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66-452 の変更点


#title(トクベツ)
O振り、らーぜのトウシュ×ホシュです。 
最近ハマったのでホシュの誕生日にじっとしてられなかった…… 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 


「お疲れー。寒いだろうけど体はしっかり拭いてから着替えてね、汗が冷えると風邪の元だよ」 
「みんなタオル持っていってね」 
「しのーか、オレにもタオル~!」 
「はーい。あ、阿倍君今日誕生日だよね。おめでとぉ」 
練習が終わってわいわいがやがや、その雰囲気は嫌いじゃねェけど 
積極的にその輪に入ることのないオレがマネジの一言で急に巻き込まれる。 
Ξ橋の誕生日以降そういったことを順番に祝ってきたから、期待が無かったとは言わない。 
でも、朝練のときにそういう雰囲気にならなかったから、てっきり何も無いものだと思っていた。 
他の奴らはともかくΞ橋ですら何も言ってくんねーし。 
いつも以上にちらちらと視線を送って来るくせに、オレが近寄ろうとすると慌てて逃げるように離れて。 
結局いつもみたいにやきもきして一日が終わろうとしていたのに。 
「部室に戻ったらプレゼントやるから」 
花居がにやりとした顔で振り返る。 
ハメられた。口裏合わせて言わねェようにしてたんだ。クソキャプテンめ。 
「いいなー阿倍は当日に貰えて」 
「どーいうことだよ」 
「ああ、そっか、瑞谷は冬休み中に誕生日来ちゃうもんね」 



「そーなんだよ栄□! しかも毎年じゃん。不公平だと思わない?」 
「そんなこと言ったら俺も新学期すぐだから大抵貰えないぞ」 
「後から貰えることもほとんど無いしな」 
「あ、やっぱり須山も?」 
「オメーらもΞ橋みたいに主張すりゃいーじゃん」 
「おっ、しゅ、主張して な…っ」 
「Ξ橋はおばさんが主張したんだよなー!」 
「ごごごごめ、な、さい」 
「謝んなって。オレはあれ楽しかったぜ」 
「でも、なかなか自分の誕生日って言い出せないよね……」 
「そうだよねぇ」 
捕手の癖か、少し俯瞰的に会話を聞いて「性格っておもしれー」と思う。 
それが顔に出たのを、 
「あっ、阿倍が嬉しそう!」 
「ばっか、ちげェよ」 
「阿倍、朝からなんか難しい顔してたじゃん。誕生日なんだから笑ってるほうがいいって!」 
目敏い田嶋に気付かれてオレは慌てて否定したけど、 
耳まで赤くなった顔をにやにや笑われてもうどうしようもない。 
12月生まれってだけで年下扱いされてる気がすんだよな…。 
よくとっつきにくいって言われるから、遠慮が無くなったのはいいんだけど。 
…つーか、 
「今日くらい素直に祝われとけって」 
花居が頭をぽんと叩いて横を通り過ぎながらと言った言葉にこっそり 
「はぁい」 
と返すくらいには、やっぱり嬉しかった。 



栄□のアドバイスを元に花居が買ってきたというプレゼントは 
キャッチャーミットのメンテナンスに使うクリームで、 
よくメーカーが分かったなと感心すると、 
人のいいキャプテンは和泉が教えてくれたんだとあっさりネタばらしした。へえ。 
和泉も案外観察眼が鋭いというか、ちょっとしたことにも気付く奴だとは思ってたけど、 
オレだったら他人の使ってる道具にまでそこまで興味は持てないから素直にすげェと思った。 
「サンキュ」 
「別に大したことしてねーよ。それよりこれ、濱田から」 
Ξ橋の幼馴染だという応援団長は確かに随分とオレら野球部に肩入れしてくれてるけれど、 
わざわざ個別に用意してるだなんて思わなかったから中が気になって開けようとすると、 
「あー、待て、それは一人のときに開けろ」 
と、和泉に制止された。 
中身知ってンのかよ、という疑問が浮かんだが、 
同じ9組だし仲も良いんだろうと思い直してそのまま鞄に仕舞う。 
どうせ今日はもう会わないんだし、家で開けて明日お礼言やあいいや、てな感覚で。 
「じゃあお祝いも終わったところで、阿倍、悪いけど鍵当番よろしくな」 
「げっ」 
キャプテンの言葉に、鞄を背負おうとしてた体が止まる。 
すっかり忘れていた。 
誕生日だから代わってやる……なんて奴がこの野球部に居るはずもなく、 
よろしくーという声がちらほら聞こえるほどだ。 
でも、それくらいでちょうど良かった。 
別に誕生日ったってそれほど特別なモンを感じてるわけでもない。 
朝練しててきとーに授業受けて弁当たらふく食って昼寝して練習して。 
そんな当たり前の一日でいい。……はずだった。 


