R.S.3_LxM 12
更新日: 2011-05-03 (火) 12:12:25
体力が落ちていたのだろう。ミカエルはそのまま床に伏せた。
高い熱を出し、起き上がることさえできない。
麓でも似た症状の者がいることを蝙蝠が伝える。
「流行り病か!」
レオニードが忌々しげに言う。
麓では既に、病による死者もでていた。
現在城を出入りするのは、食料や日用品を背負って運ぶ者だけである。
麓での流行を示すかのように、数日ごとに違う者が運んでいた。
「当分の間、人間達の出入りを禁じよ。」
貯蔵に耐える食料を運ばせた後は、城の門を閉ざす。
これ以上、他の病気まで持ち込まれては困る。
ミカエルの病状は、一進一退を繰り返していた。
寝込んだ彼を見ているのは、辛いものがある。
人間でない自分や妖精たちが、病に侵されることはないからだ。
ミカエルの部屋を暖かくし、妖精に付きっきりの看護をさせる。
身体の汗を拭き、水を飲ませ、彼の回復を祈る。
熱が高いのだろう。
寝返りと共に苦しげな息を漏らしたミカエルが、手を寝台から出した。
普段の彼からは想像の出来ぬ姿。
思わず手を握り、もう一方の手も添える。
子供のように軽く握り返され、落ち着いたような息が聞こえた。
その晩は、手を握ったまま眠った。
翌朝、ようやくミカエルの熱が下がった。
身体を起こした彼は、はにかんだ笑みを見せた。
「申し訳ない・・・。」
自分の健康管理の拙さと、もう一つの理由。
彼は、ずっと自分の側にいた者を知っていた。
入れ替わりで看病をする妖精の他に、部屋にいた者。
その記憶に残るのは、氷のように冷たい手。
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