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65-464 の変更点


#title(蟻亜土ね 兎愚痴逃避行)
罰☆ 蟻亜土ねスレより 
兎と愚痴の逃避行話に滾り過ぎたので今更ですが落とさせて頂きます 半生注意 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 



「―――警察はこのまま沈黙を通すのでしょうか。今後の展開が注目されます」 

カチリ。 
そのまま画面を落とした彼が間髪入れずに振り向いたので、驚いて咽そうになった。 
「大丈夫?ゆっくり食べなよ、時間はたっぷりあるんだから」 
静寂の中、可笑しそうに云う彼の声が響く。 
そのまま靴音もさせずに近づいてくるのをぼんやり見上げていると、食事を摂っている―――摂らされている、というのが正しい表現なのかも 
しれないが―――自分のすぐ横に、手近な椅子を引き寄せて彼が座った。 



「兎見さん…」 
意味もなく名前を呼ぶとくすりと彼が笑う。口元を指で拭われ、それを彼が自分の口に含んだ。 
「美味しいね?」 
「…………。」 
気を付けていたのに―――。度々の己の失態に羞恥しつつ、味が良いのは事実だと思ったので俯くように頷く。 
無音すぎる空間は自分が咀嚼を繰り返す僅かな音すら煩いと感じるのに、そうやってじっと見つめられると本当に食べづらい。 
だが、それを不満として口にすることは憚られた。云ったところで彼の機嫌が悪くなることも、こちらに危害を加えることもないのは解っていたが。 



「なに?」 
「……ちゃんとご飯、食べてますか」 
肘を付いてこちらを見ていた彼が息を吐くように笑った。 
「食べてるよ。どうして?」 
「僕のこと危機感がないって笑ってたけど、人質にこうやって規則的な食事を提供している兎見さんだって、」 
「人質に、じゃないよ。田愚痴先生だからちゃんとしてあげてるんだよ」 



長い鎖に繋がれた手錠は片腕だけに嵌められているので別段不自由もない。 
そもそもここに連れて来られる迄も兎見が自分を連れ回すのを迷っているように感じる瞬間が度々あり―――彼はいま、単に一人で居たくないだけ 
なのかもしれないと―――リミットは末先事件の判決だろうというのもなんとなく見当がついていたので、それならとことん付き合おうと思った。 
実際無罪判決が出たあの日、兎見はドアを施錠しないまま出掛けていった。部屋中を探せば手錠の鍵もあったのだろうと思う。 
戻ってきた中に自分を認めた彼の安堵したような、縋るような目の色に、ああやはりこれで良かったのだと感じた。 
白取が聞いたら呆れるか激怒するか。いずれにしても良い反応はされないだろうが、いまの兎見の傍に居てやりたいというのは医者としての自分の 
性分なので仕方がない。 



地下にあるらしいこの場所はバーか何かだったようで、テーブルや椅子がところどころに積み上げられ、業務用だったのか単に飾りだったのかは 
知らないが、ワイン樽や木製の篭などもあちこちに点在していた。 
睡眠をとるときは同じくその辺りにあったソファをくっつけた、まさに簡易ベッドといえる代物に横になっていた。 
埃まみれの床に座って仮眠をとる程度だろうと想像していたので、兎見がそんなことをしてくれるのが少し意外だったが。 
寝ろと云われた通りにそこへ転がったらふっと笑われ、それにむっとしたら余計笑われた。あえて何のコメントがないのがまた憎らしい。 
長身の彼には窮屈だろう寝床も、小柄な自分には確かにそれで十分ではあったが。 


「……ちょっと違う拘束の仕方をしようと思って」 


とある夜、懐に持っているはずのものを使おうとしない彼に内心首を傾げていると、そんな説明があった。 
互いを手錠で繋ぎ、横たわる自分の傍らに蹲るようにして兎見はいつも仮眠をとる。 
とうとう紐か粘着テープで全身を固定されるのだろうか、それだと自力では脱出できないからちょっと困る―――などとつらつら考えていると、靴を 
履いたまま兎見が隣に乗ってきた。 



「狭いね」 
そのまま背中から抱き込むようにされ、さすがに驚く。 
「……僕、逃げませんけど……」 
「知ってる」 
囁くように返事をして更に腕の力を込めてくるのに、もう何かを問うのはやめようと目を閉じた。 
おそらく警/察/庁のなかでも他の捜査員とは一線を画す存在であろうこの男に、深い孤独のような何かが横たわっているのはここ数日で感じている。 
命令とはいえ、父とも慕う人を自分の手で殺させられた、痛み。 
こんなことでそれが少しでも和らぐのなら、好きにすれば良いと思ったのだ。 
喜多山との過去に何があったのか、これから何をしようとしているのか。 
訊ねたところでまともな返事などないのだろうけど。それでも、とやはり懲りもせず薄く瞼を開き、背後の男に問い掛ける。 
「兎見さん……」 
「………なに」 
「ひとつだけ―――。あなたが持っている真実を、ひとつでいいから教えて貰えませんか」 



「……そうだな」 
長い、もう眠ってしまったのかと思うほどの沈黙のあと、やがて彼が口を開いた。 
「俺はあんたが好きだ」 
「兎見さん」 
真面目に訊いたのに。文句を言おうとしたところへ、強烈な睡魔に襲われる。 
ああ、さっきの食事か……思ったときにはもう瞼が上がらなかった。 
僕、やっぱり危機感なさすぎだなあ…。薄れゆく意識の中で“真実”という言葉を耳にした気がする。 
頬を滑り、唇にふわりと触れた記憶は、夢か現か。 
「……今となっちゃそれだけが俺の真実だよ、田愚痴先生」 



目覚めると、当然というべきか彼は居なかった。 
ノートPCなども持ち去られている。思っていた通り、もうここには戻らないつもりなのだろう。 
身体を起こす。携帯、財布―――取り上げられたものが全て揃えて置いてあった。 
地上への階段を上がった先に開けた視界は覚えのある風景で、意外に近いところに居たのかと驚く。とりあえず愁/訴/外/来をコールしようした矢先、 
不意にそれが震えて着信を伝えた。 
一瞬びくりとはしたものの、見知った名前が表示されるのにほっと息をつきながら通話ボタンを押す。 
「……もしもし」 
『愚っ痴ー!?やっと繋がったよいまドコ!!兎見は!!』 
「あー…えーと、ですね…」 
何からどう説明しようかと彷徨わせていた視線が、大型家電量販店のガラス越しに映されたテレビ画面に吸い寄せられた。 
遺憾ながら殺人事件など日常茶飯であるこの国。だが女子高生が被害者であるというそのニュースは何かの警告のようで妙に気になった。 
何があったのか。何をしようとしているのか。 
『わかんないならとりあえず目に映るものを云ってよ。いま迎えに…』 
あの男は、いまどこかでこの映像を見ているだろうか。 



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 

時系列はなるべく考慮したつもりですがラストは9話予告の想像だけで書いているので実際のOAとはちょっと違うかも 
愚痴には手酷くできない兎が好きなんだ… 
代行スレの存在を知らず何度も失礼致しました 代行投下してくださった方本当にありがとうございます
- 虚無感に満ちたブレーキが壊れたかのような兎で、とても好みです。 --  &new{2012-09-23 (日) 00:45:40};
- 虚無感に満ちたブレーキが壊れたかのような兎で、とても好みです。 --  &new{2012-09-23 (日) 00:45:46};
- 虚無感に満ちたブレーキが壊れたかのような兎でとても好みです。お話も切なさが余韻で残って素晴らしいです。素敵なお話をありがとうございます。 --  &new{2012-09-23 (日) 00:50:08};
- 虚無感に満ちたブレーキが壊れたかのような兎でとても好みです。お話も切なさが余韻で残って素晴らしいです。素敵なお話をありがとうございます。 --  &new{2012-09-23 (日) 00:51:00};

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