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27-300 の変更点


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )短いですがおつき合いして頂けたら幸いです。 


「今日、寄れば」 
「何処に?」 
「お前、いっつも察し悪いな。死んだ方がいいよ」 
「んだよそれ。誘っといてそれはないだろ」 
「はいはい、悪かったですよ」 
「うむ」 
「うむじゃねえよ。人なめるのもいい加減にしろ」 
「わーったよ、それで何処に寄るんだよ」 
「家だよ」 
「家?俺の家寄るのか?」 
「…っはあ、俺のだよ」 
「お前の?」 
「だから訊いてるんだろうが」 
「え、いいの?行くよ勿論」 
「お前と話してると何だかストレス溜まるわ」 
今日はそんな会話をした。 
要するに今晩泊まっていけ、いいよ、というだけなのだが。 
自分は隣の人に言わせると滅茶苦茶に察しが悪いらしい 
(何回言われたか分からない)し、隣の人は自分が思うに 
口が悪過ぎる。すぐに俺の命を奪おうとする――言葉で。 



行きの(もしくは、帰り)電車の中でぐう、と腹が喋った。そういえば何も食べていない。 
隣の人を見ると窓の中の、夜の街のネオンに心を奪われているようだった。 
きっと空腹なんて感じていないのだろう。じっと窓の向こうを見ている横顔が、 
何だかとても高貴(という表現で、いいのだろうか)に見えた。この人ははたして、 
自分なんかが手を出していてもいい人なのだろうか。見つめ過ぎていたようで、 
その人は、ん?と小首を傾げてこちらを見た。心臓の鼓動が早まる。 
そんな動作をするな。そして自分は空腹だということを頭の隅で思い出した。 
忘れない内に訊いておこう。隣の人の視線が自分に向いているうちに。 
「メシは?」 
「家にはない」 
「買ってくか」 
「コンビニ寄るか」 
「了解」 
もうお互いの家の近くの何処に何があるかなんて知り尽くしているから、 
相手の希望を訊いて、駅から出る口を調整する。 
まあ、コンビニなんてそこらにゴロゴロ立っているのだが。 

帰り道、自分にとっては行く道だが、隣の人はジャケットのポケットに 
手を突っ込んでいた。そういえば今は3月も末なのに結構寒い。 
夜という時間帯も多少ならず手伝っているのだろうが。訊いてみる。 
「寒い?」 
「おう。寒い」 
ふいに風が吹いた。隣の人はお、と言って身を縮こませた。 
こんな寒いときは手でも繋ぎたいものだが。言ってみよう。 
「手繋いでやろうか」 
言った後で、拒否されるのがオチかと思ったが、時既に遅し。 
「は、っバカ。誰がお前なんかと手繋ぐかっての」 
「そんな本気で拒否すんなよ。悲しくなるだろ」 
「勝手に悲しくなってろ。バーカ」 
隣の人は笑いながらそう言った。 
自分はこの笑顔に、弱い。とても。 



時計を見ると1時をまわっていた。ようやく隣の人のマンションに到着する。 
深夜のマンションは人気もなく、静まり返っている。 
薄暗い電気に通路がぼうっと浮かび上がっている。不気味だ。 
二人分の影が床にうつっている。足音がとても、大きく響く。 
正直いって、こわい。 
おいこわくないか、と言おうとしたら隣の人が口を開いた。 
「何かおい、こわいな」 
「おい…自分の家だろ」 
「仕方無いだろ、こえーモンはこえーんだよ」 
「一緒に住むか?」 
「狭いから無理だな」 
「広いところに引っ越せよ」 
下らない会話をしつつ歩く。 
かつん、かつん、と革靴の音がする、それも二重に響く。 

不意に後の方でこと、と音がした。 
「うおおっ」 
思わず心臓が叫んだが、隣の人は飛び上がらんばかりに驚いて、 
自分の腕を掴んだ。嬉しいのだが何せシチュエーションがこれでは。 



「誰か居たのか?」 
「わかんねー」 
とりあえず二人で無意識に正面、つまり音がした方を背に向けて立つ。 
薄暗い電気に照らされる隣の人の顔は、冗談じゃなく真っ青。 
「おー、こえー。お前振り返れよ」 
隣の人は未だに自分の腕に縋りつつそう言った。 
「何言ってんだよ、お前の居住地だろ、お前振り返れ」 
「お前が振り返れって」 
隣の人は自分の上半身を無理やり後ろに向かせた。 
「わっバカやめろこわい死ぬ、…あ」 
そこにいたのは、白い猫。 
「んだよ、猫かよ。いい加減にしろよ」 
「にゃー」 
猫は誰かが置いた植木鉢の後ろに居た。 
「あーもう我慢できねえ鍵、鍵早く部屋。お前おいてくじゃあな」 
隣の人は早口でそう呟くとズボンのポケットから鍵を出して、疾走した。 
「おい、待てよ。待てって!」 



「お前な、あのこわい通路に置いてくっていうのはないだろ…」 
「はいはい、申し訳ありませんでした」 
「感情、こもってない」 
「いいの。怒らないって分かってるから」 
そう言って隣の人はにこ、と笑った。 
改めて思うが、自分はこの人の笑顔に弱い。とても、弱い。 

朝5時、自分と隣の人は駅までの道を歩いている。 
朝になると電車が混む。それまでに帰りたい。 
空気はりんと冷えている。寒い、そう思ってコートの前をかきあわせた。 
隣の人が自分に話しかける。 
「おい」 
「何だよ」 
「ほら」 
隣の人はぶっきらぼうに右手を出した。 
「何だ?」 
「分かんねえのか?しねよお前」 
「分かるよ」 
自分は苦笑して、隣の人のつめたい手を握った。 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ…失礼しました。 
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