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#title(How did boys refuse the sun? Ⅲ) >>40参照ください。 ※Ⅳで終わりです。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 思い当たらないでない。一昨日のこと。くだんの校舎裏に、シャ一口ックは倦ねもせず力一ノレを伴ってくれた。だから彼は少年に宝を持参した。 ほら、きみがいる。祖母の絵本を、力一ノレがシャ一口ックをグィネビア姫と見違えたことを、指し示して見せた。 『…円卓の騎士じゃなくて?』『いやか?』『姫って、おんなじゃないか。』おんなだけど、同じようにきれいだぞきみは、シャ一口ック。と言えれば良かったが、さすがに気恥ずかしくて力一ノレは薄笑いでごまかした。 その際、力一ノレはシャ一口ックの背後から覗き込むようにして、身体を密着させた。本ならなんでも確かめずにいないシャ一口ックはしばらくページを繰るのに没頭したため、当然力一ノレの戯言にはそれ以上つきあう気もなかった。 『…力一ノレ。』捲ろうとしていた右手をページ角へ張り付けたまま、ふとシャ一口ックが呼ぶ。『ん?』『…力一ノレ・パワ一ヌ゙。』『聞こえたぜ?』なんだよ、と脇へ座り直した彼を見ず、シャ一口ックは強張った横顔のまま続ける。 『あたっていた。』『え?』『あたっていたんだ、君が。』『なんだ?』そこでようやくシャ一口ックは首を捻って横を向いた。 言いかけるのに開いた口はまた噤み、思い直すことがあったと座っていたポジションから腰を浮かせ、半身ほど後じさる。 『ぼくらの機能がそうなることは知っている、健康なら睡眠中にも。ただ力一ノレ、君の感覚神経は著しく間違っている。認識対象物や誘引契機といったものが何もないのに。医者じゃなくても早い時期の通院を勧めるね。』 幸い、シャ一口ックは咎めようとしているわけではないらしかった。そして何より力一ノレを安心させたのは、彼が決して羞恥の偽装としての沈着ないつもの口調で嗜めているのではなく、心から力一ノレの身を案じての疑念がその声音から読み取れることだった。 『……すまない。』『別に謝る必要はない。』『いや、謝らなくちゃ。』 アーサー王の冒険は今はふさわしくなかろうと、シャ一口ックは本を閉じて傍らにおき、力一ノレの次の告白を待ってやった。 『おれ、こうしてきみといると、しょっちゅうこうなってる。理由はちゃんとある。』 真顔のシャ一口ックはおそらくおのれの耳を疑っていたのだと思う。 『これが続くと水泳には良くないんだってさ。それを…もしきみがその、確かめてくれるんなら…おれ、嬉しいかもな。』 年少者はおもむろに立ち上がると、脱いでいた靴下と靴を小脇に抱え、裸足のまま丘を下りていった、力一ノレをその場へおきざりに。 * 「別にぼくは見るのは構わない。ただその場合、のちのち発覚していわゆる少年法やらああいった不愉快な事態にならないか、という危惧も排除しきれない。そこでギルに審問官になってもらったというわけ。」 「パワ一ヌ゙君、そんなに恐縮することはない。シャ一口も言うように、君を責めているのではないのだから。」 責められ、このひとでなし、そう直裁に詰られたほうがむしろ良かった気がする。 自分の迂闊さは知っていたがここまでとは、力一ノレは床に落としたままの視線を上げることができない。 「…思うに力一ノレは今が一番ホルモン分泌の活発な時期にあって、活性は思考力にも影響を及ぼしているんだろうし、いずれ成長がどうコントロールしていくのか、その経過を知るうえで面白い体験と思う、見ることはね。 別にぼくは性的兆候を軽蔑しない。それは衝動を悪用し金儲けに繋げずにいない商業主義に向けられるべきさ。」 「…シャ一口、外にでていなさい。」「さっきも言ったろ?ギル、ぼくは…」 「いいから外へ行くんだ、いい子だから。