なのに今は、Ξ橋が居るから。 
『祝われたい』という欲深さをオレは初めて知った。 
……まあ、それはどうも高望みだったみたいだけど。 
結局、口止めとかは関係無しに、あいつは言ってくんねーんだ。 
鍵と日誌を乱暴に受け取ると、オレはどっかと椅子に座って日誌を書き始めた。 
「先にごめんなー」 
へらっと笑ったクソレを先頭にオレに改めて「おめでとう」と言いながら、一人、また一人と帰っていく。 
最後に残ったのは田嶋とΞ橋。 
Ξ橋がまだもたもたとコートを着ている間に、田嶋が声を潜めて聞いてきた。 
「プレゼント、満足?」 
「どーいう意味だよ。充分過ぎんだろ、ちゃんと要るモンだったしな」 
「ふぅん」 
絶対納得してないその言い方が気になったのに、 
「お、お待たせっ」 
ぐるぐる巻きのマフラーから口をぷはっと出して田嶋を促すΞ橋の声が割り込んできて、なし崩し的に雰囲気が変わる。 
もーいいよ。さっさと帰っちまえ。 
「……阿倍も案外言いたいこと言わねーよな。何で?」 
「は?」 
「エスパーじゃないんだから言わなきゃ分かんねェよ。ほら、Ξ橋も」 
「たっ、じま、くん……あの、オレ は」 
「言いたいことは言わなきゃダメだぞ、ゲンミツに! 阿倍、これはオレからのプレゼントな」 
「おい、たじ」 
ま、とその名を呼び切るより早く嵐のように去っていく。 
静まり返った部室にオレとΞ橋が取り残されて。 
『これ』と田嶋が称したものは、Ξ橋……なんだろうな、この場合。 
けど、二人で残されたってどうしたらいいんだ。 



オレが言いたいことって何なんだ。オレにも分かんねェのに何で田嶋が知ってんだ。 
ぐるぐるぐるぐる、疑問が廻る。 
「あああああべ、く……」 
「ん、なんだよ」 
てっきり黙りこくるかと思っていたΞ橋の方が口を開いたからオレは促してやる。 
ちょっと意外だったけど、田嶋が「言いたいことは言え」って念押ししてたわけだし、Ξ橋は何かを言いたいんだろう。 
「……、ごめ ん」 
「だああっ、なんでてめーはそこで謝ンだよ!訳わっかんねェ!」 
「ううっ、ごめんなさ……」 
思わず立ち上がるとΞ橋はますます怯えたように縮こまって肩を震わせた。 
しまった。ビビらせたい訳じゃないのに。 
「だから、いきなり『ごめん』て言われてもオレは何に対して謝られてるか分かんねェだろ。説明しろって言ってんの」 
伝えたいことは丁寧に噛み砕いて、声の大きさにも気をつけると、Ξ橋は恐る恐る顔を上げた。 
ほぅ、と胸を撫で下ろす。 
ちょっとでも大きい声を出すとすぐ怒ってるって勘違いさせちまうことに気付いてから、 
オレはそれまでよりΞ橋と会話が出来るようになった気がする。 
「あべ、く……誕生日、お・オレっ、……持 って、な…い」 
「……持ってないって、何を?」 
何かの暗号文のようなΞ橋の言葉を、辛抱強く紐解いて、解読を試みる。 
せっかくΞ橋の方から切り出してきたんだから、きちんと言わせてやりたい。 
「プレ、ゼント……」 
「だって、花居からのにお前も金出してくれたんだろ?」 
「そ れは、そうだけど、オレ、阿倍君の『トクベツ』なのに……何もあげられな くて」 


何とか最後まで聞き取って。 
はぁああぁ~。 
思わずため息をついた。 
オレが息を吐き出した分だけ、Ξ橋の釣り目がちな目の淵にぶわっと涙が溢れる。 
「別にオレは怒っても呆れてもねェよ」 
「で、でもっ、オレが ダメ……だから」 
「そりゃ、確かに、期待はしてたよ。けどそれは物じゃなくてさ、なんつーの、 
言葉だけでもお前からなら充分なんだって。……それこそ『特別』なんだからさ」 
言っててめちゃくちゃ恥ずかしいけど、こいつはちゃんと言わないとすぐ悪い方向に考えるからな。 
オレ達は元々バッテリーっていう特殊な関係性を持ってはいたけど、野球を離れたところでも特別になって。 
じゃなきゃオレだって期待しねェよ。 
結局プレゼントどころかおめでとうも言ってもらってはない訳だけど、 
どうもΞ橋も意識してくれてたみたいだから、それでいいや、という気分になる。 
「う、うひっ」 
「分かったか? そんなことでいちいち落ち込む必要無いんだって。 
それよりお前、他に悩みとかねーの? 野球のこととかさぁ」 
「無い よ!」 
「……あ、そ」 
Ξ橋にしては珍しい即答っぷりにオレは二の句が継げなくなる。 
あんだけ野球が好きで、なのに悩みが無いってのは良いことなのかどうなのか。 
ま、Ξ星と違ってこっちではちゃんと『チーム』になってるからかな、なんて勝手に想像を巡らせていると。 
「阿倍君が 球、捕ってくれればオレ……全部平気っ、だ、から」 
ここでも自分の名前が出てきて心臓がばくばく言う。 
なんか、すげェ嬉しいこと言われた。 
サードランナー! って唱えたところで落ち着けるはずもない。 


「だから、オレも 阿倍君にちゃん、と お返ししたい…っ」 
「あー、もういいよ」 
その言葉だけで、どんな『おめでとう』も敵わないって思うもん。 
「よ よくな、い!」 
オレが内心幸せに浸っていると、Ξ橋は少しだけ表情を険しくして。 
いつになく強い口調で言い切るのと、ガチッと音がして歯がぶつかるのとは、同時だったと思う。 
「い……っ、たたた」 
自分からしてきたくせにその痛みにうずくまるΞ橋をオレは慌てて覗き込む。 
「大丈夫か!? くちびる切ったりとかしてねェだろうな?」 
「あ だ、だいじょぶ、デス」 
しまりのない顔でにやけるΞ橋を見ると、焦って心配した自分がバカみたいに思えて恥ずかしい。 
「ったく、なんなんだよいきなり」 
「ぷ、プレゼント、だっ」 
……。 
なに、いまどきキスがプレゼントって、それどんな雑誌の仮想デートだよ。それとも田嶋の入れ知恵か? 
あー、くそ。不意打ちのせいだ。今の、あんなキスとも呼べない接触で、こんなに舞い上がるなんて。 
「あ、阿倍く、血 が……」 
「ん? あぁ」 
舌で唇をぐるっとなぞると僅かに鉄の味がした。 
「ごめ、んね……あの、イタイ?」 
「いーよこんなの。舐めときゃ治る。でも次からいきなりはやめろよ。お前が怪我する可能性もあんだかんな」 
「う、うん! オレっ、いきなり しない!」 
「そーそー」 
「いきなりじゃなきゃ してもいい、んだ ね?」 



「は?」 
まぁ、そういうことになる……のか? 
でもなんかそれってちょっと違くねェ? 
「じゃあ、オレ、今からキス…するよ」 
へたり込んでいたΞ橋の体を支えていた腕を逆にぎゅっと掴まれて、真剣な顔が近くなる。 
それはいつもマウンドからオレを射抜く視線に似てて思わず見惚れた。 
って、そんな場合じゃねェだろ、オレ! 
「お、おい、みは――」 
「オレ、言ったから、ね」 
一人であたふたしている間にΞ橋の鼻先がオレのそれに当たるくらい近づいていた。 
荒い鼻息が濡れた唇に当たってリアルに感じる。 
その握力は、ひょろっちい腕をしてるくせにさすが投手というべきか、簡単に振りほどけるものじゃなくて。 
変に動いて怪我でもさせたら…と、恋人としてなんだか捕手としてなんだかよく分からない 
曖昧な心配もあって動けないでいる内に、距離はじりじりと詰められていく。 
オレはそれ以上Ξ橋の目に映る自分を見てられなくて、ぎゅっと目を閉じた。 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
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