Top/S-6

R.S.3_LxM

ミカエルは部屋で椅子にもたれ、吐息を漏らす。
その心を占めるのは、自分を慕う貴族の娘カタリナではない。
ましてや廊下を隔てた隣の部屋で眠る妹モニカでもない。
自分の心を奪った者。
それは異性ではなく、異種族。
「伯爵・・・。」
幼い頃にその身を預け、様々な知識を与えてくれた者。
偉大なるヴァンパイア、レオニード。

父である先王が、彼を後継者と定めた時に伯爵の下へ預けた。
君主としての知識を得るためである。
青年というよりは少年に近い年頃であった。
冷たく知的なその顔に、やや幼さの感じられる表情。
初めて会う異種の貴族に緊張しながらも、それを顔に出さぬよう努める。

冷たい炎が立ち上る音に顔を上げると、玉座に姿が現れた。
「ようこそ、ミカエル=アウスバッハ殿」
妖艶な笑み。
男性とは思えないほどの色香。
しかし女性からは感じない凄み。
ヴァンパイア伯爵。
畏敬を込めて、人はそう呼ぶ。
大いなる知識を持つものに対する尊敬と憧れ。
そして遥かなる長命を持つ異族に対する畏れ。
美しさと同居する恐ろしさに、彼は息を呑んだ。
しかし次の瞬間、彼は優雅に腰をかがめる。
「お初にお目にかかります。レオニード伯爵」
ホウ、と感心した反応が返った。

一年間、彼はここで過ごすことになる。


このページを共有:
  • このページをはてなブックマークに追加 このページを含むはてなブックマーク
  • このページをlivedoor クリップに追加 このページを含むlivedoor クリップ
  • このページをYahoo!ブックマークに追加
  • このページを@niftyクリップに追加
  • このページをdel.icio.usに追加
  • このページをGoogleブックマークに追加

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP