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#title(鎧 幻×闇) [#wf583e92]
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                     |  棚は初投下モナ‥‥。 
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  しかも無駄にクソなげー!! 
 | |                | |             \ 
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 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | 

鎧、幻×闇です。 
昭和の時代からくすぶっていた煩悩が暴発したのでこんな結果に。 
皆様生ぬるく笑ってやってくださいorz 



 御簾の影に幻の将を見て、悪/奴弥守は舌打ちする。 
 闇神殿の周りに張り巡らせた犬の結界は、並みの兵や小童共ならば寄せ付けないが、相手が魔/将となると意味がないらしい。 
「………何だ。」 
 夜着に着替えかけていた手を止めて、悪/奴弥守が問う。 
「気付いたか、闇魔/将。」 
「そのように気配を剥き出しにしておいて何を言う。用がないならとっとと去れ。」 
 闇を司る悪/奴弥守は自身の気配を殺す事にかけては超一流、勿論、他者の気配にも人一倍敏感だ。今日のように考え事にふけっていなければ神殿に入る前の段階で気付いていただろう。 
「今宵はまた愛想のない事だな。犬の躾でも失敗したのか。」 
 笑いながら隻眼の男は御簾を分けて寝室の中に入ってきた。 
「何用だ?」 
 緩めていた帯をしっかりと締めなおしながら悪/奴弥守が再度聞く。 
「酒だ。」 
 螺/呪羅は手にしていた瓶を差し出して見せる。 
 悪/奴弥守はあからさまに眉をしかめてみせた。 
 夜更けに、この男が酒を持って寝所に忍んでくる。 
 もう意味合いは明白だ。 
 ましてや自分が着替えようとするのを、気配を殺して見ていたらしい。 
「そう嫌そうな顔をするものではない。先に人間界に用事があってな、土産に買ってきた唐の品だ、貴様も興味はあるだろう。剣南春、という奴だ。」 
「……金剛の躾に使った残りか?」 
「そうしたくとも、人間界の決まりごとでは、まだあやつらは酒は飲めぬ年なそうでな。その年が来るのが楽しみなことよ。」 
 そう言って片目を細めて自分を見る螺/呪羅に、悪/奴弥守は吐息をもらした。 
「何を言うか。その年は、今年だぞ。」 
「……そうであったか?」 
 珍しく間の抜けた顔をした螺/呪羅に、悪/奴弥守はふ、と笑った。 
「ここと向こうは世界が違うからな……。」 
 そう言いながら壁の茶棚に向かい、中を開ける。 
 普段は身の回りの世話をする部下に言いつけるところだが、場合が場合だ。 
 自ら杯を二つ選び取り、無造作に畳の上に置いた。 




「犬の結界の密度を濃くしていた割には、随分、気が抜けていたな。先ほどは。」 
 白酒の芳香に悪/奴弥守が気をよくしはじめた頃、螺/呪羅が笑いを含んだ声で言った。 
「……知らんわ。」 
 途端に不機嫌になって悪/奴弥守は酒を煽る。 
「この四百年、俺がお前に気付かれずに寝所まで入れた事、何回あったかのう。」 
「……知らんというに。」 
 明らかにいらついた声の悪/奴弥守を無視し、螺/呪羅は言葉を続ける。 
「闇の将がそこまで無防備になるとは…領地で何かあったか、可愛い犬や獣に気がかりがあるか……それとももっと可愛い光輪に悪い虫でもついたのか。」 
「……悪い虫がついてくれるならそれに越した事はないがな。」 
 酔いのせいか、頭を占めていた事が、ポロリと悪/奴弥守の口からこぼれ出た。 
「ほう?」 
 螺/呪羅が興味深そうに言い、悪/奴弥守の空いた杯に剣南春を注ぐ。 
 濃香酒と言われるだけはある。その匂いはあまやかに濃い。 
「酒もだが…今の人間界は遅すぎる。我らの時代では、十五にもなれば嫁の一人も取っていておかしくなかろう。しかし、二十にもなって浮いた話の一つもないというのは、男として納得いかんわ。」 
「何だ。光輪は、そうすると…。」 
 さすがに螺/呪羅は皆までは言わなかった。 
「俺の知っている限りではな。」 
 螺/呪羅に間を持たせないように悪/奴弥守が言葉を継ぐ。 
「それは、確かに…遅いな…。」 
 悪/奴弥守は杯に顔を向けたまま濃紺の眼だけ螺/呪羅に向けた。 
(金剛はどうなのだ。) 
 そう口には出さないが、視線だけではっきりと問い掛けている。 
「ここと向こうは世界が違うからな。」 
 螺/呪羅は何食わぬ顔でそう言った。 
「お前に気付かれぬようにもう済ませていると考えるのが自然なのではないか。」 
 そう言って、螺/呪羅はまた悪/奴弥守の杯に酒を注ぐ。 
「だと、いいのだが。」 
 悪/奴弥守の眼から見て、征/士は外見的には問題がないし、能力的にも文武両道よく努力し、具体的な成果を残している。性格的にはとっつきにくいが筋を通す情の濃い男だ。 
周りの女が何故放っておくのか、全く分からなかった。 




