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#title(ラルアル) [#mba961ce]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
| 悪魔土成ドラキュ...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| ラルフ自...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
◆
その晩、ラルフは荒れた。
普段はほとんど足をむけない遠い街まで行き、最初に目につ...
に呑んだ。あまりの勢いに、店の者が「そろそろやめたほうが...
別の店に入ってまた呑み続けた。
呑めば呑むほど、酔いの霧がかかってくる頭の中に、アルカード...
でしなやかに弧を描いた白い肢体、涙を浮かべて哀願する瞳、...
てて凍りついていた顔。
──魔王ドラキュラの子、闇の血を継いだ、実の息子。
──ご自分の意志のみで行動できる時期はもはや過ぎ去りまし...
──ベルモンド家全体と、それによって生活しているすべての生命...
「くそっ」
酒臭い息とともに吐き出して、もう一杯、と手をあげようと...
いの席に腰をおろしてきた。
「どうしたの、旦那。ずいぶんご機嫌ななめみたいじゃない。...
か?」
あっちへ行け、と怒鳴りかけて、ふと目がとまった。
女の髪は、おそらく脱色したものなのだろうが、うす暗い酒...
ドの、月光のような銀の髪にはとてもかなわなかったが、波打...
深いところを刺激した。
「決まりみたいね」
客の微妙な変化をすばやく読んで、女は意気揚々と言った。
「それじゃ、とりあえず半銀貨。泊まりなら、銀一枚ってこと...
ラルフは黙ってコインを滑らせた。女は慣れた手つきで金をドレ...
って、来て、と手招きした。
「二階に部屋があるの。今夜はあんたが最初だから、ゆっくり...
女を抱くことは、これまでラルフの日常ではあまり優先順位の高...
今より若いころはそれよりも鞭術の腕を磨くほうに忙しかっ...
もとで荘園主としての仕事に精を出さざるを得なかったので、...
得なかった。
べつだん女が嫌いなわけでもなく、寝ればそれなりに楽しい...
た。あとから文を送ってきたり、使いを寄こしてまた来てくれ...
使うのは、正直いって面倒だった。それよりも一人で鍛錬し、...
きる、自分はそういう人間だし、それ以外に本当の興味を持つ...
「誰か、ほかの人のことを考えてたでしょ。あんた」
終わった後、髪を直しながら女がそう言ったときはいきなり...
「なぜ判る」
「そりゃ、わかるわよ。あんた、ずっと上の空だったもん、や...
女はあっけらかんと言って、けらけら笑った。
「別に気にしなくていいのよ。そういう人、わりと多いから。...
中に、別の女の名前呼んだりしなかったもんね。仕事とはいえ...
んよ」
「……すまん」
「だから、謝ることないってば。それよりねえ、その人、きれ...
て人」
興味深そうに身を乗りだしてくる。汗にぬれた乳房の谷間に...
「ああ」
寝乱れた脱色の金髪を眺めながら、ラルフは呟いた。「とても、...
「そう、それじゃ、こんなところにいないで早くその人のとこ...
しちゃったとか? それとも、お家の事情でその人とはいっし...
の家の人みたいだし」
「両方、だろうな」
アルカードの傷ついた顔を思いうかべる。あれはどう考えても、...
それに、『お家の事情』などという言葉ではとても言い表せ...
って否応なく思い出させられてしまった。
そして何より決定的なのは、あの淫夢によって呼びさまされ...
これまで見ないように、気づかないようにと蓋をし続けてき...
がら消えていった。意趣返しとしては最高だろう。
俺は、──アルカードが欲しいと思っている。
それもただ友人としてそばに置くのではなく、この腕に抱き...
て、そのすべてを自分のものにしたいと願っている。
むろん、許されないことだ。キリスト教の道徳律においては...
端者扱いで火に投げ込まれてもおかしくない。ラルフにしても、相...
感じるだけだったろう。
だが、ひとたびあの美しい月のような姿を思い描いただけで...
できない。
アルカードはどう思うだろう、とラルフは思った。これまで、そんな...
女との行為は楽しくはあったがただそれだけで、そこに欲望...
