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#title(川の深さは 桃山→保) [#d2658dd8]
久しぶりに福#物投下させていただきます。
木兆山→イ呆のようなそうでないような。
ほんの数時間絵空事を映すだけの白幕を少年は大きく開かれた...
知らない物、新しい物、世界にはそんな様々な物があることを...
触れたいと望む事すら知らなかった、子供は今でも俺の隣に居...
どこにでもある田舎町のどこにでもある映画館。
新作が出るたびに足を運ぶのが俺の唯一の趣味になっていた。
通い始めて暫くは切符ぎりの親父が嬉々として話しかけてきた...
俳優の名前も碌にわからないと知れればただ毎回料金の受け渡...
映画好きの不良中年仲間、との期待を裏切った事だけは少々悪...
こんな田舎にも配給されるほどの人気作品だというのに劇場内...
それも当然で観客は十人にも満たない。
この時代に敢えてCGではなく壮大なセットとエキストラで臨...
きっと出演者の方がこの映画館で見る観客よりずっと多いだろ...
最近動く分だけは幾らか絞れてきたとはいえまだ重い身体を椅...
――イ呆、馬鹿だな。こんなのただの作り事じゃないか。
もう二度と逢う事はないだろう少年、そう何年経っても少年の...
――良いんだよ。詰まんない事言うなよ。楽しいんだからそれで...
横から聞える声に微かに笑って売店で買った袋菓子を誰も居な...
そして俺は聞えるはずの無い声を聞き見える筈の無い姿を見る。
ほんの少し世界が良い方に動いたなら彼にも在り得た、ごく平...
――ガキみてぇな事を言うんだな。
また一緒に、また今度。望んだ事はただそれだけだった。
映画代くらい奢ってやって、菓子とアオイへの土産くらいは自...
切り取られた窓から楽しい絵空事を見て一緒に笑うのだ。
保と過ごした日々は鮮明なようでどこか滲んでいる。
印象ばかりが強くて一つも像を結ばないのだ。
手も握らなかった。唇も何もかも、少年の身体に触れる事は無...
ましてやわかりあう事など少しも無かったのだ。
けれど今、自分と少年の人生はこうして交わっている。
映画館へ行くたび、この絵空事の窓を見るたび俺は何よりもイ呆...
切り取られた窓の向こうに見える世界は隣に座って夢中で映画...
俺が字幕を追う間、または幻のイ呆が袋菓子を握り締めている間...
小さな女の子が暗い中少しおぼつかぬ足取りで横を通り過ぎた。
「あのおじちゃん沢山泣いてるね。悲しい事があったの?」
可愛らしい声を上品な母親らしい声が軽くたしなめて静かにな...
悲しくない。悲しいんじゃない。俺はただ、何度でも交わる少...
#comment
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#title(川の深さは 桃山→保) [#d2658dd8]
久しぶりに福#物投下させていただきます。
木兆山→イ呆のようなそうでないような。
ほんの数時間絵空事を映すだけの白幕を少年は大きく開かれた...
知らない物、新しい物、世界にはそんな様々な物があることを...
触れたいと望む事すら知らなかった、子供は今でも俺の隣に居...
どこにでもある田舎町のどこにでもある映画館。
新作が出るたびに足を運ぶのが俺の唯一の趣味になっていた。
通い始めて暫くは切符ぎりの親父が嬉々として話しかけてきた...
俳優の名前も碌にわからないと知れればただ毎回料金の受け渡...
映画好きの不良中年仲間、との期待を裏切った事だけは少々悪...
こんな田舎にも配給されるほどの人気作品だというのに劇場内...
それも当然で観客は十人にも満たない。
この時代に敢えてCGではなく壮大なセットとエキストラで臨...
きっと出演者の方がこの映画館で見る観客よりずっと多いだろ...
最近動く分だけは幾らか絞れてきたとはいえまだ重い身体を椅...
――イ呆、馬鹿だな。こんなのただの作り事じゃないか。
もう二度と逢う事はないだろう少年、そう何年経っても少年の...
――良いんだよ。詰まんない事言うなよ。楽しいんだからそれで...
横から聞える声に微かに笑って売店で買った袋菓子を誰も居な...
そして俺は聞えるはずの無い声を聞き見える筈の無い姿を見る。
ほんの少し世界が良い方に動いたなら彼にも在り得た、ごく平...
――ガキみてぇな事を言うんだな。
また一緒に、また今度。望んだ事はただそれだけだった。
映画代くらい奢ってやって、菓子とアオイへの土産くらいは自...
切り取られた窓から楽しい絵空事を見て一緒に笑うのだ。
保と過ごした日々は鮮明なようでどこか滲んでいる。
印象ばかりが強くて一つも像を結ばないのだ。
手も握らなかった。唇も何もかも、少年の身体に触れる事は無...
ましてやわかりあう事など少しも無かったのだ。
けれど今、自分と少年の人生はこうして交わっている。
映画館へ行くたび、この絵空事の窓を見るたび俺は何よりもイ呆...
切り取られた窓の向こうに見える世界は隣に座って夢中で映画...
俺が字幕を追う間、または幻のイ呆が袋菓子を握り締めている間...
小さな女の子が暗い中少しおぼつかぬ足取りで横を通り過ぎた。
「あのおじちゃん沢山泣いてるね。悲しい事があったの?」
可愛らしい声を上品な母親らしい声が軽くたしなめて静かにな...
悲しくない。悲しいんじゃない。俺はただ、何度でも交わる少...
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