Top/S-105

高校白書

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 | __________  |     谷部っち高校白書続きみたいだモナ
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 | | |> PLAY.       | |     ――――――v――――――――――
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 前スレ落ちたのでたてました!
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「おーうおう。深刻な顔してるで、男前がぁ。似合わんのお」
つまらなそうにボールを蹴っていると後ろからひやかされた。
同期の1年が嬉しそうに近付いてきた。
「いっぺん死んでみるか?」
ギロリと睨み返すと「さて…と」と目をそらし、反対岸にダッシュしていった。
「あ~ァ。つ・ま・ら・ん・の・ぉ」
俺はリズムをつけてボールをゲシゲシと蹴った。
あの一件以来、完全にテンションが落ちまくっていた。結局丘村先輩に言及することもなく
日々は過ぎていった。もう目が会う事も滅多になく、ましてや話すこともなくなった。
俺の前で丘村先輩の話題はタブーになっていたし、1年の間でも丘村先輩の話はのぼらなくなっていた。
今までなまじ信頼を勝ちとっていただけあって、一回そこに影ができると皆敏感に反応するものである。
丘村先輩もそのへんに感ずいているのか俺達の前でめったに笑わなくなっていたし、淡々と練習のメニューを伝えるようになっていた。
俺は時々無性にやるせなくなって、犯人は3年なんやで、とやはり伝えようとも思うのだが、
今さら蒸し返すのもアレやしな、とか、俺に黙って話を進めた丘村先輩が悪いのじゃ、ざまあみさらせ、という思いが渦になってどうともできずにいた。
要するにガキだったのである。

「チビ!むかつくんじゃあ!!」
影でミクロくんと呼ばれている同期が吐き捨てるように言った。
練習帰りのいつものファミレスである。
「あのチビ、いてもうたるからなぁ…。絶対に」
「なにをケンケン怒っとんねや。なんかあったんか?コイツ」
聞くと、隣のヤツが楽しくてたまらないといったふうに教えてくれた。
ある日の放課後、練習が始まる前に景気付けにミクロくんは仲間達と部室で煙草を召し上がっていたらしい。
そこへ丘村先輩がやってきた。他の部員達は「やばい!」とすぐ煙草を揉み消したのであるが、反射神経の鈍いミクロくんは隠し損ねた。丘村先輩は非喫煙者である。当然のことながら注意する。
その注意の仕方がいけなかった。
「あんま吸い過ぎると背ぇが止まってしまうで」
他のメンツからクスクスと忍び笑いが漏れた。ミクロくんの顔は怒りで真っ赤に染まった。
ミクロくんのあだ名の由来は背の低さからである。丘村先輩より1cm高いらしい。本人は3cm高いといっているがどうみても1cm強といったところであろう。
自分の背にコンプレックスを強く持つミクロくんは、自分より背が低い丘村先輩を何故か蔑むように率先して“チビチビ”と呼んでいる。
そのチビから身長のことを言われた彼は怒り心頭に達していた。
そして俺の方を向いて「どや!どやねん!」と言ってきた。
「どやって言われてものお。あんまり怒り過ぎるともっと背ぇ縮むで」と言いたいところだが黙っておいた。
スパイクにアホと丘村先輩に書かれたらしいと噂になっている俺に全員の視線が注がれた。
はっきりいって面倒臭かった。帰るで、俺は、と言おうとした。
しかし口をついて出た言葉は「あのチビは一回ゆわさんといかんのぉ」だった。
ミクロくんの目がらんらんと輝いた。
何を言うてんねや、俺は。知らないふりをしていても俺の胸の内ではどうも丘村先輩に対するイライラが相当たまっていたらしい。だったら直接言えばいいのだが、ここまでくるとなんとなく顔を合わせにくく、そしてどこかでヤケになっていた。
そしてその日を境にサッカー部員1年は鬼のシゴキで培われた団結力をもって、丘村先輩無視作戦を決行させたのだった。
俺は知らんぷりを決め込んだ。