そうすれば欲しがっていたバレンボイム指揮するバイオリンコンチェルトの盤を進呈してもいい。」 グロウサムの声は静かだが、有無を言わさぬ響きがある。 しかしシャ一口ックは『いい子』呼ばわりされる子供扱いが一番業腹だ。 「…そんな扱いピョートルへの冒涜だ。…言ったはずだよ、あのレコードはいずれチェスに勝ってぼくが正式なオーナーになるんだもの。」 対等に話しているように見せかけ、やはり実質は一日の長がまさっている。 シャ一口ックはそれ以上反論せず少しばかり口を尖らせてみせたが、年長の友人に不承不承下る体で部屋から退出した。 「賢すぎるのが玉に瑕だ。パワ一ヌ゙君、落ち着いたかね?」 「力一ノレでいいです。誰のことだって思ってた。」 「では力一ノレ。あの子に顔向けできないなぞとは考えていまいな?」 「おれはそんなに馬鹿に見えますか?」 おや、運動部の、中でも優秀な生徒中に残念だが時折見られる軽薄とは、どうやらパワ一ヌ゙は異なるようだ、グロウサムはほどなくシャ一口ックの弁別能力に感心するだろう。 「気休めに言うわけではないが、断じて気にすることはないぞ、力一ノレ。シャ一口は変わった子だが、悪意はない。」 「わかってます。シャ一口ックは絶対嘘を言わない。ごまかしはないんだ。」 ほう、グロウサムは原始の知性はおそらくこうした純正からしか発達しないのではなかったか、とパワ一ヌ゙の意外でもある考察に真理を見る思いだった。 しかしそうした知性が大成するかといえばそうでもなく、時間が鈍化と共謀する過程で死滅するのを余儀なくもされるのだが。 「彼は知っているからね、真実は常に醜いものであると。ひとはその場合摩擦を厭い、装うことを処世にする。 シャ一口ックにそれがないのは将来を生き難くさせるが、わたしには歓迎すべき個性として見守りたいものだ。」 実質、力一ノレはグロウサムの言っていることの半分も理解できていなかった。どうやら慰めてくれているらしい、それだけはわかった。だが、なぜおれが慰められなくてはならん? おれがおちこんでるように、このひとには見えるってことか? 「やっぱりヘンですかね、おれがあの子とともだちだってのは。」 「まさか。わたしはむしろ喜んでいる。これまでわたしが彼に課した論題はすべて、他人へ排他意識を持たず社会性と寛容を身につけさせるためのものばかりだったから。」 「…よくわかりません。」 「いわゆる一般人を知るための訓練といっていい。ここに入学した当初から彼は…世界を疎外していた。」 イギリス人は、ドーバー海峡がいつもの霧に覆われることを、『欧州大陸が孤立している』と表現するという。シャ一口ックはそういった人種的規格にまったく合致したわけだが、それはあまりに時期と環境を誤っていた。 「今はやっと気に入った課題を与えてやれたようで、楽しそうだ。直近のはひどかった。『ポップミュージックに見る現代社会の病理性』とやらかしたら、シャ一口はこう結論づけていた、 曰く『オアシスvsブラーみたいな仮想対立構造に狂喜するやつらも捏造側も平等かつ病的に頭がおかしい、以上。さてお次は?』」 ようやく少しだけわかる単語がでてきたから、力一ノレは思わず微笑んだ。グロウサムが安堵したように相好を崩す。 「あの子の知識欲は旺盛で貪欲だ。あの若さでそれは本当に奇跡であり、喜ばしい。だが同じように、あの子には外部接触が必要だ。君の…好意はいい橋渡しになっているね。」 「え、っと、それは、シャ一口ックがもっとおれ以外のやつらともつきあえるようにしたほうがいい、ってこと?」 それはあんまり嬉しくないんだがな、おれが、とは言わず、力一ノレは教師の言葉を待つ。 「強制ではない。シャ一口には特に好ましくない。あの天才的な頭脳は残念ながら脆く、万能ではない。悪影響なら容易には生じないが、優れているものは悪を惹き付けるものだから。」 「じゃあやっぱり、おれは円卓の騎士になればいいんだ。」 「剣よりも希少な宝を任せてもいいかね?