「……明日で二十というに。」 
 そう、ごちる。 
「なるほど…。」 
 螺/呪羅は妙に優しげに眼を細めて笑う。 
「犬の結界と、人払いは、そういう意味か。」 
「何だ。」 
「明日、人間界に降りて光輪に会うのだろう。」 
「………さあ、な。」 
「何故、隠す。阿羅醐様のご時世であれば、勝手に人間界に降りる事は厳罰であったが、今は誰も止め立てするものはいない。 
同じく鎧を着るものとして、小童どもを気にかけるのは皆同じだ。お前が恥じる事ではない。」 
「別に恥じてなどおらぬわ。」 
「では、何故、隠す?」 
「………………。」 
 悪/奴弥守は答えない。 
 自分でもよくわからないからだ。 
 あえていうなら習慣だろうか。 
 妖邪帝国の闇魔/将となり四百二十年あまり、人間界へ降りる事は罰を恐れて他のものの目を盗み、秘密裏に行うことだった。 
 それがいきなり解禁になったといわれても、もう癖になっていて抜けないのだろう。 
 しかし、それだけが理由ではない。悪/奴弥守は既に小童との戦いが終わってから六十回ほど人間界に降りている。それだけ数を重ねれば、慣れるということもあるはずだ。 
(やはり俺は……阿羅醐様………) 
「そういえばこの間、那/唖挫が<時>を測ったことは知っているか?」 
 考え込んでしまった悪/奴弥守に、螺/呪羅が新しい話題を与えた。 
「<時>?」 
「妖邪界と人間界の時の流れ、全く違うことはお前も知っておろう?妖邪界のほんの半刻が人間界の十年であったり、 
人間界の一日が妖邪界の三年であったり…まったく行き来するのに不便なことよ。両の世界の正確な時の流れ、迦雄須と阿羅醐様は完全に把握していたらしいが、二人とも今はいない。それで、那/唖挫が<時>を測ろうと思い立ったらしい。」 
「那/唖挫が一人でか?」 
「無論、天空が助太刀に入ったらしいがな。」 
「ほう。」 




 好奇心を惹かれ、悪/奴弥守は螺/呪羅の方に身を乗り出した。 
「とりあえず、自分が妖邪界に転生した時から妖邪界での現在と、人間界での現在を調べたところ……我ら、一体、何歳になると思う?」 
「わからん。こちらの世界にきて、五十を越えたところで数えるのはやめた。」 
 何しろ、鎧の力で魔/将たちはいつまでたっても肉体年齢を取らない。 
 小童たちは年を取るようだが、それは恐らく世界の性質が違うからだろう。 
「那/唖挫は人間界の年齢で、四百四十三歳、妖邪界の年齢で四百四十歳になるらしい。」 
「……?三年しか違わなかったのか?」 
「もっと大きな差が出ると思っていただろう。」 
「確かに、差は開くと思っていた。そうだな、俺は那/唖挫と一年しか年が違わないはずだ。だがこちらの世界に来たのは…いつだったか?まあ大体……四百四十四歳か?」 
 そう言って、悪/奴弥守は頭をがしがしとかいた。 
 元々、過去にこだわらない性質な上に四百年もたっていればほとんど記憶に残ってないのも無理はない。 
「ついでに人間界のなにやら大仰なカラクリを使ったらしくてな、そうすると、那/唖挫の体の年は十九歳、本人の言うには、妖邪界に入ってちょうど四歳年を取っていたそうだ。俺はむしろそちらに驚いた。」 
「我らも年を取っていたのか?!」 
「まあ、考えてみれば、幼子だった迦/遊羅が武装して星麗剣を振り回すわけだからな。我らだけ時の流れが止まっているということはありえぬ。」 
 螺/呪羅はそう言って杯の酒を舐めた。 
「すると、俺は、体の年齢だけ言えば、小童どもと同い年ということになるのか。」 
 それはあまりに途方もない事に思えて、悪/奴弥守は全く実感がわかなかった。 
「那/唖挫と朱/天は年下ということになる。」 
「水滸と烈火よりも、年下!」 
「全く年を取らないで追い抜かれたのとは少々、意味合いが違ってくるのがまた辛いところよ。」 
 悪/奴弥守はそれを知った時の那/唖挫の胸中を考えてみて、歯噛みした。 
 「そういうわけで、那/唖挫はしばらく人間界とこの世界を頻繁に行き来して、天空と時を計測するらしい。 
一応、政ときちんと両立できるのか、と釘は差しておいた。とはいっても、奴の事だ。切羽つまれば薬で眠気と食欲を止めてやることは全部片付けるだろう。」 




