかめ面で肩を押さえる田所に、席を立ちながら退蔵は言った。
「オレ、肩もみましょっか?」
「まじで?おまえは気が利くね!ほんっといいヤツだね!」
田所は満面の笑みで調子よく返すと、早速眼鏡を外して机に顔...
「だいぶ凝ってますね」
「ぅおー、もうちょい上、…そこっそこ押して!…はー、うまい...
「オレね、結構コレ褒められるんですよ」
しばらく田所は「うあー」だの「もうちょい左」だの、こもっ...
「照にもこうやって、肩もんだりすんの?」
「え?」
不意を突かれて、一瞬答えに詰まった。
「いや、そういやまだした事ないっすね」
「ふうーん?」
なぜか笑いを含んだように田所は顔を上げたが、またすぐ伏せ...
「おまえらが2人で組むようになって、結構経つよな。もうオレ...
以前は田所と照の2人で組んでいた。
「…そう、ですね…オレ入ってからすぐだったんで…何年経つのか...
退蔵が考えだすと、答えを聞かずに田所は起き上った。
「あーだいぶスッキリしたわ。もう行っていいよ。時間ないだ...
言いながら眼鏡をかけ直す。退蔵は軽く頭を下げると照のいる...
歩きながら入署当時の事を思い出していた。
照に自己紹介した後、全然自分のことを思い出してくれなかっ...
刑事に就任したばかりの新米が、先輩と初対面の時に万引未遂...
高校生の頃の自分はつくづくバカだったんだろう、と退蔵は振...
言い訳にもならないが、若気の至りというか若さゆえの過ちと...
特に目的もなく入ろうとしたCDショップ。いきなり入口で、...
心が冷えた。その時急に魔が差した。どうせ誰もオレなんか見...
当然かもしれないが、すぐにバイトらしい店員に腕を掴まれた。
「今、鞄に入れたものを出しなさい」
「……」
パニクり過ぎておかしくなっていたのかもしれない。どうしよ...
心が動いていた。この気持ちがなんなのかは、よくわからない。
だけど、目の前の人の自分に向ける視線もまた、どこか柔らか...
同じ気持ち?この人も、同じ何かを感じ取っているんだろうか...
そんな場合じゃないのに、心が浮き立ってわくわくする気さえ...
そのタイミングで、適当に取ったそのCDの曲が、突然店内に...
『ラブストーリーは突然に』だった。
驚いて顔を上げた店員の脇をすり抜けて、退蔵はその場を立ち...
それからずっと、もう一度あの人に会ってみたいと思っていた...
こっそり陰から見たり尾行したりでほぼストーカーだったが、...
その人が刑事になった時、自分も刑事を志した。ゆくゆくは叔...
そうして長い時が経ち、春になって、再び出会うことが出来た。
ところがその日、自己紹介の後、退蔵は椅子に腰をおろした途...
―全然オレのこと憶えてなかった。その事実で力が抜けていた。
期待し過ぎな自分を自覚もしていたが、それでもせめて「どこ...
ここまでして、オレは結局何を得たかったんだろう…。この気持...
ただ、こうして間近で会えるようになって、改めて思った。
やっぱりこの人は、なんだか可愛い。遠くから見てた時も思っ...
目がクリクリしていて、真面目な顔してる時も口の端がキュッ...
人を寄せ付けないように伏し目がちで、一人で物思いに沈んで...
多分、この人が女だったら、なんのためらいもなく恋愛感情だ...
どう表現していいのかわからないこの気持ちを、退蔵は「尊敬...
椅子にへたりこんでいた退蔵は、一度大きく息を吐くと、立ち...
角を曲がると、木の実を齧るリスみたいな後ろ姿で、うずくま...
近づいていくと、床いっぱいに広がったゼムピンをせっせと拾...
横に並んで拾い出すと、照は顔を傾けて退蔵を見た。
「落として全部ぶちまけちまったよ」
「オレ手伝いますね」
退蔵はでかい手のひらでザーッと寄せ集めると、照の持ってい...