是非そうしたまえ。」 力一ノレは言おうか迷う。シャ一口ックをともだちみたいに好きなわけではない。もう不問にしているのがグロウサムの様子には見てとれるが、いまも存在する自身の欲望を、そのままあの少年に証明したい欲求が日々大きくなって、もはや制御が難しい。 だから本心を言ったのに、教師の親切な解釈と曖昧さが力一ノレを推定無罪にしている。 「ひとつ、いいですか?」ところで、この教師はなぜ中等部の生徒へ呼び捨てにされるのを許しているのか。教師は単に自分へ警告しているのではないのか。 つまり、最も理解を共有することの可能なポストを力一ノレによって脅かされているといった危機感が、グロウサムにまわりくどい釘の刺し方を行わせている? 馬鹿な。「おれなんかなんの盾にもなりゃしない。そんなんでそばにいられてもちっとも楽しくないし。おれは確かにまぬけなことを言ったけど、あなたの指図は受けません。」 グロウサムは眼を見張る。言ってから立ち去る生徒の後姿には、あからさまな拒絶がある。 シャ一口ックと対極にいないものたちだけが、彼の磁力に惹かれるのではない。 シャ一口ックの対極にいるように見えながら、そこへ疑念を持ち、しかし留まるしかない力一ノレのようなものたちもまた、シャ一口ックを見出してしまう。 それは歓迎すべき融合をしばしば生まないものだ。彼にはまだそれを見越せていない。あの年頃に特有の聡さが、寄り添う素振りで発した注進に含まれる矛盾を知覚したものだろうが、さてどうしたものか。 見た目どおりに、力一ノレがもっと単純な少年であったら。グロウサムは残る違和感を払拭できず、のちの悲劇も先知せずにはいないたそがれの部屋で、生まれたてのしこりを打ち消すのに努める。 * □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! #comment
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#title(How did boys refuse the sun? Ⅲ) >>40参照ください。 ※Ⅳで終わりです。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 思い当たらないでない。一昨日のこと。くだんの校舎裏に、シャ一口ックは倦ねもせず力一ノレを伴ってくれた。だから彼は少年に宝を持参した。 ほら、きみがいる。祖母の絵本を、力一ノレがシャ一口ックをグィネビア姫と見違えたことを、指し示して見せた。 『…円卓の騎士じゃなくて?』『いやか?』『姫って、おんなじゃないか。』おんなだけど、同じようにきれいだぞきみは、シャ一口ック。と言えれば良かったが、さすがに気恥ずかしくて力一ノレは薄笑いでごまかした。 その際、力一ノレはシャ一口ックの背後から覗き込むようにして、身体を密着させた。本ならなんでも確かめずにいないシャ一口ックはしばらくページを繰るのに没頭したため、当然力一ノレの戯言にはそれ以上つきあう気もなかった。 『…力一ノレ。』捲ろうとしていた右手をページ角へ張り付けたまま、ふとシャ一口ックが呼ぶ。『ん?』『…力一ノレ・パワ一ヌ゙。』『聞こえたぜ?』なんだよ、と脇へ座り直した彼を見ず、シャ一口ックは強張った横顔のまま続ける。 『あたっていた。』『え?』『あたっていたんだ、君が。』『なんだ?』そこでようやくシャ一口ックは首を捻って横を向いた。 言いかけるのに開いた口はまた噤み、思い直すことがあったと座っていたポジションから腰を浮かせ、半身ほど後じさる。 『ぼくらの機能がそうなることは知っている、健康なら睡眠中にも。ただ力一ノレ、君の感覚神経は著しく間違っている。認識対象物や誘引契機といったものが何もないのに。医者じゃなくても早い時期の通院を勧めるね。』 幸い、シャ一口ックは咎めようとしているわけではないらしかった。