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#title(三味線屋×錺職人?) [#j6d6648b]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
| >37の後日談モナ
| 三味線×錺職人と...
|
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| それっ...
| | | | ...
| | |> 再生 | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
↑時代物なので漢字にしてみました。
「ちょいとちょいと、ゆーうさん」
この慎みというものに縁のない声、心当たりは一人。
「なんでえ、何でも屋」
「あら、随分じゃないか。嫁入り前の娘つかまえて」
「嫁入りってのは必ずやって来るもんでもねえんだが?」
途端に飛んでくる拳骨を鮮やかにかわす。
「何の用でえ。あんまり店先に居座られても困るんだがな」
「ふん、どうせまた女が訪ねてくるんだろ。数にゃ不自由しな...
「だから何だ」
「ヒデのことなんだけどねぇ」
一瞬、火鉢の炭をつつく手が止まる。が、何食わぬ顔で先を促...
「ヒデが、どうしたい」
「この間ね、一晩帰って来ないからどうしたんだろと思ってた...
これだから長屋住まいは厄介なんだ。有事はこっそり悪態をつ...
「どこの姉さんのところに転がり込んだんだって聞いても、絶...
「お前ェに知られたら、その日のうちに長屋じゅうに知れ渡る...
「でもさあ、聞いたときの顔がいつもと違うんだよ」
湯呑みの茶を吹きそうになって、これも堪える。何を言い出す...
「そりゃお前ェ、あいつだって立派な男だ。一晩極楽に居たっ...
「まあね、品物納めに行って遊郭の姉さんにとっ捕まったとか...
でもあんな真っ赤な顔してさっさと引き戸閉めちまわなくても...
その様子が鮮明に頭に浮かび、有事は厄介な方向に事が流れて...
「それにね、なんか様子がいつもと違うんだよ。目元がぽーっ...
「そりゃ風邪っ引きだったからじゃねえのか」
「あれ、なんで有さん知ってるのさ」
しまった、という素振りはかけらも見せず「ハ丁堀が言ってた...
実際、風邪気味で主/水と釣りをしていたのは事実だ。
「それで、まだ調子悪そうなのに構うなって言うからさ。あた...
すぐに隣からトントントントン聞こえてきて」
(あの馬鹿、やっぱりろくに休まねえで始めやがったな)
眉をひそめつつ言葉を継ぐ。
「どっかの姉さんに看病してもらって、その礼ってところじゃ...
あいつはその辺義理堅いからよ」
「うーん、そうは思ったんだけどねえ。そうならそうと言えば...
照れくさいにしたってあんなに慌てなくても」
どんな顔してやがったんだあのガキは。有事は内心で頭を抱え...
「それで、俺に何か心当たりはねえかって?」
「そうなんだよ、何か聞いてないかと思ってさ」
「知らねえよ。ほれ、商売の邪魔ンなるからとっとと帰ぇれ」
「何さ、いいよもう」
はしたなく裾をめくって駆けて行くのを見送り、有事は早いう...
出稽古がてら柳橋の芸者衆に声を掛けてみれば、上手い具合にヒ...
馴染みの置屋に納品に来ると聞き、何気ない振りでそこへ向か...
自分にとっても付き合いの長い女将は、世間話にも楽しげに応...
そこへ、見慣れた木綿半纏が暖簾をくぐって現れる。
「まあまあヒデさん。ご苦労様」
「へい、ご注文のものを…」
ヒデなりに愛想良く入ってきたものの、すまして茶菓子などを摘...
「よう」
「お前ェ、何でここに…」
「こっちも仕事さ。今日は稽古が続いててな」
側に置いた三味線を指してみせる。考えればお互いの仕事柄、...
ヒデは素直に納得して女将に向き直った。同時に華やいだ声が奥...
「まあヒデさん、いらっしゃい!」
「琴はな姉さん、また簪を新調したのね? すてき!」
「これ、何ですか。はしたない」
桐箱に仕舞われた簪を、注文主らしい芸妓が嬉しげに取り出し...
髪に挿してと愛らしくねだられ、照れながら応じているヒデの顔...
口数は相変わらず少ないが、自分の作品が美しい芸妓たちを飾...
花が綻ぶような笑顔で見つめている。その曇りのなさに、有事...
少しだけ痛むのを感じた。とうの昔に失くしたはずの痛みだっ...