 那/唖挫の薬師の力はそういう意味ではほぼ万能だ。彼の薬品は本人の調合次第で、体にあらゆる変化をほとんど副作用なしで起こす事が出来る。 
「……光輪が大人になることは楽しみだったが、考えてみれば我らはいつか追い抜かれる者……なのだな。」 
「これだけ年月を重ねれば、自分の年のことなどどうでもよくなるからな。……しかし小童どもにとって我らとて同じく年を取る、鎧を着る者なのは変わりあるまい。」 
 明日会う征/士と自分が計算の仕方によっては同い年。 
 その事実に悪/奴弥守は頭を殴られたような衝撃を覚えていた。 
 それと同時に、説明のつけられない感情がこみあげてくる。 
 この四百年で培った自分の力が無駄だといわれたような、それでいて違う世界の征/士が一挙に身近になったような。 
「悪/奴弥守。」 
 半ば茫然自失していた悪/奴弥守の手を、螺/呪羅が掴んだ。 
「………何。」 
 途端に薫る、花の匂い。 
 その匂いを感じると同時に生唾が込みあがり、酔いの眩暈が襲ってくる。 
(……くっ!) 
 悪/奴弥守は“気”を使い、自分の中に侵入しようとしてきた螺/呪羅の幻力を弾く。 
 同時に螺/呪羅の手をもう片方の手で払いのけた。 
「ふざけるな螺/呪羅。お前の幻で遊ばれてたまるか。」 
 夢幻の力を持つ螺/呪羅は、那/唖挫の媚薬ほどではないが、暗示で好きな相手を自在に欲情させることができる。 
 一度、まんまとしてやられた事のある悪/奴弥守は、以来、螺/呪羅と二人きりになるときは“気”をある程度張り詰めているのだが、 
会話の内容で覚えず隙を作ってしまったのだ。そこを螺/呪羅は見逃さなかった。 
「やれやれ、全く融通の利かぬ…酒だけでは興ざめかであろうが。」 
 そう言ってわざとらしくため息をつく螺/呪羅の蒼い隻眼を鋭く睨みつけ、悪/奴弥守は手酌で酒を杯に注ぐ。 
「貴様も知っておろう。俺は薬やなんぞ妖かしの力で好き勝手をされるのは大嫌いだ。男の癖に、そんなに自分に自信がないのか。」 
「また挑発的な言葉を使うことよ。」 
 低い声で螺/呪羅は笑う。しかしその眼には先ほどまでの優しげな光はない。 
「挑発?俺は当たり前の事しか言っておらぬわ。」 




