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#title(ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11) 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )これで最後になるはずです! 

バルドがいつか来るのを待っていた。それが殺す目的でもよかった。 
「異世界の」 
バルドが泣いているのがわかった。 
声が、少し震えているからだった。 
「あのロウッドとレインになろう。この世界で。だから、早く血を吸え」 
一瞬彼の言っていることがわからなかった。 
レインとロウッドは、異世界で永遠を分かち合う存在になった。 
「バルド、馬鹿を言うな…」 
ぐ、と、少しだけ力を込めてバルドの胸板を押した。 
けれどそれより強い力で、バルドは夜桜を抱きしめた。 
「ヴァンパイアになる方法はなんだ?血を吸うことだけじゃないのか?」 
「!」 
聞いたことがある。 
人間をヴァンパイアにしてしまう方法。大抵は手下にするためだが、相手の血を自分の血と混ぜて相手の傷口に入れてしまえば、ヴァンパイアに六日でなる。 
だけど、彼には仲間がある。 
「できない」 
夜桜は小さく首を横に振った。 
「何でだ!!」 
「バルドの人としての生を壊してしまう」 
「馬鹿」 
と、でこぴんが軽く夜桜の額に飛んだ。 
驚いて目を白黒させる夜桜を見て、バルドはくすくす笑い出した。 
「この寂しがりが。永遠にそばに誰かいてやらないとどうせ悲しむくせに。非行に走ったからにはちゃんと面倒見ないとな」 
「でも、お前には仲間がっ」 
「ああ、あいつらな、あの二人。結婚するんだ。だからあと一週間で仲間から外れるんだ。すでに家も購入済みだし、今後俺一人で夜桜探す予定だった。なんだな、一人になるとわかると寂しいもんだな、お前の気持ち、ま、このバルド様だから少しだけどな、わかるよ」 
「…二人を祝福しないと」 
にやりと笑うバルドを見て、夜桜は昔に感じた心の熱さを思い出した。 
好き。ずっと好き。 
一緒にいたい。 



「バルド、一緒にいたい。もし私と共に人生を歩んでくれるのなら、本当にヴァンパイアにしてしまう」 
「構わないよ」 
それに、とバルドが続ける。 
「久しぶりに抱きしめた夜桜、本当に安心した。俺が癒してやってるようで、俺も癒されていたんだなあー」 
ほーっとため息をつくバルドを見て、夜桜ははにかんだ。 
いちいち臭いセリフはくな、流石はバルド。 
そこまで思って、あえて言わなかった。 
「俺の宿来いよ。一緒に旅しよう。一人でずっと寂しかったんだろ、夜桜のことだから」 
少し離れて、手を伸ばす。その手をとると、夜桜は立ち上がり、エルブンランスを手に取った。 
血で黒くなったミストフードがやたら目について、それは夜桜の心からにじみ出た涙の血であることにも気付いた。 
「これ」 
荷物の中から、普通のローブを取り出した。神聖なローブは夜桜には辛いだろうから、先ほど寺院で購入した、買い物の依頼のローブを渡した。 
「着て正体隠せ、警備員に見つかると厄介だ。どうせまた寺院行けば売ってる」 
ローブを夜桜がとり変える。 
人の目につかないところでローブを脱げば、一年前よりも擦り切れたあの服を着ていた。 
「あとさ」 
「?」 
「もう、お前は夜桜って名乗って良いんだからな」 
きついくらい手をつないで、宿までついていく。 
「…うん」 
少し頬を染めて、夜桜はバルドの方に頭を預ける。 
一年ぶりに顔を出すと、仲間たちは驚いて声をあげた。そして名乗らない悪の英雄の正体も夜桜だということを、夜桜自らが話した。 
それでも仲間たちは変わっていなくて、もうしないなら、と笑顔で夜桜の頭をなでた。すっかり髪はくしゃくしゃになってしまった。 
「二人ともおめでとう」 
夜桜は、手櫛で髪を整えながら、優しい笑みを浮かべ、仲間に告げる。この二人は結婚して子孫を作るだろう。 
その夜桜の笑顔は、ついさっきまでさっきと悲しみに満ちていたものとは全く違っていた。 
バルドはそれを見て、にこりと笑った。 
「ありがとう。あなたたちもね」 
返された言葉に、バルドが笑みを漏らして続けた。 
「俺、もう人間じゃなくなるけど、それでも俺たち仲間だからさ。…夜桜もな」 