そして何より力一ノレを安心させたのは、彼が決して羞恥の偽装としての沈着ないつもの口調で嗜めているのではなく、心から力一ノレの身を案じての疑念がその声音から読み取れることだった。 『……すまない。』『別に謝る必要はない。』『いや、謝らなくちゃ。』 アーサー王の冒険は今はふさわしくなかろうと、シャ一口ックは本を閉じて傍らにおき、力一ノレの次の告白を待ってやった。 『おれ、こうしてきみといると、しょっちゅうこうなってる。理由はちゃんとある。』 真顔のシャ一口ックはおそらくおのれの耳を疑っていたのだと思う。 『これが続くと水泳には良くないんだってさ。それを…もしきみがその、確かめてくれるんなら…おれ、嬉しいかもな。』 年少者はおもむろに立ち上がると、脱いでいた靴下と靴を小脇に抱え、裸足のまま丘を下りていった、力一ノレをその場へおきざりに。 * 「別にぼくは見るのは構わない。ただその場合、のちのち発覚していわゆる少年法やらああいった不愉快な事態にならないか、という危惧も排除しきれない。そこでギルに審問官になってもらったというわけ。」 「パワ一ヌ゙君、そんなに恐縮することはない。シャ一口も言うように、君を責めているのではないのだから。」 責められ、このひとでなし、そう直裁に詰られたほうがむしろ良かった気がする。 自分の迂闊さは知っていたがここまでとは、力一ノレは床に落としたままの視線を上げることができない。 「…思うに力一ノレは今が一番ホルモン分泌の活発な時期にあって、活性は思考力にも影響を及ぼしているんだろうし、いずれ成長がどうコントロールしていくのか、その経過を知るうえで面白い体験と思う、見ることはね。 別にぼくは性的兆候を軽蔑しない。それは衝動を悪用し金儲けに繋げずにいない商業主義に向けられるべきさ。」 「…シャ一口、外にでていなさい。」「さっきも言ったろ?ギル、ぼくは…」 「いいから外へ行くんだ、いい子だから。そうすれば欲しがっていたバレンボイム指揮するバイオリンコンチェルトの盤を進呈してもいい。」 グロウサムの声は静かだが、有無を言わさぬ響きがある。 しかしシャ一口ックは『いい子』呼ばわりされる子供扱いが一番業腹だ。 「…そんな扱いピョートルへの冒涜だ。…言ったはずだよ、あのレコードはいずれチェスに勝ってぼくが正式なオーナーになるんだもの。」 対等に話しているように見せかけ、やはり実質は一日の長がまさっている。 シャ一口ックはそれ以上反論せず少しばかり口を尖らせてみせたが、年長の友人に不承不承下る体で部屋から退出した。 「賢すぎるのが玉に瑕だ。パワ一ヌ゙君、落ち着いたかね?」 「力一ノレでいいです。誰のことだって思ってた。」 「では力一ノレ。あの子に顔向けできないなぞとは考えていまいな?」 「おれはそんなに馬鹿に見えますか?」 おや、運動部の、中でも優秀な生徒中に残念だが時折見られる軽薄とは、どうやらパワ一ヌ゙は異なるようだ、グロウサムはほどなくシャ一口ックの弁別能力に感心するだろう。 「気休めに言うわけではないが、断じて気にすることはないぞ、力一ノレ。シャ一口は変わった子だが、悪意はない。」 「わかってます。シャ一口ックは絶対嘘を言わない。ごまかしはないんだ。」 ほう、グロウサムは原始の知性はおそらくこうした純正からしか発達しないのではなかったか、とパワ一ヌ゙の意外でもある考察に真理を見る思いだった。 しかしそうした知性が大成するかといえばそうでもなく、時間が鈍化と共謀する過程で死滅するのを余儀なくもされるのだが。 「彼は知っているからね、真実は常に醜いものであると。ひとはその場合摩擦を厭い、装うことを処世にする。 シャ一口ックにそれがないのは将来を生き難くさせるが、わたしには歓迎すべき個性として見守りたいものだ。」 実質、力一ノレはグロウサムの言っていることの半分も理解できていなかった。どうやら慰めてくれているらしい、それだけはわかった。