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#title(いまはむかし)(1/8) 某巨大特撮ヒーロー(獅子兄弟、獅子→←明日虎) ※明日虎がショタ化しています。 あと、昔からあの容姿だったという設定でお付き合い下さい… |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 「…おい、何だそれ?」 こちらが持て余す程元気な弟子が一瞬で凍りつく。 小さな頭の角、両腕のリング、左足に残った足枷。 それはよく見慣れたもののはずだった。 その持ち主が明らかに子供であることを除けば。 「なあお前、名前は…」 ぽつり、と囁くように子供は答えた。 遠い昔によく聞いた声。紛れもない、俺の弟だ。 不穏な動きがあるとの通報を受け、弟は新人隊員と調査に向かった。 その結果悪さを働いていた連中は一網打尽にされ、最後のあがきで、横流ししていた武器で新人を狙ってきたらしい。 それを庇い、何故か弟はこんな姿になってしまったそうだ。 弟子は一旦は驚いたが、すぐ落ち着きを取り戻したようだ。 「まぁ、なっちまったもんはしょうがねえか。 明日虎、ひとまず俺のことは零さん…いややっぱり零兄さんと呼べ。 まず、俺から優しくされた事は、どんな小さな事でもすぐこの人に報告しろ。 それから俺が…いや人が傷めつけられるのを見たら、もっと偉そうな人に助けてもらうんだぞ」 「おい、零!調子に乗るんじゃない!」 「何だよ、相変わらず冗談通じねえな」 「零兄さん。兄さんはぼくより大人なのに、どうしてそんならんぼうな言い方をするの?早く直した方がいいと思うよ」 「…っ…!」 そんな事があったが結局弟と弟子は打ち解けたらしく、立ち寄る度に遊んだり、組み手をしたりといった光景を見た。 俺はといえば、忙しくて、中々二人のところには顔を出せなかった。 いや、本当は忙しさなんて口実だった。俺は意識して、なるべく二人に、弟に会わないようにしていたのだ。 ある日、事前に連絡も入れず、弟子が俺を訪ねてきた。 訪ねてきたというより、とうとう怒鳴り込まれたという方が正しかった。 「おい獅子!あんた明日虎に嘘ついただろ!」 「…」 「適当にごまかして…大体、何で自分の事教えなかったんだよ。何も言わないけど、あいつ、あんたの事気にしてるぞ」 「…すまん」 「何だよ、あんたらしくもねえな。…とにかく会ってやれよ。ごまかされてるなって、ガキでも結構分かるもんだ」 子供になった弟を初めて見た時、あいつは身を固くして座っていた。 周りは慌ただしく働く大人ばかり。そんな時現れた同族の男に飛びつくように、こちらへやってきた。 『どうしてぼくこんなところにいるの?あなた、名前は…?』 俺は答えられなかった。あれから何があったのか。 故郷が滅ぼされ、弟は囚われ。そのどちらからも俺は弟を守れなかった事。 『お願いです、なんでもいいから教えてください。兄さんはだいじょうぶ?』 その声も表情も、記憶にあるものそのままで。 それだけに、左足にぶら下がっている鎖が、いつも以上に重々しく見えた。 結局俺は適当な嘘をついて、俺自身の事は何も話さず、そのまま弟を連れ帰った。 弟子を持つ立場になりながら、俺は今でも師に教えを受けていた頃のままだ。 自分に対する甘さを捨て切れていないところも、あの時の弟に何も話してやれなかった弱さも。 弟子に何も言い返せない。顔を合わせれば生意気な事を言い、叱り飛ばす。 初めて弟子と出会った険悪なあの時も、こんなに黙っていたことはない気がする。 そう言えばあの時も弟は、何を言うでもなく静かに俺達を見ていた。 あいつはいつも何を思っているのだろう。あまりに近すぎて、かえって知らない事が多すぎる。 そんな事を考えていると、弟子が口を開いた。 「…あ~あんたも、こういうところがあるんだな」 「…どういう意味だ」 「人の事しごいたり、傷めつけたり、鬼みたいなあんたでも、こんな風に迷うことがある。意外だな」 「…そうだな」 「とにかく会ってやれよ。とりあえず家族がいるってだけで、子供は結構安心出来るもんだ」 目つきの悪さも態度の大きさもそれ程変わっていないはずだが。 そう言ってすぐそっぽを向いた弟子は、初めて会った時とどこかが確かに違っている。 「…それにまあ、母が忙しいから子供のまま預かる事になったんだ。帰ってくればすぐに片付くだろ」 「…お前」 「何だよ?」 「…お前という奴は!」 「うわっいきなり抱きつくな!?気持ちわりぃ!おい、止めろ!離せ!」 その時ちょうど入室してきた女子隊員が何も言わずに出ていった。 そしてざわめきの後、皆が部屋に押しかけてきた…などのトラブルもあったが、とにかくそういう訳で俺は改めてあいつに、いや弟に会いに行く事にしたのだった。 文字通り飛んで駆けつける。 若い男女が肩を寄せ合って歩き、親子連れが遊んでいる広場でただ一人。 あいつはぼんやりと空を見上げていた。 『僕らの星に比べて、ここは何もかも少し眩しすぎるんだよ』 そういえばある時、そんな事を言っていたのを思い出す。 「明日虎」 思ったように声が出ない。いつもはもっと大きな声で叫ぶことも出来るのに。 「あ、おじさん。どうしたの?」 「…おじさんじゃない」 「ぼくからしたらおじさんだもん」 「…お前なぁ」 「それにぼく、おじさんの名前、知らないし」 「…すまなかった」 「ふふふ」 咎めるでもなく、縋るでもなく、ただじっとこちらを見ている。 その顔は確かに幼くなっているのに、俺は何故か子供の頃ではなく、 ごく最近の弟を――俺が弟子を指導しているのを、何も言わず見ていた時の顔を思い出した。 どこか寂しそうな、そして微笑ましいものを見ているような。 俺と弟はこの世にたった二人きりの兄弟だ。それでもいつも一緒にいる訳ではない。 それでも。 どんなに離れていても、会う事がなくても。俺と弟は、この世にたった二人の兄弟なんだ。 ひとまず今の俺には、名乗るだけで精一杯だった。あいつは一瞬何とも言えない顔をこちらに向けて、すぐに俯いてしまった。 「…ばか」 小さな声がして我に返った。片手に小さな柔らかいものが触れている。 しっかりと、両手で包み込むような握手。 「兄さんのばか」 ふふふ、と笑い声がした。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 母が多忙で治療にかける時間がなく、獅子零が預かる事になった…という事で許して下さい。 いい兄さんの日記念…的な。獅子兄弟はかわいすぎる。 #comment