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#title(オリジナルSF風味) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>>250-257,>>291-296の続きです しばらくすると、カフカの言葉どおり、ぼんやりとした光の薄もやが 見えてきた。赤から青に、青から緑に、刻一刻と移り変わっていく。 時に強く光り、かと思えば今にも消えそうになる。これほど明暗の サイクルが早いタイプは久しぶりだった。 「きれいだ」 「ああ」 カフカは目のふちを指でなぞった。泣いているのかと思い一瞬焦ったが、 それは彼の目が慣れない場合に見せる行動だった。 「生まれ変わっていくようだ」 カフカが言った。ある日生まれて、眩しく輝き、徐々に老いていって、 いつか死んでまた生まれかわる。オーロラの表現としては詩的だが、 彼らしい美しい例えだと思った。 俺は隣り合っているカフカの手をたぐりよせ、柔らかく握った。 カフカがかすかな力で握り返し、俺の手を包み込んだ。二人ともオーロラ からは目を離していなかったが、ごく自然な動作だった。薄暗い臨時照明の 中、目を合わせないままでも、互いが何をしようとしているのかが 伝わってくるのだった。 カフカが俺の手を口元に運び、つないだ手を開かせて、掌の部分に キスをした。拙いキスだった。田舎の娘のような純朴さがあった。 俺はたまらなかった。彼の指の間に自分の指を絡ませ、握りなおした。 かたく握った手を引き寄せ、音を立てて口付けた。少しずつ場所を変え、 何度もしつこくくり返すと、カフカがこちらを向いた。 「子供みたいな事をする」 少年のままの顔でそんなことを言うので、おかしかった。 「男はいつまでたっても子供なんだ」 言い返した俺は、カフカの手の甲を甘噛みした。カフカは反射的に 手をのけた。怒るでも泣くでもなく、彼はもう一度その手を戻して、 静かに俺の頬に触れた。 「こうして触ってみたかった」 頬から始まり、まぶた、眉、鼻筋、あごの輪郭、さまざまなパーツ の形を覚えるように、カフカの指が顔の上を滑っていった。むず痒かったが、 あんまり真剣な手つきだったので我慢することにした。 「俺だって触りたかった」 俺もカフカのあどけなさの残る頬を掌に包んだ。親指のはらで鼻先を くすぐると、カフカが八重歯をこぼして笑った。 「俺も触られたかった。……バベルに」 名前を呼ばれて目が眩んだ。俺はカフカの肩を抱いて唇を押し付けた。 そのままカフカの下唇を舐めた。カフカが俺の上唇を吸った。異様な感覚が 背筋を抜けていった。角度を変えて幾度も唇を重ねた。俺がカフカの 髪に指を通して引き寄せれば、カフカは俺の服をつかんで体ごと 近付けようとした。 舌を口内に差し入れた時、カフカの体が跳ねた。嫌がるかと思って 離れたら、ぶつかるように口付けられた。ゆるく閉じられた唇を割って 中に入ると、今度は受け入れられた。戸惑う舌を見つける。またカフカが 震えた。しかし俺はもう離さなかった。カフカもそれを望んでいると思った。 カフカの粘膜は熱く、柔らかかった。俺は何度もカフカの舌を追い詰め、 彼はそれに応えた。俺たちは飽きるほど唇を貪りあった。 「酸素が足りなくなりそうだ」 カフカが深く息を吐いた。唇が濡れていた。 「シールは?」 俺はカフカの首筋を軽く押さえた。そのまま酸素シールと肌の境界を 辿ると、カフカが肩を竦ませた。 「2枚貼っている」 「船までもつのか」 確かにカフカが必要とする酸素量は平均を大きく下回っていたが、 いくらなんでも見積もりが甘い気がした。 「何事もなければ」 この状況でもカフカは自分のリズムを崩さない。彼自身は意図しなかった かもしれないが、俺は絶妙の牽制を受けることになった。 「それは残念だ」 俺は酸素シールの上からカフカの首に軽いキスをした。カフカは とくに抵抗することもなく、腕をくぐらせて俺の頭を抱いた。 「もうすぐオーロラが消える」 耳がカフカの体に触れているため、彼の声は頭の奥でやけに響いた。 俺はガラスの天井を見た。オーロラが一際明るく輝いて、それから次第に 暗くなっていった。 「また生まれ変わる」 俺は先ほどのカフカの比喩を思い出して、そう言った。 カフカは頷いた。俺を抱いたまま、彼の網膜に映る光を追っていた。 「何度も生まれ変わる」 カフカが俺の額に頬をすり寄せた。俺は彼の心臓の音に耳を澄ました。 この二人の空間を全て記憶したいと思った。体に刻み付けてしまいたかった。 帰りはやはり俺が運転することにした。カフカは未練があるらしかったが、 今回ばかりは俺も譲らなかった。彼を後ろに乗せて、ゆっくりと走り出した。 適正速度の半分の速さなら、走行音が目立たない。 「今度は流星群を見に行かないか」 来月から立て続けに3つの流星群が発生することが予想されていたので、 俺はカフカに持ちかけた。 「けれども、正規の観測データが必要だろう」 「定常郡なら問題ないさ」 カフカの表情はわからないが、彼がこの手の誘いを断るはずはなかった。 「D2基地が良い」 カフカはオーケーを出す代わりに、少し離れた基地の名前を口にした。 「あそこのテレスコープを使えば、お前にもアクルックスが3つに 見える」 カフカは俺の取るに足らない質問を聞き流していなかった。俺はそれが 妙に嬉しかった。 「楽しみだな。体中にシールを貼り付けていこう」 何が起こってもいいように、と付け加えた。 「バベルが貼ってくれ。背中までは手が届かない」 カフカは上機嫌だ。つられて口の端が上がるのを止められなかった。 カフカの星で受け継がれている、特別な時にしか相手の名前を呼ば ないという文化を、俺は彼から聞いて知っていた。「お前」、「おい」、 あるいは無言で肩を叩かれて呼ばれてきたから、自分の名前がやけに 耳に甘く、くすぐったく聞こえる。なんて愛しい俺のカフカ! 「バベル?」 後ろでカフカが首を傾げている姿が目に浮かんだ。彼が返事をしないことは 度々あっても、俺がそうすることは滅多にない。 「ああ、わかったよ。1枚ずつキスしながら貼ってやる」 カフカはもう文句も言わず、俺にしがみついた。背中からカフカの体温が 伝わってくる。夜明け前の気温はマイナス20度になっていたが、 不思議と寒いとは思わなかった。胸の底がいつまでも温かかった。 それはカフカと分け合った熱だった。 夜の惑星を、満天の星空の下、1台のバイクが走っていく。 それに乗っているのは二人だが、前後のライトが地表に照らしだす影は、 今や一つになっている。 俺とカフカの話は、今日はこれまで。さようなら。またいつの日か。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! >>300>>305 ありがとうございました! - いい話だ、すごくいい話だ。最高でした。 -- &new{2014-07-09 (水) 02:58:56}; #comment
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#title(オリジナルSF風味) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>>250-257,>>291-296の続きです しばらくすると、カフカの言葉どおり、ぼんやりとした光の薄もやが 見えてきた。赤から青に、青から緑に、刻一刻と移り変わっていく。 時に強く光り、かと思えば今にも消えそうになる。これほど明暗の サイクルが早いタイプは久しぶりだった。 「きれいだ」 「ああ」 カフカは目のふちを指でなぞった。泣いているのかと思い一瞬焦ったが、 それは彼の目が慣れない場合に見せる行動だった。 「生まれ変わっていくようだ」 カフカが言った。ある日生まれて、眩しく輝き、徐々に老いていって、 いつか死んでまた生まれかわる。オーロラの表現としては詩的だが、 彼らしい美しい例えだと思った。 俺は隣り合っているカフカの手をたぐりよせ、柔らかく握った。 カフカがかすかな力で握り返し、俺の手を包み込んだ。二人ともオーロラ からは目を離していなかったが、ごく自然な動作だった。薄暗い臨時照明の 中、目を合わせないままでも、互いが何をしようとしているのかが 伝わってくるのだった。 カフカが俺の手を口元に運び、つないだ手を開かせて、掌の部分に キスをした。拙いキスだった。田舎の娘のような純朴さがあった。 俺はたまらなかった。彼の指の間に自分の指を絡ませ、握りなおした。 かたく握った手を引き寄せ、音を立てて口付けた。少しずつ場所を変え、 何度もしつこくくり返すと、カフカがこちらを向いた。 「子供みたいな事をする」 少年のままの顔でそんなことを言うので、おかしかった。 「男はいつまでたっても子供なんだ」 言い返した俺は、カフカの手の甲を甘噛みした。カフカは反射的に 手をのけた。怒るでも泣くでもなく、彼はもう一度その手を戻して、 静かに俺の頬に触れた。 「こうして触ってみたかった」 頬から始まり、まぶた、眉、鼻筋、あごの輪郭、さまざまなパーツ の形を覚えるように、カフカの指が顔の上を滑っていった。むず痒かったが、 あんまり真剣な手つきだったので我慢することにした。 「俺だって触りたかった」 俺もカフカのあどけなさの残る頬を掌に包んだ。親指のはらで鼻先を くすぐると、カフカが八重歯をこぼして笑った。 