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*R.S.3_LxM 5 [#q59188b5] #title(R.S.3_LxM 5) [#q59188b5] 「ところで。」 ここは晩餐の間。 食後の茶を給仕されながら、レオニードが話題を変えた。 「貴方は側室を持つ気が無いのですか?」 ロアーヌにいる時から言われ続けてきた言葉。 性に対する自覚はあるものの、女性の相手をしたことはない。 理由は自分の出自にあった。 「ありませんね。」 権力闘争。 側室の子である自分が、いかに命を狙われてきたか。 同腹の妹モニカとは離れて暮らしてはいるものの、彼女もまた狙われることが多い。 父フランツが“鎮星”の持ち主である自分を後継者に選ぶのはわかっていた。 彼は“太白”の持ち主であったため、王者の星に対する憧れを持っていたのである。 しかし、それを周囲が認めるまでに時間がかかったのは言うまでも無い。 後継者候補にはフランツの弟達や、異母兄弟、異母姉妹の配偶者がいる。 ミカエルが唯一の息子であるとはいえ、側室の子は後押しが弱かったのだ。 だから彼は、誰もが認める正室を迎え、その正室としか子を成さないつもりでいる。 後継者の立場を巡って内部で争うことは、馬鹿げていると思うからだ。 レオニードが意味ありげに笑みを浮かべた。 「後で、玉座の間に来てはいかがです?」 深夜、町から一人の娘が連れてこられた。 季節に一度だけ行われる、この城独自の儀式である。 従者に紛れ、ミカエルは玉座の間の出来事を見る。 そこで行われるのは、吸血の儀式であった。 願い叶って城へ迎えられた女性ではあるが、緊張のためかやや青ざめていた。 永遠の若さを手に入れる代わりに、今までの生活を失う女性。 美しい娘の足元が、微かに震えているのがわかる。 一歩一歩、ゆっくりと玉座に近づきながらも。 #comment