Top/S-60

振動×剤然(530 -5)

530です。ものすごい書き込みにくいですけど、これじゃ他の人はもっと書き辛い
ですよね。前回(566)、本当はこれを落としに来たのでした。

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振動は外科の分科会には、テーマが救急と重なるものにしか参加した事がなかった。
特に体深部の臓器に発生する腫瘍など、例え救急で発見したとしても実際の処置は
外科に回してしまうから、彼は消化器腫瘍切除術の実技に関してまったくの門外漢
だった。
それでも高めの声でてきぱきと分かりやすく話す剤然の発表は彼を引き込んだ。
何より、多彩なスライドが物語る症例の多さには圧倒される。江北医大で第一外科と
言えば心臓外科の異名だが、難波大では消化器・呼吸器外科に「第一」の名称が
冠されている。それだけの事はあるというわけだ。
特に腫瘍摘除後の再形成術は素晴らしかった。救命センターでも馴染みの、事故で
断裂した傷とはだいぶ趣が違うものの、軟組織の修復手順は実際参考にもなる。

スライドが終わると灯りが点けられ、発表はまとめに入った。剤然はもう原稿には
目を落とさず、聴衆に自分の言葉が受け入れられたか確かめるように会場を
ゆっくりと見渡しながら話す。
手元の資料にメモを記して顔を上げた振動に、左から移って来た剤然の視線が
ぶつかった。と、壇上の医師はにこりと微笑む。つられて口元を緩めながら、
ひとりひとりを見つめて話すのは、講議する時の彼のスタイルなのだろうかと
振動は考える。
あんな風に目配りをされるなら、彼の授業で居眠りする学生はいるまい。


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