三河屋×青年パタ
更新日: 2011-05-01 (日) 17:47:00
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| 殺伐とした空気に常春の息吹を
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 随分前の三河屋×青年パタの続きです
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ヒキガエルが潰されている。万力で挟まれて、断末魔を上げている。膨れているはずの
腹は平らに拉げ、大きな口からは今にも胃袋が飛び出しそうだ。
目の前の光景は、脳内で行われている無数の情報交換に伴うイマジネーションの一つに
すぎなかったが、どういうわけか今朝に限って言えば、イメージはやけにくっきりと朧な
彼の意識を支配していた。
「…おはようございます、陛下」
「起きたか、三河屋号」
しっかりと瞼を開いた彼、タマネギ部隊の新人・三河屋号は、焦点が結べない程近くに
ある能面のような表情をした青年の顔をじっと眺めた。緩く巻かれた銀に近い色の金髪が、
枕に頭を沈めている三河屋号の頬にかかっている。
若き国王パタリロ・ド・マリネール八世。
王宮直属の精鋭部隊に所属するタマネギの一人・三河屋号の敬愛する主君であり、これ
から先も…おそらく一生彼に低血圧の心配は無用だろうという予感を感じさせてくれる
人物でもある。通常のタマネギなら毎日上がりっぱなしになる血圧に胃を傷めているところ
だが、彼の場合は「高血圧は朝の目覚めが快適になっていい」と至って前向きだった。
「僕は、約束は守る男だ」
「陛下の有言実行ぶりは、存じています」
脈絡のない主君の言葉に咄嗟に答え、三河屋号は昨日一方的に突きつけられた要求を頭の
中で反芻させた。毎朝行われる発声練習という名のヒキガエルの断末魔。それによって体調
を崩すタマネギ達。同僚の健康状態を懸念した彼は、主君に発声練習を控えてもらうよう
進言した。そこまでは、いい。しかし彼の主君はこれを承諾する代わりに、こうも告げたのだ。
「これから先、毎朝お前の耳元で発声練習をする」と。
ベッドの傍で佇んでいる身なりのいい青年は、笑いも怒りもしていない。なまじ顔の造形
が整っている分、こういった表情の時は相手が何を考えているのか察する事が出来ず、その
度に三河屋号はポーカーフェイスを保ったまま困惑した。それほど年齢が離れているわけでは
ないが、この主君が年相応な表情を浮かべているところを見た事がない。彼がタマネギとなっ
た時には既に彼の主君は完璧な頭脳を持つ国王として名を馳せていた。
大の男が寝るには狭すぎるベッドから上半身を起こし、三河屋号はサイドテーブルにある
デジタル時計に目をやった。数字は午前五時を表示している。今日は遅番である彼にしてみ
れば、あと数時間は楽に眠れる計算だった。しかし今となっては、その望みが果たされる
可能性は少ないと言えた。おまけに何度室内を確認しても、ここは自分の部屋で、王宮の近く
にあるタマネギ達の宿舎(プレハブともいう)の一つだという結論が導き出される。ちなみに
独身である彼が贅沢にも一人部屋を割り当てられている理由は、単に王宮内のタマネギ部屋
の容量が限界をきたしているからに過ぎなかった。
「お一人でここへ?」
「僕の他に誰かいるように見えるか?」
「見えません」
三河屋号は主君の視線を感じながらも、シーツの海から抜け出し、半畳程の小さなクロー
ゼットの前に立った。
「…お前はいつも裸で寝ているのか?」
低い声に振り向くと、彼の主君がしかめ面で視線を逸らしていた。そこで初めて彼は、
自分が何も身につけていないことに気付いた。習慣に流されて何気なく着替えに手を伸ばした
が、真っ裸で国王の目の前を横切った結果になる。お世辞にも上品とは言えず、かつ呆れる程
無礼だ。
「申し訳ありません。昨日の夜、シャワーを浴びてそのまま寝てしまったようです」
しかし彼は、自らの主君がプライベートな時間に見せる意外な程の寛容さを知っている。
案の定、短い謝罪にも国王は特に機嫌を損ねた様子は見せなかった。
小銭の振られる音がスピーカーを通して宮殿の壁に反響している。場所と時間は変わり、
彼の主君は巨大なモニターに映し出されているコインケースに夢中になっていた。
「よし分かった。マライヒが来たら僕がそれとなく言っておこう」
【…ああ】
画面の向こう側にいるコインケースの持ち主は、少し疲れた素振りで乱れた黒い長髪を
かき上げた。朝日は昇っていたが、時間はまだ早い。銜えられているシガーは、この数分間
だけでも十本、灰になっている。モニターに映る顔が白く曇って見えるのは、そのせいだろう。
いつもの気迫も、凍るような美貌さえもすっかりなりを潜めていた。
「気にするな。僕とお前の仲じゃないか」
【頼んだぞ、親友】
「任せておけ、親友」
空々しい会話が、穏やかに交わされている。一部は本心なのだろうが、MI6の少佐とマリネラ
国王のやりとりは、互いにせっぱ詰まっていない限りはこのケースに終始する場合が多かった。
傍で聞いていた所によると、少佐は生涯の伴侶に浮気がバレてしまい、今朝ベッドで彼が
眼を覚ますと旅行用の荷物がなくなっていたとの事。癇癪を起こされ部屋中の物をナイフで
切り裂かれなかっただけマシなのかもしれないが、行き先も分からず、彼は自慢の息子にまで
冷たい目で見られるはめになった。自ら朝早くに連絡をつけたのは、伴侶であるマライヒが来ると
したらマリネラだろうという考えかららしい。鳴らされ続けているコインの音は、無事に伴侶を
説き伏せてくれた際の謝礼なのだろう。三河屋号の主君は、世界有数の富豪であるにも関わ
らず、盲目的なまでに小銭を愛する傾向にあった。
三河屋号は、椅子に浅く腰を掛け涎を垂らさんばかりにモニターを見つめている国王を見た。
彼はタマネギ部隊に入隊する以前に、まだ少年だったパタリロ国王に会った事がある。その時の
出来事が現在彼をこの場所に置いているのだが、少佐はそれよりも更に前にパタリロ国王と出会い、
友好とは言い難いがそれなりに友情を育んできているらしかった。二人は、所謂気心の知れた仲だ。
「しかし、お前の下半身も懲りないな」
【世の中に美少年がいるから悪い】
「分かった。マライヒにはそう伝えておこう」
【…私が悪かった、反省している。と伝えてくれ】
三河屋号の前で、彼の主君と情報部の少佐は対称的な表情で会話を続けている。
「だが美少年の罪深さについては同意だ。この僕が良い例だからな。美しい僕を見て、毎日
どれだけの人間が悶々とした日々を過ごしているのか。それを思うと心が痛む」
【安心しろ。私に関して言えば、天地が逆さになろうと、お前に食指が動くことはない】
「そう照れるな」
【照れてなどいない。お前とどうにかなるくらいなら、ヒューイットと寝た方が………、いや…それも無理だ】
「やっぱり僕を愛してるんじゃないか」
【何故そういう結論になるんだ。私は誓ってマライヒだけだ】
まるで漫才だ。三河屋号はやはり顔には出さず、そう思った。奇妙な居心地の悪さに、居住
まいを正す。さりげなく目線を外すべきかどうか彼が悩んでいた時、同じようにしてモニター
の前にいた別のタマネギが口を開いた。
「でも少佐。確か一度殿下…じゃないや、陛下も襲ってますよね?」
「…!!」
反射的に、若き国王が会話に加わってきたタマネギを振り返った。口を出したタマネギは、
かなり古参の者だ。三河屋号が入隊する際に手ほどきを受けた人物でもあった。
「ほら、ずっと前に…催眠術で…。何て言いましたっけ、あの合い言葉。正/露/丸乗せ――――」
「それ以上言うな!」
ガタリと椅子が揺れた。立ち上がった国王の顔が、僅かに赤い。
「あれは僕の一生の汚点だ」
【おいパタリロ、いったいどういう――】
「ああ、マライヒが来たみたいだぞ。じゃあな、バンコラン。報酬を忘れるな」
一方的に通信を切り、国王は口を挟んだタマネギに「減給だ」と告げた。突然の、しかも彼等
の薄給を思えば餓死しかねない処置に、タマネギが菱形の口を目一杯開けている。そしてそんな
不幸なタマネギを余所に、王宮の廊下の奥からは通りの良い、けれども怒りに満ちているらしい
若々しい声が聞こえてきていた。
「何で毎回僕が仲裁しなきゃならんのだ」
少佐とその伴侶の喧嘩は始めてではないらしい。愚痴を零す国王の表情からは、垣間見えた年
相応の青年らしい照れた様子はとっくに消え失せていた。
「行くぞ、三河屋号。…マライヒのナイフは高く売れる。八つ当たりで投げてきたら、残らず拾っておけ」
鋭く理性的な瞳が三河屋号を見ている。
彼は青年国王の半歩後ろを付き従いながら、ほんの少しだけ目の前の事態から思考を逸らした。
少佐と会話している君主を見ていた時に感じた居心地の悪さは消えていた。だがその代わりに、
妙に胸の辺りがチリチリしている。
少佐と何があったのか。
三河屋号は考えたが、答えは当然出なかった。
ただ、彼の君主には珍しい表情をさせた原因もそこにあるのだろう。
それを思うと、……どこか奇妙な気分になった。
ここは、常春の国・マリネラ。
今日も新しい一日が騒がしく幕を開けそうだ。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 四分割しきれなかった。読みづらくてスマン
| | | | ピッ (・∀・;)
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