そう言って悪/奴弥守は豪快に酒を飲み干した。 
「その様に言われたら、男は己の自信の程を見せねばならぬであろうが?」 
 白い指先が伸び、悪/奴弥守の、左の頬の傷を縦にスルリとなぞる。 
 瞬間的に、悪/奴弥守の顔が赤く染まった。 
「べ、別にそんな意味で…言ったわけではない……。」 
 自分の言った言葉は、確かに男を挑発しているようにも聞こえる。 
 全くそんなつもりがなかっただけに、悪/奴弥守はうろたえた。 
「ほう?ではどんな意味で?」 
 悪/奴弥守が抵抗しないのを確かめながら、螺/呪羅は指を更に伸ばし、白い手のひらで彼の頬をなであげる。 
「だから、男なら、薬などに頼らず、黙って自力で……。」 
「自力で?」 
「……………」 
 沈黙する悪/奴弥守の首筋に螺/呪羅の手が降りる。 
「男は、黙って自力で、どうすればいいのだ?」 
「………!」 
 ただ触れられているだけなのに、螺/呪羅のひんやりとした手は酒で火照った体に快く、先ほどのように払いのける事が出来ない。 
「のう、悪/奴弥守?どうすればいいのだ?」 
 そんなことをいいながら、螺/呪羅の手は悪/奴弥守の鉄色の小袖をまくり肩口の方へ入ってくる。咄嗟に身をそらそうとするが思うように体が動かない。 
「だから……!」 
「だから、何だ?」 
「~~~~~!口説け!!」 
 もう破れかぶれになって怒鳴るように言った。 
「黙って、口説く?これはまた、嬉しい事を言ってくれる。」 
 何故螺/呪羅が喜んでいるのか分からず、悪/奴弥守は濃紺の眼を瞬く。 
 螺/呪羅はこの男に似つかわしい妖艶な笑みを浮かべ、小袖の中に入れていた手を肩から首筋へ滑らせた。 
「・・・・・・!」 
 それだけなのに、動悸が高鳴る。息が乱れる。 
「螺/呪羅……幻は使うなと、言ったはず……」 
 自分の体の状態に戸惑い、悪/奴弥守が抗議する。 




「別に何も使っておらぬわ、何しろ黙って口説くのだからな。」 
 確かに“気”を使っても、自分の中に螺/呪羅の幻力が入り込んでいない事が分かる。 
 そう言っている間にも、螺/呪羅の指が首筋のある一点を捉えた。 
「……んっ……」 
「まるで幻にでも囚われたような心地なのか?」 
 何かをこらえるように眼を閉じた悪/奴弥守の間近に顔を近づけ、囁くように問う。 
「違う!」 
 螺/呪羅の吐息から逃れようと、悪/奴弥守は背を反らして身を引いた。 
 その瞬間を狙い、小袖の中に滑り込ませていた手で悪/奴弥守の肩を強く押す。 
 あえなく、悪/奴弥守は畳の上に倒れた。 
 自然と悪/奴弥守の上にのしかかる姿勢になり、螺/呪羅は相手の反応を窺う。 
 暴れる獣を力ずくで押さえ込み、無理に受け入れさせるのも嫌いではないが、明日、悪/奴弥守は征/士に会いに行くという。 
 それを考えれば無理無体に…というのはよしておくべきだろう。 
 そんなことをしなくとも、数え切れないほど重ね合わせた体だ. 
 耳の裏側から首筋を指先で舐めるように辿り、空いている手を小袖の上から脇の下をくすぐるように蠢かす。 
 息を殺す悪/奴弥守の耳元に口を近づけ、そっと息を吹きかける。 
 瞬間、悪/奴弥守の全身が震えた。 
 それを見て、螺/呪羅はかすかに唇をゆがめる。 
「……笑うな。」 
 眼を閉じているのにも関わらず、螺/呪羅の挙動ははっきりと感じ取っているのだろう。 
 低い声で悪/奴弥守が言った。 
「すまぬ。相変わらず、感度が良すぎるのでな。」 
 悪/奴弥守が眼を見開き、螺/呪羅を殴ろうと手を振り上げた。 
 その手を素早く掴み、畳の上に落とす。 
 睨み付けてくる悪/奴弥守に至極冷静な眼を返し、螺/呪羅は言う。 
「本当の事を言ったまでだ。手荒な真似をさせるな。それとも、ここまできておあずけなのか?………俺は貴様の犬ではないぞ、悪/奴弥守。」 
 聞こえよがしに悪/奴弥守は舌打ちをした。 
「布団。」 
 その一言で意味を察し、螺/呪羅は悪/奴弥守の体を両腕に抱き上げた。 
 隣室に布団が既に敷いてある事は知っている。 




 闇神殿は基本的に暗いが、悪/奴弥守が睡眠を取るその一室は漆黒の闇だった。 
 朱/天や那/唖挫ならば布団のある場所など皆目検討もつかないだろうが、螺/呪羅は違う。 
 忍の心を司り、妖邪界に魔/将として転生する以前も一流の頭脳忍・体忍として名を馳せていた螺/呪羅は、悪/奴弥守同様、闇の中でも十分に眼がきく。 
 部屋の真中に敷かれた大きく清潔な布団の上に、抱き上げてきた悪/奴弥守をうつぶせに横たえる。 
 あお向けでは帯をほどくのが面倒だ。 
 かといって、すぐに小袖を脱がせるつもりはない。 
 乱れた小袖の裾をゆっくりとめくり上げ、日に焼けた足をはだけさせる。 
 暇さえあれば犬を連れて山野を駆け巡っているにもかかわらず、その余分な肉を一切殺ぎ落とされた両足には傷一つない。 
 撫でてみると、手に吸い付くような皮膚の感触と、しっかりとした弾力。 
 足首のあたりからじわじわと揉むように悪/奴弥守の脚をなで上げていく。 
 ふくらはぎ、膝の裏、そして褐色のスラリとした太腿。 
「くっ…」 
 時間をかけていじられる感覚に耐え切れなかったのか、悪/奴弥守が小さく声を漏らした。 
 身を捩って螺/呪羅の手から逃げようとするのを見逃さず、悪/奴弥守の膝を腰の方へと織り込む。 
「!」 
 必然的に着物の裾をめくり上げられたまま腰を上に突き出す格好にさせられた悪/奴弥守は、両腕を枕の両脇について体を起こそうとした。 
 その隙に悪/奴弥守の脚の間に手を突っ込む。 
「………ぅ………」 
 悪/奴弥守の身に付けていた下帯が、彼の膝に落ちる。 
そのまま中のものをやんわりと掴み、指五本を使ってしごきあげる。 
 四つんばいの格好のまま、悪/奴弥守が嫌がるように身をひねる。 
 その背中に覆い被さり、首筋に唇を当てる。 
 手は休めない。次第に息が上がってくる悪/奴弥守。 
 その息に耳をすませながら、ねっとりと後ろから首筋を舌で舐め上げる。 
 風呂に入った後なのか、柚子の香りと味がした。 
「んッ、はぁ……あ、くぅ……っ!」 
 闇に漏れる、悪/奴弥守のこらえきれない声。 
 追い上げるのは螺/呪羅の指と舌。 




この闇の結界は、外での出来事は察知できるが、中からの音、光、気配は一切外に漏れない仕組みになっている。 
 だから悪/奴弥守がどんなに乱れても、その姿を知る者はいない。 
 その場にいる、螺/呪羅以外は。 
(片目でも、夜目がきいて、よかったな……) 
 そんな事を一人思い、螺/呪羅は悪/奴弥守の小袖の胸に手を入れて、素肌をまさぐりはじめた。 
 浅黒い皮膚を、縦横無尽に這い回る白い指。 
 野性的に引き締まった体を味わい尽くすように、指が動く。 
「あ、くっ…螺/呪羅……。」 
 普段の彼からは想像もつかないような声で螺/呪羅を呼びながら、悪/奴弥守が敷布に爪を立てる。 
「どうした?」 
 そう答える螺/呪羅の声は先ほどとまるで変わらず平静そのものだ。 
 悪/奴弥守は螺/呪羅の問いに返事をせず、ただ敷布をかきむしる。 
 荒い息。しっとりと汗ばんできた首筋をねぶるようにして耳まで口を回す。 
 途端、明らかに悪/奴弥守は全身を引きつらせた。 
 構わずに耳朶を数度甘く噛み、耳の穴に舌をねじこむ。 
「んッ!あ、あ……」 
 敷布を引っ掻き回す悪/奴弥守の手が震えている。 
 清潔にピンと張り詰めていたはずの敷布はもう皺が寄って乱れきっていた。 
 耳から舌を抜き、かわりに悪/奴弥守の胸の尖りをつまむ。 
 がくがくと悪/奴弥守の体が震える。 
 脚の間に伸ばしていた方の手も絶え間なく動かしながら、尖りをこねくり回し、弾く。 
 その動きに忠実な反応を返しながら、悪/奴弥守が身をよじる。 
「よ……せ、やめ、ろっ……ら、じゅら……。」 
 喘ぎながら、切れ切れの声で悪/奴弥守が言った。 
「何故?もうぎりぎりではないか。」 
「……汚れる……ッ!」 
 悪/奴弥守は普段着の鉄色の小袖を着たままだ。 
 小袖を洗うのは当然ながら側仕えの部下。 
 いくら人払いをし、闇に潜んでの行為でも、着物の汚れや匂いで分かってしまっては意味がない。 