グラウンドが夕焼けに染まっていた。部活をさぼって教室で寝ていた俺は帰ろうと外にでた。
練習はもう終わったのだろう、誰もいないグラウンドに小さな人影がポツンとあった。
丘村先輩だった。
何をしてんねや。
俺は目を細めて遠くから伺った。丘村先輩はひとりで泥で汚れたボールをタオルで磨いていた。
備品の管理は1年の仕事である。それをブッチしたツケは1年担当の丘村先輩にまわってくる。
─丘村先輩無視作戦─。俺は1年の団結力の深さを知った。アホは一回団結すると強い。
小さな背中を丸めて一生懸命に磨いている姿をみているとなんだか鼻の奥がツンとした。
不器用な人間もいたものである。あの量を全部1人でやるつもりだろうか。
勝手にさらせ。俺は踵を返した。
視線の先にサッカーボールが落ちていた。お見事!というほど泥にまみれていた。
考える前に丘村先輩のほうへ蹴っていた。トントン…と先輩の近くで止まった。
先輩がこっちを向く。そして笑う。「手伝ってえなぁ」と言う。「何してはるんですか」と駆け寄る。
シュミレーション通りにはいかなかった。
先輩はボールに気づくと無言でカゴにいれた。そしてこっちを少しみて、また作業に戻った。
「何してはるんですか」という言葉は口の中で消えた。

帰りがけに待ち合わせた彼女と落ち合った。
「また顔怖くなってるで」
そう言われたが「うるせい」で片付けた。
イライラで爆発しそうだった。ややこしくて何も上手くいかない。
こういう時は本能に任せるに限るのである。俺は女の手をむんずと掴むとズンズンとホテル街に向かった。
「なんや、なんやのん」
力任せにひっぱられていた彼女が目的に気づいたのか暴れ出した。
「静かにせい!」
「あっていきなりホテル行くんか!」
「男が凹んでるんや、黙って抱かれんかい」
高校生のレディーによく言ったものである。
案の定、マニキュアで完全武装した長い爪の手が俺の右頬にヒットした。
バッチーン!いい音が響いた。
「サイテーーー!最低男!」
彼女はバックで俺の頭をはたいて、去っていった。道行く人がニヤニヤ笑いながら通り過ぎていった。
「見せ物ちゃうぞコラ!……あいたーー」
ヒリヒリする頬を押さえてしゃがみ込んだ。
ほんまに最低男やのぉ…。口にだして呟いてみた。

サッカー部1年の団結には驚異の持続力も兼ね備えられていた。
作戦は依然施行されていたのである。すぐ飽きるだろうとタカを括っていたがミクロくん指揮のもと
団結は強まっていた。アホは一回団結すると長いのである。
多分俺もそのアホの中に勘定されとるんやろうなぁ…と思うと少し肩がおちた。
寂しそうな丘村先輩の横顔を眺めていたら目があった。しかしすぐにフラっと逸れてしまった。
ちゃう!俺はちゃうねん!ってゆうか違うわけではないんやけど…ああ。ややこしい、こういうのは苦手や。
完全にドツボにどっぷりハマった俺は、にっちもさっちもいかずイライラだけを凄い勢いで溜め込んでいた。
そんななか「スパイクがーーー!」とどっかで聞いたようなセリフが聞こえてきた。
3年の先輩がギャンギャン喚いていた。
「俺のスパイクがないやんけ!!ロッカー開けたら、どこにも無くなっとるが!!」
またまた事件である。
「ロッカーに鍵穴ついとんのだから鍵かけんかい!」自分を棚にあげて呟いてみた。
そもそもサッカー部にはセキュリティーという概念は存在していなかった。
またまたややこしいことになるで。俺は人知れず溜息をついた。
視線を感じた。ミクロくんが意味ありげに目配せをしてきて、ひとりニヤニヤしていた。

スパイクは見つからないまま3日が過ぎた。
物凄く足が重い。今日もサボったろうかな…と思いながら部室に向かった。
ちょうどドアに手をかけようとすると中からミクロくんが出て来た。
「おう、遅いで谷部。もうみんな集まっとるで」
ミクロくんは上機嫌に言うと足取り軽く走っていった。
いつも一番遅いヤツが何いってんじゃいとブツブツいいながらロッカーのほうに近付くと
ポツンと丘村先輩が立っていた。
「ぅうわ!」
驚いた俺は思わず声をあげた。
「なにいなー…」
言われた丘村先輩も驚いたようだった。
「誰もいてないと思ったんですよ。すいません」
久しぶりに会話をした俺は何故か耳に血が集まっていくのを感じた。
「そうかー」
先輩は少し微笑んで部室を出ようとした。
「アイツとなんか話ししてたんスか?」
タバコの件で気になっていた俺は思わず聞いてみた。
しかし先輩の返事は「なんもないで」の一言だった。
それっきり会話は続かなかった。先輩はもとの寂しそうな顔に戻った。
「あのォ…」俺は意を決して口を開いた。しかし言葉が続かない。
先輩は少し待って出て行こうとした。
慌ててでた言葉は「久しぶりに笑ろてる顔みましたわ」だった。
何をとんちんかんなこと言うてんねん!!俺は心の中で自分にツッコんだ。
先輩は驚いた顔をしたが「嬉しかったら笑うねん」とポソっと言い残して去っていった。

