Top/S-17

R.S.3_LxM 12

体力が落ちていたのだろう。ミカエルはそのまま床に伏せた。
高い熱を出し、起き上がることさえできない。
麓でも似た症状の者がいることを蝙蝠が伝える。
「流行り病か!」
レオニードが忌々しげに言う。
麓では既に、病による死者もでていた。
現在城を出入りするのは、食料や日用品を背負って運ぶ者だけである。
麓での流行を示すかのように、数日ごとに違う者が運んでいた。
「当分の間、人間達の出入りを禁じよ。」
貯蔵に耐える食料を運ばせた後は、城の門を閉ざす。
これ以上、他の病気まで持ち込まれては困る。

ミカエルの病状は、一進一退を繰り返していた。
寝込んだ彼を見ているのは、辛いものがある。
人間でない自分や妖精たちが、病に侵されることはないからだ。
ミカエルの部屋を暖かくし、妖精に付きっきりの看護をさせる。
身体の汗を拭き、水を飲ませ、彼の回復を祈る。

熱が高いのだろう。
寝返りと共に苦しげな息を漏らしたミカエルが、手を寝台から出した。
普段の彼からは想像の出来ぬ姿。
思わず手を握り、もう一方の手も添える。
子供のように軽く握り返され、落ち着いたような息が聞こえた。
その晩は、手を握ったまま眠った。

翌朝、ようやくミカエルの熱が下がった。
身体を起こした彼は、はにかんだ笑みを見せた。
「申し訳ない・・・。」
自分の健康管理の拙さと、もう一つの理由。
彼は、ずっと自分の側にいた者を知っていた。
入れ替わりで看病をする妖精の他に、部屋にいた者。
その記憶に残るのは、氷のように冷たい手。


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