 しかし、四魔/将の爛れた関係については部下達もとっくに承知の上だし、第一着物ばかり脱いでも、悪/奴弥守自身が布団の上に既に痕跡を残している。 
 それでも服を脱ぎたがるというのは、恐らく、部下に「小袖を脱ぐゆとりもないほど」と思われるのが嫌ということか。 
「やれやれ。」 
 螺/呪羅は大仰にため息をついて密着していた体を離した。 
かたばさみに結んでいた帯は二人の体の間で既に横に曲がっている。 
 その先を引っ張ってほどき、畳に落とす。 
 布団に両手をついている悪/奴弥守の上半身を起こして前をはだけさせる。 
 慣れきった手つきで小袖と単を悪/奴弥守の体から取り去り、布団の脇に放り投げる。 
 ぎりぎりまで張り詰めた悪/奴弥守の雄が螺/呪羅の視線にさらされる。 
「は、あっ……」 
 脱がされる事自体に興奮したのか、それとも生地が肌にこすれた感触のせいか。 
 自分に背中を向けているにも関わらず、悪/奴弥守の体が、先ほどよりも火照り汗ばんでいるのが分かる。 
 悪/奴弥守の肩を引っ張り、傾けるように押す。 
 それで意味を察した悪/奴弥守はされるがまま布団の上に仰向けに倒れた。 
 螺/呪羅は悪/奴弥守の上にそっと覆い被さり、その口を吸った。 
 互いの唾液と舌を絡めあい、貪りあううちに、悪/奴弥守の両腕が螺/呪羅の肩に回る。 
 螺/呪羅も悪/奴弥守の黒髪に指を差し入れ、深く口付けをかわす。 
「ふ、う……」 
 唇を離した瞬間に漏れた息はどちらのものか。 
 螺/呪羅の白く長い指が悪/奴弥守の濡れた唇を何度かたどり、やがて口の中に押し込まれた。 
 その意図がわからない悪/奴弥守ではない。 
 黙って螺/呪羅の数本の指を舐め始める。 
 螺/呪羅は乱暴にはならないように気を使いながら、自分に抱きついている悪/奴弥守の腕をほどき、手を伸ばして悪/奴弥守の雄に再び触れる。 
「くぅ……う……あ……」 
 こらえようとしても体が勝手に動いてしまうのだろう。 
 乱れきった敷布の上で、悪/奴弥守がのたうつ。 
 そのサマをじっと観察しながら螺/呪羅は悪/奴弥守の先端に爪を立て、くびれを引っかき、しごきたてる。 




「はっ……も、もう……」 
 螺/呪羅の指をくわえながら、切なげに悪/奴弥守が声を上げる。 
 それを聞いて、螺/呪羅は悪/奴弥守の口から指を引き抜き、下の口に這わせた。悪/奴弥守の動きが止まる。 
 息を詰め、体を強張らせるのを見、安心させるために顔を落とす。 
 悪/奴弥守の雄を口全体に頬張って舌を使う。 
「………!!」 
 その感覚に悪/奴弥守の緊張がたわむ。 
 すかさず指を一本突き入れた。 
 悪/奴弥守は声を立てずに体を痙攣させている。 
 眼だけで見上げると悪/奴弥守は片手で自分の口を抑えて背を弓なりに反らしていた。 
 口で愛撫を続けながら悪/奴弥守の反応を確かめる。 
 螺/呪羅が中で指を動かすたびに、悪/奴弥守は手を噛んで体を小刻みに震わせる。 
 内部で円を描き、時には引きながら、少しずつ奥に侵入していく指。 
 悪/奴弥守が異物感に慣れた頃合を見計らい、ずぶりと二本目を入れる。 
 その間も、螺/呪羅の口は悪/奴弥守をくわえたまま。 
 あいていたほうの悪/奴弥守の手が泳いで、螺/呪羅の髪に触れた。 
 まるで、もっと、とねだるように。 
恐らく本人には、自分が何をしているかも分かっていないだろう。 
「声を出せ、悪/奴弥守。そのほうがラクな事は、分かっておろう。」 
 雄から口を外してそう告げると、ゆっくりと悪/奴弥守の裏筋を舌先で舐め上げた。 
「はぁ…あ!あっ、ああ…!」 
 途切れ途切れの悪/奴弥守の嬌声。 
 内部を悪/奴弥守の唾液で濡らしながら、自分の唾液で悪/奴弥守を濡らしていく螺/呪羅。 
 不意に、悪/奴弥守が右足を伸ばして先を敷布に引っ掛け引きつらせた。 
 達する直前の、悪/奴弥守の癖だ。 
 それを螺/呪羅は、根元をまるで栓でもするようにきつく止め、絶頂をさえぎる。 
「螺/呪羅……!」 
 悲鳴のような悪/奴弥守の声。 
 それを聞こえないふりをして、螺/呪羅は悪/奴弥守の両足を抱え上げると自分の体を間に滑り込ませた。 
 頭の先から足の先まで駆け巡る甘い衝撃。 
 挿入。 