「そうね…前から決めてたものね。あなたたちなら害をなすヴァンパイアにはならないと信じているわ。もしよかったら、私たちの子孫の様子、見守っててほしいなあ。ね?」 
「そうだな、バルドと夜桜なら…それも良いな。たまに遊びに行くよ」 
前から決めていた? 
その言葉が夜桜に引っ掛かった。 
夜桜は、バルドのひじを引っ張る。 
そして何も知らないその赤い瞳で、バルドを見つめた。 
「前から決めていた…って?」 
ああ、とバルドは頷いた。 
少し頬をかいて、夜桜の頭をなでた。 
「お前がいなくなった一カ月くらいしてから、またあの異世界のロウッド達の話を読んだんだ。そこで覚悟決めたよ、夜桜を見つけたら、同族になろうって」 
「バルド…」 
「あーもー、男同士でそういうシチュエーションになるなら、自分の部屋で存分にやれ!!」 
仲間に放り出され、二人はバルドがとった部屋に向かった。 
扉の向こうで二人が手を振るのを見た後、夜桜は今までの自分の行いを恥じた。 
二人でベッドの上に座って、バルドは夜桜の髪をなでていた。 
「バルド、ごめん、バルドがそんなに思ってくれてたのに、私は…」 
泣きだしそうな顔で謝る夜桜の唇に、バルドは軽く口づけする。 
「元のお前に戻ってくれたなら良いんだよ、俺様は心の広い人間だからな。夜桜、ヴァンパイアにする前に、わがまま聞いてくれないか」 
「…?」 
そのまま、どさっとベッドに押し倒す。けれど、今回は覆いかぶさるだけで、無理強いしようという気はないようだった。 
「俺に抱かれてくれ。お前だけをこれから抱きたい」 
「…好き?」 
まともに目が合うのが恥ずかしくて、夜桜は顔をそらしたが、抗うことはしなかった。 
「愛してるよ」 
濃厚な口づけが交わされる。ずっとほしかったもの、愛する人が、やっとこの腕の中に降りてきて。夜桜はその夜、バルドに抱かれることになった。ゆっくりとロープを脱がされ、服も脱がされる。バルドは少しじれているのか、息荒く服を脱ぐ。 
夜桜の体は傷がなかった。 
きっと今まで何度も傷を受けてきただろうが、驚異の治癒能力で治ったのだろう。それでも心はずっと傷ついてきたに違いない。 
優しくバルドはもう一度、夜桜の耳に口づける。 
肌に触れるたび、夜桜は戸惑った声を出したが、何度もそれを繰り返せば、甘い声に変わった。 




夜が過ぎ、朝が訪れた。 
結局夜は、夜桜は初めてだというのに、何度も何度も欲望をぶつけられて、半泣きですがりついてしまったのを覚えている。 
痛いのか辛いのか、けれどほとんど最後の方は頭の中が真っ白になるほど、今まで味わったことのないほどの快楽を感じた。 
腰のあたりがだるいまま、夜桜は朝に目を覚ますと、隣にバルドが眠っていることに気付いた。 
隣、というよりその腕の中に抱かれている。 
そこでもう一度確信する。 
バルドと本当に心が通じたんだと。 
「バルド…」 
約束のことだ。 
彼を、同族にする。 
「…ん、ああ、夜桜…。体は大丈夫か?あー、昨日はすげーよかった。うん、よかった。優しくしたつもりだが、痛がっていたようだけど…おわっ!」 
その言葉を聞いて、夜桜は反射的にそばにあったクッションで思いっきりバルドをひっぱたいた。笑いながらクッションを受け止める彼に、夜桜は少しむっとした顔つきになって彼を見る。 
「本当に、覚悟はいいのか?ヴァンパイアになるのには六日かかるらしいぞ」 
「知ってる、知ってる、何度も本で読んだ。ロウッドの時は重症だったからあれだけど、六日間目覚まさない間、もし仲間が去ってったら俺は無事だから、そのうち遊びに行くって言っといてくれ。善の英雄のバルド様がヴァンパイアなんて、変な気分だなあ」 
夜桜の手に口づける。 
その目は、早くヴァンパイアにしてくれといっていた。 
力強い視線に、夜桜は覚悟を決めて、バルドが抱き締める中、首筋に牙を突き立てた。派手に血が出るほどでもない。少し流れる血を吸いとって、己の舌を噛んで、血を混ぜる。それを傷口に押し込むだけ。 
 これでヴァンパイアになるのだろうか。 
そう思いながら、その行為を繰り返すと、すとんとバルドから力が抜けた。慌てた夜桜はバルドを揺さぶったが、全く反応がない。 
だが心臓はちゃんと動いているし、脈もある。 
これが、ヴァンパイアになる過程。 
 心を落ち着けて、夜桜は眠ったままのバルドのそばで、六日間、朝になると眠っていた。 
それまで夜は何をしていたのかというと、バルドにもらった旅行記や世界に関する話を見ていた。 
悪の英雄ヴァンパイアと、善の英雄バルド。 
エルブンランスを手に取る。 
それを布でふくと、少しだけ輝きが増した。随分とこのアイテムも血を吸ったものだ。 



