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*寄宿舎もの [#yfedfa9d] #title(寄宿舎もの) [#yfedfa9d] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ギムナジウムぽいものでオリジナルです。 ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ホラーっていうかオカルトなアレなので | | | | \ 苦手な人は避けてクレ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ドキドキ初投下 | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚; ) しかも季節違うし | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 夏の寄宿舎は、暑い。 蜘蛛の巣に朝露の水滴が煌いている。蜘蛛は中央で丸まって動かない。 少年たちは、乾ききった土に水を振り撒く事で涼を得ようとしていた。 湿った臭いがあたりに漂い、陽炎のようなゆらめきが一瞬立ち上がる。 「ぼうっとしているなよ、カイル。暑いんだから」 「……ああ、」 ひとつ年上のブライアンは、手を翳して空を見上げていたカイルを、邪魔だと言わんばかりに肘で小突いてきた。その足元に、ばしゃん、と水が掛かる。 「おい! 気をつけろよ!」 ブライアンは気が短い。 夏の空気に輝くブロンドの微かな乱反射にカイルは眼を細めた。 「スーはどうした?」 「さあ。いつものようにまだ寝てんじゃないのか」 「ブルネットにはこの太陽はきついんだろ」 黒い紙はよく燃えるじゃないか、とレジーは嘲った。カイルは舌打ちをして寄宿舎の窓を見上げる。 水をかけただのかけていないだのと騒ぎ始める4・5人の少年は、皆明るい蜂蜜色の髪をしていた。カイルの髪も少しオレンジの入ったブロンドだ。 と、3階の列、整然と並ぶ窓のひとつに人影が見えた。 「何だ、起きてるじゃないか」 ブライアンはそう独りごちて、口元に手をあてがい声を張り上げた。 「おおい! 降りてこいよ!」 そうだ、遅いぞ、と周りもはやしたてる。カイルは黙って見ている。陽炎がまた立ち昇る。暑さが身体にまとわりついて、やけに重く感じる。まるで下へ下へと引っ張られているようだ。 転がすような音がして、立て付けが古くなった窓をスーが開けた。 「スー!」 「お前も降りて来いよ!」 開けたが、そこから動かずにスーはこちらを見下ろした。 そして一言、言う。 「嫌だ」 それだけ言うと、さっと身を翻して窓から離れた。 「スー!? おい、スー!」 驚いたブライアンが何度呼んでも、奥に引っ込んでしまいそれっきり姿を見せない。 「何だよスーの奴!」 ブライアンが怒り出す。スーは彼の気の短さをよく知っているはずなのに。 「……スーらしく…なかったな」 カイルがぽつりと呟く。それを鋭く聞き止めて、マーシュが妙な顔をする。 「確かにな。何だろ、誰かスーを怒らせたんじゃないのか」 言いながら周囲の少年たちを見回すが、誰も肩を竦めるだけだ。 「とにかく、これは規則だろ。誰かスーを呼んで来いよ」 怒りも冷め遣らぬ、という表情で、しかしブライアンがそう提案する。いくら短気でも彼は最年長なのだ。 「カイル、行って来い」 「……いいけど」 まだ3階の窓を見上げている少年たちから離れて、カイルは重い足取りで歩き出した。 ブライアンがまだ怒っている。 ここは寄宿舎だ。 カイルと同い年か、ひとつ上か、ひとつ下の少年たちがここで暮らしている。 普段は喧しいほどなのだが、最近はすっかり也を潜めていた。 今は、長期の夏期休暇なのだ。ほとんどの少年たちは家に帰っている。 ここに残っているのは皆訳有りで帰れない少年ばかりなのだった。 無論、食事を作りに寮母などが通って来るし、時々は教師たちも彼等の様子を見に来る。だが、やはり大抵においては少年たちだけになってしまうので、色々とやることや規則も存在した。規則を破ることは許されていない。 本来なら、スーは規則を破るような少年ではない。どちらかというと、レジーやマーシュよりもずっと真面目な性格なのだ。模範的とも言えるほど。 日に晒された場所から翳っている寄宿舎の中に入ると、澱んだ空気が僅かに動く。汗が冷やされて、寒気すら感じるほどだ。 『嫌だ』 そう言った時のスーを思い出す。寄宿舎の暗がりのなかに浮かぶ白い肌、白い顔……。周りも暗いのに、彼の黒髪は艶やかに浮かび上がっていた。 なぜブライアンは、自分でスーを呼びに行かなかったのだろう。 スーとブライアンは親しかったし、ブライアンがスーに好意を抱いていることは、少年達の眼にも明らかだったのに。スーは、……いや。確か本名は、スイ……だったはずだ。 もうずっとスーと呼んでいるので、思い出すのが少し遅れる。 ……スイがブライアンをどう思っているかは、解らなかったが。 『スーを呼んで来いよ』 『カイル、行って来い』 ブライアンは何故、自分を指名したのだろう。――いや、あれは適当にだろう。たまたま眼についたのがカイルだったに違いない。ブライアンにとっては“自分以外が”スイを呼んでくるなら誰だって一緒の筈だ。 カイルはスイを真っ直ぐには見ない。時々ちらりと盗み見て、その面影を頭で大切に何度も反芻するだけだ。ブライアンがエスパーでないなら、これはただの偶然。 ……それなのに、妙な胸の痞えが取れなかった。 寄宿舎の空気が重苦しい。 一歩一歩、歩くたびにじっとりと汗が染み出してくる。息が切れて、荒くなってくる。 2階の階段の踊り場で、カイルはいったん立ち止まった。手摺に寄りかかり、汗を拭う。 まだ2階へも行っていないのに、何故こんなに疲れるのだろう? 日射病か何かかもしれない。それなら、スイに伝言だけ頼んで部屋へ戻ろう。 カイルは再びゆっくりと階段を上がった。2階に辿り着く。 ずらりと並んだ廊下に、同じくドアが並んでいる。そのどれもが、今はほぼ無人だ。 重く深い溜息をつき、カイルは3階へと続く階段を見上げた。 ――…と。 「カイル……!?」 そこに、スイがいた。 今から降りるところだったのだろうか。丁度良かった。 「ス……」 声をかけようとしたカイルは、スイの顔が酷く青ざめている事に気が付いた。 「ブライアンが、来いって言ってるけど……」 気分が悪いのだろうか? スイは青い顔色のまま、ゆくりと首を振った。 「僕は行けない」 「……? 何でだよ?」 「僕は、まだ行けない」 「スイ……?」 呼ぶと、ふとスイが顔を上げた。 「その名前……」 「うん?」 「覚えていてくれたんだね……」 「あ……まあ……」 思い出すのに、だいぶ時間がかかったが。少々気まずく思い髪をかき上げる。 「カイル……カイルは、上がって来れたんだ……」 「……? 上がってって、ここに?」 スイは固い顔で、頷く。 寄宿舎の2階が、どうだと言うのだろう? それを言うなら、自分たちは今までずっと、3階で暮らしていたではないか。 そう言おうとした時……。 窓の外から、苛立ったようなブライアンの声が聞こえた。 「カイル! スーはいたのか!?」 「おーい、降りて来いって」 レジーもマーシュも、呼んでいる。 「スイ。とにかく行ったほうがいいよ」 ひとまず返事を返そうと窓に近寄ったカイルの腕を、スイが掴んで止めた。 「!?」 しかし次の瞬間に、スイは驚いて腕を離す。いや、驚いたのはカイルも同時だった。 「スイの手……なんか、熱くないか……?」 顔も青いし、熱があるのだろうか。しかし、スイは、ゆっくりと首を振った。 「違う……カイルの腕が、冷たいんだ」 「僕の腕が?」 何を言っているのだろう。自分はいつも通りだ。 遣り取りをしている間も、外からの呼び掛けは続いている。 「スイ……ブライアン、怒ってるよ」 スイは青ざめたまま俯く。 「ブライアンと喧嘩でもしたのか?」 「喧嘩……じゃない。そんなんじゃない……」 「? じゃあ何で……」 「カイル」 突然、スイが真正面からカイルを見上げてきた。 「きみはここまで来れた。それに……僕を力づくで連れて行こうとは、しない。僕は君も同じかと思っていた。まだ君達は誰も見つかっていなかったし……」 「スイ、何の話……」 「もう一週間、だ。一週間も、毎日、僕だけがいる時に皆現れて……僕を降ろそうとする。僕は気が狂いそうだった……でも上がっては来ないから、きっとこの中には来れないんだろうと思ったんだ」 「スイ?」 おかしなことを真剣な顔でとつとつと語るスイ。だけど、彼の話すその内容がカイルには理解出来ない。 スイはこの暑さで、どうにかしてしまったのだろうか。 そんな危惧に眉を寄せるカイルを、スイはまた見上げた。 