「ふ、う、…くっ…あ、ら、じゅら……」 
 甘く掠れた悪/奴弥守の声はもはや泣き声に近い。 
 その頬の十字傷に軽く口付ける。 
 そのまま閉じられた瞼、前髪、眉間。 
 その度に螺/呪羅の長い青灰色の髪が悪/奴弥守の黒髪にかかる。 
「んっ……」 
 忙しない呼吸がいくらか落ち着いたのを見計らい、螺/呪羅は体を動かし始める。 
 体を引き、そして突き上げる度に、悪/奴弥守は切羽詰った声を上げる。 
 その表情、姿態に、螺/呪羅は眼を奪われる。 
 戦場では黒狼剣を振るい、山犬を使い、暗黒を支配して敵を情け容赦なく叩き斬り、返り血に酔う男―――― 
 それが自分の下に組み敷かれ、奥まで突き入れられて、こんな表情をする。 
 戦での悪/奴弥守を思い出した途端、体の芯が震えた。 
 沸き起こってきた衝動のままに、悪/奴弥守をより深く抉る。 
 奥へ、奥へと身を進めるごとに、悪/奴弥守は身を反り返し、甘い叫びを上げつづける。 
「やっ、も、もぅ…螺/呪羅……あつっ、熱い……から、はず、はず……せっ……」 
「出したいのか?」 
 もう限界な事は分かっていながら螺/呪羅は淡々とした声で聞く。 
 悪/奴弥守は何度も頷いた。 
 根元を締め付けていた指をほどき、唾液と先走りにぬめりきっていたそれをやや乱暴に数度しごく。 
「ふっ……あぁああ……!」 
 悪/奴弥守は螺/呪羅の背中に爪を立て、かきむしりながら、激しく己の精を放った。 
 瞬間、それ自体が生き物のように収縮を繰り返す悪/奴弥守の内部。 
「……っ!」 
 声には出さないもののそれをダイレクトに感じ、螺/呪羅は声を殺す。 
 追い詰められていた分、放出の快楽は凄まじくて、悪/奴弥守はしばし呆然と余韻に浸った。 
 その恍惚とした表情を見つめながら螺/呪羅が低く告げる。 
「出すぞ。」 
 開始される律動。 
「なっ……やめ、ちょっと、待て……螺/呪羅、よせ……!」 
 正気に返った悪/奴弥守は慌てて螺/呪羅を止めようとした。 




「な、中は、ダメだ……!やめろ、螺/呪羅、中には……やめっ……!」 
 押しとどめようとする悪/奴弥守の両腕を掴み、布団の上に押さえつける。 
 達した直後で体に力が入らない上、自分よりも長身の男にのしかかられている悪/奴弥守は、そうされるともう反撃する事が出来ない。 
 突き上げられながら息を荒げ、ただ悲鳴を繰り返すだけだ。 
「い、や……だ……!」 
 そう叫んだ途端、体の中に熱い液体がそそぎこまれたのを感じ取り、悪/奴弥守は息を止める。 
「……………」 
 螺/呪羅が深く息を吐く。 
 そうして、ゆっくりと自身を悪/奴弥守の中から引き抜いた。 
 続けて、トロリと白い液体があふれ出てくる。 
 思わずそれを凝視する。 
 途端に、頬に激痛が走った。 
 起き上がった悪/奴弥守が右手で螺/呪羅の顔を張り倒したのだ。 
「……中には出すなと言ったはずだ。」 
 濃紺の眼を吊り上げて怒る悪/奴弥守。 
「悪かった。つい、節制がきかなくてな。」 
 悪/奴弥守は沈黙して身構える。 
 この男が素直に謝るということは、何かとんでもない要求を隠し持っているということだ。 
「詫びといっては何だが……」 
 差し出された右手を掴み、その甲に軽く口付ける。 
 悪/奴弥守を見やる、自信に満ちた蒼い隻眼。 
不始末をしでかした分、続行して快楽を与えてやる、というわけか。 
 この男の色事に関しての自信は本当にタチが悪い。 
 何しろ、ただの自信ではなく完全に実力と実績が伴った自信なのだ。 
「この色魔!」 
 そう毒づく悪/奴弥守の手を引っ張って腕を手繰り寄せる。 
 必然的に螺/呪羅の胸にもたれかかる形になった悪/奴弥守は、その紫色の小袖の襟首を掴んで両側に広げた。 
「貴様も脱げ。」 
 漆黒の闇の中、螺/呪羅が微かに笑う。 




闇の鎧・漆黒は暗闇によって安眠を誘う。 
 闇神殿の最奥、悪/奴弥守の寝所は幾重にも張られた結界によって昼間でも鼻をつままれても分からないような闇に包まれ、 
眠りで心身の急速ながら無理のない回復を行う。 
 だから、その一室は普段なら光が差し込む事はないはずだった。 
 ありえないはずの陽光を感じ、螺/呪羅はうっすらと片目を開ける。 
「起きたか。」 
 布団の中の螺/呪羅に背を向けたまま、悪/奴弥守が言った。 
和箪笥を前に、なにやら苦戦している。普段の小袖姿ではない。 
 黒が基調のカッチリした、だが動きやすそうな洋服を着ている。 
(みりたりい…という奴か。) 
 螺/呪羅も悪/奴弥守ほどではないが人間界に降りる事は以前よりもはるかに多い。 
 ある程度の風俗は把握していた。 
「その洋服、どうした。」 
「光輪に選んでもらった。小袖姿では人目を引きすぎるのでな。」 
 そう言いながら、ようやく見つけた指なし手袋を手にはめる悪/奴弥守。 
 征/士はどうやら悪/奴弥守の身に付ける小物にまで口を挟んでいるらしい。 
 それを知り、螺/呪羅は引っかかるものを感じた。 
脱ぎ捨てた小袖を形ばかり羽織り、悪/奴弥守の背後に立つ。 
「一日で帰ってくるのか?」 
「当たり前であろう。人間界に二日も三日も留まる理由はないわ。」 
 怪訝そうな顔をする悪/奴弥守に螺/呪羅は苦笑する。 
「光輪の二十歳の祝、知らなんだ故に何も準備しておらぬが、俺からも祝の言葉を伝えてくれ。“今度手合わせする時が楽しみだ”とな。」 
「……先に光輪と手合わせするのは俺だぞ。」 
 嫌そうな顔をする悪/奴弥守のミリタリーシャツの襟を引いて首筋を露にし、見えるか見えないかぎりぎりのラインに吸い付く。 
「……螺/呪羅。」 
 制してもしつこく吸い上げる螺/呪羅に辟易し、悪/奴弥守は体の向きを換えると螺/呪羅の口に口を重ねる。 
 今更そんなことをしなくても、悪/奴弥守の体には螺/呪羅の痕が存分に刻まれていた。 
 しかし、悪/奴弥守は知らない。 
 それが人間界に降りた彼をどれほどの危機に晒すことか―――――。 
 だが、それはまた、別の話。 




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 | | □ STOP.       | | 
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 
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長すぎましたね。しかも失敗だらけ。ああもう。 
鬱出汁脳。 
鬱出汁脳。
- ごちそうさまでござる いやいいもの読ませて頂いた -- [[これはぬかった額田王]] &new{2016-05-06 (金) 14:57:47};

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