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130-131 のバックアップの現在との差分(No.3)


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#title(ナマモノ 某同級生)
[[このさきも ナマモノ>130-131]]

tv初共演後妄想の産物。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ぼく、お酒飲めないから

そう言って眉を下げる彼を口説いて取り付けた、約束の夜。
翌日も仕事ならば都内まで引っ張り出すのは悪いだろうと、
待ち合わせ場所は職場からそう遠くない市街の居酒屋だ。


約束の時間ぎりぎり、小走りで近づいてくるその姿を遠くに見つけて、手をひらひらと振る。
相変わらず彼の頭には皮膚の一部だというソイツが鎮座していたから
目立って仕方がなかったけど、それにはもうつっこまない。
「お待たせ…!」
「よお、寒いし早く入ろう」
そうだねぇと間延びした声が返ってきたものの、その恰好はチェックのシャツに上着も無しとそこそこの薄着だ。
風邪をひかせてはいけないと足早に店内に入り、案内されたこじゃれたカウンター席に並んで座る。


それから互いに好きなものを適当に注文して(当然魚料理も沢山テーブルに並んだ)、
20年以上会っていなかったなんて嘘みたいに色々なことを喋った。
昔の事、最近の事、家族の事、仕事の事…話は尽きなかった。

一通り食べて落ち着いた所で、店のお勧めだという日本酒の熱燗を追加すると
猪口が二つ運ばれてきた。
構わず自分だけ手酌で飲んでいると、それまでウーロン茶を飲んでいた彼が
お猪口を手に取って俺の前に差し出した。
「一口、ちょうだい」
「…酒弱いんでしょ?大丈夫かよ」
「うん、せっかくだから少しだけ」
控えめの量を注いでやると、貸して、と俺の分をお酌してくれる。
「男に注いでもらうより、綺麗な女の人にしてもらいてえんだけどな」
「そんなー、もぉ」
冗談を言って笑いあいながら、猪口を掲げて形だけで乾杯、とすれば彼も同じように手を掲げた。
両手で大事そうに持って、ちびちびと舐めるように飲む姿が子供っぽくて可笑しい。


大分酒も回り、気分良く酔ってきたところで、スルーし続けていたそれが
ふと、目についた。

「なあ、それいつまで被ってんの」

きょと、と大きな目が瞬いてこちらを向く。
「俺の前では、いいんじゃねえの」
―みーぼうのままで。

「…」

ほんの軽い気持ちだった。さっきの冗談の続きのような。
でもコトリ、飲んでいた酒を静かに置いた彼を見て、どきっとする。
違う。お前のこと傷つけたかった訳じゃないんだ。
まあるい柔らかな心を、また俺の言葉が刺してしまったのか。

「うそうそ、ご―」
「ごめんね」
こちらの声を遮るように謝ると、彼は余りにもあっさりとトレードマークを脱いだ。
唖然とする俺を他所に、それを丁寧に鞄に仕舞う。

「今日の食事ね、誘ってくれただけで嬉しかったのに…」
そうしてこちらを見つめ、ふわふわの髪の毛を手で撫でつけながら、困ったように笑った。

「そんな風に思ってくれて、ありがとう」

「……―」



思えばずっと、惹かれていたのかもしれない。

大人しいけど芯が通ったちょっと変わり者の彼が、
気が付けば出世して底抜けに明るいキャラクターとして脚光を浴びていた。
嬉しいとは感じなかった。焦りとも嫉妬とも違う。
ただただ、知りたいと思っていた。
本当の彼はどこにいるのか。俺の中にいた学生時代のあいつは嘘だったのか。

でも彼の純真無垢な瞳は真っ直ぐに俺のことを見てくれて、
それは20年前も今も全く変わってはいなかったのだと分かった途端どうしようもなく満たされていくのだ。

あー、お前のせいでまた柄にもなく目の奥が熱くなる。

「…よし、朝まで飲み明かすか」
「いやいや明日は仕事が、たくくん~」

誤魔化す様に酔っ払いよろしく隣の背中を叩けば、彼の手が縋るように肩に触れてくる。

「また、今度行こうね」

赤ら顔でくしゃりと笑う彼の声が、心地よく鼓膜を震わせた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- なんとなく何故か初共演というヒントだけで箱フグの二人かなと!微笑ましくてよかったです --  &new{2016-02-07 (日) 04:12:27};

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