「でも、君は来れた。それが、僕にはよく解らない……」 「スイ? さっきから、何を……」 「静かに。……よく、聞いて」 押されたようにカイルは口を噤む。咽に柔らかな石を詰め込まれたような沈黙。 外からの呼び掛けは続いている。 カイルは、そこで、やっと気付いた。 スイは怯えている。 何に? 「スー! 早く来いって!」 ブライアンも、レジーも、マーシュも呼びかけている。 カイルが遅いからだ。しかし、ならどうして、誰もここに来ない? 早く来いよ! 降りて来いよ! 呼び掛けは続いている。執拗なほどに。 ここにこい! おりてこい! 何故ここに来ないのだろう。 じっとりとした汗が、額を流れた。 スイが青い顔で、震える声で言う。 「降りて来い、じゃない」 その囁きがきっかけのように、聞こえる呼びかけが、変化していく。 ここにこい! おちてこい! おちてこい! おちてこい! おちてこい! だんだんと身体が冷えていく。歯の根が合わなくなってくる。 呼び掛けは続いている。今はもうひとつにしか聞こえない。 「スイ……なに、これ……」 スイが身体を強張らせた。そして、ゆっくり口を開く。 「カイル……手、見て……」 ぎくしゃくと手を動かす。両手の平を、眼の前に掲げて――カイルは、愕然とした。 カイルの手は血の通いがないように青く、そして……濡れている。 手だけではない、全身が濡れそぼっている。汗ではない、異様な生臭いにおいが途端に鼻をつく。 「スイ……」 呼びかけたカイルの口からくぐもった声と共に、ごぼ、と汚れた水が溢れた。 黒い粘質的な水……泥は、ばたばたと滴り板張りの床を汚していく。 「ス…イ……!」 青ざめて叫び声を上げ、スイが逃げようとする。その手を捕らえて引いた。もがく身体を捕まえて、しがみつく。抱きすくめる。抱き締める。締める。 おちてこい! おちてこい! そうだ、水の中だ。ひどく汚れた水の中。沼だ。寄宿舎から少し離れた場所にある沼。あの時、ひとりだけいなかった。スイはいなかった。皆で遊びに行こうと言ったのに。寝込んでいたのだ。だからいなかった。だから助かった。 全員落ちた。濁った水の中に落ちた。もがいた。足掻いた。手を伸ばすと、共に溺れている少年たちの身体に当たった。彼らはしがみついてきた。掴まったら諸共に溺れてしまう。 しがみついてくる手を振り払った。振り払って、水上に上げてくれる手を捜した。だがそんなものはなかった。少年達は、皆足掻きながら溺れていった。 残った少年はひとりだった。ひとりだった。 溺れてしまう。“自分達”以外の者に掴まらないと、溺れてしまう。 カイルは夢中でスイの身体を捕まえる。スイの身体は温かい。この冷たい水の中に、汚れた水の中に浸かって冷え切った自分をも暖めてくれるだろう。その熱を逃がさないように。更に強く抱き締める。 外から復唱が聞こえる。 共に連れて来いと復唱が聞こえてくる。 嫌だ。 スイが必死で足掻く。悲鳴を上げる。その口を唇でふさいだ。汚れた水が口を伝って、スイの中へ流れ込む。舌を絡める。逃がさないように。 いつの間にか世界は輪郭を失い、寄宿舎の中だったはずのそこは澱んだ泥水に浸されていた。 足元から膝へ、膝から腰へ、腰から胸へ、水は音を立てて溢れていく。もうそこは沼の中なのか建物の中なのかの区別もつかない。輪郭の綻びから泥は流れ込んでくる。 ずぶずぶと、水の中へ落ちていく。スイの艶やかな黒髪が水に濡れて美しく光る。揺れる。髪を撫でて、更に強く抱き締める。柔らかい、暖かい、愛しい……。 復唱は続いている。 復唱には次第に怨みの色が濃くなってくる。 スイにではない。カイルに、だ。 諸共に落ちた癖にスイを連れて来ず、こうして一人で暖かな身体を占めているカイルに。 復唱は怒りを孕んで忌む言葉に変化し、重なり重なり繰り返される。 だが、もうそれも構わない。 抱き締める。溺れていく。スイは抵抗を止めた。溺れていく。 スイの絶望に染まった眼と、ブルネット――…。 大事に……抱き締める…………抱き締めて……………………落ちた。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ 外人名考えるの苦手… | | | | ピッ (・∀・ ) 意味ワカンネな話でスマソ | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | #comment