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*無題 [#s091d666]
#title(無題) [#s091d666]
オリジナル、某スレのお題からいただいた妄想 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

高層ビルと高層マンションの間に、その家はあった。瀟洒な洋館のはずが、近隣での通称はお化け屋敷である。 
かつては綺麗に手入れされていた庭も、持ち主が変わった後は一切構われなくなり、壁には蔦が這っている。 
「……いつ見てもすごいな」 
今の持ち主はほとんど屋敷の外に出ない。持ち主以外にも何人か住んでいるらしいが、彼は見た事がなかったから、半信半疑である。 
「……さて、行くか」 
そう呟いて彼は荒れ放題の庭に足を踏み入れた。落ち葉が降り積もった庭は、歩くだけで乾いた音がする。 
「ちょっとは手入れしろよな」 
彼は一人呟いてから、思い直す。 
「ま、これくらいの方があいつらしいか」 



カサカサと草を踏み分ける音で、彼が来たことが解った。使用人達に下がるように伝え、彼を迎える準備をする。 
……と言っても、座布団一枚出すことくらいしかしないが。 
「いるか?」 
彼の声に振り返る。窓から室内を覗いている彼に、クスリと笑いかけ曖昧に頷く。 
「早くこっちにおいでよ」 
「おう、今行く」 
窓から普通に侵入してくる彼を見て、私は呆れたように笑った。 
「……んだよ」 
「ん?……別に」 
玄関遠いし……と言い訳する彼を横目に、私は出来た物を確認する。……これを彼に渡せば……。 
「…………出来たんだな、ついに」 
彼の優しい声に少しだけ泣きそうになる。 
「……うん」 
「そうか……」 



私から手渡されたものを彼は確認する。一応念を押した。 
「これで……いいんだな?」 
私はコクリと頷いて微笑んだ。 
「うん……もう、大丈夫」 
「解った」 
彼は、私が恋した相手の姿で……私を抱きしめた。彼の口から小さな歌が聞こえる。それを耳にしながら、私はゆっくりと身体の芯から溶かされていく。 
歌が途切れた。私の唇に彼の唇が重なる。そこからも、私が溶かされていく。 
彼が背中を撫で、耳元で何かを囁いた。私は彼に返事をする。 
「……私も……」 
…………返事はそこで途切れた。 



後日、彼は目の前に広がる瓦礫の山を、ぼんやりと見上げる。 
近隣では有名なお化け屋敷が崩れたのは、彼が私と名乗る地縛霊を成仏させた翌日の事だった。 
「そんな力があるなら……俺を拒む事も出来たのにな」 
私は彼に頼んだのだ。これを書き上げるまで待ってほしい、書き上がったら好きにして構わない、と。彼は待つことを選択した。 
「ああ、そうだ」 
彼はポケットから文庫を出して、瓦礫にもたれ掛かった。 
「本になったぜ、アンタの原稿」 
一人呟いて彼は笑う。浄霊したので、ここにはいないはずなのに、風に混じって「ありがとう」と聞こえた気がした。 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
お題は「廃墟でものを書き続ける男(フェイク済み)」で最後はこんな終わり方を妄想。元スレで書くのは憚られたのでこちらで。 
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