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#title(野球 埼玉西武ライオンズ 細川×帆足) 生もの、最近調子よくないけれど、今夜ばかりは祝いたいネタ。 2747で。47☆オメ! |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! いつもはちくちく言ってくる後輩も、今日ばかりは「おめでとう」と言った。 勿論この図体のでかい後輩は自分のことのように嬉しそうに、もう大騒ぎだ。 「穂脚さん、穂脚さん!」 「んーだよ、ちから!」 「はい、おめでとうございま、っすー!!」 高々とビール缶を掲げられると、穂脚には正直届かない。全く、わかってることだろうに。 「へいへい、お前もお疲れさん、ありがとな」 本当は寒風するつもりだったんだが、とその言葉は己の頭の中で呟いた。 いやいや、左肩が抜けそうだ。久しぶりに渾身の出来だった、そのツケが今始まっている。 最後の最後ガス欠なんて決まらない、とは思うが、まあそれも自分らしいかと思わなくもない。 そのおかげで斧寺には、自分の尻拭いを押し付ける羽目になってしまったんだが。 「うあー、いい飲みっぷり」 「俺明日フリーやもんね!」 「ずっるい」 「おめーは明日もスタンバっとけ」 もう何本目かわからない缶を一気にあおる。 ホテルの床の上には、多分自分が殆ど飲み干した亡骸どもが、累々と転がって鈍く光っていた。 それにしても気分は良い。何ヶ月ぶりだ、この気だるい爽快感は。 さっきから何度も、ポケットの携帯電話が震えていた。おめでとう、のメールも鳴り止まない。 穂脚は片手にビール、片手に携帯でそのどちらをも薄目で眺めた。 部屋飲み相手の斧寺はかなり酔いが回ったのか、正面のベッドに突っ伏して笑っている。 「お祝い、いっぱいっスね」 「おー」 「地元はつしょーり~」 「へへへ、んだな」 プロ入りしてからもう何年にもなるが、この土地で勝ったのは実は初めてだ。 そう思うと、数ヶ月ぶりの爽快感よりもデジャヴの逆のようなものが、不意に穂脚のこめかみを閉めた。 「?」 顔をしかめた穂脚に、斧寺は端正な顔を緩やかにして、人のよさそうな笑みで問いかける。 ぼったりしたホテルのシーツに、その逞しい身も優しい笑みも存分に埋まっている。 周囲は静かで、まるで全くいつものことのようで、穂脚を余計混乱させた。 電話の中に文字盤が光る。「お疲れさま、おめでとう!」と、何てことないメッセージがまたひとつ。 ただその差出人が、ここにいないことが、それだけが非日常だった。 「…何でもねーよ」 別に、今日の歩主のサインが気に入らなかったことはない。 それにまた、別にその構える姿勢に違和感をおぼえていたわけでもない。 ただ、お前はそこにいなかった、だけだ。 「メール、糸田川さんすか?」 「…」 斧寺は、必要ないところで勘が良い。それ以外は全然役に立たないくせに、と穂脚は思っている。 むしろ不要なそのセンサーは、隠しておけば良いのに隠せないぶん、時折彼の立場を不利にもする。 全く。穂脚の何かがざらついたのを、肌が粟立ったのを、多分斧寺は知らない。 「…おう、おめでとうって」 「あっちは調子どうなんすかねぇ」 「そこまで知るかよ、書いてねーもん」 パタンと携帯をまた、もとの二つ折りに戻した。部屋の優しいだけの明かりは反射せず、写りこむだけ。 お前がいないだけだ。別に。 それだけで簡単に、俺は欲しかったものを手に入れた。何だかあっけない。 「…あっけねぇ」 「はい?」 まさか、お前がいないなんて思ってなかったのが本音。怪我なんて、お前には無縁かと思ってた。 丈夫さだけが取り柄、と何度も揶揄して笑ったことがある。その度うっせ、と三白眼で睨まれたことも。 浮き沈みするのは穂脚の肩の具合だけで、糸田川はいつでもそれを受け止めている、はずだった。 そう勝手に、穂脚はどこか思い込んでいたと、それを今思い知っている。 