「で、何の用だよ」
有事は納品を終えたヒデを半ば強引に引っぱり、近くの飯屋に連...
馴れた様子で奥座敷を頼む手際に、ヒデが抜け出す隙などあろう...
「いいから付き合え。銭は出す」
いつにない真剣な様子に、ヒデはそれ以上言い募ることもできず...
「…と、まあこういうわけだ」
「加/代の奴…」
がっくりと肩を落とすヒデを、有事は料理をつつきながら指差し...
「お前ェもお前ェだ。妙な顔して突っぱねたりするから、加/代...
「俺がいつ妙な顔したよ!」
「まあ川に落っこちて俺んとこで寝込んでたなんて、格好いい...
だが放っといたらあいつ、勝手に色んな噂立てかねねえぞ」
こいつのことだ、上手くあしらえるわけもなく、そのうち自分...
まったく騒ぎが済んでからも手を焼かせやがる――と、そこまで...
あの晩のことを思い出した。忘れていた記憶が蘇り、途端に悪...
箸を取ろうとして、気づけば人の悪い笑みを浮かべている有事...
「何だよ」
「確かにな。お前ェがうちでうんうん魘されてるときに、あん...
加/代どころかこの辺の芸者衆まで大騒ぎだろうな」
箸を持ったまま硬直するヒデ。有事はことさらに顔を近づけ、必...
「なにも覚えてねえだろ、俺がお前拾ってから目え覚ますまで」
「あ、ああ」
「まったく参ったぜ。大の男に添い寝する羽目になるなんてよ」
「────── ! ! !」
ヒデは口を開こうとして言葉が出ず、かーっと発火しそうな勢い...
忙しい奴だと思いながら、有事は事の次第を漏らさず話してや...
「なんか温けえもんにしがみついてた覚えねえか? どうにも...
なんだか台詞が夜明けの会話のようだと思っていると、呆然と...
「で…俺は何て言ったって…?」
「んー?そりゃ可愛らしいこと言ってくれたぜ。俺もさすがに...
「加/代には喋っちゃいねえだろうな」
「おうよ、あいつにゃ勿体ねえ」
その発想がいつもの自分と何処かずれていることに、有事自身...
「誰かを…呼んだのか?俺は」
有事は無言のままにやりと笑ってみせた。ヒデの目が大きく見開...
「……で、どうしろってんだよ」
ヒデはふてくされた、というより捨て鉢のような様子でこちらを...
「(開き直りやがったな)さあね、どうしたらいいと思うかい」
別に強請るわけでもない。あのときの無邪気な寝言をつまみに...
夜っぴて看病してやったのだから、それくらいは勘弁しろと言...
「俺が誰かを呼んじゃ悪りぃかよ」
「いつものお前からは想像できねえからなあ。まあ、俺の胸の...
我ながら意地が悪いとわかっているものの、どうにも止まらな...
まん丸の上目遣いで睨んだりするから面白くなるんだ、と勝手...
しかし、唇を噛んで俯いているヒデが次第に涙目になっていく。...
ヒデは自棄のように喋りだしていた。
「そうかよ、そんなに可笑しいかよ。そうだろうな、ああそう...
「おい、ヒデ…」
「あんただってそんなこと聞きたかなかっただろうさ、悪かっ...
「そうじゃねえよ、ちょっと待て」
「べつに俺ァ構わねえよ、知られたら俺が消えれば丸く収まる...
「何ィ? いやヒデ、わかった、もういい」
一瞬口を引き結び、大きな目が有事を見据えた。咄嗟に制しよ...
ヒデは一大告白を三尺玉の如くに打ち上げていた。
「俺が、俺がハ丁堀の名前を───」
「……いや、「おとっつぁん」て、言ったんだが…な…」
表通りの賑やかな喧騒が聞こえる中、二人の周囲だけが完全な...
奥座敷にしておいてよかったと有事は心底思った。
「まあ、その、何だ…」
「…………」
ヒデは項垂れたままひとことも口を利かない。有事は、この男に...
非常にいたたまれない心持ちで酒をあおった。
生真面目な職人をからかったのは少々やりすぎたかと思うが、...
勘違いしたのはヒデである。その挙句にこちらが本気で腰を抜か...
口上が飛び出すオチまでついた。
しかし、開き直る気力すらも失っているヒデをこのまま放ってお...
本人が墓穴を掘ったとは言うものの、ちょっとした悪戯心がヒデ...
有事は腹を据え、静かに声を掛けた。
「お前ェが嫌でなきゃ、聞かせてくれるか」
返事は返らない。
「知らねえとは言え、痛えところ突いたのは悪かった。ただ、...
聞かなかったことにするのは俺にもちと辛え」
肩がぴくりと動いた。
「野暮なこたぁしねえよ。そんな話じゃねえだろうしな」
ちらりと視線がこちらに向けられた。有事がもう笑いを浮かべ...
もう一度目を伏せ、躊躇うように睫毛が揺れる。促すように銚...
黙って猪口を差し出してきた。
ぽつぽつと語りだした内容は、主/水と出会ったときのこと、よ...
鉄拳制裁を食らったこと、それでも主/水は自分を見捨てなかっ...
そして、自分の気持ちを持て余してひどく苦しんだということ。
「もう、わけわかんなくなっちまってよ。夜勤だって言ってた...
「お前から夜這いか。しかも番屋に」
淡々と切り返され、すぼめた肩がいよいよ小さくなる。
(やるじゃねえか、あの昼行灯)
少々無責任に感心してみたものの、どう返したらいいか言葉に...
だが、痛みを堪えるように告白を続けるヒデの表情は、笑い飛ば...
(こいつも難儀な奴だぜ)
確かに、主/水には小役人特有のの狡さや日和見主義なところが...
どこか憎みきれない男である。お/りくも一目置いている仕事人...
非情のようでいて、そうなりきれない心を抱えた背中。
それをずっと見ていたのだろうか。
「それにしても、気がつかなかったぜ。俺としたことが」
「馬鹿野郎!見て判ってたまるかそんなもん」
耳まで赤くしてそっぽを向き、わざと投げやりに続けた。
「あっちの腹ン中はどうだか知らねえよ。ガキが煩えから黙ら...
「そこまで惨いお人じゃねえと思うがね」
穏やかに言葉を返され、ヒデは一瞬有事を見つめ返す。すぐに逸...
行き場をなくして外へと向けられた。
「ま、生きてりゃいろいろあらあな」
ぼんやりと花街の往来を眺める横顔に、有事はいつもの笑顔で...
「そういや組んだばかりの頃、お前ェは世話焼かすだの青臭え...
放っとくと勝手に走り回るから気ぃつけろってな」
「あの入り婿じじい…」
「そこは突っ込んでやるなよ。辛えもんだぜアレも」
先ほどとは違う、居心地のよい沈黙が訪れる。
しばらくして、ヒデはぽつりと呟いた。
「あのおっさん、ああ見えて変に気が回るんだよな」
「ああ、わかるさ。お勤めの辛さも、お上の汚ねえところも知...
それでも十手持ちで所帯持ちってえ、小せえ居場所を守りて...
それがどんだけ厳しいことかも知っていてな」
「……俺にゃ、わかんねえんだろうな。ずっと」
最後のほうはほとんど聞き取れないほどの声だった。有事は黙...
癖っ毛の頭を叩き「飲むか」と促した。
ややあって、ヒデは小さく頷いた。
その晩、程よく酔いの回った錺職人が「話したのがあんたで良...
ひどく無防備な笑顔で言ったとか言わないとか。
そして、そんな顔を向けられた三味線屋が微妙に挙動不審にな...
____________
| __________ |
| | | |
| | □ 停止 | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
看板に偽り有りで申し訳ございません_| ̄|○
おっさんとの付き合いの長さを考えると
萌えが止まらずこうなりました。
>59
その筋ってw 私はしがない読み専でございます。
時代劇スレの方でしたら、私の壊れたカキコを幾つもご覧になって...
おまけ
勇「で、殺る相手は」
主「女文書き(ふみかき)だ。頼み人は>54 文の続きを読みた...
「なんでもする」なんて言っちまったがために、酷い目に遭...
ヒデ「どんな文だよ。そうまでして読みてえなんて」
主「ん?ほれ、ここに写本があるぜ。加/代がこっそり仕入れて...
ヒデ「……」
主「他にもまだあるぜ、こりゃ写本の内職したら一儲けできる...
ヒデ「こいつは、俺が殺る。─―─―邪魔するな」
勇「好きにしろ」
(主/水に一分銀をそっと渡す)
勇「ハ丁堀、あとで写本ひとつ頼む」
主「おう」
#comment
終了行:
#title(三味線屋×錺職人?) [#j6d6648b]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
| >37の後日談モナ
| 三味線×錺職人と...
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____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| それっ...
| | | | ...
| | |> 再生 | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
↑時代物なので漢字にしてみました。
「ちょいとちょいと、ゆーうさん」
この慎みというものに縁のない声、心当たりは一人。
「なんでえ、何でも屋」
「あら、随分じゃないか。嫁入り前の娘つかまえて」
「嫁入りってのは必ずやって来るもんでもねえんだが?」
途端に飛んでくる拳骨を鮮やかにかわす。
「何の用でえ。あんまり店先に居座られても困るんだがな」
「ふん、どうせまた女が訪ねてくるんだろ。数にゃ不自由しな...
「だから何だ」
「ヒデのことなんだけどねぇ」
一瞬、火鉢の炭をつつく手が止まる。が、何食わぬ顔で先を促...
「ヒデが、どうしたい」
「この間ね、一晩帰って来ないからどうしたんだろと思ってた...
これだから長屋住まいは厄介なんだ。有事はこっそり悪態をつ...
「どこの姉さんのところに転がり込んだんだって聞いても、絶...
「お前ェに知られたら、その日のうちに長屋じゅうに知れ渡る...
「でもさあ、聞いたときの顔がいつもと違うんだよ」
湯呑みの茶を吹きそうになって、これも堪える。何を言い出す...
「そりゃお前ェ、あいつだって立派な男だ。一晩極楽に居たっ...
「まあね、品物納めに行って遊郭の姉さんにとっ捕まったとか...
でもあんな真っ赤な顔してさっさと引き戸閉めちまわなくても...
その様子が鮮明に頭に浮かび、有事は厄介な方向に事が流れて...
「それにね、なんか様子がいつもと違うんだよ。目元がぽーっ...
「そりゃ風邪っ引きだったからじゃねえのか」
「あれ、なんで有さん知ってるのさ」
しまった、という素振りはかけらも見せず「ハ丁堀が言ってた...
実際、風邪気味で主/水と釣りをしていたのは事実だ。
「それで、まだ調子悪そうなのに構うなって言うからさ。あた...
すぐに隣からトントントントン聞こえてきて」
(あの馬鹿、やっぱりろくに休まねえで始めやがったな)
眉をひそめつつ言葉を継ぐ。
「どっかの姉さんに看病してもらって、その礼ってところじゃ...
あいつはその辺義理堅いからよ」
「うーん、そうは思ったんだけどねえ。そうならそうと言えば...
照れくさいにしたってあんなに慌てなくても」
どんな顔してやがったんだあのガキは。有事は内心で頭を抱え...
「それで、俺に何か心当たりはねえかって?」
「そうなんだよ、何か聞いてないかと思ってさ」
「知らねえよ。ほれ、商売の邪魔ンなるからとっとと帰ぇれ」
「何さ、いいよもう」
はしたなく裾をめくって駆けて行くのを見送り、有事は早いう...
出稽古がてら柳橋の芸者衆に声を掛けてみれば、上手い具合にヒ...
馴染みの置屋に納品に来ると聞き、何気ない振りでそこへ向か...
自分にとっても付き合いの長い女将は、世間話にも楽しげに応...
そこへ、見慣れた木綿半纏が暖簾をくぐって現れる。
「まあまあヒデさん。ご苦労様」
「へい、ご注文のものを…」
ヒデなりに愛想良く入ってきたものの、すまして茶菓子などを摘...
「よう」
「お前ェ、何でここに…」
「こっちも仕事さ。今日は稽古が続いててな」
側に置いた三味線を指してみせる。考えればお互いの仕事柄、...
ヒデは素直に納得して女将に向き直った。同時に華やいだ声が奥...
「まあヒデさん、いらっしゃい!」
「琴はな姉さん、また簪を新調したのね? すてき!」
「これ、何ですか。はしたない」
桐箱に仕舞われた簪を、注文主らしい芸妓が嬉しげに取り出し...
髪に挿してと愛らしくねだられ、照れながら応じているヒデの顔...
口数は相変わらず少ないが、自分の作品が美しい芸妓たちを飾...
花が綻ぶような笑顔で見つめている。その曇りのなさに、有事...
少しだけ痛むのを感じた。とうの昔に失くしたはずの痛みだっ...
