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*アウトテイクス [#j64de9ff] #title(オリジナル 「アウトテイクス」) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | オリジナル、エロなし。 | 生のモデル氏イメージ拝借。 | エピ等大方捏造です。 ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 思い当たったファンの方ごめんなさい。 | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ アポイントメントの時間どおりあらわれた彼は、 ランウェイさながらの優雅さで―― 百聞は…をまさに実感させるルックスだった。 美しい。 ただただ美しい。エレガント。 彼にとっては今まで無数に浴びせられたひどく退屈な賛辞だろうが、 それ以外に言葉が見つからない。 小さめの頭、整った顔立ち、長い手脚にすらりとした姿勢、完璧な歩き方。 基本的にファッションモデルがひとにぎりの特別で選ばれた人たちとはいえ、 自分たちとおなじ生身の人間かと思うくらいだ。 インタビューに用意したこの部屋に入るとすぐ、 彼は待ち構えていたわれわれ3人 ――カメラマンのアーティ、コーディネーターのポリー、そしてインタビュアーのわたし―― の顔をそれぞれまっすぐに見交わし微笑んだ。 撮影用ではない(エディトリアルでの彼は時に妖艶だ)その顔は、 初対面のせいかややぎこちなさも垣間見えるが、 あたたかみのあるものだった。 それは事前資料として見た何冊もの(スノッブな)ファッション雑誌、 シーズン・カタログ、ショー・ビデオのなかに 少しだけ混じっていた楽屋やパーティでの表情を彷彿させた。 わたしは彼がひと目で好きになった(たぶん他のふたりも)。 ちょっと意外だったのは、彼がたったひとりで現れたことだ。 マネージャーの同伴なし。 モデル界のプリンスは従者を必要としなかった… わたしは頭に浮かんだ書き出しをすぐさまボツにした。 わたしたちはそれぞれ挨拶と握手を交わし、仕事に入った。 トップモデル・マーティス・Lとの独占インタビューとフォトセッション。 「ひさびさに母国語で話せてうれしい」 それが社交辞令でなく心からの言葉だというのは、 ひねたジャーナリストのわたしにもすぐ伝わった。 マーティスは17歳でモデル・エージェンシーにスカウトされ、 翌年には有名メゾンのキャンペーンモデルに抜擢された。 以来パリ、ローマ、ミラノ、マドリッド、ベルリン、そしてここNY―― 世界中を飛び回る彼は、 英語はもちろん仏語、スペイン語の日常会話にも不自由しない。 現在の住まいはマンハッタンのホテル。 「でもあまり住んでるって気がしない。 いつも旅行者みたいだ。 まあ実際そうなんだけど」 本当は犬を飼いたいんだけど、と彼は肩をすくめた。 ――犬。わたしはすぐ、ごく最近のエディトリアルを思い出した。 馬上の彼と、短毛種のすらりとした黒い猟犬。 「あの犬もよかったけど、ちょっと気が荒くて…」 と彼は苦笑した。 噛まれそうになった? 「あやうくね。主人にしかなつかないタイプの犬なんだ」 でも大丈夫だったから、とすぐ付け加える。 「犬は替えがきかなかったし…」 ピンときて、「カメラマンの気に入る犬がほかにいなかったんだ?」 とわたしは訊いた。 「そういうこと」 我が意を得たりと彼は笑った。 カメラマンって人種は頑固だからな、 と横からの茶々入れは撮影中のアーティ。 「そうそう、撮りたいイメージにこだわりがあるからね。 そのためにぼくらモデルをタキシードのままプールに落としたり、絵の具だらけにしたり、 羽毛を部屋中いっぱいに降らせてみたり……あなたもそう?」 彼に向けられた笑顔を抜かりなくカメラに収めていく。 「いいや、俺はいつだってあるがままさ。無理強いはしない」 アーティもプロだ。 リラックスした彼の表情が紙面満載ともなれば、 北欧の新聞日曜版でも、いつもの倍以上の売れ行きは固い。 なにせマーティスは我が国出身の世界的スターのひとりなのだから。 「たしかジャックだったね、そのときのカメラマン」 とわたしは脇に逸れかけた話を戻した。 ジャックは一般にも名の知られる大御所クラスではないにせよ、 ファッション界では一流どころのひとりだ。 若く、才能があってルックスもいい。 父は英国貴族、母はアラブ人。 エキゾチックな風貌も魅力的――と、どこかのゴシップ記事で読んだ記憶がある。 「…うん、そう。ジャック」 言いながら顔をちょっと俯けたせいか、声が少し小さかった。 彼の軽快さがちょっとトーンダウンしたように思えるのは気のせいだろうか? 「大変なのは犬だけじゃなかった?」 ふふ、と彼は膝に目をやったまま肩を揺すらせて笑った。 不愉快なことでもあったのだろうか (だったら話題を替えたほうが?)と思ったのだが、 どうやらそうではないらしい。 マーティスは現在24歳。 モデルとしてその年齢は若いとは言えない、 キャリア的にも中堅というところか。 だが美貌と生活感のなさからか、どこかまだ少年ぽい。 「彼…ジャックは超がつくくらいの完全主義者でね――」 とマーティスはちょっとだけ顔を上げた。 なにか愉快な思い出が彼の頭のなかで再生中なのだろうか、目が輝いている。 「ぼくの乗馬が気に入らないというんだ。 はっきり言って下手クソだって。 これじゃ自分の絵が撮れないとまで言われた。」 これだね?とわたしは件の写真が載った雑誌を開き、テーブルに置いた。 ――ぜんぜんそうは見えないが? 