「俺も触られたかった。……バベルに」 名前を呼ばれて目が眩んだ。俺はカフカの肩を抱いて唇を押し付けた。 そのままカフカの下唇を舐めた。カフカが俺の上唇を吸った。異様な感覚が 背筋を抜けていった。角度を変えて幾度も唇を重ねた。俺がカフカの 髪に指を通して引き寄せれば、カフカは俺の服をつかんで体ごと 近付けようとした。 舌を口内に差し入れた時、カフカの体が跳ねた。嫌がるかと思って 離れたら、ぶつかるように口付けられた。ゆるく閉じられた唇を割って 中に入ると、今度は受け入れられた。戸惑う舌を見つける。またカフカが 震えた。しかし俺はもう離さなかった。カフカもそれを望んでいると思った。 カフカの粘膜は熱く、柔らかかった。俺は何度もカフカの舌を追い詰め、 彼はそれに応えた。俺たちは飽きるほど唇を貪りあった。 「酸素が足りなくなりそうだ」 カフカが深く息を吐いた。唇が濡れていた。 「シールは?」 俺はカフカの首筋を軽く押さえた。そのまま酸素シールと肌の境界を 辿ると、カフカが肩を竦ませた。 「2枚貼っている」 「船までもつのか」 確かにカフカが必要とする酸素量は平均を大きく下回っていたが、 いくらなんでも見積もりが甘い気がした。 「何事もなければ」 この状況でもカフカは自分のリズムを崩さない。彼自身は意図しなかった かもしれないが、俺は絶妙の牽制を受けることになった。 「それは残念だ」 俺は酸素シールの上からカフカの首に軽いキスをした。カフカは とくに抵抗することもなく、腕をくぐらせて俺の頭を抱いた。 「もうすぐオーロラが消える」 耳がカフカの体に触れているため、彼の声は頭の奥でやけに響いた。 俺はガラスの天井を見た。オーロラが一際明るく輝いて、それから次第に 暗くなっていった。 「また生まれ変わる」 俺は先ほどのカフカの比喩を思い出して、そう言った。 カフカは頷いた。俺を抱いたまま、彼の網膜に映る光を追っていた。 「何度も生まれ変わる」 カフカが俺の額に頬をすり寄せた。俺は彼の心臓の音に耳を澄ました。 この二人の空間を全て記憶したいと思った。体に刻み付けてしまいたかった。 帰りはやはり俺が運転することにした。カフカは未練があるらしかったが、 今回ばかりは俺も譲らなかった。彼を後ろに乗せて、ゆっくりと走り出した。 適正速度の半分の速さなら、走行音が目立たない。 「今度は流星群を見に行かないか」 来月から立て続けに3つの流星群が発生することが予想されていたので、 俺はカフカに持ちかけた。 「けれども、正規の観測データが必要だろう」 「定常郡なら問題ないさ」 カフカの表情はわからないが、彼がこの手の誘いを断るはずはなかった。 「D2基地が良い」 カフカはオーケーを出す代わりに、少し離れた基地の名前を口にした。 「あそこのテレスコープを使えば、お前にもアクルックスが3つに 見える」 カフカは俺の取るに足らない質問を聞き流していなかった。俺はそれが 妙に嬉しかった。 「楽しみだな。体中にシールを貼り付けていこう」 何が起こってもいいように、と付け加えた。 「バベルが貼ってくれ。背中までは手が届かない」 カフカは上機嫌だ。つられて口の端が上がるのを止められなかった。 カフカの星で受け継がれている、特別な時にしか相手の名前を呼ば ないという文化を、俺は彼から聞いて知っていた。「お前」、「おい」、 あるいは無言で肩を叩かれて呼ばれてきたから、自分の名前がやけに 耳に甘く、くすぐったく聞こえる。なんて愛しい俺のカフカ! 「バベル?」 後ろでカフカが首を傾げている姿が目に浮かんだ。彼が返事をしないことは 度々あっても、俺がそうすることは滅多にない。 「ああ、わかったよ。1枚ずつキスしながら貼ってやる」 カフカはもう文句も言わず、俺にしがみついた。背中からカフカの体温が 伝わってくる。夜明け前の気温はマイナス20度になっていたが、 不思議と寒いとは思わなかった。胸の底がいつまでも温かかった。 それはカフカと分け合った熱だった。 夜の惑星を、満天の星空の下、1台のバイクが走っていく。 それに乗っているのは二人だが、前後のライトが地表に照らしだす影は、 今や一つになっている。 俺とカフカの話は、今日はこれまで。さようなら。またいつの日か。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! >>300>>305 ありがとうございました! - いい話だ、すごくいい話だ。最高でした。 -- &new{2014-07-09 (水) 02:58:56}; #comment
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