「で、何の用だよ」
有事は納品を終えたヒデを半ば強引に引っぱり、近くの飯屋に連...
馴れた様子で奥座敷を頼む手際に、ヒデが抜け出す隙などあろう...
「いいから付き合え。銭は出す」
いつにない真剣な様子に、ヒデはそれ以上言い募ることもできず...
「…と、まあこういうわけだ」
「加/代の奴…」
がっくりと肩を落とすヒデを、有事は料理をつつきながら指差し...
「お前ェもお前ェだ。妙な顔して突っぱねたりするから、加/代...
「俺がいつ妙な顔したよ!」
「まあ川に落っこちて俺んとこで寝込んでたなんて、格好いい...
だが放っといたらあいつ、勝手に色んな噂立てかねねえぞ」
こいつのことだ、上手くあしらえるわけもなく、そのうち自分...
まったく騒ぎが済んでからも手を焼かせやがる――と、そこまで...
あの晩のことを思い出した。忘れていた記憶が蘇り、途端に悪...
箸を取ろうとして、気づけば人の悪い笑みを浮かべている有事...
「何だよ」
「確かにな。お前ェがうちでうんうん魘されてるときに、あん...
加/代どころかこの辺の芸者衆まで大騒ぎだろうな」
箸を持ったまま硬直するヒデ。有事はことさらに顔を近づけ、必...
「なにも覚えてねえだろ、俺がお前拾ってから目え覚ますまで」
「あ、ああ」
「まったく参ったぜ。大の男に添い寝する羽目になるなんてよ」
「────── ! ! !」
ヒデは口を開こうとして言葉が出ず、かーっと発火しそうな勢い...
忙しい奴だと思いながら、有事は事の次第を漏らさず話してや...
「なんか温けえもんにしがみついてた覚えねえか? どうにも...
なんだか台詞が夜明けの会話のようだと思っていると、呆然と...
「で…俺は何て言ったって…?」
「んー?そりゃ可愛らしいこと言ってくれたぜ。俺もさすがに...
「加/代には喋っちゃいねえだろうな」
「おうよ、あいつにゃ勿体ねえ」
その発想がいつもの自分と何処かずれていることに、有事自身...
「誰かを…呼んだのか?俺は」
有事は無言のままにやりと笑ってみせた。ヒデの目が大きく見開...
「……で、どうしろってんだよ」
ヒデはふてくされた、というより捨て鉢のような様子でこちらを...
「(開き直りやがったな)さあね、どうしたらいいと思うかい」
別に強請るわけでもない。あのときの無邪気な寝言をつまみに...
夜っぴて看病してやったのだから、それくらいは勘弁しろと言...
「俺が誰かを呼んじゃ悪りぃかよ」
「いつものお前からは想像できねえからなあ。まあ、俺の胸の...
我ながら意地が悪いとわかっているものの、どうにも止まらな...
まん丸の上目遣いで睨んだりするから面白くなるんだ、と勝手...
しかし、唇を噛んで俯いているヒデが次第に涙目になっていく。...
ヒデは自棄のように喋りだしていた。
「そうかよ、そんなに可笑しいかよ。そうだろうな、ああそう...
「おい、ヒデ…」
「あんただってそんなこと聞きたかなかっただろうさ、悪かっ...
「そうじゃねえよ、ちょっと待て」
「べつに俺ァ構わねえよ、知られたら俺が消えれば丸く収まる...
「何ィ? いやヒデ、わかった、もういい」
一瞬口を引き結び、大きな目が有事を見据えた。咄嗟に制しよ...
ヒデは一大告白を三尺玉の如くに打ち上げていた。
「俺が、俺がハ丁堀の名前を───」
「……いや、「おとっつぁん」て、言ったんだが…な…」
表通りの賑やかな喧騒が聞こえる中、二人の周囲だけが完全な...
奥座敷にしておいてよかったと有事は心底思った。
「まあ、その、何だ…」
「…………」
ヒデは項垂れたままひとことも口を利かない。有事は、この男に...
非常にいたたまれない心持ちで酒をあおった。
生真面目な職人をからかったのは少々やりすぎたかと思うが、...
勘違いしたのはヒデである。その挙句にこちらが本気で腰を抜か...
口上が飛び出すオチまでついた。
しかし、開き直る気力すらも失っているヒデをこのまま放ってお...