「特訓した…いや、させられたのさ彼に」 ジャックが連れて来たイギリスの元オリンピック選手に 一週間つきっきりで基礎から叩きこまれたのだという。 「そうでもしないと別のモデルを呼ぶとまで言われた… プロとして役立たずと言われるくらい最悪なことはない。 どうでもやるしかなかったよ」 スケジュールの調整が大変だったのでは? なにしろ、きみは売れっ子だし――。 「ちょうど撮影のあとオフの予定だったんだ。 ほんとうは二週間と言われたけれど、さすがにそれは勘弁してもらった。 一週間以上の調整は不可能だった。 それにやりすぎて妙な筋肉の付きかたになっても困るしね」 冗談めかして彼は笑ったが―― その体型を維持しつつ乗馬のようにタフな運動をするというのはちょっと想像しづらい。 なぜなら、彼はほんとうに細すぎて――。 「モデル自体、結構タフな仕事だよ。見た目以上に」 と彼は肩をすくめたが、にわかには納得できっこない。 男性モデルは筋肉質の男性的タイプと、 ほっそりした中性的タイプとに大別されるらしいが、 マーティスはもちろん後者だ。 モデルとしての寿命も――後者のほうが短い、明らかに。 「…そうだね」 しずかに頷き、マーティスはちょっとだけ視線を落とした。 「でもサッカー選手とおなじようなものさ。 第一線でいられる期間は短い。 僕はこの仕事が気に入ってるし、自分に合ってるとも思う。 だからできるだけ長くベストな状態でいたいと思ってるよ」 だったらなおさら、ジャックの要求は受けがたいようにわたしには思えた。 たとえば、乗馬による怪我の危険性――。 「そうだね。実はそれを理由にエージェントがこの件をキャンセルしたがったんだ。 もしそうなってもぼくにダメージはないと説得もした」 たしかに、たった数ページのエディトリアルのために、 数シーズン継続中のメゾンのキャンペーンをフイにするような割りの合わない危険なんて 誰だって犯したくないにちがいない。 「うーん、そうだね… 自分でも思っていた以上に僕が負けず嫌いだったってことかな。 たとえキャンセルしてもキャリアに響かないとしても、 逃げたってことは自分自身のなかで事実として消せないわけだし。 そんなの、僕は極力抱えたくない。いつだってできるだけ身軽でいたいんだ」 トップにいる者の誇りなのか、それともその矜持こそ彼をトップに立たせたのか。 たぶん両方なのだろうと、わたしは思った。 そういえば――ふとわたしは思い出した。 モデルはときに、それぞれのチャームポイントを保険にかけることがある。 「保険? 一般的な保険ならいくつか契約しているけど…」 ちょっと的外れな質問だったのだろうか、とまどったように彼は答えた。 「そうだね、どこか身体のパーツに保険をかけるのは考えたことがない」 「おいカート、何を言ってる?」 と再度、アーティの茶々入れ。 「彼の場合、むしろ傷がチャームポイントだってのに」 忘れたのか?と眉を吊り上げてみせる。 「ああ、これのことだね?」 とマーティスは頬骨あたりから数センチ、うっすら残る細い傷痕を指でなぞった。 何気ない手の動きすらエレガントだ。 ちょっと顔を傾けると、伏しがちの目に睫の影が重たげに落ちる。 すかさずカメラのシャッター音が連続する。 完璧な美の調和(それは時に退屈でもある)を崩す、ちょっとした傷。 マーティスと組んだことのあるカメラマンたちの多くは、 むしろその傷を撮ることで彼という存在のユニークさ(一意性)を浮き彫りにした。 初期のヘッドショットは人工的な端正さのなかに傲慢さ、 パンクを彷彿させる暴力性を垣間見せる大胆でシャープなものだったし、 逆にひどく繊細で懐古的なモノクロのエディトリアルでは、 無垢にひそむ官能性を感じさせる。 傷の原因は――訊きかけて「プライベートな話は原則NG」との条件を思い出した。 たしか資料でそのエピソードを見た記憶はない。 彼の様子から特に秘密めいたものは伺えないが ――だったら訊ねてみても面白くないかもしれない。 再度話を戻すために、わたしはグラビアへと目をやった。 白黒――なにか圧迫感、 混沌の渦のような力を思わせるのは黒の分量のせいだろうか。 粒子の粗い映像に切り取られたのは、 重たげな雲、古びた城、森、荒涼とした丘――。 「イギリス的だよね。 しかもどこか呪術的な――ジャックの作風としてよく言われることだけど」 そう――そして付け加えるならば、時間軸すら定かではないような。 「ジャックの写真は…ドラマティックなものが多いんだ。 それに力強い。モデルもどちらかといえば個性的なタイプを好んで使う。」 それはつまり――マーティスとは異なるタイプということだろうか? わたしの直球(かつ不躾)な質問に、彼は率直に頷いた。 「ぼくにとってジャックは組んでみたい写真家のひとりだったけど、 実現の可能性は低いとずっと思っていたんだ。 だからオファーがあったときは意外だったし嬉しかった。 本当のところ、 この仕事にぼくをキャスティングしたのは編集者でジャックではなかったんだけど、 ジャックが承諾したのなら、彼自身が選んだのとほとんど同じことだから」 それもマーティスが無理を押した理由のひとつ――わたしはようやく納得できた気がした。 美と才能との幸福なマリアージュ。 わたしの言葉がどんなに陳腐だとしても、 その結果生み出された3枚のシリーズはマーティスを後悔させない出来だったといえるだろう。 「もちろん」 きっぱりと彼はうなづき、かつ軽やかに微笑んだ。 「やり遂げられてよかった。 いまは――とても、満足しているよ」 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! …ぬるくってすいませんすいません。ありがとうございました! #comment