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47-164 のバックアップ(No.2)


桜 

飲みすぎた。
畜生、ダイキの野郎。
無邪気な顔して人のグラスに注ぎまくりやがって。
「あれ?どうしたの?もう降参?」
そう言われて引き下がれるかっての。

花見の後、テッペイの部屋になだれ込んでの飲み会。
流石にアキは花見だけで先に帰り、酔ってんのか酔ってないのか分からないダイキと、明らかに酔っ払ってご機嫌なリョウスケはさっき連れ立って帰っていった。
ふわふわする体をベッドにもたれさせて、妙な具合に回る視界を閉じた。

「ハネイさーん、大丈夫ですか?ハネイさん?」
耳触りのいい聞き慣れた声に目を開けると、目の前にテッペイのどアップがあった。
くっきりとした二重のでけえ目。
吸い込まれそうで慌てて目線を下げると、柔らかそうな唇が目に入る。
いつもはちゃんと自分を押さえ込めるのに、今日は無理だ。

悪い、テッペイ。

重たい手を無理やり持ち上げてテッペイの首にかける。
肩をすくめ、硬くなった体を引き寄せて唇を重ねた。
固く引き結ばれた唇はそれでも甘く、頭の芯が痺れた。

ずっとこうしたかった。
酒の力を借りるなんて我ながら情けない。

薄く目を開けてみると、テッペイの目がこれでもかと見開かれている。
硬直したままの体を自分の下に引き込んだ。
もう一度、と顔を寄せるとテッペイがびくっと体を震わせた。
怯えた様子に一気に酔いが醒める。
「悪い……」
もつれた舌で謝り、緩慢に体を離そうとした時。
「ハネイさんっ」
小さく叫ぶようにテッペイが言った。
俺の服の胸元を握って引き寄せ、そのまま唇を合わせてくる。

技術も何も無い、押し付けるだけのキスがこんなにも気持ち良いなんて。
服を握り締めた手がかすかに震えている。
愛おしさが込み上げた。

桜よりも酒よりも──テッペイに酔った春の夜。

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