Top/S-29

R.S.3_LxM 24

「そういえば、あの扉は開かなかったよね。」
ノーラはミューズの家を訪れたときの、迷子捜索の時を思い出して言った。
迷子が見つからないまま殿内を歩き回っていると、開かない扉があったのだ。
「指輪で封印されているようだったな。」
ミカエルが答えるように呟いた。
「・・・魔王殿を封印したのは、聖王だろう。」
詩人がいつものように聖王の詩を奏でた後、
「ランスに住む子孫が、聖王遺物の指輪を持っているそうですよ。」
と言って、また別の曲を奏でた。

聖王家といっても、聖王本人には子供がない。
聖王の姉の子が聖王家として残っている。
邸宅を訪れて魔王殿の話をすると、当主の部屋へ通された。
「あの扉へ行かれたのですか。もう・・・そんな時期なのですね。」
彼は感慨深げに溜息をつくと、指輪をミカエルに渡した。
「この指輪が、奥へ進む為の鍵となっています。どうぞお気をつけて。」
扉の先には、封印された空間が広がっている。
そこにいるのは、アビスの魔物と、そして・・・。
当主に礼を述べて邸宅を出る。
その日はランスで宿をとり、休むことにした。

ミカエルは眠れないまま、窓の外へ出た。
寒い街だ。
白い息を吐きながら、夜空を見上げる。
懐から指輪を取り出して、月明かりでそれを眺める。
正邪を帯びた、妖しささえ感じられる光。
何故か、とても懐かしい気持ちがした。
指を通すと、その気持ちが強まる。
思い出すのは、あの城だった。

魔王殿の扉に指輪をはめ込むと、何かが開く音がした。


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