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#title(X-MEN マグニートー×チャールズ) [#x6a6cd24]
チェス盤を前に向かい合う。透明な強化プラスチックの監獄...
白い明かりで照らし出されている。
本来ならば心を読むことのできる相手と行うチェスなど無謀...
目の前にいる男の誠意をもってしか、このゲームは成立しな...
「読み違えたな。ここでキングを逃がしたのは良かったが、こ...
いたのを忘れていたのか?」
年を経た、白く節ばった指がクリスタルの駒を敵陣へ動かす。
相手側から軽く息を飲む気配がした。どうやら真実、手を読...
相手にしては珍しいことだ。
「……クイーンの動きを警戒しすぎたようだ」
「脅懦はときに人の判断を狂わせる。今回は失敗だったな」
透明なプラスチックの監獄の中で二人はチェスを続けている...
のできる男の側ではなく、ただ一人この特別な監獄へ囚われて...
マグ二一ト一ことヱリック・マグナス・レ一ンシャ一の方だっ...
真剣な眼差しでクリスタルのチェス盤を見詰め、次の手を考...
フランシス・ヱグゼビア、「恵まれι子らの学園」の創設者にし...
プ口フェッサー×と呼ばれる男である。
溜息をついたチャ一ノレズは視線をチェス盤から外さないまま...
「手厳しいな。私が隙を作るときを待ち構えて容赦なく攻めて...
にしてくれないか?」
生真面目な顔を僅かにしかめながらも視線は次の手を探して...
もの定石をさらい、敵を降伏させる最良の手を選んでいるのだ...
無論マグ二一ト一の側もそれは読んでいる。どんな手が来よ...
相手の目が盤の上を、駒の上を行く度次に彼が打つだろう位...
チャ一ノレズの側でもそれは感じ取れたのだろう、しばらく熟...
「……どうも分が悪そうだ。今日はここまでにしていいだろうか...
今日のゲームにしても前回の面会からの続きだった。始まる...
劣勢だったのだが。
「構わん。だが、あまり頻繁にここへ面会に来ると厄介な連中...
「忠告は拝聴しておこう。だが、私は君が言うほどに心配はし...
軽く笑ってチャ一ノレズは上半身の力だけで椅子の上にある自...
透明な強化プラスチックの檻の向こうには看守達が彼らを監...
チャ一ノレズがそこへ合図を送り、自分がもう退出すると意思表...
彼の車椅子を押して出て行くことになっていた。
ふとマグ二一ト一がチャ一ノレズの萎えた足に目を留めた。
「その肢に金属を仕込めばいい。私がお前を歩かせてやるのに」
「残念ながら、その申し出は丁重にお断りするよ」
手を上げようとしていたチャ一ノレズはその言葉に苦笑し、再...
「そんなことをしたら、君に面会できなくなってしまうしね」
この監獄へはどんな些細な量であっても、マグ二一ト一の意...
ことは許されていない。例えそれが体内に埋め込まれてあった...
されればその者は面会が叶わない。
「それほど私に会いたいかね?」
チャ一ノレズは顔を上げた。何の気なしに言った言葉をこんな...
いなかった。
黙り込みつつもチャ一ノレズは困惑を露骨に表に出す。
マグ二一ト一は軽く笑い、立ち上がった。
「今日は私が運んでいこう」
向かい合わせに座っていた相手の隣まで来るとマグ二一ト一...
の体の下へ腕を差し込むと一気に持ち上げた。
足が萎えているとはいえ、チャ一ノレズの肉体そのものは決し...
はいない。むしろ足の力を補うべく、自然と鍛えられた上半身...
引けを取るものではない。
そのチャ一ノレズの身体をマグ二一ト一は老人ながら驚くべき...
「何を……!」
横抱きに抱き上げたまま、相手の耳元に囁きこむ。
「全力で抵抗してみるがいい」
何に、と問うより早くチャ一ノレズは唇を奪われる。まさに抵...
かつての親友の仕掛けた悪戯はそれだけではなかった。
不意に眩暈を感じた。急に抱き上げられたことで低血圧症状...
疑ったが、それが間違いであることにすぐ気付いた。
彼の全身は滾るように熱くなっていた。否、これは熱ではな...
極めて微量の鉄分が石慈界の帝王の意思によって暴れようとし...
感じた眩暈は老境に差し掛かった肉体のためではなく、今自...
いうおよそ信じがたい行為を平然としてのける、この古い友の...
(ヱリック!)
なす術もなく、ただ相手のシャツを掴む。
自分の肉体の中に張り巡らされた全ての毛細血管に至るまで...
皺の刻まれた、冷たい指先にまで熱が広がっていくのがまざま...
しかしチャ一ノレズの困惑は、マグ二一ト一のそうした行為よ...
いるということに対して向けられていた。
(ヱリック……!)
こんなにも深い口付けは女性とすら久しくしていなかった。...
知らぬ十代の若者達のように誰の目を憚ることもなく唇を重ね...
同士のように、深く。
そう思ったところでチャ一ノレズは急に自分達を見詰める者の...
驚愕に混乱したまま普段なら決してやらないことをした。
(やめてくれ、ヱリック! お願いだ、看守達が見ている!)
相手の心へ直接語りかけ、半ば強制的に返答を探ったのだ。...
だったが、返ってきた答えは
(君も見られると興奮する性質かね?)
という、微かな笑いを含んだものだった。
(あぁ――!)
思わずチャ一ノレズは瞼を閉じた。
この高鳴る鼓動はヱリックの支配する血の滾りのせいなのか...
動きからくるものなのか。
看守達は自分とマグ二一ト一の行為を何と思うことだろう。...
いいのに、心を探れば咄嗟のことで茫然としている彼ら看守は...
いるらしかった。
なんともお粗末な反応だったが、しかしどこかで彼らの愚鈍...
すらいたかもしれない。
抵抗してみろとヱリックは言った。確かにすぐ抵抗するべき...
対しては。なのにほんの一瞬でヱリックは自分を陥落させた。
やっと僅かばかり解放されたと思っても、わななく唇はなお...
驚きに見開かれた瞳と見交わすヱリックの優し気な眼差しが...
昔を思い起こさせた。
医師とボランティアの看護師という職務上の関係が親友に、...
変わった、あのときの喜びと幸福感が切なく胸を締め付ける。
まだ自分は彼を愛しているのだろうか、彼は自分を――?
まさかそんなことは有り得ないとチャ一ノレズは目を伏せる。...
そんな錯覚を抱くのは馬鹿げた行為だった。
にも拘らず、昂揚している自分がいる。
接吻そのものと、接吻の合間に頬を擽る吐息、ヱリックの唇...
陶然とさせた。
ヱリックの身体を抱き締めてしまわずに済んだのは、最後の...
感じ取っていたからに他ならない。
(もう充分だ、ヱリック。このゲームは君の勝利で終わった)
自らの敗北を宣言することにより、解放を請う。マグ二一ト...
血潮の高鳴りはチャ一ノレズの胸を苦しくさせた。
だが、それが果たして本当に単純な肉体的反応によるものだ...
白銀の髪と肌に深く刻まれた皺が工りックを老人らしく見せ...
灰色がかった青い瞳も強情そうな鼻の形も微かに笑みを浮かべ...
ほどにチャ一ノレズを魅了して止まない。
新雪のような純白の囚人服さえもが彼のために選ばれた特別...
昔、あの異国の地で彼に会い、抱いた感情が少しも損なわれ...
いたことを知ってチャ一ノレズは途惑う。
「さぁ、君の車だ」
ようやっとのことで車椅子へと身体を下ろされ、チャ一ノレズ...
「君がまだ充分に元気でいることを知って私は嬉しい」
まだチャ一ノレズから手を離さぬうちに白髪の男は上品な口調...
その先へとチャ一ノレズも目を遣り、愕然とする。
「――興奮したかね?」
囁いて顔を上げ、身体を離そうとしたマグ二一ト一の肩を思...
「ま、待って欲しい、ヱリック……」
既に老人である自分が同性からキスを受けた後、勃起して車...
見たら何と思うことだろう。監視カメラからも看守達の目から...
チャ一ノレズは懇願した。
「鎮めてくれ、君ならできる筈だ、頼む」
口早に囁いて、微かに震えながらそっと唇を彼の頬へと押し...
頬が小さく笑んだのをチャ一ノレズは確かに感じた。
すぐに体中の血の昂ぶりが収まっていく。
ヱリックと唇を重ねていたときには昂揚して、まるで宇宙に...
すら覚えたのに、今はもう普段と何の変わりもない、動かない...
しまった。
それが本来の自分なのだ。チャ一ノレズは僅かに肩を落とし、...
掴んだ。そこだけがまだ昂りを鎮めきれずにいる最後の箇所だ...
俯いた彼の剥き出しの項から頚動脈の辺りへとヱリックは肉...
視線を這わせたが、獲物がそれに気付いて震えだすよりは早く...
