柏餅×桜餅
更新日: 2016-05-06 (金) 15:11:01
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )柏餅×桜餅。和菓子カプですドゾー。
今日も店が開いて、一日が始まる。
『おはよー、柏餅さん』
三つ重なった声が聞こえる、きなことあんこと青海苔のおはぎ三兄弟だ。
「おはようおはぎさんいつも元気だね。これから秋は大変だねー」
「たいへんだよー」「でもぼくが一番だけどね」「うそだー」
おはぎ三兄弟は誰が一番人気になるかで盛り上がっている。
いつもケースの中はにぎやかだ。
「相変わらずだな柏餅は」
目をひく、桃色と緑の色彩。
彼はほとんど口をきかないが、僕には話しかけてくる。
その度にいつも僕は彼の特別なのだろうか、と少し期待してしまう。
「何が、桜餅さん」
「いや、仲が良くっていいなと思ったんだ」
「桜餅さんだって、みんなと話せばいいんだよ。みんなやさしいよ?」
彼はよくわからないところがある。
仲良くなりたいのなら話せばいいのに、みんなを寄りつかせない。
「いや、俺はいい。きな粉が付いたら困るからな」
「別にそれくらい」
「……それはそうなんだけどな」
最近、桜餅さんは元気がない。何か思い詰めているみたいだ。
「なぁ、柏餅。お前の葉は食べられないんだよな?」
「うん。食べる人みたことないね。何で?」
「いや。いっそそうならいいだろうと思っただけだ」
「でも、桜餅さんの葉は食べられるんだよ?すごいじゃない」
彼は少し笑った。自嘲するように。
「いらっしゃいませー」
店員の明るい声が響く。おじいちゃんが子どもを連れて来たようだ。
「……子どもは嫌いだ」
桜餅さんは吐き捨てるように言った。いつもそうだ。
子どもが来ると機嫌を悪くする。彼は子どもに愛されるのに。
僕ら和菓子にとって、子どもに好かれるというのは名誉なのに。
「どうして?僕なんか子どもに人気ないから、桜餅さんがうらやましいよ」
そう言うと、彼は悲しそうな顔で僕をみた。
励ますつもりだったのに、どうしてそんな顔をするんだろう。
「あいつらは、俺の葉をむりやりはがすんだ」
涙声で彼はつぶやいた。
「なにも礼儀を知っちゃあいない。俺のことを知ろうともしない。
俺は一番おいしい状態で食べてもらいたいのに!
無理やり葉をはがして、中身の餡が見えてもお構いなしで……」
最後は話すのもつらそうだった。
僕にはわかることのない気持ちだ。僕は愛されればただ嬉しいばかりだ。
意に添わぬ形で愛されたとしても彼は不服なのだろう。
出来るなら僕の葉で彼を包みたい。痛みがなくなるなら。
でも、完璧を求める彼のことだ。僕の匂いが移るのを嫌がるだろう。
多分、僕に出来ることは何もない。
何も出来ないこの葉を引きちぎれば、僕にも彼の気持ちがわかるだろうか。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )非生物なのに生ものとはこれいかに。
- プライドの高い桜餅と、包容力の柏餅に新しい扉が開きました! -- 2013-03-28 (木) 14:36:31
- これから桜餅と柏餅見るたびにこの話を思いだすかもですw 葉っぱ剥がして食すのは邪道派 -- 関西風桜餅が好き? 2016-05-06 (金) 15:11:01
このページのURL: