Top/57-119

57-119 の変更点


*犬も食わない [#m58dc296]
#title(犬も食わない) [#m58dc296]
ピンポン ドラチャイ 
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 57-113 の小話 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

きっかけはささいなことだった。 
何かの拍子に、風間と孔が珍しく喧嘩になった。 
いつものように居酒屋で、楽しく飲み且つ食べる時間のはずが、二人ともお互いに譲らない。 
風間はむっと黙ったまま孔を見つめているし、孔は自分の持ちうるかぎりの語彙で、怒りを表現している。 
孔は風間が何も言わずにいることに、だんだんむかっ腹が立ちはじめていた。 
だいたいなんだ。 
言葉にせずに相手に伝わるはずがないじゃないか。 
俺がこんなに一生懸命、お前の言葉でしゃべろうとしているのに、どうしてお前は黙るんだ。 
くそ。 
そんな目で見るなよ。 
俺の言いたいことなんかお見通しかよ。 
「風間っ」 
「おまたせしましたー。酎ハイと生ビールになりますー。ご注文は以上でよろしいでしょうかー」 
かっとしたところで、追加注文していた品物が届き、孔は気勢をそがれて、目の前に置かれた酎ハイをあおった。 
つられたように、風間も生ビールを口にする。風間が孔を見た。 
あっ。またそう言う目をする。言ってやる。やっぱり言ってやる。 

「もうっ、風間、そんな、人、ハダカにして、舐めるみたいに見るなっ!」 

ぶふぅっ 

思いきり、風間がビールを吹き出した。 
満杯だった生ビールは半分以上こぼれ、白い泡がぼたぼたとあちこちに吹き飛んだ。 
むせた風間はおしぼりで口と鼻を押さえ、咳込んでいる。 
周りの客の視線が痛い。 



あ、あれ? 
日本語おかしかったか? 
見透かすようなその視線が気にくわない、と言いたかっただけなのだが。 

「……孔」 
憮然としながら吹きかけられたビールを拭いていると、ごほごほと苦しそうな息の間から、風間が言った。 
「…それは、かなり性的な意味に聞こえるが、そう言う意味か?」 
「え?」 
「私が、お前を、性的な視線で見ていると、そう言う意味に聞こえるが」 
立ち直ったらしい風間が、咳込みながら笑いを含んだ声で言う。 

かぁっと頭と顔に血が上り、ビールを拭いていたおしぼりで風間の頭を一つはたくと、財布から札を出してテーブルに叩き付け、「私もう帰るよっ!」と叫んで孔は席を立った。 
「待て、孔、待て」 
慌てて風間が追いかけてくる。 
かっかと顔がほてる。 
くそう。 
風間め。 




孔が席から立ち上がるのを見て、風間は慌てた。 
本気で怒らせるつもりではなかったのだ。 
孔が置いた金と伝票をつかみ、荷物を抱え、財布を出しながら会計へ急ぐ。 
孔はどんどん歩いて行ってしまう。 



まったく。 
風間は苦笑する。 
私としたことが。 
孔があまりにもかわいいことを言うのでからかいたくなったのだ。 
男相手にかわいいと思うのも、いかれた話ではあるが。 

会計を終え、店の外に出ると、孔が早足で歩く後ろ姿が見える。 
ほとんど走るように大股で歩き、孔の隣に並ぶ。 
「孔、悪かった」 
「もう、知らないよ」 
「悪かった。そう怒るな。少しからかっただけだ」 
「知らない、ってば」 
拗ねたように孔が言う。 
いい年をした男同士が、何をしているのやら。これではまるで痴話喧嘩だ。 
まだ怒っている孔をなだめながら、風間は再び、苦笑を浮かべた。 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
#comment

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP