Top/21-531

21-531 の変更点


*numb*3rs 工ップス兄×弟 [#ib2800a4]
#title(numb*3rs 工ップス兄×弟) [#ib2800a4]

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
                     |  例によってnumb*3rs兄弟ネタだってよ 
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  これで終わりだから安心しろってさ 
 | |                | |             \ 
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヨカッタ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___ 
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  | 
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | 

そんなわけでnumb*3r兄弟ネタです 
立て続けに申し訳ないんですが、これで終わりなので見過ごしてやってください 
とりあえず前回までと続いてます 
今更気づいたのですが、このドラマを観たことない方にとっては複数の 
小ネタをばらされていることになりますね。今回もそうです。スマソ… 
今回は前・中・後編にわけて投下しようと思います 

ちなみに平安兄弟のファンです。いつも笑いつつ萌えてます。トンクス! 




 もうずいぶん昔のことだが、チャ―リーが生まれたとき、ト゛ンはこれで相棒ができたと思 
った。賢くて強くて信頼がおける、一番の親友ができたのだと。その頃の彼のお気に入りの遊 
びは「刑事ごっこ」だった。ト゛ンはじきにその遊びをするときには、この弟が常に傍らに控 
え、悪人を(といっても本当は、極悪非道な犯罪者を演じる近所の友達に過ぎないのだが)自 
分と一緒に捕まえるようになるだろうと考えた。母親の腕に抱かれてすやすや眠り、そうでな 
いときはミルクを飲んでいるちっぽけな赤ん坊を眺めながら、その日が早くこないかと5歳の 
ト゛ンはわくわくしながら待った。 
 ところが、現実はそうはいかなかった。チャ―リーは3歳になる頃までには既に、ト゛ンが 
思い描いていたのとは違う弟になっていた。お絵かきのために与えられたクレヨンでそこらじ 
ゅうに数字の羅列を書き殴り、おもちゃの銃になど見向きもしない。もちろんト゛ンが大好き 
な野球のバットやボールには、触れることすらない。どうやら半永久的に頼りになる相棒を得 
られないことを理解した少年のト゛ンは、その代わりに弟の世話で忙しい両親を助けるために、 
誰にも頼らずに一人で何でもできる存在になろうと思った。いわばプランBだ。物語の中の、相 
棒のいない英雄たちは大体、相棒がいない代わりに自分だけで何でもできる。そういうふうに 
なればいいのだと自分に言い聞かせて、そしてほぼその通りになった。少年時代を一貫して、 
彼は自立心の強い子供だった。 
  



 自立を心がけたト゛ンが、FBIに入るまで、一番愛したものは野球だった。野球で大学の 
奨学金をもらい、マイナーリーグでとは言えプロとして金を稼いでいたこともあるほど、彼は 
野球に打ち込んだ。けれどもト゛ンは23歳のときに、それまでで一番愛した野球を捨てるこ 
とを決めた。自分のこの才能ではメジャーには行けない。野球を続けたいのなら、マイナーリ 
ーグで不安定な生活することになると悟ったときだ。これまでで一番愛した「野球」と、一番 
重んじてきた「自立」を量りにかけると、否応なしに「自立」の方に天秤が傾いた。野球は職 
業にするにはリスクが高すぎる。若い、ほんの一時しかそれで金は稼げないだろうし、そうす 
ることが許されるのは、自分がその一時で一生分の金が稼げる才能の持ち主の場合だけだ。そ 
してト゛ンにはそこまでの才能はない。そこで彼はFBIの試験に志願し、難関を見事にパス 
した。 
 FBIに就職が決まったよと言うと、両親はまず驚き、それから手放しで祝福した。ト゛ンもも 
ちろん満足していた。知性体力ともに抜きん出た(と目の高いFBIの試験官に判定された) 
人間しかこの仕事にはつけない。やりがいはありそうだし、サラリーもいい。少なくとも表面 
的には、欠けたところが見えない存在になれたのではないだろうか?小さな頃、心に決めた通 
りに。 
 ところがそんなト゛ンに、水を注す人間がいた。もちろんチャ―リーだ。チャ―リーはその 
とき17歳で、一年前にプリンストン大の数学科を卒業し、スタンフォードの院に進んだとこ 
ろだった。卒業論文として発表した研究が、学会で大変に評価されたらしいということはト゛ 
ンも両親から聞いていた。だがト゛ンは正直に言うとチャ―リーの業績にそんなに興味もなか 
ったし、普段離れて暮らしていたせいもあって、弟自身とさほど親しいわけでもなかった。そ 
んな弟が、ト゛ンの就職を祝うために久しぶりに家族が集まったディナーの席でこう言ったの 
だ。「野球はどうしたの?」 
  



