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67-303 の変更点


#title(錆びないナイフ)
ナマ注意&甚だしい捏造注意。コレニカギッタコトジャナイケドスミマセン・・・ 
元青心・高低、現原人バンド唄×六弦ですが、 
語りは配線用遮断機時代の四弦唄さんです。 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 


1月25日。俺達は、終止符を打った。 

最高にイカしていたバンド、楽曲、無敵だった俺達。 
一度は足を掛けたメジャーへの階段。駆け上がるはずだったその舞台が、何か 
雲行きがあやしい、何かが違う、そう自覚し始めた頃からとうとう八方塞がり 
になってしまうまで、思い返してみればあっという間だった気がする。 


なあ、真×。 
オマエは、どんな気持ちでその状況の中にいた? 
オマエは、この日を迎えるまでの間に、何を見て、何を考えていた? 

真×、俺はオマエと同じ気持ちで在りたいと思っていた。あれこれ手を尽くし 
ても俺達の力だけじゃどうしようもなくなっていた状況の中、出した苦渋の 
決断。それでもまた真っ白な所からそれぞれ新しく進んでいこうと。この日は 
俺達の最後の日であり新しい始まりの日でもあるんだ、だから、今までの中で 
も最高のパフォーマンスをしよう、そうだよな? そう臨んだんだ、真×。 

そうして、俺達はやり切った。途中で泣いてしまったけど、最高のものにした。 
でも―、オマエが、“アイツ”を俺達だけのはずの舞台に上げるなんて。 





「相談しなかったのは悪かったよ。タ××が怒るのは当たり前だ、ごめん」 
オマエは、落とされた照明の中で言葉少なに言った。 
客が掃け、熱狂が過ぎ去ったライブハウスの片隅で、オマエの目も、俺の目も、 
まだ赤く腫れていた。 
「それだけじゃねえよ。アイツは、歌詞だって間違えたんだ、俺達の唄を!」 
昂った感情のまま、思わず声が荒くなってしまう。 
「タ××、もう終わったことなんだよ」 
大×が、俺と真×の間に割って入ってきたが、俺は彼の手を払いのけた。 
「なあ真×、なんでアイツを呼んだ、俺達だけの最後の舞台じゃなかったのかよ。 
オマエとアイツがこれから一緒にやるって事は知ってるし、別にそれは何とも 
思わねえよ、でも、今日はアイツは関係ねえだろうがよ」 
「……」 
「何とか言えよ、最後の日だってオマエはもう俺達なんかより、アイツが大事 
だったのか、そうなのか?」 
「…別に、何も言う事はないぜ」 
そう呟いてオマエは目を逸らし、壁に立て掛けたギターケースを手に取ろうと 
腕を伸ばした。 
俺は一気に頭に血が上って、オマエのその腕を引き掴み、壁に強く押さえつけた。 
「タ××!」 
大×の制止の声は、遠くにしか俺には聞こえない。 
真×は、俺と壁の間に押し付けられたまま、抵抗もせずに俺を見つめているが、 
その目からは何の感情も読み取る事が出来なかった。 
しばらく会わなかった間にずいぶんと痩せてしまった。オマエのその間の苦悩が 
痛いほど分かる。俺だって同じだ。 
か細い腕を握り締める。やつれても綺麗なオマエの顔が、少し苦痛に歪む。 





 違うんだ、こんな事したいんじゃない。 
 分かってる、只の嫉妬だって事は。 
 でも、オマエは俺を、俺達を、大好きだったじゃないか。 
 なのにオマエの心を一気に奪っていったような、俺と同い年のアイツ。俺とは 
 何が違うんだ、畜生。 

「…ハハハ…っ」 
俺は、泣きながら笑った。 
だって、オマエの目からも、涙が溢れだして、止まらなくなっていたから。 
肩を落とした俺の頭を、大×がくしゃっと撫でた。 
オマエは涙に濡れた目で、俺と大×を真っ直ぐ見つめた。 
「俺は、お前らが好きだ、これからも、ずっと。でも、もう、行かなきゃなんねえ 
んだ。俺自身の為に」 
ああ、オマエの掠れた声は、もう俺の知っている声じゃなかった。 
きっと、アイツの傍にいる為の声だった。 
「オマエは、本当に、勝手だよなあ」 
もう一度、オマエの腕を強く握り締めて、俺はオマエのすぐ横の壁に頭をぶつけた。 
コンクリートの冷たさと、痛みと、頬をかすめるオマエの髪。 
「…いままで、ありがと」 
「おう」 

オマエが消え入りそうな声で言った、感謝と決別の言葉を俺が受け入れたのは、別に 
俺がアイツに負けたと認めたからじゃない。 
変わっていく速度が違っても、前に進むしか道がないのは俺達もオマエもアイツも 
同じで、皆、同じ扉を開けたばっかりだという事に何となく気付いたからだ。 





アイツは、ライブハウスの外の階段にひょろ長い身体を屈めて寒そうに座っていた。 
ギターを背負った真×の姿に気付くと、アイツは暗闇の中でもはっきりと分かるよう 
な、そんな笑顔で、真×を迎えて二人一緒に歩き出した。 
俺は二人の後ろ姿を見送りながら、煙草に火を付ける。 
都会の夜空じゃ星は見えない。明日は晴れるだろうか。 
“マー××”、“ヒ××”、聞き慣れない呼び名が冬の風に流されて俺の耳を吹き 
抜けていった。 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 久しぶりに読んだけどこの作者さんすごい。個人サイト行ってからもめっちゃ書いてくれてるからね。 --  &new{2017-07-04 (火) 22:04:42};

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