「悪いな。ありがと。…おまえ、どんくさいとこ見て、今、安心...
照はチラッと上目使いになって笑った。つられて退蔵も笑った。
「言っとくけど、これからビシビシしごくからな」
そう言って笑顔のまま、照はゼムピンの箱を持って去って行っ...
その後ろ姿を見ながら、あ、オレまたカワイイって思ってる、...
かといって「先輩」は可愛いだけの人間ではなかった。
2人で組んで行動するようになった最初の頃、中国マフィアの構...
香港の中国返還に伴って流れてきた、下部組織の構成員のその...
拳銃を持ったまま走り去る男の逃走経路を読み、覆面パトカー...
発砲沙汰が初めてな退蔵は、その時正直びびっていた。そんな...
「援護しなくていい。運転に専念していてくれ」
それからはっきりこう言った。
「おれがおまえを守るから」
一瞬息が止まった。前だけを見ていた照は声を上げた。
「ここだ。停めてくれ」
路肩に停めて、角から現れるであろう男を待ち伏せる。照は車...
防弾衣を着用してるとはいえ、車から降りては危険だと退蔵は...
左足の爪先をわずかに外側に移動させただけで、車から降りた...
その先に、角から飛び出すように男が現れた。
照の姿に気付き慌てて銃身を構えるが、その腕は大きく揺れて...
パアン。
乾いた爆竹のような音がひとつ。火薬の匂いが立ち込める中、...
容疑者の動きがないまま、明かりを消したアパートの一室で張...
思えば長い年月、ずっと一緒にいた。一緒にいるうち、なんと...
今では署の誰より、照の事を理解出来ていると思えた。
真夜中だ。照は布団で仮眠をとっていた。夕方にもうとうとし...
暗がりの中で、窓の隙間から双眼鏡で外を眺めて、退蔵は夕方...
「毎日毎日顔を合わせていたら、考えも一緒になってくるって...
そうかもしれない。照が何を考えているのか、次に何を望んで...
先輩も、オレと同じ考えになってくれているんだろうか?
オレが思うように、オレのことを思ってくれてるんだろうか…
夕方、交替で仮眠をとって寝かかっていた時、退蔵は照の顔が...
あれって…、もしかしてキスしようとしてた?
寝かかった意識の中で少し、それに気づいていた。次に「うわ...
…もったいないことしちゃったのかな……まさかな…
退蔵は窓から離れて、照の枕元にしゃがみこんだ。
同じ気持ち。本当にそうだったらいいのに。
退蔵は静かに膝をついて、照の額にそっと唇をおとした。
照の瞼と指がぴくっと動いたので、慌てて離れる。
一瞬2人とも動きが止まった。それからまた寝息が聞こえてきた...
退蔵はそーっと音をたてないように、窓際まで後退りした。そ...
だめだオレ。この人の事が可愛い。
どう考えても「尊敬」だけの気持ちではなくなっていた。
射撃訓練の的の中心を、最後の弾が撃ち抜いた。
なんとか中心に狙いをつける事が出来るようになってきた。退...
「息の止め方が上手くなったな」
後ろから見ていた照が声をかけてくる。耳栓を外しながら退蔵...
「ほんとですか!」
「照準も正確だし、銃口の動きも最小限だ」
笑いかけられて退蔵はめちゃくちゃ嬉しくなった。嬉し過ぎて...
「退蔵。また指噛んでるぞ」
照が退蔵の仕草を真似して、指を口元に持っていって見せた。
「え?あ。」
無意識に指の第二関節を噛んでいた。そわそわしてる時の退蔵...
「おまえ、その癖子供っぽいぞ」
言った直後、照は急にクシャッとくしゃみをした。両手を揃え...
「……」
退蔵は黙ってその姿を眺めた。
「そろそろ捜査会議の時間だな。退蔵、訓練後の点眼とうがい...
「あ、ハイ」
後片付けしながら退蔵は照の後ろ姿を見た。スーツの袖から指...
