Top/12-472
12-472 の変更点
- 追加された行はこの色です。
- 削除された行はこの色です。
- 12-472 へ行く。
- 12-472 の差分を削除
*古畑ファイナル第二夜 弟→兄 [#s05348b7] #title(古畑ファイナル第二夜 弟→兄) [#s05348b7] ____________ | __________ | 古.畑ファイナル第二夜の弟→兄 | | | | 過去捏造とかしてるので注意だよ | | |> PLAY. | | ――――――v―――――――― | | | | ∧_∧ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 彼は俺のヒーローだった。 ――貴方にお父さんができるの。 ――お兄さんもできて、これからは四人家族になるのよ。 母親に連れられて初めて顔を合わせた日、大人二人がどうやって俺達を打ち解けさせようかもぞもぞ しているのを察したのか、彼は僕の手を引いて、近くの空き地に連れて行った。 こっちは幼児だったが、向こうはもう中高生だ。母親違いなどという複雑な事情を理解したうえでの行為 だったのだろう。 俺が不思議そうな顔をしていると、彼は俺が初めて見る白いボールを手にして、ごく軽く投げて寄越した。 反応できなかった俺はボールをこぼし、慌てて拾いに行く。 「キャッチボール、知ってる?」 俺が首を横に振ると、彼はここに投げてごらん、と右手を出した。俺は恐る恐るボールを投げ返す。 ボールはとんでもない所にひょろひょろと飛んでいったが、彼は腕を伸ばして上手にキャッチした。 「ナイスピッチ」 そう言うと、彼は優しく微笑んだ。 言葉の意味は解らなかったが、その瞬間から、俺は「キャッチボール」と「兄さん」が、大好きになった。 ◇ 面会室に入ると、兄は腰を上げ、立会の看守に礼をした。看守が面会は三十分までですと告げる。 透明なアクリルの板に隔てられ、兄弟が向かい合う。 「こう尋ねるのもおかしいが、元気にしているか」 「動けないと身体がだるいよ……それより」 ああ、と兄は勢い込む俺を手で制した。 「代理人の人は対応に追われていてね、今日も来る予定だったんだが」 「そうじゃない、兄貴は」 俺の問いを理解するのに、兄は少し時間を要したようだった。一拍置いて口を開く。 「書類送検はされたんだが、不起訴になるかもしれない…… 古.畑さんが申し出てくれてね、普段は強く出ない人なのに」 「なら、良かった」 良かった――のかな、と兄は消え入りそうな声で呟く。良かったさと返し、アクリル板に規則的に穿たれた 穴を、何ともなしに指でなぞる。 一枚板を隔てただけで決して触れられない、このもどかしさは何だ? 会話が途切れたのを見て、看守がこっちに視線を寄越す。早々に切り上げられるのを防ぐために、兄は とりとめもない事を話した。 マスコミの姿勢はどちらかといえば同情的であること。海の向こうでも騒ぎになっているらしいこと。あのデコ の広い人は随分ショックを受けていたということ。 会話は核心――そんなものがあるのかも解らないが――に触れることもなく、面会の三十分間を上滑りして いく。 この感覚は初めてではない。 それどころか俺はずっと、心の奥にある種の焦れる気持ちを抱えていたように思う。 兄と出会った日から、ずっと。 ◇ 不気味なほど月が暗かったことを覚えている。空を仰いだ俺は大きく息を吸って、自転車を漕ぎ出した。 もう夜道には人気がない。ぽつぽつと灯る街灯を便りに川沿いの土手を走る。 自転車を軽く軋ませながら走っていると、前方から誰かが駆けてくるのが見えた。 「兄貴?」 ばたばたと走ってきた兄が二十メートルほど前で立ち止まり、息を整えた。 驚いて兄の許まで行くと、彼は息を切らせながら片手を上げた。自転車を降り、並んで歩く。 「迎えに来て貰う年でもないだろ」 ああ、と兄は言い淀んだ。言い辛いことがあるらしい。解り易い人だ。 暫くああとかうんとか唸りながら、やがて兄は口を開いた。 「喧嘩、したって連絡があってな」 「殴り合ってはいない」 「それは」 「見てた奴等がびっくりして知らせたんだろうけど、大袈裟なんだよ」 街灯の灯りが途切れ、足許が暗くなる。 俺達が兄弟になって十年ほど後。キャッチボールも知らなかった俺は高校球児になっていた。 兄は補欠ながら甲子園に進んだものの、野球を続けることを選ばず、卒業後に警察官になっていた。 俺は本格的に野球に入れ込み、毎日のトレーニングと自己管理で少しずつ確実に実力をつけていた。 今日もグラウンド整備の後に残って走り込みに加わっていると、顧問の教師が声をかけてきた。 ――継続と努力はいいことだ。 ――その上お前は結果を出している。 ――兄さんとは違うな。 言われた途端、身体がすっと冷え、直後熱くなった。 教師の許までずかずか歩み出て、真正面から向き合う。手を出すことはしなかった。 余程俺は怒りに満ちた表情をしていたのだろう。周りにいた仲間が驚いて俺を止めた。教師はぎょっとした 顔をしていたが、何も言わず慌てて離れていった。 自分を取り戻すまでに、数秒掛かった。 腹が立ったのだ。自分でも信じ難いほどに。 「先生も、一体どこで兄貴の話を聞いてきたんだろうな」 俺が軽く言うと、兄は複雑な表情をした。 「お前は優秀なんだ、将来はプロにだってなれるかも知れない……今学校と諍うことは避けろ」 「だから諍ったわけじゃないって。 兄貴を悪く言われたんだ、黙ってられるかよ」 「俺のことなんかでそう憤るな」 「なんかって何だよ」 暗くて見えないが、兄が困った顔をしているのが解る。 「俺自身をどう言われようが構わない――けど、兄貴のことだから怒ったんだ」 ちかちかと瞬く街灯の下を通り過ぎる。兄は何も言わない。明滅する視界に、昂じる気持ちは勢いを増す。 兄は優しいので、例え直接悪く言われても強く言い返すことはない。それをいいことに好き勝手言う輩を、 俺はいつも苦々しく思っていた。 俺の兄貴を傷つける奴は、許さない。許せない。 この気持ちは、まるで―― 「俺は、兄貴が」 「一.朗」 小さくも硬い声で遮られ、胸がびくりと震えた。 兄は眼を伏せたまま、悲しそうな顔で首を横に振った。 それを目にした俺は――酷く狼狽えた。 いつも真っ直ぐに、平静に保っていた筈の心が、動揺でぐらぐらと揺れる。 違う。 俺はそんな顔をさせたいんじゃない。 街灯の光が届かなくなり、再び辺りが暗くなる。 それから家に着くまで、俺達はひとことも言葉を交わさなかった。 ◇ 「あの刑事――古.畑さんは、俺が兄貴を救ったって言ったんだ」 つまらない話を遮って唐突にそう言うと、兄は古.畑さんが、と呟いた。 兄弟を隔てる一枚の硬い板。高校生の俺は、このアクリル板を無理矢理破ろうとしていたのかもしれない。 そして俺はその頃となにも変わっていない。 教師の言葉に憤った。郡.山を手に掛けた。ひとつだけ、嘘をついた。全ての動機は同じだ。 俺はずっと、恋にも似た思いをもって、ただ兄を守りたがるガキだった。兄を救えるなら、それでいいと 思っていた。 しかし――俺のこの思いが、兄の笑顔を消してしまうのだとしたら、俺は。 俺のしてきたことは。 「兄貴」 重たい口を開く。出ない声を無理矢理絞り出す。怯えているのか。 「……俺は、兄貴が好きだ」 今度は、兄は遮らなかった。 胸がぐっと緊張する。無理矢理、顔を上げる。今の俺は相当情けない顔をしているんだろう。 俺は、兄ちゃんを好きでいていいのかな。 声にならなかった。 少し間を置いて、俺の目にきちんと向かうと、兄はいつものように優しく微笑み、少しだけ頷いた。 憑き物が落ちたように、俺の肩からすっと力が抜けるのが解った。 この表情を守れたなら、何も悔いはない。 会話が途切れたのを見計らったのか、立会の看守がではそろそろ、と呟いた。 兄は立ち上がり、深々と頭を下げる。 促されて立ち上がり、退室しようとすると、後ろから兄が声をかけてきた。 「俺は、お前を待ってる」 「――……」 「お前とまたキャッチボールするの、楽しみにしてるからな」 振り向かずに、小さく頷いた。 いつか、この透明な板を越えて向かい合えた時、兄貴にちゃんと伝えよう。 ありがとう、と。 そして、俺は兄貴の弟で良かった、と。 俺は心の裡で微笑んで、面会室を後にした。 ____________ | __________ | お粗末様でした | | | | しかしあの兄弟愛は激しかったな | | □ STOP. | | ――――――v―――――――― | | | | ∧_∧ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ #comment