だが、なぜおれが慰められなくてはならん? おれがおちこんでるように、このひとには見えるってことか? 「やっぱりヘンですかね、おれがあの子とともだちだってのは。」 「まさか。わたしはむしろ喜んでいる。これまでわたしが彼に課した論題はすべて、他人へ排他意識を持たず社会性と寛容を身につけさせるためのものばかりだったから。」 「…よくわかりません。」 「いわゆる一般人を知るための訓練といっていい。ここに入学した当初から彼は…世界を疎外していた。」 イギリス人は、ドーバー海峡がいつもの霧に覆われることを、『欧州大陸が孤立している』と表現するという。シャ一口ックはそういった人種的規格にまったく合致したわけだが、それはあまりに時期と環境を誤っていた。 「今はやっと気に入った課題を与えてやれたようで、楽しそうだ。直近のはひどかった。『ポップミュージックに見る現代社会の病理性』とやらかしたら、シャ一口はこう結論づけていた、 曰く『オアシスvsブラーみたいな仮想対立構造に狂喜するやつらも捏造側も平等かつ病的に頭がおかしい、以上。さてお次は?』」 ようやく少しだけわかる単語がでてきたから、力一ノレは思わず微笑んだ。グロウサムが安堵したように相好を崩す。 「あの子の知識欲は旺盛で貪欲だ。あの若さでそれは本当に奇跡であり、喜ばしい。だが同じように、あの子には外部接触が必要だ。君の…好意はいい橋渡しになっているね。」 「え、っと、それは、シャ一口ックがもっとおれ以外のやつらともつきあえるようにしたほうがいい、ってこと?」 それはあんまり嬉しくないんだがな、おれが、とは言わず、力一ノレは教師の言葉を待つ。 「強制ではない。シャ一口には特に好ましくない。あの天才的な頭脳は残念ながら脆く、万能ではない。悪影響なら容易には生じないが、優れているものは悪を惹き付けるものだから。」 「じゃあやっぱり、おれは円卓の騎士になればいいんだ。」 「剣よりも希少な宝を任せてもいいかね?是非そうしたまえ。」 力一ノレは言おうか迷う。シャ一口ックをともだちみたいに好きなわけではない。もう不問にしているのがグロウサムの様子には見てとれるが、いまも存在する自身の欲望を、そのままあの少年に証明したい欲求が日々大きくなって、もはや制御が難しい。 だから本心を言ったのに、教師の親切な解釈と曖昧さが力一ノレを推定無罪にしている。 「ひとつ、いいですか?」ところで、この教師はなぜ中等部の生徒へ呼び捨てにされるのを許しているのか。教師は単に自分へ警告しているのではないのか。 つまり、最も理解を共有することの可能なポストを力一ノレによって脅かされているといった危機感が、グロウサムにまわりくどい釘の刺し方を行わせている? 馬鹿な。「おれなんかなんの盾にもなりゃしない。そんなんでそばにいられてもちっとも楽しくないし。おれは確かにまぬけなことを言ったけど、あなたの指図は受けません。」 グロウサムは眼を見張る。言ってから立ち去る生徒の後姿には、あからさまな拒絶がある。 シャ一口ックと対極にいないものたちだけが、彼の磁力に惹かれるのではない。 シャ一口ックの対極にいるように見えながら、そこへ疑念を持ち、しかし留まるしかない力一ノレのようなものたちもまた、シャ一口ックを見出してしまう。 それは歓迎すべき融合をしばしば生まないものだ。彼にはまだそれを見越せていない。あの年頃に特有の聡さが、寄り添う素振りで発した注進に含まれる矛盾を知覚したものだろうが、さてどうしたものか。 見た目どおりに、力一ノレがもっと単純な少年であったら。グロウサムは残る違和感を払拭できず、のちの悲劇も先知せずにはいないたそがれの部屋で、生まれたてのしこりを打ち消すのに努める。 * □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! #comment
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