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#title(揺れる) [#ide99a60] |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 激団親幹線ただ今公演中の「バソユウキ」から 喜怒哀楽が全部笑顔の殺し屋→天然復讐鬼のお話。明るく殺伐気味。 観劇した勢いのまま書いてしまいました… 陸だ。揺れない地だ。 船から降り立ち、土に足をつけた時、佐治はそう思う。 大陸からこの小さな島国まで、一月ほどの船旅。 同行者達がその揺れに酔い苦しんでいた中でも、自分だけはその手の 事とは無縁だった。 あらゆる感覚など当の昔に狂い尽くしている。 しかしそう思った矢先にも、自分の考えは翻る。 あぁ、自分だけではないか。 あの男も。 ふっと振り返り、まだ船の甲板上にいる男の姿を目の中に捕える。 堂々とした体躯。 深く響く声。 全身から力の漲る、それでいて髪だけは白く老いた男。 伊達怒門。 仲間に騙され、裏切られ、10年もの長き間閉じ込められた絶海の孤島の牢獄で 彼は自分と出会った。 そして取引をした。 自分は彼に自由になる手助けを要求をし、その見返りに自分は彼の復讐の為に この身の力を貸す事を約束した。 1000人の兵による護衛をかいくぐり、大国の王の首を掻き切る事も出来る この人殺しの業を。 あれから一年、準備を整え、策を練り、ようやくに踏んだこの地は彼の故郷。 彼の復讐が始まる場所。 それを彼は今、喜んでいるのだろうか。 それとも……また揺れているのだろうか。 身の内が揺れているから、船の揺れにも酔わないのだろうか。 つらつらと取り留めのない事を考える。 その腕にこの時絡み付いてくる感触があった。 クニャリと柔らかく生暖かい。 反射的に殺そうと手が上がらなかったのは、それに殺気が無かったからだ。 だからゆっくりと振り返る。 そこにいたのは女だった。 「お兄さん、長い船旅ごくろうさま。無事命があったお祝いに少し遊んでいかない?」 化粧も派手にしなを作る、それは港町で女日照りだった船旅の男達に手ぐすねをひく 浮かれ女の類のようだった。 こんな小さな島国でもこう言う者は必ずいるのだな。 おかしいでも呆れでもなくただそう思う。 そしてそんな自分の顔を見て、女は驚いたように口を開いた。 「わっ、お兄さんいい男ね。綺麗な顔してる。」 「そうなのか?」 「そうよぉ、男なんて大概船から降りてくる時は髭も伸び放題でもっさくなってるけど お兄さん、肌つるつるだし。髪もさらっさら。」 言いながらただ下ろしているだけの長い黒髪に指を絡めてくる。 馴れ馴れしくも邪気のない女。 そして彼女は、いい相手捕まえたわと、明け透けに笑う。 いい相手。自分がか? 少し不思議な感じがする。 大抵の者は自分を見れば恐れ、慄き、忌み嫌い、憎悪する。 悪魔!と罵り、泣き叫び、死んでいく。 自分のこの手に赤い血だけを残して。 だから、この女とて少しでも自分の事を知れば、そんな輩と同じになるのだろう。 所詮皆同じだ。 男だろうと女だろうと、大人でも子供でも、その薄皮一枚の下に詰まっているのは 肉と脂と骨と血だ。 ベタベタと気持ちの悪い生温かさだけだ。 なんなら試してみるか。 ゆらりと空いている方の手首が上がりかける。 しかしそれをこの時、背後から押し留めてきた腕があった。 「何をしている。」 耳に届いた声が孕んでいたのは、殺意ではなく、怒気。 だから気づくのが遅れた、と振り返った先にいたのは、予想した通りの怒門だった。 「何をするつもりだった。」 女には聞き取れないだろう程の小声でもう一度問うてくる。 見透かされている。 そう思えば少しおかしくて、自分はいつもの笑みを更に深めてこの時答えた。 「別に。」 それに怒門は、グッと詰まったような表情を見せた。 正直な男。 真っ直ぐで、純粋で、それ故に一気に負の方向に振れ、黒く染まった男。 しかしその心の奥底にいまだ疼く何かを抱え持っている事を、自分は知っている。 おそらくは彼自身も気づいてはいない、故に自分だけが知っている。 だから―――この手で握り潰してやる。 「とにかく早く来い。ペナソ達が待っている。」 この旅の自分たち以外の同行者の名を口にして、怒門が腕を引いてくる。 それにこの時、反対の腕を取っていた女が抗議の声を上げた。 「ちょっと何よ、あんた!人の客勝手に持ってかないでよ、このジジイ!」 