ミクロくんは練習中ニヤニヤしっぱなしだった。
「こっちに顔むけんな。気持ち悪いんじゃ」
皆に言われてもニヤニヤしている。
走り込みがひと通り終わってパス練習に切り替わった頃だった。
俺はさっきの丘村先輩の笑顔が頭のなかでグルグルと回ったままひとり俯いていた。
「おい!おい!谷部!」
何度も呼ばれてやっと気がついた。ミクロくんを囲んで1年が集まっていた。
「アホが集まって何しとんねん」
面倒臭そうに俺は渋々近付いていった。しかしミクロくんのニヤニヤは崩れないのである。
嫌な予感がした。
「あのチビを嵌めたるねん」
「なんの話じゃ」
ミクロくんは唇をひと嘗めすると小さな声でボソボソと話し出した。
「スパイク…盗んだんは俺やねん。3年のな」
そう言った途端、そこにいた全員が「短い付き合いだったな、さよおなら」
とミクロくんの肩を叩いた。
「ちゃうねん!話を最後まで聞け!!」慌てて早口で喋り出した。
「盗んだのは俺やけど、そのスパイクが見つかるのはチビのロッカーからやねん」
俺は心臓の奥が縮むのがわかった。
「お前日本語おかしいぞ」他のメンツが不思議そうに疑問を口にした。
「さっきな、スパイクをな、チビに預かってもらってん。俺が盗みました、すいません言うてな。
反省してます、けど怖くて直接かえせないんで、先輩から一言添えてくれませんか言うたってん」
「おう。そいで」
「そいで、俺が3年に告げ口すれば終いじゃ。チビのロッカーでスパイク見つけましたってな。今から言ってくるで」
皆からため息が漏れた。
「どこのアホがそんな嘘信じるんじゃい。チビだって気づくやろ」
口々にそういって皆はミクロくんを馬鹿にした目でみた。
「ううん。信じとったで。スパイク受取ってんもん」
ミクロくんはケロっといった。

俺は握った拳がブルブルと震え出して自分でもびっくりしていた。
丘村先輩のさっきの笑顔とあの日みたグラウンドの小さな背中がグルグルと頭の中を回っていた。
先輩は気づいている。気づいてまた自分ひとりで被ろうとしているのだ。
皆は「ほんまにアホなんかな」と他人事のように笑いあっていた。
ミクロくんが得意気に「谷部、きっちり見とけよ、俺の仕事ォ!」と肩に手を置いてきた。
ブルっと震えた。
その手を掴むと俺は顔をあげた。
「お前誰や」
とっさに声がでた。言われたミクロくんは“はあ?!”とした顔で笑いかけてきた。
「何言うてんねんな、谷部。今からあのチビゆわしてくんで」
気づいた時には拳がカっと熱くなっていた。
ミクロくんが鼻を抑えて転がっていた。グラウンドの土が鼻血で赤く染まっていた。
「なんやねんなぁ…!!」ミクロくんの涙声が聞こえた。
「誰がチビじゃい!お前誰やねん!!」
めちゃくちゃにヤツの腹を蹴ってやった。人を蹴ったのは初めてである。
身体が言う事をきかなかった。回りのメンツが顔色を変えて俺の身体を抑えてきた。
「なにしてんねん!なにしてんねん!!」
腕も足もとられても俺は暴れ続けた。
丘村先輩の寂しそうな横顔が頭から離れなかった。
身体の自由を奪われても俺はやけくそに腕を回し続けた。
「谷部、狂ったんか!」同期が金切り声をあげて俺の腹を殴った。それでも暴れ続けた。
ボロボロになりたかった。
顧問やら担任やらがこっちに走ってくるのが遠くから見えた。
そして人垣の向こうから丘村先輩もみえた。
もみくちゃにされながら俺は先輩の顔を見続けた。先輩は泣いてるようにも笑っているようにも見えた。
泣いてくれたらいいのに。俺はボーっと考えていた。
もう一度腹に一発はいった。俺は低く呻いて身体を折り曲げた。
先輩の顔がくしゃくしゃになってぼやけた。
それでも丘村先輩から目をそらさなかった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 終わりです。無駄に長くてスマソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) エロ要素一切ナシでスマソ
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 完全フィクションです。
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