Top/S-63

振動×剤然(530 -8)

大阪に帰る剤然の為に、振動は新横浜にほど近い輸入ビールを多く揃えている店を
選んだ。
青と白のテーブルクロス、あめ色の垂木には船の操舵輪があしらってあるのを見上げ、
剤然は「いかにも横浜らしい店だ」と微笑んだ。
そんな風に店の趣味を誉めておきながら、奥のテーブル席に収まったとたん
下を向いてクスッと笑いを漏らした彼を振動が見咎める。
「何か?」
「いえ、なんとなく定食屋にでも連れて行かれるような気がしていたもので」
「そんな風に見えますか、私は」
振動は苦笑する。確かに自分は「横浜」という土地柄に似合う人間ではないかも
知れない。
「いえ、振動先生が、ではないんです」
相手はまだくっくっと笑っている。
「……ああ」
振動はこの「失礼」の事の起こりを思い出した。
「私はそんなに似ているんですか、その知人の方に」
「振動先生、ひょっとして関西方面に『聡見』姓のご親戚は……」
「いや、ありません」
「そうですか、聡見君というのは同僚の内科医なんですが他人の空似にしては
あまりにも良く似ている。遠目に間違えてしまった体格も、もちろん顔もですが、
声が本当にそっくりなんですよ」
「ああ、それで」
廊下での驚き方に合点が行く。

 +++

では去ります。


このページを共有:
  • このページをはてなブックマークに追加 このページを含むはてなブックマーク
  • このページをlivedoor クリップに追加 このページを含むlivedoor クリップ
  • このページをYahoo!ブックマークに追加
  • このページを@niftyクリップに追加
  • このページをdel.icio.usに追加
  • このページをGoogleブックマークに追加

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP