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56-11 のバックアップ(No.1)


瀕死の密航者

1乙です。
ブソレンよりヴィクバタ(爆)
捏造、傷描写注意

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 蝶.野家所有の貿易船が、イギリスのリヴァプールの港を出ていく。
 船長室の扉の前のデッキから、海からの潮風に蝶々の形に整えた髭をなびかせていた蝶.野.爆.爵は、イギリスの白亜の岸壁を眺めた。
 商用でイギリスには何度も訪れているが、港を出るときはいくばくかの寂寥感を覚える。
 仕事自体は上手くいっているが、わざわざ自身が赴いた肝心の要件はなかなかはかばかしい成果を上げていない。
 行き詰ったか、と胸の内で息をついたとき、船員の一人が船長室に駆け込んできた。
 聞くとはなしに聞いていると、どうやら船倉に密航者が紛れ込んでいるらしい。
 しかもその男は、ひどい怪我をしているらしい。
 ふむ、と髭を撫で、爆.爵は様子を見に駆けていく船長らのあとを追った。

 その男は、ひどい血を流して船倉の片隅にうずくまっていた。
 蛍火のように淡く光る髪、褐色の肌、鍛え上げられた肉体。
 けれど不思議とアジア人には見えない。
 高い鼻梁や彫の深い顔立ちがそう見せているのだろうか。
 遠巻きに眺めながら、爆.爵は思った。
 英国人の船長が、アイルランド訛りの英語でぐったりした男に誰何する。
 だが男は答えない。
 よくは聞こえないが、近寄るな、と言っているようだった。
 見れば、左の腕がない。
 二の腕の半ばあたりからすっぱりとなくなっている。
 船長が声を荒らげた。
 男を中心に半円形になった人垣をぬって、爆.爵は前に出た。
「船長」
 船主の声に船長が振り返る。
「これほどの怪我なら暴れることもなかろう。それより船医を呼んできたまえ。ここは私が何とかしよう」
「ですが…」
「いい。私が責任を持つ」
 きっぱりした爆.爵のクイーンズイングリッシュに、船長は頷いて船員たちを仕事に戻れと追いたてた。
 2人きりになってから、爆.爵は数歩の距離で男を見下ろした。
「君は誰だ。見たところひどい怪我をしているようだが」
 問いかけると、男がわずかに身じろいだ。
「…っ、お前には、関係ない…」
 下を向いているのでくぐもってはいるが、存外しっかりした声だった。
 腕一本を失い、血だまりができるほどの出血の割に明瞭に意識を保っていられるとは、よほど強靭な精神を持っているか、肉体が頑強なのか。

「返事できる、か。事情があるようだな。話せ。気に入れば助けてやる」
「…う、るさい…」
「なら海に投げ入れるまで。さ、ど・う・す・る?」
 一歩近づく。
 と、急にドクドクと動悸が早まり、同時に疲労感に襲われた。
「…なんだ、今のは」
 とっさに半歩後ずさる。
 1里ほどの距離を走ったあとのような疲労感に、爆.爵は背筋が冷たくなるのを感じた。
 船員たちが近寄ろうとしなかったのはこのためか。
 どういう仕組みかは分からないが、この男のそばに行けば、それだけでひどく体力を消耗するらしい。
 そして男の胸に浮かび上がった紋様には、見覚えがあった。
「寄るな…」
「…気が変わった。助けてやる」
 襲い来る疲労感をこらえながら、男に近寄る。
 ハンカチを取り出し、すっぱりと切れた男の腕の傷口に巻きつける。
 じんわりと白いハンカチが赤く染まる。
「……君も、死ぬぞ…」
 男がうめいた。
 実際、爆.爵の額には脂汗が浮き始めている。
 それでも、傷を縛る手は止めない。
 きゅ、と固く縛りあげてから息をつく。
「その印は、錬金術のものだろう」
 静かに訊ねると、男が弾かれたように身を起こした。

 警戒した表情を無視して言葉を続ける。
「それにこの疲労感。これも、錬金術の力。そうだろう?」
「…」
「君に、協力しよう。その代り、錬金術について知りたい」
「断る」
「私なら、君を生かせる。安全に匿うと約束しよう。私は錬金術についての知識が欲しい。対等な交換条件ではないか?」
「………」
「君をそのようにした者が、憎くはないのか?」
 爆.爵が問いかけた瞬間、男の表情が動いた。
 すさまじい怒気に息を呑みながら、爆.爵は彼を注視する。
「…………ヴ.ィ.ク.タ.ーだ」
 ややあってから、男が口を開いた。
「ヴ.ィ.ク.タ.ー・パ.ワ.ー.ド。俺の名だ」
 どす黒い憤怒が蒸気となって音になったようだった。
 気圧されながらも、爆.爵は胸が高鳴るのを感じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

スレで萌えました
バタ爺のツンデレ具合がうまく出てない…orz


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