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S-79 の変更点


*体操 冨田(←中野)×鹿島 [#i6963c14]
#title(体操 冨田(←中野)×鹿島) [#i6963c14]


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
                    | >>463-470続きモナ。大層。登美(←那賀野)×貸間をめざせ。 
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 中途半端な終わり方だったからなー。 
 | |                | |            \ 
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ 
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  実は801初挑戦だゴルァ! 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )  
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___ 
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  | 
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | 

※やっぱり舞台はイ/ン/タ/ー/ハ/イです。 
 途中出てくるエピソードは、架空の創作です。_| ̄|○ 
 長くてスイマセン。 





 ※2※ 

 名前を呼ばれ、一瞬、呼吸の仕方が分からなくなる。どうしようもなく、 
鼓動が早い。登美多は、ぎこちなく息を吐いた。 
 貸間は、いつまでも冷めない歓声の中、真っ直ぐ登美多の方へ向かって歩いてくる。 
今、自分が、会場内の主役だと気付いていないのだろうか。演技中からは想像もできない、 
ひどく無防備な笑顔を登美多ひとりに向けている。 

……こんな時、どんな表情を返せば良い? 
 笑おうとしたが、うまくいかなかった。 
 鉄棒の握り方、跳躍の仕方を教えてくれる人はいたが、登美多に「笑顔」を 
教えてくれる人はいなかった。不器用を無愛想と取り違えられ、誤解されるのはいつものこと。 
しかし、高校に入るまで、笑顔の必要性を考えたことは、ほとんど無かった。 
いつも隣に、笑わなくても通じる人がいた。自分の分まで笑ってくれる人がいたからだ。 
 進む道を分け、初めて登美多は、自分がどれほど貸間に守られていたかを実感した。 
言葉が足りない時、いつも貸間が隣からフォローを入れてくれた。生きることが不器用な登美多を、 
貸間は常に柔らかな膜で覆い、守っていた。 




 登美多の目の前に、貸間の拳が突きつけられた。演技を終えた興奮で、 
貸間の頬は赤く上気している。古い合図だ。 
 椅子から立ち上がり、登美多は親友と対峙した。 
 突き出された拳に、緩く自分の拳を当てる。体温が離れると共に、 
炭/酸/マ/グ/ネ/シ/ウ/ムの粉が、わずかながら空中に舞った。 
一瞬、泣きたくなるくらい優しい既視感が、眼前を過ぎる。登美多は、通り過ぎた記憶の残り香を辿ってみた。 
しかし、いつの思い出かは分からない。思い当たる記憶が多すぎるのだ。 
……それくらいに、何度もこうやって、互いの拳を合わせてきた。相手への、尊敬と賞賛を込めて。 
 貸間を目で追っていたらしい他校の選手が、わずかにざわめいた。 
「おい……貸間と一緒にいるの、去年、個人優勝した楽難の登美多だぞ」「あの2人って親しいのかよ」 
「幼なじみだって聞いたけどな」「うわ。なんか、スポ根マンガみたいな設定だな」「なんだそれ、出来すぎじゃねーの?」 
 周囲の喚く声が、登美多の耳に入ってくる。周りにどう思われようと構わなかった。 
しかし、少し困ったような貸間の微笑みに、口さがないギャラリーへ、泡立つような怒りを感じた。 
「ま、仕方ないよ。ヒロも俺も、なんか目立つみたいやし」 
 貸間は、登美多の怒りを敏感に察したらしい。空気を変えるように明るく笑って言った。 
「……そやな」 
 また気を使わせてしまった。登美多は、落ちそうになる肩を強く張った。 
自己嫌悪したことがバレれば、貸間は更に気を使うだろう。貸間は、驚くほど他人の感情に敏感で、優しかった。 
誰に対しても、分け隔てなく。 
 楽難のコーチが、貸間に近づいてきた。コーチは、先ほどのアン馬演技を手放しで誉めている。 
照れるように笑う貸間を、登美多はぼんやり見つめた。明るく礼儀正しく、 
しかも全国のトップ選手とあって、貸間はどこへ行っても人気者だった。 




 貸間は、誰にでも優しい。胸の中で繰り返してみた。鳩尾深くに、黒い感情が灯る。 
――そう。別に、俺が特別なわけじゃない……。 
 はっと気付き、慌てて感情の火を消す。この卑屈さは何だ? 
登美多は動揺した。なに馬鹿なことを考えているんだ。今は試合中で、互いの健闘を願う場面だろう。 
優しいとか、特別とか、そういう次元の問題を考える時じゃない。 
 どうかしてる。登美多は頭を小さく振った。こんなのは自分じゃない。 
器具に向かっている時の静けさを思いだそうとするが、 
胸の奥でチリチリ燻る何かが痛くて、どうにも上手くいかない。 

「ヒロ」 
 突然、名前を呼ばれ、はっと我に返る。貸間は、ようやくコーチに解放されたらしい。 
「なに」動揺を勘付かれそうで、相手の目をまともに見ることができない。 
「さっき見てたんやけど。すごい上達したやん。……驚いたわ」 
 演技の話を切り出され、登美多は貸間を見上げた。 
「……おい。9.98を叩き出したお前が、それを言うか?」 
 登美多は、半ば呆れて言った。今しがた、最高得点を叩き出した男の言葉じゃ無いな、 
と苦笑する。普通なら嫌味に聞こえるだろうが、貸間の場合、皮肉めいたものを全く感じない。 
先ほどの黒い感情が、ゆっくり瓦解していくのを感じた。穏やかな暖かさが、胸に満ちていく。 
 貸間は照れるように笑った。細い目がさらに細くなり、目尻に柔らかい笑い皺が拠る。 
「や、でも、得意なアン馬やったし。 
 これからは苦手な吊り輪とか続くしなぁ。ヒロは、こっからが本領発揮やろ?」 
「あー、まぁ。……そのつもりや」 
 答えた登美多は、貸間の整った体躯を眺めた。ある意味、貸間の身体は整いすぎていた。 
トップに君臨する体操選手としては、筋肉の薄さは否めない。 
……しかし。と、登美多は改めて貸間を眺める。 
前回の大会で顔を合わせた時よりも、格段に身体を作ってきている。 
 登美多は密かに驚いていた。これだけ筋肉をつけるには、 
どれだけ練習を重ねてきたことだろう。離れているからこそ、相手の練習量が一目で測れた。 




 不意に、貸間の顔から笑顔が消えた。 
 演技中以外で、こんな真剣な表情を見せることは、めったにない。登美多は身を固くした。 
「……あのな、こんな所で話すことやないと思うんやけど」 
 貸間は言い淀み、周囲を気にするような素振りを見せた。 
「なんや?」 
「その」音量を押さえた声が、貸間の口から漏れた。「……大学の話やねん」 
 大学。一瞬の空白を置き、頭を殴られたような衝撃が来た。 
 思わず辺りを見回す。コーチは他の選手のアップに気を取られている。 
色んな大学から、自分に推薦が来ているらしい、ということは担任教師から既に聞いていた。 
しかし、どこの大学か詳しく知らなかったし、知ろうともしなかった。 
 進路の選択は、嫌でも登美多に、高校を選んだ時のことを思い出させる。 
貸間と別の道を選んだ、あの日の事を。 

「タケ、それは……」声が上擦った。 
 貸間の目が、真っ直ぐ登美多を射た。普段見せない強い視線に、息を呑む。 
 貸間が意を決したように口を開いた。  
「俺と一緒に、殉大に行けへんか?」 
「ちょっ、待っ」 
「今日な、※田さんも会場に来てんねん」貸間は一瞬、目を伏せる。「……殉大の人と一緒に」 
 つまり、スカウトに来ているということか。登美多は下唇を噛んだ。 
この場、つまり、イ/ン/タ/ー/ハ/イで良い成績を残せ、という意味だった。 

「※田さんが来てるんか……」ぼんやりつぶやく。 
 きれいな顔をした、三つ年上の先輩の顔が思い浮かんだ。 




「真の天才」幼い頃、所属していた大層クラブのコーチが、 
※田の演技を見て、そう口走るのを、何度か聞いたことがある。 
 あの※田さんが……。大入りの観客席に目を向けるが、この遠さでは分からない。 
 貸間と共に大層クラブに通っていた時、戯れに※田が「技を教えたる」と言ってきたことがあった。 
幼い貸間と登美多は※田に質問をぶつけたが、結局、重要な部分は分からず仕舞いだった。 
「どうやったら、そんな風に回れるん?」と言うふたりの問いに、 
※田は首を傾げ、答えた。「え、回ろうと思ったら回れるやん」 
 当時は、教えたくないから、わざとそんな風に言うんだろうと思っていたが、今になれば分かる。 
あまりにもセンスが勝ちすぎ、※田自身も説明できなかったのだろう。 
「試合中に、心を乱すようなこと言って……すまん」 
 表情を暗くする貸間に、登美多は、何か言葉をかけようとした。……その時。 

 どしりと重い衝撃が背中を直撃し、言葉の代わりに「うぉっ」と情けない叫び声が出た。 
「せーんぱーい。俺の演技、見てくれてましたよ、ねっ?」 
 登美多の背中に飛び乗った那賀野が、後頭部に頭突きを食らわせた。 
「ぐ、痛ッ、やめッ」 
「まさか、話に夢中になって、見てないって言いませんよねぇ? まさか、そんな、ねぇ?」 
「やめんかい!」 
 背中から那賀野を振り落とし、一喝する。 
 床に尻餅をついた那賀野は、恨めしさを込めた目で登美多を睨み付けてくる。 

 貸間に向き直ると、貸間の表情は硬く凍っていた。 




 ____________ 
 | __________  | 
 | |                | | 
 | | □ STOP.       | | 
 | |                | |           ∧_∧ 終わってねーじゃん・・・ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | 

 読んで頂いた方、ありがとうございます。 
 この場を借りて、心よりの御礼を。 

 そして、ネタ元にした大層弾指のみなさん、スンマセン_| ̄|○ 
 イメージ崩してたら、ほんまにゴメンヨ。 
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