「ジジ…」 浴びせられた罵声に絶句する、そんな怒門に思わず噴き出せば、彼はそんな自分に 笑うな!と怒鳴りつけ、更に強い力で女から引き離してきた。 背後に叫ばれ続ける罵倒にももう振り返らず、そのまま歩幅も大きく歩き出す。 捕えた自分の腕はそのままに。 そうして掴んでくる彼の手の平を自分は熱いと思った。 身の奥に燃やし続けている彼の憎しみと怒りの炎の熱は、肌を通して自分に心地よく 伝わってくる。 彼だけが違う、この温度。 気持のいい男。 目的はある。 誰にも告げず、この胸だけに秘めた謀略。 しかしそれを為すまでにはまだしばしの時が必要で、それまでの間どうせいるなら 居心地のいい場所がいい。 この男の側が、いい。 だから、 「始めよう。」 前を行く男に自分は唐突に告げる。 「君の復讐を。君から若さと言う名の時間を奪い、陥れた奴らに対価以上の 苦しみと絶望を。その為なら、僕は君の邪魔になる者を何人でも殺してやる。」 投げかけた言葉に振り返った男の表情に、浮かぶ僅かな動揺。 あぁ、また揺れている。 でもそれを自分は許さない。 「僕は、君の行く道を切り開く、佐治だ。」 固い土牢を何年も穿ち、自分の所に辿りつかせた一本の匙と同じ名を与えられた者。 忘れるな、あの光の無い闇の過去を。 そうすれば、僕はおまえに力を貸そう。 視界の中、男の口元がギッと引き締まる。 そして、 「頼んだぞ。」 吐き出された深く、低く、怨嗟に塗れた心地良い男の声の響き。 それに自分は軽やかに笑った。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 携帯からの投稿で時間がかかり、ナンバリングも間違えてすみません。 話はマイナーすぎてわかる人がいないのは覚悟の上! でも萌えを吐き出せて楽しかったです。 - 同じ萌の方がいて嬉しいです!素敵な文章ありがとうございますm(__)m サジ→土門大好き -- [[琥珀]] &new{2009-10-28 (水) 11:20:37}; - かなり遅い返事で申し訳ありませんが、コメントありがとうございました。 -- [[書き手]] &new{2009-12-23 (水) 23:19:55}; #comment
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#title(揺れる) [#ide99a60] |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 激団親幹線ただ今公演中の「バソユウキ」から 喜怒哀楽が全部笑顔の殺し屋→天然復讐鬼のお話。明るく殺伐気味。 観劇した勢いのまま書いてしまいました… 陸だ。揺れない地だ。 船から降り立ち、土に足をつけた時、佐治はそう思う。 大陸からこの小さな島国まで、一月ほどの船旅。 同行者達がその揺れに酔い苦しんでいた中でも、自分だけはその手の 事とは無縁だった。 あらゆる感覚など当の昔に狂い尽くしている。 しかしそう思った矢先にも、自分の考えは翻る。 あぁ、自分だけではないか。 あの男も。 ふっと振り返り、まだ船の甲板上にいる男の姿を目の中に捕える。 堂々とした体躯。 深く響く声。 全身から力の漲る、それでいて髪だけは白く老いた男。 伊達怒門。 仲間に騙され、裏切られ、10年もの長き間閉じ込められた絶海の孤島の牢獄で 彼は自分と出会った。 そして取引をした。 自分は彼に自由になる手助けを要求をし、その見返りに自分は彼の復讐の為に この身の力を貸す事を約束した。 1000人の兵による護衛をかいくぐり、大国の王の首を掻き切る事も出来る この人殺しの業を。 あれから一年、準備を整え、策を練り、ようやくに踏んだこの地は彼の故郷。 彼の復讐が始まる場所。 それを彼は今、喜んでいるのだろうか。 それとも……また揺れているのだろうか。 身の内が揺れているから、船の揺れにも酔わないのだろうか。 つらつらと取り留めのない事を考える。 その腕にこの時絡み付いてくる感触があった。 クニャリと柔らかく生暖かい。 反射的に殺そうと手が上がらなかったのは、それに殺気が無かったからだ。 だからゆっくりと振り返る。 そこにいたのは女だった。 「お兄さん、長い船旅ごくろうさま。無事命があったお祝いに少し遊んでいかない?」 化粧も派手にしなを作る、それは港町で女日照りだった船旅の男達に手ぐすねをひく 浮かれ女の類のようだった。 こんな小さな島国でもこう言う者は必ずいるのだな。 おかしいでも呆れでもなくただそう思う。 そしてそんな自分の顔を見て、女は驚いたように口を開いた。 「わっ、お兄さんいい男ね。綺麗な顔してる。」 「そうなのか?」 「そうよぉ、男なんて大概船から降りてくる時は髭も伸び放題でもっさくなってるけど お兄さん、肌つるつるだし。髪もさらっさら。」 言いながらただ下ろしているだけの長い黒髪に指を絡めてくる。 馴れ馴れしくも邪気のない女。 そして彼女は、いい相手捕まえたわと、明け透けに笑う。 いい相手。自分がか? 少し不思議な感じがする。 大抵の者は自分を見れば恐れ、慄き、忌み嫌い、憎悪する。 悪魔!と罵り、泣き叫び、死んでいく。 自分のこの手に赤い血だけを残して。 だから、この女とて少しでも自分の事を知れば、そんな輩と同じになるのだろう。 所詮皆同じだ。 男だろうと女だろうと、大人でも子供でも、その薄皮一枚の下に詰まっているのは 肉と脂と骨と血だ。 ベタベタと気持ちの悪い生温かさだけだ。 なんなら試してみるか。 ゆらりと空いている方の手首が上がりかける。 しかしそれをこの時、背後から押し留めてきた腕があった。 「何をしている。」 耳に届いた声が孕んでいたのは、殺意ではなく、怒気。 だから気づくのが遅れた、と振り返った先にいたのは、予想した通りの怒門だった。 「何をするつもりだった。」 女には聞き取れないだろう程の小声でもう一度問うてくる。 見透かされている。 そう思えば少しおかしくて、自分はいつもの笑みを更に深めてこの時答えた。 「別に。」 それに怒門は、グッと詰まったような表情を見せた。 正直な男。 真っ直ぐで、純粋で、それ故に一気に負の方向に振れ、黒く染まった男。 しかしその心の奥底にいまだ疼く何かを抱え持っている事を、自分は知っている。 おそらくは彼自身も気づいてはいない、故に自分だけが知っている。 だから―――この手で握り潰してやる。 「とにかく早く来い。ペナソ達が待っている。」 この旅の自分たち以外の同行者の名を口にして、怒門が腕を引いてくる。 それにこの時、反対の腕を取っていた女が抗議の声を上げた。 「ちょっと何よ、あんた!人の客勝手に持ってかないでよ、このジジイ!」 「ジジ…」 浴びせられた罵声に絶句する、そんな怒門に思わず噴き出せば、彼はそんな自分に 笑うな!と怒鳴りつけ、更に強い力で女から引き離してきた。 背後に叫ばれ続ける罵倒にももう振り返らず、そのまま歩幅も大きく歩き出す。 捕えた自分の腕はそのままに。 そうして掴んでくる彼の手の平を自分は熱いと思った。 身の奥に燃やし続けている彼の憎しみと怒りの炎の熱は、肌を通して自分に心地よく 伝わってくる。 彼だけが違う、この温度。 気持のいい男。 目的はある。 誰にも告げず、この胸だけに秘めた謀略。 しかしそれを為すまでにはまだしばしの時が必要で、それまでの間どうせいるなら 居心地のいい場所がいい。 この男の側が、いい。 だから、 「始めよう。」 前を行く男に自分は唐突に告げる。 「君の復讐を。君から若さと言う名の時間を奪い、陥れた奴らに対価以上の 苦しみと絶望を。その為なら、僕は君の邪魔になる者を何人でも殺してやる。」 投げかけた言葉に振り返った男の表情に、浮かぶ僅かな動揺。 あぁ、また揺れている。 でもそれを自分は許さない。 「僕は、君の行く道を切り開く、佐治だ。」 固い土牢を何年も穿ち、自分の所に辿りつかせた一本の匙と同じ名を与えられた者。 忘れるな、あの光の無い闇の過去を。 そうすれば、僕はおまえに力を貸そう。 視界の中、男の口元がギッと引き締まる。 そして、 「頼んだぞ。」 吐き出された深く、低く、怨嗟に塗れた心地良い男の声の響き。 それに自分は軽やかに笑った。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 携帯からの投稿で時間がかかり、ナンバリングも間違えてすみません。 話はマイナーすぎてわかる人がいないのは覚悟の上! でも萌えを吐き出せて楽しかったです。 - 同じ萌の方がいて嬉しいです!素敵な文章ありがとうございますm(__)m サジ→土門大好き -- [[琥珀]] &new{2009-10-28 (水) 11:20:37}; - かなり遅い返事で申し訳ありませんが、コメントありがとうございました。 -- [[書き手]] &new{2009-12-23 (水) 23:19:55}; #comment
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