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#title(R.S.3_LxM 16) [#bd4511f9] 玉座には、誰もいなかった。 「行くのですか?」 扉の付近で声がする。 ミカエルは振り返ることなく、薄く笑った。 背後からまわされる冷たい腕。 首筋に感じる息。 「好きになさるがいい。」 目を閉じて答える。 できる限り、冷たく。 髪を払い、うなじを露にする。 そう・・・咬むのなら今のうちだと言うように。 少し俯き、より咬みやすいであろう姿勢をとる。 「・・・行くがいい。」 吸血鬼というよりは、伯爵として。 人に魅せられた、滑稽な者として。 絞り出すような、その声で。 「太陽の王となる貴方へ、一つだけ言葉を贈ろう。」 振り向いたその目を、見つめながら。 「太陽の光は強すぎて、時に暗い影を生み出すだろう。」 ミカエルがゆっくりと頷き、そして微笑む。 もう、何も話すことは無かった。 心からの感謝を込め一礼すると、彼は城を出た。 その姿を窓から眺める。 馬車に乗り、駆けて行く。 見えなくなった時、伯爵はカーテンを閉めた。 もう、彼は帰らない。 玉座にもたれるように座り、上を向く。 固く閉ざしたその目は、溢れそうになる何かを堪えていた。 #comment
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#title(R.S.3_LxM 16) [#bd4511f9] 玉座には、誰もいなかった。 「行くのですか?」 扉の付近で声がする。 ミカエルは振り返ることなく、薄く笑った。 背後からまわされる冷たい腕。 首筋に感じる息。 「好きになさるがいい。」 目を閉じて答える。 できる限り、冷たく。 髪を払い、うなじを露にする。 そう・・・咬むのなら今のうちだと言うように。 少し俯き、より咬みやすいであろう姿勢をとる。 「・・・行くがいい。」 吸血鬼というよりは、伯爵として。 人に魅せられた、滑稽な者として。 絞り出すような、その声で。 「太陽の王となる貴方へ、一つだけ言葉を贈ろう。」 振り向いたその目を、見つめながら。 「太陽の光は強すぎて、時に暗い影を生み出すだろう。」 ミカエルがゆっくりと頷き、そして微笑む。 もう、何も話すことは無かった。 心からの感謝を込め一礼すると、彼は城を出た。 その姿を窓から眺める。 馬車に乗り、駆けて行く。 見えなくなった時、伯爵はカーテンを閉めた。 もう、彼は帰らない。 玉座にもたれるように座り、上を向く。 固く閉ざしたその目は、溢れそうになる何かを堪えていた。 #comment
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