だが、アルカードをシーツの上の女に置き換えてみただけで、また...
そういう自分をアルカードが知ったら、彼はどうするだろう。軽...
蒼氷の瞳が、嫌悪をもってそらされるところを思い描くと、果...
「ずいぶん悩んでるみたいね」
ベッドに腰かけて脚をぶらぶらさせながら、女は言った。
「でも、あんたはとにかく好きなんでしょ、その人のこと? ...
「ああ。好きだ」
と即答して、いささか気弱くなり、
「……少なくとも、俺は、だが。相手のほうは、今ひとつわから...
「じゃあ、とにかく確かめてみるしかないんじゃない?」
しごく当然だという顔で女は指を振ってみせた。
「それで、両思いだってわかったら、とりあえず攫っちゃえば...
らい、うーんと遠くへね。だいたいロミオとジュリエットなんて今どき...
あるでしょ」
下の酒場で飲んだくれてる詩人崩れから聞いただけなんだけ...
「でもまあ、あんたもロミオって柄じゃないわよね、その面構えだ...
「放っとけ」
むくれた顔のラルフにくすくす笑いで返して、で、と女は言った...
「どうする? 泊まってくの? 戻ってあげなさいなんて言っ...
さっきもらった分だけでいけるけど」
「いや、いい。帰る」
ラルフは立ちあがって、服を着た。
「金はそのまま取っておいてくれ。話を聞いてもらった代金だ...
「そ。ありがと」
女は自分もドレスを着込むと、ラルフのそばに立って、そっと頬...
「はい、これはおまけ。あんた、いい人みたいだから。その人...
のお祈りじゃ、ご利益ないかもしれないけど」
「そんなことはないだろう。感謝する」
扉を閉めるとき、女はベッドの上で小さく手を振った。まが...
輝いてみえた。
屋敷に帰りついたときにはもう深夜になっていた。
門番をたたき起こして鍵を開けさせ、厩へ馬を連れていく。...
ふらふらした。
明日は二日酔いだろうな、と思いながらぶらぶらと中庭を横...
ないですむ口実になるかもしれない。意気地がないと自分でも...
アルカードと会って平静でいられる自信がまだラルフにはなかった。
(好きなんでしょ。その人のこと)
(ああ。好きだ)
何のためらいもなく、そう答えた。
迷いもなければ嘘もない。自分はアルカードが好きだ。
おそらくは、ドラキュラ城で初めて出会ったときから、彼の虜に...
俺はアルカードが好きだ、愛している、これまでその言葉の意味...
は判る。彼の目を見るたび、唇がほほえむたび、胸を充たした...
び、疼くようにわき上がってくる熱も。
アルカードに触れたい、と痛切に思った。
抱きしめ、その月光のような髪に指を通して、俺はおまえが...
い。だが、その勇気が出ない。なにしろ彼が、その言葉をどう...
しかし、同じ屋敷にいるかぎり、いつまでもアルカードと会わず...
会わずにいれば、数日保たずに自分のほうが我慢できなくなる...
とはいえ、今の気分のままで何日も何週間も過ごせというの...
(……やれやれ)
熱を持った頭を冷やすために、庭の一隅にある井戸に立ち寄...
水をくみ上げて、ざっと頭から被る。
初夏とはいえ、水は冷たい。大型犬のようにぶるっと身震い...
被り、さらにもう一杯汲んで、熱い額を水に浸した。ひやりと...
させてぞくりとする。
「──ラルフ……?」
幻聴かと思った。
ラルフはざっと水から頭をあげてあたりを見回した。
夜闇に沈む屋敷のほうから、幻のように白い姿が走ってくる...
切った細いからだが、ぶつかるような勢いで胸に飛びこんでき...
「アルカード」
しゃにむにしがみついてくるアルカードに、昼間のことは一瞬忘...
「いったいどうしたんだ、こんなところで。遅いのに、まだ寝...
えまで濡れるぞ、聞いてるか、アルカード」
「私は、何かしたか、ラルフ」
ようやく顔をあげたアルカードの顔には必死の色があった。
ラルフは言葉を失った。
「私が何か怒らせるようなことをしたなら、謝る。謝るから、...
自分まで濡れるのを気にする様子もなく、アルカードは懸命に両...
ラルフはそこに、暗い森で迷いつづける子供の顔がふたたび覗い...
見失ってしまうのかと、絶望しかけている幼い子供。
「私には世間並みのことは何もわからない。私が悪かったなら...
言葉をとぎらせて、肩を震わせながらアルカードはうなだれた。
とぎれがちなかぼそい声が、かすかに、ラルフの耳朶に届いた。
「……どうか、私から、顔を背けないでくれ……」
ラルフはふいに、ありったけの力をこめてアルカードを抱きしめた。
「ラ、ラルフ?」
いきなり抱きしめられたアルカードが驚いた声を出す。
「おまえは何も悪くない、アルカード」
絞り出すような声でラルフは言った。
「悪いのは、俺だ。昼間は、悪かった。謝らなければならない...
ことをしたな」
「──ラルフ……」
「悪いのは、俺だよ」
もう一度言って、ラルフはじっとやわらかな銀髪に頬をあてて目...
欠けていたものが、静かに充たされていくようだった。たっ...
餓えていたかをラルフはあらためて思い知った。
彼が欲しい、と痛切に感じた。アルカードが欲しい。腕の中で震...
アルカードのものであるすべてを手に入れたい。
その代償になら、あらゆるものを投げだしてもいいと思った...
も、心も、魂の最後のひとかけらまで、全部。
「明日かあさってあたり、しばらく二人で遠乗りに行かないか...
ようやく腕をゆるめて、ラルフは胸の中のアルカードに笑いかけた。
「遠乗り?」
やっと震えのおさまったアルカードは、眩しげな顔でラルフを見あげ...
「そうだ。おまえだって、たまには外の空気が吸いたいだろう...
おくから、四、五日、いっしょに遠出しよう。いい場所を知っ...
羽根を伸ばそう、いいか?」
大きく目を見開いて聞いていたアルカードの唇に、やがて安堵し...
「いい考えだと思う」
そっとアルカードは答えた。
「ぜひ行きたい、ラルフ。楽しみにしている」
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
…はみだしてばっかりorz
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◆
その晩、ラルフは荒れた。
普段はほとんど足をむけない遠い街まで行き、最初に目につ...
に呑んだ。あまりの勢いに、店の者が「そろそろやめたほうが...
別の店に入ってまた呑み続けた。
呑めば呑むほど、酔いの霧がかかってくる頭の中に、アルカード...
でしなやかに弧を描いた白い肢体、涙を浮かべて哀願する瞳、...
てて凍りついていた顔。
──魔王ドラキュラの子、闇の血を継いだ、実の息子。
──ご自分の意志のみで行動できる時期はもはや過ぎ去りまし...
──ベルモンド家全体と、それによって生活しているすべての生命...
「くそっ」
酒臭い息とともに吐き出して、もう一杯、と手をあげようと...
いの席に腰をおろしてきた。
「どうしたの、旦那。ずいぶんご機嫌ななめみたいじゃない。...
か?」
あっちへ行け、と怒鳴りかけて、ふと目がとまった。
女の髪は、おそらく脱色したものなのだろうが、うす暗い酒...
ドの、月光のような銀の髪にはとてもかなわなかったが、波打...
深いところを刺激した。
「決まりみたいね」
客の微妙な変化をすばやく読んで、女は意気揚々と言った。
「それじゃ、とりあえず半銀貨。泊まりなら、銀一枚ってこと...
ラルフは黙ってコインを滑らせた。女は慣れた手つきで金をドレ...
って、来て、と手招きした。
「二階に部屋があるの。今夜はあんたが最初だから、ゆっくり...
女を抱くことは、これまでラルフの日常ではあまり優先順位の高...
今より若いころはそれよりも鞭術の腕を磨くほうに忙しかっ...
もとで荘園主としての仕事に精を出さざるを得なかったので、...
得なかった。
べつだん女が嫌いなわけでもなく、寝ればそれなりに楽しい...
た。あとから文を送ってきたり、使いを寄こしてまた来てくれ...
使うのは、正直いって面倒だった。それよりも一人で鍛錬し、...
きる、自分はそういう人間だし、それ以外に本当の興味を持つ...
「誰か、ほかの人のことを考えてたでしょ。あんた」
終わった後、髪を直しながら女がそう言ったときはいきなり...
「なぜ判る」
「そりゃ、わかるわよ。あんた、ずっと上の空だったもん、や...
女はあっけらかんと言って、けらけら笑った。
「別に気にしなくていいのよ。そういう人、わりと多いから。...
中に、別の女の名前呼んだりしなかったもんね。仕事とはいえ...
んよ」
「……すまん」
「だから、謝ることないってば。それよりねえ、その人、きれ...
て人」
興味深そうに身を乗りだしてくる。汗にぬれた乳房の谷間に...
「ああ」
寝乱れた脱色の金髪を眺めながら、ラルフは呟いた。「とても、...
「そう、それじゃ、こんなところにいないで早くその人のとこ...
しちゃったとか? それとも、お家の事情でその人とはいっし...
の家の人みたいだし」
「両方、だろうな」
アルカードの傷ついた顔を思いうかべる。あれはどう考えても、...
それに、『お家の事情』などという言葉ではとても言い表せ...
って否応なく思い出させられてしまった。
そして何より決定的なのは、あの淫夢によって呼びさまされ...
これまで見ないように、気づかないようにと蓋をし続けてき...
がら消えていった。意趣返しとしては最高だろう。
俺は、──アルカードが欲しいと思っている。
それもただ友人としてそばに置くのではなく、この腕に抱き...
て、そのすべてを自分のものにしたいと願っている。
むろん、許されないことだ。キリスト教の道徳律においては...
端者扱いで火に投げ込まれてもおかしくない。ラルフにしても、相...
感じるだけだったろう。
だが、ひとたびあの美しい月のような姿を思い描いただけで...
できない。
アルカードはどう思うだろう、とラルフは思った。これまで、そんな...
女との行為は楽しくはあったがただそれだけで、そこに欲望...
だが、アルカードをシーツの上の女に置き換えてみただけで、また...
そういう自分をアルカードが知ったら、彼はどうするだろう。軽...
蒼氷の瞳が、嫌悪をもってそらされるところを思い描くと、果...
「ずいぶん悩んでるみたいね」
ベッドに腰かけて脚をぶらぶらさせながら、女は言った。
「でも、あんたはとにかく好きなんでしょ、その人のこと? ...
「ああ。好きだ」
と即答して、いささか気弱くなり、
「……少なくとも、俺は、だが。相手のほうは、今ひとつわから...
「じゃあ、とにかく確かめてみるしかないんじゃない?」
しごく当然だという顔で女は指を振ってみせた。
「それで、両思いだってわかったら、とりあえず攫っちゃえば...
らい、うーんと遠くへね。だいたいロミオとジュリエットなんて今どき...
あるでしょ」
下の酒場で飲んだくれてる詩人崩れから聞いただけなんだけ...
「でもまあ、あんたもロミオって柄じゃないわよね、その面構えだ...
「放っとけ」
むくれた顔のラルフにくすくす笑いで返して、で、と女は言った...
「どうする? 泊まってくの? 戻ってあげなさいなんて言っ...
さっきもらった分だけでいけるけど」
「いや、いい。帰る」
ラルフは立ちあがって、服を着た。
「金はそのまま取っておいてくれ。話を聞いてもらった代金だ...
「そ。ありがと」
女は自分もドレスを着込むと、ラルフのそばに立って、そっと頬...
「はい、これはおまけ。あんた、いい人みたいだから。その人...
のお祈りじゃ、ご利益ないかもしれないけど」
「そんなことはないだろう。感謝する」
扉を閉めるとき、女はベッドの上で小さく手を振った。まが...
輝いてみえた。
屋敷に帰りついたときにはもう深夜になっていた。
門番をたたき起こして鍵を開けさせ、厩へ馬を連れていく。...
ふらふらした。
明日は二日酔いだろうな、と思いながらぶらぶらと中庭を横...
ないですむ口実になるかもしれない。意気地がないと自分でも...
アルカードと会って平静でいられる自信がまだラルフにはなかった。
(好きなんでしょ。その人のこと)
(ああ。好きだ)
何のためらいもなく、そう答えた。
迷いもなければ嘘もない。自分はアルカードが好きだ。
おそらくは、ドラキュラ城で初めて出会ったときから、彼の虜に...
俺はアルカードが好きだ、愛している、これまでその言葉の意味...
は判る。彼の目を見るたび、唇がほほえむたび、胸を充たした...
び、疼くようにわき上がってくる熱も。
アルカードに触れたい、と痛切に思った。
抱きしめ、その月光のような髪に指を通して、俺はおまえが...
い。だが、その勇気が出ない。なにしろ彼が、その言葉をどう...
しかし、同じ屋敷にいるかぎり、いつまでもアルカードと会わず...
会わずにいれば、数日保たずに自分のほうが我慢できなくなる...
とはいえ、今の気分のままで何日も何週間も過ごせというの...
(……やれやれ)
熱を持った頭を冷やすために、庭の一隅にある井戸に立ち寄...
水をくみ上げて、ざっと頭から被る。
初夏とはいえ、水は冷たい。大型犬のようにぶるっと身震い...
被り、さらにもう一杯汲んで、熱い額を水に浸した。ひやりと...
させてぞくりとする。
「──ラルフ……?」
幻聴かと思った。
ラルフはざっと水から頭をあげてあたりを見回した。
夜闇に沈む屋敷のほうから、幻のように白い姿が走ってくる...
切った細いからだが、ぶつかるような勢いで胸に飛びこんでき...
「アルカード」
しゃにむにしがみついてくるアルカードに、昼間のことは一瞬忘...
「いったいどうしたんだ、こんなところで。遅いのに、まだ寝...
えまで濡れるぞ、聞いてるか、アルカード」
「私は、何かしたか、ラルフ」
ようやく顔をあげたアルカードの顔には必死の色があった。
ラルフは言葉を失った。
「私が何か怒らせるようなことをしたなら、謝る。謝るから、...
自分まで濡れるのを気にする様子もなく、アルカードは懸命に両...
ラルフはそこに、暗い森で迷いつづける子供の顔がふたたび覗い...
見失ってしまうのかと、絶望しかけている幼い子供。
「私には世間並みのことは何もわからない。私が悪かったなら...
言葉をとぎらせて、肩を震わせながらアルカードはうなだれた。
とぎれがちなかぼそい声が、かすかに、ラルフの耳朶に届いた。
「……どうか、私から、顔を背けないでくれ……」
ラルフはふいに、ありったけの力をこめてアルカードを抱きしめた。
「ラ、ラルフ?」
いきなり抱きしめられたアルカードが驚いた声を出す。
「おまえは何も悪くない、アルカード」
絞り出すような声でラルフは言った。
「悪いのは、俺だ。昼間は、悪かった。謝らなければならない...
ことをしたな」
「──ラルフ……」
「悪いのは、俺だよ」
もう一度言って、ラルフはじっとやわらかな銀髪に頬をあてて目...
欠けていたものが、静かに充たされていくようだった。たっ...
餓えていたかをラルフはあらためて思い知った。
彼が欲しい、と痛切に感じた。アルカードが欲しい。腕の中で震...
アルカードのものであるすべてを手に入れたい。
その代償になら、あらゆるものを投げだしてもいいと思った...
も、心も、魂の最後のひとかけらまで、全部。
「明日かあさってあたり、しばらく二人で遠乗りに行かないか...
ようやく腕をゆるめて、ラルフは胸の中のアルカードに笑いかけた。
「遠乗り?」
やっと震えのおさまったアルカードは、眩しげな顔でラルフを見あげ...
「そうだ。おまえだって、たまには外の空気が吸いたいだろう...
おくから、四、五日、いっしょに遠出しよう。いい場所を知っ...
羽根を伸ばそう、いいか?」
大きく目を見開いて聞いていたアルカードの唇に、やがて安堵し...
「いい考えだと思う」
そっとアルカードは答えた。
「ぜひ行きたい、ラルフ。楽しみにしている」
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