…スーツ、でか過ぎるんじゃ?心の中で呟いた。
子供っぽいのって…。見送りながら退蔵はまた笑った。
会議室には既に大方が集まっていた。ホワイトボードに田所が...
照と退蔵で横並びに座る。始まるのを待っている間、退蔵は横...
退蔵はひょいっと照の太腿に手を伸ばして、ギュッと押さえつ...
「ぅあっ!?」
照がすっとんきょうな声を上げた。退蔵は大口を開けて笑いか...
「貧乏揺すり。悪い癖ですよ、先輩」
「………急に、びっくりするだろ……」
照はぼーっと退蔵の顔を見た後で、少し焦ったように周囲を気...
あれ?耳まで真っ赤…。退蔵は笑いを噛み殺しながら前に向き直...
田所に声をかけられたのは、会議後、退蔵が一人になった時だ...
「これ内密の話だから、絶対誰にも口外しないでほしいんだ」
他に誰もいなくなった会議室に、田所の声がやけに響いた。
「三合会の下部組織に、呉朴龍がいたのを覚えてるか?」
それが昔、照が狙撃した男だった。退蔵は頷いた。
「あいつは本国に送還された後、公開処刑になったらしい」
「…麻薬で摘発されてましたからね。あっちじゃ重罪ですよね」
「それでな、あいつの兄が幹部となって、東京でまたドラッグ...
「強制捜査、行くんですか?」
「いや…、それが難しくてさ…、…あそこは前からなんていうか…...
残虐なリンチや報復は、それこそ公開処刑同然だと知らされて...
「裏から証拠を集めて、一斉検挙に繋げたいというのが上の判...
それを聞いて退蔵の表情が翳った。
「…でも…それは…」
「朴龍の兄が、どれだけ照を恨んでいるか、おまえ知ってるか...
田所の顔が強張っていた。
「とっ捕まったら、ヤク漬けどころじゃすまないぞ」
「……」
考えたくもないのに、裏切り者として始末された組織の女の死...
「先輩は外すべきです」
「オレだってそう言いたいよ。ただ、上から任命されて照がど...
田所は青ざめた顔で、退蔵の顔を真正面から見た。
「あいつは引き受けると思う。自分が一番実情を知っていると...
退蔵の額に冷たい汗が滲んできた。
「あいつはこんな時、危険だとどんなに周りが止めても自分か...
「……」
その通りだと思った。まるで自分を痛めつけるかのように、自...
「……オレだって実情は知っています」
退蔵は乾いた声で言った。やけに喉が渇いていた。
「先輩にはこの件は伏せてもらえませんか。オレが一人でやり...
田所はしばらく黙ってから、少し目を反らして言った。
「ずっと照とコンビを組んでたおまえが、単独行動をとるのか...
「言い訳は後で考えます、とにかくこの件は先輩を外して下さ...
必死だった。万が一にも照を、危険だとわかりきっている現場...
田所は探るように退蔵の目を覗き込んでいたが、ぼそっと呟い...
「……おまえが、いっそ死んだことにすれば…」
「……え」
退蔵は静かに目を見開いて田所の顔を見た。田所の眼は座って...
「照の目の前で殉職するフリをするんだ。その後おまえは現場...
「……」
突飛過ぎる考えに声を失った。
しかし、少し考えるうちに、それはベストかもしれないと思え...
「2、3年。早けりゃ1年ちょいで戻ってこれるんじゃないか?...
急に饒舌になった田所の言葉に、退蔵は激しく混乱しながらも...
翌日、止めていたタバコを吸いたくなって署の外に出た退蔵の...
田所が何か冗談を言ったらしく、照が田所の背中をはたく。そ...
やけに楽しげに笑いながら何か言い返した田所が、ふと視線に...
―その瞬間、田所は何故か激しく動揺した。
それから「しまった」と思った表情を反射的に浮かべ、次の瞬...
「……」
一連のその変化を見て、退蔵はなんとなく気付いてしまった。...
何もなかったように照の背中を押して去って行く田所の後ろ姿...
つづく。
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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