Top/S-16

R.S.3_LxM 11

何も身に着けていないその身体を、無防備にあお向けている。
(ここは、どこだ。自分は、何をしている?)
疑問が浮かんでも、それはすぐに霧散する。
投げ出した手足が覚えるのは、不思議な触感。
絹のような、水のような、とろりとした柔らかな処。
もはや寝ているのか、浮かんでいるのか、それとも沈んでいるのかすらわからない。
意識が溶けてゆく。
その空間に。
深く、暗い、闇の中へ。

心地良い。胎内とはこういうものなものかもしれない。
手足を存分に伸ばし、その感覚を楽しむ。
満たされる。そして、堕ちてゆく。

突然、冷たいものが頬を触った。
目を開けるとそこには、伯爵がいる。
急激に戻る意識と感覚。
しかし、それは不快ではなかった・・・何故か。
冷たい指が頬から顎を伝い、首へと辿る。
ミカエルが目を覚ましたのに気づくと、伯爵は顔を覗き込むように見つめる。
血の色をしたその目には、先ほどよりも深い闇が広がっていた。
“闇は魅力を司る”
思わず、その言葉を思い出す。

触れていた手を下げ、伯爵が寝台に腰掛ける。
身体を起こしたミカエルに、レオニードが尋ねた。
「気分はいかがです?」
振り向くようなかたちで自分を見つめるその目に、吸い寄せられる。
「お蔭様で。」
ミカエルは軽く息をつくと目をそらし、窓の外を眺めた。
吹雪いている。
冬の長いこの地が、最も寒い季節を迎えようとしていた。


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