「独り言」 なあ、俺にここで何とか勝たせたくて、お前まで四苦八苦していたのはずっと知っていた。 だから何だか変な気分だ。本当に落ち着かないんだ、あっけない。 落ち着かないということを、逆に突きつけられているような気がする。お前がいない、何でだと。 お前がいない、それだけだという風には、何故かとても思えない。 穂脚は、たった、と笑えない。 「で、穂脚さん返事はー?」 誰も悪くない話、誰のせいでもない話。 だが、他人に立ち入って欲しくもないし触れて欲しくもない。俺と、お前の話についてだ。 「…後で出す」 ゆっくり思い知っている。自分の無意識について。 それから、今言えないあらゆることについて。 「へぇ?」 「呑んでんだもんよ、今変なことしか書けねって!」 ざらついたものを、穂脚は隠した。 だからお前がいないなんて、変な気分だ。 お前抜きで得たものがここに、確実にあるなんて。 「…」 左肩を撫でさする。そこに呑みかけのビールは残っている。 穂脚がげらげら笑ってまた、利き手の缶を空にするのを、斧寺もまた笑って見ていた。 その視線はよくわかった。だが、虚空を見て穂脚が笑ったのは、多分気付かれていなかった。 虚空には本当に何もなかった、けれど穂脚は笑っていた。 欲しかったものは貰っておく。誰にも渡さない、お前にもだ。 ただそれとは逆に、突きつけられた話がある。 無意識の下の風景が、めくれ上がるように瞼の裏にフラッシュバックした。 俺は何時からか無意識に思い描いていた。必ずお前がいる風景を。 ずっと思っていた、欲しかった勝利の瞬間手を掲げるのは、俺にはお前だと思っていた。無意識に何度も。 何度も何度も、俺にはお前だと。 俺には、お前なんだと。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 早く27も帰ってきて欲しいなあ。 #comment
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#title(野球 埼玉西武ライオンズ 細川×帆足) 生もの、最近調子よくないけれど、今夜ばかりは祝いたいネタ。 2747で。47☆オメ! |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! いつもはちくちく言ってくる後輩も、今日ばかりは「おめでとう」と言った。 勿論この図体のでかい後輩は自分のことのように嬉しそうに、もう大騒ぎだ。 「穂脚さん、穂脚さん!」 「んーだよ、ちから!」 「はい、おめでとうございま、っすー!!」 高々とビール缶を掲げられると、穂脚には正直届かない。全く、わかってることだろうに。 「へいへい、お前もお疲れさん、ありがとな」 本当は寒風するつもりだったんだが、とその言葉は己の頭の中で呟いた。 いやいや、左肩が抜けそうだ。久しぶりに渾身の出来だった、そのツケが今始まっている。 最後の最後ガス欠なんて決まらない、とは思うが、まあそれも自分らしいかと思わなくもない。 そのおかげで斧寺には、自分の尻拭いを押し付ける羽目になってしまったんだが。 「うあー、いい飲みっぷり」 「俺明日フリーやもんね!」 「ずっるい」 「おめーは明日もスタンバっとけ」 もう何本目かわからない缶を一気にあおる。 ホテルの床の上には、多分自分が殆ど飲み干した亡骸どもが、累々と転がって鈍く光っていた。 それにしても気分は良い。何ヶ月ぶりだ、この気だるい爽快感は。 さっきから何度も、ポケットの携帯電話が震えていた。おめでとう、のメールも鳴り止まない。 穂脚は片手にビール、片手に携帯でそのどちらをも薄目で眺めた。 部屋飲み相手の斧寺はかなり酔いが回ったのか、正面のベッドに突っ伏して笑っている。 「お祝い、いっぱいっスね」 「おー」 「地元はつしょーり~」 「へへへ、んだな」 プロ入りしてからもう何年にもなるが、この土地で勝ったのは実は初めてだ。 