 何気ない一言だったが、ト゛ンの心にそれは妙に鋭く響いた。弟に悪気はないということは 
わかっていた。両親が気遣わしげな視線を交わすのを目でやり過ごしながら、ト゛ンはさらり 
と答えた。「野球はやめた。FBIで働くんだ」  
 チャ―リーはそれを聞いて瞬きし、それから何か口ごもった。この弟は普段は早口で捲くし 
立てるくせに、何か大事なことを言おうとすると上手く話せなくなるらしい。しかもそれは自 
分が同席しているときによく起きる現象だと知っていたト゛ンは、見ないふりをして母親が焼 
いたリブをほおばった。 
 「あんなに、あんなに才能があったのに?もったいないよ、ト゛ン」 
 囁くような声でチャ―リーが言う。母親が窘めようとしたのか身を乗り出したが、チャ―リ 
ーは巻き毛を揺らしながらそれを手で制した。 
 「野球が好きだったんじゃないの?――僕は、僕は力になれるよ。ト゛ンが野球を続けるな 
ら……」 
 「力になれるって?」 
 ト゛ンは苛立ちながら聞き返した。そもそもこの弟に助けなど求めたことは、これまでで一 
度もない。ましてや人生の一大事を、任せられるわけがない。一体弟が野球の何を知っている 
だろう?ト゛ンがどれだけ野球を愛し、それに打ち込み、どんな思いでそれを捨てたかなど、 
この弟は知らない。チャ―リーは小さな頃から数字と戯れ、しかもどうやらそれが職業として 
ものになりそうなのだ。彼は諦めるということが、どんなことなのか知らない。ト゛ンの声に 
チャ―リーはびくりと肩を揺らしたが、一瞬俯いた後で意を決したようにまた顔を上げた。 
 「僕なら有効な打線を読める。数学で試合の展開を読めるよ。確率論を使うんだ。そうした 
ら――」 
 「そんなことは誰にもできない。チャ―リー、野球はもうやめた。捜査官になるんだ。俺は 
満足してる。お前の助けも必要ない」 
 そう言い放ってト゛ンは立ち上がり、キッチンの冷蔵庫にビールを取りに行った。テーブル 
に戻ってくる頃には、両親が無理やり挿入した別の話題が始まっていた。チャ―リーはまだ何 
言いたげだったが、母親に釘を刺されたのかその後はずっと黙っていた。 



 自分と似通ったものを人はよく愛する。同じ趣味を持つ友人、同じ価値観の恋人。自分を生 
み、育てた両親。そして同一の血が流れる兄弟。そう、兄弟はその象徴だ、とチャ―リーは階 
段を駆け上がりながら思った。その証拠に、相手がまったくの他人だったとしても、親しみが 
生じたときにはよく「兄弟」と呼びかけるではないか。この世界に兄弟ほど自分に近い存在は 
いない。そういうことになっているはずだ。 
 ところが同じであることが前提であるがゆえに、違いが際立って見えるという逆の特色もま 
たここには見える。カインとアベルのように。自分とト゛ンもその実例だ。ト゛ンと自分はま 
るで違う。そんなことを考えながら乱れた呼吸を整え、チャ―リーはアパートのベルを鳴らし 
た。腕時計を見ると、12時を過ぎている。今日の午後、仕事を終えて帰宅したら連絡する、 
とト゛ンはチャ―リーに電話で約束した。絶対だよ、待ってるから、とチャ―リーは言い、そ 
して忠実にそれからほぼ12時間経つ今まで、ト゛ンからの電話を心待ちにしていたのだ。最 
後の数時間は待ちきれなくなって、呼ばれたらすぐに駆けつけられるように、ト゛ンのアパー 
トの近くのレストランで時間を潰していた。この部屋の鍵を渡してくれればいいのに、とチャ 
―リーは思った。不安な気持ちで外で電話を待つのではなく、ト゛ンのアパートで彼が帰って 
くるのを待てたらどんなにいいだろう。 
 でもト゛ンが渡すことはないだろう、と客観的に考えながら、チャ―リーはもう一度ベルを 
鳴らした。「ト゛ン?僕だよ、開けてよ」 
 わかったわかった。そんな物憂げな声と共にゆっくりとドアが開く。巻き毛を揺らしながら 
チャ―リーはドアの狭間から顔を出した。「自分の誕生日に真夜中過ぎまで働くなんて正気じ 
ゃないよ、工ップス捜査官」 
  