そして放っておかれているミストフードは本当に血で真っ黒で、何色かもわからない。 
そういえば、異世界へ行ったことがない。 
バルドがもしも目覚めたら、異世界に行きたい。できればあのカルアディアに。 

六日が経過し、流石に心配した仲間がやってきた。 
目をつむって横たわるバルドに、二人はやはり慌てた。けれどだんだんとヴァンパイアになっている気配がする。 
「夜桜、バルドは」 
「もうすぐ目覚めるはず…」 
恐らくもうすぐ。外は驚くほど快晴で、木々がざわめいている。 
と、がさ、と音がして、バルドの方を見た。 
「バルド?」 
手がわずかに動き、目が開かれる。青色だった目は赤に染まり、ゆっくりと起き上がった。 
「凄いな、ヴァンパイアは。人間とは比べ物にならない力を感じる。なるほど、これならノーライフキングと互角に戦えそうだ。今日は何日だ?」 
バルドは赤い瞳のまま、三人を見た。 
力があふれ出る。スティールエナジーだってカードがなくても打てる勢いだ。けれどバルドは善人。 
どれだけヴァンパイアという悪属性になっても、根っからの善人なのだ。恐らく人殺しはしない。 
「六日経った。五月十二日だ。血はほしくないか?」 
「きっちり六日か。血は、ほしくないな、ただ喉が渇いた、水がほしいな」 
人間とヴァンパイアの中間なのだろうか。それでもバルドはベッドから起きると、水を持ってきた夜桜の頬を撫でた。 
「一生一緒にいよう。寂しがり屋の夜桜のためだしな」 
「バルド、夜桜大切にしろよ」 
仲間の言葉に、バルドは笑みを浮かべて頷いた。 
「大切にするさ」 
それだけ言うと、世界地図を広げて、夜桜とどこに行くかで話し始めた。 

そして半年がたつ。 
バルドは相変わらず善の英雄として称賛され続け、ほぼすべての街で善の英雄になった。 
一方名前のわからない悪の英雄は現れなくなったことで、半年がたてばすっかり話が上がらなくなった。 



二人は寺院に設置された冒険者用のゲートを前にし、手をつないで異世界へと旅立った。 
目的地はカルアディア。ロウッドとレインのいる世界だ。 
バルドは相変わらず甲冑を身にまとっていたが、夜桜は新調されたミストフードをかぶって、その世界を渡り歩いた。 
イルタール、イレノンモのある世界、海より陸のある世界。 
同じ世界もあるが、ずいぶんと違う世界構成の地図を見て、夜桜は歓喜の声をあげた。 
来光都市に馬車でたどり着いた二人は、雑踏の中、ある二人とすれ違った。 
「あ」 
夜桜が、声を出してすれ違った相手の気配に気づいた。 
明らかに気配が人間ではないことを、同じ種族である彼は敏感に感じ取った。 
相手もローブをはおっていたが、精霊の槍を持った男だった。 
ちらりと見えた目は、赤色だった。 
「どうした、レイン」 
その言葉に確信する。本に書かれていた、あのレインだ。 
レインと呼ばれたその男は、立ち止まり、じっと夜桜を眺めていた。 
意志の強そうな目は夜桜とは違うが、どこかやさしそうな表情は、今満たされていることがすぐにわかった。 
「いや、私と同じことをする同族もいるものだと思ってな。善人と組むのも珍しい。行くぞ、ロウッド」 
それだけ呟くと、レインと呼ばれた男はすぐにロマール戦士の元まで歩いて行った。 
夜桜は去っていく彼らを見守った。 
その夜桜の肩を抱きながら、バルドは宿屋に入っていった。 
永遠の幸せと愛の始まりである。 



終わり 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )終わりです。短編でアホみたいな小説ができたので、それもいつか公開したいと思います。 
感想とか色々とありがとうございます! 
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