そう思うと、数ヶ月ぶりの爽快感よりもデジャヴの逆のようなものが、不意に穂脚のこめかみを閉めた。 「?」 顔をしかめた穂脚に、斧寺は端正な顔を緩やかにして、人のよさそうな笑みで問いかける。 ぼったりしたホテルのシーツに、その逞しい身も優しい笑みも存分に埋まっている。 周囲は静かで、まるで全くいつものことのようで、穂脚を余計混乱させた。 電話の中に文字盤が光る。「お疲れさま、おめでとう!」と、何てことないメッセージがまたひとつ。 ただその差出人が、ここにいないことが、それだけが非日常だった。 「…何でもねーよ」 別に、今日の歩主のサインが気に入らなかったことはない。 それにまた、別にその構える姿勢に違和感をおぼえていたわけでもない。 ただ、お前はそこにいなかった、だけだ。 「メール、糸田川さんすか?」 「…」 斧寺は、必要ないところで勘が良い。それ以外は全然役に立たないくせに、と穂脚は思っている。 むしろ不要なそのセンサーは、隠しておけば良いのに隠せないぶん、時折彼の立場を不利にもする。 全く。穂脚の何かがざらついたのを、肌が粟立ったのを、多分斧寺は知らない。 「…おう、おめでとうって」 「あっちは調子どうなんすかねぇ」 「そこまで知るかよ、書いてねーもん」 パタンと携帯をまた、もとの二つ折りに戻した。部屋の優しいだけの明かりは反射せず、写りこむだけ。 お前がいないだけだ。別に。 それだけで簡単に、俺は欲しかったものを手に入れた。何だかあっけない。 「…あっけねぇ」 「はい?」 まさか、お前がいないなんて思ってなかったのが本音。怪我なんて、お前には無縁かと思ってた。 丈夫さだけが取り柄、と何度も揶揄して笑ったことがある。その度うっせ、と三白眼で睨まれたことも。 浮き沈みするのは穂脚の肩の具合だけで、糸田川はいつでもそれを受け止めている、はずだった。 そう勝手に、穂脚はどこか思い込んでいたと、それを今思い知っている。 「独り言」 なあ、俺にここで何とか勝たせたくて、お前まで四苦八苦していたのはずっと知っていた。 だから何だか変な気分だ。本当に落ち着かないんだ、あっけない。 落ち着かないということを、逆に突きつけられているような気がする。お前がいない、何でだと。 お前がいない、それだけだという風には、何故かとても思えない。 穂脚は、たった、と笑えない。 「で、穂脚さん返事はー?」 誰も悪くない話、誰のせいでもない話。 だが、他人に立ち入って欲しくもないし触れて欲しくもない。俺と、お前の話についてだ。 「…後で出す」 ゆっくり思い知っている。自分の無意識について。 それから、今言えないあらゆることについて。 「へぇ?」 「呑んでんだもんよ、今変なことしか書けねって!」 ざらついたものを、穂脚は隠した。 だからお前がいないなんて、変な気分だ。 お前抜きで得たものがここに、確実にあるなんて。 「…」 左肩を撫でさする。そこに呑みかけのビールは残っている。 穂脚がげらげら笑ってまた、利き手の缶を空にするのを、斧寺もまた笑って見ていた。 その視線はよくわかった。だが、虚空を見て穂脚が笑ったのは、多分気付かれていなかった。 虚空には本当に何もなかった、けれど穂脚は笑っていた。 欲しかったものは貰っておく。誰にも渡さない、お前にもだ。 ただそれとは逆に、突きつけられた話がある。 無意識の下の風景が、めくれ上がるように瞼の裏にフラッシュバックした。 俺は何時からか無意識に思い描いていた。必ずお前がいる風景を。 ずっと思っていた、欲しかった勝利の瞬間手を掲げるのは、俺にはお前だと思っていた。無意識に何度も。 何度も何度も、俺にはお前だと。 俺には、お前なんだと。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 早く27も帰ってきて欲しいなあ。 #comment
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