本人が墓穴を掘ったとは言うものの、ちょっとした悪戯心がヒデ...
有事は腹を据え、静かに声を掛けた。
「お前ェが嫌でなきゃ、聞かせてくれるか」
返事は返らない。
「知らねえとは言え、痛えところ突いたのは悪かった。ただ、...
聞かなかったことにするのは俺にもちと辛え」
肩がぴくりと動いた。
「野暮なこたぁしねえよ。そんな話じゃねえだろうしな」
ちらりと視線がこちらに向けられた。有事がもう笑いを浮かべ...
もう一度目を伏せ、躊躇うように睫毛が揺れる。促すように銚...
黙って猪口を差し出してきた。
ぽつぽつと語りだした内容は、主/水と出会ったときのこと、よ...
鉄拳制裁を食らったこと、それでも主/水は自分を見捨てなかっ...
そして、自分の気持ちを持て余してひどく苦しんだということ。
「もう、わけわかんなくなっちまってよ。夜勤だって言ってた...
「お前から夜這いか。しかも番屋に」
淡々と切り返され、すぼめた肩がいよいよ小さくなる。
(やるじゃねえか、あの昼行灯)
少々無責任に感心してみたものの、どう返したらいいか言葉に...
だが、痛みを堪えるように告白を続けるヒデの表情は、笑い飛ば...
(こいつも難儀な奴だぜ)
確かに、主/水には小役人特有のの狡さや日和見主義なところが...
どこか憎みきれない男である。お/りくも一目置いている仕事人...
非情のようでいて、そうなりきれない心を抱えた背中。
それをずっと見ていたのだろうか。
「それにしても、気がつかなかったぜ。俺としたことが」
「馬鹿野郎!見て判ってたまるかそんなもん」
耳まで赤くしてそっぽを向き、わざと投げやりに続けた。
「あっちの腹ン中はどうだか知らねえよ。ガキが煩えから黙ら...
「そこまで惨いお人じゃねえと思うがね」
穏やかに言葉を返され、ヒデは一瞬有事を見つめ返す。すぐに逸...
行き場をなくして外へと向けられた。
「ま、生きてりゃいろいろあらあな」
ぼんやりと花街の往来を眺める横顔に、有事はいつもの笑顔で...
「そういや組んだばかりの頃、お前ェは世話焼かすだの青臭え...
放っとくと勝手に走り回るから気ぃつけろってな」
「あの入り婿じじい…」
「そこは突っ込んでやるなよ。辛えもんだぜアレも」
先ほどとは違う、居心地のよい沈黙が訪れる。
しばらくして、ヒデはぽつりと呟いた。
「あのおっさん、ああ見えて変に気が回るんだよな」
「ああ、わかるさ。お勤めの辛さも、お上の汚ねえところも知...
それでも十手持ちで所帯持ちってえ、小せえ居場所を守りて...
それがどんだけ厳しいことかも知っていてな」
「……俺にゃ、わかんねえんだろうな。ずっと」
最後のほうはほとんど聞き取れないほどの声だった。有事は黙...
癖っ毛の頭を叩き「飲むか」と促した。
ややあって、ヒデは小さく頷いた。
その晩、程よく酔いの回った錺職人が「話したのがあんたで良...
ひどく無防備な笑顔で言ったとか言わないとか。
そして、そんな顔を向けられた三味線屋が微妙に挙動不審にな...
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| | | |
| | □ 停止 | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
看板に偽り有りで申し訳ございません_| ̄|○
おっさんとの付き合いの長さを考えると
萌えが止まらずこうなりました。
>59
その筋ってw 私はしがない読み専でございます。
時代劇スレの方でしたら、私の壊れたカキコを幾つもご覧になって...
おまけ
勇「で、殺る相手は」
主「女文書き(ふみかき)だ。頼み人は>54 文の続きを読みた...
「なんでもする」なんて言っちまったがために、酷い目に遭...
ヒデ「どんな文だよ。そうまでして読みてえなんて」
主「ん?ほれ、ここに写本があるぜ。加/代がこっそり仕入れて...
ヒデ「……」
主「他にもまだあるぜ、こりゃ写本の内職したら一儲けできる...
ヒデ「こいつは、俺が殺る。─―─―邪魔するな」
勇「好きにしろ」
(主/水に一分銀をそっと渡す)
勇「ハ丁堀、あとで写本ひとつ頼む」
主「おう」
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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