 冗談と本気を混ぜ合わせた口調でチャーリは言い、アパートの中に入った。そう、今日―― 
いや実際は既に昨日なのだが――はト゛ンの誕生日なのだ。ト゛ンはこの歳になれば誕生日な 
んてめでたくもなんともない、と言ったが、チャーリはどうしても祝いたかった。ト゛ンの誕 
生日に二人きりで祝うなど、今までには絶対に考えられなかったことだ。特に祝わなくていい 
なんてぼやきながらも、ト゛ンがチャ―リーの願いを聞き入れて会う約束をしてくれたことが、 
彼には嬉しかった。 
 「こんなに遅くなるなんて、ややこしい事件なんだね?ト゛ン。力になるよ」 
 チャ―リーが振り向きながら、ドアにチェーンを掛けているト゛ンに言った。ト゛ンは肩を 
竦めた――そして顔を顰めた。痛みを感じたかのように。ト゛ンは本当に今帰ってきたばかり 
なのだろう、まだスーツ姿で、けれどもジャケットは脱いでいた。ト゛ンの白いシャツは右袖 
ごと破り捨てられ、その代わりに肩に包帯が巻かれている。ト゛ンは右腕を擦りながら疲れの 
滲んだ口調で言った。 
 「ややこしい事件“だった”んだ。もう解決した。つい数時間前にな」 
 振り向いたチャ―リーはもうト゛ンの言葉など聞いてなかった。彼はプレゼントの入った箱 
を小脇に抱えたまま、包帯が巻かれたト゛ンの肩に手を伸ばした。「どうしたの?これ」 
 「チャ―リー、大したことない」 
 「怪我?深いの?」 
 シャツを落ち着きなく見ながら、チャ―リーは問うた。ト゛ンはかぶりを振り、自由な方の 
腕を動かしてチャ―リーの肩に触れた。「落ち着け。大したことない。掠り傷だ」 
 「――撃たれたの?」 
 身体中の血の気が失せていくのがわかった。ト゛ンは構うな、というように手を振って繰り 
返した。「弾が掠っただけだ。すぐに治る。チャ―リー、落ち着け」 
 「弾って、銃弾?ト゛ン、撃たれたんだね?」 
 チャ―リーはそう言って、視線を泳がせた。シャツの襟に微かに血痕が飛び散っている。ト 
゛ンの血。ト゛ンは返答に困ったのか、瞬きを繰り返した。「……撃たれそうになったんだ。 
撃たれたわけじゃない」 



 「でも怪我してるじゃないか!ト゛ン、撃たれたんだね」 
 悲鳴まじりの声を手で制し、ト゛ンはゆっくりと言った。「チャ―リー、犯人はもう捕まっ 
た。……死んだんだ。終わったんだよ。落ち着け」 
 そう言ってト゛ンはため息をついてみせた。だがチャ―リーはそんな兄の様子に構うことは 
なく、うろうろと彼の周囲を歩き回ってから言った。落ち着いていられるわけがなかった。「 
どうして僕を呼ばなかった?解決まで何日かかったの?包囲網の人数は?FBIが投入した人 
数が少なかったの?だからト゛ンが……」 
 「チャ―リー、終わったんだ」 
 子供相手にするように繰り返され、チャ―リーは思わず声を荒げた。「怪我してるんだよ! 
ト゛ン、あともう少しで死ぬところだったんだ!わかってるの?」 
 ト゛ンはうんざりしたように眉間を指で擦った。そして言った。「こんなことはよくあるこ 
とだ。チャ―リー、知ってるだろ?」 
 それが嫌なのだ、とチャ―リーは思った。こういうことがト゛ンの生活に織り込まれている 
ことが。ト゛ンがやっている仕事は素晴らしいとは思う。人々を助け、彼らの生活を守ってい 
る。そのことは誇りに思う。だが撃たれたり切り付けられたりすることが日常であってもらっ 
ては困るのだ。だからこそチャ―リーはもっと確実に、迅速に事件を解決されるために、方程 
式を使う。ト゛ンを助けるために。よりスマートで安全な方法を採るのだ。 
 「僕が捜査に参加してたら、こんな――怪我なんてしなかったかもしれない!ト゛ン、何故 
僕を呼ばなかった?事件は何?何だったの?」 
 震える声で言うと、ト゛ンは目を眇めてみせた。チャ―リーは苛立ちながらそれを見返した。 
 「……幼児誘拐事件だよ。チャ―リー、今回は犯罪社会学者と幼児性愛専門の心理分析官が 
協力して、迅速に……」 
 「僕の方が役に立てたよ!絶対だ!どうして僕を呼ばなかった?」 
 繰り返される問いに、ト゛ンはしばし沈黙してから答えた。「今回はお前より彼らの方が必 
要だと思った。居場所の分析パターンも確立しつつある。それにお前も忙しそうだったじゃな 
いか」 
  



 数日前までチャ―リーは学会での発表を控えていて、そのためにずいぶん時間を割いていた。 
そのこともあって、ト゛ンは今回チャ―リーを捜査に呼ばなかった、とト゛ンはあっさりと言 
ってみせた。 
 チャ―リーはそれを聞いて思わず引きつった笑みを浮かべた。「――学会?僕はポイントカ 
ードにスタンプ押してもらえるくらい学会に出てるんだよ!10代のときから何度も出てるし、 
発表してる。そんなの問題ない。ト゛ンに協力できた。彼らって――彼らってその何とか学者 
?社会学?馬鹿にしてる!僕は犯人像を予想したりはできないけど、犯人を効率的に探す方法 
は知ってるんだよ!僕の方が役に立つ。ト゛ンを助けられる。居場所の分析パターンなんて、 
僕の思考の劣化コピーじゃないか。笑わせないでよ」 
 わざと険のある言い方をしてやるとト゛ンは眉を顰め、感情のない声で返した。 
 「お前は役に立つが、お前以外にも役に立つ人材はいる。数字以外のアプローチの方が有効 
なこともある。現に今回は州警察から事件を引き継いですぐに、それ以上犠牲者を出さずに解 
決した。……最後に誘拐された女の子は助かったんだ」 
 チャ―リーはそれを聞いて唇を動かし、それから手を口のあたりに押し当てて俯いた。最近 
はほとんどそんなことはなかったのに、久々に自分がコントロールできなくなりそうな気がし 
た。上手く話せず、無理に話そうとすると舌が震える。子供の頃よくそうなったように。ト゛ 
ンはやはり子供の頃よくそうしたように、そんなチャ―リーに対して何も言わず、落ち着いた 
態度のままでいる。呼吸を鎮めて平常心を取り戻そうとし、話せる程度には落ち着くと、チャ 
ーリはそれでも震える声で言った。「僕の方がト゛ンを助けられた」 
 「チャ―リー」 
 「どうして言わなかったの?手伝えって、どうして――」 
 唇が戦慄き、チャ―リーは必死で考えた。ト゛ンが自分に助けを求めなかった理由を。ト゛ 
ンがさっきまでよりは少し苛立ちを含んだ声で言った。 
 「もうやめろ、チャ―リー」 
 これがプレゼントか?怪我をしていない手でチャ―リーが大事そうに抱えている箱を取り上 
げると、ト゛ンは軽く眉を上げてみせる。チャ―リーはそれに答えずに主張した。「僕の方が 
役に立てたんだよ。ト゛ンを守れた。どうしてわからないの?」 



 「事件が解決したのにお前はどうしてそうこだわるんだ?」 
 答えの代わりに鋭い問いが返され、チャ―リーは不意に不安に襲われた。ト゛ンの苛立ちが 
強まってきているのがわかる。こうなると口論するのが怖くなるのはいつもチャ―リーの方だ 
った。言いたいことが言えなくなり、口を閉ざして頷いてしまう。何故かト゛ンに本気で歯向 
かったり立ち向かったりすることができないのだ。もう子供ではないというのに。今夜はそう 
なってはいけない、とチャ―リーは自分に言い聞かせた。これはとても大きな問題だからだ。 
 「……もっといい方法があるのに、黙って見過ごすことなんてできない。一般の人が、子供 
が、――ト゛ンが危険に晒されているなら、ベストの方法を……」 
 完全に正しい方程式を使わないといけない。危険と労力を最小限に留めるようなやり方をし 
ないと、ト゛ンは守れない。そうしたときでさえト゛ンはたびたび銃を持ち、犯人を対峙する 
のだから、推論だけで動いたときにはどれほどの危険が待っているのか。チャ―リーはそう説 
明しようとしたが、例によって上手く言えなかった。 
 「彼らのやり方も知らないのに、何故自分の方が優れているとわかる?」  
 ト゛ンの尋問するような言葉にチャ―リーは口ごもった。「……ただ、ただ、わかるからだ 
よ。僕は……」 
 「違うな。お前は個人的な感情から言ってる。チャ―リー、これは仕事なんだ。いつもお前 
と組めるわけじゃないし、それを優先するつもりもない」 
 開けてもいいのか?ラッピングされた箱を軽く振ってみせるト゛ンに、チャ―リーは違う、 
と呟いた。チャ―リーは真っ青になって、違う、と繰り返した。ト゛ンの傷を見ながら。 
 ト゛ンの言っていることにはどこか嘘がある、と思った。漠然と彼はそう感じ、過去の記憶 
を探った。彼の言うことは確かに筋が通っている。ほころびはほとんどない。だが、彼の態度 
はどうだろう。ト゛ンはいつも自分が窮地に陥っても、チャ―リーに関らせない。FBIの捜 
査で協力を要請するときも、お前はお前がやれることだけをやればいいと言って、ト゛ンが何 
をしているのかは教えようともしない。今度もきっとそうなのだ。ト゛ンは怪我をしており、 
そしてそれをチャ―リーとの話題にしたくないのだ。 
  



 「違うよ。個人的な感情なんかじゃない。それだけじゃない。単に僕は、事実を……」 
 「いいや、お前は個人的な感情から意見してる。――この話はもう終わりだ」 
 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた口ごもった。そして何秒かのちにやっと口を開き、感情的 
になっているのは僕だけじゃない、と言い返そうとした。 
 けれどもそれはできなかった。何故ならト゛ンがキスをしてきたからだ。宥めるように。 
 「開けていいんだろ?」 
 耳元で囁き、プレゼントの入った箱を軽く掲げるト゛ンに、チャ―リーはただ頷いた。こん 
なのはおかしい、という気持ちはまだ燻っていた。だが、ト゛ンはそれを見透かしたようにも 
う一度キスをし、チャ―リーを簡単に篭絡した。ト゛ンはチャ―リーをソファに座らせ、自分 
も隣に腰を掛けてプレゼントをありがとうと言った。チャ―リーは何も言えずにまた頷いた。 
 「いいネクタイだな」 
 器用に箱を片手で開けたト゛ンが目を細めて言う。チャ―リーのとても好きな表情で。だが 
チャ―リーはその顔を見ても、いつものように幸福にはなれなかった。誤魔化されたことが彼 
にはわかっていたし、自分がそれに対抗できないのが空しかった。黙り込んでいるとまたキス 
が振ってきて、ベッドへ誘われた。 
 その夜、望んだ通りにト゛ンのベッドで彼と一緒に眠り、誕生日の夜――実際はそれはもう 
過ぎているのだが――に彼を独り占めしたというのに、チャーリは不安だった。いつまで経っ 
ても傷を負ったト゛ンの肩を直視できなかった。そしてト゛ンに対等に扱われていないという 
ことにも気づいて、彼は孤独を感じた。チャ―リーは自分では、事件を通してト゛ンの相棒に 
なれたつもりだったのだ。 






 ____________ 
 | __________  | 
 | |                | | 
 | | [][] PAUSE      | | 
 | |                | |           ∧_∧ 前編オワリ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | 
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | 
  
 
そんなわけでまた後日。いつも長々と占領して申し訳ないー 
#comment

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP