自覚
更新日: 2011-05-03 (火) 13:22:12
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| 日曜バイク、笛×太鼓 その3モナ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 本編だと笛氏はそれどこじゃないけどな
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| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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もしかして。
好きなのかな。比゛キさんのことが。
そうなのかもしれない。だってあの笑顔。
僕には絶対あんな笑い方してくれない。
好きなんだ。比゛キさんのことが――霞さんは。
現場が近くだったから。そう言って久方ぶりに顔を見せた霞さんは、相変わらずきれいだった。
これで比゛キさんがいなければ良かったのに・・・・・・まあ仕事帰りに霞さんが一人なわけないんだけど。
何故か仕事の先輩である比゛キさんのことが頭から離れなくなってしまって。
困った僕は発散させれば落ち着くかと思って、彼に“処理”を頼んだ。
が、結果としてよけい意味不明の苛立ちが募るだけだった。
あんな事をさせておいて、もう彼に合わせる顔がないと思っていたのだけど。
「もうマカ蒙は退治し終わったのか」
「はい。今回はまだ成長しきってなくて、割と早く片付きました」
案外普通に会話していたりして。
「あ、でもここから市街地に出るまではかなりかかるんで、今日はもうこのままキャンプして行こうと思っているんですが」
「うん、私たちもそのつもりだった。時間も遅いしね。じゃ、サクサクキャンプ張っちゃいますか」
「おう!」
霞さんの言葉に比゛キさんはいつものしぐさをすると、ツラヌイの方へ歩いていった。
あのしぐさってなんか微笑ましいよね。
なんだか顔がにやけそうになってしまう。
「じゃあ水汲んできます」
比゛キさん達のキャンプも完成したし、晃が夕食の準備をしているうちに行ってきちゃおう。
「わざわざ汲みに行くの?」
霞さんが不思議そうな顔をする。確かに普段は持参するんだけど。
「はい。この辺りにきれいな湧き水が出るところがあるらしいんですよ」
「あ、オレも行くよ。ちょっとジャケット汚しちゃったから洗いたい」
比゛キさんがテントからひょこっと顔を出した。
――それって二人っきりになっちゃうんですけど。
何をするかわかったもんじゃないですよ。僕が。最近コントロールが効かないみたいだから。
もう、わかってないな。
「泥でもついたんですか」
ついでに洗ってきますよ――思いとどまらせようとするも、比゛キさんはもう先に立って歩きだしていた。
「いや、血」
「え」
「変身解いたら腕の傷、血が止まって無くて。ちょっと落ちにくそうだから自分で行くわ。あ、代わりにオレが水汲んでこようか」
「そんな、怪我人に重たいもの持たせるわけにはいきませんよ。僕も行きます」
これでは仕方が無い。僕はタンクを取って小走りに彼の後を追った。
10数分後。
木々の間に雑草の生い茂る鬱蒼とした景色はいくら行っても代わりばえがしない。
「あと少しなんですけど」
「結構遠いね」
いたって普通の会話をしているものの、僕の頭の中はちょっと困ったことになっていた。
あの日の場面が頭にちらつき、今にも顔が赤らみそうなのだ。
あの時の比゛キさんの表情や声や肌の質感なんかが生々しく蘇ってきて・・・・・・
比゛キさんは一見したところまるで何も無かったかのように落ち着いている。
このままではだめだ。なにか別のことを考えないと。
「そういえば」
「なに」
「怪我ですけど、鬼の時に塞ぎきれなかったんじゃ、かなり深いですよね。大丈夫ですか」
「あー別に大したことないって。ホラ、痛っ!い、いや、大丈夫!」
またやってる。
ちっとも大丈夫そうには見えなかった。かなり広い範囲に巻かれた包帯に、かすかに血がにじんでいる。
いまさらだけど、やっぱり僕が洗ってくるべきだった。
お気楽そうに見えても、この人は実はすごく自分に厳しい人だ。
ストイックすぎる。恋人がいるなんて話も聞いたことがないし。
あれ、ひょっとしているのかな。
「比゛キさん彼女います?」
「え~?最近ご無沙汰かな~ってなんだよ急に」
「いえ、ふと気になったもので」
いないんだ。よかった。
ふとさっきの光景を思い出す。
楽しそうに会話する比゛キさんと霞さん。
二人を見ていてイライラした。
これは間違いなく嫉妬だよね。
今まではそんなこと無かったんだけど。でも。
突然気がついてしまった。
霞さんが比゛キさんを好きだってことに。
比゛キさんは霞さんのこと、どう思っているんだろうか。
あんな素敵な女性がそばにいて、惹かれないなんてことあるかな。
胸が痛む。
「ここか。すごいな。本当に天然水って感じ」
岩の間から細い筋となって水が流れている。
その下に自然にできた池は、透き通って底の小石がはっきりと見えた。
「ちょっと水汚しちゃうのもったいないな」
言いながら比゛キさんは脇に抱えていたジャケットの袖を水に浸けた。
いやいや、そういうわけにもいかないよね。
彼の横にしゃがみこんで、ジャケットを奪い取る。
「僕が洗います。腕怪我してるんですから、大人しくしていてください」
「えー?でもそれ、俺が来た意味無くないか?」
「だから僕が洗ってくるって言ったじゃないですか。そんなひどい傷だとは思いませんでしたよ」
「・・・・・・ごめん。えっと、じゃあオレ水入れるよ。片手でも水落ちるとこにタンク置けば入るし」
「・・・お願いします」
ばしゃばしゃばしゃ。
しばらくは水音のみが響いた。
「よし。このくらいで大丈夫だと思います」
「うん、水も溜まった。悪いな、なんか」
「いえいえ。じゃ、行きましょうか」
ジャケットを絞って立ち上がると、比゛キさんが傍によって来た。
「オレ持つよ。乾くかな・・・・・・いっ」
「あ」
手を出そうとして傷が痛んだらしい。体勢が崩れた。
足場が悪くて、比゛キさんはそのまま池の中に突っ込みそうになる。
落ちる!
「あっぶねー。サンキュッ」
だ、抱きとめてしまった・・・・・・。絵としてどうなんだろう、コレ。
でも腕に初めて感じた比゛キさんは温かかい。
そういえばあの時は抱きしめることすらしていなかった。ただすることしか考えてなくて。
あの行為よりも今の方が断然心地よい。
離せない。
言い訳できなくなる一瞬前に比゛キさんは僕から離れた。
「ぼーっとするなって。なんか疲れてるだろお前」
「・・・・・・そうかもしれません」
「いや、ぼーっとしてるのはオレの方か?こんなとこでコケるなって話だよね」
僕はなんとなくその場から動けなくって、ぼんやりと比゛キさんの横顔を見つめていた。
ずっとわからないふりをしていたけど。
自分を騙そうとしていたけど。
――怖かったから。別の自分になってしまうことが。知らない自分が。
でも、これ以上もう無理みたいだ。
僕は――
好きなのかな。比゛キさんのことが。
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| | □ STOP. | |
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