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少年とヒビキさん

496 ゴミ箱男面白かったです!GJ!

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                    |  少年と比゛キさん
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ヘコんだ少年が激しくうざいですよ
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ウザー
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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劇中から引用した部分は一部変えてあります。

僕にはヒーローがいる。
その人は強くてかっこよくてやさしくて可愛らしくて
たくさんの人に信頼され、たくさんの人の助けになっている。
人の輪の中心で笑っているのが似合う人。
そして厳しい目でひとり遠くを見つめているのが似合う人。

――――――――――
「おーい少年」
彼は僕をそう呼ぶ。冗談だと思っていたら、いつのまにかその呼び名で定着してしまった。
他の誰も呼ばないあだ名とも言えないその呼び名は、時に、もしかして自分は特別な存在
なのだろうかという優越感と、名前を呼ぶにも値しないちっぽけな存在なのだろうか
という劣等感を僕にもたらす。
最近はそんなことを考えることもなかったのに、今日は間違いなく後者だという確信を
もって更に気が重くなってしまった。

「テント立てたし、次はカマド用の石と薪集めにいこっか」
「はい」
「今日の夕食はカレーです!っていってもレトルトだけど。
 でも飯ごうで炊くごはんはおいしいから楽しみにしててね」
にっこり笑いかけられたのに軽く笑ってみせる。
数日前、仕事で山に入るんだよという話を聞いたあと「少年も一緒にどう?」と誘われて、
毎日毎日指折り数えてこの日を待っていた。
本格的なキャンプ、しかも二人きりで。教えてもらいたいことも話したいことも山ほど
あった。すごくすごく楽しみにしていた。
それなのに。
やさしくしてくれるのは普段と変わらないけれど、どことなくいつもと違う感じがする
のは多分気のせいじゃない。
街でいわれのない暴力を受けて口元にできた痣は、愛想笑いをするたびに引き攣れて
痛かったが、彼はまったくその話題に触れてこなかった。

そんなことをグダグダと考えていたせいか、慣れない山道を甘く見ていたということ
なのか、僕は斜面から滑り落ち危うく川に落下しそうになった。
「大丈夫か!?」
「すいません!」
「いま行くから。がんばれよ」
先に登ってロープを投げてもらったのにこのザマだ。自分が嫌になる。
僕を助けに降りてきてくれた彼はすりむいた膝を心配してくれた。そこから登るのを
手伝ってもらって、本来の「仕事」が終わる頃にはすっかり日が翳ってきていた。
その上テントに戻る途中に雨まで降ってくるし、もう散々だった。
情けない。足手まといにもほどがある。
食事の支度もできないのでテントにこもって雨が止むのを待つことになった。彼は何も
気にしていないふうな穏やかな顔で「仕事」に関わる作業を続けていた。カッターナイフ
が器用に動いて、ただの枝だったものが滑らかに整えられていく。
「あの、すみませんでした。僕のせいでこんな…」
「なんで?少年が雨降らせたわけじゃないでしょ」
謝ろうとするのを淡々と流して、その後も慰めと気づかせない言葉で慰められた。
静かな声が身体に染みていくようだった。

思えば出会った時から彼は特別な空気をまとっていた。
最初は変わった人だと思い、その次に会ったときには気さくな性格にちょっとホッとした。
安心したのも束の間、自分の想像を遥かに超えたとんでもないモノと闘う姿を目の当たり
にした。
死ぬかと思った、殺されるかと思った、
偶然その人に出会わなければ一生知ることのなかった世界。
一分の慈悲もなく非情なまでに強い力でそのモノの命を絶った数時間後には、初対面の
人間だということを忘れさせる人懐こさで僕の家族に受け入れられ、和やかにごはんを
食べていた。
遠いような近いような、それでもやっぱり遠いような、計り知れないその人を、
会うたびに好きになっていった。夢中になった。
彼を思うだけで心が強くなったような気がしたし、一緒にいると自分のことが少し好きに
なれた。

「少年さあ、」
「はい」
「その顔のあざ…なんで自分ばっかり、って感じ?」
作業する手を休めず手元から目を離さないまま、内心を見透かされたような質問をされて
カッと顔が熱くなった。本当はこの人にこんな顔を見せたくはなかった。でも理由をつけ
てキャンセルする方が卑怯に思えたし、彼に対してはできるだけ自分に恥じない自分でい
たかったのに。
「生きてりゃさ、何度も転んで、そのたびに傷作ったり痣作ったりすると思うんだよね。
 でもそんなとき心だけは強く鍛えておかないと、自分に負けちゃうじゃないか」
顔を上げたら目が合った。
「だから少年には、自分が信じたことを信じて生きていってほしいなあと、思うんだよ」

手についた木くずをはらい、太もものあたりでごしごし拭ってから、
「触ってもいい?」
と聞いてきた。彼の視線が口元の痣に注がれているのに気づいて「はい」と答えた。
温かい指がおそるおそる痣の上を滑る。
「痛い?」
「少し」
遠慮した指は、力を入れないように気を遣っているせいか少し震えている。
今度はぺたぺたと指の腹で痛みを確かめるように撫でてくる。まるで自分の傷にそうするみたいに。
「ひどいこと、するな」
「こんなのすぐ治りますから」
「…うん」
「大丈夫です。色とか痛そうに見えるけど、ホントに全然たいした怪我じゃないし」
なぜだか僕は彼が泣いてしまうんじゃないかと思って慌ててその手に自分の手を重ねた。
いつかはこの手を包み込めるくらいに成長できるのだろうか。そんなことを思いながら
ぎゅっと握りしめた。
「ほら、喋るのだって支障ないし、笑うのも、食べるのも、歯をみがくのも、」
たまらなくなって目の前の唇に唇を押し当てた。
「キスだって、平気なんです」
「そっか」と言って彼は静かに笑った。

――――――――――
僕にはヒーローがいる。
今はただ背中を追いかけているだけの人。それでもいつか並んで歩きたい人。
僕が信じたいものはすべてあなたの中にある。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヘタレ攻が憧れのお兄さんをゲッツする
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) そんな感じ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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