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こういうのは舞い過ぎだ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )絢/爛ぶとー祭(ゲーム版)の主×艦橋で良く倒れる人。
              勢いで書いたらこんなの出来ちゃった。な作品です。

 混沌としていた火星の覇権争奪戦に一片の異分子が放り込まれてから、もうかなりの
時間が過ぎた。
 とは言え、実際はまだ一年と過ぎてはいないのだが、ある意味「たったそれだけ」の時
間内で火星勢力図は大きく書き換えられてしまっている。
 一片の異分子=機械の器を操り、別世界から介入している人物―今回は仮にKとする―
は、すっかり馴染んだ艦の中での日常を楽しんでいた。
 これは、そんな他愛の無い一日の事。

 「飛行/長、ちょっと良い?」
 ソファに腰掛けて短い休憩を取っていたYは、不意に掛けられた声に顔を上げて目の前
に立った男を見た。
 この世界ではポピュラーな青い軍服に身を包み、さしたる特徴は無いが不思議と印象に
残る顔に何やら意味有りげな笑みを浮かべた男、Kは軽く右手を振って見せながら再び口
を開く。
 「毎日毎日頑張って働いているけなげな隊員の為に、プレゼントが欲しいんだけど」
 「……いきなり何だ?」
 「いや、何となく」
 それなら、この男が来てからと言うもの、色々な意味で激務が続く己にも褒美が欲しい
と思いつつYが問い返すと、Kは振っていた右手を自分の頭に置いて笑みを深めた。
 全くもって、意図が掴めない。
 Yは無駄ににこやかなKの顔を凝視すると、少しずり落ちた眼鏡を指で押し上げた。
 「撃墜数もかなり稼いでるしさ、ボーナスみたいな物を希望しまーす」
 「金か、物か。どちらだ」
 「金は艦長からかなり貰ってるし、物も両手で余る程持ってます」
 「……どうしろと?」
 「うーん…取りあえず、何が良いかについて食堂で話しない?」
 自分とは対照的ににこりともしないYにそう切り出し、Kは子供の様に破顔した。

 「プレゼントって言っても、どうせあっちの世界には持って行けないだろうしなぁ」
 「…………」
 「何か記憶に残る様な、強烈なヤツ、無いかなぁ」
 「…………」
 「そう!思い出だな。良い思い出。一生忘れられない感じの」
 「……黙って食え」
 「済みません」
 結局、持ち場に戻る事を放棄し(放棄させられたとも言える)食堂へと連れて来られた
Yは、向かいの席で配給されている食事を次々と口に入れながら喋り続けるKに低い声で
告げ、自分はKが作ったと言う魚の香草蒸しにフォークを突き立てた。
 食事や排泄と言った「人間らしい行動」を積極的に取る必要の無い身体を得ながらも
暇を見ては食事をしに来ているらしいKは、己が食べる為だけではなく他人に食べさせる
為に食材を手に入れ、料理を作って振舞う事を良く行っているらしい。
 今、Yの前に置かれているプレート上のサラダもそれの一つである。
 それなりに体格も良く、どう見ても料理をしそうには無い男が厨房に立っている姿を想
像するのはどうにも難しいが、実際出来上がった料理は決して不味くは無い。いや、旨い
と言って良い物だった。
 「……で、何の話だった?」
 「だから、記憶に残る、良い思い出と言う名のプレゼントをだな」
 「表現が重複しているぞ」
 「そういう問題じゃないだろ」
 数十分後、食事を終えた二人は顔を突き合わせ、早々とボケとツッコミ的な会話が開始
される。

 「思い出はプライスレスとか言うじゃないか」
 「それはお前の世界の話だろう。どうしたんだ、今日は本当におかしいぞ?」
 「良いだろ。たまにはさ」
 だからな。とKは続け、おもむろに立ち上がるとテーブルに両手をつき、座ったままの
Yに顔を近付けた。
 「思い出作りに協力してくれ」
 「具体的に言うんだな。俺に何をさせたい」
 「……んー、そう言われるとなかなか」
 「……艦橋に戻るぞ」
 「って、待った待った!それは無しでしょ」
 二人が使っていたトレイが空と察知するや、ころころと転がりながらテーブル脇迄移動して来た一体のボールが、様子を伺う様に二本の前脚を伸ばして「見上げて」来る。
 Kはそれに気付いてウィンクすると、ゆっくりと立ち上がったYの顔を見た。
 「良し、決めた。Y、覚悟してくれ」
 「何を……っ!?」
 いきなり覚悟しろと言われても対応に困るのだが。
 そう言おうとしたYが羽織っているジャケットの胸元をKの右手が掴み、一気に自分の
方へと引き寄せる。
 つんのめりかけた身体を制御する為に咄嗟にテーブルに手を付こうとしたYは、それを
狙ったかの様に寄って来たKの顔に驚き、直後に更に驚く羽目になった。
 顔が近過ぎる。と言うよりも、鼻先が当たっている。
 いや、そういう次元では無いのか。
 これは、口付けと言う物だ。
 律儀に目を閉じているKにされるまま、顔を背けるでも自分から動くでも無くYの頭の
隅ではそんな冷静な思考が働き、造られた物であるはずの男の唇が案外温かい事に気付
くと何故か笑みが零れそうになった。
 外側はともかくとして内側には介入者であるKの意志が詰まっているのだから、それ位
の事が有ってもおかしくはない。
 Yはよくよく見れば整っている男の顔を眺めながら目を細めた。
 やがて一応遠慮はしたのか触れるだけの口付けは終わり、静かに顔を離して目を開いたKの顔には、何かを思案する様な、微妙な表情が浮かんでいた。

 「案外、柔らかい唇だったなぁ……」
 「そういう事を言う前に、何か別の事を言わなければならないと思うのだが……?」
 「えーと…ごちそうさま?と言うか、ご協力どうも?」
 「艦橋に戻る」
 戯れにしても、馬鹿馬鹿しい。
 戯れだからこそ、馬鹿馬鹿しい。のか。
 取りあえず、自分達以外に人が居なくて良かった。
 等々。
 Yは己の動揺を悟られぬ様に表情をコントロールする事に努めながら、未だ思案してい
るらしいKを置いて歩き出す。
 前から突拍子の無い事をする男だとは思っていたが、それに嫌悪感を覚えないのは人柄
有っての物なのか、もしくは己の問題なのか。
 そういう問答とはかなり昔に別れを告げたはずなのだが。
 「お前も、早く仕事に戻れ」
 「了解です。飛行/長殿」
 振り向かずに声を掛けると、今度は上機嫌になったらしく弾む様な返事が背中に投げ付
けられる。
 口付けの際の揺れでずり落ちた眼鏡を指で押し上げたYは、Kに悟られぬ様に微かな笑
みを浮かべた。

 後日、食堂で二人の様子を伺っていたボールが己の見た映像のデータを(何の意図が
有ってかは分からないが)仲間達へと転送し、最終的にKが乗るR/Bに組み込まれたボー
ルへと到達した際に一悶着起こるのだが、それはまた別の話………。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )途中改行忘れてお見苦しい場面が有りました事を
お詫び致します。
……続き書く気満々だが、需要は有るのか!?


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