「迎えのロバがご到着だ」
檻の中のマイクに拾われない程度の小声で囁き、悪戯な色の...
皺を深めて密かに笑いかける。
チャ一ノレズは答えなかった。ただ複雑な思いを抱いたまま、...
すぐに看守の一人がチャ一ノレズの車椅子を受け取り外へ連れ...
プラスチックの警棒を手にしながらマグ二一ト一を取り囲む。
普段と違う行動を行ったのには裏があるのではないか、何か...
ないかと彼らは怯えているのだろう。
操ることのできる金属さえなければ石慈界の帝王マグ二一ト...
過ぎない。
万が一にも暴行など加えぬようにチャ一ノレズはそっと思念を...
恐怖と暴力の芽を探し、宥めておいた。
これで工りックは紳士的な取り調べだけで解放されることだ...
人心への介入という、自らが常に戒めることを容易く行って...
軽く首を振り、溜め息をつく。
そこへ、やや言いにくそうな表情で車椅子を押す看守が声を...
「その……ヱグゼビア教授。あなた方の関係は、もしかして――」
「ご覧の通り、昔からの友人だよ。私達は親友だった」
可能な限り淡々とチャ一ノレズは告げた。事実、この看守が心...
チャ一ノレズの表情からは全く窺うことのできない内心の動揺の...
だが無論ミュ一夕ントならぬ人間の身には読心術は使えまい...
チャ一ノレズの言葉を繰り返す。
「昔……?」
「かつて私は医師としてイスラヱノレへ赴任していた。彼はその...
活動を行っていた。そうして私達は知り合ったのだよ」
「ハッ、あのマグ二一ト一がボランティアですか。想像もつき...
鼻で笑う看守はもう、先程見た光景については忘れ去ったか...
の車椅子を押す。
チャ一ノレズの移動と共に可動式のプラスチックチューブが切...
曝露された孤独の中に閉じ込められる。
否、ヱリックをあの場所に置くことで孤独になるのはむしろ...
車椅子の向きを変える際に振り返る。
透明な監獄の向こうで囚人の眼差しは確かな光を持ってチャ...
(ヱリック……)
言い知れぬ不安と微かな期待と。
また自分がこの場所を訪れてしまうことを予感しつつも、チ...
知らなかったのだった。
自らが囚われ、操られてしまうことも、彼が脱獄を果たすこ...
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
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チェス盤を前に向かい合う。透明な強化プラスチックの監獄...
白い明かりで照らし出されている。
本来ならば心を読むことのできる相手と行うチェスなど無謀...
目の前にいる男の誠意をもってしか、このゲームは成立しな...
「読み違えたな。ここでキングを逃がしたのは良かったが、こ...
いたのを忘れていたのか?」
年を経た、白く節ばった指がクリスタルの駒を敵陣へ動かす。
相手側から軽く息を飲む気配がした。どうやら真実、手を読...
相手にしては珍しいことだ。
「……クイーンの動きを警戒しすぎたようだ」
「脅懦はときに人の判断を狂わせる。今回は失敗だったな」
透明なプラスチックの監獄の中で二人はチェスを続けている...
のできる男の側ではなく、ただ一人この特別な監獄へ囚われて...
マグ二一ト一ことヱリック・マグナス・レ一ンシャ一の方だっ...
真剣な眼差しでクリスタルのチェス盤を見詰め、次の手を考...
フランシス・ヱグゼビア、「恵まれι子らの学園」の創設者にし...
プ口フェッサー×と呼ばれる男である。
溜息をついたチャ一ノレズは視線をチェス盤から外さないまま...
「手厳しいな。私が隙を作るときを待ち構えて容赦なく攻めて...
にしてくれないか?」
生真面目な顔を僅かにしかめながらも視線は次の手を探して...
もの定石をさらい、敵を降伏させる最良の手を選んでいるのだ...
無論マグ二一ト一の側もそれは読んでいる。どんな手が来よ...
相手の目が盤の上を、駒の上を行く度次に彼が打つだろう位...
チャ一ノレズの側でもそれは感じ取れたのだろう、しばらく熟...
「……どうも分が悪そうだ。今日はここまでにしていいだろうか...
今日のゲームにしても前回の面会からの続きだった。始まる...
劣勢だったのだが。
「構わん。だが、あまり頻繁にここへ面会に来ると厄介な連中...
「忠告は拝聴しておこう。だが、私は君が言うほどに心配はし...
軽く笑ってチャ一ノレズは上半身の力だけで椅子の上にある自...
透明な強化プラスチックの檻の向こうには看守達が彼らを監...
チャ一ノレズがそこへ合図を送り、自分がもう退出すると意思表...
彼の車椅子を押して出て行くことになっていた。
ふとマグ二一ト一がチャ一ノレズの萎えた足に目を留めた。
「その肢に金属を仕込めばいい。私がお前を歩かせてやるのに」
「残念ながら、その申し出は丁重にお断りするよ」
手を上げようとしていたチャ一ノレズはその言葉に苦笑し、再...
「そんなことをしたら、君に面会できなくなってしまうしね」
この監獄へはどんな些細な量であっても、マグ二一ト一の意...
ことは許されていない。例えそれが体内に埋め込まれてあった...
されればその者は面会が叶わない。
「それほど私に会いたいかね?」
チャ一ノレズは顔を上げた。何の気なしに言った言葉をこんな...
いなかった。
黙り込みつつもチャ一ノレズは困惑を露骨に表に出す。
マグ二一ト一は軽く笑い、立ち上がった。
「今日は私が運んでいこう」
向かい合わせに座っていた相手の隣まで来るとマグ二一ト一...
の体の下へ腕を差し込むと一気に持ち上げた。
足が萎えているとはいえ、チャ一ノレズの肉体そのものは決し...
はいない。むしろ足の力を補うべく、自然と鍛えられた上半身...
引けを取るものではない。
そのチャ一ノレズの身体をマグ二一ト一は老人ながら驚くべき...
「何を……!」
横抱きに抱き上げたまま、相手の耳元に囁きこむ。
「全力で抵抗してみるがいい」
何に、と問うより早くチャ一ノレズは唇を奪われる。まさに抵...
かつての親友の仕掛けた悪戯はそれだけではなかった。
不意に眩暈を感じた。急に抱き上げられたことで低血圧症状...
疑ったが、それが間違いであることにすぐ気付いた。
彼の全身は滾るように熱くなっていた。否、これは熱ではな...
極めて微量の鉄分が石慈界の帝王の意思によって暴れようとし...
感じた眩暈は老境に差し掛かった肉体のためではなく、今自...
いうおよそ信じがたい行為を平然としてのける、この古い友の...
(ヱリック!)
なす術もなく、ただ相手のシャツを掴む。
自分の肉体の中に張り巡らされた全ての毛細血管に至るまで...
皺の刻まれた、冷たい指先にまで熱が広がっていくのがまざま...
しかしチャ一ノレズの困惑は、マグ二一ト一のそうした行為よ...
いるということに対して向けられていた。
(ヱリック……!)
こんなにも深い口付けは女性とすら久しくしていなかった。...
知らぬ十代の若者達のように誰の目を憚ることもなく唇を重ね...
同士のように、深く。
そう思ったところでチャ一ノレズは急に自分達を見詰める者の...
驚愕に混乱したまま普段なら決してやらないことをした。
(やめてくれ、ヱリック! お願いだ、看守達が見ている!)
相手の心へ直接語りかけ、半ば強制的に返答を探ったのだ。...
だったが、返ってきた答えは
(君も見られると興奮する性質かね?)
という、微かな笑いを含んだものだった。
(あぁ――!)
思わずチャ一ノレズは瞼を閉じた。
この高鳴る鼓動はヱリックの支配する血の滾りのせいなのか...
動きからくるものなのか。
看守達は自分とマグ二一ト一の行為を何と思うことだろう。...
いいのに、心を探れば咄嗟のことで茫然としている彼ら看守は...
いるらしかった。
なんともお粗末な反応だったが、しかしどこかで彼らの愚鈍...
すらいたかもしれない。
抵抗してみろとヱリックは言った。確かにすぐ抵抗するべき...
対しては。なのにほんの一瞬でヱリックは自分を陥落させた。
やっと僅かばかり解放されたと思っても、わななく唇はなお...
驚きに見開かれた瞳と見交わすヱリックの優し気な眼差しが...
昔を思い起こさせた。
医師とボランティアの看護師という職務上の関係が親友に、...
変わった、あのときの喜びと幸福感が切なく胸を締め付ける。
まだ自分は彼を愛しているのだろうか、彼は自分を――?
まさかそんなことは有り得ないとチャ一ノレズは目を伏せる。...
そんな錯覚を抱くのは馬鹿げた行為だった。
にも拘らず、昂揚している自分がいる。
接吻そのものと、接吻の合間に頬を擽る吐息、ヱリックの唇...
陶然とさせた。
ヱリックの身体を抱き締めてしまわずに済んだのは、最後の...
感じ取っていたからに他ならない。
(もう充分だ、ヱリック。このゲームは君の勝利で終わった)
自らの敗北を宣言することにより、解放を請う。マグ二一ト...
血潮の高鳴りはチャ一ノレズの胸を苦しくさせた。
だが、それが果たして本当に単純な肉体的反応によるものだ...
白銀の髪と肌に深く刻まれた皺が工りックを老人らしく見せ...
灰色がかった青い瞳も強情そうな鼻の形も微かに笑みを浮かべ...
ほどにチャ一ノレズを魅了して止まない。
新雪のような純白の囚人服さえもが彼のために選ばれた特別...
昔、あの異国の地で彼に会い、抱いた感情が少しも損なわれ...
いたことを知ってチャ一ノレズは途惑う。
「さぁ、君の車だ」
ようやっとのことで車椅子へと身体を下ろされ、チャ一ノレズ...
「君がまだ充分に元気でいることを知って私は嬉しい」
まだチャ一ノレズから手を離さぬうちに白髪の男は上品な口調...
その先へとチャ一ノレズも目を遣り、愕然とする。
「――興奮したかね?」
囁いて顔を上げ、身体を離そうとしたマグ二一ト一の肩を思...
「ま、待って欲しい、ヱリック……」
既に老人である自分が同性からキスを受けた後、勃起して車...
見たら何と思うことだろう。監視カメラからも看守達の目から...
チャ一ノレズは懇願した。
「鎮めてくれ、君ならできる筈だ、頼む」
口早に囁いて、微かに震えながらそっと唇を彼の頬へと押し...
頬が小さく笑んだのをチャ一ノレズは確かに感じた。
すぐに体中の血の昂ぶりが収まっていく。
ヱリックと唇を重ねていたときには昂揚して、まるで宇宙に...
すら覚えたのに、今はもう普段と何の変わりもない、動かない...
しまった。
それが本来の自分なのだ。チャ一ノレズは僅かに肩を落とし、...
掴んだ。そこだけがまだ昂りを鎮めきれずにいる最後の箇所だ...
俯いた彼の剥き出しの項から頚動脈の辺りへとヱリックは肉...
視線を這わせたが、獲物がそれに気付いて震えだすよりは早く...
「迎えのロバがご到着だ」
檻の中のマイクに拾われない程度の小声で囁き、悪戯な色の...
皺を深めて密かに笑いかける。
チャ一ノレズは答えなかった。ただ複雑な思いを抱いたまま、...
すぐに看守の一人がチャ一ノレズの車椅子を受け取り外へ連れ...
プラスチックの警棒を手にしながらマグ二一ト一を取り囲む。
普段と違う行動を行ったのには裏があるのではないか、何か...
ないかと彼らは怯えているのだろう。
操ることのできる金属さえなければ石慈界の帝王マグ二一ト...
過ぎない。
万が一にも暴行など加えぬようにチャ一ノレズはそっと思念を...
恐怖と暴力の芽を探し、宥めておいた。
これで工りックは紳士的な取り調べだけで解放されることだ...
人心への介入という、自らが常に戒めることを容易く行って...
軽く首を振り、溜め息をつく。
そこへ、やや言いにくそうな表情で車椅子を押す看守が声を...
「その……ヱグゼビア教授。あなた方の関係は、もしかして――」
「ご覧の通り、昔からの友人だよ。私達は親友だった」
可能な限り淡々とチャ一ノレズは告げた。事実、この看守が心...
チャ一ノレズの表情からは全く窺うことのできない内心の動揺の...
だが無論ミュ一夕ントならぬ人間の身には読心術は使えまい...
チャ一ノレズの言葉を繰り返す。
「昔……?」
「かつて私は医師としてイスラヱノレへ赴任していた。彼はその...
活動を行っていた。そうして私達は知り合ったのだよ」
「ハッ、あのマグ二一ト一がボランティアですか。想像もつき...
鼻で笑う看守はもう、先程見た光景については忘れ去ったか...
の車椅子を押す。
チャ一ノレズの移動と共に可動式のプラスチックチューブが切...
曝露された孤独の中に閉じ込められる。
否、ヱリックをあの場所に置くことで孤独になるのはむしろ...
車椅子の向きを変える際に振り返る。
透明な監獄の向こうで囚人の眼差しは確かな光を持ってチャ...
(ヱリック……)
言い知れぬ不安と微かな期待と。
また自分がこの場所を訪れてしまうことを予感しつつも、チ...
知らなかったのだった。
自らが囚われ、操られてしまうことも、彼が脱獄を果たすこ...
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シリーズものインデックス2
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